特許 6248905 インクジェット記録装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6248905

(24)【登録日】2017年12月1日

(45)【発行日】2017年12月20日

(54)【発明の名称】インクジェット記録装置

(51)【国際特許分類】

   B41J 2/01 20060101AFI20171211BHJP

   B41J 2/17 20060101ALI20171211BHJP

   B41J 2/165 20060101ALI20171211BHJP

   B41J 11/00 20060101ALI20171211BHJP

   B41J 11/02 20060101ALI20171211BHJP

【ＦＩ】

   B41J2/01 305

   B41J2/01 301

   B41J2/01 307

   B41J2/17 103

   B41J2/165

   B41J11/00 Z

   B41J11/02

【請求項の数】6

【全頁数】13

(21)【出願番号】特願2014-236478(P2014-236478)

(22)【出願日】2014年11月21日

(65)【公開番号】特開2016-97581(P2016-97581A)

(43)【公開日】2016年5月30日

【審査請求日】2016年11月28日

(73)【特許権者】

【識別番号】000006150

【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100168583

【弁理士】

【氏名又は名称】前井 宏之

(72)【発明者】

【氏名】吉永 真治

(72)【発明者】

【氏名】渡邉 剛史

(72)【発明者】

【氏名】玉井 宏篤

(72)【発明者】

【氏名】常見 智史

(72)【発明者】

【氏名】竹中 秀典

(72)【発明者】

【氏名】保母 純平

(72)【発明者】

【氏名】曽田 智久

【審査官】 牧島 元

(56)【参考文献】

【文献】 特開２００６−３１５２２６（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開平０６−３２０７３３（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００６−０４３８８９（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００８−０７３９０９（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００３−２４２６８８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００５−１６９９９０（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１２−１５３０４８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００８−２１３２５５（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１３−０２８０４３（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１４−０２４２５７（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００７−１３０７６１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１４−００５１２０（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｂ４１Ｊ ２／０１−２／２１５

Ｂ４１Ｊ １１／００

Ｂ４１Ｊ １１／０２

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

被記録媒体上にインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに対向する位置に前記被記録媒体を搬送する搬送ベルトを有する搬送部と、
前記記録ヘッドに対して前記被記録媒体の搬送方向下流側において、前記搬送部における前記被記録媒体の載置面との間に前記被記録媒体が通過する狭隙空間を形成する空間形成部と、
前記搬送ベルトを介して前記記録ヘッドと対向するように配置され、前記狭隙空間に負圧を印加する負圧印加部と
を備え、
前記狭隙空間における前記載置面と直交する方向の距離は、前記狭隙空間の周囲の空間から前記狭隙空間に流入する空気流の速度が、前記狭隙空間に流入した後に前記狭隙空間に流入する前よりも大きくなるように設定されている、インクジェット記録装置。

【請求項2】

前記空間形成部は、前記狭隙空間における前記載置面に直交する方向の距離が予め設定された閾値距離以下となるように前記狭隙空間を形成する、請求項１に記載のインクジェット記録装置。

【請求項3】

前記空間形成部は、前記被記録媒体の載置面と平行な平面を有する板状部材を備え、
前記平面は、前記被記録媒体の載置面と対向する、請求項１又は請求項２に記載のインクジェット記録装置。

【請求項4】

前記板状部材は、少なくとも前記平面が導電体である、請求項３に記載のインクジェット記録装置。

【請求項5】

前記記録ヘッドを支持するヘッドベースを更に備え、
前記板状部材は、前記ヘッドベースに固定され、
前記ヘッドベースには、前記板状部材に対して前記被記録媒体の搬送方向上流側、及び、前記被記録媒体の搬送方向下流側に、前記狭隙空間に空気を流入させる孔が形成されている、請求項３又は請求項４に記載のインクジェット記録装置。

【請求項6】

前記板状部材には、前記板状部材と前記載置面との間の距離が、前記被記録媒体の搬送方向における前記板状部材の上流側端及び下流側端に近づく程大きくなるようにテーパが形成されている、請求項３から請求項５のいずれか１項に記載のインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、インクジェット記録装置に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、被記録媒体上にインクを吐出するインクジェット記録装置において、記録ヘッドのノズル詰まりの発生を抑制するために、紙粉を除去する技術が知られている。

