【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために、酸化触媒と還元触媒を含有する複合触媒を採用した。
【0015】
すなわち、ここに開示する排気ガス浄化システムは、リーンバーンエンジンの排気ガスを浄化するシステムであって、
上記エンジンの排気ガス通路に第1触媒と第2触媒が排気ガス流れ方向の上流側から順に配置され、
上記第1触媒は、一つのハニカム担体に、上記排気ガス中のHC、CO及びNOを酸化する酸化触媒と、上記排気ガス中のNOxを一時的にトラップして還元するLNT触媒とを担持させた複合触媒であり、
上記第2触媒は、上記排気ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタに、当該捕集したパティキュレートを燃焼させるPM燃焼触媒と、上記NOxを還元剤の存在下で選択的に還元するSCR触媒とを担持させた複合触媒であり、
上記PM燃焼触媒は、Ce以外の希土類金属及びZrを含有するZr系複合酸化物とアルカリ土類金属とを含有し、該アルカリ土類金属が該Zr系複合酸化物に担持されており、
上記Zr系複合酸化物が、ZrO2−Nd2O3複合酸化物、ZrO2−La2O3複合酸化物、ZrO2−Pr2O3複合酸化物、ZrO2−Yb2O3複合酸化物、ZrO2−Nd2O3−Pr2O3複合酸化物、ZrO2−La2O3−Nd2O3複合酸化物、ZrO2−Pr2O3−Y2O3複合酸化物、ZrO2−Pr2O3−Yb2O3複合酸化物、又はZrO2−Nd2O3−Pr2O3−La2O3複合酸化物であり、
上記第2触媒がPt及びPdのいずれも含有しないことを特徴とする。
【0016】
このシステムによれば、排気ガス中のNOxを第1触媒のLNT触媒及び第2触媒のSCR触媒によって還元浄化することができる。また、第1触媒の酸化触媒における排気ガス成分の酸化反応熱を利用して排気ガス温度を高めることにより、第2触媒の温度を上昇させることができ、第2触媒のPM燃焼触媒でパティキュレートを燃焼させることが可能になる。
【0017】
また、排気ガスの空燃比がリーンであるとき、排気ガス中のNOxは第1触媒のLNT触媒にトラップされる。排気ガス中のNOxのうちの量が多いNOはLNT触媒と複合されている酸化触媒によってNO
2に酸化されるため、LNT触媒に効率良くトラップされる。このときは第2触媒のSCR触媒ではNOxを浄化する必要はないから、還元剤又は還元剤前駆体の注入は不要である。或いは第2触媒に達するNOx量は少ないから、SCR触媒でNOxを浄化するとしても、還元剤又は還元剤前駆体の注入量は少なくて済む。
【0018】
第1触媒のLNT触媒にトラップされたNOxは、そのトラップ量が所定値に達したときに、排気ガスの空燃比をリーンから一時的にリッチにするリッチパージによってLNT触媒から放出させ該LNT触媒によって還元浄化することができる。このときも、SCR触媒ではNOxを浄化する必要はない。或いはLNT触媒から放出された一部のNOxが未浄化のまま下流側に流れ、第2触媒に達するとしても、そのNOx量は少ない。従って、第2触媒のSCR触媒でNOxを浄化するとしても、還元剤又は還元剤前駆体の注入量は少なくて済む。
【0019】
一方、第2触媒のSCR触媒が活性を呈する温度に達しているときは、排気ガスに還元剤又は還元剤前駆体を注入することによって、排気ガス中のNOxをSCR触媒で還元浄化することができる。従って、このときは、第1触媒のLNT触媒においてNOxトラップ量が所定値に達しているとしても、必ずしも、リッチパージを行なう必要はない。すなわち、SCR触媒が活性を呈する温度に達しているときは、このSCR触媒でNOxを浄化することにより、LNT触媒のためのリッチパージのインターバルを長くとって、リッチパージによる燃費の悪化を避けることができる。
【0020】
排気ガスの空燃比がリーンであるとき、該排気ガス中のパティキュレートは第2触媒のフィルタで捕集される。パティキュレートの捕集量が所定値に達したときにポスト噴射を実行し、第1触媒の酸化触媒での酸化反応熱を利用して排気ガス温度を上昇させて触媒付フィルタの温度を高めることにより、第2触媒のPM燃焼比触媒によってパティキュレートを燃焼させて除去することができる(フィルタの再生)。このとき、第1触媒の酸化触媒においてNOの酸化によって生成するNO
