特許第6248893号(P6248893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248893
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】車両用ポップアップフード装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/10 20060101AFI20171211BHJP
   B60R 21/38 20110101ALI20171211BHJP
【FI】
   B62D25/10 E
   B60R21/38
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-216261(P2014-216261)
(22)【出願日】2014年10月23日
(65)【公開番号】特開2016-83957(P2016-83957A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2016年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】青山 譲二
【審査官】 北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−238886(JP,A)
【文献】 特許第4887512(JP,B2)
【文献】 特開2012−081843(JP,A)
【文献】 特開2008−162449(JP,A)
【文献】 特開2009−166747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10−25/13
B60R 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードの後端部の車両下側において車体に固定されたヒンジベースと、
後端側において第1連結部によって前記ヒンジベースに回動可能に連結されたヒンジアームと、
前記フードの後端部に固定された固定アームと、
前記第1連結部に対して車両前側の位置で前記ヒンジアームと前記固定アームとの間に架け渡され、作動することで前記フードを持上位置に持上げるアクチュエータと、
前記アクチュエータに対して車両前側に配置され、第2連結部によって前記ヒンジアームに回動可能に連結されると共に、第3連結部によって前記固定アームに回動可能に連結された連結アームと、
を備えた車両用ポップアップフード装置。
【請求項2】
前記第2連結部が前記第3連結部に対して車両前側に配置されている請求項1に記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項3】
前記第2連結部が前記第3連結部に対して車両後側に配置されている請求項1に記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項4】
前記ヒンジアームには、車両前後方向を長手方向とする長孔が形成されており、前記長孔に前記第2連結部がスライド可能に連結されている請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用ポップアップフード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ポップアップフード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された車両用ポップアップフード装置は、フードに固定された固定部材(固定アーム)と、車体に固定された第2ヒンジ部分(ヒンジベース)と、第2ヒンジ部分と固定部材とを連結する揺動部材(ヒンジアーム)と、を含んで構成されている。また、揺動部材には、ピストンシリンダユニット(アクチュエータ)が設けられており、ピストンシリンダユニットのピストンが固定部材に連結されている。そして、ピストンシリンダユニットが作動することで、ピストンが固定部材を持上げて、フードが持上位置に持上げられる。なお、車両用ポップアップフード装置として、他に下記特許文献2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4887512号公報
