(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蓄電器と、該蓄電器の温度を検出する温度検出部と、前記蓄電器に対する充電及び放電を行うための電圧変換回路とを備え、前記温度検出部が検出した温度に基づいて前記蓄電器を加熱する電源装置において、
前記蓄電器及び電圧変換回路を熱的に結合してあり、
前記温度検出部が検出した温度が所定の閾値より低い場合、前記電圧変換回路によって前記蓄電器に対する充電及び放電を交互に行う制御部と、
前記蓄電器の電圧を検出する電圧検出部と
を備え、
前記制御部は、
前記電圧検出部が検出した電圧が第1電圧より低い場合、所定の第1時間だけ前記充電を行い、
前記電圧検出部が検出した電圧が前記第1電圧より低い第2電圧以上である場合、前記第1時間と同一又は異なる第2時間だけ前記放電を行うようにしてあり、
前記第1時間及び第2時間夫々は、前記蓄電器を前記第1電圧及び第2電圧の間で充電及び放電する時間よりも短い
ことを特徴とする蓄電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バッテリの外部からヒータで加熱する方法では、別途ヒータが必要となるため、スペース効率の点で不利である上に製造コストがアップするという問題があった。また、バッテリを充放電して自己発熱させる方法では、バッテリの保護の観点から、バッテリが暖まるほど大きな充放電電流を流すことが困難な場合があった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バッテリ等の蓄電器が低温の場合であっても充放電特性の低下を防止することが可能な蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蓄電装置は、蓄電器と、該蓄電器の温度を検出する温度検出部と、前記蓄電器に対する充電及び放電を行うための電圧変換回路とを備え、前記温度検出部が検出した温度に基づいて前記蓄電器を加熱する電源装置において、前記蓄電器及び電圧変換回路を熱的に結合してあり、前記温度検出部が検出した温度が所定の閾値より低い場合、前記電圧変換回路によって前記蓄電器に対する充電及び放電を交互に行う制御部と、前記蓄電器の電圧を検出する電圧検出部とを備え、前記制御部は、前記電圧検出部が検出した電圧が第1電圧より低い場合、
所定の第1時間だけ前記充電を行い、前記電圧検出部が検出した電圧が前記第1電圧より低い第2電圧以上である場合、
前記第1時間と同一又は異なる第2時間だけ前記放電を行うようにしてあ
り、前記第1時間及び第2時間夫々は、前記蓄電器を前記第1電圧及び第2電圧の間で充電及び放電する時間よりも短いことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る蓄電装置は、前記蓄電器の充電電流及び放電電流を検出する電流検出部を更に備え、前記制御部は、前記充電及び放電夫々について、電流又は電力を積算して、前記充電及び放電夫々を所定の積算電流又は積算電力だけ行うようにしてあることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る蓄電装置は、前記電圧変換回路は、前記充電及び放電に係る電力を変換するためのスイッチング素子を有し、該スイッチング素子をオン/オフに駆動する駆動回路を更に備え、前記制御部は、前記充電及び放電を行う場合、前記駆動回路によって前記スイッチング素子を駆動する信号の立ち上がり時間及び/又は立ち下がり時間を延長するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る蓄電装置は、前記蓄電器を複数備え、前記電圧変換回路は、配線基板の一面に実装してあり、前記配線基板の他面及び前記複数の蓄電器の間に金属を含む平板状の熱伝導部材を介裝してあることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る蓄電装置は、前記複数の蓄電器は円柱状をなしており、軸方向を前記熱伝導部材の一面に平行的に揃えて配してあることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る蓄電装置は、前記複数の蓄電器は平板状をなしており、前記熱伝導部材の一面に積層してあることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、蓄電器の温度が所定の閾値より低い場合、蓄電器と熱的に結合された電圧変換回路によって、蓄電器に対する充電及び放電を交互に行う。