【0003】

例えば、上記記録ヘッドに対して被記録媒体の搬送方向上流側に紙粉収集部材を配置するインクジェット記録装置が開示されている（特許文献１参照）。上記紙粉収集部材は、垂直壁と下流側壁とを備えている。上記垂直壁は、垂直上向きに立ち上がっている。上記下流側壁は、上記垂直壁の上端から被記録媒体の搬送方向下流側に向けて延びる。

【0004】

特許文献１には、被記録媒体の搬送に伴って発生した紙粉は、上記記録ヘッドに到達する前に上記紙粉収集部材によって収集されるため、上記記録ヘッドに付着する紙粉の量を減少することができると記載されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特開２００８−２１３２５５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

しかしながら、紙粉は、上記記録ヘッドに対して被記録媒体の搬送方向下流側でも発生する恐れがある。例えば、上記記録ヘッドに対して被記録媒体の搬送方向下流側に配置されたガイドと被記録媒体とが衝突することに起因して、紙粉が発生する。これに対し、特許文献１に記載のインクジェット記録装置では、上記記録ヘッドに対して被記録媒体の搬送方向上流側にのみ上記紙粉収集部材が配置されている。このため、上記記録ヘッドに対して被記録媒体の搬送方向下流側で発生した紙粉が除去されることはない。その結果、上記記録ヘッドに対して被記録媒体の搬送方向下流側で発生した紙粉が上記記録ヘッドに到達して、上記記録ヘッドに付着する恐れがある。

【0007】

本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、記録ヘッドに対して被記録媒体の搬送方向下流側で発生した紙粉を除去することができるインクジェット記録装置を提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドと、搬送部と、空間形成部と、負圧印加部とを備える。前記記録ヘッドは、被記録媒体上にインクを吐出する。前記搬送部は、前記記録ヘッドに対向する位置に前記被記録媒体を搬送する。前記空間形成部は、前記記録ヘッドに対して前記被記録媒体の搬送方向下流側において、前記搬送部における前記被記録媒体の載置面との間に前記被記録媒体が通過する狭隙空間を形成する。前記負圧印加部は、前記狭隙空間に負圧を印加する。前記狭隙空間における前記載置面と直交する方向の距離は、前記狭隙空間の周囲の空間から前記狭隙空間に流入する空気流の速度が、前記狭隙空間に流入した後に前記狭隙空間に流入する前よりも大きくなるように設定されている。

【発明の効果】

【0009】

本発明のインクジェット記録装置によれば、記録ヘッドに対して被記録媒体の搬送方向下流側で発生した紙粉を効果的に除去することができる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す図である。

【図2】図１に示す画像形成部の構成を示す図である。

【図3】図２に示す搬送ベルト、空気流通室、及び、ガイド部材の構成を示す切断斜視図である。

【図4】図２に示す板状部材近傍の構成を示す図である。

【図5】図３に示すガイド部材の構成を示す平面図である。

【図6】図５に示すガイド部材に形成された溝及び貫通孔の構成を示す平面図及び断面図である。（ａ）は、溝及び貫通孔の構成を示す平面図である。（ｂ）は、図６（ａ）に示す溝及び貫通孔のＡ−Ａ断面図である。

【図7】図１に示す画像形成部の構成の他の例を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下、本発明の実施形態について、図面（図１〜図７）を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。

【0012】

まず、図１を参照して、本実施形態に係るインクジェット記録装置１について説明する。図１は、本実施形態に係るインクジェット記録装置１の構成を示す図である。インクジェット記録装置１は、装置筐体１００、装置筐体１００の内部の下方に配置された給紙部２、給紙部２の上方に配置された画像形成部３、画像形成部３の一方側（図１では右側）に配置された第１用紙搬送部４、画像形成部３の他方側（図１では左側）に配置された第２用紙搬送部５、及び、画像形成部３の上方に配置された用紙排出部６を備える。