【特許文献2】特開2008−542123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の車両用ポップアップフード装置では、下記に示す点において改善の余地がある。すなわち、ピストンシリンダユニットによって固定部材(フード)を持上げるときには、フードが固定部材の前端部(固定部材と揺動部材との連結部)を中心に回動しようとする。このため、フードの前端部が一旦沈み込むようにフードが持上げられる。これにより、フードの持上時間が長くなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、フードを迅速に持上げることができる車両用ポップアップフード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用ポップアップフード装置は、フードの後端部の車両下側において車体に固定されたヒンジベースと、後端側において第1連結部によって前記ヒンジベースに回動可能に連結されたヒンジアームと、前記フードの後端部に固定された固定アームと、前記第1連結部に対して車両前側の位置で前記ヒンジアームと前記固定アームとの間に架け渡され、作動することで前記フードを持上位置に持上げるアクチュエータと、前記アクチュエータに対して車両前側に配置され、第2連結部によって前記ヒンジアームに回動可能に連結されると共に、第3連結部によって前記固定アームに回動可能に連結された連結アームと、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の車両用ポップアップフード装置では、ヒンジベースが、フードの後端部の車両下側において車体に固定されている。このヒンジベースには、ヒンジアームが、自身の後端側において第1連結部によって回動可能に連結されている。一方、フードの後端部には、固定アームが固定されている。そして、固定アームとヒンジアームとの間には、アクチュエータが架け渡されており、アクチュエータは第1連結部に対して車両前側に配置されている。
【0008】
ここで、アクチュエータの車両前側には、連結アームが配置されており、連結アームは、第2連結部によってヒンジアームに回動可能に連結されると共に、第3連結部によって固定アームに回動可能に連結されている。すなわち、固定アームの前端側が連結アームを介してヒンジアームに連結されている。このため、連結アームのヒンジアームに対する相対回動によって、固定アームの前端側をヒンジアームに対して車両上側への相対移動させるように構成できる。これにより、アクチュエータによって固定アームを持上げると、固定アームの前端側がヒンジアームに対して車両上側へ相対移動される。その結果、フードの持上時においてフード前端部の沈み込みが抑制される。したがって、フードを迅速に持上げることができる。
【0009】
請求項2に記載の車両用ポップアップフード装置は、請求項1に記載の発明において、前記第2連結部が前記第3連結部に対して車両前側に配置されている。
【0010】
請求項2に記載の車両用ポップアップフード装置では、第2連結部が第3連結部に対して車両前側に配置されている。つまり、連結アームの前端側が第2連結部によってヒンジアームに回動可能に連結され、連結アームの後端側が第3連結部によって固定アームに回動可能に連結される。このため、フードが持上位置に持上げられるときには、連結アームは、前端側の第2連結部を回動中心として回動されるため、フードが車両後側へ一旦移動してから持上位置に持上げられるようになる。これにより、歩行者と車両との衝突時にフード上に倒れ込む歩行者に対してフードが一旦離れる方向へ移動するため、歩行者に対する保護性能を向上することができる。
【0011】
請求項3に記載の車両用ポップアップフード装置は、請求項1に記載の発明において、前記第2連結部が前記第3連結部に対して車両後側に配置されている。
【0012】
請求項3に記載の車両用ポップアップフード装置では、第2連結部が第3連結部に対して車両後側に配置されている。つまり、連結アームの後端側が第2連結部によってヒンジアームに回動可能に連結され、連結アームの前端部が第3連結部によって固定アームに回動可能に連結される。このため、第2連結部が第3連結部に対して車両前側に配置された場合と比べて、ヒンジアームの体格(車両前後方向の寸法)を小さくすることができる。
【0013】
請求項4に記載の車両用ポップアップフード装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の発明において、前記ヒンジアームには、車両前後方向を長手方向とする長孔が形成されており、前記長孔に前記第2連結部がスライド可能に連結されている。
【0014】
請求項4に記載の車両用ポップアップフード装置では、第2連結部が、ヒンジアームに形成された長孔にスライド可能に連結されている。このため、アクチュエータによって固定アームが持上げられるときに、固定アームのヒンジアームに対する相対位置に対応して連結アームを揺動させることができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の車両用ポップアップフード装置によれば、フードを迅速に持上げることができる。
【0016】
請求項2に記載の車両用ポップアップフード装置によれば、例えば、フード上に倒れ込む歩行者に対する保護性能を向上することができる。
【0017】
請求項3に記載の車両用ポップアップフード装置によれば、ヒンジアームの体格を小さくすることができる。
【0018】
請求項4に記載の車両用ポップアップフード装置によれば、固定アームのヒンジアームに対する相対位置に対応して連結アームを揺動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施の形態に係る車両用ポップアップフード装置に用いられる連結アームの設定位置を説明するための側面図である。
