特許第6248845号(P6248845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248845
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】乗物用シートの跳ね上げ機構
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/30 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   B60N2/30
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-147397(P2014-147397)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2016-22808(P2016-22808A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永安 秀隆
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−128938(JP,U)
【文献】 特開2002−321552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/30
B60N 2/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートをフロアに対して回転により跳ね上げられるようにする乗物用シートの跳ね上げ機構であって、
乗物本体に取り付けられる固定部と、
前記乗物用シートに取り付けられる可動部と、
前記可動部を前記固定部に対して回転させられる状態に連結する回転連結部と、
前記乗物用シートを前記フロア上から跳ね上げた位置にロック可能なロック構造と、を有し、
前記ロック構造が、前記固定部に設けられたロックバネと、前記可動部に設けられたロック溝と、有し、前記可動部の跳ね上げによって前記ロックバネが附勢により前記ロック溝に嵌合して前記可動部の動きをロックする構成とされており、
前記ロックバネを前記ロック溝との嵌合状態から外す解除操作が、前記固定部に取り付けられた解除レバーの操作によって前記ロックバネを退避方向へ曲げ撓ませることで行われるようになっており、
前記ロック溝が、前記可動部の回転を可動範囲内の複数箇所でロックできるように複数箇所に形成されており、
前記ロックバネは、前記可動部が前記フロア上から所定の跳ね上げ位置まで跳ね上げられる途中領域までは前記解除レバーに繋がれた回転カムの平坦面に当接して前記各ロック溝内への附勢による入り込みが規制された状態として保持され、前記ロックバネは、前記可動部が前記所定の跳ね上げ位置まで跳ね上げられる動きにより前記可動部に設けられたキック部材が前記回転カムを押し回して前記平坦面との当接状態から外されて前記各ロック溝内に入り込める状態へと切り換えられ、該切り換えにより、前記ロックバネは、前記乗物用シートが前記所定の跳ね上げ位置から前記フロア上に落とし込まれる過程で横切る前記各ロック溝内にそれぞれ順番に入り込める状態となって前記可動部の回転を複数の位置でロックできる状態となる乗物用シートの跳ね上げ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートの跳ね上げ機構に関する。詳しくは、乗物用シートをフロアに対して回転により跳ね上げられるようにする乗物用シートの跳ね上げ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用のシートにおいて、その不使用時に、フロア上から横に跳ね上げて格納できるようになっているものが知られている(特許文献1)。上記シートは、上記格納位置に跳ね上げられることにより、その所定箇所に設けられたロック機構が車体側壁に設けられたストライカにロックして、格納位置に保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−195098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術では、フロア上から跳ね上げられるシートとその跳ね上げ先となる車体側壁との間に互いに係合するロック機構とストライカとが設けられる構成であるため、各部品の組み付け位置や跳ね上げ位置の誤差によるロック不良が生じやすい構成となっている。本発明は、上述した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、乗物用シートの跳ね上げ機構にロック不良の出にくいロック構造を設定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の乗物用シートの跳ね上げ機構は次の手段をとる。