これにより、蓄電器が電圧変換回路からの熱で暖められる。
【0018】
本発明にあっては、蓄電器の電圧が所定の第1電圧より低い場合に、蓄電器を電圧変換回路によって充電し、蓄電器の電圧が第1電圧より低い所定の第2電圧以上である場合に、蓄電器を放電する。
つまり、蓄電器の電圧が、第1電圧以上である場合及び第2電圧未満である場合の夫々について、充電及び放電が実行されず、夫々放電及び充電が実行されるため、蓄電器の電圧が第1電圧から第2電圧までの範囲から大きく逸脱しないように制御される。また、蓄電器の電圧が第1電圧以上である場合及び第2電圧未満であるために、夫々放電及び充電が実行された場合であっても、その後蓄電器の電圧が第1電圧より低くなったとき及び第2電圧以上となったときに、夫々充電及び放電が行われるため、充電と放電とが交互に繰り返されることとなる。
【0019】
本発明にあっては、蓄電器の電圧が所定範囲内にある場合に、充電及び放電が常にセットで交互に行われる。
【0020】
本発明にあっては、1回の充電及び放電の夫々が所定の第1時間及び第2時間だけ行われるため、標準的には1回の充放電が一定の周期で行われる。
【0021】
本発明にあっては、充電及び放電夫々を同じ積算電流又は積算電力だけ行うため、1回の充放電の前後で蓄電器の蓄電量が一定に保たれる。
【0022】
本発明にあっては、蓄電器の充放電を行う場合、電圧変換回路のスイッチング素子を駆動する信号の立ち上がり時間及び/又は立ち下がり時間を延長する。
これにより、電圧変換回路における電力損失が増大するため、蓄電器がよりよく暖まる。
【0023】
本発明にあっては、スイッチング素子を有する電圧変換回路が一面に実装された配線基板の他面と、複数の蓄電器との間に、金属を含む平板状の熱伝導部材を介装する。
これにより、スイッチング素子からの熱が、熱伝導部材で拡散されて蓄電器に均等に伝導する。
【0024】
本発明にあっては、円筒状をなす複数の蓄電器を、夫々の軸方向を熱伝導部材の一面に平行的に揃えて配してあるため、各蓄電器及び熱伝導部材の離隔距離が最小になり、且つ各蓄電器の収容効率が良好となる。
【0025】
本発明にあっては、平板状をなす複数の蓄電器を熱伝導部材の一面に積層してあるため、各蓄電器及び熱伝導部材の離隔距離が最小になり、且つ各蓄電器の収容効率が良好となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、蓄電器の温度が所定の閾値より低い場合、蓄電器が電圧変換回路からの熱で暖められる。
従って、バッテリ等の蓄電器が低温の場合であっても充放電特性の低下を防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る蓄電装置の構成例を示すブロック図である。図中1は蓄電装置であり、蓄電装置1は、車両における回生電力を蓄電し、蓄電した電力を適時放電して有効に利用するためのものである。蓄電装置1は、不図示のエンジンに連動して発電するオルタネータ5からの電圧及び補機バッテリ6からの電圧を変換する電圧変換回路10と、該電圧変換回路10が有するMOSFET(スイッチング素子に相当)11をオン/オフに駆動する駆動信号を与える駆動回路20と、該駆動回路20にPWM信号を与える制御部30とを備える。
【0029】
蓄電装置1は、また、電圧変換回路10によって充電及び放電されるリチウムイオンバッテリ(蓄電器に相当:以下、蓄電池という)40と、該蓄電池40の温度を検出する温度センサ(温度検出部に相当)41と、蓄電池40の充電電流及び放電電流を検出する電流検出抵抗42とを備える。
【0030】
温度センサ41は、直流の電圧が印加されており、蓄電池40と熱的に密結合されている。
電流検出抵抗42は、電圧変換回路10及び
蓄電池40を接続する導線に介裝されている。
補機バッテリ6には、車載の負荷7が並列に接続されている。蓄電池40は、例えばリチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等の他の蓄電器であってもよい。
【0031】
電圧変換回路10は、複数のMOSFET11からなるフルブリッジ(Hブリッジ)回路を含み、駆動回路20からの駆動信号に応じて、電圧の変換方向が切り替わるようになっている。電圧変換回路10は、制御部30がオルタネータ5及び補機バッテリ6からの電圧を変換して蓄電池40を充電したり、蓄電池40が放電した電圧を変換して補機バッテリ6を充電したりするのに用いられる。
