【実施例1】
【0018】
図1は、本発明が適用される車両10に備えられたエンジン30と自動変速機12の概略構成を説明する概略図である。このエンジン30は、該エンジン30を始動させる際に該エンジン30を始動及び再始動するためにクランキングするスタータ16が、該エンジン30のクランク軸30aに連結されたリングギヤ18に連結されている。尚、スタータ16は、プーリやベルトなどを介してクランク軸30aをクランキングするモータジェネレータであってもよい。
【0019】
自動変速機12は、入力軸26の回転を変速して作動歯車装置34に動力を伝達する。また、入力軸26は、自動変速機12の入力回転部材に相当するものであり、本実施例では走行用の駆動力源であるエンジン30によって回転駆動される流体式伝動装置としてのトルクコンバータ32のタービン軸と一体的に構成されている。また、本実施例では例えば
図1に示す差動歯車装置34に動力を伝達するために、デフリングギヤ36と噛み合うことでファイナルギヤ対を構成するデフドライブピニオンと同軸上に配置されたカウンタドリブンギヤと噛み合ってカウンタギヤ対を構成するカウンタドライブギヤとして機能している。そして、このように構成された自動変速機12等において、エンジン30の出力は、トルクコンバータ32、自動変速機12、差動歯車装置34、及び一対の車軸38等を含む車両用動力伝達装置11を順次介して左右の駆動輪40へ伝達されるようになっている。
【0020】
車両10には、例えば自動変速機12のエンジン自動停止制御などに関連する油圧制御装置を含む電子制御装置120が備えられている。この電子制御装置120は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御や自動変速機12の変速制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用のエンジン制御装置や油圧制御回路100内のリニアソレノイドバルブを制御する変速制御用の油圧制御装置等に分けて構成される。
【0021】
電子制御装置120には、例えば作動油温センサ74により検出された油圧制御回路100内の作動油(例えば公知のATF)の温度である作動油温T
OIL(℃)を表す信号、アクセル開度センサ76により検出された運転者による車両10に対する要求量(ドライバ要求量)としてのアクセルペダル78の操作量であるアクセル開度A
CC(%)を表す信号、エンジン回転速度センサ80により検出されたエンジン30の回転速度であるエンジン回転速度N
E(rpm)を表す信号、冷却水温センサ82により検出されたエンジン30の冷却水温T
W(℃)を表す信号、吸入空気量センサ84により検出されたエンジン30の吸入空気量Q(Q/N)を表す信号、スロットル弁開度センサ86により検出された電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θ
TH(%)を表す信号、車速センサ88により検出された車速V(km/h)に対応する自動変速機12の出力歯車の回転速度である出力回転速度N
OUT(rpm)を表す信号、ブレーキスイッチ90により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの作動中(踏込操作中)を示すフットブレーキペダル92の操作(オン)B
ONを表す信号、レバーポジションセンサ94により検出されたシフトレバー96のレバーポジション(操作位置、シフトポジション)P
SHを表す信号、サイドブレーキ20のオン操作信号P
Sを表す信号、タービン回転速度センサ98により検出されたトルクコンバータ32のタービンの回転速度であるタービン回転速度N
T(rpm)(すなわち入力軸26の回転速度である入力回転速度N
IN)を表す信号などがそれぞれ供給される。
【0022】
また、電子制御装置120からは、エンジン30の出力制御のためのエンジン出力制御指令信号S
E、例えばアクセル開度A
CCに応じて電子スロットル弁の開閉を制御するためのスロットルアクチュエータへの駆動信号や燃料噴射装置から噴射される燃料噴射量を制御するための噴射信号やイグナイタによるエンジン30の点火時期を制御するための点火時期信号などが出力される。また、自動変速機12の変速制御のための油圧制御指令信号S
