(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248874
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】画像処理システム、画像形成装置および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
H04N1/00 C
H04N1/00 107Z
【請求項の数】39
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-186416(P2014-186416)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-59009(P2016-59009A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2016年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 達児
【審査官】
宮島 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−33443(JP,A)
【文献】
特開2010−118788(JP,A)
【文献】
特開2006−339945(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0320412(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B41J 29/00 − 29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数の画像形成装置を含む、複数の装置グループを含んだ画像処理システムであって、
各装置グループは、
指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための問い合わせを自装置の属する装置グループとは異なる他の装置グループに含まれる画像形成装置に対して中継する第1の画像形成装置を含み、
前記各装置グループに含まれる第1の画像形成装置は、
自装置の属する装置グループに含まれる画像形成装置から前記問い合わせを受け付けた場合に、前記他の装置グループに含まれる第1の画像形成装置に対して前記問い合わせを要求する要求手段と、
前記問い合わせの要求に基づいて、前記他の装置グループに含まれる第1の画像形成装置から前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する第1の取得手段と、を備え、
前記装置グループに含まれる画像形成装置は、
前記他の装置グループに含まれる画像形成装置に対して、自装置の属する装置グループに含まれる第1の画像形成装置を介して、前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための問い合わせを行う問い合わせ手段と、
自装置の属する装置グループに含まれる第1の画像形成装置から前記問い合わせに対する回答を取得する第2の取得手段と、
前記取得した回答に基づいて、前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを選択可能に提示する提示手段と、を備える、画像処理システム。
【請求項2】
前記各装置グループは、
装置グループに含まれる画像形成装置が記憶しているジョブに関する情報を管理する第2の画像形成装置を含み、
前記各装置グループに含まれる第2の画像形成装置は、
自装置の属する装置グループに含まれる画像形成装置が記憶しているジョブに関する情報を管理する管理手段を備え、
前記各装置グループに含まれる第1の画像形成装置は、
他の装置グループに含まれる第1の画像形成装置から要求された前記問い合わせを受け付けた場合に、自装置の属する装置グループに含まれる第2の画像形成装置から前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する第3の取得手段をさらに備える、請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記各装置グループに含まれる第1の画像形成装置は、
前記第3の取得手段が取得した情報に基づいて、前記問い合わせを要求してきた他の装置グループに含まれる第1の画像形成装置に対して、前記問い合わせに対する回答を行う回答手段をさらに備える、請求項2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記装置グループに含まれる画像形成装置は、
前記第2の取得手段が取得した回答に基づいて、前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブのジョブに関する情報を、当該指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置から取得する第4の取得手段をさらに備える、請求項3に記載
の画像処理システム。
【請求項5】
前記提示手段は、前記第4の取得手段が取得したジョブに関する情報に基づいて、前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを選択可能に提示し、
前記装置グループに含まれる画像形成装置は、
前記提示手段に提示されたジョブのうち選択を受け付けたジョブを、当該ジョブを記憶している画像形成装置から取得する第5の取得手段をさらに備える、請求項4に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記装置グループに含まれる画像形成装置は、
ジョブを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたジョブを特定するための情報を、ユーザーを特定するための情報と関連付けて、自装置の属する装置グループに含まれる第2の画像形成装置に対して通知する通知手段とをさらに備える、請求項2〜5のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記装置グループに含まれる画像形成装置は、
自装置の属する装置グループに含まれる画像形成装置に対して、前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための問い合わせを行う第2の問い合わせ手段をさらに備える、請求項1〜6のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項8】
前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブは、前記装置グループに含まれる画像形成装置にログインしたユーザーのジョブである、請求項1〜7のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項9】
前記装置グループに含まれる第1の画像形成装置は、
他の画像形成装置との接続数が、予め規定されたしきい値に達したか否かを判断するための判断手段と、
前記接続数が前記しきい値に達している場合に、自装置の属する装置グループに含まれる他の画像形成装置との接続の内容を解析し、予め記憶されている接続内容についての優先度に基づいて優先順位を特定するための特定手段と、
前記接続数が前記しきい値内となるまで、前記自装置の属する装置グループに含まれる他の画像形成装置との接続を、前記優先順位に従って切断するための切断手段とをさらに備える、請求項1〜8のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項10】
前記装置グループに含まれる第1の画像形成装置は、
前記他の画像形成装置に対して、前記切断手段で接続を切断する際に、当該切断の後の再接続を要求するための再接続要求手段をさらに備える、請求項9に記載の画像処理システム。
【請求項11】
前記再接続要求手段による要求は、前記切断から前記再接続までの待機時間を含む、請求項10に記載の画像処理システム。
【請求項12】
前記切断手段による切断は、さらに、前記第1の画像形成装置の負荷状況にも基づいて前記他の画像形成装置との接続を切断することを含む、請求項9〜11のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項13】
前記装置グループに含まれる第1の画像形成装置は、
他の画像形成装置との接続数が、予め規定されたしきい値に達したか否かを判断するための判断手段をさらに備え、
前記接続数が前記しきい値に達している場合に、前記第3の取得手段は、受け付けた1つ以上の問い合わせを1つの問い合わせとして、当該1つの問い合わせに対応する、前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する、請求項2〜6のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項14】
それぞれ複数の画像形成装置を含む、複数の装置グループを含んだ画像処理システムに含まれる仲介画像形成装置として機能する画像形成装置であって、
自装置の属する装置グループに含まれる、指定されたユーザーに関連付けられたジョブを選択可能に提示する提示手段を備える画像形成装置から前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための問い合わせを受け付けた場合に、前記自装置の属する装置グループとは異なる他の装置グループに含まれる仲介画像形成装置に対して前記問い合わせを要求する要求手段と、
