(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
微粒子の集合体は、構造や形態を制御することで、従来知られた機能に加えて、特有の機能を発現することから、注目されおり、活発に技術開発が行われている。例えば、鱗片状シリカは、シリカの持つ耐熱性、難燃性、絶縁性及び吸着機能の他に、高い吸油性や保湿性を有し、また触媒粒子や機能性酸化物などの吸着性の向上が期待されている。これらは、鱗片状シリカが重なり合うことによって生じる積層構造またはラメラ構造が層状の細孔を作り出すことにより、これらの機能の向上が発現されたものである。
【0003】
このような背景の下、近年、塩基性を有する結晶性ポリマーを用いた金属酸化物ナノ構造体の合成法が、特異的構造をもつ金属酸化物またはその薄膜を合成する上で、注目されている。その代表例として、結晶性を有する直鎖状ポリエチレンイミン骨格をもつポリマー等を用いたシリカミネラリゼーションが挙げられる。直鎖状ポリエチレンイミンは、結晶成長を制御することにより多様な構造及び形態を示す。これをゾル−ゲル反応の鋳型とすることで、多様な特異的構造をもつシリカナノ構造体及び有機−シリカ複合体を、温和な条件でかつ効率的に誘導できることが報告されている。
【0004】
塩基性官能基をもつ結晶性ポリマーを用いた鱗片状もしくは薄板状金属酸化物を誘導した例としては、ポリ(L−リジン)とリン酸塩存在下でのケイ酸の縮合により得られる六角形シリカプレート、またはpH緩衝剤存在下で直鎖状ポリエチレンイミンの結晶成長を制御することで得られるナノシート状シリカが挙げられる。
【0005】
ところが、これらの製造方法は、リン酸塩、pH緩衝剤等の添加剤による処理を必要としており、アミン系結晶性ポリマーだけで構築した高アスペクト比のナノ構造体を鋳型として利用した例はなかった。
【0006】
そこで、アミン系結晶性ポリマーだけで構築した高アスペクト比のナノ構造体を鋳型として用いた技術が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。このように開発された技術は、シリカ系ナノシートの集合体に関する技術であり、球状集合体を製造するための技術である。具体的には、鋳型としてポリマー結晶体(有機成分)を用いて球状集合体が製造されている。
【0007】
詳細には、この技術では、結晶性を有する3級アミン系ポリマーであるポリ(N−シアノエチルエチレンイミン)を媒体中で結晶化させることで得られる、単一ナノシート構造もしくはナノシート凝集体構造を鋳型として利用している。すなわち、これらの特異的な構造を鋳型として、シリカソースを用いてゾル−ゲル反応を行うことにより、ポリ(N−シアノエチルエチレンイミン)とシリカとが複合してなるシリカ系ナノシートを製造している。
【0008】
この技術によれば、温和な条件かつ短時間にシリカソースのゾル−ゲル反応によって、単一ナノシート、又はその集合体の球状構造体の表面をシリカで被覆してなる有機−無機複合体を簡便に提供できるとされている。さらに、この製造方法により得られたシリカは、有機成分の空間が細孔となって比表面積を増大した特異的な構造を有することから、例えば、吸湿剤、吸着材、樹脂や化粧品のフィラー、触媒担体等に利用できるとされている。さらに、弱酸性条件においてもポリ(N−シアノエチルエチレンイミン)は鋳型として機能することから、酸性無機酸化物との複合化により、それによる機能化が可能となるとされている。
【0009】
しかしながら、この技術は、有機成分の鋳型を必要とするため、製造工程が煩雑であった。また、この技術は、有機成分を除去するためには、加熱焼成処理や溶剤洗浄を行わなければならず、この点においても製造工程が煩雑であった。
さらに、現在までに知られている微粒子の集合体は、特定の限られた構造のものであり、種々の用途に適用可能な更なる新規な微粒子の集合体の開発が望まれていた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0022】
本発明は、微粒子が集合して形成された柱状集合体(棒状の集合体)で
ある。微粒子は、Bi2Se3、他の元素をドーピングしたBi2Se3、ZnSb、MoS2、CdTe及びSb2Te3からなる群より選ばれる少なくとも1種のナノフレークである。柱状集合体の平均の太さは、5〜20000nmであり、柱状集合体の平均の長さは、10〜60000nmである。
以下、本発明を詳しく説明する。
〔1〕微粒子
微粒子は、無機微粒子
である。本発明においては、柱状集合体の調製が容易等の観点から、無機微粒子
