特許第6248891号(P6248891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6248891排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248891
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20171211BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20171211BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20171211BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20171211BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20171211BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20171211BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   F01N3/28 301G
   F01N3/08 AZAB
   F01N3/08 B
   F01N3/10 A
   F01N3/24 R
   F01N3/28 301D
   F01N3/28 301P
   F02D43/00 301E
   F01N3/035 A
   B01D53/86 222
   B01D53/86 228
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-212834(P2014-212834)
(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公開番号】特開2016-79913(P2016-79913A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 知也
(72)【発明者】
【氏名】原田 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 啓司
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−522636(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/118047(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/128175(WO,A1)
【文献】 特開2009−041430(JP,A)
【文献】 特開2011−052611(JP,A)
【文献】 特開2011−169264(JP,A)
【文献】 特開2013−184136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーンバーンエンジンの排気ガスを浄化するシステムであって、
上記エンジンの排気ガス通路に第1触媒と第2触媒が排気ガス流れ方向の上流側から順に配置され、
上記第1触媒は、一つのハニカム担体に、上記排気ガス中のHC、CO及びNOを酸化する酸化触媒と、上記排気ガス中のNOxを一時的にトラップして還元するLNT触媒とを担持させた複合触媒であり、
上記第2触媒は、上記排気ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタに、当該捕集したパティキュレートを燃焼させるPM燃焼触媒と、上記NOxを還元剤の存在下で選択的に還元するSCR触媒とを担持させた複合触媒であり、
上記PM燃焼触媒は、Ce以外の希土類金属及びZrを含有するZr系複合酸化物とアルカリ土類金属とを含有し、該アルカリ土類金属が該Zr系複合酸化物に担持されており、
上記Zr系複合酸化物が、ZrO−Nd複合酸化物、ZrO−La複合酸化物、ZrO−Pr複合酸化物、ZrO−Yb複合酸化物、ZrO−Nd−Pr複合酸化物、ZrO−La−Nd複合酸化物、ZrO−Pr−Y複合酸化物、ZrO−Pr−Yb複合酸化物、又はZrO−Nd−Pr−La複合酸化物であり、
上記第2触媒がPt及びPdのいずれも含有しないことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項2】
請求項1において、
上記第1触媒のLNT触媒は、排気ガス中のNOを酸化する触媒成分と、排気ガス中のNOxをトラップするNOxトラップ材と、該NOxトラップ材にトラップされたNOxを還元する触媒成分を含有し、
上記第1触媒の酸化触媒は、排気ガス中のHCをトラップするHCトラップ材と、HC、CO及びNOを酸化する触媒成分を含有し、
上記第1触媒は、次のA、B及びCから選ばれる少なくとも一つの構造を備えていることを特徴とする排気ガス浄化システム。
A ハニカム担体の排気ガスが通る各セルの壁に上記LNT触媒を含有する層と上記酸化触媒を含有する層が設けられ、該両層のうちの一方が他方よりも当該セルの排気ガスが通る空間側に配置されている。
B ハニカム担体の排気ガスが通る各セルの壁に上記LNT触媒と上記酸化触媒が混合された触媒層が形成されている。
C ハニカム担体の排気ガスが通る各セルの壁に上記LNT触媒と上記酸化触媒が設けられ、該LNT触媒及び酸化触媒のうちの一方が他方よりも当該セルの排気ガス流れ方向の上流側に配置されている。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記排気ガス中のNOxを上記第2触媒の上記SCR触媒によって還元するべく、NH又はNH前駆体を上記排気ガス通路に注入する注入手段を備え、
上記排気ガス通路における上記第2触媒よりも排気ガス流れ方向の下流側に、NH及び/又はその誘導体を酸化するためのNH酸化触媒が配置されていることを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項4】
リーンバーンエンジンから排出される排気ガス中のNOxとパティキュレートを処理する排気ガス浄化方法であって、
上記エンジンの排気ガス通路に第1触媒と第2触媒を排気ガス流れ方向の上流側から順に配置し、
上記第1触媒は、一つのハニカム担体に、上記排気ガス中のHC、CO及びNOを酸化する酸化触媒と、上記排気ガス中のNOxを一時的にトラップして還元するLNT触媒とを担持させた複合触媒とし、
上記第2触媒は、上記排気ガス中のパティキュレートを捕集する一つのフィルタに、当該捕集したパティキュレートを燃焼させるPM燃焼触媒と、上記NOxを還元剤の存在下で選択的に還元するSCR触媒とを担持させた複合触媒とし、
上記PM燃焼触媒は、Ce以外の希土類金属及びZrを含有するZr系複合酸化物とアルカリ土類金属とを含有し、該アルカリ土類金属が該Zr系複合酸化物に担持されたものとし、
上記Zr系複合酸化物が、ZrO−Nd複合酸化物、ZrO−La複合酸化物、ZrO−Pr複合酸化物、ZrO−Yb複合酸化物、ZrO−Nd−Pr複合酸化物、ZrO−La−Nd複合酸化物、ZrO−Pr−Y複合酸化物、ZrO−Pr−Yb複合酸化物、又はZrO−Nd−Pr−La複合酸化物であり、
上記第2触媒は、Pt及びPdのいずれも含有しない構成とし、
上記排気ガスの空燃比がリーンであるときに該排気ガス中のNOを上記第1触媒の酸化触媒でNOに酸化して上記第1触媒のLNT触媒でトラップするステップと、
上記排気ガスの空燃比がリーンであるときに、上記第1触媒を通過した排気ガス中のパティキュレートを上記第2触媒のフィルタで捕集するステップと、