【0013】

給紙部２は、給紙カセット２１、給紙ローラー２２、及び、第１ガイド板２３を備える。給紙カセット２１は、装置筐体１００に着脱自在に取り付けられる。給紙カセット２１は、複数枚の記録用紙を収容する。以下、「記録用紙」は、便宜上、単に「用紙Ｐ」と記載する。給紙ローラー（ピックアップローラー）２２は、給紙カセット２１の一方側端（図１では、右側端）の上方に配置される。給紙ローラー２２は、給紙カセット２１内に収容された用紙Ｐを最上部から一枚ずつ取り出す。第１ガイド板２３は、給紙ローラー２２と第１用紙搬送部４との間に配置されて、給紙ローラー２２が取り出した用紙Ｐを第１用紙搬送部４へ案内する。なお、用紙Ｐは、「被記録媒体」の一例に相当する。

【0014】

第１用紙搬送部４は、第２ガイド板４１を備える。第２ガイド板４１は、略Ｃ字形の第１用紙搬送路Ｌ１を構成する。第１用紙搬送部４は、第１用紙搬送路Ｌ１の入口側に設けられた第１搬送ローラー対４２、第１用紙搬送路Ｌ１の途中に設けられた第２搬送ローラー対４３、及び、第１用紙搬送路Ｌ１の出口側に設けられたレジストローラー対４４を更に備える。

【0015】

第１搬送ローラー対４２及び第２搬送ローラー対４３は、第１用紙搬送路Ｌ１に沿って用紙Ｐを送る送りローラー対である。第１搬送ローラー対４２は、第１ガイド板２３によって案内された用紙Ｐを挟んで第１用紙搬送路Ｌ１内に送出する。第２搬送ローラー対４３は、第１搬送ローラー対４２が送出した用紙Ｐを挟んでレジストローラー対４４に向けて送出する。

【0016】

レジストローラー対４４は、第２搬送ローラー対４３によって送出された用紙Ｐの斜行補正を行う。また、レジストローラー対４４は、用紙Ｐへの画像形成のタイミングと用紙Ｐの搬送タイミングとを同期させるために、用紙Ｐを一時的に停止させた後、用紙Ｐを画像形成タイミングに合わせて画像形成部３に送出する。

【0017】

画像形成部３は、搬送ベルト３２及び記録ヘッド３４を備える。搬送ベルト３２は駆動されて、レジストローラー対４４から送出されてきた用紙Ｐを所定方向（図１では左向き）に搬送する。図１では、搬送ベルト３２は反時計周りに駆動される。その結果、用紙Ｐは、図１では左向きに搬送される。なお、搬送ベルト３２は、「無端ベルト」の一例に相当する。以下、搬送ベルト３２によって用紙Ｐが搬送される方向を搬送方向Ｄと記載する場合がある。記録ヘッド３４は、記録ヘッド３４に対向する位置に搬送ベルト３２によって搬送されている用紙Ｐにインクを吐出し、用紙Ｐに画像を形成する。記録ヘッド３４によって画像が形成された用紙Ｐは、搬送ベルト３２によって第２用紙搬送部５へ搬送される。

【0018】

第２用紙搬送部５は、第３ガイド板５１を備える。第３ガイド板５１は、略Ｃ字形の第２用紙搬送路Ｌ２を構成する。第２用紙搬送部５は、第２用紙搬送路Ｌ２の途中に設けられた第３搬送ローラー対５２を更に備える。

【0019】

第３搬送ローラー対５２は、第２用紙搬送路Ｌ２に沿って用紙Ｐを送る送りローラー対である。第３搬送ローラー対５２は、搬送ベルト３２によって第２用紙搬送部５へ搬送された用紙Ｐを挟んで用紙排出部６へ向けて送出する。

【0020】

用紙排出部６は、排出ローラー対６１、及び、排出トレイ６２を備える。また、排出ローラー対６１は、排出口１１の近傍に配置されている。排出口１１は、装置筐体１００の上部に形成されている。

【0021】

排出ローラー対６１は、第２用紙搬送路Ｌ２から送出された用紙Ｐを、排出口１１を介して装置筐体１００の外部に排出する。排出トレイ６２は、装置筐体１００の上面に形成される。排出口１１から排出された用紙Ｐは、排出トレイ６２に載置される。

【0022】

次に、図２を参照して、画像形成部３について説明する。図２は、図１に示す画像形成部３の構成を示す図である。

【0023】

図２に示すように、画像形成部３は、記録ヘッド３４に加えて、搬送部３１、負圧印加部３３、板状部材３５、及び、ヘッドベース３７を備える。搬送部３１は、搬送ベルト３２を備える。

