特許第6248833号(P6248833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248833
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】採便容器
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20171211BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   G01N1/04 G
   G01N33/48 G
   G01N1/04 J
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-139351(P2014-139351)
(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公開番号】特開2016-17788(P2016-17788A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】四方 正光
(72)【発明者】
【氏名】高岡 直子
【審査官】 土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−524063(JP,A)
【文献】 実開平02−088170(JP,U)
【文献】 実開平02−079460(JP,U)
【文献】 中国特許出願公開第102798542(CN,A)
【文献】 特開平10−260116(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/141103(WO,A1)
【文献】 特開平08−193996(JP,A)
【文献】 実開平05−059309(JP,U)
【文献】 実開平05−006367(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00〜1/44、33/48〜33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便を保持する開口を備えた採便部と、
最先端部に前記開口がくるように前記採便部をその先端で保持する採便スティックと、
前記採便スティックの基端を保持するスティックホルダと、
前記採便部及び前記採便スティックを収容する空間を内部に有する採便容器本体であって、一端側に前記採便スティックを先端側から挿入させる挿入口を有し、前記採便部及び採便スティックを内部に収容した状態で前記スティックホルダを前記一端側で着脱可能に装着させる構造を有する採便容器本体と、
前記採便容器本体の他端側の壁面を貫通して先端が該採便容器本体内に挿入され、前記採便容器本体から離脱可能に設けられた採取針と、
を備え、
前記採便容器本体の前記一端側に前記スティックホルダが装着されたときに、前記採便容器本体内に収容された前記採便部の前記開口内に前記採取針の先端が挿入されるように構成されている採便容器。
【請求項2】
前記採便容器本体の一端側に前記スティックホルダが装着されたときに前記採便部が配置される前記採便容器本体内の位置に、便に存在する菌の死滅を防止する培地が設けられている請求項1に記載の採便容器。
【請求項3】
前記採取針の基端を保持し、前記採便容器本体の他端において、手作業によって前記採便容器本体から前記採取針とともに離脱させることができる状態で設けられた分離部をさらに備えている請求項1又は2に記載の採便容器。
【請求項4】
前記採便容器本体の前記他端側の壁面に設けられた前記採取針を貫通させる貫通穴を、前記採取針が前記採便容器本体から離脱した後に封止する封止部材をさらに備えた請求項1から3のいずれか一項に記載の採便容器。
【請求項5】
前記封止部材は前記採便容器本体の前記他端側に装着されるキャップである請求項4に記載の採便容器。
【請求項6】
前記採便容器本体の前記キャップが装着される部分は円柱形状となっており、その外周面に前記キャップの内周面に設けられたネジと螺合するネジが設けられ、前記キャップを回転させることにより該キャップを前記採便容器本体の前記他端に装着するようになっている請求項5に記載の採便容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検便に供する大便を採取して保存しておくための採便容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大腸菌や赤痢菌、サルモネラ菌などの食中毒菌の存在を検便によって検査する場合、一般的に培養法と呼ばれる方法が採られる。培養法は、採取された便の一部を寒天培地に塗り広げて培養し、菌のコロニー形成の有無を検査することで便に対象菌が含まれるかどうかを判断するものである。
【0003】
通常、検体である便は検査を受ける各個人の自宅で専用のスティックを用いて採取され、そのスティックごと所定の容器に収容される(例えば、特許文献1参照。)。便を採取するためのスティックは、便が採取しやすい形状でかつ寒天培地に塗布しやすいような形状になっている。採取した便の中に含まれる菌を生かしておく必要があるため、スティックを収容する容器の中にはゲル状の培地が設けられている。
【0004】
食中毒菌の検査は、近年、培養法に代わってPCR技術を用いた遺伝子検査法に移行しつつある。検便による検査は、感染症の確定診断を行なうだけでなく、感染していない人を迅速にスクリーニングすることも目的として行われる。
【0005】
