【実施例】
【0019】
図1は、本発明の一実施例としての遠心振子式吸振装置10を備える発進装置1の構成の概略を示す構成図であり、
図2は、遠心振子式吸振装置10の構成の概略を示す構成図であり、
図3〜
図6は、それぞれ、
図2の遠心振子式吸振装置10のA−A断面,B−B断面,C−C断面,D−D断面を示すA−A断面図,B−B断面図,C−C断面図,D−D断面図である。
【0020】
実施例の発進装置1は、図示するように、車両に搭載され、原動機としてのエンジン(内燃機関)からの動力を変速装置としての自動変速機(AT)や無段変速機(CVT)に伝達する装置として構成されている。この発進装置1は、エンジンのクランクシャフトに連結されるフロントカバー(入力部材)3と、フロントカバー3に固定されたポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4と、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5と、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6と、変速装置の入力軸ISに固定されるダンパハブ(出力部材)7と、ダンパハブ7に接続されたダンパ機構8と、フロントカバー3とダンパ機構8とに介在する単板摩擦式または多板摩擦式のロックアップクラッチ機構9と、ダンパ機構8に連結される遠心振子式吸振装置10およびダイナミックダンパ30と、を備える。
【0021】
ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向しており、両者の間には、ポンプインペラ4やタービンランナ5と同軸に回転可能なステータ6が配置されている。また、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ61により一方向に設定されている。ポンプインペラ4とタービンランナ5とステータ6とは、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能を有するトルクコンバータとして機能する。なお、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ61を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させるものとしてもよい。
【0022】
ダンパ機構8は、ロックアップクラッチ機構9のロックアップピストンと一体回転可能なドライブ部材(入力要素)80と、複数の第1コイルスプリング(第1弾性体)81と、複数の第1コイルスプリング81を介してドライブ部材80と係合する中間部材(中間要素)82と、複数の第2コイルスプリング(第2弾性体)83と、複数の第2コイルスプリング83を介して中間部材82と係合すると共にダンパハブ7に固定されたドリブン部材(出力要素)84と、を備える。
【0023】
ロックアップクラッチ機構9は、図示しない油圧制御装置からの油圧により作動する機構であり、ダンパ機構8を介してフロントカバー(入力部材)3とダンパハブ7即ち変速装置の入力軸ISとを連結するロックアップを実行すると共にそのロックアップを解除する。ロックアップクラッチ機構9によりロックアップが実行されると、原動機としてのエンジンからの動力は、フロントカバー3,ロックアップクラッチ機構9,ドライブ部材80,第1コイルスプリング81,中間部材82,第2コイルスプリング83,ドリブン部材84,ダンパハブ7の経路を介して変速装置の入力軸ISに伝達される。このとき、フロントカバー3に入力されるトルクの変動は、主として、ダンパ機構8の第1コイルスプリング81および第2コイルスプリング83により吸収される。
【0024】
ダイナミックダンパ30は、ダンパ機構8のドリブン部材84に連結されており、質量体としてのタービンランナ5と、ドリブン部材84とタービンランナ5とに介在する複数の第3スプリング(第3弾性体)32と、を備える。ここで、「ダイナミックダンパ」は、振動体の共振周波数に一致する周波数(エンジン回転数)で振動体に逆位相の振動を付加して振動を吸収する(減衰させる)機構であり、振動体に対してトルクの伝達経路に含まれないようにスプリングと質量体とを連結することによって構成されている。また、第3スプリングの剛性や質量体の重さを調整することにより、ダイナミックダンパ30を所望の周波数で作用させることができる。このダイナミックダンパ30をダンパ機構8のドリブン部材84に連結することにより、ロックアップ時には、遠心振子式吸振装置10とダイナミックダンパ30との双方によって、ドリブン部材84ひいてはダンパ機構8全体の振動を良好に吸収する(減衰させる)ことができる。