図2】本実施の形態に係る車両用ポップアップフード装置が適用された車両の前部を示す車幅方向内側から見た模式的な側面図である。
図3図2に示される車両用ポップアップフード装置の全体を示す拡大した側面図である。
図4図3に示される車両用ポップアップフード装置が作動した状態を示す側面図である。
図5】比較例の車両用ポップアップフード装置の全体を示す模式的な側面図である。
図6】(A)は、図3に示される第2連結ピンとヒンジアームとの連結方法の変形例を示す側面図であり、(B)は、(A)に示される車両用ポップアップフード装置が作動した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本実施の形態に係る車両用ポップアップフード装置20について説明する。なお、図面において適宜示される矢印FR、矢印UPは、それぞれ車両用ポップアップフード装置20が適用された車両Vの車両前側、車両上側を示している。そして、以下、単に前後、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0021】
図2に示されるように、車両用ポップアップフード装置20はポップアップ機構部22を主要部として構成されている。このポップアップ機構部22は、エンジンルームERを開閉するフード10の後端部における車幅方向両側部分の下側にそれぞれ設けられている(図2では、車両右側に配置されたポップアップ機構部22のみを図示している)。そして、車両右側及び車両左側に各々配置されたポップアップ機構部22は車幅方向において左右対称に構成されている。このため、以下の説明では、車両右側に配置されたポップアップ機構部22の構成について説明し、車両左側に配置されたポップアップ機構部22の構成の説明は省略する。
【0022】
ポップアップ機構部22は、フード10を開閉可能に支持するフードヒンジ24と、歩行者等の衝突体との衝突時に作動するアクチュエータ70と、を含んで構成されている。以下、初めにフード10の構成について説明し、次いで上記各構成について説明する。
【0023】
(フード10について)
フード10は、意匠面を構成するフードアウタパネル10Aと、エンジンルームER側に配置されると共にフードアウタパネル10Aを補強するフードインナパネル10Bと、を含んで構成されており、この両者の端末部がヘミング加工によって結合されている。また、フードインナパネル10Bの後端側(後部側)は下側へ膨らんでおり、これによりフード10の後端側に膨出部12が形成されている。
【0024】
フード10の前端部における車幅方向中間部には、フードストライカ14が設けられており、フードストライカ14はフード10から下側へ突出されている。このフードストライカ14は、側面視で上側へ開放された略U字形状に形成されており、フードストライカ14の開放端部がフード10に接合されている。そして、フードストライカ14の下端部が係止部14Aとされており、係止部14Aは前後方向に延びている。また、フード10がエンジンルームERを閉じた状態(図2及び図3に示される位置であり、以下この位置を「閉位置」という)では、フードストライカ14が、フードロック装置18に係止されている。これにより、フード10の前端部が車体に固定されている。
【0025】
(フードヒンジ24について)
図3及び図4に示されるように、フードヒンジ24は、ヒンジベース26と、ヒンジアーム30と、固定アーム40と、連結アーム50と、を含んで構成されている。ヒンジベース26は、車両正面視で略逆L字形板状に形成されると共に、車幅方向内側から見た側面視で上斜め前方へ開放された略V字形状に形成されている。また、ヒンジベース26は、前後方向に沿って延在する板状の取付部26Aを備えている。取付部26Aは、板厚方向を略上下方向にして、車体側構成部材であるカウルトップサイド16の上面部16Aに配置されている。なお、カウルトップサイド16は、フード10の後端側とウインドシールドガラスの下端部との間に車幅方向に沿って延在するカウルの両サイドに設けられている。そして、取付部26Aが取付ボルト(図示省略)よって上面部16Aに固定されている。さらに、ヒンジベース26は支持部26Bを備えており、支持部26Bは、取付部26Aの車幅方向内側端部から上側へ屈曲されて、板厚方向を略車幅方向にして配置されている。
【0026】
ヒンジアーム30は、ヒンジベース26の車幅方向内側に配置されると共に、側面視で略逆三角形板状に形成されている。具体的には、ヒンジアーム30は、側面視で、下端部30Aと、下端部30Aの前側且つ上側に配置された前端部30Bと、下端部30Aの後側且つ上側に配置された後端部30Cと、を頂点とする略逆三角形板状に形成されている。また、ヒンジアーム30の後端部30Cは、「第1連結部」としての第1連結ピン60によって、ヒンジベース26の支持部26Bの上端部に車幅方向を軸方向として回動可能に連結されている。これにより、ヒンジアーム30は、第1連結ピン60の軸回りに回動可能に構成されている。
