(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る歩行訓練装置の概略的な構成を示す斜視図である。本実施の形態に係る歩行訓練装置1は、例えば、脳卒中片麻痺患者などのユーザの歩行訓練を行うための装置である。歩行訓練装置1は、ユーザの脚部に装着された歩行補助装置2と、ユーザの歩行訓練を行う訓練装置3と、を備えている。
【0010】
歩行補助装置2は、例えば、歩行訓練を行うユーザの患脚に装着され、ユーザの歩行を補助する(
図2)。歩行補助装置2は、上腿フレーム21と、上腿フレーム21に膝関節部22を介して連結された下腿フレーム23と、下腿フレーム23に足首関節部24を介して連結された足平フレーム25と、膝関節部22を回転駆動するモータユニット26と、足首関節部24の可動範囲を調整する調整機構27と、を有している。なお、上記歩行補助装置2の構成は一例であり、これに限られない。例えば、歩行補助装置2は、足首関節部24を回転駆動するモータユニットを備えていてもよい。
【0011】
上腿フレーム21は、ユーザの脚部の上腿部に取り付けられ、下腿フレーム23はユーザの脚部の下腿部に取り付けられる。上腿フレームには、例えば、上腿部を固定するための上腿装具212が設けられている。上腿装具212は、例えば、マジックテープ(登録商標)などを用いて、上腿部に固定される。これにより、歩行補助装置2がユーザの脚部から左右方向あるいは上下方向にずれるのを防止できる。
【0012】
上腿フレーム21には、後述の第1引張部35のワイヤ34を接続するための、左右方向に延在する横長の第1フレーム211が設けられている。下腿フレーム23には、後述の第2引張部37のワイヤ36を接続するための、左右方向に延在する横長の第2フレーム231が設けられている。
【0013】
なお、上記第1及び第2引張部の接続部は一例であり、これに限らない。例えば、第1及び第2引張部35、37のワイヤ34、36を上腿装具212に接続してもよく、第1及び第2引張部35、37の引張点を歩行補助装置2の任意の位置に設けることができる。
【0014】
モータユニット26は、ユーザの歩行動作に応じて膝関節部22を回転駆動することでユーザの歩行を補助する。なお、上記歩行補助装置2の構成は一例であり、これに限られない。ユーザの脚部に装着され、その歩行を補助できる任意の歩行補助装置が適用可能である。
【0015】
訓練装置3は、トレッドミル31と、フレーム本体32と、制御装置33と、を有している。トレッドミル31は、リング状のベルト311を回転させる。ユーザは、ベルト311上に乗り該ベルト311の移動に応じて歩行を行い、その歩行訓練を行う。
【0016】
フレーム本体32は、トレッドミル31上に立設された2対の柱フレーム321と、各柱フレーム321に接続され前後方向に延在する一対の前後フレーム322と、各前後フレーム322に接続され左右方向に延在する3つの左右フレーム323と、を有している。なお、上記フレーム本体32の構成は、これに限られない。後述の第1及び第2引張部35、37が適切に固定できれば、フレーム本体32は任意のフレーム構成であってもよい。
【0017】
前方の左右フレーム323には、ワイヤ34を上方かつ前方に引張する第1引張部35が設けられている。後方の左右フレーム323には、ワイヤ36を上方かつ後方に引張する第2引張部37が設けられている。
【0018】
第1及び第2引張部35、37は、例えば、ワイヤ34、36を巻取り及び巻き戻す機構、該機構を駆動するモータ、などから構成されている。第1及び第2引張部35、37が引張するワイヤ34、36の一端は、歩行補助装置2に接続されている。第1引張部35は、ワイヤ34を介して歩行補助装置2を上方かつ前方に引張する。第2引張部37は、ワイヤ36を介して歩行補助装置2を上方かつ後方に引張する。
【0019】
第1引張部35には、第1速度センサ38が設けれている。第1速度センサ38は、第1速度検出手段の一具体例であり、第1引張部35が引張するワイヤ34の引張速度を検出する。第2引張部37には、第2速度センサ39が設けられている。第2速度センサ39は、第2速度検出手段の一具体例であり、第2引張部37が引張するワイヤ36の引張速度を検出する。第1及び第2引張部35、37は、検出したワイヤ34、36の引張速度を制御装置33に出力する。
