【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の光通信用のレンズは、光学素子もしくは光ファイバーから出射された光束を集光する光通信用のレンズであって、
前記レンズは第1の金型と第2の金型とを用いてプラスチック素材を成形することにより得られ、筒状の脚部と、前記脚部の端部に形成されたレンズ部とを有し、
前記脚部は前記レンズ部の前記脚部側のレンズ端よりも光軸方向に突出しており、
前記レンズの光軸方向全長をLとしたときに、前記第1の金型と前記第2の金型のパーティングラインを、光軸方向における前記レンズ部側のレンズ端からL/10〜L/2の位置に設けたことを特徴とする。
【0009】
レンズが脚部を有する場合、パーティングラインを、光軸方向におけるレンズ部側のレンズの端に設けると、脚部を成形する金型から成形品を離型する際の抜き出し長さと抜き抵抗が増大し、脚部の破損等を招く恐れがある。本発明によれば、前記レンズの光軸方向全長をLとしたときに、前記第1の金型と前記第2の金型のパーティングラインを、光軸方向における前記レンズ部側の前記レンズ端からL/10以上離すことで、前記第1の金型から成形品を離型する際の抜き出し長さと抜き抵抗を減少させ、前記脚部の破損等を招く恐れを回避できる。更に、前記パーティングラインを、光軸方向における前記レンズ部側の前記レンズ端からL/10以上離すことで、ゲートの切断時や研磨処理時に、プラスチック片や研磨粉がレンズ光学面に付着することが抑制される。ただし、「光軸方向における前記レンズ部側
のレンズ端」とは、前記レンズ部における前記脚部より光軸方向に最も離れた部位をいう。
【0010】
一方、前記第1の金型と前記第2の金型のパーティングラインを、光軸方向における前記レンズ部側の前記レンズ端からL/2を超えて離すと、前記第2の金型の抜き抵抗が増大し、前記第1の金型より離型が生じてしまい、工程が複雑化する恐れがある。そこで、前記パーティングラインを、光軸方向における前記レンズ部側の前記レンズ端からL/2以下とすることで、最初に前記第2の金型から成形品を離型することを促し、所定の成形手順を確保することが可能になる。一般的には、レンズ部を離型するより、脚部を離型する方が抜き抵抗が大きいので、前記パーティングラインを前記レンズ端からL/2以下とすれば、最初に前記第2の金型から離型が行われる。尚、第1の金型が可動金型であり、第2の金型が固定金型であると好ましい。
【0011】
請求項2に記載の光通信用のレンズは、請求項1に記載の発明において、前記パーティングラインから前記レンズ部の前記レンズ端側の光学面端面までのいずれかにおいて、前記パーティングラインにおける外径よりも小さな外径を有することを特徴とする。
【0012】
一般的な射出成形時には、肉厚部ほど素材冷却時の収縮が大きいとされる。本発明においては、前記パーティングラインから前記レンズ部の前記レンズ端側の光学面端面までのいずれかにおいて、前記パーティングラインにおける外径よりも小さな外径を有するようにしたので、前記レンズ部周囲の肉厚を抑えることができ、成形後の前記レンズ部の収縮を抑制でき、高精度なレンズ部を成形できる。又、前記レンズ全体の体積が小さくなって、素材が減少するので低コストになる。特に、レンズの形状が光軸を中心にした円周上で略同一の形状となっていることが好ましい。
【0013】
請求項3に記載の光通信用のレンズは、請求項2に記載の発明において、前記レンズ部側の前記レンズ端と前記パーティングラインとの間における前記レンズの外周には、テーパー面が設けられていることを特徴とする。
【0014】
前記レンズを光通信モジュールに組み込む場合、その外周に、光ファイバーを取り付けるための円筒スリーブ状のホルダを嵌合させることが多い。本発明のように、前記レンズ端部に前記テーパー面を形成することで、ホルダへの挿入時のガイドが形成されて、スムーズな挿入が可能になる。尚、前記テーパー面は光軸周りに軸対称に形成されていると、成形後における前記レンズ部の収縮が均等になって、より高い光学性能が確保される。加えて、前記テーパー面を設けることで前記第2の金型からの離型性が向上する。
【0015】
請求項4に記載の光通信用のレンズは、請求項2に記載の発明において、前記レンズ部側の前記レンズ端と前記パーティングラインとの間における前記レンズの外周には、曲面が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、前記レンズ端部に前記曲面を形成することで、ホルダへの挿入時のガイドが形成されて、スムーズな挿入が可能になる。尚、前記曲面は光軸周りに軸対称に形成されていると、成形後における前記レンズ部の収縮が均等になって、より高い光学性能が確保される。又、前記曲面を形成することで前記第2の金型からの離型性が向上する。
【0017】