【0024】

搬送部３１は、記録ヘッド３４に対向して配置される。搬送部３１は、搬送ベルト３２に加えて、ベルト速度検知ローラー３１１、吸着ローラー３１２、駆動ローラー３１３、テンションローラー３１４、及び、一対のガイドローラー３１５を備える。

【0025】

ベルト速度検知ローラー３１１、駆動ローラー３１３、テンションローラー３１４、及び、一対のガイドローラー３１５は、搬送ベルト３２を張架する。

【0026】

ベルト速度検知ローラー３１１は、負圧印加部３３に対して搬送方向Ｄの上流側（図２では右側）に配置され、搬送ベルト３２との間の摩擦力によって回転する。ベルト速度検知ローラー３１１は、パルス板（図示せず）を含み、上記パルス板は、ベルト速度検知ローラー３１１と一体になって回転する。上記パルス板の回転速度を測定することによって、搬送ベルト３２の回転速度が検知される。

【0027】

吸着ローラー３１２は、従動ローラーである。吸着ローラー３１２は、搬送ベルト３２を介して、負圧印加部３３が備えるガイド部材３３２に対向する。吸着ローラー３１２は、レジストローラー対４４から送出された用紙Ｐを搬送ベルト３２上へ誘導する。用紙Ｐにおける搬送方向Ｄと直交する方向の中心が搬送ベルト３２における搬送方向Ｄと直交する方向の中心と一致するように、用紙Ｐが搬送ベルト３２に導かれることが好ましい。以下、用紙Ｐにおける搬送方向Ｄと直交する方向を用紙Ｐの幅方向と記載する場合がある。また、搬送ベルト３２における搬送方向Ｄと直交する方向を搬送ベルト３２の幅方向と記載する場合がある。

【0028】

駆動ローラー３１３は、負圧印加部３３に対して搬送方向Ｄの下流側（図２では左側）に配置される。好ましくは、駆動ローラー３１３は、ベルト速度検知ローラー３１１と共に、記録ヘッド３４と対向する位置の搬送ベルト３２の平面性を維持するように配置される。

【0029】

駆動ローラー３１３は、モーター（図示せず）によって回転駆動され、図２の反時計回りの方向に搬送ベルト３２を回転させる。

【0030】

テンションローラー３１４は、搬送ベルト３２が撓まないように、搬送ベルト３２に張力を与える。

【0031】

一対のガイドローラー３１５は、負圧印加部３３よりも下方に配置され、負圧印加部３３の下方に空間を形成する。このように配置することによって、負圧印加部３３の下方における搬送ベルト３２と負圧印加部３３との接触を防止することができる。

【0032】

負圧印加部３３は、搬送ベルト３２を介して記録ヘッド３４と対向するように搬送ベルト３２の裏面側（図２では下側）に配置される。負圧印加部３３は、搬送ベルト３２を介して用紙Ｐに負圧を印加することによって、用紙Ｐを搬送ベルト３２に吸着させる。負圧印加部３３は、ガイド部材３３２に加え、空気流通室３３１、負圧発生部３３６、及び、ダクト３３７を備える。ガイド部材３３２、空気流通室３３１、負圧発生部３３６、及びダクト３３７は、この順に上側から下側に配置されている。

【0033】

ガイド部材３３２は、空気流通室３３１の上面開口を覆い、搬送ベルト３２を介して用紙Ｐを支持する。ガイド部材３３２は、「搬送板」の一例に相当する。また、本実施形態において、ガイド部材３３２は、金属材料からなる。具体的には、ガイド部材３３２の材料として、アルミダイキャスト、プレス加工板等を使用できる。あるいは、ガイド部材３３２の材料として、搬送ベルト３２との摺動性に優れた樹脂を選択することも可能である。