【0032】
駆動回路20は、制御部30からのPWM信号を増幅する増幅回路21と、該増幅回路21がMOSFET11に与える駆動信号の信号経路を切り替えるリレー22と、該リレー22を駆動するリレー駆動回路23とを備える。リレー22の常閉接点(b接点)は、MOSFET11のゲートに接続されている。リレー22の常開接点(a接点)は、抵抗器24を介してMOSFET11のゲートに接続されている。
【0033】
リレー22がリレー駆動回路23によって駆動された場合、駆動回路20がMOSFET11に与える駆動信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が、抵抗器24及び浮遊容量によって延長される。抵抗器24に不図示のダイオードを並列に接続した場合は、ダイオードの接続方向に応じて、上記駆動信号の立ち上がり時間又は立ち下がり時間が延長される。
【0034】
駆動回路20から電圧変換回路10に与えられる駆動信号には、上述のPWM信号の他に、該PWM信号を相補的に反転させた信号や、一部のMOSFET11をオン及びオフに固定する信号が含まれている(何れも図示せず)。このような信号を適宜組み合わせて複数のMOSFET11のゲートに与えることにより、電圧変換回路10における双方向の昇圧及び降圧が可能になっている。本実施の形態1では、補機バッテリ6が放電した電圧を電圧変換回路10が昇圧し、蓄電池40が放電した電圧を電圧変換回路10が降圧する。但し、これに限定されるものではない。
【0035】
制御部30は、CPU31を有し、CPU31は、プログラム等の情報を記憶するROM32、一時的に発生した情報を記憶するRAM33、他のECU等とCAN(Controller Area Network )による通信を行うCAN通信回路34、及び各種時間を計時するタイマ35と互いにバス接続されている。
【0036】
CPU31には、また、温度センサ41に印加される電圧及び電流検出抵抗42の両端の電圧をデジタルの電圧値に変換するA/D変換回路36、増幅回路21に与えるPWM信号を生成するPWM制御回路37、及びリレー駆動回路23にリレー制御信号を与えるI/Oポート38がバス接続されている。以下では、特に断りのない限りリレー制御信号がオフになっており、リレー22がオフして共通接点と常閉接点とが接続されている。
【0037】
CAN通信回路34は、CANバス8に接続されており、例えば不図示のECUと通信することにより、補機バッテリ6に対する充電電圧の指令値を取得する。取得された指令値は、出力要求電圧としてRAM33の所定記憶領域に記憶される。
【0038】
A/D変換回路36は、蓄電池40の温度に応じて抵抗値が変化する温度センサ41に印加された電圧をデジタルの電圧値に変換する。変換された電圧値に基づいて、蓄電池40の温度が検出される。A/D変換回路36は、また、電流検出抵抗42の両端の電圧を各別にデジタルの電圧値に変換する。蓄電池40の充電電流及び放電電流の夫々は、変換された両端の電圧の差分に基づいて正及び負の電流として検出される(電流検出部に相当)。蓄電池40の電圧は、変換された両端の電圧の何れかに基づいて検出される(電圧検出部に相当)。
【0039】
PWM制御回路37は、増幅回路21に与えるPWM信号を一定の周期で生成する。蓄電池40を暖めるために充電及び放電が行われる場合、例えば、充電レート及び放電レートが一定になるように、PWM信号のデューティ比が制御される。
【0040】
次に、蓄電池40の実装状態について説明する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る蓄電装置1の内部構成を模式的に示す縦断面図である。図中100はケースであり、ケース100は、略矩形の波板状をなす上部ケース110と、該上部ケース110に対向する側が開口した中空の略直方体状をなす下部ケース120とからなる。
【0041】
下部ケース120内には、制御部30を構成する部品及び導体パターンが両面に実装された制御基板121と、電圧変換回路10及び駆動回路20を構成する部品及び導体パターンが一面に実装された変換基板(配線基板に相当)122とが、底面と平行になるように離隔して配されている。変換基板122の一面は、制御基板121と対向している。変換基板122の他面には、金属材料を含む矩形平板状の熱伝導部材123、接着層124、及びホルダ125が積層されている。