前記問い合わせの要求に基づいて、前記他の装置グループに含まれる仲介画像形成装置から前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する第1の取得手段と、
前記第1の取得手段が取得した情報に基づいて、前記問い合わせを行った画像形成装置に対して、前記問い合わせに対する回答を行う回答手段と、
前記他の装置グループに含まれる仲介画像形成装置から前記問い合わせの要求を受け付けた場合に、前記自装置の属する装置グループに含まれる所定の画像形成装置から前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する第2の取得手段と、を備える、画像形成装置。
【請求項15】
前記所定の画像形成装置は、自装置の属する装置グループに含まれる画像形成装置が記憶しているジョブに関する情報を管理する画像形成装置である、請求項14に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記第2の取得手段が取得した情報に基づいて、前記問い合わせを要求してきた他の装置グループに含まれる仲介の画像形成装置に対して、前記問い合わせに対する回答を行う回答手段をさらに備える、請求項14または15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブのジョブに関する情報を、当該指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置から取得する第3の取得手段をさらに備える、請求項14〜16のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項18】
指定されたユーザーに関連付けられたジョブを選択可能に提示する提示手段と、
前記提示手段に提示されたジョブのうち選択を受け付けたジョブを、当該ジョブを記憶している画像形成装置から取得する第4の取得手段とをさらに備える、請求項17に記載の画像形成装置。
【請求項19】
ジョブを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたジョブを特定するための情報を、ユーザーを特定するための情報と関連付けて、前記所定の画像形成装置に対して通知する通知手段とをさらに備える、請求項14〜18のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項20】
自装置の属する装置グループに含まれる画像形成装置に対して、前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための問い合わせを行う問い合わせ手段をさらに備える、請求項14〜19のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項21】
前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブは、前記装置グループに含まれる画像形成装置にログインしたユーザーのジョブである、請求項14〜20のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項22】
他の画像形成装置との接続数が、予め規定されたしきい値に達したか否かを判断するための判断手段と、
前記接続数が前記しきい値に達している場合に、自装置の属する装置グループに含まれる他の画像形成装置との接続の内容を解析し、予め記憶されている接続内容についての優先度に基づいて優先順位を特定するための特定手段と、
前記接続数が前記しきい値内となるまで、前記自装置の属する装置グループに含まれる他の画像形成装置との接続を、前記優先順位に従って切断するための切断手段とをさらに備える、請求項14〜21のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項23】
前記他の画像形成装置に対して、前記切断手段で接続を切断する際に、当該切断の後の再接続を要求するための再接続要求手段をさらに備える、請求項22に記載の画像形成装置。
【請求項24】
前記再接続要求手段による要求は、前記切断から前記再接続までの待機時間を含む、請求項23に記載の画像形成装置。
【請求項25】
前記切断手段による切断は、さらに、当該画像形成装置の負荷状況にも基づいて前記他の画像形成装置との接続を切断することを含む、請求項22〜24のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項26】
他の画像形成装置との接続数が、予め規定されたしきい値に達したか否かを判断するための判断手段をさらに備え、
前記接続数が前記しきい値に達している場合に、前記第2の取得手段は、受け付けた1つ以上の問い合わせを1つの問い合わせとして、当該問い合わせに対応する、前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する、請求項14〜21のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項27】
それぞれ複数の画像形成装置を含む、複数の装置グループを含んだ画像処理システムに含まれる仲介画像形成装置として機能する画像形成装置に搭載されるコンピュータを制御するための制御プログラムであって、
前記制御プログラムは前記コンピュータに、
前記仲介画像形成装置の属する装置グループに含まれる、指定されたユーザーに関連付けられたジョブを選択可能に提示する提示手段を備える画像形成装置から前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための問い合わせを受け付けた場合に、前記仲介画像形成装置の属する装置グループとは異なる他の装置グループに含まれる仲介画像形成装置に対して前記問い合わせを要求するステップと、
前記問い合わせの要求に基づいて、前記他の装置グループに含まれる仲介画像形成装置から前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する第1の取得ステップと、
前記第1の取得ステップにおいて取得した情報に基づいて、前記問い合わせを行った画像形成装置に対して、前記問い合わせに対する回答を行うステップと、
前記他の装置グループに含まれる仲介画像形成装置から前記問い合わせの要求を受け付けた場合に、前記仲介画像形成装置の属する装置グループに含まれる所定の画像形成装置から前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する第2の取得ステップとを実行させる、制御プログラム。
【請求項28】
前記所定の画像形成装置は、前記仲介画像形成装置の属する装置グループに含まれる画像形成装置が記憶しているジョブに関する情報を管理する画像形成装置である、請求項27に記載の制御プログラム。
【請求項29】
前記制御プログラムは、前記コンピュータに、
前記画像形成装置を特定するための情報を取得する第2の取得ステップにより取得された情報に基づいて、前記問い合わせを要求してきた他の装置グループに含まれる仲介の画像形成装置に対して、前記問い合わせに対する回答を行うステップをさらに実行させる、請求項27または28に記載の制御プログラム。
【請求項30】
前記制御プログラムは、前記コンピュータに、
前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブのジョブに関する情報を、当該指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置から取得する第3の取得ステップをさらに実行させる、請求項27〜29のいずれかに記載の制御プログラム。
【請求項31】
指定されたユーザーに関連付けられたジョブを選択可能に提示するステップと、
前記提示するステップにおいて提示されたジョブのうち選択を受け付けたジョブを、当該ジョブを記憶している画像形成装置から取得する第4の取得ステップとをさらに実行させる、請求項30に記載の制御プログラム。
【請求項32】
前記仲介画像形成装置は、ジョブを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記制御プログラムは、前記コンピュータに、
前記記憶手段に記憶されたジョブを特定するための情報を、ユーザーを特定するための情報と関連付けて、前記所定の画像形成装置に対して通知するステップをさらに実行させる、請求項27〜31のいずれかに記載の制御プログラム。
【請求項33】
前記制御プログラムは、前記コンピュータに、
前記仲介画像形成装置の属する装置グループに含まれる画像形成装置に対して、前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための問い合わせを行うステップをさらに実行させる、請求項27〜32のいずれかに記載の制御プログラム。
【請求項34】
前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブは、前記装置グループに含まれる画像形成装置にログインしたユーザーのジョブである、請求項27〜33のいずれかに記載の制御プログラム。
【請求項35】
前記制御プログラムは、前記コンピュータに、
他の画像形成装置との接続数が、予め規定されたしきい値に達したか否かを判断するステップと、
前記接続数が前記しきい値に達している場合に、前記仲介画像形成装置の属する装置グ
ループに含まれる他の画像形成装置との接続の内容を解析し、予め記憶されている接続内容についての優先度に基づいて優先順位を特定するステップと、
前記接続数が前記しきい値内となるまで、前記仲介画像形成装置の属する装置グループに含まれる他の画像形成装置との接続を、前記優先順位に従って切断するステップとをさらに実行させる、請求項27〜34のいずれかに記載の制御プログラム。