【0025】
遠心振子式吸振装置10は、
図2に示すように、ダンパ機構8の回転要素としてのドリブン部材84(
図1参照)に対して同軸に取り付けられる支持部材(フランジ)11と、それぞれ支持部材11に揺動自在に支持されると共に周方向に(ドリブン部材84や支持部材11の軸心に対する同心円上で)隣り合うよう配置される複数(実施例では3個)の質量体12と、を備える。この遠心振子式吸振装置10では、支持部材11の回転に伴って複数の質量体12が支持部材11に対して揺動することにより、ダンパ機構8のドリブン部材84にドリブン部材84の振動(共振)とは逆位相の振動を付加して振動を吸収する。
【0026】
支持部材11は、例えば鉄などによって形成された金属板にプレス加工を施すなどして形成された環状プレートとして構成されており、図示しないリベットを介してダンパ機構8のドリブン部材84に連結されている。したがって、支持部材11は、ドリブン部材84と同軸で且つ一体に回転する。なお、支持部材11は、ダンパ機構8のドライブ部材80や中間部材82に連結されるものとしてもよい。
【0027】
また、支持部材11は、小径部110と、小径部110から径方向外側に突出すると共に各質量体12を揺動自在に支持する複数(実施例では3つ)の大径部112と、を備える。各大径部112の周方向の端面113は、支持部材11の軸方向(
図2の紙面を貫通する方向)に見て、周方向の外側(質量体12の周方向の端部側)に凸となる断面円弧状の曲面に形成されている。また、各大径部112には、対応する質量体12が予め定められた軌道に沿って移動するよう、その質量体12の2つのガイド開口部125a,125bと共に2つのガイドローラ127をガイドするための、2つのガイド開口部(支持部材側ガイド切欠部)115a,115bが形成されている。ガイド開口部115aとガイド開口部115bとは、それぞれ支持部材11の径方向外側に向けて凸となる曲線を軸線とする左右非対称の長穴として形成されており、且つ、互いに鏡像となる形状に形成されている。なお、ガイド開口部115aとガイド開口部115bとは、左右対称の長穴として形成されるものとしてもよい。ガイド開口部115aとガイド開口部115bとは、1つの質量体12に対して1つずつ、質量体12の揺動中心線(振子支点(発進装置1や遠心振子式吸振装置10の軸心)と作用点とを結ぶ線(
図2の点線参照))に対して対称に間隔をおいて周方向に配置されている。
【0028】
各質量体12は、
図2〜
図6に示すように、支持部材11の軸方向に対向するよう連結される2つの錘としての板体120と、2つの板体120を周方向の両端部で連結する連結部材としての2つのリベット124と、各板体120に形成された2つのガイド開口部(質量体側ガイド切欠部)125a,125bと、ガイド開口部125a,125bと支持部材11のガイド開口部115a,115bとにガイドされて転動する2つのガイドローラ127と、2つの板体120の突出部121jにより形成された取付部121に取り付けられた緩衝部材130と、を備える。
【0029】
各板体120は、鉄などによって形成されており、
図2に示すように、支持部材11の軸方向に見て、支持部材11の大径部の外周に沿うよう略円弧状に湾曲すると共に質量体12の揺動中心線(
図2の点線参照)に対して左右対称となる形状に形成されている。そして、
図2や
図6に示すように、各板体120の周方向の両端部における、周方向の端面122より若干内側で且つ支持部材11の小径部110の外周側(径方向(ドリブン部材84や支持部材11の軸方向に直交する方向で且つこれらの軸心から離間する方向)の外側)には、2つの板体120の連結方向(回転要素としてのドリブン部材84の回転軸と平行な方向における対向する板体120側)に突出する突出部121jが形成されている。2つの板体120は、
図2や
図5,
図6に示すように、突出部121j同士が当接しており、その位置でリベット124により連結されている。