スクリーニングを行なう検査機関の中には1日で10000個以上の検体を処理する機関もある。多くの検体のスクリーニングを行なう場合、高感度検出というPCRの特性を生かして複数(例えば50個)の検体を一つにまとめてPCR反応処理を同時に行なうことで、PCR反応の処理数を減らして迅速な検出を行なうという方法が採られる。陽性検体が出た場合は、菌が生きているかどうかを確認するために培養法によって再検査を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−276311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
検便を行なう検査機関では、先端に便の付着したスティックを容器から取り出し、そのスティックの先端に付着した便の一部を爪楊枝などで採取し、検体処理液の中に添加するという操作が行われる。かかる操作の際、検査を行なう作業者は容器からスティックを取り出した後、容器と爪楊枝とを持ち替える必要がある。多数の検体を処理する場合は、かかる操作が煩雑になり、すべての検体を処理するために多大な時間を要する。また、スティックからの便の採取に使用する爪楊枝などの道具が汚染されていないことも重要となるため、その管理も必要である。
【0008】
そこで、本発明は、検便用のスティックの先端に採取された便の一部を容易に採取することができる採便容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる採便容器は、便を保持する開口を備えた採便部と、最先端部に開口がくるように採便部をその先端で保持する採便スティックと、採便スティックの基端を保持するスティックホルダと、採便部及び採便スティックを収容する空間を内部に有する採便容器本体であって、一端側に採便スティックを先端側から挿入させる挿入口を有し、採便部及び採便スティックを内部に収容した状態でスティックホルダを一端側で着脱可能に装着させる構造を有する採便容器本体と、採便容器本体の他端側の壁面を貫通して先端が採便容器本体内に挿入され、採便容器本体から離脱可能に設けられた採取針と、を備え、採便容器本体の一端側にスティックホルダが装着されたときに、採便容器本体内に収容された採便部の開口内に採取針の先端が挿入されるように構成されている。
【0010】
採便容器本体の一端側にスティックホルダが装着されたときに採便部が配置される採便容器本体内の位置に、便に存在する菌の死滅を防止する培地が設けられていることが好ましい。採便容器本体内に培地が設けられていることで、採取した便に存在する菌を死滅させることなく保管することができる。
【0011】
好ましい実施の態様では、採取針の基端を保持し、採便容器本体の他端において、手作業によって採便容器本体から採取針とともに離脱させることができる状態で設けられた分離部をさらに備えている。これにより、作業者が採取針を採便容器本体から容易に取り出すことができ、検体の採取効率が向上する。
【0012】
採便容器本体の他端側の壁面に設けられた採取針を貫通させる貫通穴を、採取針が採便容器本体から離脱した後に封止する封止部材をさらに備えていることが好ましい。そうすれば、採取針を取り出した後の採便容器本体内の便の乾燥や採便容器本体内に設けられた培地の漏出などを防止することができる。
【0013】
前記封止部材の一例として、採便容器本体の他端側に装着されるキャップが挙げられる。
【0014】
上記の場合における好ましい実施の態様は、採便容器本体のキャップが装着される部分は円柱形状となっており、その外周面にキャップの内周面に設けられたネジと螺合するネジが設けられ、キャップを回転させることにより該キャップを採便容器本体の他端に装着するようになっているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の採便容器では、採便部及び採便スティックを内部に収容した状態で、採便スティックを保持するスティックホルダを一端側で着脱可能に装着させる構造を有する採便容器本体と、採便容器本体の他端側の壁面を貫通して先端が採取便収容部内に挿入され、採便容器本体から離脱可能に設けられた採取針と、を備え、採便容器本体の一端側にスティックホルダが装着されたときに、採便容器本体内に収容された採便部の開口内に採取針の先端が挿入されるように構成されているので、採便部に便を採取した後、スティックホルダを採便容器本体の一端に装着するだけで、採取針の先端が採便スティック先端の採便部の開口内に挿入され、採取された便と接触する。したがって、採取針を採便容器本体から離脱させるだけで、スティックホルダ先端の採便部から便の一部を採取することができるので、検体の採取作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】採便容器の一実施例を示す正面図である。
図2】同実施例の採便容器本体から採便スティックを取り出した状態を示す図であり、(A)は採便容器本体から取り出した採便スティック、(B)は採便容器本体である。
図3】同実施例の採便容器本体から採取針を取り出した状態を示す図である。
図4】同実施例の採便スティック先端の採便部の例を示す図である。
図5】同実施例の採便容器本体から採取針を取り出す構造を説明するための図である。
図6】同実施例の採便容器本体内に培地が設けられている状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
採便容器の一実施例について図1から図3を用いて説明する。図1図3では内部構造がわかるように透視した状態に描かれている。
【0018】
この採便容器2は、底をもつ筒状の採便容器本体4、採便容器本体4の一端側の開口を閉じるスティックホルダ6、スティックホルダ6に取り付けられた採便スティック8及び採便容器本体4の他端側に設けられた採取針18を備えている。便の採取は採便スティック8を用いて行ない、採取した便を採便スティック8ごと採便容器本体4に収容して保管する。図1においてはこの採便容器2の構造を理解しやすくするために培地の図示を省略しているが、図6に示されているように採便容器本体4内には培地32が設けられ、採便スティック8により採取された便の菌の死滅を防止しながら保管することができるようになっている。