【0006】
第1の発明は、乗物用シートをフロアに対して回転により跳ね上げられるようにする乗物用シートの跳ね上げ機構である。この乗物用シートの跳ね上げ機構は、乗物本体に取り付けられる固定部と、乗物用シートに取り付けられる可動部と、可動部を固定部に対して回転させられる状態に連結する回転連結部と、乗物用シートをフロア上から跳ね上げた位置にロック可能なロック構造と、を有する。ロック構造は、可動部の回転により可動部と固定部との間で互いに相対運動する関係となる二部材のうちの一方に設けられたロックバネと、他方に設けられたロック溝と、有する。ロック構造は、可動部の跳ね上げによってロックバネが附勢によりロック溝に嵌合して可動部の動きをロックする構成とされている。
【0007】
この第1の発明によれば、ロック構造が跳ね上げ機構の固定部と可動部との間に設けられることで、ロック構造が回転連結部に近い位置でロック作動する構成となる。これにより、乗物用シートの各構成部品間に組み付け位置や跳ね上げ位置のズレが生じても、これらのズレによる誤差がロック構造に影響しにくくなるため、ロック構造を安定した形でロック作動させることができる。上記ロック構造は、ロックバネが直接、そのバネ附勢力によってロック溝内に嵌合して可動部の動きをロックする、少ない部品点数で構成される。
【0008】
第2の発明は、上述した第1の発明において、次の構成とされているものである。ロックバネが固定部に設けられている。ロックバネをロック溝との嵌合状態から外す解除操作が、固定部に取り付けられた解除レバーの操作によってロックバネを退避方向へ曲げ撓ませることで行われるようになっている。
【0009】
この第2の発明によれば、可動部の回転によって乗物用シートが跳ね上げられても、ロックバネを解除操作するための解除レバーが定位置(固定部)で動かない構成となるため、ロックバネの解除操作を定位置で簡便に行えるようになる。また、可動部側の部品点数が増大しないため、可動部側の重量を増大させないようにすることができる。
【0010】
第3の発明は、上述した第2の発明において、次の構成とされているものである。ロック溝が、可動部の回転を可動範囲内の複数箇所でロックできるように複数箇所に形成されている。ロックバネは、可動部が所定の跳ね上げ位置まで跳ね上げられる途中領域では、解除レバーに繋がれた回転カムの平坦面に当接して各ロック溝内への附勢による入り込みが規制された状態とされ、可動部が所定の跳ね上げ位置まで跳ね上げられる動きにより、他方に設けられたキック部材が回転カムを押し回してロック溝内への入り込みが許容される状態に切り換えられて、乗物用シートを所定の跳ね上げ位置からフロア上に落とし込むときに各ロック溝内に段階的に入り込んで可動部の回転を所々でロックできるようになっている。
【0011】
この第3の発明によれば、ロック溝が複数箇所に形成されて、可動部の回転を可動範囲内の複数箇所でロックできるようになっていても、乗物用シートを跳ね上げるときは乗物用シートを跳ね上げた位置でしかロックせず、乗物用シートをフロア上に落とし込むときに段階的に複数箇所でロックしながら落とし込めるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の乗物用シートの跳ね上げ機構の概略構成を表した斜視図である。
図2】乗物用シートの着座使用状態を表した斜視図である。
図3】跳ね上げ機構の分解斜視図である。
図4】跳ね上げ機構の跳ね上げ前の状態を車両後部側から模式的に見た状態図である。
図5】跳ね上げ機構の跳ね上げ途中の状態図である。
図6】跳ね上げ機構が跳ね上げ位置でロックされた状態図である。
図7】解除レバーの操作により跳ね上げ機構のロックが解除された状態図である。
図8】乗物用シートを跳ね上げ位置からフロア上に落とし込む様子を表した斜視図である。
図9】実施例2の乗物用シートの跳ね上げ機構の概略構成を表した模式図である。
図10】解除レバーを解除保持位置まで回した状態を表した状態図である。
図11】跳ね上げ機構が跳ね上げられて解除レバーがキック部材と当接した状態を表した状態図である。
図12】跳ね上げ機構が更に跳ね上げられて解除レバーがロック可能位置へと押し戻された状態図である。
図13】跳ね上げ機構が跳ね上げ位置でロックされた状態図である。
図14】解除レバーの操作により跳ね上げ機構のロックが解除された状態図である。
