【実施例】
【0012】
図1や
図2は、本発明の一実施例としての受電装置を備える非接触送受電システム10の構成の概略を示す構成図である。実施例の非接触送受電システム10は、
図1や
図2に示すように、駐車場などに設置された送電装置130と、バッテリ26と送電装置130から非接触で受電してバッテリ26を充電可能な受電装置30とを搭載する自動車20と、を備える。
【0013】
送電装置130は、家庭用電源(例えば200V,50Hzなど)などの交流電源190に接続される送電ユニット131と、送電ユニット131を制御する送電用電子制御ユニット(以下、「送電ECU」という)170と、送電ECU170と通信すると共に自動車20の通信ユニット80(後述)と無線通信を行なう通信ユニット180と、を備える。
【0014】
送電ユニット131は、送電用共振回路132と、交流電源190と送電用共振回路132との間に設けられた高周波電源回路140と、を備える。ここで、送電用共振回路132は、駐車場の床面などに設置された送電用コイル134と、送電用コイル134に直列に接続されたコンデンサ136と、を有する。この送電用共振回路132は、共振周波数が所定周波数Fset(数十〜数百kHz程度)となるように設計されている。高周波電源回路140は、交流電源190からの電力を所定周波数Fsetの電力に変換して送電用共振回路132に出力する回路として構成されており、フィルタや周波数変換回路,漏電ブレーカなどを有する。
【0015】
送電ECU170は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。送電ECU170には、送電用共振回路132に流れる交流電流を検出する電流センサ150からの送電用共振回路132の電流Itr,送電用共振回路132の端子間の交流電圧を直流電圧に変換して検出する電圧検出ユニット152からの送電用共振回路132の端子間電圧(送電電圧)Vtrなどが入力ポートを介して入力されている。なお、電圧検出ユニット152は、整流回路と電圧センサとを有する。送電ECU170からは、高周波電源回路140への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0016】
自動車20は、電気自動車として構成されており、走行用のモータ22と、モータ22を駆動するためのインバータ24と、インバータ24を介してモータ22と電力をやりとりするバッテリ26と、インバータ24とバッテリ26との間に設けられたシステムメインリレー28と、バッテリ26に接続される受電ユニット31と、車両全体を制御する車両用電子制御ユニット(以下、「車両ECU」という)70と、車両ECU70と通信すると共に送電装置130の通信ユニット180と無線通信を行なう通信ユニット80と、を備える。
【0017】
受電ユニット31は、受電用共振回路32と、受電用共振回路32とバッテリ26との間に設けられた充電回路40と、受電用共振回路32と充電回路40との間に設けられた充電用リレー42と、受電用共振回路32と充電用リレー42との間で且つ受電用共振回路と並列で且つ互いに直列に接続されたリレー44および抵抗46と、を備える。ここで、受電用共振回路32は、車体底面(フロアパネル)などに設置された受電用コイル34と、受電用コイル34に直列に接続されたコンデンサ36と、を有する。この受電用共振回路32は、共振周波数が上述の所定周波数Fset(送電用共振回路132の共振周波数)付近の周波数(理想的には所定周波数Fset)となるように設計されている。充電回路40は、受電用共振回路32により受電した交流電力を直流電力に変換してバッテリ26に供給可能な回路として構成されており、整流回路や平滑回路などを有する。充電用リレー42は、受電用共振回路32側と充電回路42側との接続および接続の解除を行なう。リレー44は、受電用共振回路32と充電用リレー42との間の正極側ラインと、受電用共振回路32と充電用リレー42との間の負極側ラインに一方の端子が接続された抵抗の他方の端子と、の接続および接続の解除を行なう。
【0018】