請求項5に記載の光通信用のレンズは、請求項2に記載の発明において、前記レンズ部側の前記レンズ端と前記パーティングラインとの間における前記レンズの外周には、段差が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、前記レンズ端部に前記段差を形成することで、低コスト化を図れる。
尚、前記段差は光軸周りに軸対称に形成されていると、成形後における前記レンズ部の収縮が均等になって、より高い光学性能が確保される。
【0019】
請求項6に記載の光通信用のレンズは、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記レンズ部側の前記レンズ端と前記パーティングラインとの間における前記レンズの外周は、粗し面であることを特徴とする。
【0020】
発光素子又は光ファイバーから前記レンズ部に向かう光束が、前記レンズ部の周囲に入射すると、迷光となってノイズの原因となる恐れがある。本発明によれば、前記レンズ端と前記パーティングラインとの間における前記レンズの外周を粗し面としたので、入射光を拡散することで、迷光の発生を抑制できる。特に、全周を粗し面とした場合には、レンズ部を通らない光は全て拡散されるため、迷光の発生を抑制できるだけでなく、レンズの形状による光の反射などを考慮する必要がなくなるためレンズの設計が容易となる。加えて、適度な粗し面を設けることで、離型性向上の効果がある。
【0021】
請求項7に記載の光通信用のレンズは、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記第1の金型と前記第2の金型のうち少なくとも一方に、樹脂を流入させるためのゲート部が設けられ、前記ゲート部は前記脚部の外周面に対応する位置に連通しており、前記脚部の内周面に対応する位置とは対向しない様に設けられていることを特徴とする。
【0022】
前記ゲート部は前記脚部の外周面に対応する位置に連通しており、前記脚部の内周面に対応する位置と対向しないように設けられていると、前記ゲート部から流入した樹脂が、前記脚部の内周面を転写する金型の面にあたり抵抗を受けるということがなく、スムーズに充填されるのでより適切な成形を行うことができる。
【0023】
請求項8に記載の光通信モジュールは、請求項1〜7のいずれかに記載の光通信用のレンズを、光学素子支持した基板にを組み付けてなることを特徴とする。
【0024】
請求項9に記載の成形金型は、光学素子もしくは光ファイバーから出射された光束を集光する光通信用のレンズを成形する金型構造であって、可動金型と固定金型とを含み、
前記レンズは、前記可動金型と前記固定金型とを用いてプラスチック素材を成形することにより得られ、筒状の脚部と、前記脚部の端部に形成されたレンズ部とを有し、
前記脚部は前記レンズ部の前記脚部側のレンズ端よりも光軸方向に突出しており、
前記可動金型により前記脚部と前記レンズ部の一方の光学面が成形され、前記固定金型により前記レンズ部の他方の光学面が成形され、
前記レンズの光軸方向全長をLとしたときに、前記固定金型における前記可動金型との合わせ面は、前記固定金型の転写面における前記合わせ面から最も遠い位置より光軸方向にL/10〜L/2の位置に設けたことを特徴とする。
【0025】
前記可動金型と前記固定金型により成形されるレンズが脚部を有する場合、そのパーティングラインを、光軸方向におけるレンズ部側のレンズの端に設けると、脚部を成形する前記可動金型から成形品を離型する際の抜き出し長さと抜き抵抗が増大し、脚部の破損等を招く恐れがある。本発明によれば、前記レンズの光軸方向全長をLとしたときに、前記固定金型における前記可動金型との合わせ面は、前記固定金型の転写面における前記合わせ面から最も遠い位置よりL/10以上離すことで、前記可動金型から成形品を離型する際の抜き出し長さと抜き抵抗を減少させ、前記脚部の破損等を招く恐れを回避できる。更に、前記固定金型における前記可動金型との合わせ面を、前記固定金型の転写面における前記合わせ面から最も遠い位置よりL/10以上離すことで、ゲートの位置が前記固定金型の光学面よりも遠くなるため、ゲートの切断時や研磨処理時に、プラスチック片や研磨粉がレンズ光学面に付着することが抑制される。又、パーティングラインで生じたバリが折損したときに、レンズ光学面に付着する恐れが少ない。
【0026】
一方、前記固定金型における前記可動金型との合わせ面を、前記固定金型の転写面における前記合わせ面から最も遠い位置よりL/2を超えて離すと、前記固定金型の抜き抵抗が増大し、離型の際に前記固定金型に製品が残ってしまう恐れがある。そこで、前記固定金型における前記可動金型との合わせ面を、前記固定金型の転写面における前記合わせ面から最も遠い位置よりL/2以内とすることで、最初に前記固定金型から成形品を離型することを促し、その後前記可動金型から製品を離型させるというように、所定の成形手順を確保できる。一般的には、レンズ部を離型するより、脚部を離型する方が抜き抵抗が大きいので、前記固定金型における前記可動金型との合わせ面を、前記固定金型の転写面における前記合わせ面から最も遠い位置よりL/2以内とすれば、最初に前記固定金型から離型が行われる。