が用いられている。
【0023】
「無機微粒子」は、
Bi2Se3、他の元素をドーピングしたBi2Se3、ZnSb、MoS2、CdTe及びSb2Te3からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
「無機微粒子」の平均粒径は、特に限定されないが、1〜5000nmであることが好ましく、より好ましくは3〜700nm、更に好ましくは5〜500nmである。粒径が好ましい範囲内にある場合には、微粒子が集合した柱状集合体が形成されやすいからである。
【0030】
「微粒子」の形状はフレーク状
である。この形状であると、安定した柱状集合体を形成し易いからである。
【0031】
「微粒子」
はフレーク状
であり、その平均粒径及び平均厚みは特に限定されない。例えば、平均粒径は、1〜5000nmであることが好ましく、より好ましくは5〜1000nm、更に好ましくは20〜500nmである。平均厚みは、0.1〜200nmであることが好ましく、より好ましくは1〜60nm、更に好ましくは2〜30nmである。
「微粒子」の平面形状は特に限定されない。円形、矩形、不定形であってもよい。
なお、微粒子の平均粒径及び平均厚みは、例えば、電子顕微鏡観察(SEM、TEM)等により測定することができる。
【0032】
微粒子の表面には、貴金属微粒子が担持されていてもよい。貴金属微粒子を担持することによって、柱状集合体の水中での分散安定性を向上させることができる。
「貴金属微粒子」としては、貴金属であれば特に限定されず、金、白金、銀、銅、パラジウム等の1種以上が挙げられる。金、銀等が好ましい。
【0033】
貴金属微粒子の平均粒子径は、特に制限されるわけではないが、1〜200nmであることが好ましく、より好ましくは1〜50nm、更に好ましくは1〜20nmである。貴金属微粒子の平均粒子径をこの範囲とすることで、微粒子の分散状態をコントロールし易くなるからである。
貴金属微粒子の平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡観察(SEM、TEM等)等により測定することができる。
【0034】
微粒子と、貴金属微粒子の質量比(微粒子:貴金属微粒子)は、1:1〜1000:1であり、好ましくは5:1〜400:1、更に好ましくは10:1〜200:1である。質量比がこの範囲である場合、微粒子の柱状集合体の水中での分散状態を向上させることができるからである。
【0035】
<表面に貴金属微粒子が担持した微粒子の製造方法>
貴金属微粒子を微粒子に担持する方法は、特に限定されない。例えば、次の方法を採用することができる。
すなわち、(1)貴金属の前駆体溶液(A液)と、(2)微粒子、還元剤、及び溶媒を含有する液(B液)と、を反応させることにより、貴金属微粒子が担持された微粒子を製造する方法を採用することができる。
【0036】
「貴金属の前駆体溶液(A液)」は、貴金属イオン又は貴金属化合物を含む溶液である。貴金属イオン又は貴金属化合物は、電子を受容して0価の貴金属に還元される。貴金属イオンとしては、金イオン、白金イオン、銀イオン、銅イオン、パラジウムイオン等が挙げられる。
貴金属化合物としては、HAuCl
4(塩化金酸)、AgNO
3(硝酸銀)、AuCl
3、H
2PtCl
6、AgNO
2、CuSO
4、Pd(C
5H
7O
2)
2、PtCl
2、Na
2PdCl
4等が挙げられる。これらの貴金属イオン及び貴金属化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0037】
前駆体溶液の溶媒は、特に限定されない。例えば、水を用いることができる。また、水と他の溶媒の混合溶媒としてもよい。他の溶媒は、無機溶媒、有機溶媒のいずれでもよく、例えば、具体的には、アルコール、ケトン、カルボン酸等が挙げられる。このように、水と他の溶媒との混合溶媒とする場合には、水の含有量は特に限定されない。水の含有量は、混合溶媒全体を100質量%とした場合に、好ましくは1〜99質量%、更に好ましくは30〜99質量%、特に好ましくは50〜99質量%である。
【0038】
前駆体溶液の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜10mM、更に好ましくは0.02〜8mM、特に好ましくは0.03〜1mMである。前駆体溶液の濃度が好ましい範囲内にあるときは、微粒子の表面に選択的に貴金属微粒子が析出しやすくなるからである。また、低濃度すぎると、貴金属微粒子の析出速度が著しく低下し、工業的に不利となる。