図15】乗物用シートが跳ね上げ位置からフロア上に落とし込まれる途中でロックされた状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
始めに、実施例1の跳ね上げ機構6の構成について、図1図8を用いて説明する。本実施例の跳ね上げ機構6は、図1に示すように、いわゆるミニバンタイプの自動車の右側のリヤシート1に適用されている。上記リヤシート1は、図2に示すように、1人掛け用の座席として構成されており、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭凭れとなるヘッドレスト4と、を備えた構成となっている。
【0015】
上述したリヤシート1は、通常、座席として使用される時には、シートクッション3がフロアF上に倒し込まれた状態にロックされており、シートバック2がシートクッション3の後部から僅かに後傾した起立姿勢にロックされた状態とされている。ヘッドレスト4は、シートバック2の上部に固定された状態とされている。より詳しくは、上述したシートクッション3は、その車両外側となる図示右側の側部箇所が、上述した跳ね上げ機構6を介してフロアF上に跳ね上げ回転可能に連結された状態とされている。
【0016】
そして、シートクッション3は、その車両内側となる図示左側の底部箇所が、同底部箇所から下方側へ延びる脚板3Bを介して、その前後2箇所の下端部に設けられたフック3CによりフロアF上の各ストライカSに着脱可能に連結された状態とされている。これにより、シートクッション3は、常時は、上述した跳ね上げ機構6による車両外側に向けての跳ね上げ回転が、上述した各フック3Cと各ストライカSとの連結により規制されて、フロアF上に倒し込まれた状態に保持された状態となっている。上述したシートクッション3の跳ね上げの規制状態は、上述した各フック3Cが後述するシートバック2の前倒れ回転に伴い各ストライカSとの連結状態から外されることによって解除されるようになっている。
【0017】
シートバック2は、その左右両側の下部箇所が、それぞれリクライナ5を間に介してシートクッション3の左右両側の後部箇所に連結された状態とされている。これにより、シートバック2は、常時は、上述した各リクライナ5の回転止め構造によって、その背凭れ角度が固定された状態に保持されるようになっている。上述した各リクライナ5によるシートバック2の背凭れ角度の固定状態は、シートクッション3の車両内側寄りの後部箇所に設けられた解除ストラップ3Aが後方側へ引かれる操作によって解除されるようになっている。この解除操作によって、シートバック2は、シートクッション3との間に掛着された図示しないバネの附勢力によって、シートクッション3の上面部に畳み込まれる位置まで前側に倒し込まれるようになっている。
【0018】
そして、上記シートバック2の前倒れ動作によって、上述したシートクッション3の車両内側の側部箇所をフロアF上に固定している各フック3Cが、それぞれ、上記シートバック2の前倒れ動作によって操作される図示しない動作機構の作動によって各ストライカSとの連結状態から一斉に外されるよう操作されるようになっている。これによって、リヤシート1は、シートバック2をシートクッション3の上面部に折り畳んだ状態で、上述した跳ね上げ機構6を中心に車体側壁Wに向けて跳ね上げることができる状態となる。
【0019】
上述したリヤシート1の車体側壁Wに向けての跳ね上げ回転は、跳ね上げ機構6に組み付けられた跳ね上げバネ6Dのバネ力によってアシストされながら行えるようになっている。また、上述したリヤシート1は、そのフロアF上からの跳ね上げ回転に伴い、シートクッション3の車両内側の底部箇所から下方側へ延びるように立設されていた脚板3Bが、シートクッション3の底面部に沿って折り畳まれるように引き込み操作されるようになっている(図1参照)。
【0020】
上述した脚板3Bは、図8に示すように、上記リヤシート1が車体側壁Wの跳ね上げ位置からフロアF上に落とし込まれる動きによって、再び、シートクッション3の底部箇所から下方側へ延びるように立設された状態に戻されるようになっている。そして、上述した脚板3Bの前後2箇所の下端部に設けられた各フック3Cは、リヤシート1がフロアF上に落とし込まれる動きに伴って、フロアF上の各ストライカSに押し込まれるように操作されて、その操作力によって各ストライカSに引っ掛けられるように押し回されて、各ストライカSと連結されるようになっている(図1参照)。このように、リヤシート1は、車体側壁Wの跳ね上げ位置からフロアF上に落とし込まれる動きのみによって、フロアF上にロックされて跳ね上げが規制された状態に戻されるようになっている。