【0042】
蓄電池40,40,・・40は、円柱状をなしており、軸方向が互いに平行となり、且つ熱伝導部材123の一面に平行となるようにして、上部ケース110の凹に湾曲した部位とホルダ125との間に保持されるように収容されている。なお、
図2では温度センサ41の図示を省略する。
【0043】
上述の構成により、変換基板122上に実装されたMOSFET11,11からの熱が、熱伝導部材123で均等に拡散し、接着層124及びホルダ125を介して蓄電池40,40,・・40に効率よく伝導する。
【0044】
次に、蓄電池40を交互に充電及び放電する例について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係る蓄電装置1における蓄電池40の温度及び電圧の時間変化を模式的に示すグラフである。
図3の横軸は時間を表し、縦軸は温度及び電圧を表す。
図3では、蓄電池40の温度及び電圧の夫々を太い実線及び細い実線で示す。T1は所定の閾値温度であり、V1及びV2は相異なる所定の電圧である。
【0045】
本実施の形態1では、蓄電池40の温度(Tb)が閾値温度(T1)より低い場合、蓄電池40を暖めるために、制御部30が蓄電池40に対する充電及び放電を交互に行う。より具体的には、蓄電池40の電圧がV1より低い場合、所定の第1時間だけ充電が行われる。また、蓄電池40の電圧がV1より低いV2以上である場合、所定の第2時間だけ放電が行われる。この充電及び放電を重ねることによって、蓄電池40の温度が徐々に上昇する。
【0046】
以下でいう充電及び放電は、特に断りのない限り蓄電池40に対する充放電を指すものとする。第1時間及び第2時間は異なっていてもよいが、ここでは簡単のために同一の時間とする。具体的に
図3では、時刻t0からt22までの各時刻の間隔を第1時間(=第2時間)とする。V1は蓄電池40の満充電電圧よりも低く、V2は蓄電池40の放電終止電圧より高いものとする。更に、補機バッテリ6は、蓄電池40との間で相互に充放電が行える状態にあるものとする。
【0047】
時刻t0,t2,t4,t6,t8,t10では、蓄電池40の電圧がV1より低いため、第1時間分の充電が開始される。時刻t1,t3,t5,t7,t9,t11では、蓄電池40の電圧がV2以上であるため、第2時間分(=第1時間分)の放電が開始される。第1時間の間で充電される電流量又は電力量の方が、第2時間の間で放電される電流量又は電力量よりも大きい場合、
図3に示すように、蓄電池40の電圧が時間の経過と共に上昇する。
【0048】
続く時刻t12では、蓄電池40の電圧がV1以上であるため、充電が開始されないが、蓄電池40の電圧がV2以上であるため、第2時間分の放電が開始される。つまり、時刻t11からt13までは、第2時間の2倍の時間だけ放電が行われる。その後、時刻t13,t15,t17で第1時間分の充電が開始され、時刻t14,t16,t18で第2時間分の放電が開始される。
【0049】
続く時刻t19では、蓄電池40の電圧がV1以上であるため、充電が開始されないが、蓄電池40の電圧がV2以上であるため、第2時間分の放電が開始される。ここでも時刻t18からt20まで、第2時間の2倍の時間だけ放電が行われる。その後、時刻t20で第1時間分の充電が開始され、時刻t21で第2時間分の放電が開始される。
【0050】
時刻t22以降は、蓄電池40の温度がT1以上になっているため、充電も放電も行われない。この場合、蓄電池40は、他のECUから取得した電圧の指令値に基づいて、補機バッテリ6を充電するために用いられる。
【0051】
このように、放電の時間が2倍になることがあっても、充電及び放電が交互に繰り返される。換言すれば、必要に応じて放電の時間が2倍に延長されることによって、蓄電池40の電圧がV1を大きく超えないように制御されながら、充電及び放電が交互に繰り返される。
【0052】
以下では、上述した制御部30の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。以下に示す処理は、ROM32に予め格納された制御プログラムに従って、CPU31により実行される。
図4は、本発明の実施の形態1に係る蓄電装置1で蓄電池40の充電及び放電を交互に繰り返すCPU31の処理手順を示すフローチャートであり、
図5は、補機バッテリ充電のサブルーチンに係るCPU31の処理手順を示すフローチャートである。