P、例えば自動変速機12のギヤ段を切り換えるために油圧制御回路100内のリニアソレノイドバルブの励磁、非励磁などを制御するためのバルブ指令信号(油圧指令値、駆動信号)やライン油圧P
Lを調圧制御するための駆動信号などが出力される。
【0023】
また、シフトレバー96は、例えば運転席の近傍に配設され、
図1に示すように、5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、または「S」へ手動操作されるようになっている。
【0024】
「P」ポジション(レンジ)は自動変速機12内の動力伝達経路を解放しすなわち自動変速機12内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に自動変速機12の出力歯車の回転を阻止(ロック)するためのパーキングポジション(位置)である。また、「R」ポジションは自動変速機12の出力歯車の回転方向を逆回転とするための後進走行ポジション(位置)である。また、「N」ポジションは自動変速機12内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とするためのニュートラルポジション(位置)である。また、「D」ポジションは自動変速機12の変速を許容する変速範囲(Dレンジ)で第1ギヤ段「1st」〜第6ギヤ段「6th」の総ての前進ギヤ段を用いて自動変速制御を実行させる前進走行ポジション(位置)である。また、「S」ポジションはギヤ段の変化範囲を制限する複数種類のシフトポジションすなわち高車速側のギヤ段が異なる複数種類のシフトポジションを切り換えることにより手動変速が可能な前進走行ポジション(位置)である。
【0025】
また、
図1における補機類46は、例えばパワーステアリング用のポンプやエアコン用のコンプレッサー、エンジンオイルポンプ、エンジンウォーターポンプ等に相当し、電子制御装置120からの指令信号S
Cにより作動される。
【0026】
図2は、電子制御装置120による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
図2において、エンジン出力制御手段122は、例えばスロットル制御のためにスロットルアクチュエータにより電子スロットル弁を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射装置による燃料噴射量を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置を制御するエンジン出力制御指令信号S
Eを出力する。例えば、エンジン出力制御手段122は、スロットル弁開度θ
THをパラメータとしてエンジン回転速度N
EとエンジントルクT
Eの推定値(以下推定エンジントルク)T
E’との予め実験的に求められて記憶された関係(エンジントルクマップ)から実際のエンジン回転速度N
Eに基づいて目標エンジントルクが得られるスロットル弁開度θ
THとなるように電子スロットル弁を開閉制御する他、燃料噴射装置による燃料噴射量を制御し、イグナイタ等の点火装置を制御する。
【0027】
また、エンジン出力制御手段122は、例えば、変速機のシフトポジションがDレンジまたはPレンジであることがシフトポジション条件の成立条件であり、前記シフトポジション条件の成立をエンジン自動停止の成立条件に含む車両の制御装置において、エンジン自動停止の成立条件が成立した場合、エンジン自動停止制御手段124からエンジン自動停止制御を実行する指令信号を受けた場合に、エンジン30を停止する信号を電子制御装置120のエンジン制御用のエンジン制御装置等に出力することでエンジン30を自動停止させる。また、NレンジまたはRレンジにシフトポジションが変更されてから所定の待機時間が経過した時に、エンジン出力制御手段122は、エンジン自動停止制御手段124からエンジン自動停止制御を解除する指令信号を受けると、エンジン30を始動させる信号を電子制御装置120のエンジン制御用のエンジン制御装置等に出力し、エンジン30を自動始動させる。
【0028】
ここで、本実施例の車両10では、例えば車両走行中における燃料消費を低減するため、エンジン30の運転を一時的に休止するいわゆるエンジン自動停止制御がエンジン自動停止制御手段124によって実行される。このエンジン自動停止制御手段124は、例えば、エンジン停止条件にあたる予め設定された所定のエンジン自動停止制御の開始条件が満たされた場合に、エンジン出力制御手段122からエンジン30を自動停止させるエンジン出力制御指令信号S
