特許第6248824号(P6248824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248824
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】押しボタンスイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/02 20060101AFI20171211BHJP
   H01H 13/14 20060101ALI20171211BHJP
   H01H 9/16 20060101ALI20171211BHJP
   H01H 9/18 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H01H13/02 A
   H01H13/14 A
   H01H9/16 A
   H01H9/18 A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-126592(P2014-126592)
(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公開番号】特開2016-4768(P2016-4768A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100103012
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 隆宣
(72)【発明者】
【氏名】杉原 賢紀
(72)【発明者】
【氏名】長田 健志
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−289510(JP,A)
【文献】 特開2012−113824(JP,A)
【文献】 特開2012−113831(JP,A)
【文献】 特開2012−195072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/02
H01H 9/16
H01H 9/18
H01H 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
無操作時に点灯している少なくとも1個の第1発光素子を表面実装し、かつ、前記ベースの底面に配置したプリント基板と、
一対のリンク部材の両端を回動可能に連結し、かつ、前記ベース内に収納した回動リンク機構部と、
前記第1発光素子の光を透過させる開口部を有し、かつ、前記リンク部材に架け渡した可動バネ部材と、
前記第1発光素子の光が通過する開口部を有し、かつ、前記回動リンク機構部を押し下げ可能に配置したプランジャと、
前記プランジャに積み重ねた導光板と、
前記導光板の側端面に隣接するように配置した少なくも1個の第2発光素子と、
前記プランジャを押し下げる押しボタンと、からなる押しボタンスイッチであって、
前記第1発光素子で部分的に照光された前記押しボタンを押し下げることにより、前記プランジャを介して前記回動リンク機構部を駆動し、前記プリント基板の接点を開閉することにより、前記第1発光素子および前記第2発光素子のうち、少なくとも第2発光素子が点灯して前記押しボタン全面を照光することを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項2】
前記可動バネ部材の両端に設けた係合爪部を、前記回動リンク機構部の一対のリンク部材にそれぞれ係合して架け渡したことを特徴とする請求項1に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項3】
前記可動バネ部材の一端に設けた係合爪部を、一対の前記リンク部材の一方に係合するとともに、前記可動バネ部材の他端を、コイルバネを介して一対の前記リンク部材の他方に連結して架け渡したことを特徴とする請求項1に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項4】
前記可動バネ部材から前記プリント基板に接離可能な一対の可動接触片を切り出したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項5】
前記可動バネ部材の開口部の周囲に、前記プリント基板に接離可能な可動接点を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項6】