2が酸化剤となってパティキュレートの燃焼が促進される。また、酸化触媒での酸化反応熱によってLNT触媒の温度が上昇することにより、該LNT触媒からNO
2が放出されるから、このNO
2が酸化剤となってパティキュレートの燃焼が促進される。
【0021】
このように、第1触媒の酸化触媒で生成するNO
2及びLNT触媒から放出されるNO
2がパティキュレートの燃焼に利用されるため、ポスト噴射量を少なくすることができる。従って、燃費の悪化を避けることができる。
【0022】
また、PM燃焼触媒として上記Zr系複合酸化物を採用するから、このZr系複合酸化物から活性な酸素を放出させて上記パティキュレートの燃焼を促進することができる。この場合、活性な酸素の活性が高いことから、PtやPdのような触媒貴金属が存在しなくても、パティキュレートの燃焼が進む。
【0023】
Zr系複合酸化物は、上述の如くパティキュレートの燃焼を促進するものの、それ自体には還元剤を酸化させるような強い酸化触媒機能はない。従って、フィルタに供給される還元剤は、Zr系複合酸化物によって酸化されることなく、SCR触媒によるNOxの選択還元に供されることになる。
【0024】
PM燃焼触媒としてアルカリ土類金属を採用するから、排気ガス中のNOxがアルカリ土類金属にトラップ(吸蔵)され、アルカリ土類金属の硝酸塩が生成する。第2触媒の温度が上昇すると、その硝酸塩の熱分解によって活性な酸素が放出される。この活性な酸素が酸化剤となってフィルタに捕集されているパティキュレートが燃焼する。この場合、活性な酸素の活性が高いことから、PtやPdのような触媒貴金属が存在しなくても、パティキュレートの燃焼が進む。
【0025】
アルカリ土類金属は、上述の如くパティキュレートの燃焼を促進するものの、それ自体には還元剤を酸化させるような強い酸化触媒機能はない。従って、フィルタに供給される還元剤は、アルカリ土類金属によって酸化されることなく、SCR触媒によるNOxの選択還元に供されることになる。しかも、アルカリ土類金属がZr系複合酸化物に担持されているから、パティキュレートの燃焼に有利になる。
【0026】
さらに、第2触媒はPt及びPdのいずれも含有しないから、第2触媒に還元剤が供給されたとき、この還元剤がSCR触媒によるNOxの選択還元に使われる前に酸化されてしまうことが避けられ、SCR触媒によるNOxの選択還元が効率良く進む。
【0027】
しかも、上記態様によれば、LNT触媒と酸化触媒を一体化させて複合触媒とし、PM燃焼触媒とSCR触媒とを一体化させて複合触媒としたことにより、システムの大型化防止に有利になり、システム構成要素のレイアウトが容易になる。また、SCR触媒のNOx浄化負担が軽くなるため、SCR触媒の小型化や還元剤又は還元剤前駆体の貯留タンクの小型化が図れる。
【0028】
本発明の好ましい態様では、上記第1触媒のLNT触媒は、排気ガス中のNOを酸化する触媒成分と、排気ガス中のNOxをトラップするNOxトラップ材と、該NOxトラップ材にトラップされたNOxを還元する触媒成分を含有し、
上記第1触媒の酸化触媒は、排気ガス中のHCをトラップするHCトラップ材と、HC、CO及びNOを酸化する触媒成分を含有し、
上記第1触媒は、次のA、B及びCから選ばれる少なくとも一つの構造を備えていることを特徴とする。
A ハニカム担体の排気ガスが通る各セルの壁に上記LNT触媒を含有する層と上記酸化触媒を含有する層が設けられ、該両層のうちの一方が他方よりも当該セルの排気ガスが通る空間側に配置されている。以下、当該空間側を配置されている一方の触媒層を端的に「上層」になっているといい、他方の触媒層を端的に「下層」になっているという。
B ハニカム担体の排気ガスが通る各セルの壁に上記LNT触媒と上記酸化触媒が混合された触媒層が形成されている。