【0030】
各質量体12のガイド開口部125aとガイド開口部125bとは、それぞれ支持部材11の中心(振子支点)に向けて凸となる曲線を軸線とする左右非対称の長穴として形成されており、且つ、互いに鏡像となる形状に形成されている。なお、ガイド開口部125a,125bは、左右対称の長穴として形成されるものとしてもよい。ガイド開口部125aとガイド開口部125bとは、1つの質量体12に対して1つずつ、質量体12の揺動中心線(
図2の点線参照)に対して対称に間隔をおいて周方向に配置されている。
【0031】
各ガイドローラ127は、
図2や
図4に示すように、小径ローラ128と大径ローラ129とが一体化されて構成されている。小径ローラ128は、大径ローラ129の軸方向の両側に突出しており、2つの板体120のガイド開口部125a,125bに転動自在に挿入されて、質量体12即ち2つの板体120により転動自在に支持されている。この小径ローラ128は、基本的には、対応するガイド開口部125a,125bの径方向内側の内周面125sに沿って転動する。また、大径ローラ129は、各質量体12のガイド開口部125a、125bに対応するガイド開口部115a,115bに転動自在に配置されている。これにより、質量体12が支持部材11により揺動自在に支持される。この大径ローラ129は、基本的には、対応するガイド開口部115a,115bの径方向外側の内周面115sに沿って転動する。こうした構成とすることにより、各質量体12は、支持部材11が回転すると、ガイドローラ127を介してガイド開口部125a,125bとガイド開口部115a,155bとによってガイドされながら支持部材11に対して揺動する。
【0032】
各質量体12において、2つの板体120の突出部121jによって形成された各取付部121には、
図2や
図5,
図6に示すように、ゴム材などの弾性体によって形成された緩衝部材130が取り付けられている。ここで、各緩衝部材130は、支持部材11の軸方向に見て、第1辺部131〜第4辺部134を有する台形状の枠体として形成されている。また、各取付部121は、支持部材11の軸方向に見て、各緩衝部材130の第1辺部131〜第4辺部134の内周面131b〜134bに整合する(外周面121a〜121dが接する)台形状に形成されている。これにより、各緩衝部材130が取付部121(質量体12)に対して回転しないようにすることができる。また、各取付部121を大きくする即ち質量体12の重量を大きくすることができる。
【0033】
図2に示すように、各緩衝部材130が各取付部121に取り付けられた際に、第1辺部131は、支持部材11における対応する大径部112の周方向の端面113に周方向で略対向するよう延びている。また、第2辺部132は、第1辺部131に対して鈍角で連続しており、支持部材11の小径部110の外周面111に径方向で略対向するよう延びている。さらに、第3辺部133は、第2辺部132に対して直角で連続しており、周方向に隣り合う質量体12に取り付けられた緩衝部材130に周方向で略対向するよう(質量体12(各板体120)の周方向の端面122に略平行に)延びている。第4辺部134は、第3辺部133に対して略直角となると共に第1辺部131に対して鋭角となるよう両者に連続しており、第2辺部132に略平行となるよう延びている。したがって、第1辺部131は、質量体12の揺動に伴って外周面131a(
図6参照)が支持部材11の大径部112の周方向の端面113に当接(衝突)することがある。また、第2辺部132は、質量体12の揺動に伴って外周面132a(
図5参照)が支持部材11の小径部110の外周面111に当接(衝突)することがある。さらに、第3辺部133は、質量体12の揺動に伴って外周面133a(
図6参照)が周方向に隣り合う質量体12に取り付けられた緩衝部材130の第3辺部133の外周面133aに当接(衝突)することがある。なお、第4辺部134は、質量体12の揺動に伴って支持部材11や他の緩衝部材130と当接しない。
【0034】
図5や
図6に示すように、各緩衝部材130の第1辺部131〜第4辺部134は、外周面131a〜134aおよび内周面131b〜134bにおける幅方向(2つの板体120の連結方向(回転要素としてのドリブン部材84の回転軸と平行な方向)、
図5の左右方向で