【0021】
ところで、上述したリヤシート1の跳ね上げ回転は、図1及び図6に示すように、上述した跳ね上げ機構6によって、車体側壁Wと形状を重ねるほぼ垂直な角度位置まで跳ね上げられるようになっている。そして、上記リヤシート1は、上記跳ね上げ位置まで跳ね上げられることにより、跳ね上げ機構6に設けられたロック構造10によって、それ以上の跳ね上げ回転とその逆の倒れ込み回転とがそれぞれ規制されるようにロックされるようになっている。
【0022】
以下、上述した跳ね上げ機構6の具体的な構成について詳しく説明する。跳ね上げ機構6は、図3図6に示すように、固定部6Aと、可動部6Bと、回転軸6Cと、跳ね上げバネ6Dと、ロック構造10と、を有する構成となっている。ここで、回転軸6Cが本発明の「回転連結部」に相当する。固定部6Aは、フロアF上に図示しないボルト締結等の固定手段によって一体的に固定されて設けられている。可動部6Bは、シートクッション3の車両外側の側部箇所に、図示しないボルト締結等の固定手段によって一体的に固定されて設けられている。回転軸6Cは、上述した可動部6Bを固定部6Aに対して回転させられる状態に連結している。跳ね上げバネ6Dは、可動部6Bを固定部6Aに対して跳ね上げ方向に回転附勢する状態となるように設けられている。
【0023】
より具体的に説明すると、固定部6Aは、断面L字状の形に折り曲げられた鋼板材により形成されており、その底面部がフロアF上にボルト締結されて固定された状態として設けられている。上記固定部6Aは、その前後側の各縁部も、それぞれ、車両内側に折り曲げられた形状とされている。そして、上記固定部6Aの前後側の各折り曲げられた面部の下端部も、更に前方或いは後方にそれぞれ折り曲げられて、フロアF上にボルト締結されて固定された状態とされている。
【0024】
可動部6Bは、断面J字状の形に折り曲げられた鋼板材により形成されており、J字の平面部分にシートクッション3の車両外側の骨組み構造があてがわれてボルト締結により一体的に固定された状態とされている。上記可動部6Bは、そのJ字の湾曲面領域の前後側の各縁部に折り曲げられて形成された前後側の各面部が、それぞれ、上述した固定部6Aの前後側の折り曲げられた各縁部面に前後方向に形状を重ね合わされるようにセットされて、これらに貫通するように回転軸6Cが前後方向に挿通されることにより、固定部6Aに対してその前後2箇所の位置でそれぞれ回転可能に連結された状態とされている。上述した回転軸6Cは、可動部6Bに対して一体的に結合されており、固定部6Aに対して回転可能に連結された状態とされている。
【0025】
上記連結により、可動部6Bが固定部6Aに対して、回転軸6Cのまわりに回転することができるように連結された状態とされている。具体的には、上記可動部6Bは、図4に示すように、固定部6AのL字の開口断面に蓋をする形に垂下した初期位置と、図6に示すように、上記初期位置からほぼ水平角度の位置まで起こし上げられた跳ね上げ位置と、の間の約90度の角度範囲内を起倒回転することができるようになっている。上記可動部6Bは、上述した図4の初期位置にてシートクッション3をフロアF上に落とし込ませた状態をとるようになっている。また、上記可動部6Bは、上述した図6の跳ね上げ位置にてシートクッション3をフロアF上から車体側壁Wに向けてほぼ垂直な角度位置まで跳ね上げた状態をとるようになっている。
【0026】
跳ね上げバネ6Dは、トーションバネにより構成されており、そのコイル状に巻かれた中央部が上述した回転軸6Cに巻装された状態として設けられている。そして、上記跳ね上げバネ6Dは、その一端が固定部6Aに対して弾発力の発揮方向に押し当てられ、他端が可動部6Bに対して弾発力の発揮方向に押し当てられた状態として、可動部6Bに対して常時、固定部6Aから跳ね上げる方向の附勢力をかけた状態とされている。上記附勢力により、リヤシート1をフロアF上から跳ね上げる際のアシスト力が付与されるようになっている。
【0027】
次に、上記跳ね上げ機構6に設けられたロック構造10について説明する。図3図6に示すように、ロック構造10は、上述した回転軸6Cに一体的に結合された略円板形状のロックプレート11と、固定部6Aの底面部上に取り付けられたロックバネ12と、ロックバネ12をロックの解除方向に押圧する回転カム13と、回転カム13を操作する解除レバー14と、を有する構成となっている。
【0028】