上記LNT触媒のNOxトラップ量が所定値に達したときに、上記排気ガスの空燃比をリーンから一時的にリッチにするリッチパージを実行して、該LNT触媒にトラップされているNOxを還元浄化するステップと、
上記第2触媒に流入する排気ガスの温度が所定値以上であるときに、該排気ガスに還元剤又は還元剤前駆体を注入し、該排気ガス中のNOxを当該還元剤の存在下で上記第2触媒のSCR触媒によって還元浄化するステップと、
上記フィルタのパティキュレート捕集量が所定値に達したときに、上記エンジンの燃焼室に膨張行程又は排気行程で燃料を噴射供給するポスト噴射を実行して排気ガス中のHC及びCOの量を増大させるステップと、
上記HC及びCOを上記第1触媒の酸化触媒で酸化させ、その反応熱によって温度が上昇した排気ガスを上記第2触媒に流入させて該第2触媒の温度を上昇させることにより、該第2触媒のフィルタに捕集されているパティキュレートをPM燃焼触媒によって燃焼させて除去するステップとを備えていることを特徴とする排気ガス浄化方法。
【請求項5】
請求項4において、
上記リッチパージを実行したとき、上記第2触媒に流入する排気ガスのNOx濃度、又は上記第2触媒から流出する排気ガスのNOx濃度が所定値以上であるときは、上記第2触媒に流入する排気ガス温度が所定値以上であることを条件として、上記SCR触媒によるNOxの選択還元を実行すべく、上記第2触媒に流入する排気ガスに還元剤又は還元剤前駆体を注入することを特徴とする排気ガス浄化方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5において、
上記第2触媒を通過した排気ガス中の上記還元剤及び/又はその誘導体をトラップ材にトラップするステップと、
上記ポスト噴射を実行して上記第2触媒のフィルタに捕集されているパティキュレートを燃焼させたときに、その燃焼によって発生する熱によって、上記トラップ材を加熱して該トラップ材にトラップされている上記還元剤及び/又はその誘導体を放出させて酸化するステップとをさらに備えていることを特徴とする排気ガス浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリーンバーンエンジンの排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リーンバーンエンジン、すなわち、ディーゼルエンジンや希薄燃焼方式のガソリンエンジンから出される排気ガスにはNOx(窒素酸化物)とパティキュレートが含まれている。
【0003】
特許文献1には、NOxとパティキュレートを処理するシステムとして、酸化触媒、パティキュレートフィルタ、還元剤供給源、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒、及びNH酸化触媒の順に排気ガスを通過させるシステムが開示されている。このシステムでは、排気ガス中のNOを酸化触媒によって酸化させてNOを生成し、そのNOの存在下でフィルタ上のパティキュレートを燃焼させてフィルタを再生する。また、還元剤としてNH又は尿素が排気ガス通路に供給されて、SCR触媒でNOxが選択的に還元浄化される。SCR触媒を通過するNH及び/又はその誘導体はNH酸化触媒で除去される。
【0004】
特許文献2には、酸化触媒、パティキュレートフィルタ及びNOxトラップ触媒の順に排気ガスを通過させるシステムが開示されている。このシステムでは、特許文献1と同じく、排気ガス中のNOを酸化触媒によって酸化させてNOを生成し、そのNOの存在下でフィルタのパティキュレートを燃焼させる。NOとパティキュレートの反応で生成するNOと、パティキュレートと反応せずにフィルタを通過したNOはNOxトラップ触媒にトラップされる。トラップされたこれらNOxは、燃料の排気行程噴射によって排気空燃比を定期的にリッチにすることにより放出させて還元浄化される。
【0005】
特許文献2には、NOxトラップ触媒に代えてNOx選択還元触媒を設けたシステムも開示されている。このシステムの場合は、燃料の排気行程噴射によって排気空燃比を定期的にリッチにして排気ガス中のHC(炭化水素)及びCOの量を増大させ、このHC等をNOx選択還元触媒(SCR触媒)に蓄積しておき、この蓄積されたHCを利用して上記フィルタの下流側においてNOやNOを還元浄化する。
【0006】
特許文献3には、NOx選択還元触媒に関して、触媒から製造された多孔質フィルタに排気ガス流通路を形成し、還元剤としてNH又は炭化水素を当該フィルタに供給してNOxを還元浄化することが記載されている。触媒としては、一般式Aをもつスピネルが採用され、このスピネルがPd、Pt、Rh等の触媒活性元素を有することが好ましいとされている。
【0007】
特許文献4には、パティキュレートフィルタにパティキュレート酸化触媒を担持することが記載されている。その酸化触媒としては、Ce及びYを除く希土類金属を含有するZr系複合酸化物や、Ceを除く希土類金属又はアルカリ土類金属を含有するCe系複合酸化物が採用される。Zr系複合酸化物及びCe系複合酸化物のいずれにもPtが担持される。特許文献5には、Pt担持アルミナとCeZr系複合酸化物とZrNd系複合酸化物とを含有する触媒付パティキュレートフィルタについて記載されている。特許文献4,5に記載された触媒では、複合酸化物から放出される活性な酸素によって、パティキュレートの燃焼が促進される。
【0008】
特許文献6には、所定の粒径分布をもつ粒状材料を担持させたパティキュレートフィルタ触媒が記載されている。その粒状材料としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、ゼオライト、アルカリ金属の酸化物、マグネシアスピネル、マグネシアなどのアルカリ土類金属の酸化物、ランタナ,ネオジアなどの希土類元素の酸化物などの無機セラミックスが挙げられている。粒状材料は、NOxの吸収還元能を付与するために、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含有することが好ましいとされている。但し、この文献6には、アルカリ土類金属を含有する粒状材料の具体例の開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−89521号公報
【特許文献2】特開平09−53442号公報
【特許文献3】特開平09−173784号公報
【特許文献4】特開2007−54713号公報
【特許文献5】特開2009−39632号公報
【特許文献6】特開2005−152774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1,2のシステムによれば、酸化触媒で生成したNOを利用してパティキュレートを燃焼させるから、フィルタを比較的低い温度で再生することができる。そのため、フィルタ温度を高めるためのポスト噴射(エンジンの燃焼室に膨張行程又は排気行程で燃料を噴射すること。これにより、排気ガス中のHC及びCOの量が増大し、酸化触媒でのHC、COの酸化反応熱で排気ガス温度が上昇する。)の軽減ないし省略が可能になる。
【0011】
このように、NOの利用によって、フィルタの再生のためにエンジンの燃費が悪化することは避けられるものの、フィルタよりも下流側に配置されたSCR触媒やNOxトラップ触媒によって還元浄化すべきNOx量が多くなる。そのため、特許文献1のSCR触媒であれば、該SCR触媒に十分な還元剤(NH又は尿素)を供給することができるように還元剤タンクの容量を大きくしなければならない。しかし、例えば、小型自動車ではそのような大容量の還元剤タンクの搭載スペースを確保することが難しい。また、還元剤の使用量が多くなると、SCR触媒を通過するNH量が多くなり、NH酸化触媒の処理負担が増大する。特許文献2のHCを利用したSCR触媒であれば、還元剤タンクは不要であるが、排気空燃比を頻繁にリッチに近い条件にする必要があり、NOxの還元のために燃費が悪化する。SCR触媒に代えてNOxトラップ触媒でNOxを還元するとしても、排気空燃比を頻繁にリッチにする必要があり、同様に燃費が悪化する。