図6の上下方向)の両側の周縁が面取りされている。また、各緩衝部材130は、第1辺部131の厚みD1,第2辺部132の厚みD2,第3辺部133の厚みD3,第4辺部134の厚みD4が「D1>D2>D3>D4」となるよう形成されている(
図2参照)。
【0035】
第1辺部131の外周面131aおよび内周面131b,取付部121の外周面121a(第1辺部131の内周面131bと接する面)は、支持部材11の軸方向に見て、長手方向の中央部が両端部より質量体12の周方向外側に凸となる断面円弧状の曲面に形成されている。具体的には、これらは、支持部材11の大径部112の周方向の端面113の曲率半径と同一の曲率半径の曲面に形成されているものとした。第2辺部132〜第4辺部134の外周面132a〜134aおよび内周面132b〜134b,取付部122の外周面121b〜121d(第2辺部132〜第4辺部134の内周面132b〜134bと接する面)は、支持部材11の軸方向に見て断面直線状(平坦面)に形成されている。
【0036】
上述したように、各質量体12の各取付部121は、各板体120の周方向の端面122より若干内側(
図6では左側)に設けられており、各緩衝部材130は、この各取付部121に取り付けられている。そして、各板体120の周方向の端面122と取付部121の外周面121cとが斜面123で連続するよう形成されている。したがって、各質量体12において、取付部121より周方向の端面122側では、2つの板体120の斜面123と緩衝部材130の第3辺部133の両側面(2つの板体120の連結方向の両端面)との間に空間が形成されることになる。
【0037】
次に、こうして構成された実施例の遠心振子式吸振装置10の動作について説明する。実施例の遠心振子式吸振装置10では、支持部材11が回転すると、その回転に伴って、複数の質量体12が、ガイドローラ127を介してガイド開口部125a,125bとガイド開口部115a,155bとによってガイドされながら支持部材11に対して同方向に揺動する。これにより、ドリブン部材84にそのドリブン部材84の振動とは逆位相の振動を付加し、振動を吸収する(減衰させる)ことができる。
【0038】
ここで、実施例では、上述したように、1つの質量体12のガイド開口部125aとガイド開口部125bとが、それぞれ支持部材11の中心に向けて凸となる曲線を軸線とする左右非対称(あるいは左右対称)の長穴として形成されており、且つ、質量体12の揺動中心線に対して互いに対称に配置されている。また、1つの質量体12に対応した支持部材11のガイド開口部115aとガイド開口部115bとが、それぞれ支持部材11の径方向外側に向けて凸となる曲線を軸線とする左右非対称(あるいは左右対称)の長穴として形成されており、且つ、質量体12の揺動中心線に対して互いに対称に配置されている。したがって、実施例の遠心振子式吸振装置10では、支持部材11の回転に伴って、各質量体12を、振子支点周りに回動させることができると共に揺動範囲内の一方側に振れるのに伴って質量体12の重心周りに回転させることができる。このように、支持部材11によって、質量体12を、振子支点周りに回動すると共に重心周りに回転するよう支持することにより、振子支点周りの揺動だけでなく、質量体12の重心周りの回転モーメントも利用して、支持部材11に伝達される振動を減衰させることができる。
【0039】
ところで、各質量体12が揺動するときには、
図7や
図8に示すように、緩衝部材130の第1辺部131の外周面131aと支持部材11の大径部112の周方向の端面113とが当接(衝突)する第1タイプ衝突が生じたり、
図9や
図10に示すように、緩衝部材130の第2辺部132の外周面132aと支持部材11の小径部110の外周面111とが当接(衝突)する第2タイプ衝突が生じたり、
図11や
図12に示すように、緩衝部材130の第3辺部133の外周面133aと周方向に隣り合う質量体12に取り付けられた緩衝部材130の第3辺部133の外周面133aとが当接(衝突)する第3タイプ衝突が生じたりする。なお、一般に、第1タイプ衝突は、支持部材11の回転に伴う各質量体12の振子支点周りの回動に伴って生じ、第2タイプ衝突は、支持部材11の回転に伴う各質量体12の振子支点周りの回動と重心周りの回転とに伴って生じ、第3タイプ衝突は、支持部材11の回転停止時に、振子支点に対して斜め上側の質量体12が重力によって下側に移動することによって生じる。したがって、衝突時に緩衝部材130に作用する力は、第1タイプ衝突が最も大きくなりやすく、第2タイプ衝突,第3タイプ衝突の順に小さくなりやすい。
