特許第6248964号(P6248964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248964
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】粒子状物質検出装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/18 20060101AFI20171211BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20171211BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   F01N3/18 C
   F01N3/00 F
   G01N27/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-28846(P2015-28846)
(22)【出願日】2015年2月17日
(65)【公開番号】特開2016-20683(P2016-20683A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-123664(P2014-123664)
(32)【優先日】2014年6月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 豪
(72)【発明者】
【氏名】田村 昌之
(72)【発明者】
【氏名】今川 弘勝
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−012960(JP,A)
【文献】 特表2009−529691(JP,A)
【文献】 特開平05−163934(JP,A)
【文献】 特開平03−238046(JP,A)
【文献】 特開2011−080926(JP,A)
【文献】 特開2012−037370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
G01N 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(5)から排出される排ガスに含まれる粒子状物質(6)の一部を堆積させる被堆積部(22)と、該被堆積部(22)上に互いに離れて配置された一対の対向電極(23)とを備えており、上記被堆積部(22)に上記粒子状物質(6)が堆積することによる電気的特性の変化に応じて電気信号の出力を変化させる粒子量検出手段(2)と、
排ガス又は排ガスを流通する排気管(53)の温度を検出する温度検出手段(3)と、
上記粒子量検出手段(2)によって出力された上記電気信号を基に、上記被堆積部(22)における上記粒子状物質(6)の堆積量を判定すると共に、上記温度検出手段(3)によって検出された排ガス又は排気管(53)の温度に関する情報を受信するコントロールユニット(4)と、
上記被堆積部(22)を加熱するための加熱手段(24)とを備えており、
上記コントロールユニット(4)は、上記温度検出手段(3)によって検出される排ガス温度が100℃以下、又は上記温度検出手段(3)によって検出される排気管(53)温度が60℃以下となる内燃機関(5)の冷間始動時において、該加熱手段(24)によって、上記被堆積部(22)を300℃〜800℃に加熱する制御を行い、
上記コントロールユニット(4)は、上記内燃機関(5)が始動してから、上記加熱手段(24)による上記被堆積部(22)の加熱を開始するよう構成されていることを特徴とする粒子状物質検出装置(1)。
【請求項2】
上記粒子量検出手段(2)は、上記一対の対向電極(23)間における電気抵抗の変化に応じて上記電気信号の出力を変化させることを特徴とする請求項1に記載の粒子状物質検出装置(1)。
【請求項3】
上記加熱手段(24)による上記被堆積部(22)の加熱は、内燃機関(5)の始動時から所定の運転時間を経過するまで継続することを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置(1)。
【請求項4】
上記被堆積部(22)は、セラミックス材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置(1)。
【請求項5】