【請求項36】
前記制御プログラムは、前記コンピュータに、
前記他の画像形成装置に対して、前記切断するステップにより接続が切断される際に、当該切断の後の再接続を要求するステップをさらに実行させる、請求項35に記載の制御プログラム。
【請求項37】
前記再接続を要求するステップによる要求は、前記切断から前記再接続までの待機時間を含む、請求項36に記載の制御プログラム。
【請求項38】
前記切断するステップによる切断は、さらに、当該画像形成装置の負荷状況にも基づいて前記他の画像形成装置との接続を切断することを含む、請求項35〜37のいずれかに記載の制御プログラム。
【請求項39】
前記制御プログラムは、前記コンピュータに、
他の画像形成装置との接続数が、予め規定されたしきい値に達したか否かを判断するステップをさらに実行させ、
前記接続数が前記しきい値に達している場合に、前記画像形成装置を特定するための情報を取得する第2の取得ステップは、受け付けた1つ以上の問い合わせを1つの問い合わせとして、当該問い合わせに対応する、前記指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得することを含む、請求項27〜34のいずれかに記載の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は画像処理システム、画像形成装置および制御プログラムに関し、特に、複数の画像形成装置を含む画像処理システム、画像形成装置および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のMFP(Multi-Functional Peripheral)などの画像形成装置をネットワークに接続し、いずれの画像形成装置にログインしてもプリント可能、いわゆるユビキタスでプリント可能なシステムが提案されている。このシステムは、ある局面ではユビキタスプリントシステムと呼ばれる。
【0003】
さらに、画像形成装置の高機能化に伴って画像形成装置がサーバー機能を持つようになったことから、該システムにはサーバーが含まれないようになってきている。このようなシステムは、サーバーレスユビキタスプリントシステム、などとも呼ばれる。
【0004】
サーバーレスユビキタスプリントシステムでは、いずれかの画像形成装置がサーバー機能を発揮してサーバーとして機能し、ユーザーがログインした画像形成装置に対してジョブ一覧を渡す。これにより、ユーザーはログインした画像形成装置で、当該ユーザー自身が発行し、サーバーとして機能する画像形成装置のメモリーに記憶されたジョブを確認し、プリントを指示することができる。
【0005】
このようなシステムは、たとえばオフィス環境において構築されることが多い。そのため、オフィスの拡大に伴って、システムにより多くの画像形成装置を含ませたいというニーズが高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−339945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、システムを構成する画像形成装置の台数が多くなると、1台の画像形成装置に対して、多数の画像形成装置からのアクセスを同時に処理するためのマルチ処理能力が要求されることになる。画像形成装置において上記マルチ処理を可能とするためには、高性能な演算装置や大容量のメモリーが必要となり、構成が複雑、高価になってしまう。一方で、システムにおいて、上記マルチ処理能力を有さない通常の画像形成装置の台数が増加した場合には、1台の画像形成装置に対して処理能力を超える台数の画像形成装置からのアクセスがあると当該画像形成装置とこれら他の画像形成装置との間で同時に通信が確立できない。そのため、処理対象のジョブを選択するためのジョブ一覧を表示するまでの時間が長くなってしまう。
【0008】
本開示はこのような問題に鑑みてなされたものであって、ある局面における目的は、画像処理システムに含まれる画像形成装置の台数が増加した場合であっても、高機能を要求することなく、処理時間の低下を抑えることができる画像処理システム、画像形成装置および制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態に従うと、それぞれ複数の画像形成装置を含む、複数の装置グループを含んだ画像処理システムであって、各装置グループは、指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための問い合わせを自装置の属する装置グループとは異なる他の装置グループに含まれる画像形成装置に対して中継する第1の画像形成装置を含み、各装置グループに含まれる第1の画像形成装置は、自装置の属する装置グループに含まれる画像形成装置から問い合わせを受け付けた場合に、他の装置グループに含まれる第1の画像形成装置に対して問い合わせを要求する要求手段
と、問い合わせの要求に基づいて、他の装置グループに含まれる第1の画像形成装置から指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する第1の取得手段と、を備える。装置グループに含まれる画像形成装置は、他の装置グループに含まれる画像形成装置に対して、自装置の属する装置グループに含まれる第1の画像形成装置を介して、指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための問い合わせを行う問い合わせ手段と、自装置の属する装置グループに含まれる第1の画像形成装置から問い合わせに対する回答を取得する第2の取得手段と、取得した回答に基づいて、指定されたユーザーに関連付けられたジョブを選択可能に提示する提示手段と、を備える。
【0010】
好ましくは、各装置グループは、装置グループに含まれる画像形成装置が記憶しているジョブに関する情報を管理する第2の画像形成装置を含み、各装置グループに含まれる第2の画像形成装置は、自装置の属する装置グループに含まれる画像形成装置が記憶しているジョブに関する情報を管理する管理手段を備え、各装置グループに含まれる第1の画像形成装置は、他の装置グループに含まれる第1の画像形成装置から要求された問い合わせを受け付けた場合に、自装置の属する装置グループに含まれる第2の画像形成装置から指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する
第3の取得手段をさらに備える。
【0011】
好ましくは、各装置グループに含まれる第1の画像形成装置は、
第3の取得手段が取得した情報に基づいて、問い合わせを要求してきた他の装置グループに含まれる第1の画像形成装置に対して、問い合わせに対する回答を行う回答手段をさらに備える。
【0012】
好ましくは、装置グループに含まれる画像形成装置は、第2の取得手段が取得した回答に基づいて、指定されたユーザーに関連付けられたジョブのジョブに関する情報を、当該指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置から取得する
第4の取得手段をさらに備える。
好ましくは、
提示手段は、第4の取得手段が取得したジョブに関する情報に基づいて、指定されたユーザーに関連付けられたジョブを選択可能に提示し、装置グループに含まれる画像形成装置は、
提示手段に提示されたジョブのうち選択を受け付けたジョブを、当該ジョブを記憶している画像形成装置から取得する
第5の取得手段とをさらに備える。
【0013】
好ましくは、
装置グループに含まれる第1の画像形成装置は、他の画像形成装置との接続数が、予め規定されたしきい値に達したか否かを判断するための判断手段と、接続数がしきい値に達している場合に、
自装置の属する装置グループ
に含まれる他の画像形成装置との接続の内容を解析し、予め記憶されている接続内容についての優先度に基づいて優先順位を特定するための特定手段と、接続数がしきい値内となるまで、
自装置の属する装置グループ
に含まれる他の画像形成装置との接続を、優先順位に従って切断するための切断手段とをさらに
備える。
【0014】
より好ましくは、
装置グループに含まれる第1の画像形成装置は、他の画像形成装置に対して、切断手段で接続を切断する際に、当該切断の後の再接続を要求するための再接続要求手段をさらに
備える。
【0015】
より好ましくは、再接続要求手段による要求は、切断から再接続までの待機時間を含む。
【0016】
好ましくは、切断手段による切断は、さらに、第1の画像形成装置の負荷状況にも基づいて他の画像形成装置との接続を切断することを含む。
【0017】
好ましくは、装置グループに含まれる第1の画像形成装置は、他の画像形成装置との接続数が、予め規定されたしきい値に達したか否かを判断するための判断手段をさらに含み、接続数がしきい値に達している場合に、
第3の取得手段は、受け付けた1つ以上の問い合わせを1つの問い合わせとして、当該1つの問い合わせに対応する、指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する。
【0019】
他の実施の形態に従うと、それぞれ複数の画像形成装置を含む、複数の装置グループを含んだ画像処理システムに含まれる
仲介画像形成装置として機能する画像形成装置であって、自装置の属する装置グループに含まれる
、指定されたユーザーに関連付けられたジョブを選択可能に提示する提示手段を備える画像形成装置から指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための問い合わせを受け付けた場合に、自装置の属する装置グループとは異なる他の装置グループに含まれる
仲介画像形成装置に対して問い合わせを要求する要求手段と、