【0027】
また、ヒンジアーム30の下端部30Aには、後述するアクチュエータ70の下端部を回動可能に支持する連結軸32が設けられている。連結軸32は、車幅方向を軸方向とする略円柱状に形成されて、ヒンジアーム30から車幅方向内側へ突出されている。さらに、ヒンジアーム30には、前端部30Bの後側の位置において、シェアピン34(図3参照)が設けられており、シェアピン34は、略円柱状に形成されると共に、ヒンジアーム30から車幅方向内側へ突出されている。
【0028】
固定アーム40は、車両正面視で略逆L字形状に屈曲された板状に形成されて、ヒンジアーム30に対して車幅方向内側に配置されると共に、側面視でヒンジアーム30の下端部30Aに対して上側に配置されている。具体的には、固定アーム40は、ヒンジアーム30と平行に配置されたアーム本体部42と、アーム本体部42の上端から車幅方向内側へ延出された固定部44と、を含んで構成されている。この固定部44は、フード10の膨出部12の下面に沿って略前後方向に延在されている。そして、膨出部12の上面に固定されたウエルドナット(図示省略)及び当該ウエルドナットに螺合されるヒンジボルト(図示省略)によって、固定部44が膨出部12に締結(固定)されている。
【0029】
また、アーム本体部42の前端部は、ヒンジアーム30の前端部30Bよりも後側に配置されている。すなわち、ヒンジアーム30の前端部30Bがアーム本体部42よりも前側へ突出している。そして、アーム本体部42の前端部には、側面視で下側へ突出された突出部42Aが一体に形成されている。この突出部42Aには、「第3連結部」としての第3連結ピン64が車幅方向を軸方向として固定されており、フード10の閉位置において、第3連結ピン64は、ヒンジアーム30の前端部30Bに対して後側且つ下側に配置されている(図3参照)。
【0030】
さらに、アーム本体部42の後端部には、後述するピストンロッド76を連結するための連結軸46が一体に設けられている。この連結軸46は、車幅方向を軸方向とする略円柱状に形成されて、アーム本体部42から車幅方向内側へ突出されると共に、側面視でヒンジアーム30の連結軸32に対して上側且つ後側に配置されている。またさらに、アーム本体部42には、ヒンジアーム30のシェアピン34に対応する位置において、孔部48が形成されており、シェアピン34が孔部48に挿入されて、固定アーム40とヒンジアーム30とが結合されている。
【0031】
連結アーム50は、略矩形板状に形成されて、車幅方向を板厚方向にして配置されると共に、固定アーム40のアーム本体部42とヒンジアーム30との間に配置されている。すなわち、フードヒンジ24では、ヒンジベース26、ヒンジアーム30、連結アーム50、及び固定アーム40が、この順で車幅方向外側から車幅方向内側へ並んで配置されている。
【0032】
そして、連結アーム50の前端部が、「第2連結部」としての第2連結ピン62によって、ヒンジアーム30の前端部30Bに車幅方向を軸方向として回動可能に連結されている。これにより、連結アーム50が、第2連結ピン62の軸回りにヒンジアーム30に対して相対回動可能に構成されている。
【0033】
一方、連結アーム50の後端部は、固定アーム40の前端部における突出部42Aに、第3連結ピン64によって車幅方向を軸方向として回動可能に連結されている。これにより、固定アーム40が連結アーム50を介してヒンジアーム30に連結されて、固定アーム40の前端部におけるヒンジアーム30に対する上側への相対移動が連結アーム50によって許容されるようになっている。具体的には、固定アーム40がヒンジアーム30に対して上側へ相対移動すると(図4に示される状態を参照)、連結アーム50が第3連結ピン64の軸回りに固定アーム40に対して相対回動すると共に、連結アーム50が第2連結ピン62を回動中心としてヒンジアーム30に対して上側(図3の矢印A方向側)へ相対回動するようになっている。そして、連結アーム50によるヒンジアーム30と固定アーム40との連結状態では、フード10の閉位置において、連結アーム50が側面視で後側へ向かうに従い下側へ傾斜して配置されている(図3参照)。
【0034】
なお、以上のように構成されたフードヒンジ24は、本来的にはフード10をボディ(車体)に開閉可能に支持するためのヒンジ部品であるが、本実施形態では、車両用ポップアップフード装置20の構成要素でもある。すなわち、通常時には、シェアピン34及び後述するアクチュエータ70によってヒンジアーム30に対する固定アーム40及び連結アーム50の相対移動及び相対回動が制限されており、フード10を開閉するときには、ヒンジアーム30、固定アーム40、及び連結アーム50が一体に第1連結ピン60を回動中心にして上側(図3の矢印B方向側)へ回動されるようになっている。
【0035】
(アクチュエータ70について)