上述したロックプレート11は、図3に示すように、上述した回転軸6Cに軸方向の一方側から挿通された後、溶接されて一体的に組み付けられた状態とされている。これにより、ロックプレート11は、可動部6B及びこれ(可動部6B)に一体的に組み付けられた回転軸6Cと一体的となって固定部6Aに対して回転するようになっている(図4図6参照)。上述したロックプレート11の外周面上の一部には、ロックバネ12のロック部12Aを受け入れ可能なロック溝11Aが形成されている。上記ロック溝11Aは、ロックプレート11の中心部(回転軸6C)に向かって寸胴な形に窪んだ形状とされている。
【0029】
ロックバネ12は、線材がハット型の断面形状のように折り曲げられたトーションバネによって形成されている。上記ロックバネ12は、そのハット型の断面形状のように折り曲げられた両端部が、更に、上方側に僅かに跳ね上げられる形に折り曲げられて、固定部6Aの底面部上に設けられたブラケット6A1上に差し込まれて固定された状態として設けられている(取付部12B)。これにより、ロックバネ12は、自由状態であれば固定部6Aの底面部上から起立した形をとるように支えられた状態とされている。しかし、ロックバネ12は、その直上部に円板状のロックプレート11が設けられていることにより、常時は、上述したロック部12Aがロックプレート11の外周面に押し当てられる位置まで傾倒方向に押し撓まされた状態として保持されるようになっている。
【0030】
上記ロックバネ12は、このような構成とされていることにより、可動部6Bが上記図4に示す初期位置から跳ね上げられる動きに伴って、図5に示すように、ロック部12Aをロックプレート11の外周面上に押し当てた状態を維持しながら同外周面上に沿って摺動していくようになっている。そして、上記ロックバネ12は、図6に示すように、可動部6Bが跳ね上げ位置まで跳ね上げられることにより、そのロック部12Aの押し当てられているロックプレート11の外周面位置に上述したロック溝11Aが到達して、そのバネ力によりロック部12Aがロック溝11A内に嵌め込まれるようになっている。この嵌合により、ロックバネ12は、ロックプレート11のそれ以上の跳ね上げ方向の回転と、その逆の戻り方向の回転と、の双方向の回転を規制した状態となる。これにより、ロックプレート11と一体で動く可動部6Bの正逆双方向の回転移動がロックされた状態となる。
【0031】
具体的には、上記ロックバネ12は、上述したロック部12Aがロックプレート11のロック溝11A内に嵌め込まれた状態時には、上記ロック部12Aから固定部6A上のブラケット6A1に取り付けられた各取付部12Bまで延びる各脚部12Cと、ロックプレート11の中心(回転軸6C)からロック溝11Aまで延びる半径方向の線分と、の成す角が90度となる角度姿勢をとるようになっている。このような形態でロックバネ12がロック部12Aをロック溝11A内に嵌合させる構成となっていることにより、ロック溝11Aがロック部12Aに対して、ロックプレート11の回転方向の双方向に側面をあてがえた状態として、回転方向の隙間が少ない状態に嵌合されるようになっている。
【0032】
また、ロックバネ12のロック部12Aがロック溝11A内に嵌め込まれた状態では、上述したロックバネ12の各脚部12Cがロックプレート11の接線方向に延びる構成となるため、ロックプレート11の正逆双方向の回転移動をロックバネ12に大きな曲げの負荷をかけることなく強く受け止めさせることができるようになっている。したがって、上記ロック構造10によって、車体側壁Wに跳ね上げたリヤシート1を、跳ね上げ方向や落とし込み方向にガタ付かせることなく定位置に安定して保持することができる。
【0033】
上記ロック構造10による跳ね上げ機構6の回転ロック状態は、図7図8に示すように、跳ね上げ機構6の後部に設けられた解除レバー14の引き上げ操作を行うことによって解除される。上記解除レバー14は、図3に示すように、連結軸14Aにより固定部6Aの折り曲げられた後側の縁部面に対して回転可能に連結されて設けられている。上記連結軸14Aは、固定部6Aの折り曲げられた後側の縁部面に貫通して差し込まれており、その後端部に解除レバー14が一体的に取り付けられ、前端部には回転カム13が一体的に取り付けられた状態とされている。上記回転カム13は、その前端部に結合された連結軸13Dが固定部6Aの前側の折り曲げられた縁部面に貫通して差し込まれることで、同縁部面に対して回転可能に連結された状態とされている。これにより、回転カム13は、上記前後側の連結軸14A,13Dによって、その前後側で固定部6Aの前後側の縁部面に対して回転可能に連結された状態とされている。
【0034】