【0019】
採便スティック8は棒状の部材であり、その先端に便を採取するための採便部10が設けられている。採便部10の先端に便を保持するための開口10aが設けられており、この採便部10の先端を便に突き刺すことで開口10aに便が採取されるようになっている。採便スティック8の基端はスティックホルダ6に保持されており、スティックホルダ6と採便スティック8は一体をなしている。
【0020】
採便スティック8の先端に設けられている採便部10は、便を採取して保持することができる開口10aを有する形状であればいかなる形状であってもよい。例えば、図4(A)に示された例では、採便スティック8の先端に円板20が固定され、その円板20のさらに先端側にフレーム22によって円板20よりも小さい外径のリング24が取り付けられている。リング24の内側が開口10aをなし、フレーム22とリング24で囲われた空間で便を保持するようになっている。また、図4(B)に示された例では、先端側へいくほど外径が小さくなる形状の部材26の先端面に凹部28を有し、その凹部28の開口10aで便を採取して保持するようになっている。
【0021】
図1から図3に戻って、スティックホルダ6は、後述する採便容器本体4の一端部4a(図1から図3において上側の端部)に被せることによって採便容器4の挿入口4aを封止することができるように、採便容器本体4の一端部を収容する凹部6aを備えている。スティックホルダ6が採便容器本体4の一端に装着されたときに採便スティック8が採便容器本体4内に収容されるように、採便スティック8の基端はスティックホルダ6の凹部6aの底面6bに固定されている。
【0022】
採便容器本体4は、一端側に採便スティック8を挿入するための挿入口4aを有し、他端側が閉じられた、例えば略円筒状の容器である。採便容器本体4の一端部4bはスティックホルダ6の凹部6aの内周面6cと略同一形状を有し、この一端部4bがスティックホルダ6の凹部6aに嵌め込まれることで採便容器本体4とスティックホルダ6とが一体化されるようになっている。採便容器本体4の形状は円筒形状に限定されず、一端側の挿入口4aをスティックホルダ6によって封止することができ、それによって採便スティック8を収容することができる容器をなす形状であれば、角筒状など、いかなる形状であってもよい。
【0023】
なお、採便容器本体4とスティックホルダ6の一体化をなす構造はこれに限定されない。例えば、採便容器本体4の一端部側とスティックホルダ6側のそれぞれに互いに螺合するネジが設けられ、そのネジを螺合させることによって採便容器本体4とスティックホルダ6の一体化をなすものであってもよい。
【0024】
採便容器本体4の他端側(図1から図3において下側)の面の中央部に突起12が設けられ、その突起12の先端に分離部16が設けられている。分離部16は突起12と対抗する側の面で採取針18を保持している。採取針18の先端部は、採便容器本体4の他端側壁面及び突起12を貫通して設けられた貫通穴14を介して採便容器本体4内に挿入されている。貫通穴14は円形の穴であり、その内径は採取針18の太さよりも大きい。採取針18は採便容器本体4の一端に装着されたスティックホルダ6から採便容器本体4内へ伸びた採便スティック8先端の採便部10に達し、採取針18の先端が採便部10の開口10aに保持された便に接するようになっている。
【0025】
分離部16は突起に固着されているか、例えば図5(A)及び(B)に示されているように、採便容器本体4に対して捻るなど、手作業によって容易に採便容器本体4から離脱させることができるようになっている。分離部16を離脱させた後でも、突起12は採便容器本体4側に残る。図5の例では、分離部16は平板形状となっているが、例えば球状など作業者が手で保持して捻るなどの作業がし易い形状であれば、いかなる形状であってもよい。
【0026】
採取針18は分離部16と一体をなしているため、分離部16を突起12から離脱させることで採取針18を採便容器本体4から引き抜くことができる。採便容器本体4内において採取針18の先端が採便部10の開口に保持された便に接するようになっているため、分離部16を突起12から離脱させて採取針18を採便容器本体4から引き抜くだけで、採便スティック8により採取された便の一部を容易に採取することができる。
【0027】
採便容器本体4の他端側壁面に設けられた貫通穴14は、採便容器本体4内の便の乾燥や培地の漏出を防止するために、採取針18が引き抜かれた後で封止されるようになっていることが好ましい。図5の例では、突起部12の外周面にネジを設け、そのネジと螺合するネジが内面30aに設けられたキャップ30で採取針18が引き抜かれた後の貫通穴14を封止する方法が用いられている。別の方法としては、突起部12と分離部16との接合部分に例えばプラスチックパラフィンフィルムなどの自己融着性のフィルムを巻いておき、分離部16が突起部12から捩じ切られたときに自己融着性のフィルムが自動的に貫通穴14を封止するようにしておくことが挙げられる。
【0028】
なお、突起部12は必ずしも設けられている必要はなく、採便容器本体4の他端面に直接に分離部16が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0029】
2 採便容器
4 採便容器本体
4a 挿入口
4b 採便容器本体の一端部
6 スティックホルダ
6a 凹部
6b 凹部底面
6c 凹部内周面
8 採便スティック
10 採便部
10a 開口
12 突起
12a 突起外周面
14 貫通穴
16 分離部
18 採取針
30 キャップ
30a キャップ内周面
32 培地
図1
図2
図3
図4
図5
図6