Eをエンジン30に出力する。この所定のエンジン自動停止制御の開始条件は、例えばDレンジにおいて、車速Vが所定の車速V0未満であってアクセルペダル78が踏み込まれておらず、フットブレーキ92が踏み込まれていることなどである。また、このエンジン自動停止制御は、いわゆるエコラン制御と称されるものである。
【0029】
また、エンジン自動停止制御手段124は、例えば予め設定されたエンジン自動停止制御の解除条件が満たされた場合に、エンジン出力制御手段122からエンジン自動停止を解除するようにエンジン出力制御指令信号S
Eをエンジン30に出力し、エンジン30を自動始動させる。この所定のエンジン自動停止制御の解除条件は、例えばエンジン自動停止制御中にDレンジからDレンジ以外のシフトポジションにシフト操作された場合は、シフト操作後のシフトポジションにおけるエンジン自動停止の経過時間Tdが所定の待機時間を経過することである。
【0030】
また、エンジン自動停止制御手段124は、例えば、待機時間判定手段126が判定した判定結果を取得し、その判定結果が肯定である場合は、エンジン自動停止制御を解除する信号をエンジン出力制御手段122から出力させ、その判定結果が否定である場合は、エンジン自動停止制御を継続する信号をエンジン出力制御手段122から出力させる。
【0031】
待機時間判定手段126は、例えば、Dレンジにてエンジン自動停止制御が開始された場合は、シフトポジション制御手段130から出力されたDレンジ以外のRレンジ、Nレンジ、Pレンジのうちいずれかのシフトポジションにおけるエンジン自動停止制御の開始条件が成立している経過時間Tdが、待機時間設定手段134によって予め設定された待機時間を経過したか否かを判定する。そして、その判定結果をエンジン自動停止制御手段124に出力する。尚、本実施例においては、Nレンジ及びRレンジにおいても待機時間以内は、自動停止条件は成立しており、待機時間経過した時点でエンジン自動停止制御が解除され、エンジン30が自動始動させられる。
【0032】
待機時間設定手段134は、例えば、基準時間判定手段128によって、Dレンジにおけるエンジン自動停止の経過時間Tdが予め設定された基準時間Tthを経過したことが否定される場合は、待機時間を第1待機時間T1に設定し、基準時間判定手段128による判定結果が肯定される場合は、待機時間を第2待機時間T2に設定する。尚、本実施例においては、第1待機時間T1は、第2待機時間T2よりも長く設定されているが、Dレンジにおけるエンジン自動停止の経過時間Tdが基準時間Tthよりも長いときにエンジン自動停止制御の解除が望まれる場合は、第1待機時間T1が第2待機時間T2よりも短く設定されていてもよい。
【0033】
基準時間判定手段128は、例えば、シフトポジション制御手段130から出力されたDレンジにおけるエンジン自動停止の経過時間Tdを取得し、その経過時間Tdが予め設定された基準時間Tthを経過したか否かを判定する。そして、判定結果を待機時間設定手段134に出力する。尚、基準時間Tthは、運転者によってエンジン自動停止の継続が望まれているか否かを判断する為の時間であり、実験等によって定められた所定の値であり、好適には3secである。
【0034】
シフトポジション制御手段130は、例えば、シフトポジション判定手段132から出力された指令信号により、自動変速機12のシフトポジションに関与する油圧式摩擦係合装置を係合及び/又は解放させる油圧制御指令信号(変速出力指令値)S
Pを油圧制御回路100へ出力する。
【0035】
シフトポジション判定手段132は、例えばレバーポジションセンサ94により検出されたシフトレバー96のレバーポジション(操作位置、シフトポジション)P
SHを表す信号によって、自動変速機12のシフトポジション(「P」、「R」、「N」、「D」、または「S」)のうち、どのシフトポジションに相当するレバーポジションにシフトレバー96が移動されたか否かを判定する。そして、判定されたシフトポジションにおけるエンジン自動停止制御の経過時間Tdを基準時間判定手段128に出力する。また、その判定したシフトポジションが得られるように自動変速機12を制御する指令信号をシフトポジション制御手段130に出力する。
【0036】
図3において、経過時間Tdが基準時間Tthを経過しない場合における