車両ECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。車両ECU70には、モータ22の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサからのモータ22の回転子の回転位置θmや、モータ22の三相コイルの各相に流れる相電流を検出する電流センサからの相電流Iu,Iv,Iw,バッテリ26の端子間に設置された電圧センサ27aからの電池電圧Vb,バッテリ26の正極側端子に取り付けられた電流センサ27bからの電池電流Ib,バッテリ26の温度を検出する温度センサ27cからの電池温度Tbが入力ポートを介して入力されている。また、車両ECU70には、イグニッションスイッチ(スタートスイッチ)からのイグニッション信号,シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサからのシフトポジションSP,アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサからのアクセル開度Acc,ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサからのブレーキペダルポジションBP,車速センサからの車速Vが入力ポートを介して入力されている。さらに、車両ECU70には、受電用共振回路32に流れる交流電流を検出する電流センサ50からの受電用共振回路32の電流Ire,電圧検出ユニット52からの受電用共振回路32の端子間電圧(受電電圧)Vre1,電圧検出ユニット54からの充電回路40の入力側の端子間電圧Vre2,電圧検出ユニット56からの抵抗46の端子間電圧Vre3,受電用共振回路32が取り付けられた基板などに取り付けられた温度センサ58からの受電用共振回路32の温度Treが入力ポートを介して入力されている。電圧検出ユニット52は、受電用共振回路32の端子間の交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、変換後の直流電圧を検出する電圧センサと、を有する。電圧検出ユニット54は、充電回路40と充電用リレー42との間に設けられると共に正極側ライン−負極側ライン間の交流電圧(充電回路40の入力側の端子間電圧)を直流電圧に変換する整流回路と、変換後の直流電圧を検出する電圧センサと、を有する。電圧検出ユニット56は、抵抗46の端子間の交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、変換後の直流電圧を検出する電圧センサと、を有する。車両ECU70からは、インバータ24の図示しないスイッチング素子へのスイッチング制御信号,システムメインリレー28へのオンオフ信号,充電用リレー42へのオンオフ信号,リレー44へのオンオフ信号などが出力ポートを介して出力されている。車両ECU70は、電流センサ27bにより検出されたバッテリ26の電池電流Ibの積算値に基づいてバッテリ26の蓄電割合SOCを演算している。
【0019】
ここで、実施例では、受電装置30としては、主として、受電ユニット31と車両ECU70と通信ユニット80とが該当する。
【0020】
こうして構成される実施例の非接触送受電システム10では、送電用共振回路132の送電用コイル134と受電用共振回路32の受電用コイル34とが接近しており且つ充電用リレー42またはリレー44がオンとなっているときに、交流電源190から高周波電源回路140を介して送電用共振回路132に所定周波数Fsetの電力が供給されると、送電用コイル134と受電用コイル34とが電磁場を介して共鳴して、送電用コイル134から受電用コイル34にエネルギ(電力)が伝送される。なお、この共鳴によるエネルギの伝送は、送電用コイル134と受電用コイル34との共鳴強度を示すQ値が所定値Qref(例えば100など)以上のときに行なわれる。
【0021】
この非接触送受電システム10において、自動車20は、走行する際には、車両ECU70によって、システムメインリレー28がオンであると共に充電用リレー42およびリレー44がオフの状態で、アクセル開度Accや車速Vに応じて設定した走行用の要求トルクTr*でモータ22が駆動されるようにインバータ24のスイッチング素子をスイッチング制御して走行する。
【0022】