【0039】
微粒子、還元剤、及び溶媒を含有する液(B液)に含有される「微粒子」は、Bi
2Se
3(セレン化ビスマス)、ZnSb(アンチモン化亜鉛)、MoS
2(硫化モリブデン)、CdTe(テルル化カドミウム)、
又はSb
2Te
3(テルル化アンチモン)
である。これらのなかでも、Bi
2Se
3が好ましい。
また、他の元素をドーピングしたBi
2Se
3を用いてもよい。この場合におけるドーパントとしては、特に限定されないが、例えば、Te、Sn等が用いられる。
【0040】
「還元剤」としては、貴金属の前駆体を還元することができれば特に限定されず、有機物であっても無機物であってもよい。例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸、エチレングリコール、L−アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、α−グルコース等が挙げられる。
【0041】
微粒子、還元剤、及び溶媒を含有する液に用いる溶媒は、特に限定されない。例えば、水を用いることができる。また、水と他の溶媒の混合溶媒としてもよい。他の溶媒は、無機溶媒、有機溶媒のいずれでもよく、例えば、具体的には、アルコール、ケトン、カルボン酸等が挙げられる。このように、水と他の溶媒との混合溶媒とする場合には、水の含有量は特に限定されない。水の含有量は、混合溶媒全体を100質量%とした場合に、好ましくは1〜99質量%、更に好ましくは30〜99質量%、特に好ましくは50〜99質量%である。
【0042】
微粒子、還元剤、及び溶媒を含有する液(B)における還元剤の濃度は、特に限定されないが、好ましくは1〜200mM、更に好ましくは5〜100mM、特に好ましくは20〜50mMである。
【0043】
貴金属微粒子を微粒子に担持する方法において、A液に含まれる貴金属化合物と、B液に含まれる微粒子との質量比(貴金属化合物:微粒子)は、1000:1〜1:1であり、好ましくは400:1〜5:1、更に好ましくは200:1〜10:1である。
【0044】
貴金属微粒子を微粒子に担持する方法において、A液に含まれる貴金属化合物と、B液に含まれる還元剤との質量比(貴金属化合物:還元剤)は、1:1〜100:1であり、好ましくは5:4〜40:1、更に好ましくは3:2〜20:1である。
【0045】
貴金属微粒子を微粒子に担持する方法における反応温度は、特に限定されないが、例えば、−20〜+200℃、好ましくは30〜150℃、更に好ましくは60〜120℃とすることができる。反応温度として、例えば、A液の沸点を用いることができる。
【0046】
貴金属微粒子を微粒子に担持する方法における反応時間は、特に限定されないが、例えば、0.1〜48時間、好ましくは0.2〜8時間、更に好ましくは0.2〜3時間とすることができる。
【0047】
その他に貴金属微粒子を微粒子に担持する方法として、コロイド塩析法、含浸‐水素還元法、混練法、および光析出法(光電析法)等を適用することができる。
また、微粒子の表面をカップリング剤等の有機分子により修飾した後、有機分子と金属との相互作用によって金属を固定化するという方法も採用することができる。
【0048】
〔2〕柱状集合体
本発明の柱状集合体は、微粒子が集合して形成された略柱状のものである。
柱状集合体は、略柱状であれば、特に限定されず、例えば、略円柱状、底面が略多角形の柱状、底面が不定形の柱状であってもよい。
柱状集合体の平均の太さ(幅、径)は、5〜20000nmであ
り、より好ましくは30〜5000nm、更に好ましくは100〜2000nmである。柱状集合体の平均の太さをこの範囲とすることで、単分散な集合体となりやすいからである。
柱状集合体の平均の長さは、特に制限されるわけではないが、10〜60000nmであ
り、より好ましくは60〜10000nm、更に好ましくは200〜4000nmである。柱状集合体の平均の長さをこの範囲とすることで、単分散な集合体となりやすいからである。
なお、柱状集合体の平均の太さ及び長さは、例えば、電子顕微鏡観察(SEM、TEM)等により測定することができる。
また、フレーク状の微粒子が集合した柱状集合体では、内部に微細な空隙を有していてもよい。
【0049】
柱状集合体の製造方法は、特に限定されないが、微粒子を水中に分散させる方法が好ましい。分散する手段としては特に限定されず、公知の分散機、例えば、羽型撹拌機、高速回転型ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、ディゾルバー、ボールミル、ニーダー、サンドミル、三本ロール、超音波洗浄器、遊星型混分散機(プラネタリミキサー等)等が使用できる。