図1の電子制御装置120の制御作動に対応するタイムチャートについて説明する。
【0037】
図3において、エンジン自動停止制御の開始条件が成立したことにより、エンジン出力制御手段122がエンジン30を自動停止させるエンジン出力制御指令信号S
Eをエンジン30に出力し、エンジン回転速度N
Eと車速Vが低下し始める(t1時点)。その後、Dレンジにおいてエンジン自動停止制御の開始条件が成立している経過時間Tdが基準時間Tthを経過する前にDレンジからNレンジにシフトレバー96が操作される(t2時点)。この場合は、エンジンの再始動条件、すなわちエンジン自動停止制御の解除条件となる所定の待機時間が第1待機時間T1として設定され、シフトポジションがRレンジに変更されてから第1待機時間T1が経過した時点で、予め設定されたエンジン自動停止制御の解除条件が満たされ、エンジン出力制御手段122がエンジン自動停止を解除するようにエンジン出力制御指令信号S
Eをエンジン30に出力し、エンジン回転速度N
Eおよび車速Vが増加し始める(t3時点)。
【0038】
図4において、経過時間Tdが基準時間Tthを経過する場合における
図1の電子制御装置120の制御作動に対応するタイムチャートについて説明する。
【0039】
図4において、エンジン自動停止制御の開始条件が成立したことにより、エンジン出力制御手段122がエンジン30を自動停止させるエンジン出力制御指令信号S
Eをエンジン30に出力し、エンジン回転速度N
Eと車速Vが低下し始める(t1時点)。その後、Dレンジにおいてエンジン自動停止制御の開始条件が成立している経過時間Tdが経過時間Tthを経過した後にDレンジからNレンジにシフトレバー96が操作される(t2’時点)。この場合は、エンジンの再始動条件、すなわちエンジン自動停止制御の解除条件となる所定の待機時間が第2待機時間T2として設定され、シフトポジションがPレンジに変更されてから第2待機時間T2が経過した時点でエンジン自動停止制御が解除される。尚、本実施例においては、Pレンジにシフト操作されているため、エンジン回転速度N
Eおよび車速Vは増加しない(t3’時点)。
【0040】
図5は、
図1の電子制御装置120で実行されるプログラムの制御作動を示すフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0041】
図5のステップ(以下、ステップを省略する)S1において、例えばDレンジにて所定のエンジン自動停止制御の開始条件が成立し、エンジン自動停止制御が開始されエンジンが自動停止された後、DレンジからNレンジにシフト操作されると、シフトポジション判定手段132に対応するS2において、例えばシフトポジションがNレンジであると確定されたか否かが判定される。このS2の判定が否定される場合は、シフトポジション判定手段132に対応するS7において、Rレンジであると確定されたか否かが判定される。S2の判定が肯定される場合は、基準時間判定手段128に対応するS3において、例えばNレンジにおける経過時間Tdが所定の基準時間Tth以上経過したか否かが判定される。このS3の判定が肯定される場合は、待機時間設定手段134によって、第1待機時間T1が待機時間として設定され、S3の判定が否定される場合は、第2待機時間T2が待機時間として設定される。
【0042】
このS3の判定が否定される場合は、待機時間判定手段126に対応するS5において、Nレンジへのシフト操作から所定の第2待機時間T2以内にNレンジからRレンジへシフト操作されたか否かが判定され、S5が肯定される場合、シフトポジション判定手段132に対応するS7において、Rレンジであると確定されたか否かが判定される。S5が否定される場合、すなわち第2待機時間T2以内にNレンジからRレンジへシフト操作がない場合は、エンジン自動停止制御手段124に対応するS6において、エンジン自動停止制御手段124からエンジン自動停止制御を解除する信号がエンジン出力制御手段122へ出力され、エンジン出力制御手段122からエンジン30を自動始動させるエンジン出力制御指令信号S
Eがエンジン30に出力され、エンジン30が再始動させられる。
【0043】