問い合わせの要求に基づいて、他の装置グループに含まれる仲介画像形成装置から指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する第1の取得手段と、第1の取得手段が取得した情報に基づいて、問い合わせを行った画像形成装置に対して、問い合わせに対する回答を行う回答手段と、他の装置グループに含まれる
仲介画像形成装置から問い合わせの要求を受け付けた場合に、自装置の属する装置グループに含まれる所定の画像形成装置から指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する
第2の取得手段とを備える。
好ましくは、所定の画像形成装置は、自装置の属する装置グループに含まれる画像形成装置が記憶しているジョブに関する情報を管理する画像形成装置である。
好ましくは、画像形成装置は、
第2の取得手段が取得した情報に基づいて、問い合わせを要求してきた他の装置グループに含まれる
仲介の画像形成装置に対して、問い合わせに対する回答を行う回答手段をさらに備える。
好ましくは、画像形成装置は、指定されたユーザーに関連付けられたジョブのジョブに関する情報を、当該指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置から取得する
第3の取得手段をさらに備える。
好ましくは、画像形成装置は、
指定されたユーザーに関連付けられたジョブを選択可能に提示する提示手段と、提示手段に提示されたジョブのうち選択を受け付けたジョブを、当該ジョブを記憶している画像形成装置から取得する
第4の取得手段をさらに備える。
好ましくは、画像形成装置は、ジョブを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されたジョブを特定するための情報を、ユーザーを特定するための情報と関連付けて、所定の画像形成装置に対して通知する通知手段とをさらに備える。
好ましくは、画像形成装置は、自装置の属する装置グループに含まれる画像形成装置に対して、指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための問い合わせを行う問い合わせ手段をさらに備える。
好ましくは、指定されたユーザーに関連付けられたジョブは、装置グループに含まれる画像形成装置にログインしたユーザーのジョブである。
【0020】
好ましくは、画像形成装置は、他の画像形成装置との接続数が、予め規定されたしきい値に達したか否かを判断するための判断手段と、接続数がしきい値に達している場合に、
自装置の属する装置グループ
に含まれる他の画像形成装置との接続の内容を解析し、予め記憶されている接続内容についての優先度に基づいて優先順位を特定するための特定手段と、接続数がしきい値内となるまで、
自装置の属する装置グループ
に含まれる他の画像形成装置との接続を、優先順位に従って切断するための切断手段とをさらに
備える。
【0021】
より好ましくは、画像形成装置は、他の画像形成装置に対して、切断手段で接続を切断する際に、当該切断の後の再接続を要求するための再接続要求手段をさらに備える。
【0022】
より好ましくは、再接続要求手段による要求は、切断から再接続までの待機時間を含む。
【0023】
好ましくは、切断手段による切断は、さらに、当該画像形成装置の負荷状況にも基づいて他の画像形成装置との接続を切断することを含む。
【0024】
好ましくは、画像形成装置は、他の画像形成装置との接続数が、予め規定されたしきい値に達したか否かを判断するための判断手段をさらに備え、接続数がしきい値に達している場合に、第
2の取得手段は、受け付けた1つ以上の問い合わせを1つの問い合わせとして、当該問い合わせに対応する、指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する。
【0026】
他の実施の形態に従うと、それぞれ複数の画像形成装置を含む、複数の装置グループを含んだ画像処理システムに含まれる仲介画像形成装置
として機能する画像形成装置に搭載されるコンピュータを制御するための制御プログラムであって、制御プログラムはコンピュータに、仲介画像形成装置の属する装置グループに含まれる
、指定されたユーザーに関連付けられたジョブを選択可能に提示する提示手段を備える画像形成装置から指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための問い合わせを受け付けた場合に、仲介画像形成装置の属する装置グループとは異なる他の装置グループに含まれる
仲介画像形成装置に対して問い合わせを要求するステップと、
問い合わせの要求に基づいて、他の装置グループに含まれる仲介画像形成装置から指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する第1の取得ステップと、第1の取得ステップにおいて取得した情報に基づいて、問い合わせを行った画像形成装置に対して、問い合わせに対する回答を行うステップと、他の装置グループに含まれる
仲介画像形成装置から問い合わせの要求を受け付けた場合に、仲介画像形成装置の属する装置グループに含まれる所定の画像形成装置から指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得する
第2の取得ステップとを実行させる。
好ましくは、所定の画像形成装置は、仲介画像形成装置の属する装置グループに含まれる画像形成装置が記憶しているジョブに関する情報を管理する画像形成装置である。
好ましくは、制御プログラムは、コンピュータに、画像形成装置を特定するための情報を取得する
第2の取得ステップにより取得された情報に基づいて、問い合わせを要求してきた他の装置グループに含まれる
仲介の画像形成装置に対して、問い合わせに対する回答を行うステップをさらに実行させる。
好ましくは、制御プログラムは、コンピュータに、指定されたユーザーに関連付けられたジョブのジョブに関する情報を、当該指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置から取得する
第3の取得ステップをさらに実行させる。
好ましくは、制御プログラムは、コンピュータに、
指定されたユーザーに関連付けられたジョブを選択可能に提示するステップと、提示するステップにおいて提示されたジョブのうち選択を受け付けたジョブを、当該ジョブを記憶している画像形成装置から取得する
第4の取得ステップとをさらに実行させる。
好ましくは、仲介画像形成装置は、ジョブを記憶する記憶手段をさらに備え、制御プログラムは、コンピュータに、記憶手段に記憶されたジョブを特定するための情報を、ユーザーを特定するための情報と関連付けて、所定の画像形成装置に対して通知するステップをさらに実行させる。
好ましくは、制御プログラムは、コンピュータに、仲介画像形成装置の属する装置グループに含まれる画像形成装置に対して、指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための問い合わせを行うステップをさらに実行させる。
好ましくは、指定されたユーザーに関連付けられたジョブは、装置グループに含まれる画像形成装置にログインしたユーザーのジョブである。
好ましくは、制御プログラムは、コンピュータに、他の画像形成装置との接続数が、予め規定されたしきい値に達したか否かを判断するステップと、接続数がしきい値に達している場合に、仲介画像形成装置の属する装置グループに含まれる他の画像形成装置との接続の内容を解析し、予め記憶されている接続内容についての優先度に基づいて優先順位を特定するステップと、接続数がしきい値内となるまで、仲介画像形成装置の属する装置グループに含まれる他の画像形成装置との接続を、優先順位に従って切断するステップとをさらに実行させる。
好ましくは、制御プログラムは、コンピュータに、他の画像形成装置に対して、切断するステップにより接続が切断される際に、当該切断の後の再接続を要求するステップをさらに実行させる。
好ましくは、再接続を要求するステップによる要求は、切断から再接続までの待機時間を含む。
好ましくは、切断するステップによる切断は、さらに、当該画像形成装置の負荷状況にも基づいて他の画像形成装置との接続を切断することを含む。
好ましくは、制御プログラムは、コンピュータに、他の画像形成装置との接続数が、予め規定されたしきい値に達したか否かを判断するステップをさらに実行させ、接続数がしきい値に達している場合に、画像形成装置を特定するための情報を取得する
第2の取得ステップは、受け付けた1つ以上の問い合わせを1つの問い合わせとして、当該問い合わせに対応する、指定されたユーザーに関連付けられたジョブを記憶している画像形成装置を特定するための情報を取得することを含む。
【発明の効果】
【0027】
この発明によると、画像処理システムに含まれる画像形成装置の台数が増加した場合であっても、画像形成装置に対して高機能を要求することなく、処理時間の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施の形態にかかる画像処理システム(以下、システム)の構成の具体例を示す図である。
【
図2】システムに含まれるMFP(Multi-Functional Peripheral)の装置構成の具体例を示すブロック図である。
【
図4】要求内容ごとに予め規定されている優先度の具体例を表わした図である。
【
図5】MFPの機能構成の具体例を表わしたブロック図である。
【
図6】MFPの機能構成の具体例を表わしたブロック図である。
【
図7】MFPの機能構成の具体例を表わしたブロック図である。
【
図8】MFPでの動作の流れを表わしたフローチャートである。
【
図9】MFPでの動作の流れを表わしたフローチャートである。
【