C ハニカム担体の排気ガスが通る各セルの壁に上記LNT触媒と上記酸化触媒が設けられ、該LNT触媒及び酸化触媒のうちの一方が他方よりも当該セルの排気ガス流れ方向の上流側に配置されている。
【0029】
上記LNT触媒によれば、NOを酸化する触媒成分を含有するから、排気ガス中のNOがNO
2に酸化され、NOxトラップ材によるNOxのトラップが促進される。また、上記酸化触媒によれば、HCトラップ材を含有するから、排気ガス温度が低いとき(触媒が活性化していないとき)に排気ガス中のHCをトラップしておき、排気ガス温度が高くなったとき(触媒が活性を呈するようになったとき)にHCトラップ材から放出されるHCを酸化浄化することができ、HCが酸化されることなく排出される量を減らすことができる。
【0030】
構造Aに関し、LNT触媒が上層になり、酸化触媒が下層になっているケースでは、上層(LNT触媒)でNOxがトラップされるため、NOxが下層(酸化触媒)でのHC及びCOの酸化反応を阻害することが抑制される。また、LNT触媒を含有する上層の還元能力が高いため、NOxがN
2まで還元される反応が進み易い。
【0031】
構造Aに関し、LNT触媒が下層になり、酸化触媒が上層になっているケースでは、上層(酸化触媒)で排気ガス中のNOが酸化されてNO
2が生成し易くなり、その結果、下層(LNT触媒)でNOx吸蔵反応が進み易くなる。酸化触媒を含有する上層の酸化能力が高いため、フィルタ再生時のポスト噴射成分(HC,CO)の酸化が進み易く、第2触媒の昇温に有利になる。また、上層(酸化触媒)でNO
2が生成されることにより、第2触媒に流れるNOxのNO
2比率が高くなり、フィルタの再生に有利になる。
【0032】
構造Bによれば、LNT触媒と酸化触媒が混合されているから、酸化触媒で生成されるNO
2がLNT触媒のNOxトラップ材に吸蔵され易くなる。
【0033】
構造Cに関し、LNT触媒を上流側に配置するケースでは、上流側でNOxがトラップされるため、NOxが下流側の酸化触媒でのHC及びCOの酸化反応を阻害することが抑制される。LNT触媒が上流側にあって昇温し易いため、NOx放出時にNOxの浄化反応が進み易い。また、LNT触媒から放出されるNOが下流側の酸化触媒で酸化されてNO
2が生成するため、第2触媒に流れるNOxのNO
2比率が高くなり、フィルタの再生に有利になる。
【0034】
構造Cに関し、酸化触媒を上流側に配置するケースでは、上流側の酸化触媒で排気ガス中のNOが酸化されてNO
2が生成し易くなり、その結果、下流側のLNT触媒でNOx吸蔵反応が進み易くなる。酸化触媒が上流側にあって昇温し易いため、HC及びCOの酸化反応が進み易い。その結果、第2触媒の早期昇温も図れるため、フィルタの再生に有利になる。
【0035】
本発明の好ましい態様では、上記排気ガス中のNOxを上記第2触媒の還元触媒によって還元するべく、NH
3又はNH
3前駆体としての尿素を上記排気ガス通路に注入する注入手段を備え、
上記排気ガス通路における上記第2触媒よりも排気ガス流れ方向の下流側に、NH
3及び/又はその誘導体を酸化するためのNH
3酸化触媒が配置されている。
【0036】
第2触媒の還元触媒によるNOxの選択還元において、還元剤としてNH
3を用いたとき、NOxの還元に使われなかったNH
3が大気中に排出されると異臭を放つ。そこで、フィルタよりも排気ガス流れ方向の下流側にNH
3酸化触媒を配置し、NH
3及び/又はその誘導体を酸化するものである。
【0037】
また、ここに開示する排気ガス浄化方法は、リーンバーンエンジンから排出される排気ガス中のNOxとパティキュレートを処理する方法であって、
上記エンジンの排気ガス通路に第1触媒と第2触媒を排気ガス流れ方向の上流側から順に配置し、
上記第1触媒は、一つのハニカム担体に、上記排気ガス中のHC、CO及びNOを酸化する酸化触媒と、上記排気ガス中のNOxを一時的にトラップして還元するLNT触媒とを担持させた複合触媒とし、
上記第2触媒は、上記排気ガス中のパティキュレートを捕集する一つのフィルタに、当該捕集したパティキュレートを燃焼させるPM燃焼触媒と、上記NOxを還元剤の存在下で選択的に還元するSCR触媒とを担持させた複合触媒とし、