【0027】
請求項10に記載の成形金型は、請求項9に記載の発明において、前記固定金型の転写面の光軸直交方向寸法は、前記可動金型との合わせ面より奥側で小さくなっていることを特徴とする。
【0028】
一般的な射出成形時には、肉厚部ほど素材冷却時の収縮が大きいとされる。本発明においては、前記固定金型の転写面の光軸直交方向寸法を、前記可動金型との合わせ面より奥側で小さくしたので、成形したレンズにおけるフランジ部の肉厚を抑えることができ、これにより成形後の前記レンズ部の収縮を抑制でき、高精度なレンズ部を成形できる。又、前記レンズ全体の体積が小さくなって、素材が減少するので低コストになる。
【0029】
請求項11に記載の成形金型は、請求項10に記載の発明において、前記固定金型の転写面において、前記可動金型との合わせ面から奥側にテーパー面転写面を設けたことを特徴とする。
【0030】
前記レンズを光通信モジュールに組み込む場合、その外周に、光ファイバーを取り付けるための円筒スリーブ状のホルダを嵌合させることが多い。本発明のように、前記固定金型の転写面において、前記可動金型との合わせ面から奥側にテーパー面転写面を設けることで、前記レンズに先細のテーパー面が転写されるため、これがホルダへの挿入時のガイドが形成されて、スムーズな挿入が可能になる。尚、前記テーパー面転写面は軸対称に形成されていると、成形後における前記レンズ部の収縮が均等になって、より高い光学性能が確保される。加えて、前記テーパー面転写面を設けることで前記固定金型からの離型性が向上する。
【0031】
請求項12に記載の成形金型は、請求項10に記載の発明において、前記固定金型の転写面において、前記可動金型との合わせ面から奥側に曲面転写面を設けたことを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、前記固定金型の転写面において、前記可動金型との合わせ面から奥側に曲面転写面を設けることで、前記レンズに先細の曲面が転写されるため、これがホルダへの挿入時のガイドとなるので、スムーズな挿入が可能になる。尚、前記曲面転写面は軸対称に形成されていると、成形後における前記レンズ部の収縮が均等になって、より高い光学性能が確保される。又、前記曲面転写面を形成することで前記固定金型からの離型性が向上する。
【0033】
請求項13に記載の成形金型は、請求項10に記載の発明において、前記固定金型の転写面において、前記可動金型との合わせ面から奥側に段差転写面を設けたことを特徴とする。
【0034】
本発明によれば、前記固定金型の転写面において、前記可動金型との合わせ面から奥側に段差転写面を設けることで、前記レンズに先が縮径した段差が転写されるため、低コスト化を図れる。尚、前記段差転写面は軸対称に形成されていると、成形後における前記レンズ部の収縮が均等になって、より高い光学性能が確保される。
【0035】
請求項14に記載の成形金型は、請求項9〜13のいずれかに記載の発明において、前記固定金型の転写面において、前記他方の光学面を転写する転写面の周囲に粗し面を形成したことを特徴とする。
【0036】
発光素子又は光ファイバーから前記レンズ部に向かう光束が、前記レンズ部の周囲に入射すると、迷光となってノイズの原因となる恐れがある。本発明によれば、前記固定金型の転写面において、前記他方の光学面を転写する転写面の周囲に粗し面を設けたので、それにより転写されるフランジ部外周が粗し面となり、入射光を拡散することで、迷光の発生を抑制できる。特に、全周を粗し面とした場合には、レンズ部を通らない光は全て拡散されるため、迷光の発生を抑制できるだけでなく、レンズの形状による光の反射などを考慮する必要がなくなるためレンズの設計が容易となる。加えて、適度な粗し面を設けることで、離型性向上の効果がある。
【0037】
請求項15に記載の成形金型は、請求項9〜14のいずれかに記載の発明において、前記可動金型に、樹脂を流入させるためのゲート部が設けられており、前記ゲート部は前記脚部の外周面に対応する位置に連通しており、前記脚部の内周面に対応する位置とは対向しない様に設けられていることを特徴とする。
【0038】
前記ゲート部は前記脚部の外周面に対応する位置に連通しており、前記脚部の内周面に対応する位置と対向しないように設けられていると、前記ゲート部から流入した樹脂が、前記脚部の内周面を転写する金型の面にあたり抵抗を受けるということがなく、スムーズに充填されるのでより適切な成形を行うことができる。
【0039】
請求項16に記載の成形金型は、請求項9〜15のいずれかに記載の発明において、前記可動金型は、前記脚部を成形する主金型と、前記主金型に対して相対的に可動可能であって、前記レンズ部の一方の光学面を成形する副金型とを有することを特徴とする。
【0040】
前記固定金型から離型を行った後、前記主金型から前記副金型を突き出すことで、成形された前記レンズを前記主金型から容易に離型できる。