【0020】
第1及び第2速度センサ38、39は、例えば、インクリメント型のエンコーダなどで構成されている。このように、インクリメント型のエンコーダを用いることで、バッテリを定期的に交換する必要がないためメンテナンス性が向上する。
【0021】
第1及び第2引張部35、37は、モータの駆動トルクを制御することで、ワイヤ34、36の引張力を制御しているが、これに限らない。例えば、各ワイヤ34、36にバネ部材が接続されており、バネ部材の弾性力を調整することで、ワイヤ34、36の引張力を調整してもよい。
【0022】
第1及び第2引張部35、37による引張力の鉛直上方の成分が歩行補助装置2の重さを支える。そして、第1及び第2引張部35、37による引張力の水平成分により、脚部の振出しを補助する。これにより、歩行訓練時におけるユーザの歩行負荷を軽減できる。また、各ワイヤ34、36は、夫々、ユーザの脚部の歩行補助装置2から上方かつ前方及び上方かつ後方に延びる。したがって、各ワイヤ34、36がユーザの歩行時にユーザに干渉せず、歩行訓練の妨げとならない。
【0023】
制御装置33は、制御手段の一具体例であり、第1及び第2引張部35、37の引張力と、トレッドミル31の駆動と、歩行補助装置2と、を夫々制御する。制御装置33は、例えば、演算処理、制御処理等と行うCPU(Central Processing Unit)、CPUによって実行される演算プログラム、制御プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)、各種のデータなどを記憶するRAM(Random Access Memory)、外部と信号の入出力を行うインターフェイス部(I/F)、などからなるマイクロコンピュータを中心にして、ハードウェア構成されている。CPU、ROM、RAM及びインターフェイス部は、データバスなどを介して相互に接続されている。
【0024】
制御装置33は、訓練指示、訓練メニュー、訓練情報(歩行速度、生体情報等)などの情報を表示する表示部333が設けられている。表示部333は、例えば、タッチパネルとして構成されており、ユーザは表示部333を介して各種の情報を入力できる。
【0025】
ところで、ユーザの歩行補助装置をワイヤで引張し免荷を行った場合、そのワイヤが外れ、あるいは、断線することがある。この場合、ワイヤの引張バランスが崩れ、ユーザの歩行訓練が困難となる虞がある。一方、そのワイヤの外れ、あるいは、断線を判定するため、例えば、歩行補助装置に特別なセンサを設けることが想定される。この場合、歩行補助装置の重量が増加し、ユーザの歩行訓練を阻害する虞がある。
【0026】
これに対し、本実施の形態に係る歩行訓練装置1において、第1引張部35に該第1引張部35が引張するワイヤ34の引張速度を検出する第1速度センサ38が設けられ、第2引張部37に、該第2引張部37が引張するワイヤ36の引張速度を検出する第2速度センサ39が設けられている。制御装置33は、第1引張部35によるワイヤ34の引張速度と第2引張部37によるワイヤ36の引張速度との差を算出し、該引張速度の差が閾値以上となるとき、ワイヤ34、36が外れた又はワイヤ34、36が断線したと判定する。これにより、歩行補助装置2に特別なセンサを設けることがないため、ユーザの歩行訓練を阻害することがない。さらに、ワイヤ34、36の外れ或いはワイヤ34、36の断線を正確に判定できる。
【0027】
図3は、本実施の形態に係る制御装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る制御装置33は、第1及び第2速度センサ38、39の引張速度の差を算出する速度差算出部331と、ワイヤ34、36の外れ又はワイヤ34、36の断線を判定する異常判定部332と、を有している。
速度差算出部331は、第1速度センサ38から出力された引張速度と、第2速度センサ39から出力された引張速度と、の差を算出する。
【0028】