【0040】
実施例では、上述したように、緩衝部材130は、全周に亘って、外周面131a〜134aおよび内周面131b〜134bにおける幅方向(2つの板体120の連結方向)の両側の周縁が面取りされている。これにより、幅方向の両側の周縁が面取りされていない(幅方向の両側の周縁が略直角に形成されている)ものに比して、第1タイプ衝突(
図7や
図8参照)が生じたときに、質量体12の板体120の側面と支持部材11の大径部112の側面との隙間に緩衝部材130が入り込んで両者に挟まれるのを抑制することができると共に、第2タイプ衝突(
図9や
図10参照)が生じたときに、質量体12の板体120の側面と支持部材11の小径部110の側面との隙間に緩衝部材130が入り込んで両者に挟まれるのを抑制することができる。この結果、緩衝部材130の一部に大きな力が作用するのを抑制することができ、緩衝部材130の劣化や損傷を抑制することができる。
【0041】
また、実施例では、緩衝部材130の第1辺部131の外周面131aは、支持部材11の大径部112の端面113の曲率半径と同一の曲率半径に形成されている。これにより、第1タイプ衝突(
図7や
図8参照)が生じるときの緩衝部材130の第1辺部131と大径部112の端面113との接触面積を大きくすることができる。この結果、第1タイプ衝突の衝撃を低減する(より良好に吸収する)ことができると共に、緩衝部材130の第1辺部131に作用する負荷を軽減して緩衝部材130の耐久性の向上を図ることができる。しかも、実施例では、第1辺部131の外周面131aと取付部121の外周面121a(第1辺部131の内周面131bと接する面)とが同一の曲率半径の曲面に形成されている。これにより、第1辺部131の厚みD1を確保しつつ取付部121を大きくすることができ、質量体12の重量を大きくすることができる。
【0042】
さらに、実施例では、緩衝部材130の第2辺部132の外周面132aが断面直線状(平坦面)に形成されている。これにより、第2タイプ衝突(
図9や
図10参照)が生じるときの緩衝部材130の第2辺部132と小径部110の外周面111との接触面積が小さくなるのを抑制することができる。この結果、第2タイプ衝突の衝撃を低減する(より良好に吸収する)ことができると共に、緩衝部材130の第2辺部132に作用する負荷を軽減して緩衝部材130の耐久性の向上を図ることができる。
【0043】
加えて、実施例では、各板体120の周方向の端面122と端面122より中心側に設けられた取付部121の外周面121cとが斜面123で連続するよう形成されることによって、各質量体12において、取付部121より周方向の端面122側で、2つの板体120の斜面123と緩衝部材130の第3辺部133の両側面(2つの板体120の連結方向の両端面)との間に空間が形成されている。これにより、第3タイプ衝突(
図11や
図12参照)が生じたときに、第3辺部133が斜面123に沿って変形してその空間に入り込むことにより、緩衝部材130が、取り付けられている質量体(2つの板体120)の周方向の端面122と、周方向に隣り合う質量体12(各板体120)の周方向の端面122とに挟まれるのを抑制することができる。この結果、緩衝部材130の一部に大きな力が作用するのを抑制することができ、緩衝部材130の劣化や損傷を抑制することができる。また、第3辺部133の外周面133aが断面直線状(平坦面)で質量体12(各板体120)の周方向の端面122に略平行に延びるよう形成されている。これにより、第3タイプ衝突が生じるときの緩衝部材130の第3辺部133同士の接触面積を大きくすることができる。この結果、第3タイプ衝突の衝撃を低減する(より良好に吸収する)ことができると共に、緩衝部材130の第3辺部133に作用する負荷を軽減して緩衝部材130の耐久性の向上を図ることができる。
【0044】