【0050】
また、柱状集合体の水中でのゼータ電位(単位:mV)の絶対値は、特に限定されないが、1〜150であることが好ましく、20〜150であることが更に好ましく、30〜150であることが特に好ましい。この範囲内であると、柱状集合体の水中での分散安定性を高めることができるからである。
【0051】
また、柱状集合体の紫外可視近赤外吸収スペクトルでは、300〜1400にピークが存在することが好ましく、350〜1000にピークが存在することが更に好ましく、400〜800にピークが存在することが特に好ましい。この範囲にピークを有すると、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)に由来する光吸収性という特有の機能を発揮できるからである。
【0052】
本実施形態の柱状集合体は、通常の粒子では達成できない高密度の集合状態を達成できる。
また、微粒子の表面に貴金属微粒子が担持されている場合には、柱状集合体の分散安定性を向上させることができる。また、貴金属微粒子の担持により、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)に由来する光吸収性を付与することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
〔1〕柱状集合体の試料の調製
<実施例1>
Bi
2Se
3(セレン化ビスマス(III))のナノフレーク(粒径:約40〜400nm、平均厚み:約10nm、33mg)を水(1mL)に入れて、超音波洗浄器を用いて0.1時間、超音波を照射することにより、Bi
2Se
3のナノフレークによる柱状集合体を含んだ水分散液を得た。
<実施例2>
塩化金酸水溶液(0.08mM、19mL、A液)を調製した。
また、Bi
2Se
3のナノフレーク(粒径:約40〜400nm、平均厚み:約10nm、100mg)を含むクエン酸ナトリウム水溶液(38.8mM、2.3mL、B液)を調製した。
塩化金酸水溶液(A液)を沸点まで昇温した後、この溶液にクエン酸ナトリウム水溶液(B液)を加え、0.5時間還流した。
このようにして、Bi
2Se
3のナノフレークの表面に、金(Au)のナノ粒子(粒子径:約3〜10nm)を担持して、Au担持Bi
2Se
3のナノフレークによる柱状集合体を含んだ水分散液を得た。
【0054】
〔2〕電子顕微鏡による観察
Bi
2Se
3を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。
図1に、その走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。Bi
2Se
3のナノフレークが観察された。
Au担持Bi
2Se
3を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。
図2に、その走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。Bi
2Se
3のナノフレークの表面に、金(Au)のナノ粒子(粒子径:約3〜10nm)が担持されている様子が観察された。Bi
2Se
3のナノフレーク上におけるAuナノ粒子の配置は、Auナノ粒子同士の静電気的相互作用のため離散したものとなっていると考えられる。言い換えれば、Bi
2Se
3のナノフレーク上で、Auナノ粒子は疎らに存在している。
また、上述の調製方法によれば、Bi
2Se
3のナノフレークと、Auナノ粒子とを結合する際に付加的な修飾剤を必要としていない。このように、Bi
2Se
3のナノフレークと、Auナノ粒子とは、直に結合している。Auナノ粒子が担持されていない場所では、Bi
2Se
3のナノフレークの地が露出している状態も観察された。
【0055】
また、実施例1、2の試料を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。実施例1の試料の走査型電子顕微鏡(SEM)像を
図3、4に示し、実施例2の試料の走査型電子顕微鏡(SEM)像を
図6、7に示す。
図3、4、6、7から、実施例1、2のいずれの場合も微粒子が集合した柱状集合体が形成されていることが分かった。走査型電子顕微鏡(SEM)像から、これらの柱状集合体では、通常のナノ粒子では達成できない高密度の集合状態を達成していることが確認された。
ここで、実施例1の場合(
図3、4)の柱状集合体と、実施例2の場合(