このような構成とされていることにより、解除レバー14は、その連結軸14Aを中心とした回転操作を行うことにより、その先に繋がれた回転カム13を一体的に回転操作して、回転カム13によりロックバネ12をロックプレート11のロック溝11Aとの嵌合状態から外すように押し出す操作をするようになっている。具体的には、上記解除レバー14は、上記回転カム13と固定部6Aとの間に掛着された引張バネ14Bにより、常時は、図4図6に示すように図示反時計回り方向に回転操作された状態として、回転カム13をロックバネ12と干渉させることのない回転位置に保持した状態とされている。これにより、回転カム13は、図6に示すように、可動部6Bが跳ね上げ位置まで跳ね上げられた時に、ロックバネ12がロックプレート11のロック溝11A内に入り込む動きを阻害しないようになっている。
【0035】
上記解除レバー14は、上記ロックバネ12がロックプレート11のロック溝11A内に入り込んだ状態から、図7に示すように、連結軸14Aを中心とした図示時計回り方向の回転操作を行うことにより、回転カム13を同方向に回転操作するようになっている。この回転操作により、回転カム13の外周部に形成された突出形状の押圧突起13Aがロックバネ12の各脚部12Cに押し付けられて、ロックバネ12が各脚部12Cを外側へ湾曲させる形に押し撓まされる。これにより、ロックバネ12のロック部12Aがロックプレート11のロック溝11Aから外されて、ロックバネ12による可動部6Bの回転ロック状態が解除される。したがって、上記解除操作後には、図8に示すように、車体側壁Wへ跳ね上げたリヤシート1をフロアF上に落とし込んで元の着座使用状態に戻すことができる。
【0036】
以上をまとめると、本実施例の跳ね上げ機構6は、次のような構成となっている。すなわち、跳ね上げ機構6は、固定部6Aと、可動部6Bと、回転連結部(回転軸6C)と、ロック構造10と、を有する。固定部6Aは、フロアFと一体的な状態に固定される。可動部6Bは、乗物用シート(リヤシート1)と一体的な状態に固定される。回転連結部(回転軸6C)は、可動部6Bを固定部6Aに対して回転させられる状態に連結する。ロック構造10は、可動部6Bの回転により可動部6Bと固定部6Aとの間で互いに相対運動する関係となる二部材のうちの一方(固定部6A)に設けられたロックバネ12と、他方(回転軸6C)に設けられた(ロックプレート11の)ロック溝11Aと、有する。ロック構造10は、可動部6Bの跳ね上げによりロックバネ12が附勢によりロック溝11Aに嵌合して可動部6Bの動きをロックする構成とされている。
【0037】
このように、ロック構造10が跳ね上げ機構6の固定部6Aと可動部6Bとの間に設けられることで、ロック構造10が回転連結部(回転軸6C)に近い位置でロック作動する構成となる。これにより、乗物用シート(リヤシート1)の各構成部品間に組み付け位置や跳ね上げ位置のズレが生じても、これらのズレによる誤差がロック構造10に影響しにくくなるため、ロック構造10を安定した形でロック作動させることができる。上記ロック構造10は、ロックバネ12が直接、そのバネ附勢力によってロック溝11A内に嵌合して可動部6Bの動きをロックする、少ない部品点数で構成される。
【0038】
また、ロックバネ12が固定部6Aに設けられている。ロックバネ12をロック溝11Aとの嵌合状態から外す解除操作が、固定部6Aに取り付けられた解除レバー14の操作によってロックバネ12を退避方向へ曲げ撓ませることで行われるようになっている。このような構成となっていることにより、可動部6Bの回転によって乗物用シート(リヤシート1)が跳ね上げられても、ロックバネ12を解除操作するための解除レバー14が定位置(固定部6A)で動かない構成となるため、ロックバネ12の解除操作を定位置で簡便に行えるようになる。また、可動部6B側の部品点数が増大しないため、可動部6B側の重量を増大させないようにすることができる。
【実施例2】
【0039】
続いて、実施例2の跳ね上げ機構6の構成について、図9図15を用いて説明する。本実施例では、図9に示すように、ロックプレート11の外周面上の円周方向の2箇所にロック溝11Aが形成されており、ロックバネ12を可動部6Bの回転可動範囲の2箇所(跳ね上げ位置と途中位置の2箇所)でロックさせられるようになっている。また、図10に示すように、回転カム13が、ロックバネ12の各脚部12Cを面当接させて外側へ曲げ撓ませた状態に保持可能な平坦面13Bを有する構成とされている。また、図11図12に示すように、回転カム13に、可動部6Bの跳ね上げによって、ロックプレート11側に設けられたキック部材11Bにより押し蹴られる突出部13Cが一体的に設けられている。キック部材11Bは、ロックプレート11と一体的に設けられている。