アクチュエータ70は、略円柱状に形成されると共に、固定アーム40の車幅方向内側に配置されている。このアクチュエータ70は、シリンダ72とピストンロッド76とを含んで構成されている。シリンダ72は、上端が開口された略有底円筒形状に形成されている。このシリンダ72の下端部には、シリンダ連結部74が一体に設けられており、シリンダ連結部74は、車幅方向を軸方向にした略円筒形状に形成されている。そして、シリンダ連結部74内に、ヒンジアーム30の連結軸32が挿入されて、シリンダ72の下端部がヒンジアーム30に対して相対回動可能に連結されている。
【0036】
ピストンロッド76は、真直棒状の部材とされて、シリンダ72内に収容される共に、シリンダ72と同軸上に配置されている。また、ピストンロッド76の下端部には、ピストン(図示省略)が設けられており、ピストンはシリンダ72内に緊密に収容されている。
【0037】
また、ピストンロッド76の上端部には、ロッド連結部78が一体に設けられており、ロッド連結部78は、車幅方向を軸方向にした略円筒形状に形成されている。そして、ロッド連結部78内に、固定アーム40の連結軸46が挿入されて、ピストンロッド76の上端部が固定アーム40に対して相対回動可能に連結されている。これにより、アクチュエータ70が、ヒンジアーム30の下端部30Aと固定アーム40の後端部との間に架け渡されて、アクチュエータ70によってヒンジアーム30と固定アーム40とが連結されている。また、この状態では、アクチュエータ70が、連結アーム50に対して後側に配置されると共に、側面視で上側へ向かうに従い後側へ傾斜している(図3参照)。
【0038】
また、シリンダ72の内部には、図示しないガス発生装置が収容されている。このガス発生装置は、図示しないECU(制御手段)と電気的に接続されており、ECUは、歩行者等の衝突体との衝突を検知する衝突検知センサと電気的に接続されている。この衝突検知センサは、一例として圧力チューブ式の検知センサとして構成されて、図示しないバンパのバンパリインフォースメントに配設された圧力チューブと、圧力チューブの長手方向両端部に設けられた圧力センサと、を含んで構成されている。
【0039】
そして、アクチュエータ70の非作動状態(図3に示される状態)からECUの制御によってアクチュエータ70のガス発生装置が作動すると、ガス発生装置によって発生したガスがシリンダ72内に供給されて、シリンダ72内のガス圧によってピストンがシリンダ72の軸方向に沿って上昇するようになっている。これにより、ピストンロッド76のロッド連結部78によって固定アーム40の後端部が上側へ持上げられて、フード10が持上位置(図4に示される位置)に持上げられるようになっている。
【0040】
なお、アクチュエータ70内には、図示しないロック機構が収容されており、持上位置に移動したピストンロッド76の移動がロック機構によって制限されて、フード10が持上位置に保持されるようになっている。
【0041】
(連結アーム50の設定位置について)
次に、図1を用いて連結アーム50(第2連結ピン62及び第3連結ピン64)の設定位置について説明する。すなわち、図1において実線で示されるように、フード10の閉位置における第3連結ピン64(連結アーム50の後端部)の位置がP1位置とされている。また、図1において2点鎖線で示されるように、フード10の持上位置における第3連結ピン64の位置がP2位置とされている。なお、フード10の持上位置は、フード10の前端部(フードストライカ14の係止部14A)を回動中心として、フード10の後端部を目標とする高さ(設定高さ)まで持上げたときの位置とされている。このため、第3連結ピン64のP1位置及びP2位置は、フード10の前端部を回動中心とする第3連結ピン64の回動軌跡L1(図1の1点鎖線で示される線L1を参照)上に配置される。なお、図1に示される回動軌跡L1は、便宜上、誇張して(実際の曲率半径に対して小さく)図示している。
【0042】
そして、側面視で第3連結ピン64のP1位置及びP2位置から等距離にある位置が第2連結ピン62(連結アーム50の前端部)の設定位置とされる。具体的には、第3連結ピン64のP1位置とP2位置とを直線状に結ぶ架空線L2を引く。さらに、架空線L2に対して直交し且つ架空線L2を2等分する点Cを通過する直交線VLを引く。そして、第2連結ピン62が、架空線L2に対して前側において、直交線VL上の位置に設定されている。なお、第2連結ピン62の前後位置(すなわち、連結アーム50の長手方向の長さ)は、各種車両におけるフードヒンジ24とその周辺部品との関係や、フード10が持上げられるときのフード10の挙動等に対応して適宜設定されている。以上により、フード10が閉位置に配置された状態では、上述したように、連結アーム50が、アクチュエータ70に対して前側に配置されると共に、側面視で後側へ向かうに従い下側へ傾斜して配置されており、第2連結ピン62が第3連結ピン64に対して前側に配置されている。
【0043】