【0012】
また、排気ガス中のNOx及びパティキュレートを処理するためには、上述の酸化触媒、触媒付フィルタ、SCR触媒及びNH酸化触媒を排気ガス流れ方向に順に並べる必要がある。そのため、排気ガス浄化システム全体が大掛かりになり、そのレイアウトも難しくなる。
【0013】
そこで、本発明は、リーンバーンエンジンの排気ガス中のNOxとパティキュレートを効率良く処理すること、並びに、排気ガス浄化システムの大型化問題に対策することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために、酸化触媒と還元触媒を含有する複合触媒を採用した。
【0015】
すなわち、ここに開示する排気ガス浄化システムは、リーンバーンエンジンの排気ガスを浄化するシステムであって、
上記エンジンの排気ガス通路に第1触媒と第2触媒が排気ガス流れ方向の上流側から順に配置され、
上記第1触媒は、一つのハニカム担体に、上記排気ガス中のHC、CO及びNOを酸化する酸化触媒と、上記排気ガス中のNOxを一時的にトラップして還元するLNT触媒とを担持させた複合触媒であり、
上記第2触媒は、上記排気ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタに、当該捕集したパティキュレートを燃焼させるPM燃焼触媒と、上記NOxを還元剤の存在下で選択的に還元するSCR触媒とを担持させた複合触媒であり、
上記PM燃焼触媒は、Ce以外の希土類金属及びZrを含有するZr系複合酸化物とアルカリ土類金属とを含有し、該アルカリ土類金属が該Zr系複合酸化物に担持されており、
上記Zr系複合酸化物が、ZrO−Nd複合酸化物、ZrO−La複合酸化物、ZrO−Pr複合酸化物、ZrO−Yb複合酸化物、ZrO−Nd−Pr複合酸化物、ZrO−La−Nd複合酸化物、ZrO−Pr−Y複合酸化物、ZrO−Pr−Yb複合酸化物、又はZrO−Nd−Pr−La複合酸化物であり、
上記第2触媒がPt及びPdのいずれも含有しないことを特徴とする。
【0016】
このシステムによれば、排気ガス中のNOxを第1触媒のLNT触媒及び第2触媒のSCR触媒によって還元浄化することができる。また、第1触媒の酸化触媒における排気ガス成分の酸化反応熱を利用して排気ガス温度を高めることにより、第2触媒の温度を上昇させることができ、第2触媒のPM燃焼触媒でパティキュレートを燃焼させることが可能になる。
【0017】
また、排気ガスの空燃比がリーンであるとき、排気ガス中のNOxは第1触媒のLNT触媒にトラップされる。排気ガス中のNOxのうちの量が多いNOはLNT触媒と複合されている酸化触媒によってNOに酸化されるため、LNT触媒に効率良くトラップされる。このときは第2触媒のSCR触媒ではNOxを浄化する必要はないから、還元剤又は還元剤前駆体の注入は不要である。或いは第2触媒に達するNOx量は少ないから、SCR触媒でNOxを浄化するとしても、還元剤又は還元剤前駆体の注入量は少なくて済む。
【0018】
第1触媒のLNT触媒にトラップされたNOxは、そのトラップ量が所定値に達したときに、排気ガスの空燃比をリーンから一時的にリッチにするリッチパージによってLNT触媒から放出させ該LNT触媒によって還元浄化することができる。このときも、SCR触媒ではNOxを浄化する必要はない。或いはLNT触媒から放出された一部のNOxが未浄化のまま下流側に流れ、第2触媒に達するとしても、そのNOx量は少ない。従って、第2触媒のSCR触媒でNOxを浄化するとしても、還元剤又は還元剤前駆体の注入量は少なくて済む。
【0019】
一方、第2触媒のSCR触媒が活性を呈する温度に達しているときは、排気ガスに還元剤又は還元剤前駆体を注入することによって、排気ガス中のNOxをSCR触媒で還元浄化することができる。従って、このときは、第1触媒のLNT触媒においてNOxトラップ量が所定値に達しているとしても、必ずしも、リッチパージを行なう必要はない。すなわち、SCR触媒が活性を呈する温度に達しているときは、このSCR触媒でNOxを浄化することにより、LNT触媒のためのリッチパージのインターバルを長くとって、リッチパージによる燃費の悪化を避けることができる。
【0020】
排気ガスの空燃比がリーンであるとき、該排気ガス中のパティキュレートは第2触媒のフィルタで捕集される。パティキュレートの捕集量が所定値に達したときにポスト噴射を実行し、第1触媒の酸化触媒での酸化反応熱を利用して排気ガス温度を上昇させて触媒付フィルタの温度を高めることにより、第2触媒のPM燃焼比触媒によってパティキュレートを燃焼させて除去することができる(フィルタの再生)。このとき、第1触媒の酸化触媒においてNOの酸化によって生成するNOが酸化剤となってパティキュレートの燃焼が促進される。また、酸化触媒での酸化反応熱によってLNT触媒の温度が上昇することにより、該LNT触媒からNOが放出されるから、このNOが酸化剤となってパティキュレートの燃焼が促進される。
【0021】
このように、第1触媒の酸化触媒で生成するNO及びLNT触媒から放出されるNOがパティキュレートの燃焼に利用されるため、ポスト噴射量を少なくすることができる。従って、燃費の悪化を避けることができる。
【0022】
また、PM燃焼触媒として上記Zr系複合酸化物を採用するから、このZr系複合酸化物から活性な酸素を放出させて上記パティキュレートの燃焼を促進することができる。この場合、活性な酸素の活性が高いことから、PtやPdのような触媒貴金属が存在しなくても、パティキュレートの燃焼が進む。
【0023】
Zr系複合酸化物は、上述の如くパティキュレートの燃焼を促進するものの、それ自体には還元剤を酸化させるような強い酸化触媒機能はない。従って、フィルタに供給される還元剤は、Zr系複合酸化物によって酸化されることなく、SCR触媒によるNOxの選択還元に供されることになる。
【0024】
PM燃焼触媒としてアルカリ土類金属を採用するから、排気ガス中のNOxがアルカリ土類金属にトラップ(吸蔵)され、アルカリ土類金属の硝酸塩が生成する。第2触媒の温度が上昇すると、その硝酸塩の熱分解によって活性な酸素が放出される。この活性な酸素が酸化剤となってフィルタに捕集されているパティキュレートが燃焼する。この場合、活性な酸素の活性が高いことから、PtやPdのような触媒貴金属が存在しなくても、パティキュレートの燃焼が進む。
【0025】
アルカリ土類金属は、上述の如くパティキュレートの燃焼を促進するものの、それ自体には還元剤を酸化させるような強い酸化触媒機能はない。従って、フィルタに供給される還元剤は、アルカリ土類金属によって酸化されることなく、SCR触媒によるNOxの選択還元に供されることになる。しかも、アルカリ土類金属がZr系複合酸化物に担持されているから、パティキュレートの燃焼に有利になる。
【0026】
さらに、第2触媒はPt及びPdのいずれも含有しないから、第2触媒に還元剤が供給されたとき、この還元剤がSCR触媒によるNOxの選択還元に使われる前に酸化されてしまうことが避けられ、SCR触媒によるNOxの選択還元が効率良く進む。
【0027】
しかも、上記態様によれば、LNT触媒と酸化触媒を一体化させて複合触媒とし、PM燃焼触媒とSCR触媒とを一体化させて複合触媒としたことにより、システムの大型化防止に有利になり、システム構成要素のレイアウトが容易になる。また、SCR触媒のNOx浄化負担が軽くなるため、SCR触媒の小型化や還元剤又は還元剤前駆体の貯留タンクの小型化が図れる。