上記被堆積部(22)における表面粗度(Rz)が、10点平均粗さにおいて、0.01μm≦Rz≦4.0μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から発生した排ガスに含まれる粒子状物質の量を検出する粒子状物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気管には、排ガスに含まれる粒子状物質(Particulate Matter:PM)を捕集する排ガス浄化装置が設けられている。この排ガス浄化装置は、排ガスに含まれる粒子状物質の量を検出するPMセンサを有する粒子状物質検出装置を備えており、この粒子状物質検出装置によって得られた情報を基に、排ガス浄化装置の故障検知が行われている。
粒子状物質検出装置に用いられるPMセンサは、粒子状物質の検出を終えた後、次回の検出を行うまでの間に、PMセンサを加熱することにより、PMセンサに付着した粒子状物質を燃焼除去するよう構成されている。
【0003】
ところで、内燃機関の冷間始動時には、排ガス中の水分が凝集した凝集水がPMセンサに付着することが考えられる。この凝集水の付着のタイミングが、上述のPMセンサの加熱のタイミングに重なると、PMセンサの被水割れを招く要因となることが懸念される。そこで、特許文献1の粒子状物質検出装置においては、内燃機関の冷間始動時の所定期間は、PMセンサにおける粒子状物質の燃焼除去のための加熱を行わないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−12960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示された粒子状物質検出装置には以下の課題がある。
特許文献1に示された粒子状物質検出装置において、PMセンサを加熱しない状態で、PMセンサが被水するとPMセンサの表面に凝集水が付着する。この凝集水には、燃料やエンジンオイル、排気管の金属成分等が含有されている場合がある。そのため、PMセンサに付着した凝集水が乾燥した際に、凝集水の含有物がPMセンサの表面に残留する。これら残留物によって、PMセンサの誤作動や誤検出が生じる場合がある。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、粒子量検出手段における被水割れ及び凝集水の付着を抑制することができる粒子状物質検出装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、内燃機関から排出される排ガスに含まれる粒子状物質の一部を堆積させる被堆積部と、該被堆積部上に互いに離れて配置された一対の対向電極とを備えており、上記被堆積部に上記粒子状物質が堆積することによる電気的特性の変化に応じて電気信号の出力を変化させる粒子量検出手段と、
排ガス又は排ガスを流通する排気管の温度を検出する温度検出手段と、
上記粒子量検出手段によって出力された上記電気信号を基に、上記被堆積部における上記粒子状物質の堆積量を判定すると共に、上記温度検出手段によって検出された排ガス又は排気管の温度に関する情報を受信するコントロールユニットと、
上記被堆積部を加熱するための加熱手段とを備えており、
上記コントロールユニットは、上記温度検出手段によって検出される排ガス温度が100℃以下、又は上記温度検出手段によって検出される排気管温度が60℃以下となる内燃機関の冷間始動時において、該加熱手段によって、上記被堆積部を300℃〜800℃に加熱する制御を行い、
上記コントロールユニットは、上記内燃機関が始動してから、上記加熱手段による上記被堆積部の加熱を開始するよう構成されていることを特徴とする粒子状物質検出装置にある。
【発明の効果】
【0008】
上記粒子状物質検出装置においては、内燃機関の冷間始動時に、上記加熱手段によって、上記被堆積部を300℃〜800℃に加熱する制御を行う。そのため、粒子量検出手段における被水割れ及び凝集水の付着を抑制することができる。すなわち、上記被堆積部を300℃〜800℃の間に加熱すると、上記被堆積部と凝集水との間において、ライデンフロスト現象を生じさせることができる。
【0009】
ライデンフロスト現象とは、所定の温度以上に加熱された固体と、液体とが接触した部位において、液体が気化、蒸発して蒸気の膜を形成し、この蒸気の膜によって、固体と液体とが接触しなくなるというものである。上記粒子状物質検出装置においては、上記被堆積部を300℃〜800℃に加熱することにより、凝集水との間において、ライデンフロスト現象が発生し、上記被堆積部と凝集水とが接触しなくなる。また、水蒸気の膜の上に浮いた状態の凝集水は、上記被堆積部との間における摩擦係数が小さくなるため、上記被堆積部の表面を容易に移動することができる。