【0034】

本実施形態では、便宜上、負圧印加部３３がガイド部材３３２を備える形態を例に説明しているが、搬送部３１がガイド部材３３２を備える形態であってもよい。

【0035】

空気流通室３３１は、上面が開口した有底筒状の箱形部材によって形成されている。空気流通室３３１を構成する側壁の上面は、ガイド部材３３２に固定されている。負圧発生部３３６は、空気流通室３３１の下方に配置される。負圧発生部３３６が駆動することによって、空気流通室３３１内に負圧が発生する。その結果、搬送ベルト３２に向けて用紙Ｐが吸引される。搬送ベルト３２、及び、ガイド部材３３２を介して吸引された空気は、ダクト３３７から外部へ排出される。

【0036】

負圧発生部３３６は、空気流通室３３１内に負圧を発生するものであって、例えば、ファンである。ただし、負圧発生部３３６は、ファンに限定されるものではなく、例えば、真空ポンプであってもよい。

【0037】

記録ヘッド３４は、４種類の記録ヘッド３４ａ、３４ｂ、３４ｃ、及び、３４ｄを含む。４種類の記録ヘッド３４ａ、３４ｂ、３４ｃ、及び、３４ｄは、搬送方向Ｄの上流側から下流側に向けて並設される。４種類の記録ヘッド３４ａ、３４ｂ、３４ｃ、及び、３４ｄは、略同一の構成を有するため、記録ヘッド３４と総称することもある。記録ヘッド３４は、それぞれ、搬送ベルト３２の幅方向（図２では、紙面に直交する方向）に配列された複数のノズル（図示せず）を有する。各記録ヘッド３４は、各記録ヘッド３４に対向する位置に搬送された用紙Ｐに各色のインクを吐出し、用紙Ｐに文字、図形のような画像を形成する。本実施形態において、記録ヘッド３４は、ライン型である。つまり、インクジェット記録装置１は、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置である。

【0038】

板状部材３５は、記録ヘッド３４に対して搬送方向Ｄの下流側であって、搬送ベルト３２の上方に配置される。板状部材３５は、搬送ベルト３２の上面と対向する対向面を含む。対向面は、搬送ベルト３２の上面と平行な面である。板状部材３５は、「空間形成部」の一部に相当する。板状部材３５が、搬送ベルト３２の上方に配置されることによって、板状部材３５と搬送ベルト３２の上面との間に狭隙空間３５ａが形成される。

【0039】

記録ヘッド３４及び板状部材３５は、ヘッドベース３７に固定されている。ヘッドベース３７は、「空間形成部」の一部に相当する。

【0040】

次に、図３を参照して、搬送ベルト３２、空気流通室３３１、及び、ガイド部材３３２の構成について説明する。図３は、図２に示す搬送ベルト３２、空気流通室３３１、及び、ガイド部材３３２の構成を示す切断斜視図である。

【0041】

図３に示すように、搬送ベルト３２には、多数の吸引孔３２１が略等間隔に形成されている。詳しくは、搬送方向Ｄに配置された多数の吸引孔３２１から成る列が搬送ベルト３２の幅方向に複数本形成されている。これらの複数本の列は、吸引孔３２１が千鳥状に配置されるように配列されている。本実施形態において、吸引孔３２１の直径は、２ｍｍであり、隣接する吸引孔３２１の間隔は、８ｍｍである。第１用紙搬送部４から搬送ベルト３２上に搬送された用紙Ｐは、多数の吸引孔３２１の一部を覆う。

【0042】

ガイド部材３３２の上面（搬送ベルト３２側の面）には、複数の溝３３４が形成されている。詳しくは、搬送方向Ｄに沿って配置された複数の溝３３４から成る列が、ガイド部材３３２の幅方向（搬送ベルト３２の幅方向と平行な方向）に複数本形成されている。各溝３３４の形状は、搬送方向Ｄに延びる長円状である。各溝３３４の中には、ガイド部材３３２をガイド部材３３２の厚さ方向に貫通する貫通孔３３５が形成されている。また、搬送ベルト３２における複数本の吸引孔３２１の列は、それぞれ、複数本の溝３３４の列に対応して配置される。複数の溝３３４の各々は、少なくとも２個の吸引孔３２１と対向する。搬送ベルト３２の移動に伴って、複数の溝３３４のそれぞれに対向する吸引孔３２１が１つずつ入れ替わってゆく。