図10】MFPでの動作の流れを表わしたフローチャートである。
【
図11】
図8のステップS171での処理の一例を表わした図である。
【
図12】
図8のステップS171での処理の他の例を表わした図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
【0030】
<システム構成>
図1は、本実施の形態にかかる画像処理システム(以下、システム)の構成の具体例を示す図である。
図1を参照して、本システムは、印刷機能を有する画像形成装置の一例としての複数のMFP(Multi-Functional Peripheral)100A−1,100A−2,…,100B−1,100B−2,…を含み、これらがネットワークを介して接続されている。複数台のMFPを代表させて、MFP100と総称する。
【0031】
印刷機能を有する画像形成装置はMFPに限定されず、プリンターであってもよい。
該ネットワークには、情報処理装置の一例としてのPC(パーソナルコンピューター)300A,300Bが通信可能に接続されている。PC300A,300Bは、本システムに含まれるMFP100に対してジョブを発行することが可能である。
【0032】
<装置構成>
図2は、MFP100の装置構成の具体例を示すブロック図である。
図2を参照して、MFP100は、装置全体を制御するためのCPU(Central Processing Unit)10と、CPU10で実行されるプログラムを記憶するためのメモリーであるROM(Read Only Memory)11と、CPU10でプログラムを実行する際の作業領域となるメモリーであるRAM(Random Access Memory)12と、画像データなどを記憶するための大容量記憶装置の一例であるHDD(Hard Disk Drive)13と、スキャナー14と、プリンター15と、操作パネル16と、ネットワークを介した他の装置との間の通信を行なうための通信インターフェース(I/F)17とを含む。
【0033】
<動作概要>
PCなどの、本システムに接続可能な情報処理装置からは、本システムに含まれるMFPに対して印刷用のジョブ(以下、単に「ジョブ」とも称する)が転送される。印刷用のジョブは、たとえばPJL(Printer Job Language)などの印刷動作を制御するためのコマンドと、印刷用の画像とを含む。
【0034】
上記ジョブを受け付けたMFPは、ジョブを当該ユーザーに関連付けてメモリーに記憶する。ジョブをメモリーに記憶しているMFPを「ストレージMFP」とも称する。
【0035】
本システムに含まれるMFPは、ユーザーのログインを受け付ける。ユーザーのログインしたMFPを「クライアントMFP」とも称する。
【0036】
クライアントMFPは、ログインユーザーに関連付けられたジョブを特定する情報など、当該ジョブに関する情報であるジョブ情報を、システム内の他のMFPに対して要求する。すなわち、クライアントMFPは他のMFPにログインユーザーに関連付けられたジョブの有無を問い合わせ、該当するジョブをメモリーに記憶しているストレージMFPは、当該問合せに応じて該当するジョブのジョブ情報をクライアントMFPに返す。ジョブ情報は、当該ジョブを特定可能な情報である特定情報および該ジョブをメモリーに記憶しているMFPを識別可能な識別情報を含む。ジョブを特定
可能な情報は、たとえば、当該ジョブを発行したユーザー名およびファイル名を含む。
【0037】
クライアントMFPは、ストレージMFPから得られたジョブ情報に基づいてログインユーザーに関連付けられたジョブのリストを選択可能に提示する。ユーザーが提示されたリストの中から印刷を希望するジョブを選択することで、クライアントMFPは当該ジョブをメモリーに記憶しているストレージMFPから取得し、印刷処理を実行する。
【0038】
以上の動作を行なうシステムは「サーバーレスユビキタスシステム」とも呼ばれる。サーバーレスユビキタスシステムを利用することで、ユーザーは、システムのいずれかのMFPに対してジョブを発行し、また、いずれかのMFPにログインすることでログインしたMFPでそのジョブの印刷処理を実行させ、印刷物を得ることができる。つまり、ユーザーは、ジョブがどのMFPに記憶されているかを意識することなく、システム内の任意のMFPに任意のタイミングでログインして、当該MFPにジョブの印刷処理を実行させることができる。
【0039】
ところが、
図1に表わされたように、システムに多数のMFPが含まれている場合、クライアントMFPは多くのMFPに対してログインユーザーに関連付けられたジョブの有無を問い合わせなければならなくなる。システムに含まれるMFPの数が多くなるほど、クライアントMFPで一度に行なう処理の量が増加する。これは、クライアントMFPに高度の処理能力を要求することにつながる。また、リストが表示されるまでの時間が長くなり、ユーザーの操作性が著しく低下することにもつながる。
【0040】
そこで、本システムは、それぞれ複数のMFPからなる、複数の装置グループに分けられている。
図1の例では、MFP100A−1,100A−2,…でグループA、MFP100B−1,100B−2,…でグループBを構成している。各装置グループに含まれる複数のMFPのうちの1台のMFPは、他の装置グループ(他装置グループ)との間の通信を中継する。言い換えると、各装置グループには、他装置グループとの間の通信を中継可能なMFPが含まれる。
【0041】
ここで、第1のMFPが第2のMFPに対して、第3のMFPと通信することを要求したとする。そして、その要求に応じて、第2のMFPが第3のMFPと通信し、その通信結果を、第2のMFPが第1のMFPに回答するとする。すると、この一連の通信は、第1のMFPと第3のMFPとの間の通信を、第2のMFPが中継したことになる。つまり、第1のMFPは第2のMFPを間に挟んで第3のMFPと通信したことになる。第2のMFPによる、このような通信の中継を、以降の説明では「仲介」とも称する。以降の説明において、装置グループの含まれる複数のMFPのうちの他装置グループとの間の通信を中継可能なMFPを「仲介MFP」とも称する。
【0042】
各装置グループの含まれるMFPは、それぞれ、自グループの仲介MFPのアクセス先を予め記憶している。クライアントMFPは、自身の属する装置グループ(自装置グループ)外の他装置グループ内のMFPについては、自装置グループの仲介MFPに対して、ログインユーザーに関連付けられたジョブを記憶しているか否かを各MFPに問い合わせることを要求する。以降の説明において、ログインユーザーに関連付けられたジョブを記憶しているか否かを各MFPに問い合わせることの要求を、単に、「問い合わせ要求」とも称する。
【0043】
仲介MFPであるMFPは、さらに、他装置グループの仲介MFPのアクセス先を予め記憶している。そして、仲介MFPは、自装置グループ内のMFPから上記の要求を受け付けると、他装置グループの仲介MFPに対して、各装置グループ内のMFPへの問い合わせ要求を行なう。
【0044】
他装置グループの仲介MFPから上記の要求を受け付けると、仲介MFPは、自装置グループに属する各MFPに対して、指定されたログインユーザーに関連付けられたジョブをメモリーに記憶しているか否かを問い合わせてもよい。このようにすることで、クライアントMFPがシステム内のすべてのMFPに対して問い合わせるよりも通信量を抑えることができる。
【0045】
しかしながら、このようにすると、各仲介MFPの通信量が増加することになる。そこで、好ましくは、各装置グループに含まれる複数のMFPのうちの1台のMFPが、自装置グループ内の各MFPにおけるジョブのメモリーでの格納状況を管理する。言い換えると、各装置グループには、自装置グループ内のMFPでのジョブのメモリーでの格納状況を管理可能なMFPが含まれる。以降の説明において、装置グループに含まれる複数のMFPのうちの自装置グループ内のMFPでのジョブのメモリーでの格納状況を管理可能なMFPを「管理MFP」とも称する。管理MFPであるMFPは、自装置グループ内の各MFPがメモリーに記憶しているジョブの情報を、自身のメモリー、あるいは、アクセス可能な他の装置のメモリーのデータベースに登録する。
【0046】
管理MFPでの管理を実現するため、好ましくは、各MFPは自装置グループの管理MFPのアクセス先を予め記憶しておき、ジョブをメモリーに格納するたびに管理MFPに対して通知する。または、管理MFPは、所定の時間間隔など予め規定されたタイミングで自装置グループ内の各MFPに対してメモリーに記憶しているジョブのジョブ情報を要求し、それに基づいてデータベースへの登録、または更新を行なうようにしてもよい。
【0047】
上記の要求を受け付けた各装置グループの仲介MFPは、自装置グループの管理MFPに対して、指定されたログインユーザーに関連付けられたジョブをメモリーに記憶しているストレージMFPを問い合わせ、その回答を得る。言い換えると、管理MFPは、自装置グループの仲介MFPからの問い合わせに対して、メモリーを参照して指定されたログインユーザーに関連付けられたジョブを記憶しているストレージMFPを特定し、当該ストレージMFPを特定し得る情報を仲介MFPに対して送信する。以降、要求に応じて、ストレージMFPを特定し得る情報を要求元のMFPに対して送信することを「回答する」とも称する。
【0048】