【0028】
本発明の好ましい態様では、上記第1触媒のLNT触媒は、排気ガス中のNOを酸化する触媒成分と、排気ガス中のNOxをトラップするNOxトラップ材と、該NOxトラップ材にトラップされたNOxを還元する触媒成分を含有し、
上記第1触媒の酸化触媒は、排気ガス中のHCをトラップするHCトラップ材と、HC、CO及びNOを酸化する触媒成分を含有し、
上記第1触媒は、次のA、B及びCから選ばれる少なくとも一つの構造を備えていることを特徴とする。
A ハニカム担体の排気ガスが通る各セルの壁に上記LNT触媒を含有する層と上記酸化触媒を含有する層が設けられ、該両層のうちの一方が他方よりも当該セルの排気ガスが通る空間側に配置されている。以下、当該空間側を配置されている一方の触媒層を端的に「上層」になっているといい、他方の触媒層を端的に「下層」になっているという。
B ハニカム担体の排気ガスが通る各セルの壁に上記LNT触媒と上記酸化触媒が混合された触媒層が形成されている。
C ハニカム担体の排気ガスが通る各セルの壁に上記LNT触媒と上記酸化触媒が設けられ、該LNT触媒及び酸化触媒のうちの一方が他方よりも当該セルの排気ガス流れ方向の上流側に配置されている。
【0029】
上記LNT触媒によれば、NOを酸化する触媒成分を含有するから、排気ガス中のNOがNOに酸化され、NOxトラップ材によるNOxのトラップが促進される。また、上記酸化触媒によれば、HCトラップ材を含有するから、排気ガス温度が低いとき(触媒が活性化していないとき)に排気ガス中のHCをトラップしておき、排気ガス温度が高くなったとき(触媒が活性を呈するようになったとき)にHCトラップ材から放出されるHCを酸化浄化することができ、HCが酸化されることなく排出される量を減らすことができる。
【0030】
構造Aに関し、LNT触媒が上層になり、酸化触媒が下層になっているケースでは、上層(LNT触媒)でNOxがトラップされるため、NOxが下層(酸化触媒)でのHC及びCOの酸化反応を阻害することが抑制される。また、LNT触媒を含有する上層の還元能力が高いため、NOxがNまで還元される反応が進み易い。
【0031】
構造Aに関し、LNT触媒が下層になり、酸化触媒が上層になっているケースでは、上層(酸化触媒)で排気ガス中のNOが酸化されてNOが生成し易くなり、その結果、下層(LNT触媒)でNOx吸蔵反応が進み易くなる。酸化触媒を含有する上層の酸化能力が高いため、フィルタ再生時のポスト噴射成分(HC,CO)の酸化が進み易く、第2触媒の昇温に有利になる。また、上層(酸化触媒)でNOが生成されることにより、第2触媒に流れるNOxのNO比率が高くなり、フィルタの再生に有利になる。
【0032】
構造Bによれば、LNT触媒と酸化触媒が混合されているから、酸化触媒で生成されるNOがLNT触媒のNOxトラップ材に吸蔵され易くなる。
【0033】
構造Cに関し、LNT触媒を上流側に配置するケースでは、上流側でNOxがトラップされるため、NOxが下流側の酸化触媒でのHC及びCOの酸化反応を阻害することが抑制される。LNT触媒が上流側にあって昇温し易いため、NOx放出時にNOxの浄化反応が進み易い。また、LNT触媒から放出されるNOが下流側の酸化触媒で酸化されてNOが生成するため、第2触媒に流れるNOxのNO比率が高くなり、フィルタの再生に有利になる。
【0034】
構造Cに関し、酸化触媒を上流側に配置するケースでは、上流側の酸化触媒で排気ガス中のNOが酸化されてNOが生成し易くなり、その結果、下流側のLNT触媒でNOx吸蔵反応が進み易くなる。酸化触媒が上流側にあって昇温し易いため、HC及びCOの酸化反応が進み易い。その結果、第2触媒の早期昇温も図れるため、フィルタの再生に有利になる。
【0035】
本発明の好ましい態様では、上記排気ガス中のNOxを上記第2触媒の還元触媒によって還元するべく、NH又はNH前駆体としての尿素を上記排気ガス通路に注入する注入手段を備え、
上記排気ガス通路における上記第2触媒よりも排気ガス流れ方向の下流側に、NH及び/又はその誘導体を酸化するためのNH酸化触媒が配置されている。
【0036】
第2触媒の還元触媒によるNOxの選択還元において、還元剤としてNHを用いたとき、NOxの還元に使われなかったNHが大気中に排出されると異臭を放つ。そこで、フィルタよりも排気ガス流れ方向の下流側にNH酸化触媒を配置し、NH及び/又はその誘導体を酸化するものである。
【0037】
また、ここに開示する排気ガス浄化方法は、リーンバーンエンジンから排出される排気ガス中のNOxとパティキュレートを処理する方法であって、
上記エンジンの排気ガス通路に第1触媒と第2触媒を排気ガス流れ方向の上流側から順に配置し、
上記第1触媒は、一つのハニカム担体に、上記排気ガス中のHC、CO及びNOを酸化する酸化触媒と、上記排気ガス中のNOxを一時的にトラップして還元するLNT触媒とを担持させた複合触媒とし、
上記第2触媒は、上記排気ガス中のパティキュレートを捕集する一つのフィルタに、当該捕集したパティキュレートを燃焼させるPM燃焼触媒と、上記NOxを還元剤の存在下で選択的に還元するSCR触媒とを担持させた複合触媒とし、
上記PM燃焼触媒は、Ce以外の希土類金属及びZrを含有するZr系複合酸化物とアルカリ土類金属とを含有し、該アルカリ土類金属が該Zr系複合酸化物に担持されたものとし、
上記Zr系複合酸化物が、ZrO−Nd複合酸化物、ZrO−La複合酸化物、ZrO−Pr複合酸化物、ZrO−Yb複合酸化物、ZrO−Nd−Pr複合酸化物、ZrO−La−Nd複合酸化物、ZrO−Pr−Y複合酸化物、ZrO−Pr−Yb複合酸化物、又はZrO−Nd−Pr−La複合酸化物であり、
上記第2触媒は、Pt及びPdのいずれも含有しない構成とし、
上記排気ガスの空燃比がリーンであるときに該排気ガス中のNOを上記第1触媒の酸化触媒でNOに酸化して上記第1触媒のLNT触媒でトラップするステップと、
上記排気ガスの空燃比がリーンであるときに、上記第1触媒を通過した排気ガス中のパティキュレートを上記第2触媒のフィルタで捕集するステップと、
上記LNT触媒のNOxトラップ量が所定値に達したときに、上記排気ガスの空燃比をリーンから一時的にリッチにするリッチパージを実行して、該LNT触媒にトラップされているNOxを還元浄化するステップと、
上記第2触媒に流入する排気ガスの温度が所定値以上であるときに、該排気ガスに還元剤又は還元剤前駆体を注入し、該排気ガス中のNOxを当該還元剤の存在下で上記第2触媒のSCR触媒によって還元浄化するステップと、
上記フィルタのパティキュレート捕集量が所定値に達したときに、上記エンジンの燃焼室に膨張行程又は排気行程で燃料を噴射供給するポスト噴射を実行して排気ガス中のHC及びCOの量を増大させるステップと、
上記HC及びCOを上記第1触媒の酸化触媒で酸化させ、その反応熱によって温度が上昇した排気ガスを上記第2触媒に流入させて該第2触媒の温度を上昇させることにより、該第2触媒のフィルタに捕集されているパティキュレートをPM燃焼触媒によって燃焼させて除去するステップとを備えていることを特徴とする。
【0038】
この排気ガス浄化方法によれば、NOx浄化性能及びパティキュレート燃焼性能を落とすことなく、還元剤又はその前駆体の注入量、リッチパージ頻度及びポスト噴射量を減らすことができ、燃費の向上に有利になるとともに、排気ガス浄化システムの大型化が避けられ、システム構成要素のレイアウトが容易になる。
【0039】
上記排気ガス浄化方法の好ましい態様では、上記リッチパージを実行したとき、上記第2触媒に流入する排気ガスのNOx濃度、又は上記第2触媒から流出する排気ガスのNOx濃度が所定値以上であるときは、上記第2触媒に流入する排気ガス温度が所定値以上であることを条件として、上記SCR触媒によるNOxの選択還元を実行すべく、上記第2触媒に流入する排気ガスに還元剤又は還元剤前駆体を注入する。