また、自動車20は、走行中に、車両ECU70から通信ユニット80を介してバッテリ26の充電要求を出力する。そして、送電ECU170が、バッテリ26の充電要求を通信ユニット180を介して受信すると、送電ECU170と車両ECU70との間で通信ユニット180,80を介して通信が開始される。こうして送電ECU170と車両ECU170との通信が開始された後に、自動車20が、駐車場などにおける、送電ユニット131から受電ユニット31に非接触で送電される電力によりバッテリ26を充電する非接触充電に適した非接触充電用位置(送電用共振回路132の送電用コイル134と受電用共振回路32の受電用コイル34とが略対向する位置)にある程度近づくと、車両ECU70は、リレー44をオンとし、送電ECU170は、送電用コイル134に微弱電力が供給されるように高周波電源回路140の制御を開始する。一般に、送電用コイル134と受電用コイル34とが近づくにつれて、送電用コイル134から受電用コイル34に送電される電力が大きくなり、抵抗46に供給される電力が大きくなる。したがって、電圧検出ユニット56により検出される抵抗46の端子間電圧Vre3を用いることにより、送電用コイル134と受電用コイル34との距離を推定することができる。そして、車両ECU70は、非接触充電用位置で自動車20が停車するように、抵抗46の端子間電圧Vre3や図示しないカメラにより撮影される自動車20の周囲の画像などに基づいて送電用コイル134と受電用コイル34との位置関係(距離や方向)を推定し、この位置関係などを図示しないナビゲーション装置のディスプレイに表示するなどして、自動車20が非接触充電用位置に接近するように誘導する。
【0023】
こうして自動車20が非接触充電用位置付近で停車(駐車)して、イグニッションオフされると、車両ECU70は、システムメインリレー28およびリレー44をオフとし(充電用リレー42はオフで保持されており)、充電用リレー42をオンとして、送電開始要求(バッテリ26の充電開始要求)を通信ユニット80,180を介して送電ECU170に送信する。そして、送電ECU170は、送電開始要求を受信すると、上述の微弱電力より大きな電力(バッテリ26の充電用の電力)が送電用コイル134に供給されるように高周波電源回路140を制御する。そして、自動車20では、受電用コイル34が送電用コイル134から非接触で受電し、その交流電力が充電回路40により直流電力に変換されてバッテリ26に供給される。これにより、バッテリ26が充電される。そして、バッテリ26の蓄電割合SOCが充電を終了する閾値Sref(例えば、80%や85%,90%など)に至ると、車両ECU70は、送電終了要求(バッテリ26の充電終了要求)を通信ユニット80,180を介して送電ECU170に送信し、これを受信した送電ECU170は、高周波電源回路140を駆動停止する。また、車両ECU70は、充電用リレー42をオフとする。これにより、バッテリ26の充電が終了する。
【0024】
こうしたシーケンスによりバッテリ26を充電している最中に受電ユニット31に異常が生じたときには、車両ECU70は、リレー44をオンとした後に充電用リレー42をオフとし、緊急送電終了要求を通信ユニット80,180を介して送電ECU170に送信する。そして、これを受信した送電ECU170は、高周波電源回路170を駆動停止する。
【0025】
ここで、バッテリ26を充電している最中に受電ユニット31に異常が生じたときに、リレー44をオンとした後に充電用リレー42をオフとする理由について説明する。バッテリ26の充電中(送電用コイル134と受電用コイル34との間で非接触で送受電中)にリレー44をオンとせずに充電用リレー42をオフとすると、送電ユニット131から見た受電ユニット31のインピーダンスが大きく変動し、これにより、送電ユニット131からの電力の一部(比較的大きな電力)が受電ユニット31により反射されて送電ユニット131に戻る可能性がある。これに対して、リレー44をオンとした後に充電用リレー42をオフとすることにより、送電ユニット131から見た受電ユニット31のインピーダンスの変化を抑制することができ、送電ユニット131からの送電電力に対する受電ユニット31による反射電力を小さくすることができる。この結果、送電ユニット131の力率が大きく悪化するのを抑制することができる。また、送電ユニット131の耐電圧や耐電流を定めて送電ユニット131ひいては送電装置130を設計する際に、反射電力についての余裕分を小さく定めることができる。
【0026】