前記プリント基板に固定接点部材と可動接点部材とを上下に配置するとともに、前記回動リンク機構部のリンク部材で前記可動接点部材を押し下げ可能に配置し、前記回動リンク機構部のリンク部材で前記可動接点部材を押し下げることにより、前記可動接点部材を前記固定接点部材に接離させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の押しボタンスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
押しボタンスイッチ、例えば、エレベータの昇降スイッチに用いられる自己照光型の押しボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押しボタンスイッチとしては、例えば、特許文献1の図9に示すように、内部に一対の揺動部材125を備え、押しボタン部11が押されると、揺動部材125が揺動軸41を中心に回動する。一方の揺動部材125から他方の揺動部材125に亘って板ばね124が設けられ、揺動部材125が回動すると、板ばね124の中央部27が上昇し、スイッチ機構26が操作されるものがある。
そして、前記押しボタンスイッチでは、基板122に複数のLED25が配置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−195072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記押しボタンスイッチでは、押しボタン部11の全面が照光することが開示されているにすぎず、操作前においては視認性が低く、誤操作しやすいという問題点がある。
本発明は、前記問題点に鑑み、操作前後のいずれの場合であっても視認性に優れ、誤操作しにくい押しボタンスイッチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る押しボタンスイッチは、前記課題を解決すべく、ベースと、無操作時に点灯している少なくとも1個の第1発光素子を表面実装し、かつ、前記ベースの底面に配置したプリント基板と、一対のリンク部材の両端を回動可能に連結し、かつ、前記ベース内に収納した回動リンク機構部と、前記第1発光素子の光を透過させる開口部を有し、かつ、前記リンク部材に架け渡した可動バネ部材と、前記第1発光素子の光が通過する開口部を有し、かつ、前記回動リンク機構部を押し下げ可能に配置したプランジャと、前記プランジャに積み重ねた導光板と、前記導光板の側端面に隣接するように配置した少なくも1個の第2発光素子と、前記プランジャを押し下げる押しボタンと、からなる押しボタンスイッチであって、前記第1発光素子で部分的に照光された前記押しボタンを押し下げることにより、前記プランジャを介して前記回動リンク機構部を駆動し、前記プリント基板の接点を開閉することにより、前記第1発光素子および前記第2発光素子のうち、少なくとも第2発光素子が点灯して前記押しボタン全面を照光する構成としてある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、押しボタンを押し下げる前は、押しボタンの一部を第1発光素子で照光しているが、前記押しボタンを押し下げた後は、第1発光素子および第2発光素子のうち、少なくとも第2発光素子が点灯することにより、前記押しボタン全面を照光する押しボタンスイッチが得られる。
【0007】
本発明の実施形態としては、前記可動バネ部材の両端に設けた係合爪部を、前記回動リンク機構部の一対のリンク部材にそれぞれ係合して架け渡しておいてもよい。
本実施形態によれば、可動バネ部材が前記リンク部材を内側に付勢し、自己復帰する押しボタンスイッチが得られる。
【0008】
本発明の他の実施形態としては、前記可動バネ部材の一端に設けた係合爪部を、一対の前記リンク部材の一方に係合するとともに、前記可動バネ部材の他端を、コイルバネを介して一対の前記リンク部材の他方に連結して架け渡しておいてもよい。
本実施形態によれば、コイルバネのバネ力で前記リンク部材を内側に付勢し、自己復帰する押しボタンスイッチが得られる。
【0009】
本発明の別の実施形態としては、前記可動バネ部材から前記プリント基板に接離可能な一対の可動接触片を切り出しておいてもよい。
本実施形態によれば、押しボタンおよびプランジャで前記回動リンク機構部を押し下げ、前記可動バネ部材を引き下げることにより、一対の前記可動接触片がプリント基板の接点を開閉する。このため、部品点数が少なく、簡単な構造の押しボタンスイッチが得られる。