また、実施例では、緩衝部材130は、第1辺部131の厚みD1,第2辺部132の厚みD2,第3辺部133の厚みD3,第4辺部134の厚みD4が「D1>D2>D3>D4」となるよう形成されている。上述したように、衝突時に緩衝部材130に作用する力は、第1タイプ衝突,第2タイプ衝突,第3タイプ衝突の順に小さくなりやすく、第4辺部134は、支持部材11や他の緩衝部材130と衝突しない。したがって、第1辺部131〜第4辺部134の厚みをこうした傾向に調節することにより、各衝突により緩衝部材130に作用する力を十分に低減する(吸収する)ことができると共に緩衝部材130の形成に用いる材料を低減することができる。なお、これは、実施例のように、緩衝部材130が取付部121(質量体12)に対して回転しないよう取り付けられている(緩衝部材130の各部分がそれぞれ何と当接するか略定まっている)ときに有効である。これに対して、緩衝部材130が取付部121に対して回転可能に取り付けられている(例えば、取付部が円形に形成されると共に緩衝部材が環状に形成されているときなど)とき、即ち、緩衝部材の各部分がそれぞれ何と当接するか定まっていないときには、緩衝部材の耐久性の確保のために、全周に亘って厚みを緩衝部材130の第1辺部131の厚みD1と同程度に形成する必要がある。
【0045】
以上説明した実施例の遠心振子式吸振装置10では、質量体12の2つの板体120の間のうち周方向の両端部に板体120に対して回転しないよう緩衝部材130が取り付けられている。そして、この緩衝部材130は、質量体12の揺動に伴って支持部材11と当接する第1辺部131や第2辺部132を有し、第1辺部131の外周面131aや第2辺部132の外周面132aは、幅方向(2つの板体120の連結方向)の両側の周縁が面取りされている。これにより、質量体12の揺動に伴う、緩衝部材130の第1辺部131の外周面131aや第2辺部132の外周面132aと支持部材11との当接(衝突)時に、緩衝部材130が支持部材11の側面と板体120の側面との隙間に入り込む(両者に挟まれる)のを抑制することができる。この結果、緩衝部材130の一部に大きな力が作用するのを抑制することができ、緩衝部材130の劣化や損傷を抑制することができる。
【0046】
また、実施例の遠心振子式吸振装置10では、各板体120の周方向の端面122と端面122より中心側に設けられた取付部121の外周面121cとが斜面123で連続するよう形成されることによって、各質量体12において、取付部121より周方向の端面122側で、2つの板体120の斜面123と緩衝部材130の第3辺部133の両側面(2つの板体120の連結方向の両端面)との間に空間が形成されている。これにより、質量体12の揺動に伴う、周方向に隣り合う質量体12の緩衝部材130同士の当接(衝突)時に、第3辺部133が斜面123に沿って変形してその空間に入り込むことにより、緩衝部材130が、取り付けられている質量体(2つの板体120)の周方向の端面122と、周方向に隣り合う質量体12(各板体120)の周方向の端面122とに挟まれるのを抑制することができる。この結果、緩衝部材130の一部に大きな力が作用するのを抑制することができ、緩衝部材130の劣化や損傷を抑制することができる。
【0047】
さらに、実施例の遠心振子式吸振装置10では、緩衝部材130は、第1辺部131の厚みD1,第2辺部132の厚みD2,第3辺部133の厚みD3,第4辺部134の厚みD4が「D1>D2>D3>D4」となるよう形成されている。これにより、緩衝部材130に作用する力を十分に低減する(吸収する)ことができると共に緩衝部材130の形成に用いる材料を低減することができる。
【0048】
加えて、実施例の遠心振子式吸振装置10では、各質量体12は、振子支点周りに回動すると共に重心周りに回転するよう支持部材11により支持されている。これにより、振子支点周りの揺動だけでなく、質量体12の重心周りの回転モーメントも利用して、支持部材11に伝達される振動を減衰させることができる。
【0049】
実施例の遠心振子式吸振装置10では、緩衝部材130は、枠体として構成され、外周面131a〜134aおよび内周面131b〜134bの全周に亘って幅方向の両側の周縁が面取りされるものとしたが、内周面131b〜134bの全周に亘って幅方向の両側の周縁が面取りされていないものとしてもよいし、第3辺部133の外周面133aや第4辺部134の外周面134aの幅方向の両側の周縁が面取りされていないものとしてもよい。
【0050】