【0043】

空気流通室３３１は、ガイド部材３３２の貫通孔３３５及び溝３３４を介して、搬送ベルト３２の吸引孔３２１に連通する。

【0044】

次に、図４を参照して、板状部材３５近傍の構成について説明する。図４は、図２に示す板状部材３５近傍の構成を示す図である。

【0045】

図４に示すように、板状部材３５は、搬送ベルト３２の上面との間の距離Ｈが所定距離となるように配置される。距離Ｈは、狭隙空間３５ａの垂直方向の長さ（距離Ｈ）であり、所定の閾値距離ＨＳ（本実施形態では、３ｍｍ）以下に設定される。閾値距離ＨＳは、狭隙空間３５ａの周囲の空間から狭隙空間３５ａに流入する空気流の速度が、狭隙空間３５ａに流入した後に狭隙空間３５ａに流入する前よりも大きくなるように設定される。なお、閾値距離ＨＳは、狭隙空間３５ａに流入する空気流の速度（風速）が６．０ｍ／秒以上になるように設定されることが好ましい。本実施形態において、距離Ｈは、２ｍｍである。また、板状部材３５は、少なくともその下面（対向面）が導電体で構成される。導電体としては、ステンレスのような金属が使用される。なお、回転している搬送ベルト３２のうち、ガイド部材３３２によって支持される部分の上面は、「被記録媒体の載置面」の一例に相当する。

【0046】

ヘッドベース３７には、板状部材３５に対して搬送方向Ｄの下流側（図４では左側）、及び、搬送方向Ｄの上流側（図４では右側）に、それぞれ、狭隙空間３５ａに空気を流入させる孔３７１、３７２が形成されている。孔３７１、３７２は、それぞれ、用紙Ｐの幅方向（図４では、紙面に垂直な方向）に延びた長孔である。

【0047】

負圧発生部３３６が空気流通室３３１に負圧を発生させると、ヘッドベース３７に形成された孔３７１、３７２から狭隙空間３５ａに矢印ＦＤ１及びＦＤ２に沿って空気が流入する。狭隙空間３５ａに流入した空気は、搬送ベルト３２に形成された複数の吸引孔３２１、及び、ガイド部材３３２に形成された複数の貫通孔３３５を介して、空気流通室３３１に流入する。本実施形態では、空気流通室３３１は、負圧発生部３３６によって、大気圧との差分気圧が約０．００５気圧（≒約５００Ｐａ）の負圧状態になっている。

【0048】

上述のように、狭隙空間３５ａの垂直方向の長さ（距離Ｈ）は、閾値距離ＨＳ以下に設定されている。このため、矢印ＦＤ１及び矢印ＦＤ２に沿って流入する空気流の速度（風速）は、狭隙空間３５ａにおいて増大する。また、狭隙空間３５ａに流入した空気は、空気流通室３３１内に流入する。したがって、用紙Ｐが第３ガイド板５１に衝突することに起因して発生する紙粉ＰＤを除去して、空気流通室３３１内に回収することができる。つまり、記録ヘッド３４に対して搬送方向Ｄの下流側で発生した紙粉ＰＤが記録ヘッド３４へ到達することを抑制することができる。

【0049】

また、上述のように、板状部材３５は少なくともその下面が導電体であるため、帯電した紙粉ＰＤの板状部材３５への付着を抑制することができる。更に、板状部材３５を構成する導電体は、接地されていることが好ましい。これにより、帯電した紙粉ＰＤの板状部材３５への付着をより抑制することができる。

【0050】

更に、上述のように、板状部材３５がヘッドベース３７に固定されているため、板状部材３５を容易に配置することができる。また、ヘッドベース３７には、狭隙空間３５ａに空気を流入させる孔３７１、３７２が形成されているため、狭隙空間３５ａに空気をスムーズに流れ込ませることができる。

【0051】

本実施形態では、板状部材３５がヘッドベース３７に固定されている場合について説明しているが、板状部材３５が図１に示す装置筐体１００に固定されている形態でもよい。例えば、装置筐体１００から延びた固定部材が、板状部材３５の幅方向（図４では紙面に垂直な方向）の両端を固定する形態でもよい。この場合には、狭隙空間３５ａに搬送方向Ｄの下流側及び上流側から流入する空気の流れを阻害する部材が存在しないため、狭隙空間３５ａにおける風速を更に増大することができる。したがって、紙粉ＰＤを更に効果的に除去することができる。