【0040】
すなわち、LNT触媒にトラップしていたNOxをリッチパージによって還元浄化したときにおいて、LNT触媒から放出された一部のNOxが未浄化のまま下流側に流れ、第2触媒に流入する排気ガスのNOx濃度、又は上記第2触媒から流出する排気ガスのNOx濃度が高くなったときに、第2触媒のSCR触媒によってNOxを還元浄化するものである。
【0041】
上記排気ガス浄化方法の好ましい態様では、上記第2触媒を通過した排気ガス中の上記還元剤及び/又はその誘導体をトラップ材にトラップするステップと、
上記ポスト噴射を実行して上記第2触媒のフィルタに捕集されているパティキュレートを燃焼させたときに、その燃焼によって発生する熱によって、上記トラップ材を加熱して該トラップ材にトラップされている上記還元剤及び/又はその誘導体を放出させて酸化するステップとをさらに備えている。
【0042】
これによれば、SCR触媒でNOxの還元に使用されなかった還元剤及び/又はその誘導体が大気中に排出されることを防止することができる。また、フィルタ再生時のパティキュレート燃焼熱を利用して上記還元剤及び/又はその誘導体をトラップ材から放出させて酸化することができ、効率的である。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る排気ガス浄化システムによれば、エンジンの排気ガス通路に排気ガス流れ方向の上流側から順に配置した第1触媒と第2触媒を備え、第1触媒はLNT触媒と酸化触媒を一体化させて複合触媒とし、第2触媒はPM燃焼触媒とSCR触媒とを一体化させて複合触媒とし、PM燃焼触媒はアルカリ土類金属がZr系複合酸化物に担持された構成とし、第2触媒がPt及びPdのいずれも含有しない構成としたから、NOx及びパティキュレートを効率良く浄化することができるとともに、システム全体が大掛かりになることが避けられ、システム構成要素のレイアウトが容易になる。
【0044】
本発明に係る排気ガス浄化方法によれば、NOx浄化性能及びパティキュレート燃焼性能を落とすことなく、NOx浄化用の還元剤又はその前駆体の注入量、リッチパージ頻度及びパティキュレート燃焼除去のためポスト噴射量を減らすことができ、燃費の向上に有利になるとともに、排気ガス浄化システムの大型化が避けられ、システム構成要素のレイアウトが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】実施形態に係るエンジンの排気ガス浄化システムの構成図。
図2】第1触媒の好ましい構造の一例を模式的に示す断面図。
図3】第1触媒の好ましい構造の他の例を模式的に示す断面図。
図4】アルカリ土類金属とカーボンを混合した試料のDTAピーク時温度を示すグラフ図。
図5】Zr系複合酸化物とカーボンを混合した試料のDTAピークトップ温度を示すグラフ図。
図6】Zr系複合酸化物のエージング処理前後のカーボン燃焼性能を示すグラフ図。
図7】NOxトラップ及びPM捕集に関するブロック説明図。
図8】NOx放出還元及びPM捕集に関するブロック説明図。
図9】フィルタの再生に関するブロック説明図。
図10】SCR触媒によるNOxの還元に関するブロック説明図。
図11】第2触媒のフィルタ本体に対する触媒の担持形態を模式的に示す断面図。
図12】参考形態に係るエンジンの排気ガス浄化システムの構成図。
図13】参考形態の第2触媒のフィルタ本体に対する触媒の担持形態の一例を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0047】
<実施形態に係る排気ガス浄化システムの構成>
図1に示す排気ガス浄化システムはリーンバーンエンジンから排出される5%以上の酸素を含む排気ガス中のNOxとパティキュレート(以下、「PM」という。)の処理が可能なシステムである。本例のエンジンはディーゼルエンジンであり、その排気ガス通路1に、酸化触媒と還元触媒の複合触媒である第1触媒2、還元剤又は還元剤前駆体の注入手段3、ミキサ4、酸化触媒と還元触媒の複合触媒である第2触媒5、並びにNH酸化触媒6が排気ガス流れ方向の上流側から順に配置されている。本明細書では、「上流側」及び「下流側」は排気ガス流れ方向について使用している。このシステムは、還元剤又は還元剤前駆体を貯留するタンク及び各種センサを備える。それらセンサの信号に基いてエンジンの燃料噴射制御及び注入手段3の制御がECU(Engine Control Unit)によって実行される。
【0048】
[第1触媒]
第1触媒2は、上記NOxを一時的にトラップして還元浄化するLNT触媒(還元触媒)と排気ガス中のHC、CO及びNOを酸化浄化する酸化触媒(DOC)の複合触媒である。
【0049】
LNT触媒は、排気ガス中のNOを酸化する触媒成分と、排気ガスの空燃比がリーンのときに該排気ガス中のNOxをトラップし、排気ガスの空燃比が理論空燃比ないしリッチになったときにNOxを放出するNOxトラップ材と、該NOxトラップ材にトラップされたNOxを還元する触媒成分を含有する。例えば、NO酸化触媒としては、活性アルミナとOSC(Oxygen Storage capacity)材としてのCe含有酸化物の混合物にPtを担持させた触媒を採用し、NOxトラップ材としてはBa等のアルカリ土類金属の化合物を採用し、NOx還元触媒としては活性アルミナとOSC材(Ce含有酸化物)の混合物にRhを担持させた触媒を採用することが好ましい。
【0050】
NOxトラップ材の原料としてアルカリ土類金属の酢酸塩を採用し、これを担体に担持して焼成すると、アルカリ土類金属は炭酸塩となる。すなわち、このアルカリ土類金属の炭酸塩がNOxトラップ材となる。
【0051】
酸化触媒は、排気ガス中のHCをトラップするHCトラップ材と、該HCトラップ材にトラップされたHC、排気ガス中のHC、CO、NOを酸化する触媒成分を含有する。例えば、HCトラップ材としてはゼオライトを採用し、酸化触媒成分としては活性アルミナとOSC材(Ce含有酸化物)の混合物にPt及び/又はPdを担持させた触媒を採用することが好ましい。
【0052】
第1触媒2は、次のA、B及びCから選ばれる少なくとも一つの構造を備えた構成とすることができる。
【0053】
A ハニカム担体の排気ガスが通る各セルの壁に上記LNT触媒を含有する層と上記酸化触媒を含有する層が設けられ、該両層のうちの一方が他方よりも当該セルの排気ガスが通る空間側に配置されて上層になっている。
【0054】
B ハニカム担体の排気ガスが通る各セルの壁に上記LNT触媒と上記酸化触媒が混合された触媒層が形成されている。
【0055】
C ハニカム担体の排気ガスが通る各セルの壁に上記LNT触媒と上記酸化触媒が設けられ、該LNT触媒及び酸化触媒のうちの一方が他方よりも当該セルの排気ガス流れ方向の上流側に配置されている。
【0056】
構造Aにおいて好ましいのは、図2に示すように、酸化触媒17が上層になり、LNT触媒18が下層になるように、両触媒17,18がセル壁19に担持されていることである。
【0057】
構造Cにおいて好ましいのは、図3に示すように、酸化触媒17がLNT触媒18よりも上流側に配置されるように、両触媒17,18がセル壁19に担持されていることである。
【0058】
[第2触媒]