管理MFPは、上記の要求を行なった他装置グループの仲介MFPに対して、指定されたログインユーザーに関連付けられたジョブを記憶しているストレージMFPを回答する。その回答を転送されたクライアントMFPは、ストレージMFPに対して、直接、リスト表示のためのジョブ情報を要求する。これにより、クライアントMFPは、本システムに含まれるすべてのMFPに対してジョブの有無を問い合わせるための通信を行なうことなく、自装置グループの仲介MFPに対して問い合わせを要求することで、他装置グループに属するMFPのうちのログインユーザーに関連付けられたジョブを記憶しているストレージMFPを特定し、そのMFPのみと通信することでジョブ情報を得ることができる。また、仲介MFPも、他装置グループの仲介MFPからの上記要求に応じて自装置グループ内のすべてのMFPに当該ジョブの有無を問い合わせることなく管理MFPにのみ問い合わせることで、自装置グループ内のストレージMFPを特定し、他装置グループの仲介MFPに回答することができる。
【0049】
図3は、本システムでの動作概要を表わした図である。
図3において、MFP100A−4がグループAの仲介MFP、MFP100A−3がグループAの管理MFP、およびMFP100B−1がグループBの仲介MFPであるものとする。
【0050】
図3を参照して、ユーザーがPC300Aでジョブを作成し、発行操作を行なうと、当該ジョブはPC300AからMFP100A−1に渡され(ステップS1)、メモリーに格納される(ステップS2)。これにより、MFP100A−1は、当該ジョブについてのストレージMFPとなる。
【0051】
PC300Aからのジョブの発行操作は、たとえばユーザーがPC300Aにインストールされている文書作成用のアプリケーションを利用して文書ファイルを作成し、プリンタードライバーを利用して印刷を指示する操作が該当する。プリンタードライバーは、文書作成用アプリケーションから渡された文書ファイルを印刷可能な画像に展開し、さらに、ユーザーの印刷設定に従った制御信号を付加して印刷用のジョブを生成する。そして、プリンタードライバーは、MFP100A−1に対して当該ジョブを転送する。転送先であるMFP100A−1は、予めPC300Aあるいは当該ユーザーに対応付けられていてもよいし、ユーザー指示に応じて決定されるものであってもよいし、ジョブ発行時のシステム内のMFP100の格納状況に応じて動的に決定されるものであってもよい。
【0052】
ストレージMFPであるMFP100A−1は、当該ジョブのジョブ情報を自装置グループの管理MFPであるMFP100A−3に送信することで、当該ジョブのメモリーへの格納を管理MFPに通知する(ステップS3)。管理MFPであるMFP100A−3は、通知されたジョブ情報を管理用のデータベースに登録する(ステップS4)。
【0053】
次に、ユーザーは、自身に関連付けられたジョブをメモリーに記憶しているMFP100A−1とは異なる、グループBのMFP100B−4にログインするとする。これは、たとえば、自席のPC300Aからジョブを発行した後、会議室や他のフロアなどに移動してそこに設置されているMFPにログインする、などの場面が想定される。ユーザーによってログインされたMFP100B−4は、クライアントMFPとなる。
【0054】
クライアントMFPであるMFP100B−4は、自装置グループであるグループB内の各MFP100に対しては、ログインユーザーに関連付けられてメモリーに記憶されているジョブのジョブ情報を要求する(ステップS5)。
【0055】
この要求を受けた、グループB内の各MFP100は、通常のユビキタスシステムに含まれるMFPと同様に、自身のメモリーに該当するジョブが記憶されているか否かを確認し、記憶されていたらジョブ情報をクライアントMFPに返す、という処理を行なう。これに加えて、グループBの仲介MFPであるMFP100B−1は、他の装置グループの仲介MFPに対して当該他装置グループ内の各MFPに対して、該当するジョブを記憶しているか否かの問い合わせを行なうよう要求する(ステップS6)。
【0056】
グループBの仲介MFPであるMFP100B−1から上記要求を受け付けたグループAの仲介MFPであるMFP100A−4は、グループAの管理MFPであるMFP100A−3に該当するジョブを記憶しているストレージMFPを問い合わせる(ステップS7)。
【0057】
上記問い合わせを受けた管理MFPであるMFP100A−3は、管理用のデータベースを参照して該当するジョブを記憶しているMFPを特定し、MFP100A−4に回答する(ステップS8)。この例の場合、MFP100A−3はストレージMFPとしてMFP100A−1を特定し、MFP100A−4に回答する。
【0058】
グループAの管理MFPであるMFP100A−3から上記回答を受けたグループAの仲介MFPであるMFP100A−4は、その回答を、グループBの仲介MFPであるMFP100B−1に転送する(ステップS9)。グループBの仲介MFPであるMFP100B−1は、MFP100B−4に、該当するジョブを記憶しているストレージMFPを回答する(ステップS10)。すなわち、この例の場合、MFP100B−1はクライアントMFPであるMFP100B−4に対して、ログインユーザーに関連付けてジョブを記憶しているストレージMFPがMFP100A−1であることを回答する。
【0059】
クライアントMFPであるMFP100B−4は、上記回答に基づいてストレージMFPであるMFP100A−1に対して、リスト表示のために、該当するジョブのジョブ情報を要求し(ステップS11)、MFP100A−1からジョブ情報を取得する(ステップS12)。MFP100B−4は、操作パネル16に、各MFPから取得したジョブ情報に基づいてログインユーザーの発行したジョブのリストを選択可能に表示する(ステップS13)。
【0060】
クライアントMFPであるMFP100B−4は、ユーザーから処理対象のジョブを選択する操作を受け付けると、該当するジョブをストレージMFPに対して要求する。たとえば、MFP100A−1に記憶されているジョブが選択されたとすると、
図3に示されたように、MFP100B−4は、当該ジョブのストレージMFPである100A−1に対して当該ジョブを要求し(ステップS14)、取得する(ステップS15)。そして、MFP100B−4は、ユーザー指示に従って当該ジョブの印刷処理を実行する(ステップS16)。
【0061】
本システムにおいて以上の動作が行なわれることで、クライアントMFPが他のMFPに対してリスト表示用のジョブ情報を要求するための通信量を抑えることができる。
【0062】
しかしながら、仲介MFPに対しては、自装置グループ内のMFPからのジョブ情報の要求に加えて、他装置グループの仲介MFPから自装置グループ内の該当するジョブを記憶しているMFPを問い合わせることの要求もなされる。そのため、仲介MFPで同時に発生する処理量が増加する場合もある。
【0063】
そこで、好ましくは、仲介MFPであるMFPは、予め同時に確立可能な通信数のしきい値を記憶しておく。そして、仲介MFPに対する通信要求が発生するたびに、仲介MFPは通信数をカウントし、上記しきい値に達しているか否かを判断する。そして、好ましくは、仲介MFPは、通信要求の数が上記しきい値に達した場合に、通信数を削減するための処理を実行する。
【0064】
通信数を削減するための処理の第1の例として、仲介MFPであるMFPは通信によって要求される内容を解析し、予め記憶されている要求内容についての優先度に基づいて優先順位を特定する。そして、代表MFPは、通信数が上記しきい値内となるまで優先順位に従って通信を切断する。
【0065】
図4は、要求内容ごとに予め規定されている優先度の具体例を表わした図である。仲介MFPであるMFPには、一例として
図4のようなリスト形式で、接続内容ごとに優先度が規定されている。詳しくは、
図4を参照して、他装置グループの仲介MFPからの、特定のユーザーに関連付けられたジョブを記憶しているMFPの問い合わせ要求(他グループの仲介MFPからのストレージMFPの問い合わせ)は、優先度が高く設定され、優先順位が1位とされている。上記要求を受けた、管理MFPに対する該ジョブを記憶しているMFPの問い合わせ(管理MFPに対するストレージMFPの問い合わせ)も、優先度が高く設定され、優先順位が2位とされている。他のMFPから、ジョブをリスト表示するためのジョブ情報の要求(リスト表示のためのジョブ情報の要求)も、優先度が高く設定され、優先順位が3位とされている。当該MFPに対する印刷要求も、優先度が高く設定され、優先順位が4位とされている。
【0066】
一方、記憶しているファイルの要求、ジョブのリストにサムネイルを付加するためのサムネイル情報の要求(サムネイル表示のためのサムネイル情報の要求)、およびジョブのリストにプレビューを付加するためのプレビュー情報の要求(プレビュー表示のためのプレビュー情報の要求)については、優先度が低く設定されている。
【0067】
図4に例示されたように優先度(優先順位)が設定されることで、ユーザーが、本システムに含まれるMFPにログインしてジョブを指定し、印刷を指示したときの、一連の動作がスムーズに行なわれることになり、ユーザーの操作性の低下を抑えることができる。一方、ファイルの削除やサムネイル表示、プレビュー表示は、必ずしも即答性を必要としない場合もあるため、ユーザーの操作性の低下には必ずしもつながらない場合がある。
【0068】
図4の優先度の規定は、予め仲介MFPに登録されていてもよいし、管理者等の特定のユーザーによって登録、変更可能であってもよい。また、この登録は、仲介MFPの操作パネル16を用いた操作に従って行なわれるものであってもよいし、PC等、ネットワークを介した他の装置からの指示に従って行なわれるものであってもよい。さらに、
図4の優先度の規定内容は、仲介MFPごとに、つまりグループごとに異なっていてもよい。たとえば、グループごとに、当該グループの管理者に相当するユーザーが当該グループの仲介MFPであるMFPに対して設定するものであってもよい。
【0069】