【0040】
詳しくは、上述した回転カム13に形成された平坦面13Bは、上述した回転カム13の外周面に形成された押圧突起13Aの図示反時計回り方向側に隣接する領域の外周面に形成されている。上記平坦面13Bは、回転カム13の半径方向に対して垂直な方向に面を延ばす平面形状となっており、押圧突起13Aと同じ半径方向の突出長さを備えた構成とされている。このような構成とされていることにより、回転カム13は、図10に示すように、解除レバー14を解除操作方向(図示時計回り方向)に回転操作して、回転カム13を押圧突起13Aがロックバネ12の各脚部12Cに押し当てられた状態となる位置よりも更に回すことによって、上述した平坦面13Bをロックバネ12の各脚部12Cに押し当てた状態にすることができるようになっている。
【0041】
上述した回転カム13は、上述した平坦面13Bがロックバネ12の各脚部12Cに押し当てられた状態となることで、ロックバネ12の各脚部12Cを外側へ曲げ撓ませた状態となり、ロックバネ12からの復元反力を受けても回転しない状態に保たれるようになっている。その理由は、上述したように、平坦面13Bが回転カム13の半径方向に対して垂直な方向に面を延ばす平面形状となっているからである。詳しくは、上記回転カム13は、上述した平坦面13Bがロックバネ12の各脚部12Cに押し当てられて面当接した状態となることで、ロックバネ12の各脚部12Cから平坦面13Bにかけられる復元反力により定位置に保たれるようになっている。これにより、回転カム13は、解除レバー14に操作前の初期位置に向けての図示反時計回り方向の回転附勢力をかけている引張バネ14Bの附勢力に抗して、定位置に保持されるようになっている。
【0042】
上記の状態では、ロックバネ12は、図11に示すように、可動部6Bが跳ね上げられてロックプレート11の1つ目のロック溝11Aがロック部12Aの目の前にきた状態となっても、平坦面13Bによる保持により、ロック部12Aをロック溝11A内に入り込ませることのできない状態(ロック不能状態)に保持される。したがって、可動部6Bを跳ね上げ途中でロックさせることなく図13に示す跳ね上げ位置まで跳ね上げることができる。
【0043】
上述した回転カム13は、可動部6Bが上記図11に示す跳ね上げの途中位置まで跳ね上げられることにより、その突出部13Cに上述したロックプレート11と一体的に設けられたキック部材11Bが当接した状態となる。そして、この位置から更に可動部6Bが跳ね上げられることにより、図12に示すように、上記回転カム13の突出部13Cが上記キック部材11Bによって図示時計回り方向に押し蹴られて、回転カム13が同方向に押し回される。これにより、上記回転カム13の平坦面13Bによってロックバネ12の各脚部12Cがロック不能状態に保持していた状態が解除されて、ロックバネ12がロック部12Aをロックプレート11の外周面に押し当てた状態となる。上述したキック部材11Bによって押し蹴られた回転カム13は、引張バネ14Bの附勢力によって、解除レバー14と共に、操作前の初期位置に戻される。したがって、可動部6Bが図13に示す跳ね上げ位置まで跳ね上げられることにより、ロックバネ12のロック部12Aがロックプレート11の2つ目のロック溝11A内に嵌まり込んで、可動部6Bの正逆双方向の回転がロックされた状態となる。
【0044】
上記ロックバネ12による可動部6Bの回転ロック状態は、図14に示すように、解除レバー14を図示時計回り方向に回転操作することにより、実施例1の図7で示した構成と同じように、回転カム13の押圧突起13Aがロックバネ12の各脚部12Cを外側に押し曲げて解除することができる。したがって、上記解除操作により、可動部6Bを落とし込む方向に回転させることができるようになる。
【0045】
このとき、上記ロックバネ12を外側へ押し撓ませた回転カム13は、解除レバー14の操作力が除去されることにより、ロックバネ12の復元反力と引張バネ14Bのバネ力とによって初期位置へ戻されるようになっている。したがって、図15に示すように、可動部6Bを上記跳ね上げ位置から落とし込むことにより、ロックバネ12のロック部12Aが、その落とし込みの途中位置で目の前にくるロック溝11A内に附勢によって入り込み、可動部6Bの回転を再びロックした状態となる。このような構成となっていることにより、リヤシート1を車体側壁Wの跳ね上げ位置から落とし込む際に、リヤシート1が一気にフロアF上に落とし込まれることなく、段階的に止められながら小刻みに落とし込まれるようになっている。なお、上記ロック溝11Aは、ロックプレート11の外周面上の円周方向の2箇所以上の位置に設けられていてもよい。