図4の処理は、CPU31の初期化後に起動され、処理が終了する毎に繰り返し起動される。
【0053】
図4の処理が起動された場合、CPU31は、温度センサ41及びA/D変換回路36によって蓄電池40の温度(Tb)を検出し(S11)、検出した温度であるTbが閾値のT1より低いか否かを判定する(S12)。TbがT1より低い場合(S12:YES)、CPU31は、A/D変換回路36によって蓄電池40の電圧(Vb)を検出し(S13)、検出した電圧であるVbが、上限の電圧であるV1より低いか否かを判定する(S14)。
【0054】
VbがV1より低くない場合(S14:NO)、CPU31は、後述するステップS18に処理を移す。VbがV1より低い場合(S14:YES)、即ち充電する余裕がある場合、CPU31は、PWM制御回路37、駆動回路20及び電圧変換回路10によって蓄電池40の充電を開始する(S15)。次いで、CPU31は、タイマ35によって第1時間だけ待機した(S16)後、蓄電池40の充電を停止する(S17)。これにより、蓄電池40は、第1時間だけ充電される。
【0055】
その後、CPU31は、蓄電池40の電圧(Vb)を再び検出し(S18)、Vbが下限の電圧であるV2以上であるか否かを判定する(S19)。VbがV2以上ではない場合(S19:NO)、CPU31は、蓄電池40を放電することなく
図4の処理を終了する。
【0056】
VbがV2以上である場合(S19:YES)、即ち放電する余裕がある場合、CPU31は、PWM制御回路37、駆動回路20及び電圧変換回路10によって蓄電池40の放電を開始する(S20)。次いで、CPU31は、タイマ35によって第2時間だけ待機した(S21)後、蓄電池40の放電を停止して(S22)
図4の処理を終了する。これにより、蓄電池40は、第2時間だけ放電される。
【0057】
ステップS12で、TbがT1より低くない場合(S12:NO)、CPU31は、補機バッテリ充電のサブルーチンを呼び出して実行し(S23)、
図4の処理を終了する。
【0058】
図5に移って、補機バッテリ充電のサブルーチンが呼び出された場合、CPU31は、蓄電池40の電圧(Vb)を検出する(S31)と共に、RAM33に記憶されている電圧の指令値、即ち出力要求電圧(Vd)を読み出す(S32)。次いで、CPU31は、Vb及びVdに応じたPWM信号のデューティ比(D)を算出する(S33)。蓄電池40の電圧を降圧する場合、以下の式(1)によってDが算出される。
【0059】
D=Vd/Vb・・・・・・・・・・・・・(1)
【0060】
次いで、CPU31は、PWM制御回路37に算出したデューティ比(D)を設定し(S34)、PWM制御回路37、駆動回路20及び電圧変換回路10によって蓄電池40を一定時間だけ放電して(S35)呼び出された処理にリターンする。
【0061】
上述のフローチャートでは、リレー22が常時オフしていたが、充電中及び放電中にリレー22をオンして共通接点及び常開接点を接続してもよい。具体的には、
図4に示すステップS15,S20で、I/Oポート38からリレー駆動回路23に与えるリレー制御信号をオンにし、ステップS17,S22でリレー制御信号をオフにする。これにより、充電中及び放電中にMOSFET11に与えられる駆動信号の立ち上がり時間及び/又は立ち下がり時間が延長されるため、MOSFET11の熱損失が増大して、蓄電池40がよりよく暖まる。
【0062】
以上のように本実施の形態1によれば、蓄電池40の温度(Tb)が所定の閾値温度(T1)より低い場合、蓄電池40と熱的に結合された電圧変換回路10によって、蓄電池40に対する充電及び放電を交互に行う。
これにより、蓄電池40が電圧変換回路10からの熱で暖められる。
従って、蓄電池40等の蓄電器が低温の場合であっても充放電特性の低下を防止することが可能となる。
【0063】
また、実施の形態1によれば、蓄電池40の電圧が所定の第1電圧より低い場合に、蓄電池40を電圧変換回路10によって充電し、蓄電池40の電圧が第1電圧より低い所定の第2電圧以上である場合に、蓄電池40を放電する。
特に、蓄電池40の電圧が第1電圧以上である場合、充電が実行されずに放電が実行されるため、蓄電池40の電圧が第1電圧を大きく上回らないように制御される。また、蓄電池40の電圧が第1電圧以上であるために放電が実行された場合であっても、その後蓄電池40の電圧が第1電圧より低くなったときに充電が行われるため、充電と放電とを交互に繰り返すことが可能となる。