仲介MFPであるMFPは、たとえばSOAP(Simple Object Access Protocol)などの通信プロトコルによって他のMFPから接続を要求するメッセージを受け付けると、所定期間に受け付けた当該メッセージの数が上記しきい値に達している場合、当該メッセージを解析して要求内容を特定する。そして、代表MFPは、各通信に対して、
図4の規定に基づいて優先順位を付与する。
【0070】
仲介MFPは、通信数が上記しきい値内となるまで、優先順位の低いものから順に通信を切断する。好ましくは、仲介MFPは、通信を切断する際に通信先のMFPに対して、ビジー通知など、切断理由を通知する。より好ましくは、仲介MFPは、通信を切断する際に通信先のMFPに対して、切断の後の再接続を要求する。このとき、仲介MFPは、現在の処理負荷に基づいて、切断の後、当該通信の接続が可能となるまでの時間を計算し、切断から再接続までの待機時間としてMFPに対して通知する。これにより、仲介MFPは効率的に通信を接続し、要求に応じた処理を行なうことができる。
【0071】
通信数を削減するための処理の第2の例として、仲介MFPであるMFPは他装置グループの仲介MFPからの問い合わせ要求に応じて管理MFPに対して行なう問い合わせを一定時間、待機し、その間の問い合わせを記憶しておく。そして、仲介MFPは、記憶しておいた問い合わせ群を1つの問い合わせとして管理MFPに転送する。これにより、他装置グループの仲介MFPに対して回答するまでの時間が少し長くなるものの、管理MFPとの間の通信を抑えることができる。
【0072】
<機能構成>
図5〜
図7は、上記の動作を行なうための、本システムに含まれるMFP100の機能構成の具体例を示すブロック図である。
図5〜
図7に表わされた各機能は、MFP100のCPU10がROM11に記憶(インストール)されているプログラムをRAM12上に読み出して実行することで、主に、CPU10で実現される。しかしながら、一部機能が
図2に表わされた他の構成、または、図示されていない電気回路などの他のハードウェア構成によって実現されてもよい。なお、
図5はMFP100が仲介MFPでも管理MFPでもない場合の機能構成、
図6は仲介MFPであった場合に
図5の構成に加わる機能構成、
図7は管理MFPであった場合に
図5の構成に加わる機能構成を表わしている。一例として、本システムに含まれるMFP100には、
図5〜
図7のすべての機能を発揮可能なプログラムが予めROM11にインストールされており、MFP100ごとに仲介MFPとするか管理MFPとするか、あるいはいずれにもしないか、の設定に応じて、CPU10が、発揮する機能を選択するようにしてもよい。上記設定は、たとえば管理者やサービスマンなどの特定のユーザーのみ可能であってもよい。
【0073】
図5を参照して、本システムに含まれるすべてのMFP100において、メモリーの一例であるHDD13は、ジョブを記憶するための記憶領域であるジョブ記憶部131を含む。
【0074】
さらに
図5を参照して、CPU10は、印刷用のジョブの入力を受け付けるためのジョブ入力部101と、ジョブをメモリーに格納し、記憶させるための格納部102と、予め管理MFPのアクセス先を通知先記憶部104に記憶しておき、記憶しているジョブに関する情報を管理MFPに通知するための通知部103と、ユーザーのログイン操作を受け付けてログイン処理を行なうためのログイン入力部105と、自装置グループ内のMFPに対してログインユーザーに関連付けられたジョブの有無を問い合わせ、ジョブ情報を要求するための問合せ部106と、仲介MFPのアクセス先を要求先記憶部115に記憶しておき、他装置グループ内のMFPに対する問い合わせを自装置グループの仲介MFPに要求するための第1要求部107と、他装置グループの仲介MFPからの回答に基づいて他装置グループのMFPのうちの該当するジョブを記憶しているストレージMFPを特定するための特定部108と、該当するジョブを記憶しているストレージMFPからジョブ情報の入力を受け付けるためのジョブ情報入力部109と、ジョブのリストを選択可能に操作パネル16に提示するための提示部110と、印刷するジョブの選択を受け付けるための選択部111と、選択されたジョブを記憶しているストレージMFPに当該ジョブを要求するための第2要求部112と、当該ジョブを記憶しているストレージMFPからジョブの入力を受け付けるためのジョブ入力部113と、当該ジョブに対してプリンター15を用いて印刷処理を行なうための処理部114とを含む。問合せ部106は、他装置グループの仲介MFPからの回答に基づいて他装置グループのMFPのうちの該当するジョブを記憶しているストレージMFPが特定されると、特定されたストレージMFPに対してジョブ情報を要求する。
【0075】
仲介MFPは、
図5の機能構成に加えて、さらに、
図6の機能構成を有する。すなわち、
図6を参照して、仲介MFPとしてのMFP100のCPU10は、通信I/F17を介して他のMFPからの要求を受け付けるための要求入力部120と、他装置グループの仲介MFPのアクセス先を要求先記憶部122に記憶しておき、受け付けた要求が自装置グループのMFPからの他装置グループのMFPへの上記問い合わせの要求であった場合に、他装置グループの仲介MFPに上記問い合わせを要求するための要求部121と、受け付けた要求が他装置グループの仲介MFPからの自装置グループ内の該当するジョブを記憶しているストレージMFPの問い合わせであった場合に、自装置グループの管理MFPに該当するジョブを記憶しているストレージMFPを問い合わせるための問合せ部123と、他装置グループの仲介MFPから上記要求に応じてストレージMFPの回答の入力を受け付けるための回答入力部124と、上記回答を自装置グループ内の問い合わせたMFPに対して転送するための転送部125とを含む。
【0076】
さらに、仲介MFPとしてのCPU10は、通信数を削減するための機能として、同時に処理を要求する通信数をカウントするためのカウント部126と、同時に確立可能な通信数のしきい値を記憶しておき、カウントされた通信数としきい値とを比較して通信数がしきい値に達しているか否かを判断するための判断部127と、判断結果に従って所定の通信を切断する処理を行なうための切断部128とを含む。
【0077】
切断部128は、
図4の優先度を記憶しておき、接続数がしきい値に達している場合に、通信によって要求される内容を解析して
図4の優先度に基づいて優先順位を特定するための特定部129を含み、接続数がしきい値内となるまで、自装置グループのMFPとの接続を優先順位に従って切断する。好ましくは、切断部128は、優先順位に加えて、当該MFP100の負荷状況にも基づいて他のMFPとの接続を切断する。
【0078】
好ましくは、切断部128は、切断する通信先に対して、切断の後の再接続を要求するための再接続要求部130をさらに含む。好ましくは、再接続要求部130は、切断から再接続までの待機時間を計算し、上記要求に待機時間を含む。
【0079】
好ましくは、問合せ部123は、接続数がしきい値に達している場合に、自装置グループの管理MFPに対する問い合わせを、一定期間、待機してその期間中の問い合わせを記憶しておき、当該一定期間の経過の後に、待機期間中の記憶しておいた1つ以上の問い合わせを1つの問い合わせとして管理MFPに対して行なう。
【0080】
管理MFPは、
図5の機能構成に加えて、さらに、
図7の機能構成を有する。すなわち、
図7を参照して、管理MFPとしてのMFP100のメモリーの一例であるHDD13は、自装置グループのMFPが記憶しているジョブの情報を記憶するための記憶領域であるジョブ情報記憶部132を含む。
【0081】
さらに
図7を参照して、管理MFPとしてのMFP100のCPU10は、自装置グループのMFPから当該MFPがメモリーに格納したジョブの通知を受け付けるための通知入力部141と、ジョブのジョブ情報をメモリーに登録することで、ジョブと当該ジョブのストレージMFPとの対応を記憶するための管理部142と、自装置グループの仲介MFPから指定されたログインユーザーに関連付けられたジョブを記憶しているMFPの問い合わせを受け付けると、該メモリーの登録を参照し、該当するストレージMFPを特定して回答するための問い合わせ対応部143とを含む。
【0082】
<動作概要>
図8〜
図12は、MFP100での動作の流れを表わしたフローチャートである。
図8〜
図12のフローチャートは、MFP100のCPU10がROM11に記憶されているプログラムをRAM12上に読み出して実行し、
図5〜
図7の機能を発揮することによって実現される。
【0083】
図8を参照して、CPU10は、PCなどの情報処理装置からジョブの発行を受け付けた場合(ステップS101でYES)、入力されたジョブをメモリーに格納して記憶させる(ステップS103)。そして、CPU10は、予め記憶している管理MFPに対して、ジョブのメモリーへの格納を通知する(ステップS105)。ステップS105でCPU10は、メモリーに格納したジョブを特定する情報、および当該ジョブを発行したユーザーを特定する情報を含むジョブ情報を管理MFPに転送する。ステップS101〜S105の処理は、MFP100がストレージMFPであるときの処理である。
【0084】
CPU10は、ユーザーのログインを受け付けた場合(ステップS101でNO、ステップS107でYES)、ログインユーザーに関連付けられたジョブを記憶しているMFPを問い合わせる(ステップS109)。ステップS109で、CPU10は、自装置グループの各MFPに対して問い合わせる。この問い合わせには、自装置グループの仲介MFPを介して他装置グループのMFPに対する問い合わせも含まれる。
【0085】
CPU10は、他装置グループのMFPのうちの該当するジョブを記憶しているMFPを特定した場合に、該MFPに対してジョブ情報を要求する(ステップS111)。自装置グループのMFPに対しては、上記の問い合わせがジョブ情報の要求となり得る。