【0052】

また、本実施形態では、ヘッドベース３７に形成された孔が、用紙Ｐの幅方向に延びた孔３７１、３７２である場合について説明しているが、ヘッドベース３７に形成された孔が、その他の形状である形態でもよい。例えば、ヘッドベース３７に、用紙Ｐの幅方向に沿って略円柱状の孔が複数個形成されてもよい。

【0053】

また、図４に示すように、搬送方向Ｄにおける板状部材３５の上流側の端部及び下流側の端部は、それぞれ、テーパ面３５１を構成する。図４で右側のテーパ面３５１は、狭隙空間３５ａの垂直方向の長さ（距離Ｈ）が搬送方向Ｄの上流側程大きくなるように形成されている。また、図４で左側のテーパ面３５１は、狭隙空間３５ａの垂直方向の長さ（距離Ｈ）が搬送方向Ｄの下流側程大きくなるように形成されている。換言すれば、板状部材３５には、狭隙空間３５ａの垂直方向の長さ（距離Ｈ）が、搬送方向Ｄにおける板状部材３５の上流側端及び下流側端に近づくほど大きくなるようにテーパ面３５１が形成されている。

【0054】

上述のように、搬送方向Ｄにおける板状部材３５の上流側の端部及び下流側の端部に各テーパ面３５１が形成されている。このため、板状部材３５に沿って流れる空気の圧損を少なくすることができる。したがって、狭隙空間３５ａにおける風速を増大することができるため、紙粉ＰＤを更に効果的に除去することができる。

【0055】

次に、図５を参照して、溝３３４、貫通孔３３５、及び、板状部材３５の位置関係について説明する。図５は、図３に示すガイド部材３３２の構成を示す平面図である。

【0056】

図５に示すように、各溝３３４における搬送方向Ｄの略中央位置に貫通孔３３５が形成されている。貫通孔３３５の断面は円形状である。

【0057】

図５に示す破線は、ガイド部材３３２に投影した板状部材３５の位置を示している。図５に示すように、各溝３３４の列ごとに、それぞれ２本の溝３３４が板状部材３５に対向する位置に形成されている。２本の溝３３４のうち、搬送方向Ｄの上流側に形成された溝３３４は、板状部材３５の投影像の範囲内における搬送方向Ｄの上流側端の位置よりも更に搬送方向Ｄの上流側に延びている。また、この溝３３４に連通する貫通孔３３５は、板状部材３５の投影像の範囲内に形成されている。同様に、２本の溝３３４のうち、搬送方向Ｄの下流側に形成された溝３３４は、板状部材３５の投影像の範囲内における搬送方向Ｄの下流側端の位置よりも更に搬送方向Ｄの下流側に延びている。また、この溝３３４に連通する貫通孔３３５も、板状部材３５の投影像の範囲内に形成されている。つまり、板状部材３５に対向する位置に、溝３３４及び貫通孔３３５が形成されている。このため、空気流通室３３１は、貫通孔３３５、溝３３４、及び、吸引孔３２１を介して、狭隙空間３５ａと連通し、狭隙空間３５ａにおける空気の風速がより増大する。この結果、紙粉を更に効果的に除去することができる。

【0058】

次に、図６を参照して、ガイド部材３３２に形成された溝３３４及び貫通孔３３５について説明する。図６は、図５に示すガイド部材３３２に形成された溝３３４及び貫通孔３３５の構成を示す平面図及び断面図である。図６（ａ）は、溝３３４及び貫通孔３３５の構成を示す平面図であり、図６（ｂ）は、図６（ａ）に示す溝３３４及び貫通孔３３５のＡ−Ａ断面図である。

【0059】

図６（ａ）及び図６（ｂ）に示すように、溝３３４は、貫通孔３３５と連通して形成されているため、空気流通室３３１から貫通孔３３５を介して印加される負圧が、溝３３４が形成されている領域にも作用する。また、貫通孔３３５の上端及び下端には、それぞれ、テーパ３３５ａ及びテーパ３３５ｂが形成されている。