【0064】
また、実施の形態1によれば、1回の充電及び放電の夫々が所定の第1時間及び第2時間だけ行われるため、標準的には1回の充放電を一定の周期で行うことが可能となる。
【0065】
更にまた、実施の形態1によれば、蓄電池40の充放電を行う場合、電圧変換回路10のMOSFET11に与える駆動信号の立ち上がり時間及び/又は立ち下がり時間を延長する。
これにより、電圧変換回路10における電力損失が増大するため、蓄電池40をよりよく暖めることが可能となる。
【0066】
更に、実施の形態1によれば、MOSFET11を有する電圧変換回路10が一面に実装された変換基板122の他面と、複数の蓄電池40との間に、金属材料を含む平板状の熱伝導部材123を介装する。
従って、MOSFET11からの熱を、熱伝導部材123で拡散させて蓄電池40に均等に伝導させることが可能となる。
【0067】
更にまた、実施の形態1によれば、円筒状をなす複数の蓄電池40を、夫々の軸方向を熱伝導部材123の一面に平行的に揃えて配してあるため、各蓄電池40及び熱伝導部材123の離隔距離を最小にすることができ、且つ各蓄電池40の収容効率を良好にすることが可能となる。
【0068】
(変形例1)
実施の形態1が、制御部30が蓄電池40に対する充電及び放電を交互に繰り返す間に、蓄電池40の電圧が上昇する形態であるのに対し、実施の形態1の変形例2は、制御部30が蓄電池40に対する充電及び放電を交互に繰り返す間に、蓄電池40の電圧が低下する形態である。
図6は、本発明の実施の形態1の変形例1に係る蓄電装置1における蓄電池40の温度及び電圧の時間変化を模式的に示すグラフである。
図6の横軸は時間を表し、縦軸は温度及び電圧を表す。
図6では、蓄電池40の温度及び電圧の夫々を太い実線及び細い実線で示す。
【0069】
本実施の形態1の変形例2では、蓄電池40の温度(Tb)が閾値温度(T1)より低い場合、蓄電池40を暖めるために、制御部30が蓄電池40に対する放電及び充電を交互に行う。より具体的には、蓄電池40の電圧がV2以上である場合、所定の第2時間だけ放電が行われる。また、蓄電池40の電圧がV1より低い場合、所定の第1時間だけ充電が行われる。この放電及び充電を重ねることによって、蓄電池40の温度が徐々に上昇する。
【0070】
時刻t0,t2,t4,t6,t8では、蓄電池40の電圧がV2以上であるため、第2時間分(=第1時間分)の放電が開始される。時刻t1,t3,t5,t7,t9では、蓄電池40の電圧がV1より低いため、第1時間分の放電が開始される。第2時間の間で放電される電流量又は電力量の方が、第1時間の間で充電される電流量又は電力量よりも大きい場合、
図6に示すように、蓄電池40の電圧が時間の経過と共に低下する。
【0071】
続く時刻t10では、蓄電池40の電圧がV2未満であるため、放電が開始されないが、蓄電池40の電圧がV1より低いため、第1時間分の充電が開始される。つまり、時刻t9からt11までは、第1時間の2倍の時間だけ充電が行われる。その後、時刻t11,t13で第2時間分の放電が開始され、時刻t12,t14で第1時間分の充電が開始される。
【0072】
続く時刻t15では、蓄電池40の電圧がV2未満であるため、放電が開始されないが、蓄電池40の電圧がV1より低いため、第1時間分の充電が開始される。ここでも時刻t15からt16まで、第1時間の2倍の時間だけ充電が行われる。同様に、時刻t16,t18,t21で第2時間分の放電が開始され、時刻t17,t19,t20,t22で第1時間分の充電が開始される。
【0073】
時刻t23以降は、蓄電池40の温度がT1以上になっているため、充電も放電も行われない。この場合、蓄電池40は、他のECUから取得した電圧の指令値に基づいて、補機バッテリ6を充電するために用いられる。
【0074】
このように、充電の時間が2倍になることがあっても、放電及び充電が交互に繰り返される。換言すれば、必要に応じて充電の時間が2倍に延長されることによって、蓄電池40の電圧がV2を大きく下回らないように制御されながら、放電及び充電が交互に繰り返される。
【0075】
上述した制御部30の動作を示すフローチャートは、実施の形態1における
図4に示すフローチャートと本質的には同一であるため、その詳細な説明を省略する。但し、本変形例1では、蓄電池40の温度(Tb)が閾値温度(T1)より低いと判定された場合に、放電から先に行われるようにするため、