そして、アクチュエータ70によってフード10が持上位置に持上げられるときには、固定アーム40がヒンジアーム30に対して上側に相対移動されるようになっている。このときには、第3連結ピン64によって固定アーム40の前端部と共に連結アーム50の後端部が上側へ変位すると共に、連結アーム50が、第2連結ピン62を回動中心としてヒンジアーム30に対して上側(図1の矢印A方向側)へ相対回動するようになっている。すなわち、アクチュエータ70によってフード10を持上位置に持上げるときには、第2連結ピン62を回動中心とする第3連結ピン64の回動軌跡L3(図1の1点鎖線で示される線L3を参照)に沿って固定アーム40の前端部が移動すると共に、固定アーム40の全体及びフード10の後端部がヒンジアーム30に対して上側へ相対移動するように構成されている。また、このときには、ヒンジアーム30はヒンジベース26に対して殆ど相対回動しないように設定されている。
【0044】
なお、上述したように、回動軌跡L1はフード10の前端部を回動中心とする第3連結ピン64の回動軌跡であり、回動軌跡L3は第2連結ピン62を回動中心とする第3連結ピン64の回動軌跡である。このため、回動軌跡L3の曲率半径が回動軌跡L1の曲率半径に比べて小さくなる。これにより、フード10が持上位置へ持上げられるときには、この曲率半径の差によって、フード10が前後方向に移動しながら持上位置に持上げられるようになる。これに対して、フードストライカ14の係止部14Aは前後方向に延在されている。このため、フード10の持上時には、フード10の前端部がフードロック装置18に対して係止部14Aの前後長さ分だけ移動可能に構成されている。これにより、フード10の持上時におけるフード10の前後方向の移動が許容されるようになっている。
【0045】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0046】
図3に示される状態が車両用ポップアップフード装置20の非作動状態である。この状態のときには、アクチュエータ70が非作動状態にあるため、ピストンロッド76の大半がアクチュエータ70のシリンダ72内に収容されている。また、ピストンロッド76の先端部のロッド連結部78が、固定アーム40の後端部における連結軸46に回動可能に連結されている。
【0047】
この状態から、歩行者等の衝突体と車両Vが前面衝突すると、衝突検知センサによって衝突体と前面衝突したことが検知され、衝突信号が衝突検知センサからECUに出力される。ECUでは、入力された衝突信号に基づいて車両用ポップアップフード装置20を作動させるべきか否かを判断し、車両用ポップアップフード装置20を作動させるべきと判断すると、アクチュエータ70に作動信号が出力される。これにより、アクチュエータ70のガス発生装置が作動して、シリンダ72内にガスが供給される。シリンダ72内にガスが供給されると、シリンダ72内のガス圧によってピストンロッド76がシリンダ72の軸方向先端側(すなわち上側)へ軸方向移動する。
【0048】
そして、ピストンロッド76が上側へ向けて軸方向移動すると、ヒンジアーム30のシェアピン34が破断されて、シェアピン34によるヒンジアーム30と固定アーム40との結合状態が解除される。これにより、固定アーム40がヒンジアーム30に対して上側へ相対移動して、フード10が持上位置に持上げられる(図4参照)。そして、ピストンロッド76の移動がアクチュエータ70のロック機構によって制限されて、フード10が持上位置に保持される。
【0049】
次にフード10が閉位置から持上位置に持上げられるときのフード10の挙動について、図5に示される比較例のフードヒンジ24を用いた場合と比較しつつ説明する。なお、図5では、本実施の形態と同様に構成されている部品に対して同一の符号を付している。
【0050】
図5に示される比較例のフードヒンジ24では、本実施の形態における連結アーム50及び第2連結ピン62が省略されている。すなわち、固定アーム40の前端部が、前側へ延び出されると共に、第3連結ピン64によってヒンジアーム30の前端部30Bに回動可能に連結されている。
【0051】
そして、比較例においてアクチュエータ70が作動すると、ピストンロッド76のロッド連結部78によって固定アーム40の後端部が上側へ持上げられる。このとき、固定アーム40の前端部は第3連結ピン64によってヒンジアーム30の前端部30Bに回動可能に連結されているため、固定アーム40は、第3連結ピン64を回動中心としてヒンジアーム30に対して上側(図5の矢印A方向側)へ相対回動しようとする。これにより、固定アーム40の回動に伴ってフード10の後端部が第3連結ピン64を回動中心とし上側へ回動しようとするため、フード10の前端部が下側(図5の矢印D方向側)へ沈み込むようになる。
【0052】
一方、フード10の前端部(フードストライカ14)は、フードロック装置18によってロックされているため、実際には、フード10の前端部は下側へ変位しない。つまり、ヒンジアーム30が初期位置(図5に示された位置)に配置されたままの状態で、固定アーム40がヒンジアーム30に対して上側へ相対回動することができない。このため、ヒンジアーム30が第1連結ピン60を回動中心として上側(図5の矢印B方向側)へ回動しつつ、固定アーム40がヒンジアーム30に対して上側へ相対回動して、フード10の後端部が上側へ持上げられる。