【0010】
そのため、加熱された上記被堆積部が被水したとしても、ライデンフロスト現象によって、上記被堆積部から凝集水が容易に滑り落ちる。したがって、上記被堆積部における凝集水の付着を防止すると共に、凝集水が付着することによって上記被堆積部が急冷されることを抑制できる。これにより、上記被堆積部に、凝集水に含まれた種々の成分が残留物として付着すること、及び上記被堆積部における被水割れの発生を抑制することができる。
【0011】
以上のごとく、上記粒子状物質検出装置によれば、粒子量検出手段における被水割れ及び残留物の付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1における、粒子状物質検出装置を備えた内燃機関を示す説明図。
図2】実施例1における、粒子量検出手段を示す説明図。
図3】実施例1における、粒子状物質が付着した粒子量検出手段を示す説明図(図2における、部分拡大図)。
図4】実施例1における、加熱手段による加熱温度と、加熱時間を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記粒子状物質検出装置において、上記粒子量検出手段は、上記一対の対向電極間における電気抵抗の変化に応じて上記電気信号の出力を変化させることが好ましい。上記一対の対向電極間における電気抵抗値の変化を利用する電気抵抗式の上記粒子量検出手段は、他の形式の粒子量検出手段と比べて上記粒子状物質の検出精度が高く、ばらつきが少ない。したがって、上記粒子状物質の堆積量の検出精度をより向上することができる。
【0014】
また、上記加熱手段による上記被堆積部の加熱は、内燃機関の始動時から所定の運転時間を経過するまで継続することが好ましい。この場合には、排ガスにおいて凝集水が発生しなくなる所定の運転時間まで加熱を継続することにより、上記被堆積部における被水割れ及び凝集水の付着を確実に防止することができる。
【0015】
また、上記加熱手段における上記被堆積部の加熱温度は、300℃〜800℃に設定してある。上記加熱手段による加熱温度が300℃未満の場合、上記被堆積部と凝集水との間においてライデンフロスト現象が生じず、上記被堆積部に凝集水が付着するおそれがある。また、上記加熱手段による加熱温度が800℃を超える場合、ライデンフロスト現象が生じたとしても被水割れが生じるおそれがある。
また、上記加熱手段における上記被堆積部の加熱温度は、400℃〜700℃とすることが好ましい。この場合には、凝集水の付着の抑制及び被水割れの発生の抑制効果をより向上することができる。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
上記粒子状物質検出装置にかかる実施例について図1図4を参照して説明する。
図1に示すごとく、粒子状物質検出装置1は、被堆積部22に粒子状物質6が堆積することによる電気的特性の変化に応じて電気信号の出力を変化させる粒子量検出手段2と、排ガスの温度を検出する温度検出手段3と、粒子状物質6の堆積量を判定するコントロールユニット4と、被堆積部22を加熱する加熱手段24とを備えている。
【0017】
図2に示すごとく、粒子量検出手段2は、内燃機関5から排出される排ガスに含まれる粒子状物質6の一部を堆積させる被堆積部22と、被堆積部22上に互いに離れて配置された一対の対向電極23とを備えている。コントロールユニット4は、粒子量検出手段2によって出力された電気信号を基に、被堆積部22における粒子状物質6の堆積量を判定すると共に、温度検出手段3によって検出された排ガスの温度に関する情報を受信する。また、コントロールユニット4は、温度検出手段3によって検出される排ガス温度が100℃以下となる内燃機関5の冷間始動時において、加熱手段24によって、被堆積部22を300℃〜800℃に加熱する制御を行う。
【0018】
以下、さらに詳細に説明する。
図1に示すごとく、粒子状物質検出装置1は、自動車に搭載された内燃機関5から、排気管53を通じて排出される排ガスに含まれる粒子状物質6を検出するためのものである。本例の内燃機関5は、過給器51を搭載したディーゼルエンジンである。また、内燃機関5に接続された排気管53には、酸化触媒521(DOC)及びパティキュレートフィルタ522(DPF)を備えた浄化システム52が設けられている。
【0019】
粒子状物質検出装置1は、排ガスに含まれる粒子状物質6の量を検出する粒子量検出手段2と、排気管53を流通する排ガスの温度を検出する温度検出手段3と、粒子量検出手段2から出力された電気信号及び温度検出手段3から出力された温度情報を受信するコントロールユニット4とを備えている。