図6、7)の柱状集合体とを詳細に比較検討する。実施例1の場合は、柱状集合体を形成しなかった通常のBi
2Se
3のナノフレークが、柱状集合体に付着している状態が観察された。すなわち、通常のBi
2Se
3のナノフレークと、柱状集合体との凝集が観察された。この凝集している状態を模式的に
図5に示す。
図5において、符号1は、柱状集合体を示し、符号3は通常のBi
2Se
3のナノフレークを示す。
他方、実施例2の場合は、柱状集合体を形成しなかった通常のBi
2Se
3のナノフレークは、柱状集合体には、ほとんど付着していない状態が観察された。すなわち、通常のBi
2Se
3のナノフレークと、柱状集合体との凝集が抑制されて、柱状集合体をほぼ独立して存在させられることが分かった。この凝集が抑制されている状態を模式的に
図8に示す。
図8において、符号1は、柱状集合体を示し、符号3は通常のBi
2Se
3のナノフレークを示す。
図8は、
図5の場合よりも凝集状態が解消されていることを示している。
【0056】
〔3〕粒度分布及びゼータ電位の測定
超音波照射を用いて、実施例1、2の試料の水分散液をそれぞれ調製した。各水分散液の粒度分布及びゼータ電位を動的光散乱式粒度分布測定装置(Malvern、ゼータサイザーナノZS)を使用して測定した。
<粒度分布>
図9、10に実施例1、2の粒度分布をそれぞれ示す。実施例1の粒度分布の柱状集合体が含まれるピークは、符号Aで示す部分である。他方、実施例2の粒度分布の柱状集合体が含まれるピークは、符号Bで示す部分である。両方のピークを比べると、
図9に示される実施例1のピークAの方が、
図10に示される実施例2のピークBよりも、粒径の大きな位置に現れていることが分かる。
この結果は、上述の電子顕微鏡による観察の傾向と同様であった。すなわち、実施例1の場合は、柱状集合体を形成しなかった通常のBi
2Se
3のナノフレークが、柱状集合体に付着している状態であるため、ピークの位置が大きくなっているものと考えられる。
他方、実施例2の場合は、通常のBi
2Se
3のナノフレークが、柱状集合体には、ほとんど付着していない状態であり、柱状集合体がほぼ独立して存在しているため、ピークの位置が小さくなっているものと考えられる。
【0057】
<ゼータ電位>
実施例1では、ゼータ電位が−22.3mVであった。他方、実施例2では、ゼータ電位が−43.5mVであった。
この結果は、上述の電子顕微鏡による観察や、粒度分布の結果と同様の傾向であった。すなわち、実施例1の場合は、ゼータ電位の絶対値が比較的小さいため、柱状集合体を形成しなかった通常のBi
2Se
3のナノフレークが、柱状集合体に付着している凝集状態となったものと考えられる。
他方、実施例2の場合は、ゼータ電位の絶対値が比較的大きいため、柱状集合体を形成しなかった通常のBi
2Se
3のナノフレークが、柱状集合体には、ほとんど付着していない状態で、柱状集合体がほぼ独立して存在しているものと考えられる。
【0058】
〔4〕紫外可視吸収スペクトルの測定
実施例2の試料の紫外可視吸収スペクトルを測定した。紫外可視吸収スペクトルは、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所、UV-3600)を用いて測定した。
結果を
図11に示す。紫外可視吸収スペクトルにおいては、Auナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)に由来するピーク(450〜600nm、中央値520nm付近)が観察された。
【0059】
<実施例の効果>
本実施例の集合体は、Bi
2Se
3のナノフレークが集合してできた柱状集合体であり、球状のものと比較して高密度の集合状態を達成できる。
また、Auナノ粒子を担持させた場合のBi
2Se
3のナノフレークによる柱状集合体は、柱状集合体を形成しなかった通常のBi
2Se
3のナノフレークと、柱状集合体との凝集が抑制されて、柱状集合体をほぼ独立して存在させられる。
また、Auナノ粒子の担持により、柱状集合体に、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)に由来する光吸収性を付与することができる。
本実施例の柱状集合体を、熱電材料として用いると、エネルギーの変換効率が向上する。
【0060】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0061】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。