【0010】
本発明の異なる実施形態としては、前記可動バネ部材の開口部の周囲に、前記プリント基板に接離可能な可動接点を設けておいてもよい。
本実施形態によれば、押しボタンおよびプランジャで前記回動リンク機構部を押し下げ、前記可動バネ部材を引き下げることにより、前記可動接点がプリント基板の接点を開閉する。このため、部品点数が少なく、より一層簡単な構造の押しボタンスイッチが得られる。
【0011】
本発明の他の実施形態としては、前記プリント基板に固定接点部材と可動接点部材とを上下に配置するとともに、前記回動リンク機構部のリンク部材で前記可動接点部材を押し下げ可能に配置し、前記回動リンク機構部のリンク部材で前記可動接点部材を押し下げることにより、前記可動接点部材を前記固定接点部材に接離させてもよい。
本実施形態によれば、押しボタンおよびプランジャを介して回動リンク機構部のリンク部材を押し下げることにより、前記可動接点部材が前記固定接点部材に接離して接点を開閉する。このため、多様な接点開閉手段が得られ、設計の自由度が広がるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図A,Bおよび図Cは本発明に係る押しボタンスイッチの第1実施形態に係る動作前の異なる視点から視た斜視図および動作後の斜視図である。
図2図1Aで図示した押しボタンスイッチの分解斜視図である。
図3図1Bで図示した押しボタンスイッチの分解斜視図である。
図4図A,Bはベースに内部構成部品を組み込んだ状態を示す斜視図および可動バネ部材の斜視図である。
図5図A,Bは図2で図示したプランジャの異なる角度から視た斜視図である。
図6図A,Bは図2で図示したプランジャに内部構成部品を組み付けた状態を示す斜視図および断面図である。
図7図A,Bおよび図C図1に示した押しボタンスイッチの動作前を示す断面図および動作後を示す断面図である。
図8図7で示した押しボタンスイッチの動作原理を説明するための概略図である。
図9】本発明に係る押しボタンスイッチの第2実施形態を示す部分分解斜視図である。
図10図A,Bは第2実施形態に係るベースに内部構成部品を組み込んだ状態を示す斜視図および可動バネ部材の斜視図である。
図11図A,Bは第2実施形態に係る押しボタンスイッチの動作前後を示す断面図である。
図12】本発明に係る押しボタンスイッチの第3実施形態を示す分解斜視図である。
図13】本発明に係る押しボタンスイッチの第3実施形態を異なる角度から視た分解斜視図である。
図14図A,Bは図12で示したベースに内部構成部品を組み付けた状態を示す斜視図および部分分解斜視図である。
図15図A,Bは図12で示した押しボタンスイッチの動作前後を示す断面図である。
図16図A,Bは本発明に係る押しボタンスイッチの第4実施形態を示す異なる角度から視た部分分解斜視図である。
図17図A,Bは図16で示した実施形態に係る横断面図および縦断面図である。
図18図A,Bは実施例1を説明するための概略断面図および計算結果を図示したグラフ図であり、図C,Dは実施例2を説明するための概略断面図および計算結果に基づく輝度分布を図示した輝度分布図である。
図19図A,Bは比較例1を説明するための概略断面図および計算結果を図示したグラフ図であり、図C,Dは比較例2を説明するための概略断面図および計算結果に基づく輝度分布を図示した輝度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る押しボタンスイッチの実施形態を図1ないし図15の添付図面に従って説明する。
第1実施形態に係る押しボタンスイッチは、図1ないし図8の添付図面に示すように、プリント基板20、接続ケーブル25、回動リンク機構部30、および、可動バネ部材40を組み込んだ箱形ベース10に、プランジャ50を組付けたものである。前記プランジャ50には、LEDを一列に設置した帯状プリント基板60、導光板70、拡散シート71、文字シート72、および、押しボタン73を組み付けてある。
【0014】
前記箱形ベース10は、図2および図3に示すように、その底面に4本のカシメ突起11を突設してある。また、前記箱形ベース10は、対向する内向面に一対の支持部12,13をそれぞれ突設するとともに、その両側に係合受け部14をそれぞれ設けてある一方、残る他の内向面の一つに取付孔15を設けてある。
【0015】