【0020】
温度検出手段3は、排気管53における浄化システム52の上流側に設けてある。温度検出手段3は、感温素子を備えた温度センサからなり、排気管53を流通する排ガスの温度を検出可能に構成されている。尚、本例においては、温度検出手段3によって、排ガスの温度を検出したが、排気管53の温度を検出してもよい。
【0021】
図2及び図3に示すごとく、粒子量検出手段2は、排気管53における浄化システム52の下流側に設けてある。粒子量検出手段2は、粒子状物質6の量を検出するPMセンサであり、粒子状物質6の一部を捕集する捕集部21と、捕集部21を加熱する加熱手段24とを備えている。
【0022】
捕集部21は、排ガス中の粒子状物質6を堆積させる被堆積部22と、被堆積部22上に互いに離れて配置された一対の対向電極23とを備えている。被堆積部22は、略長方形の板状をなしており、電気絶縁性を備えたセラミックス材料によって形成されている。セラミックス材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、ベリリア、ムライト、窒化珪素等を用いることができる。また、被堆積部22における表面粗度は、10点平均粗さにおいて、2.0μmとした。本例において、10点平均粗さの基準長さは、200μmとした。また、基準長さは、JIS B 0633に準ずるものであってもよい。
【0023】
一対の対向電極23は、導電性材料からなり、被堆積部22の表面に形成されている。一対の対向電極23は、被堆積部22における長手方向と平行に形成された電極基部231と、電極基部231から長手方向と直交して延設された複数の櫛歯部232とをそれぞれ有している。各対向電極23は、電極基部231が互いに向かい合うように配置されると共に、一方の対向電極23における櫛歯部232の間に、他方の対向電極23における櫛歯部232が入り込むように配置されている。
【0024】
図3に示すごとく、被堆積部22に粒子状物質6が堆積し、一対の対向電極23の間が粒子状物質6によって導通されることで、一対の対向電極23間の電気抵抗値が低減する。一対の対向電極23の間には電圧が印加されており、一対の対向電極23間の電気抵抗値の変化に伴い、対向電極23間を流れる電気信号としての電流量が変化する。これにより、粒子量検出手段2からコントロールユニット4へと出力される電流値が変化する。つまり、粒子量検出手段2から出力される電流値は、被堆積部22における粒子状物質6の堆積量に応じて変化するものであり、粒子状物質6の堆積量に関する情報を有するものである。コントロールユニット4は、シャント抵抗を備えており、出力された電流値とシャント抵抗の積で算出される電圧をECU(エンジンコントロールユニット)へと出力する。
【0025】
図2に示すごとく、加熱手段24は、電源から供給される電流を流通することで発熱する熱線241と、熱線241が配設された絶縁性材料からなる加熱基部242とを有している。加熱手段24は、被堆積部22における一対の対向電極23が配置された側と反対側に、被堆積部22と積層して配置されている。加熱手段24は、内燃機関5の冷間始動時に被堆積部22を加熱する予備加熱と、捕集部21に捕集された粒子状物質6を除去するための高温加熱とを行うように構成されている。
【0026】
予備加熱の温度は、300℃〜800℃に設定することができる。本例においては、予備加熱の温度を500℃とした。予備加熱は、温度検出手段3によって検出された排ガスの温度が100℃以下の状態において行われる。
【0027】
また、高温加熱の温度は、800℃に設定してある。高温加熱は、粒子状物質6の堆積量を検出した後や、被堆積部22に粒子状物質6が十分堆積せずに内燃機関5の運転が停止した場合等に、新たに粒子状物質6を堆積させる前のタイミングにおいて行われる。
【0028】
本例のコントロールユニット4は、加熱手段24による加熱の制御と、電気信号の出力に基づいて被堆積部22における粒子状物質6の堆積量及び、捕集時間中に排出された粒子状物質6の総排出量の算出を行う。
【0029】