また、S3が肯定される場合は、待機時間判定手段126に対応するS4において、Nレンジへのシフト操作から所定の第1待機時間T1以内にNレンジからRレンジへシフト操作されたか否かが判定され、S4が否定される場合、すなわち第1待機時間T1以内にNレンジからRレンジへシフト操作がない場合は、エンジン自動停止制御手段124に対応するS6において、エンジン自動停止制御手段124からエンジン自動停止制御を解除する信号をエンジン出力制御手段122へ出力し、エンジン出力制御手段122からエンジン30を自動始動させるエンジン出力制御指令信号S
Eをエンジン30に出力することで、エンジン30を自動始動させる。
【0044】
S4が肯定される場合は、シフトポジション判定手段132に対応するS7において、Rレンジであると確定されたか否かが判定される。このS7の判定が否定される場合は、エンジン自動停止制御手段124に対応するS12において、Pレンジにてエンジン自動停止制御を継続させ、エンジン30の自動停止を継続する。S7の判定が肯定される場合は、基準時間判定手段128に対応するS8において、Rレンジにおける経過時間Tdが所定の基準時間Tth以上経過したか否かが判定される。このS8の判定が肯定される場合は、待機時間設定手段134によって、第1待機時間T1が待機時間として設定され、S8の判定が否定される場合は、第2待機時間T2が待機時間として設定される。
【0045】
このS8の判定が否定される場合は、待機時間判定手段126に対応するS10において、所定の第2待機時間T2以内にRレンジからPレンジへシフト操作されたか否かが判定され、S10が否定される場合、すなわち第2待機時間T2以内にRレンジからPレンジへシフト操作がない場合は、エンジン自動停止制御手段124に対応するS11において、エンジン自動停止制御を解除する信号をエンジン出力制御手段122へ出力し、エンジン出力制御手段122からエンジン30を自動始動させるエンジン出力制御指令信号S
Eをエンジン30に出力することで、エンジン30を自動始動させる。
【0046】
一方、S8が肯定される場合は、待機時間判定手段126に対応するS9において、所定の第1待機時間T1以内にRレンジからPレンジへシフト操作されたか否かが判定され、S9が否定される場合、すなわち第1待機時間T1以内にRレンジからPレンジへシフト操作がない場合は、エンジン自動停止制御手段124に対応するS11において、エンジン自動停止制御を解除する信号をエンジン出力制御手段122へ出力し、エンジン出力制御手段122からエンジン30を自動始動させるエンジン出力制御指令信号S
Eをエンジン30に出力することで、エンジン30を自動始動させる。S9及びS10が肯定される場合は、エンジン自動停止制御手段124に対応するS12において、Pレンジにおけるエンジン自動停止制御を継続する。
【0047】
尚、本実施例において、第1待機時間T1は、第2待機時間T2よりも時間が長く設定されており、好適には500msecである。また、第2待機時間T2は、好適には100msecである。
【0048】
上述のように、本実施例によれば、自動停止の経過時間Tdに応じて第1待機時間T1を第2待機時間T2に変更するため、シフトポジションを変更してからエンジン30を再始動するまでの待機時間は一律ではなくなる。この結果、本発明に係る車両の制御装置は、待機時間をエンジン始動応答性の良いエンジン始動を行える第2待機時間T2や、エンジンの再始動を抑制する第1待機時間T1に適宜変更することによって、車両10を移動させる動作の遅れを抑制しつつ、燃料消費の効率や発進システムの耐久性も向上させることができる。
【0049】
また、本実施例によれば、シフトポジション変更後の第3のシフトポジションまたは第4のシフトポジションであるNレンジまたはRレンジのいずれかにおいて、第2待機時間T2の長さをエンジン30の自動停止の経過時間Tdに応じて変更するため、待機時間は一律ではなくなる。この結果、NレンジまたはRレンジにおける待機時間をエンジン始動応答性の良いエンジン始動を行える第1待機時間T1や、エンジン30の再始動を抑制する第2待機時間T2に適宜変更することによって、車両10を移動させる動作の遅れを抑制しつつ、燃料消費の効率や発進システムの耐久性も向上させることができる。
【0050】