【0053】
このときには、アクチュエータ70によって第3連結ピン64を中心とする回転力がフード10に作用している。このため、図示は省略するが、側面視でフード10の前後方向中間部が下側へ凸となるようにフード10が湾曲しながらフード10の後端部が上側へ持上げられる。これにより、比較例のフードヒンジ24では、フード10が閉位置から持上位置に持上げられるまでの持上時間が目標とする目標時間に対して長くなる可能性がある。その結果、フード10上に倒れ込む歩行者の頭部がフード10に当たるときに、フード10の持上げが完了していない可能性がある。この場合には、持上時間を目標時間に近づけるために、アクチュエータ70の出力(ガス発生装置によるガス圧力)を大きくする必要がある。これにより、アクチュエータ70の大型化などを招く虞がある。
【0054】
これに対して、本実施の形態では、図1に示されるように、連結アーム50の前端部が、第2連結ピン62によってヒンジアーム30の前端部30Bに回動可能に連結されており、連結アーム50の後端部が、第3連結ピン64によって固定アーム40の前端部に回動可能に連結されている。つまり、固定アーム40の前端部が連結アーム50を介してヒンジアーム30に連結されている。より詳しく説明すると、第2連結ピン62を回動中心とする連結アーム50の後端部(第3連結ピン64)の回動軌跡L3に沿って、固定アーム40の前端部がヒンジアーム30に対して上側へ相対移動可能に構成されている。
【0055】
このため、アクチュエータ70によって固定アーム40の後端部がヒンジアーム30に対して上側へ相対的に持上げられると、固定アーム40の前端部もヒンジアーム30に対して相対的に上側へ持上げられる(図1の2点鎖線で示される固定アーム40を参照)。このときには、連結アーム50の後端部が第3連結ピン64の軸回りに回動しつつ固定アーム40の前端部と共に上側へ変位する。さらに、連結アーム50は、第2連結ピン62を回動中心としてヒンジアーム30に対して上側(図1の矢印A方向側)へ相対回動される。その結果、フード10の持上時におけるフード10の前端部の沈み込みが抑制されるため、上記比較例と比べてフード10を持上位置に迅速に持上げることができる。したがって、フード10の持上げ完了後に、フード10上に倒れ込む歩行者の頭部を当接させることができる。これにより、歩行者の頭部に対する保護性能を向上することができる。さらに、フード10の迅速な持上げが可能となるため、上記比較例と比べて、アクチュエータ70の出力(ガス発生装置によるガス圧力)を大きくする必要がなくなる。これにより、アクチュエータ70の大型化を抑制することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、フード10を持上位置に持上げたときには、固定アーム40の前端部(第3連結ピン64)が、フード10の前端部を回動中心とする回動軌跡L1上に配置される。このため、アクチュエータ70のピストンロッド76のストロークを長くことなく、フード10を目標とする設定高さに持上げることができる。
【0057】
すなわち、上記比較例では、上述したように、フード10を持上位置に持上げるときには、ヒンジアーム30が第1連結ピン60を回動中心として上側へ回動しつつ、固定アーム40がヒンジアーム30に対して相対回動される。すなわち、フード10の持上位置では、ヒンジアーム30の前端部30Bが初期位置に比べて後側へ変位する。これにより、フード10の持上位置において、フード10が後側へ引き込まれる(変位する)傾向となり、フード10とエンジンルームER内の部品との隙間を確保することができなくなる可能性がある。このため、アクチュエータ70のピストンロッド76のストロークを長く設定して、フード10を目標とする設定高さに持上げる必要がある。
【0058】
これに対して、本実施の形態では、上述したように、固定アーム40がヒンジアーム30に対して上側へ相対移動すると共に、フード10の持上位置では、固定アーム40の前端部(第3連結ピン64)が、フード10の前端部を回動中心とする回動軌跡L1上に配置される。このため、フード10の持上位置がフード10の閉位置に対して後側に変位することが抑制される。したがって、上記比較例と比べて、アクチュエータ70のピストンロッド76のストロークを長くことなく、フード10を目標とする設定高さに持上げることができる。その結果、アクチュエータ70が長手方向に大型化することを抑制できる。
【0059】