図4に示すフローチャートのうち、ステップS13からS17までの処理と、ステップS18からS22までの処理とを入れ替えたフローチャートが用いられる。
【0076】
以上にように本実施の形態1の変形例1によれば、蓄電池40の電圧が所定の第1電圧より低い所定の第2電圧以上である場合に、蓄電池40を放電し、蓄電池40の電圧が第1電圧より低い場合に、蓄電池40を電圧変換回路10によって充電する。
特に、蓄電池40の電圧が、第2電圧未満である場合、放電が実行されずに充電が実行されるため、蓄電池40の電圧が第2電圧を大きく下回らないように制御される。また、蓄電池40の電圧が第2電圧未満であるために充電が実行された場合であっても、その後蓄電池40の電圧が第2電圧以上となったときに放電が行われるため、放電と充電とを交互に繰り返すことが可能となる。
【0077】
(変形例2)
実施の形態1が、複数の蓄電池40が円柱状をなしている形態であるのに対し、実施の形態1の変形例2は、複数の蓄電池が矩形の平板状をなしている形態である。
【0078】
図7は、本発明の実施の形態1の変形例2に係る蓄電装置1の内部構成を模式的に示す縦断面図である。図中100bはケースであり、ケース100bは、一面が開口した中空の略直方体状をなす上部ケース110bと、該上部ケース110bの開口面に対向する側が開口した中空の略直方体状をなす下部ケース120とからなる。
【0079】
蓄電池40b,40b,・・40bは、矩形の平板状をなしており、熱伝導部材123の一面に平板状のホルダ125bを介して積層されている。温度センサ41は図示を省略する。
その他、実施の形態1に対応する箇所には同様の符号を付して、その説明を省略する。
【0080】
上述の構成により、変換基板122上に実装されたMOSFET11,11からの熱が、熱伝導部材123で均等に拡散し、接着層124及びホルダ125bを介して蓄電池40b,40b,・・40bに効率よく伝導する。
【0081】
以上のように本実施の形態1の変形例2によれば、平板状をなす複数の蓄電池40bを熱伝導部材123の一面に積層してあるため、各蓄電池40b及び熱伝導部材123の離隔距離が最小にすることができ、且つ各蓄電池40bの収容効率を良好にすることが可能となる。
【0082】
(実施の形態2)
実施の形態1が、蓄電池40の電圧が第1電圧より低い場合及び第2電圧以上である場合の夫々について充電及び放電を行う形態であるのに対し、実施の形態2は、蓄電池40の電圧が第1電圧より低く、且つ第2電圧以上である場合に充電及び放電を行う形態である。
実施の形態2における蓄電装置1のブロック構成は、実施の形態1と同じであるため、対応する箇所に同様の符号を付してその説明を省略する。
【0083】
図8は、本発明の実施の形態2に係る蓄電装置1における蓄電池40の温度及び電圧の時間変化を模式的に示すグラフである。
図8の横軸は時間を表し、縦軸は温度及び電圧を表す。
図8では、蓄電池40の温度及び電圧の夫々を太い実線及び細い実線で示す。
【0084】
本実施の形態2では、蓄電池40の温度(Tb)が閾値温度(T1)より低い場合、蓄電池40を暖めるために、制御部30が蓄電池40に対する充電及び放電を交互に行う。より具体的には、蓄電池40の電圧がV1より低く且つV2以上である場合、充電及び放電夫々が同じ積算電流だけ行われる。この充電及び放電を重ねることによって、蓄電池40の温度が徐々に上昇する。
【0085】
一方、蓄電池40の電圧は、充放電が開始された時刻t0以降、三角波のように変動するが、1回の充電による積算電流と放電による積算電流とが同じであるため、平均すれば蓄電池40の充電容量に変化がなく、蓄電池40の平均的な電圧が略一定に保たれる。時刻t24以降は、蓄電池40の温度がT1以上になっているため、充電も放電も行われない。この場合、蓄電池40は、他のECUから取得した電圧の指令値に基づいて、補機バッテリ6を充電するために用いられる。
【0086】
以下では、上述した制御部30の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。以下に示す処理は、ROM32に予め格納された制御プログラムに従って、CPU31により実行される。
図9は、本発明の実施の形態2に係る蓄電装置1で蓄電池40の充電及び放電を交互に繰り返すCPU31の処理手順を示すフローチャートであり、
図10は、蓄電池40の充電電流及び放電電流夫々を積算するCPU31の処理手順を示すフローチャートである。