【0060】

上述のように、貫通孔３３５の上端及び下端に、それぞれ、テーパ３３５ａ及びテーパ３３５ｂが形成されているため、貫通孔３３５を流れる空気の圧損を減少させることができる。したがって、図４に示す矢印ＦＤ１及び矢印ＦＤ２に沿って、空気が更に流れ易くなるため、紙粉を更に効果的に除去することができる。

【0061】

本実施形態では、貫通孔３３５の上端及び下端に、それぞれ、テーパ３３５ａ及びテーパ３３５ｂが形成されている場合について説明するが、貫通孔３３５の上端又は下端にテーパが形成されている形態でもよい。

【0062】

以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解し易くするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。

【0063】

例えば、本実施形態では、画像形成部３において搬送ベルト３２が用紙Ｐを搬送する場合について説明したが、画像形成部３においてその他の方法で用紙Ｐを搬送する形態でもよい。例えば、複数の搬送ローラーによって用紙Ｐを搬送する形態でもよい。この場合には、互いに隣接する搬送ローラーの間から負圧を印加することが好ましい。

【0064】

また、本実施形態では、狭隙空間３５ａが板状部材３５によって形成される場合について説明したが、狭隙空間３５ａをその他の方法で形成する形態でもよい。例えば、記録ヘッド３４に対して搬送方向Ｄの上流側において、ヘッドベース３７が搬送ベルト３２側に突出して形成され、狭隙空間３５ａを形成する形態でもよい。この場合には、構造を簡略化することができる。

【0065】

また、本実施形態では、狭隙空間３５ａを形成する部材として、板状部材３５を例に説明したが、これに限定されない。例えば、板状部材３５に替えて、２つのローラーに張架されたベルトによって狭隙空間３５ａを形成する形態でもよい。具体的には、搬送ベルト３２の上面と略平行な位置に配置された駆動ローラー及び従動ローラーと、上記駆動ローラー及び上記従動ローラーに張架された無端ベルトとを備え、上記無端ベルトの下面と、搬送ベルト３２の上面との間で狭隙空間３５ａを形成する。この場合には、上記無端ベルトの下面に紙粉が付着したときに、紙粉が付着していない面が下側に位置するように上記無端ベルトを回転駆動させることができるため、サービスマン等が上記無端ベルトに付着した紙粉を除去する頻度を減少することができる。

【0066】

また、本実施形態では、ガイド部材３３２と空気流通室３３１とが別部材である場合について説明したが、ガイド部材３３２と空気流通室３３１とが一体に形成されている形態でもよい。この場合には、空気流通室３３１からの負圧のリークを防止することができる。詳しくは、ガイド部材３３２と空気流通室３３１との間の隙間からの空気流通室３３１への空気の流入を防止することができる。

【0067】

また、本実施形態では、記録ヘッド３４に対して搬送方向Ｄの下流側にのみ板状部材３５が配置される場合について説明したが、図７に示すように、インクジェット記録装置１は、記録ヘッド３４に対して搬送方向Ｄの上流側（図７では右側）に配置された板状部材３５を更に備えてもよい。これにより、記録ヘッド３４に対して搬送方向Ｄの下流側から記録ヘッド３４へ到達する紙粉の量を抑制できることに加え、記録ヘッド３４に対して搬送方向Ｄの上流側から記録ヘッド３４へ到達する紙粉の量も抑制できる。この場合、図７に示すように、２つの負圧発生部３３６が使用されてもよい。詳しくは、一方の負圧発生部３３６は、記録ヘッド３４に対して搬送方向Ｄの上流側に設けられた板状部材３５に、より近い位置に配置され、他方の負圧発生部３３６は、記録ヘッド３４に対して搬送方向Ｄの下流側に設けられた板状部材３５に、より近い位置に配置される。

【0068】

また、本実施形態では、負圧発生部３３６が１つ又は２つ使用される場合を例に説明したが、負圧発生部３３６の数は、１つ又は２つに限定されない。例えば、負圧発生部３３６は、３つ以上使用されてもよい。

【産業上の利用可能性】

【0069】

本発明は、インクジェット記録装置に利用可能である。

【符号の説明】

【0070】

１ インクジェット記録装置
３ 画像形成部
３１ 搬送部
３３ 負圧印加部
３３２ ガイド部材
３４ 記録ヘッド
３５ 板状部材
３５ａ 狭隙空間

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】