プリント基板20は、前記箱形ベース10に嵌合可能な平面形状を有し、その表面に固体発光素子であるLED21を設けてあるとともに、その外周縁部に前記箱形ベース10の取付孔15に取付けられるコネクタ受け部22、および、内部配線用接続部23を設けてある。
なお、前記LED21は1個に限らず、必要に応じて複数個、配置してもよい。
【0016】
接続ケーブル25は、略J字形状に屈曲可能なケーブルであり、その一端部26aを前記プリント基板20の内部配線用接続部23に電気接続するとともに、その他端部26bを後述する帯状プリント基板60の内部配線用接続部62に電気接続する。
【0017】
前記回動リンク機構部30は、略門型状に屈曲した弾性金属線材からなるリンク部材31,32の両端部を、連結部材33,33にそれぞれ回動可能に連結した構成としてある。
【0018】
前記可動バネ部材40は、図4Bに示すように、導電性板材から打ち抜いてプレス加工した平面帯状材であり、その中央に略4角形の開口部41を有するとともに、前記開口部41を中心として対向するように一対の可動接触片42,43を切り出してある。さらに、前記可動バネ部材40は、その両端部を同一方向に曲げ起こして係合爪部44,45を形成してある。
【0019】
プランジャ50は、図5に示すように、前記箱形ベース10に嵌合可能な平面形状を有し、その中央に方形の開口部51を設けてあるとともに、前記開口部51に通光規制部52を設けてある。前記通光規制部52は、その中心に配置した遮蔽部53aと、前記遮蔽部53aを中心として複数の相似形の方形枠状のリブ53bと、前記遮蔽部53aを中心として十字方向に延在したリブ53cと、で形成してある。
【0020】
そして、前記プランジャ50は、図5Aに示すように、光を反射しやすい白色の外向面のうち、その内周隅部に沿って環状段部54を設けてある。そして、前記環状段部54は、その対向する辺の隅部に、後述する押しボタン73を係止する一対の係止突起55をそれぞれ突設してある。
さらに、前記プランジャ50は、図5Bに示すように、その内向面のうち、前記通光規制部52を間にして対向する位置に一対の位置規制突起56a,56bを突設してあるとともに、一対の係合爪部57a,57bを突設してある。ついで、前記プランジャ50は、その内向面の隣り合う隅部に、後述する帯状プリント基板60をカシメ固定するための一対のカシメ突起58を突設してある。
ついで、前記プランジャ50は、対向する外側面に一対の係合爪部59,59を突設してある。
【0021】
なお、前記開口部51は方形に限らず、円形であってもよく、また、必ずしも中央に設ける必要はなく、中央周辺や隅部に設けてもよい。
また、前記通光規制部52は四角形を基本パターンとするリブで形成する場合に限らず、同心円を基本パターンとするリブで形成してもよい。さらに、前記遮蔽部53aは前記LEDの中央部の輝度が最も高いことから生じる、いわゆる目玉現象を解消するためのものであるが、必要に応じて設ければよく、必ずしも必要ではない。
【0022】
帯状プリント基板60は、その片面に一列に複数個のLED61を配置してあるとともに、残る片面に内部配線用接続部62を配置してあり、その両端部を前記プランジャ50のカシメ突起58を介してカシメ固定される。
【0023】
導光板70は、前記プランジャ50の内向面のうち、前記環状段部54内に収納可能な平面形状を有している。そして、前記導光板70は、その側端面を、前記帯状プリント基板60のLED61と隣接する位置に配置することにより、側方から入力された前記LED61の光を外向面に向けて放射する。
【0024】
拡散シート71は前記導光板70の表面を被覆する平面形状を有し、前記導光板70から放出された光を拡散し、より一層の輝度の均一化を図るためのものである。
【0025】
文字シート72は、その外周縁部を前記環状段部54に載置可能な平面形状を有する透明シートからなり、その中央部に光が透過できるように、例えば、数字である「8」だけを残してインクで印刷されている。
【0026】
押しボタン73は、その外周縁部に環状リブ74を形成することにより、前記プランジャ50の環状段部54に載置可能な平面形状を有するとともに、その内向面側に浅い凹所75(図3)を形成してある。また、前記環状リブ74には、前記プランジャ50の係止突起55に係止可能な切り欠き部76を設けてある。
【0027】
次に、前記押しボタンスイッチの組立方法について説明する。