異常判定部332は、速度差算出部331により算出された引張速度の差が閾値以上となるとき、第1及び第2引張部35、37が引張するワイヤ34、36のうちいずれか一方のワイヤ34、36が外れた又は断線したと判定する。これは、いずれか一方のワイヤ34、36が外れ、又は断線した場合、そのワイヤ34、36の引張速度が大きく増加し、引張速度の差が閾値以上となるからである。
【0029】
異常判定部332は、引張速度の差が閾値以上となり、ワイヤ34、36が外れた又はワイヤ34、36が断線したと判定したとき、例えば、第1及び第2引張部35、37、歩行補助装置2及びトレッドミル31に対して、停止させるための制御信号を出力する。第1及び第2引張部35、37、歩行補助装置2及びトレッドミル31は、異常判定部332からの制御信号に応じて、駆動を停止する。これにより、ワイヤ34、36が外れた又はワイヤ34、36が断線した場合の異常時に迅速に対応でき安全性の向上に繋がる。
【0030】
図4は、本実施の形態に係る歩行訓練装置の制御処理フローを示すフローチャートである。ユーザの歩行訓練が開始されると、制御装置33は、第1及び第2引張部35、37の引張力と、トレッドミル31の駆動と、歩行補助装置2と、を制御し駆動させる(ステップS101)。
【0031】
第1速度センサ38は、第1引張部35が引張するワイヤ34の引張速度を検出し(ステップS102)、制御装置33に出力する。第2速度センサ39は、第2引張部37が引張するワイヤ36の引張速度を検出し(ステップS103)、制御装置33に出力する。
【0032】
制御装置33の速度差算出部331は、第1速度センサ38から出力された引張速度と、第2速度センサ39から出力された引張速度と、の差を算出する(ステップS104)。
【0033】
異常判定部332は、速度差算出部331により算出された引張速度の差が閾値以上であるか否かを判定して、ワイヤ34、36の外れ又はワイヤ34、36の断線を判定する(ステップS105)。
【0034】
異常判定部332は、引張速度の差が閾値以上となり(ステップS105のYES)、ワイヤ34、36が外れた又はワイヤ34、36が断線したと判定したとき(ステップS106)、第1及び第2引張部35、37、歩行補助装置2及びトレッドミル31を停止させる制御を行う(ステップS107)。一方、異常判定部332は、引張速度の差が閾値より小さいと判定したとき(ステップS105のNO)、上記(ステップS101)の処理に戻る。
【0035】
以上、本実施の形態に係る歩行訓練装置1において、第1速度センサ38は、第1引張部35に設けられ、該第1引張部35が引張するワイヤ34の引張速度を検出する。第2速度センサ39は、第2引張部37に設けられ、該第2引張部37が引張するワイヤ36の引張速度を検出する。速度差算出部331は、第1速度センサ38により検出された引張速度と、第2速度センサ39により検出された引張速度と、の差を算出する。異常判定部332は、該引張速度の差が閾値以上となるとき、ワイヤ34、36が外れた又はワイヤ34、36が断線したと判定する。これにより、歩行補助装置2に特別なセンサを設けることないためユーザの歩行訓練を阻害することがなく、さらに、ワイヤ34、36の外れ或いはワイヤ34、36の断線を正確に判定できる。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0037】
上記実施形態において、訓練装置3はフレーム本体32を有しない構成であってもよい。この場合、第1及び第2引張部35、37は、例えば、壁面あるいは天井に設けられていても良い。
【0038】
上記実施形態において、第1及び第2引張部35、37のワイヤ34、36は歩行補助装置2に接続されているが、これに限られない。例えば、第1及び第2引張部35、37のワイヤ34、36は、ユーザの脚部にベルト、リングなどの装着具を介して接続される構成であってもよい。さらに、第1及び第2引張部35、37のワイヤ34、36は、歩行補助装置2及びユーザの脚部に接続される構成であってもよい。
【0039】
上記実施形態において、歩行補助装置2を装着したユーザはトレッドミル31上を歩行する構成であるが、これに限られない。歩行補助装置2を装着したユーザが静止する路面上を歩行し、ユーザの移動に応じて第1及び第2引張部35、37を移動させる構成であってもよい。