【0046】
以上の説明では、リヤシート1を跳ね上げる際に、解除レバー14を予め図12の操作位置(回転カム13の平坦面13Bをロックバネ12の各脚部12Cに面当接させてロック不能状態にする位置)まで操作しておくものについて説明した。しかし、解除レバー14は、必ずしもリヤシート1を跳ね上げる際に上記図12の操作位置まで操作しておかなくても構わない。すなわち、解除レバー14を図11の操作前の初期位置にした状態でリヤシート1を跳ね上げてもよい。その場合には、リヤシート1の跳ね上げの途中位置でロックバネ12を1つ目のロック溝11Aに嵌合させて回転をロックすることができるため、跳ね上げの途中位置で手を離してもリヤシート1がフロアF上に落とし込まれることなく、途中位置に留められるようになる。したがって、リヤシート1を跳ね上げ位置に向けて段階的に係止させながら跳ね上げられるようになる。
【0047】
なお、ロックバネ12を跳ね上げの途中位置でロックさせるロック溝11Aは、ロック溝11A内に受け入れられたロックバネ12を、可動部6Bの更なる跳ね上げの動きによって溝の外側(図示上側)へ逃がせるようなワンウェイの傾斜面を持つラチェット構造にしてもよい。これにより、跳ね上げの途中位置でロックバネ12が途中のロック溝11Aに掛かった後に、わざわざ解除レバー14の操作を行わなくても可動部6Bの跳ね上げを進行させられるようになる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を2つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の乗物用シートの跳ね上げ機構は、自動車のリヤシート以外のシートや、鉄道車両等の自動車以外の車両や航空機・船舶等の他の乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。また、上記跳ね上げ機構は、乗物用シートをフロアに対して跳ね上げ方向に回転させられるようにするものであればよく、乗物用シートを折り畳み状態にすることなく、例えばシートバックを後側にフラットに倒し込んだ状態にして側方などへ跳ね上げるものであってもよい。また、上記跳ね上げ機構による乗物用シートの跳ね上げ方向は、前後方向や隣り合うシートに向けた横方向などであってもよい。
【0049】
また、上記各実施例では、本発明の「回転連結部」に相当する構成として、可動部を固定部に対して単軸まわりに回転させられるように連結する回転軸を例示した。しかし、回転連結部は、可動部を固定部に対して回転させられる状態に連結するものであればよく、例えば、可動部を固定部に対して4節リンク機構の形で回転させられるように連結するものであってもよい。また、ロックバネの形態は、トーションバネの他、種々の形状のバネを適用することが可能である。
【0050】
また、ロック構造は、可動部の回転により可動部と固定部との間で互いに相対運動する関係となる二部材のうちの一方にロックバネが設けられ、他方にロック溝が設けられる構成となっていればよい。「可動部の回転により可動部と固定部との間で互いに相対運動する関係となる二部材」とは、回転軸が可動部に一体に設けられた構成となっている場合には、回転軸或いは可動部と、固定部と、が互いに相対運動する関係となる二部材となる。また、回転軸が固定部に一体に設けられた構成となる場合には、可動部と、回転軸或いは固定部と、が互いに相対運動する関係となる二部材となる。その他、回転連結部がリンク機構で構成される場合には、可動部と固定部とリンク機構との間で相対運動する関係となる二部材が、互いに相対運動する関係となる二部材となる。また、ロック溝は、上記二部材のうちの他方に直接形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 リヤシート
2 シートバック
3 シートクッション
3A 解除ストラップ
3B 脚板
3C フック
4 ヘッドレスト
5 リクライナ
6 跳ね上げ機構
6A 固定部
6A1 ブラケット
6B 可動部
6C 回転軸(回転連結部)
6D 跳ね上げバネ
10 ロック構造
11 ロックプレート
11A ロック溝
11B キック部材
12 ロックバネ
12A ロック部
12B 取付部
12C 脚部
13 回転カム
13A 押圧突起
13B 平坦面
13C 突出部
13D 連結軸
14 解除レバー
14A 連結軸
14B 引張バネ
F フロア
S ストライカ
W 車体側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15