第2触媒5は、排気ガス中のPMを捕集するフィルタ本体に、NOxを還元剤の存在下で選択的に還元浄化するためのSCR触媒(還元触媒)と、捕集したPMを燃焼させて除去するためのPM燃焼触媒(酸化触媒)を担持させた触媒付フィルタであり、複合触媒である。この第2触媒5はPt及びPdを含有しない。フィルタ本体は、下流端が閉塞された排気ガス流入通路と、上流端が閉塞された排気ガス流出通路が交互に並行に設けられたハニカム構造をなし、排気ガス流入通路に流入した排気ガスが通路隔壁の細孔を通って隣接する排気ガス流出通路に流出するウォールフロータイプである。フィルタ本体は、コージェライト、SiC、Si、サイアロン、AlTiOのような無機多孔質材料から形成される。
【0059】
SCR触媒については、本例では、還元剤となるNHの前駆体として尿素を採用した尿素−SCRを採用している。そのため、タンクには尿素水が貯留される。SCR触媒としては、NHをトラップするゼオライトに、NHを還元剤としてNOxを還元する触媒金属を担持させた触媒成分を採用することが好ましい。NOx還元用の触媒金属としては、Fe、Ti、V、W等が好ましく、NHをNOxに酸化し易いPtやPdの使用は好ましくない。なお、SCR触媒は、フィルタ担体1Lあたり60g以上110g以下含まれていることが好ましい。
【0060】
PM燃焼触媒としては、Zr系複合酸化物にアルカリ土類金属を担持したものを採用しており、PtやPdのような酸化触媒機能が強い触媒貴金属は含有しない。Zr系複合酸化物は、Zrを主成分として、Ce以外の希土類金属、例えばNdを含有する複合酸化物である。アルカリ土類金属としては、Mg、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも一種を採用することが好ましい。アルカリ土類金属をZr系複合酸化物以外のサポート材、例えば、活性アルミナやRhドープCe系複合酸化物(RhがCe系複合酸化物の結晶格子点又は格子点間にRhが配置された化合物)に担持させるようにしてもよい。ここに、アルカリ土類金属の酢酸塩をフィルタに担持して焼成すると、アルカリ土類金属は炭酸塩となる。このアルカリ土類金属の炭酸塩とNOxの反応によってNOxがアルカリ土類金属の硝酸塩となってフィルタにトラップされる。
【0061】
[NH酸化触媒、注入手段及びミキサ]
NH酸化触媒6はNOxと反応することなくSCR触媒を通過する(スリップする)NH及びその誘導体をトラップして酸化するものであり、それらNH等のスリップを防止する。NH酸化触媒6としては、NHをトラップするゼオライトにPtを担持させたPt担持ゼオライトとOSC材とをハニカム担体のセル壁に担持させた構成とすることが好ましい。
【0062】
注入手段3は、タンクの尿素水を酸化触媒2とミキサ4の間の排気ガス通路1に供給する噴射弁によって構成することができる。ミキサ4は、尿素水を排気ガス通路1内において排気ガス中に拡散させるものである。
【0063】
[センサ類]
次に排気ガス通路1に配置されている各種センサについて説明する。ミキサ4と第2触媒(触媒付フィルタ)5の間には、第2触媒5に流入する排気ガス温度を検出する温度センサ11が配置されている。この温度センサ11で検出される排気ガス温度に基いて、フィルタを再生するためのポスト噴射量が制御される。すなわち、フィルタの温度を確実にPM燃焼が促進する温度に上昇させるために、当該排気ガス温度が予め設定した温度になるようにポスト噴射量が制御される。ポスト噴射量は、SCR触媒のゼオライトの耐熱性を考慮して、第2触媒5に流入する排気ガス温度が所定温度以上にならないように、例えば、600℃以上にならないように制御される。
【0064】
第2触媒5よりも上流側と下流側には第2触媒5の上流側と下流側の排気ガスの差圧Δを検出するための圧力センサ12,13が配置されている。上流側の圧力センサ12はミキサ4と第2触媒5の間に配置され、下流側の圧力センサ13は第2触媒5とNH酸化触媒6の間に配置されている。上記差圧Δに基いて第2触媒5のフィルタによるPM捕集量が算出され、該捕集量が所定値に達したときにポスト噴射が所定噴射時期に実行される。
【0065】
第1触媒2と注入手段3の間にはSCR触媒に流入する排気ガスのNOx濃度を検出する上流側NOxセンサ14が配置されている。第2触媒5とNH酸化触媒6の間には第2触媒5から流出する排気ガスのNOx濃度を検出する下流側NOxセンサ15が配置されている。
【0066】
下流側NOxセンサ15で検出されるNOx濃度が所定値以上であること、並びに温度センサ11で検出される排気ガス温度が所定値以上であることが、SCR触媒でNOxを浄化するための注入手段3による尿素水の注入条件となる。
【0067】
尿素水の注入量は、SCR触媒のゼオライトに吸着されているNH量及び下流側NOxセンサ15で検出されるNOx濃度に基いて、適切な量になるように制御される。ゼオライトに吸着されているNH量は、上流側と下流側のNOxセンサ14,15で検出されるNOx濃度及び尿素注入量の履歴に基いて推定される。
【0068】
そのほかに、排気ガス通路には排気ガスの空燃比を検出するセンサ(図示省略)が設けられている。排気ガスの空燃比はエンジンの運転状態に基いて推定するようにしてもよい。
【0069】
<アルカリ土類金属によるPMの燃焼>
Mg、Ca、Sr及びBa各々の炭酸塩を担持した4種類のZr系複合酸化物試料と、それら炭酸塩を担持していないZr系複合酸化物試料を準備した。Zr系複合酸化物に対するアルカリ土類金属の担持量は1質量%である。Zr系複合酸化物としては、組成がZrO:Nd:Pr=70:12:18(mol%)であるZrNdPr複合酸化物を採用した。各試料とカーボン(カーボンブラック)を試料:カーボン=20:1の質量比で秤量し、めのう乳鉢で1分間混合した(タイトコンタクト条件)。各混合粉末を5mg秤量し、TG−DTA装置に設置した。「10%O+250ppmNO/(N+Ar)」の気流で10℃/分にて昇温試験を行ない、カーボンの燃焼に伴う発熱ピーク時の温度を読み取った。
【0070】
結果を図4に示す。アルカリ土類金属を担持した試料はアルカリ土類金属非担持の試料よりもDTAピーク時温度が低くなっており、アルカリ土類金属の担持によってPMの燃焼性が良くなることがわかる。DTAピーク時温度は、Mg→Sr→Ba→Caの順で低くなっており、Caを担持させたときにPMの燃焼開始温度が最も低くなることがわかる。
【0071】
<Zr系複合酸化物によるPMの燃焼>
Zr系複合酸化物についても次に述べる方法でカーボン燃焼性能を評価した。Zr系複合酸化物粉末について、大気中で800℃で24時間保持するエージング処理を施した。エージング後のZr系複合酸化物粉末とカーボンブラックを、めのう乳鉢で1分間混合(タイトコンタクト、Zr系複合酸化物粉末:カーボンブラック=4:1(質量比))する。そして、5mg秤量した混合粉末を、アルミナパンを用いてDTA装置に設置し、20%O/N+500ppmNO気流中(全流量100cc/分)10℃/分にて昇温試験を行った。リファレンスは市販のα−アルミナ粉末を使用した。カーボン燃焼に伴う発熱ピーク時の温度(DTAピークトップ温度)から、Zr系複合酸化物のPMの燃焼に及ぼす影響を評価した。
【0072】
表1及び図5に、種々のZr系複合酸化物についての組成とDTAピークトップ温度との関係を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
供試材1は、添加元素を含有しないZr酸化物、すなわちZrOである。ZrOでは、DTAピークトップ温度は486.5℃であり、図5に示すように、添加元素を含有するZr系複合酸化物よりもDTAピークトップ温度が高いことが判る。
【0075】
ここで、DTAピークトップ温度が高い程、PMの燃焼に高い排気ガス温度が必要になるため、PM燃焼に伴う熱負荷が増大すると共に、フィルタの劣化を早めてしまう。従って、ピークトップ温度が低い程、PM燃焼もより低温で開始することができ、フィルタの劣化を抑える上でも好ましい。
【0076】