上記PM燃焼触媒は、Ce以外の希土類金属及びZrを含有するZr系複合酸化物とアルカリ土類金属とを含有し、該アルカリ土類金属が該Zr系複合酸化物に担持されたものとし、
上記Zr系複合酸化物が、ZrO2−Nd2O3複合酸化物、ZrO2−La2O3複合酸化物、ZrO2−Pr2O3複合酸化物、ZrO2−Yb2O3複合酸化物、ZrO2−Nd2O3−Pr2O3複合酸化物、ZrO2−La2O3−Nd2O3複合酸化物、ZrO2−Pr2O3−Y2O3複合酸化物、ZrO2−Pr2O3−Yb2O3複合酸化物、又はZrO2−Nd2O3−Pr2O3−La2O3複合酸化物であり、
上記第2触媒は、Pt及びPdのいずれも含有しない構成とし、
上記排気ガスの空燃比がリーンであるときに該排気ガス中のNOを上記第1触媒の酸化触媒でNO
2に酸化して上記第1触媒のLNT触媒でトラップするステップと、
上記排気ガスの空燃比がリーンであるときに、上記第1触媒を通過した排気ガス中のパティキュレートを上記第2触媒のフィルタで捕集するステップと、
上記LNT触媒のNOxトラップ量が所定値に達したときに、上記排気ガスの空燃比をリーンから一時的にリッチにするリッチパージを実行して、該LNT触媒にトラップされているNOxを還元浄化するステップと、
上記第2触媒に流入する排気ガスの温度が所定値以上であるときに、該排気ガスに還元剤又は還元剤前駆体を注入し、該排気ガス中のNOxを当該還元剤の存在下で上記第2触媒のSCR触媒によって還元浄化するステップと、
上記フィルタのパティキュレート捕集量が所定値に達したときに、上記エンジンの燃焼室に膨張行程又は排気行程で燃料を噴射供給するポスト噴射を実行して排気ガス中のHC及びCOの量を増大させるステップと、
上記HC及びCOを上記第1触媒の酸化触媒で酸化させ、その反応熱によって温度が上昇した排気ガスを上記第2触媒に流入させて該第2触媒の温度を上昇させることにより、該第2触媒のフィルタに捕集されているパティキュレートをPM燃焼触媒によって燃焼させて除去するステップとを備えていることを特徴とする。
【0038】
この排気ガス浄化方法によれば、NOx浄化性能及びパティキュレート燃焼性能を落とすことなく、還元剤又はその前駆体の注入量、リッチパージ頻度及びポスト噴射量を減らすことができ、燃費の向上に有利になるとともに、排気ガス浄化システムの大型化が避けられ、システム構成要素のレイアウトが容易になる。
【0039】
上記排気ガス浄化方法の好ましい態様では、上記リッチパージを実行したとき、上記第2触媒に流入する排気ガスのNOx濃度、又は上記第2触媒から流出する排気ガスのNOx濃度が所定値以上であるときは、上記第2触媒に流入する排気ガス温度が所定値以上であることを条件として、上記SCR触媒によるNOxの選択還元を実行すべく、上記第2触媒に流入する排気ガスに還元剤又は還元剤前駆体を注入する。
【0040】
すなわち、LNT触媒にトラップしていたNOxをリッチパージによって還元浄化したときにおいて、LNT触媒から放出された一部のNOxが未浄化のまま下流側に流れ、第2触媒に流入する排気ガスのNOx濃度、又は上記第2触媒から流出する排気ガスのNOx濃度が高くなったときに、第2触媒のSCR触媒によってNOxを還元浄化するものである。
【0041】
上記排気ガス浄化方法の好ましい態様では、上記第2触媒を通過した排気ガス中の上記還元剤及び/又はその誘導体をトラップ材にトラップするステップと、
上記ポスト噴射を実行して上記第2触媒のフィルタに捕集されているパティキュレートを燃焼させたときに、その燃焼によって発生する熱によって、上記トラップ材を加熱して該トラップ材にトラップされている上記還元剤及び/又はその誘導体を放出させて酸化するステップとをさらに備えている。
【0042】
これによれば、SCR触媒でNOxの還元に使用されなかった還元剤及び/又はその誘導体が大気中に排出されることを防止することができる。また、フィルタ再生時のパティキュレート燃焼熱を利用して上記還元剤及び/又はその誘導体をトラップ材から放出させて酸化することができ、効率的である。