また、受電ユニット31の異常としては、送電装置130の送電電力Ptrが第1閾値Pref1以上で且つ受電装置30の受電電力Preが第1閾値Pref1より小さい第2閾値Pref2未満のとき,受電用共振回路32の温度Treが閾値Treref以上のとき,バッテリ26の電池温度Tbが閾値Tbref以上のときなどを考えることができる。送電装置130の送電電力Ptrは、電流センサ150により検出される送電用共振回路132の電流Itrと電圧検出ユニット152により検出される送電用共振回路132の端子間電圧Vtrとを用いて演算することができる。受電装置30の受電電力Preは、電流センサ50により検出される受電用共振回路32の電流Ireと電圧検出ユニット52により検出される受電用共振回路32の端子間電圧Vre1とを用いて演算することができる。受電用共振回路32の温度Treは、温度センサ58による検出値を用いることができる。バッテリ26の温度Tbは、温度センサ27cによる検出値を用いることができる。なお、送電装置130の送電電力Ptrが第1閾値Pref1以上で且つ受電装置30の受電電力Preが第2閾値Pref2未満のときに代えて、送電装置130の送電電力Ptrと受電装置30の受電電力Preとの電力差ΔPが閾値ΔPref以上のときを考えるものとしてもよい。また、受電装置30の受電電力Preに代えて、バッテリ26の入出力電力Pbを用いるものとしてもよい。バッテリ26の入出力電力Pbは、電圧センサ27aにより検出される電池電圧Vbと電流センサ27bにより検出される電池電流Ibとを用いて演算することができる。
【0027】
以上説明した実施例の自動車20に搭載された受電装置30によれば、受電ユニット31のリレー44をオフとすると共に充電用リレー42をオンとして送電ユニット131から受電ユニット31に非接触で送電してバッテリ26を充電している最中に受電ユニット31に異常が生じたときには、リレー44をオンとした後に充電用リレー42をオフとするから、送電ユニット131から見た受電ユニット31のインピーダンスの変化を抑制することができ、送電ユニット131からの送電電力に対する受電ユニット31による反射電力を小さくすることができる。この結果、送電ユニット131の力率が大きく悪化するのを抑制することができる。また、送電ユニット131の耐電圧や耐電流を定めて送電ユニット131ひいては送電装置130を設計する際に、反射電力についての余裕分を小さく定めることができる。
【0028】
実施例の自動車20では、充電回路40は、整流回路や平滑回路を有するものとしたが、これらに加えて、電圧を変換する電圧変換回路を有するものとしてもよい。
【0029】
実施例の自動車20では、受電装置30の受電ユニット31は、受電用共振回路32側からバッテリ26側に、受電用共振回路32,リレー44および抵抗46,充電用リレー42,充電回路40の順に配置されるものとしたが、
図3の変形例の自動車20Bに例示するように、受電装置30Bの受電ユニット31Bは、受電用共振回路32側からバッテリ26側に、受電用共振回路32,整流回路40B,リレー44および抵抗46,充電用リレー42,DC/DCコンバータ41Bの順に配置されるものとしてもよい。ここで、DC/DCコンバータ41Bは、車両ECU70により制御される。この受電装置30Bでは、整流回路40Bよりバッテリ26側は直流電力の範囲となるから、実施例の受電装置30が備える電圧検出ユニット54,56(整流回路と電圧センサとを有するユニット)に代えて、整流回路を用いずに電圧センサ54B,56Bを用いることができる。これにより、部品点数の削減を図ることができる。
【0030】
この変形例の自動車20Bでは、DC/DCコンバータ41Bを備えるものとしたが、これを備えないものとしてもよい。また、この自動車20Bでは、充電用リレー42よりバッテリ26側にDC/DCコンバータ41Bを設けるものとしたが、整流回路40Bと充電用リレー42との間にDC/DCコンバータ41Bを設けるものとしてもよい。
【0031】
実施例や変形例の自動車20,20Bでは、受電装置30,30Bは、抵抗46の端子間電圧Vre3を検出する電圧検出ユニット56,電圧センサ56Bを備えるものとしたが、これに代えて、整流回路40Bと充電用リレー42との間で正極側ライン−負極側ライン間の電圧を検出する電圧検出ユニット,電圧センサを用いるものとしてもよい。
【0032】
実施例では、自動車20は、電気自動車としたが、バッテリや受電装置を備えるものであればよく、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車などとしてもよい。
【0033】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、受電用共振回路32と充電回路40と充電用リレー42とリレー44と抵抗46とを有する受電ユニット31が「受電ユニット」に相当し、車両ECU70が「制御手段」に相当する。
【0034】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0035】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。