まず、図4Aに示すように、箱形ベース10に、接続ケーブル25の一端部26aを接続したプリント基板20を取り付ける。
一方、リンク部材31,32の両端部を連結部材33,33にそれぞれ回動可能に連結するとともに、前記リンク部材31,32に可動バネ部材40の係合爪部44,45をそれぞれ係合して架け渡す。ついで、前記リンク部材31,32を前記箱形ベース10の支持部12,13に係合して位置決めする。このとき、前記可動バネ部材40の開口部41からLED21を目視することができる(図4)。
【0028】
そして、図6Aに示すように、プランジャ50のカシメ突起58を介して帯状プリント基板60をカシメ固定するとともに、前記帯状プリント基板60の内部配線用接続部62に接続ケーブル25の他端部26bを電気接続する。ついで、前記箱形ベース10の係合受け部14にプランジャ50の係合爪部59を係合させて一体化する。さらに、前記プランジャ50に導光板70、拡散シート71、文字シート72を順次積み重ねた後、押しボタン73の環状リブ74に設けた切り欠き部76をプランジャ50の係止突起55に係止して一体化する。このとき、図7A,7Cに図示するように、LED21と通光規制部52の遮蔽部53aとが可動バネ部材40の開口部41を介して対向している。また、図7に示すように、LED61の側端面が導光板70に隣接している。
【0029】
次に、前記押しボタンスイッチの動作を図7図8に基づいて説明する。
押しボタン73が押圧されていない場合には、図示しない外部回路によってLED21が点灯している。このため、前記LED21から放射された光のうち、輝度が高い光は遮蔽部53aで遮られる一方、残る他の放射された光は通光規制部52を通過して散乱する。そして、導光板70に入射した光は拡散シート71を通過して更に散乱して文字シート72を通過し、文字シート72に印刷された文字を浮かび上がらせて押しボタン73を通過する。
また、前記押しボタン73が押されていない場合には、図8Aに示すように、可動バネ部材40の引張力によって回動リンク機構部30のリンク部材31,32は谷折り状態にあり、可動接触片42,43はプリント基板20に接触していない。
【0030】
そして、前記押しボタン73を押し下げると、プランジャ50が押し下げられ、可動バネ部材40の係合爪部44,45とともに、回動リンク機構部30のリンク部材31,32が押し下げられる。このとき、支持部12,13を支点としてリンク部材31,32が回動し、連結部材33が持ち上げられる。このため、可動バネ部材40の可動接触片42,43が押し下げられ、プリント基板20の固定接点(図示せず)に接触して回路を閉成する。このため、外部回路に制御信号が流れ、LED21に流れる電流が遮断される一方、LED61に電流が流れて点灯する。前記LED61から放射された光は導光板70の側端面から入射し、反射して外向面に放射され、拡散シート71,文字シート72を通過して押しボタン73から放射される。
特に、導光板70から内向面側に漏れた光はプランジャ50で外向面に反射して放射されるので、発光効率の良い自己照光型ボタンスイッチが得られる。
【0031】
ついで、前記操作ボタンの押し下げを解除すると、可動バネ部材40のバネ力でリンク部材31,32が内側に引っ張られ、谷折り状態に復帰する。
【0032】
図8に示すように、回動リンク機構部30のリンク部材31,32の両端には水平方向に作用する引張力Fと、垂直方向の操作力fとが作用する。そして、リンク部材31,32の組付角度をθとしたとき、前記操作力fは引張力Fの組付け角度θの垂直方向の分力に相当する。このため、復帰状態の操作力f1は動作状態の操作力f2よりも大きく、かつ、押し込み操作の途中で操作抵抗が急激に減少するので、操作者が指にクリック感を感じる。
【0033】
第2実施形態は、図9ないし図11に示すように、前述の第1実施形態とほぼ同様であり、主たる相違点は可動バネ部材40の形状である。
すなわち、前記可動バネ部材40は、図10Bに示すように、導電性板材から打ち抜いてプレス加工した平面帯状材であり、その中央に略4角形の開口部41を有するとともに、前記開口部41の外周隅部近傍に可動接点46を突出し加工で形成してある。さらに、前記可動バネ部材40は、その両端部を同一方向に曲げ起こして係合爪部44,45を形成してある。
また、プリント基板20には、前記可動接点46が接離可能な固定接点を設けてあることは勿論である。他は前述の第1実施形態とほぼ同様であるので、同一部分に同一番号を付して説明を省略する。