また、本実施の形態では、第2連結ピン62が第3連結ピン64の前側に配置されている。このため、アクチュエータ70によってフード10を持上げるときには、連結アーム50の後端部(固定アーム40の前端部)が回動軌跡L3に沿って上側へ移動して、フード10が持上位置に持上げられる。具体的には、フード10が、閉位置と持上位置との間で後側へ一旦移動してから持上位置に持上げられる。このため、アクチュエータ70によってフード10の後端部が持上げられるときには、フード10上に倒れ込む歩行者に対してフード10が離間する方向へ一旦移動してから持上位置に持上げられる。これにより、フード10上に倒れ込む歩行者に対する保護性能を向上することができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、第2連結ピン62が第3連結ピン64の前側に配置されているが、第2連結ピン62を第3連結ピン64の後側に配置してもよい。すなわち、図示は省略するが、第2連結ピン62を、架空線L2に対して後側で且つ直交線VL上に位置するように配置してもよい。また、この場合には、本実施の形態と比べてヒンジアーム30の前端部30Bを後側に配置して、固定アーム40の前端部をヒンジアーム30の前端部30Bに対して前側へ突出させると共に、連結アーム50とアクチュエータ70とが干渉しないように、連結アーム50の前後位置を適宜設定してもよい。これにより、本実施の形態と比べて、ヒンジアーム30の体格(特に前後方向の寸法)を小さく設定することができる。したがって、ヒンジベース24の設置スペースの小型化等に寄与することができる。
【0061】
また、本実施の形態では、連結アーム50を第2連結ピン62によってヒンジアーム30に回動可能に連結しているが、第2連結ピン62をヒンジアーム30に対して相対移動可能に連結してもよい。例えば、この変形例について、第2連結ピン62を第3連結ピン64の後側に配置した場合として、図6(A)及び(B)を用いて説明する。なお、図6(A)及び(B)では、本実施の形態と同様に構成されている部品については、同一の符号を付している。
【0062】
すなわち、この図に示されるように、この変形例では、ヒンジアーム30の前端部30Bに前後方向を長手方向とする略直線状の長孔36が貫通形成されている。そして、第2連結ピン62が長孔36にスライド可能に連結されている。そして、フード10の閉位置では、第2連結ピン62が長孔36の後端部(一端部)に配置されている。
【0063】
そして、アクチュエータ70のガス発生装置が作動すると、本実施の形態と同様に、固定アーム40の後端部がピストンロッド76によってヒンジアーム30に対して上側へ相対的に持上げられる。これにより、固定アーム40の前端部もヒンジアーム30に対して相対的に上側へ持上げられる。このときには、連結アーム50の前端部が、第3連結ピン64の軸回りに回動しつつ、固定アーム40の前端部と共に上側へ変位する。また、第2連結ピン62が前側(図6(A)の矢印E方向側)へスライドしながら、連結アーム50が第2連結ピン62の軸回りにヒンジアーム30に対して相対回動する。これにより、この変形例においても、アクチュエータ70によってフード10が持上げられるときには、フード10の前端部の沈み込みが抑制されるため、フード10を迅速に持上げることができる。
【0064】
また、上記変形例では、固定アーム40のヒンジアーム30に対する上側への相対移動に伴って、第2連結ピン62(すなわち、連結アーム50の後端部)が長孔36に沿って前側へスライドする。このため、アクチュエータ70によって固定アーム40がヒンジアーム30に対して上側へ持上げられるときに、固定アーム40のヒンジアーム30に対する相対位置に対応して連結アーム50を揺動させることができる。これにより、フード10が回動するときの第3連結ピン64の回動軌跡を回動軌跡L1に近づけるように、フード10を持上位置に持上げることができる。
【0065】
なお、上記変形例では、長孔36が前後方向に直線状に延びているが、固定アーム40のヒンジアーム30に対する相対位置に対応させるために、例えば長孔36を側面視で下側へ若干凸となるように湾曲させてもよい。
【0066】
また、上記変形例では、第2連結ピン62が第3連結ピン64の後側に配置されているが、本実施の形態と同様に、第2連結ピン62を第3連結ピン64の前側に配置させてもよい。この場合では、フード10の閉位置において第2連結ピン62が長孔36の前端部に配置される。
【0067】
また、上記変形例において、長孔36の前端部(他端部)に上側へ開放された切欠部を形成して、フード10が持上位置の持上げられたときに、第2連結ピン62が当該切欠部と係合するように構成してもよい。これにより、フード10が持上位置の持上げられたときの第2連結ピン62の前後方向に移動を切欠部によって制限することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 フード
20 車両用ポップアップフード装置
24 フードヒンジ
26 ヒンジベース
30 ヒンジアーム
36 長孔
40 固定アーム
50 連結アーム
60 第1連結ピン(第1連結部)
62 第2連結ピン(第2連結部)
64 第3連結ピン(第3連結部)
70 アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6