また、本実施例によれば、例えば、縦列駐車等のように、Dレンジにて前進方向に移動後、後退するため速やかにRレンジにシフト操作する場合は、Rレンジにおけるエンジン30が自動停止してからの経過時間Tdが基準時間Tth未満となる可能性が高い。このような場合に、待機する時間の短い第2待機時間T2をエンジンの再始動条件として設定しておくことで、エンジン30の再始動を速やかに行うことができる。また、例えば、渋滞時等の車両が混雑する道路において、車両10が停止しエンジン30が自動停止される際には、車両10が停止した後に、道路の進み具合を確認してからDレンジからPレンジへシフト操作するため、Dレンジにおけるエンジン30が自動停止してからの経過時間Tdが基準時間Tth以上となる可能性が高い。このような場合に、待機する時間の長い第1待機時間T1をエンジン30の再始動条件として設定することで、DレンジからPレンジにシフト操作した場合のNレンジまたはRレンジにおけるエンジン30の再始動を抑制することができる。
【実施例2】
【0051】
前述の実施例では、待機時間設定手段134によってNレンジにおける待機時間T1,T2とRレンジにおける待機時間T1,T2とをそれぞれ同じ長さの時間として設定していたが、NレンジとRレンジとの待機時間T1,T2は、同じ長さの時間が設定されていなくともよい。
【0052】
そこで、本実施例では、前述の実施例に変えて、NレンジとRレンジとの待機時間T1,T2が異なるように設定している。尚、本実施例において、
図5のフローチャートと相違しない部分については、説明を割愛する。
【0053】
より具体的には、
図6は、本実施例の電子制御装置120の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、
図5のフローチャートに対して、NレンジとRレンジの待機時間T1,T2の長さが異なる点が相違する。例えば
図6において、基準時間判定手段128に対応するS28において、Rレンジにおける経過時間Tdが所定の基準時間Tth以上経過したか否かが判定される。このS8の判定が肯定される場合は、待機時間設定手段134によって、第1待機時間T3が待機時間として設定され、S28の判定が否定される場合は、第2待機時間T4が待機時間として設定される。
【0054】
待機時間判定手段126に対応するS29は、第1待機時間T1よりも短い時間が設定されている第1待機時間T3以内にNレンジからRレンジへのシフトレバー96の操作がされたか否かを判定する。S9が否定される場合、すなわち第1待機時間T3以内にRレンジからPレンジへシフト操作がない場合は、エンジン自動停止制御手段124に対応するS211において、エンジン自動停止制御を解除する信号をエンジン出力制御手段122へ出力し、エンジン出力制御手段122からエンジン30を自動始動させるエンジン出力制御指令信号S
Eをエンジン30に出力することで、エンジン30を自動始動させる。S29が肯定される場合は、エンジン自動停止制御手段124に対応するS212において、Pレンジにおけるエンジン自動停止制御を継続する。
【0055】
また、待機時間判定手段126に対応するS210は、第2待機時間T2よりも短い時間が設定されている第2待機時間T4以内にNレンジからRレンジへのシフトレバー96の操作がされたか否かを判定する。S
210が否定される場合、すなわち第2待機時間T2以内にRレンジからPレンジへシフト操作がない場合は、エンジン自動停止制御手段124に対応するS
211において、エンジン自動停止制御を解除する信号をエンジン出力制御手段122へ出力し、エンジン出力制御手段122からエンジン30を自動始動させるエンジン出力制御指令信号SEをエンジン30に出力することで、エンジン30を自動始動させる。S210が肯定される場合は、エンジン自動停止制御手段124に対応するS212において、Pレンジにおけるエンジン自動停止制御を継続する。
【0056】
尚、本実施例において、第1待機時間T3は、第1待機時間T1よりも時間が短く設定されており、好適には400msecである。また、第2待機時間T4は、第2待機時間T2よりも時間が短く設定されており、好適には32msecである。
【0057】
上述のように、本実施例によれば、第1待機時間T1よりも第1待機時間T3を短く、第2待機時間T2よりも第2待機時間T4を短く設定している。これにより、Rレンジにおける待機時間T3,T4は、Nレンジの待機時間T1,T2に比べて短く設定されることになる。この結果、Nレンジに比べて発進動作の応答性が要求されるRレンジにおけるエンジン再始動の応答性を向上させることができる。