本実施形態によれば、前記可動バネ部材40から可動接触片を切り出していないので、前記可動バネ部材40の機械的強度が高く、疲労破壊等が生じにくいので、寿命の長い押しボタンスイッチが得られるという利点がある。
【0034】
第3実施形態は、図12ないし図15に示すように、プリント基板20、接続ケーブル25、回動リンク機構部30、および、可動バネ部材40を組み込んだ箱形ベース10に、プランジャ50を組付けたものである。前記プランジャ50には、LEDを一列に設置した帯状プリント基板60、反射シート65、導光板70、拡散シート71、文字シート72、押しボタン73を組み付けてある。
【0035】
前記プリント基板20は、図14Bに示すように、断面門型の固定接点部材27および可動接点部材28を積み重ねるように実装して接点機構を配置してある。
すなちわ、前記固定接点部材27は、その片側縁部に固定接点27a,27b,27cを切り出して並設してある。一方、前記可動接点部材28は、その片側縁部から可動接触片29を切り出し、かつ、その中間部に可動接点29a,29b,29cを突出し加工で形成してある。このため、前記プリント基板20に前記固定接点部材27および前記可動接点部材28を重ね合わせるように実装することにより、前記可動接点部材28の可動接点29a,29b,29cが、前記固定接点27a,27b,27cに接離可能に対向する。
【0036】
また、可動バネ部材40は、図14Aに示すように、導電性板材から打ち抜いてプレス加工した平面帯状材であり、その中央に略4角形状の開口部41を有する。そして、前記開口部41を間にして一方側に操作孔47を設けてあるとともに、その他方側に設けた収納孔48にコイルバネ49を組み込んである。さらに、前記可動バネ部材40は、その一端部を曲げ起こすことにより、リンク部材31に係合可能な係合爪部44を形成してある一方、その他端部をリンク部材32に当接可能としてある。
【0037】
プランジャ50は、前述の実施形態とほぼ同様であり、異なる点は開口部51に通光規制部を設けていない点である。
【0038】
反射シート65は、その表面に光を反射する反射面を有するとともに、前記プランジャ50の開口部51に対向する領域に多数の小孔を所望のピッチで設けることにより、通光規制部66を形成してある。
他は前述の第1実施形態とほぼ同様であるので、同一部分に同一番号を付して説明を省略する。
【0039】
第3実施形態によれば、固定接点部材27および可動接点部材28が3つの接点を有するトリプル接点構造であるので、接触信頼性が高いという利点がある。
【0040】
次に、第3実施形態に係る押しボタンスイッチの動作を図15に基づいて説明する。
押しボタン73が押圧されていない場合には、図示しない外部回路によってLED21が点灯している。このため、前記LED21から放射された光は反射シート65の通光規制部66を通過して散乱する。そして、導光板70に入射した光は拡散シート71を通過して更に散乱して文字シート72を通過し、文字シート72に印刷された文字を浮かび上がらせて押しボタン73を通過する。
また、前記押しボタン73が押されていない場合には、図15Aに示すように、可動バネ部材40に取付けたコイルバネ49の引張力によって回動リンク機構部30のリンク部材31,32は谷折り状態であり、可動接触片29の可動接点29a,29b,29cは固定接点部材27の固定接点27a,27b,27cに接触していない。
【0041】
そして、前記押しボタン73を押し下げると、プランジャ50が押し下げられ、コイルバネ49が引き伸ばされ、支持部12,13を支点としてリンク部材31,32が回動する。このため、回動リンク機構部30のリンク部材31,32が押し下げられ、連結部材33が持ち上げられる。この結果、リンク部材31が可動接点部材28の可動接触片29の自由端部を押し下げる。そして、可動接点29a,29b,29cが固定接点27a,27b,27cに接触して回路を閉成する。このため、外部回路に制御信号が流れ、LED21に流れる電流が遮断される一方、LED61に電流が流れて点灯する。前記LED61から放射された光は導光板70の側端面から入射し、反射して外向面に放射され、拡散シート71,文字シート72を通過して押しボタン73から放射される。
特に、導光板70から内向面側に漏れた光は反射シート65に反射して外向面側に放射される。このため、発光効率の良い自己照光型押しボタンスイッチが得られる。
【0042】