供試材1のZrOに対し、Ce以外の希土類金属を含有するZr系複合酸化物(供試材2〜26)は、図5に示すようにDTAピークトップ温度が低くなり、上述の点で好ましいことが判る。この中でも、Ndを含有するもの(供試材2〜15)は特に好ましい。さらにNdに加え、Prを含有するもの(供試材5〜15)、特にNd及びPrをNd及びPr換算で、共に12mol%以上含有するもの(供試材8〜15)が好ましいことが判る。
【0077】
これは、ZrOに比べ、Nd及びPrが添加されることにより、酸素イオン伝導性が高まり、フィルタ再生時に活性な酸素の放出量が多くなるためと考えられる。
【0078】
また、図5に示すように、Zr系複合酸化物のうち、Ndは含まないが、Prに加え、Y又はYbを含有するもの(供試材25,26)もDTAピークトップ温度が低いことが判る。従って、これらのZr系複合酸化物も好ましくSCR/フィルタ5に担持させることができる。
【0079】
ここで、表1に示すZr系複合酸化物には、Pt及びPdのいずれも担持されていない。これは、SCR/フィルタ5は、SCR触媒としてNOxの選択還元にも使用されるため、Pt及びPdを担持することが不適切であることによる。しかし、表1に示すZr系複合酸化物は、Pt及びPdを担持していなくても、良好なPM燃焼性能を示すことが上述のごとく明らかとなった。これは、活性な酸素の活性が高いことから、PtやPdのような触媒貴金属が存在しなくても、PM燃焼が進むと考えられる。
【0080】
(Zr系複合酸化物の耐久性)
表1に示す供試材9(ZrO2−12mol%Nd−18mol%Pr)について、大気中800℃で24時間のエージング処理を施し、その前後のTG−DTA熱分析結果から、供試材9の熱安定性を評価した。供試材の調整方法及び測定方法は、上述のDTA熱分析と同じであり、カーボン燃焼に伴う評価試料の重量減少速度を調べた。図6に結果を示す。
【0081】
図6において、実線はエージング処理前、破線はエージング処理後の測定結果を示している。図6に示すように、エージング処理前後において、測定結果はほとんど変化がないことが判る。これは、フィルタ再生時に高温の排気ガスを流入させ、PMを燃焼させた場合でも、供試材9はほとんど劣化しないことを意味する。従って、例えば供試材9を担持したフィルタは、PMフィルタとして高い耐久性を示すと考えられる。
【0082】
<アルカリ土類金属及びZr系複合酸化物の担持量>
上記アルカリ土類金属はフィルタ1Lあたり0.01g以上0.12g以下含まれていることが好ましい。上記Zr系複合酸化物は、フィルタ1Lあたり10g以上60g以下含まれていることが好ましい。
【0083】
<排気ガスの浄化>
[NOxトラップ,PM捕集]
排気ガスの空燃比がリーンであるとき、図7に示すように、排気ガス中のNOx(図7では代表的にNOを示している)が第1触媒2のLNT触媒のNOxトラップ材にトラップされ、PMは第2触媒5のフィルタに捕集される。
【0084】
排気ガス中のNOxのうちの量が多いNOは、第1触媒2の酸化触媒やLNT触媒のNO酸化触媒成分の存在下、排気ガス中のOと反応してNOに酸化される。NOxトラップ材として例えばBa化合物を採用したときは、NOは、酸素(1/2O)の存在下、BaCOと反応してトラップされる(置換反応)。すなわち、NOはNOとなってBaに結合することにより、Ba(NO)が生成し、BaCOからCOが脱離して放出される。
【0085】
また、第1触媒2を通り抜けた排気ガス中のNOxが第2触媒5のPM燃焼触媒を構成するアルカリ土類金属に硝酸塩となってトラップされる。そのアルカリ土類金属としてBaを採用したときは、上記NOxトラップ材と同様に、Ba(NO)が生成する。
【0086】
[NOx放出還元,PM捕集]
LNT触媒のNOxトラップ材のNOxトラップ量が所定値以上であり、且つ第1触媒2に流入する排気ガス温度が所定値(例えば、200℃)以上であることを条件として、必要に応じて、リッチパージが実行される。これにより、排気ガスの空燃比が一時的にリッチになり、図8に示すように、NOxトラップ材からNOxが放出されてNOx還元触媒により還元浄化される。これにより、NOxトラップ材のNOxトラップ能が回復する(LNT触媒の再生)。このときも、触媒付フィルタ4によるPMの捕集は継続される。
【0087】
NOxの放出還元について説明する。図8に示すように、Ba(NO)は、排気ガス中の上記リッチパージによって多くなるCOとの反応(置換反応)によってBaCOとなり、その結果、NOが脱離して放出される。NOは、NOx還元触媒の存在下、排気ガス中の還元剤(CO,HC,H)と反応し、Nとなって排出される。また、この還元反応に伴ってCO、O及びHOが生成して排出される。
【0088】
[PM燃焼]
排気ガスの空燃比がリーンである状態において、第2触媒5の上流側と下流側の排気ガスの差圧Δに基いてフィルタのPM捕集量が所定値に達したことが検出されたときに、第2触媒5に流入する排気ガス温度に基いてポスト噴射が実行される。これにより、フィルタに捕集されているPMが燃焼して除去され、該フィルタのPM捕集能が回復する(フィルタの再生)。以下、具体的に説明する。
【0089】
図9に示すように、ポスト噴射により、エンジンから排出される排気ガス中のHC及びCOが多くなる。そのHC及びCOは、第1触媒2の酸化触媒の存在下、排気ガス中の酸素(O)と反応し、これにより、CO及びHOが生成して排出される。このときに発生する酸化反応熱によって第2触媒5に流入する排気ガス温度が上昇する。
【0090】
第2触媒の温度上昇に伴って、PM燃焼触媒を構成するアルカリ土類金属の硝酸塩(Ba(NO))が熱分解して活性な酸素が放出される。また、PM燃焼触媒を構成するZr系複合酸化物から活性な酸素が放出される。そして、この活性な酸素が酸化剤となってPMの燃焼が進む。すなわち、PMと活性な酸素が反応する。
【0091】
また、第1触媒2の酸化触媒及びLNT触媒のNO酸化触媒によって、排気ガス中のNOが排気ガス中の酸素(O)と反応してNOが生成し、このNOが排気ガス中の酸素(O)と共に酸化剤として第2触媒5に供給される。或いは上記酸化反応熱によってLNT触媒の温度が上昇してNOxトラップ材からNOが放出されて第2触媒5に供給される。これにより、第2触媒5におけるPMの燃焼が促進される。
【0092】
PMは活性な酸素との反応によってCOとなって第2触媒5から排出される。また、第2触媒5からはPMとNOの反応で生成するNO及び未反応のNOが排出される。
【0093】
このように、第1触媒2の酸化触媒及びLNT触媒から第2触媒5に供給されるNOが酸化剤となってPMの燃焼が促進されるため、PM燃焼のためのポスト噴射量は少なくて済む。
【0094】
[SCR触媒によるNOx選択還元]
フィルタのPM捕集量が所定値に達していないとき、第2触媒5から流出する排気ガスのNOx濃度が所定値以上であること、並びに第2触媒5に流入する排気ガス温度が所定値(例えば200℃)以上であることを条件として、必要に応じて、SCR触媒によるNOxの選択還元が実行される。
【0095】
例えば、リッチパージによってLNT触媒からNOxを放出させて還元浄化したときにおいて、放出NOxの一部が還元浄化されることなく排出されることによって、第2触媒5から流出する排気ガスのNOx濃度が所定値以上になることがある。また、LNT触媒によるNOxのトラップが飽和したときにおいて、燃費の悪化を避けるべく、リッチパージを実行しないときは、NOxがLNT触媒でトラップされることなく第2触媒5の方へ流れ、第2触媒5から流出する排気ガスのNOx濃度が所定値以上になることがある。その場合に、第2触媒5に流入する排気ガス温度が所定値以上であることを条件として、SCR触媒によるNOxを選択還元すべく、注入手段3による尿素水の注入が実行される。