【0058】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0059】
また、本実施例によれば、待機時間は、第1待機時間と第2待機時間が設定されていたが、第2待機時間は、固定値でなくともよい。例えば、Dレンジにおける自動停止の経過時間Tdが長いほど、待機時間を長くするようにしてもよい。このようにすれば、待機時間は一律ではなくなる。この結果、シフトポジション変更前の経過時間Tdが長いほど、すなわちエンジン再始動が望まれない運転状況または走行状態であるほど、前記待機時間が長くなるため、エンジンの自動停止を継続し、エンジンの再始動を抑制することができる。そのため、バッテリの早期消耗を予防するだけでなく、燃料消費の効率や発進システムの耐久性も向上させることができる。
【0060】
また、前述の実施例では、第1待機時間T1が第2待機時間T2よりも長くなるように設定されていたが、車両10の運転状態や走行状況に合わせて、第1待機時間T1が第2待機時間T2よりも短くなるように設定されていてもよい。このようにすれば、例えば、前向き駐車等のように、Dレンジにて前進方向で駐車位置まで移動後、Pレンジに切り替える場合は、運転者は駐車する意図があるため、速やかにDレンジからPレンジに切り替える可能性が高く、Dレンジにおけるエンジン30が自動停止してからの経過時間Tdが基準時間Tth未満となる可能性が高い。このような場合に、待機する時間の長い第2待機時間T2をエンジンの再始動条件として設定することで、エンジン30の再始動を抑制することができる。また、例えば、一旦Pレンジにてエンジン30が自動停止され、RレンジまたはDレンジにて発進する場合は、Pレンジに操作している時点で、少なくとも一旦は駐停車する意図があるため、Pレンジにおけるエンジン30が自動停止してからの経過時間Tdが基準時間Tth以上となる可能性が高い。このような場合に、待機する時間の短い第1待機時間T1をエンジンの再始動条件として設定することで、エンジン30の再始動を速やかに行うことができる。
【0061】
また、前述の実施例では、シフトポジション変更前のシフトポジションにおけるエンジン自動停止制御が継続された経過時間Tdが基準時間Tthを経過したか否かを判定することで、シフトポジション変更後のシフトポジションにおける待機時間を変更しているが、運転者によるシフトレバー96の操作が車両10の移動を意図した操作か否かを判定する方法は、エンジン自動停止制御の経過時間Tdが基準時間Tthを経過したことのみとは限らない。サイドブレーキ20のオン操作、エンジン自動停止制御中の補機の操作、車両10の位置情報、車速、走行距離、ブレーキの踏み込み量等によって第1待機時間T1または第2待機時間T2のいずれかを設定するようにしてもよいし、前記操作や得られる情報を組み合わせて待機時間を設定するようにしてもよい。
【0062】
また、前述の実施例では、Dレンジにおけるエンジン自動停止制御が継続された経過時間Tdが基準時間Tth以上経過したか否かを基準時間判定手段128によって判定していたが、他のレンジにおけるエンジン自動停止制御が継続された経過時間Tdを判定してもよい。例えば、PレンジからDレンジにシフト操作される際には、Pレンジにおけるエンジン自動停止制御が継続された経過時間Tdが基準時間Tth以上経過したか否かを判定し、Rレンジにおける待機時間を変更するようにしてもよい。
【0063】
また、前述の実施例では、例えば、
図5のS4およびS5において、待機時間T2以内にNレンジからRレンジへシフト操作されたか否かの判定が否定された場合は、Nレンジでのエンジン自動停止制御の解除を行うが、Nレンジにおける判定を行わないようにしてもよい。つまり、
図5のS4およびS5の判定を備えず、S3の判定にて肯定された場合は、S7が行われるようにしてもよい。逆に、S7乃至S11を備えない車両の制御装置であってもよい。
【0064】
また、前述の実施例では、エンジン自動停止制御と記載していたが、運転者のブレーキ操作に伴った車両10の減速走行時や停車時に限らず、低速走行時にエンジンの自動停止を行うフリーラン等であってもよい。
【0065】
また、前述した複数の実施例はそれぞれ、例えば優先順位を設けるなどして、相互に組み合わせて実施することができる。
【0066】
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。