【0086】
CPU10は、該当するジョブを記憶しているストレージMFPからジョブ情報を取得し、ジョブのリストを選択可能に操作パネル16に表示する(ステップS113)。その中から印刷するジョブの選択を受け付けると(ステップS115でYES)、CPU10は、選択されたジョブを、当該ジョブのストレージMFPに対して要求し(ステップS117)、取得したジョブを印刷処理する(ステップS119)。ステップS107〜S119の処理は、MFP100がクライアントMFPであるときの処理である。
【0087】
CPU10は、他のMFPから自身のメモリーに記憶しているジョブについてのジョブ情報の要求を受け付けた場合(ステップS101,S107でNO、ステップS121でYES)、該当するジョブのジョブ情報を送信する(ステップS123)。また、CPU10は、他のMFPから自身のメモリーに記憶しているジョブの要求を受け付けた場合(ステップS101,S107,S121でNO、ステップS125でYES)、該当するジョブを送信する(ステップS127)。ステップS121〜S123、およびステップS125〜S127の処理は、MFP100がストレージMFPであるときの処理である。
【0088】
図8および
図9を参照して、CPU10は、自装置グループのMFPから上記ステップS105のジョブの格納の通知を受け付けた場合(ステップS101,S107,S121,S125でNO、ステップS131でYES)、自身のメモリーに記憶されている管理用のデータベースにジョブ情報を登録する(ステップS133)。また、CPU10は、自装置グループの仲介MFPから指定されたログインユーザーに関連付けられたジョブを記憶しているMFPの問い合わせを受け付けた場合(ステップS101,S107,S121,S125,S131でNO、ステップS135でYES)、管理データベースを読み出して、該当するジョブを記憶しているストレージMFPを特定する(ステップS137)。そして、CPU10は、仲介MFPに対して当該ストレージMFPを回答する(ステップS139)。ステップS131〜S133、およびステップS135〜S139の処理は、MFP100が管理MFPであるときの処理である。
【0089】
図8〜
図10を参照して、CPU10は、他のMFPから指定されたログインユーザーに関連付けられたジョブを記憶しているMFPの問い合わせの要求を受け付けた場合(ステップS101,S107,S121,S125,S131,S135でNO、ステップS151でYES)、その要求が自装置グループのMFPからのものか、他装置グループの仲介MFPからのものかに応じて処理を分岐する。すなわち、上記問い合わせの要求が自装置グループのMFPからの要求である場合(ステップS157でYES)、CPU10は、当該要求を行なう他装置グループを特定した上で(ステップS159)、当該他装置グループの仲介MFPを特定する(ステップS161)。そして、CPU10は、該要求を他装置グループの仲介MFPに転送する(ステップS163)。他装置グループの仲介MFPから要求に対する回答、つまり、指定されたログインユーザーに関連付けられたジョブを記憶しているMFPの回答が得られると、CPU10は、その回答を要求元である自装置グループのMFPに転送する(ステップS165)。
【0090】
一方、上記問い合わせの要求が他装置グループの仲介MFPからの要求である場合(ステップS157でNO)、CPU10は、自装置グループの管理MFPに該当するジョブを記憶しているMFPを問い合わせる(ステップS167)。この問い合わせは、上記ステップS135での問い合わせに相当する。管理MFPから要求に対する回答、つまり、指定されたログインユーザーに関連付けられたジョブを記憶しているMFPの回答が得られると、CPU10は、その回答を要求元である他装置グループの仲介MFPに転送する(ステップS169)。
【0091】
好ましくは、CPU10は、上記要求を受け付けると他の装置との接続数をカウントし(ステップS153)、予め接続の上限として記憶されているしきい値に達しているか否かを判断する。CPU10は、他の装置との接続数が接続の上限に達していない場合に(ステップS155でNO)、上記ステップS157以降の処理を実行する。他の装置との接続数が接続の上限に達している場合(ステップS155でYES)、CPU10は、通信数を削減するための処理(セッション超過処理)を実行する(ステップS171)。
【0092】
図11は、ステップS171での処理の一例を表わした図である。
図11の例では、CPU10が、自装置グループのMFPからの通信を対象として、接続数が上限に達するまで接続を切断する処理を表わしている。すなわち、
図11を参照して、CPU10は、接続のうちの自装置グループ内のMFPからの接続について、その要求内容を解析する(ステップS181)。そして、CPU10は、
図4のような、予め記憶している優先度に従って自装置グループ内のMFPからの接続による要求の優先順位を特定し(ステップS183)、優先順位の最下位の要求を行なっている通信を切断する(ステップS185)。好ましくは、通信を切断する際、CPU10は、通信先に対して再接続を要求してから(ステップS187)、優先順位の最下位の要求を行なっている通信を切断する。CPU10は、他の装置との接続数が上限内となるまで上記ステップS183〜S187の処理を繰り返すことで、通信を上限内とする。
【0093】
なお、
図11では、自装置グループのMFPからの要求のみをステップS181の解析対象としているが、
図4のように、自装置グループのMFPからの要求も他装置グループに属するMFPからの要求も併せて優先度が設定されている場合には、上記ステップS181でCPU10は、属する装置グループの区別なく要求を解析してもよい。
【0094】
図12は、ステップS171での処理の他の例を表わした図である。
図12を参照して、CPU10は、他装置グループの仲介MFPから問い合わせ要求を受け付けると(ステップS191でYES)、所定時間、自装置グループの管理MFPへの問い合わせを待機し(ステップS193)、問合せ内容を記憶しておく(ステップS195)。そして、上記所定時間経過後(ステップS197でYES)、CPU10は、上記ステップS195で記憶しておいた自装置グループの管理MFPへの問い合わせ群をリスト化し(ステップS199)、管理MFPへ一括して問い合わせる(ステップS201)。
【0095】
以上の、ステップS151〜S171、ステップS181〜S189、およびステップS191〜S201の処理は、MFP100が仲介MFPであるときの処理である。
【0096】
なお、MFP100に対して、たとえば印刷要求やファイルの削除要求などの上記以外の要求がなされた場合(ステップS101,S107,S121,S125,S131,S135でNO)、CPU10は、指示された処理を実行する(ステップS141)。
【0097】
<実施の形態の効果>
本システムにおいて各MFPが上記のように動作することで、システムに含まれるMFOの台数が急激に増加した場合であっても、クライアントMFPは、ジョブをリスト表示するための情報を装置グループ単位で効率的に取得することが可能となる。そのため、各MFPに対して高性能な演算装置や大容量のメモリーが必要となる、ということを回避することができる。また、通信量の増加を抑えることができるため、処理時間の低下、たとえばジョブのリスト表示の遅延を抑えることができる。
【0098】
<他の例>
さらに、上述の処理をMFPなどの、印刷機能を有する画像形成装置に搭載されるコンピューターに実行させるためのプログラムを提供することもできる。該プログラムを提供することで、既存の画像形成装置を上記のMFP100として機能させることができ、既存の画像形成装置を用いて上記のシステムを構築することが可能となる。
【0099】
このようなプログラムは、コンピューターに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、ROM、RAMおよびメモリカードなどのコンピューター読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピューターに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0100】
なお、本発明にかかるプログラムは、コンピューターのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0101】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0102】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0103】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
10 CPU、11 ROM、12 RAM、13 HDD、14 スキャナー、15 プリンター、16 操作パネル、17 通信I/F、100,100A,100B MFP、101,113 ジョブ入力部、102 格納部、103 通知部、104 通知先記憶部、105 ログイン入力部、106,123 問合せ部、107 第1要求部、108,129 特定部、109 ジョブ情報入力部、110 提示部、111 選択部、112 第2要求部、114 処理部、115,122 要求先記憶部、120 要求入力部、121 要求部、124 回答入力部、125 転送部、126 カウント部、127 判断部、128 切断部、130 再接続要求部、131 ジョブ記憶部、132 ジョブ情報記憶部、141 通知入力部、142 管理部、143 問い合わせ対応部、300A,300B PC。