ついで、前記押しボタン73の押し下げを解除すると、可動バネ部材40のコイルバネ49のバネ力でリンク部材31,32が内側に引っ張られ、谷折り状態に復帰する。
【0043】
第3実施形態の変形例として、例えば、固定接点部材27および可動接点部材28の上下を逆に配置し、リンク部材31で可動接触片29の自由端部を押し下げ、接点を開離させることにより、制御回路を切り替えるようにしてもよい。
また、前記反射シート65の代わりに、LED21の真上に位置する領域を濃度の濃いインクで印刷するとともに、前記領域からインク濃度に勾配をつけて印刷することにより、光の透過率を均一にする拡散シートを使用してもよい。
【0044】
第4実施形態に係る押しボタンスイッチは、図16および図17に示すように、前述の第1実施形態とほぼ同様であり、主たる相違点はプリント基板20に2個の発光素子であるLED21,21を表面実装して並設した点である。そして、プランジャ50は、その開口部51に格子状の通光規制部52を形成するとともに、前記LED21,21に対向する位置に2つの遮蔽部53a,53aを並設してある(図17B)。また、前記遮蔽部53a,53aの間には仕切り壁53dが設けられている。前記LED21,21の光の相互干渉を防止し、均一な輝度を確保するためである。
なお、第4実施形態の固定接点部材27,可動接点部材28、および、可動バネ部材40は前述の第3実施形態と同様であるので、同一部分には同一番号を付して説明を省略する。
本実施形態によれば、2個のLED21,21を使用することにより、より広い操作面を有する押しボタンを、均一に照光できる押しボタンスイッチが得られるという利点がある。
【実施例1】
【0045】
実施形態1に係る押しボタンスイッチについてLEDだけを点灯させた場合(図16A)の輝度について計算した。計算結果を図16Bに示す。
【0046】
図16Bから明らかなように、輝度を示す曲線が滑らかであり、中央部が著しく明るくなる、いわゆる目玉現象を生じないことが判った。
【実施例2】
【0047】
また、図16Cに示すように、導光板の側方に配置したLED(図示せず)だけを点灯することにより、輝度の分布を計算した。計算結果を図16Dに示す。
【0048】
図16Dから明らかなように、小さな四角形に囲まれた領域の輝度と、それ以外の領域の輝度とが近似しており、光の漏れが少ないことが判った。
【0049】
[比較例1]
前記プランジャに通光規制部を設けず、単に貫通孔を設けた場合(図17A)について、前述の実施例1と同一の条件下で計算した。計算結果を図17Bに示す。
【0050】
図17Bから明らかなように、輝度を示す曲線が中央で急激に増大していることから、中央部が著しく明るくなり、いわゆる目玉現象を生じることが判った。
【0051】
[比較例2]
また、図17Cに示すように、導光板の側方に配置したLED(図示せず)だけを点灯することにより、輝度の分布を計算した。計算結果を図17Dに示す。
【0052】
図17Dから明らかなように、小さな四角形に囲まれた領域の輝度と、それ以外の領域の輝度との差が実施例2よりも大きく、光の漏れが多いことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0053】
前述の実施形態に係る押しボタンスイッチに限らず、他の押しボタンスイッチに適用してもよい。
特に、前述の実施形態においては、第1発光素子と第2発光素子とを同時に点灯させて使用してもよい。
また、第1発光素子は押しボタンの中央部を照光する場合に限らず、中央周辺部および/または隅部を照光するようにしてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
10 箱形ベース
20 プリント基板
21 LED
27 固定接点部材
28 可動接点部材
30 回動リンク機構部
31 リンク部材
32 リンク部材
33 連結部材
40 可動バネ部材
41 開口部
42 可動接触片
43 可動接触片
44 係合爪部
45 係合爪部
50 プランジャ
51 開口部
52 通光規制部
53a 遮蔽部
53b リブ
53a リブ
60 帯状プリント基板
61 LED
65 反射シート
66 通光規制部
70 導光板
71 拡散シート
72 文字シート
73 押しボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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