【0096】
図10に示すように、注入手段3によって尿素水が排気ガス通路1に注入されると、その尿素の熱分解及び加水分解によってNH(還元剤)が生成し、SCR触媒のゼオライトに吸着される。また、尿素の分解によって生ずるCOが排出される。第2触媒5に流入するNOx(NO,NO)は、SCR触媒のゼオライトに吸着されたNHによってNに還元浄化され、そのときに生成するHOと共に排出される。
【0097】
ここに、第2触媒5はPt及びPdを含有しないから、NH(還元剤)が、ゼオライトに吸着される前に或いはNOxの還元に使用される前に、排気ガス中の酸素によって酸化されることが避けられる。よって、フィルタに担持したSCR触媒がNOxの還元浄化に有効に働くことになる。
【0098】
[NH酸化触媒6によるNH等の酸化]
NOxと反応することなくSCR触媒を通過するNH及びその誘導体はNH酸化触媒6のゼオライトにトラップされる。よって、NH及びその誘導体が大気中に排出することが防止される。ゼオライトにトラップされたNH及びその誘導体は、ゼオライトの温度が高くなったときに脱離してPt触媒によって酸化されて排出される。本実施形態では、フィルタ再生時の熱によってNH酸化触媒6のゼオライトの温度が高くなり、NHがゼオライトから脱離する。
【0099】
[LNT触媒とSCR触媒の関係]
第1触媒2のLNT触媒のNOxトラップ量が未だ少なく、排気ガス中のNOxがLNT触媒に吸蔵されていくときは、下流側NOxセンサ15によって検出されるNOx濃度は所定値に達していないのが通常である。従って、このときはSCR触媒によるNOxの浄化は不要であり、すなわち、注入手段3による尿素水の注入は不要である。或いは、第2触媒5に流入するNOxは少ないため、極少量の尿素水を注入するだけで、NOxを還元浄化することができる。
【0100】
LNT触媒のNOxトラップ量が多くなってくると、LNT触媒によるNOxのトラップが鈍化し、第2触媒5に流入する排気ガスのNOx濃度が高くなってくる。LNT触媒のNOxトラップ量が所定値以上になっており、且つ、第2触媒5から流出する排気ガスのNOx濃度が所定値以上でその排気ガス温度が所定値以上になっているときは、リッチパージによるNOxトラップ能の回復(LNT触媒の再生)と尿素水の注入によるSCR触媒でのNOxの選択還元とを選択的に実行することができる。当該NOxトラップ能の回復とNOxの選択還元と並行して実行することも可能である。
【0101】
尿素水を注入するときは、それによってSCR触媒でNOxが還元浄化されるから、LNT触媒のNOxトラップ量が所定値に達しているからといって、必ずしも、リッチパージを行なうことは要しない。例えば、リッチパージのインターバルを長くして、燃料の消費を抑えることができる。一方、リッチパージによってLNT触媒からNOxが放出されるときは、そのNOxが還元触媒によってNになるため、SCR触媒によるNOxの選択還元は不要であり、或いは第2触媒5に流入するNOxは少ないため、尿素水注入量は少なくて済む。或いは、タンクの尿素水残量が少ないときは、SCR触媒によるNOxの還元浄化よりも、リッパージによるLNT触媒の再生を優先して、NOxの排出量を抑え、そのことによって、尿素水の消費を抑制することができる。
【0102】
<第2触媒におけるPM燃焼触媒とSCR触媒の担持形態>
PM燃焼触媒とSCR触媒は、フィルタ本体に対して次のD、E及びFから選ばれる少なくとも一つの形態で担持することができる。
図11(a)及び(b)に示すように、PM燃焼触媒21とSCR触媒22がフィルタ本体23の排気ガス通路(排気ガス流入通路、排気ガス流出通路及び通路隔壁に形成された細孔)を形成する壁面に、一方が排気ガス流れ方向の上流側に、他方が下流側に配置されるように担持されている。
図11(c)及び(d)に示すように、PM燃焼触媒21とSCR触媒22がフィルタ本体23の上記壁面に、一方が他方よりも排気ガスが通る空間側に配置されるように層状に担持されている。
F PM燃焼触媒とSCR触媒が混合してフィルタ本体の上記壁面に担持されている。
【0103】
[担持形態D]
図11(a)に示す担持形態では、PM燃焼触媒21が上流側に、SCR触媒22が下流側に配置されている。同図(b)に示す担持形態では、SCR触媒22が上流側に、PM燃焼触媒21が下流側に配置されている。
【0104】
好ましいのはSCR触媒22を上流側に配置した図11(b)に示す担持形態である。この担持形態であれば、SCR触媒22を担持した上流側では、PM24との反応によるNOの消費がないため、SCR触媒上でのNHによるNOx浄化反応が最も効率的に進むNO:NO=1:1の排気ガス条件に近づきやすく、高いNOx浄化率が期待できる。また、上流側の方が温度が高いため、SCR触媒22上においてもPMが燃焼することが期待される。また、上流側のSCR触媒22にはNOをトラップする機能がないため、SCR反応がないときのNOを下流側のPM燃焼触媒21のアルカリ土類金属にトラップして溜めることができ、フィルタを再生するときに、アルカリ土類金属の硝酸塩の分解で生じる活性な酸素によるPM24の燃焼に有利になる。
【0105】
[担持形態E]
図11(c)に示す担持形態では、PM燃焼触媒21が上側、すなわち、排気ガスが通る空間側に、SCR触媒22が下側に配置されている。同図(d)に示す担持形態では、SCR触媒22が上側に、PM燃焼触媒21が下側に配置されている。
【0106】
好ましいのはPM燃焼触媒21を上側に配置した図11(c)に示す担持形態である。この担持形態であれば、PM燃焼触媒21とPM24の接触が良好になり、PMの燃焼が進み易い。また、PM燃焼触媒21上のPM24が燃焼除去され易いため、排気ガス中のNOxが下側のSCR触媒22に拡散し易い。従って、NOxの選択還元に有利になる。
【0107】
<参考形態に係る排気ガス浄化システム>
図12に示すように、参考形態に係る排気ガス浄化システムは、実施形態とは違って、独立したNH酸化触媒を排気ガス通路1に設ける代わりに、第2触媒5の下流部にNH酸化触媒25を備えている。具体的には、図13に示すように、SCR/フィルタ5の排気ガス流れ方向の下流部にNH酸化触媒25を担持している。参考形態の他の構成は実施形態と同じである。
【0108】
図13に示す例では、フィルタ本体23の上流部に、PM燃焼触媒21が上側になり、SCR触媒22が下側になるように、同触媒21,22を担持し(図11(c)の担持形態)、フィルタ本体23の下流部にNH酸化触媒25を担持している。これにより、NH酸化触媒専用の担体を別途設ける必要がなくなり、そのため、排気ガス浄化システムがさらにシンプルになり、排気ガス通路へのレイアウトが容易になる。
【0109】
なお、図11(b)の担持形態において、その下流部をPM燃焼触媒とNH酸化触媒の2層構造とし、PM燃焼触媒をNH酸化触媒の上側(排気ガスが通る空間側)に配置するようにしてもよい。或いは、図11(b)の担持形態において、その下流部をPM燃焼触媒とNH酸化触媒の混合層としてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 エンジンの排気ガス通路
2 第1触媒
3 注入手段
4 ミキサ
5 第2触媒
6 NH酸化触媒
17 酸化触媒
18 LNT触媒
19 ハニカム担体のセル壁
21 PM燃焼触媒
22 SCR触媒
23 フィルタ本体
図1
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図10
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図13