【0087】
図9の処理は、CPU31の初期化後に起動され、処理が終了する毎に繰り返し起動される。
図10の処理は、例えば250ms周期で起動される。
図9,10中の積算充電電流(Sc)及び積算放電電流(Sd)の夫々は、蓄電池40の充電電流及び放電電流を積算した結果を記憶するものであり、RAM33に記憶される。
図9中の補機バッテリ充電のサブルーチンに係るフローチャートは、実施の形態1の
図5に示したものと同じである。
【0088】
図9の処理が起動された場合、CPU31は、蓄電池40の温度(Tb)を検出し(S61)、Tbが閾値のT1より低いか否かを判定する(S62)。TbがT1より低い場合(S62:YES)、CPU31は、蓄電池40の電圧(Vb)を検出し(S63)、Vbが、上限の電圧であるV1より低いか否かを判定する(S64)。
【0089】
VbがV1より低くない場合(S64:NO)、CPU31は、充電も放電もせずに
図9の処理を終了する。VbがV1より低い場合(S64:YES)、CPU31は、Vbが下限の電圧であるV2以上であるか否かを判定し(S65)、VbがV2以上ではない場合(S65:NO)、充電も放電もせずに
図9の処理を終了する。
【0090】
VbがV2以上である場合(S65:YES)、CPU31は、RAM33に記憶する積算充電電流(Sc)の値を0とし(S66)、蓄電池40の充電を開始する(S67)。その後、CPU31は、RAM33からScの値を読み出し(S68)、読み出したScの値が所定の閾値より大きいか否かを判定する(S69)。
【0091】
Scの値が所定の閾値より大きくない場合(S69:NO)、CPU31は、再びScの値を読み出すためにステップS68に処理を移す。Scの値が所定の閾値より大きい場合(S69:YES)、即ち、蓄電池40の充電量が所定の積算電流になった場合、CPU31は、充電を停止する(S70)
【0092】
次いで、CPU31は、RAM33に記憶する積算放電電流(Sd)の値を0とし(S71)、蓄電池40の放電を開始する(S72)。その後、CPU31は、RAM33からSdの値を読み出し(S73)、読み出したSdの値が所定の閾値より大きいか否かを判定する(S74)。
【0093】
Sdの値が所定の閾値より大きくない場合(S74:NO)、CPU31は、再びSdの値を読み出すためにステップS73に処理を移す。Sdの値が所定の閾値より大きい場合(S74:YES)、即ち、蓄電池40の放電量が所定の積算電流になった場合、CPU31は、放電を停止して(S75)
図9の処理を終了する。
【0094】
ステップS62で、TbがT1より低くない場合(S62:NO)、CPU31は、補機バッテリ充電のサブルーチンを呼び出して実行し(S76)、
図9の処理を終了する。
【0095】
次に、
図10の処理が起動された場合、CPU31は、充放電電流(Icd)のデジタル値を取り込み(S81)、取り込んだIcdが充電方向の電流であるか否かを判定する(S82)。
【0096】
Icdが充電方向の電流である場合(S82:YES)、CPU31は、RAM33に記憶する積算充電電流(Sc)の値にIcdの絶対値を加算して(S83)
図10の処理を終了する。一方、Icdが充電方向の電流ではない場合(S82:NO)、即ちIcdが放電方向の電流である場合、CPU31は、RAM33に記憶する積算放電電流(Sd)の値にIcdの絶対値を加算して(S84)
図10の処理を終了する。
【0097】
上述のフローチャートでは、充電電流及び放電電流夫々を積算した積算充電電流及び積算放電電流が所定の積算電流となるまで充電及び放電を行ったが、充電電流及び放電電流夫々に蓄電池40の電圧を掛け合わせて積算した積算充電電力及び積算放電電力が所定の積算電力となるまで充電及び放電を行ってもよい。
【0098】
以上にように本実施の形態2によれば、蓄電池40の電圧が第1電圧より低く且つ第2電圧以上である場合、蓄電池40に対する充電及び放電を常にセットで交互に行うことが可能となる。
【0099】
また、実施の形態2によれば、蓄電池40に対する充電及び放電夫々を同じ積算電流又は積算電力だけ行うため、1回の充放電の前後で蓄電池40の蓄電量を一定に保つことが可能となる。
【0100】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施の形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。