実施例の遠心振子式吸振装置10では、各板体120の周方向の端面122と端面122より中心側に設けられた取付部121の外周面121cとが斜面123で連続するよう形成されることによって、各質量体12において、取付部121より周方向の端面122側で、2つの板体120の斜面123と緩衝部材130の第3辺部133の両側面(2つの板体120の連結方向の両端面)との間に空間が形成されるものとしたが、
図13の変形例に示すように、各板体120の内側面(他の板体120側)の取付部121より端面122側に、凹部123Bが形成されることによって、各質量体12において、取付部121より周方向の端面122側で、2つの板体120の内側面と緩衝部材130の第3辺部133の両側面との間に空間が形成されるものとしてもよい。
【0051】
実施例の遠心振子式吸振装置10では、各質量体12において、取付部121より周方向の端面122側で、2つの板体120の斜面123と緩衝部材130の第3辺部133の両側面との間に空間が形成されるものとしたが、各板体120の内側面(他の板体120側)と緩衝部材130の第3辺部133の両側面(2つの板体120の連結方向の両端面)との間に空間が形成されないものとしてもよい。
【0052】
実施例の遠心振子式吸振装置10では、緩衝部材130は、第3辺部133の厚みD3が第1辺部131の厚みD1や第2辺部132の厚みD2より薄くなるよう形成されるものとしたが、第3辺部133の厚みD3が第1辺部131の厚みD1や第2辺部132の厚みD2と略同一となるよう形成されるものとしてもよい。
【0053】
実施例の遠心振子式吸振装置10では、緩衝部材130は、第2辺部132の厚みD2が第1辺部131の厚みD1より薄くなるよう形成されるものとしたが、第2辺部132の厚みD2が第1辺部131の厚みD1と略同一となるよう形成されるものとしてもよい。
【0054】
実施例の遠心振子式吸振装置10では、緩衝部材130は、2つの板体120の間で且つ2つの板体120の周方向の両端部に取り付けられるものとしたが、周方向に隣り合う質量体12同士が当接(衝突)しない構成の場合などには、2つの板体120の周方向の両端部以外で且つ支持部材11と当接可能な位置に取り付けられるものとしてもよい。この場合でも、実施例と同様に、緩衝部材130の、質量体12の揺動に伴って支持部材11と当接する第1,第2辺部131,132の外周面131a,132aの幅方向(2つの板体120の連結方向)の両側の周縁が面取りされていることにより、質量体12の揺動に伴う、緩衝部材130の第1,第2辺部131,132の外周面131a,132aと支持部材11との当接(衝突)時に、緩衝部材130が支持部材11の側面と板体120の側面との隙間に入り込む(両者に挟まれる)のを抑制することができる。
【0055】
実施例の遠心振子式吸振装置10では、緩衝部材130は、質量体12(2つの板体120)に対して回転しないように取り付けられるものとしたが、質量体12に対して回転可能に取り付けられるものとしてもよい。なお、この場合、緩衝部材130のうち、質量体12の揺動に伴って支持部材11と当接する部分が定まらないため、全周に亘って少なくとも外周面の幅方向の両側の周縁が面取りされる。
【0056】
実施例の遠心振子式吸振装置10では、各質量体12は、振子支点周りに回動すると共に重心周りに回転するよう支持部材11により支持されるものとしたが、振子支点周りに回動するが重心周りには回転しないよう支持部材11により支持されるものとしてもよい。
【0057】
実施例の遠心振子式吸振装置10では、緩衝部材130を取り付けるための取付部121は、各板体120からそれぞれ突出部121jが突出して構成されるものとしたが、一方の板体120だけから突出部が突出して他方の板体120に当接して(または当接せずに)構成されるものとしてもよい。
【0058】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、支持部材11が「支持部材」に相当し、複数の質量体12が「複数の質量体」に相当し、緩衝部材130が「緩衝部材」に相当する。
【0059】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0060】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。