図4に示すごとく、本例において、コントロールユニット4による加熱手段24の制御は、温度検出手段3によって検出された温度情報を利用して行われる。図4は、横軸を内燃機関の運転時間として、縦軸を加熱手段24における加熱温度としたグラフである。内燃機関5の始動時(ts)、温度検出手段3によって内燃機関5から排出される排ガスの温度を検出する。このとき、排ガスの温度が100℃以下であった場合、コントロールユニット4は、冷間始動と判断し、加熱手段24を予備加熱状態とする。そして、内燃機関5の始動から所定の運転時間t1を超えるまでの間、加熱手段24による被堆積部22の予備加熱を継続する。本例においては、所定の運転時間t1を600秒とした。所定の運転時間t1が600秒を超えた際に、加熱手段24の予備加熱を終了する。本例においては、予備加熱が終了した後、加熱手段24を高温加熱状態として、被堆積部22上に堆積した粒子状物質6を燃焼除去する。運転時間t2において、被堆積部22の粒子状物質6の燃焼除去が完了すると、加熱手段24は加熱を終了し、捕集部21への粒子状物質6の補修を開始する。
【0030】
また、コントロールユニット4は、電気信号の出力と被堆積部22における粒子状物質6の堆積量との関係を示した堆積量関係データと、被堆積部22における粒子状物質6の堆積量と排ガスに含まれる粒子状物質6の総排出量との関係を示した排出量関係データとを記憶している。堆積量関係データ及び排出量関係データは、内燃機関5において確認試験を実施し、予め求めたものである。コントロールユニット4は、電気信号の出力を基に堆積量関係データを用いて粒子状物質6の堆積量を算出する。そして、算出された堆積量を基に排出量関係データを用いて粒子状物質6の総排出量を算出することができる。これにより、算出された粒子状物質6の総排出量が、コントロールユニット4に出力される。
【0031】
次に本例の作用効果について説明する。
粒子状物質検出装置1においては、内燃機関5の冷間始動時に、加熱手段24によって、被堆積部22を300℃〜800℃に加熱する制御を行う。そのため、粒子量検出手段2における被水割れ及び凝集水の付着を抑制することができる。すなわち、被堆積部22を300℃〜800℃の間に加熱すると、被堆積部22と凝集水との間において、ライデンフロスト現象を生じさせることができる。
【0032】
そのため、被堆積部22が被水したとしても、ライデンフロスト現象によって被堆積部22と凝集水とは接触することなく、被堆積部22から凝集水が滑り落ちる。したがって、被堆積部22における凝集水の付着を防止すると共に、凝集水が付着することによって被堆積部22が急冷されることを抑制できる。これにより、被堆積部22に、凝集水に含まれた種々の成分が残留物として付着すること、及び被堆積部22における被水割れを抑制することができる。
【0033】
また、粒子量検出手段2は、一対の対向電極23間における電気抵抗の変化に応じて電気信号の出力を変化させる。一対の対向電極23間における電気抵抗値の変化を利用する電気抵抗式の粒子量検出手段2は、他の形式の粒子量検出手段2と比べて粒子状物質6の検出精度が高く、ばらつきが少ない。したがって、粒子状物質6の堆積量の検出精度をより向上することができる。
【0034】
また、加熱手段24による被堆積部22の加熱は、内燃機関5の始動時tsから所定の運転時間t1を経過するまで継続する。そのため、排ガスにおいて凝集水が発生しなくなる所定の運転時間t1まで加熱を継続し、被堆積部22における凝集水の付着を確実に防止することができる。
【0035】
また、本例においては、加熱手段24による被堆積部22の予備加熱のタイミングを、運転時間によって制御したが、排ガス又は排気管の温度によって制御してもよい。このとき、内燃機関5の始動時から、温度検出手段3によって検出される排ガス温度が100℃を超えるまで、又は温度検出手段3によって検出される排気管53温度が60℃を超えるまで継続する。この場合には、排ガスにおいて凝集水が発生しなくなる温度まで排ガス又は排気管53の温度が上昇するまで加熱を継続するため、被堆積部22における被水割れ及び凝集水の付着を確実に防止することができる。
【0036】
また、被堆積部22は、セラミックス材料からなる。そのため、被堆積部22における耐熱性を向上すると共に、被堆積部22の加熱時における凝集水の付着をより防止することができる。
【0037】
また、被堆積部22の表面粗度Rzは、10点平均粗さにおいて、0.01μm≦Rz≦4.0μmである。そのため、被堆積部22における凝集水の付着をより確実に防止することができる。尚、表面粗度Rzが0.01μm未満の場合には、凝集水の付着を防止するためには有利であるが、加工により所望の表面粗度を得られない場合がある。また、表面粗度Rzが4.0μmを超える場合、凝集水と被堆積部22との接触角が大きくなり、濡れ性が増し、ライデンフロスト現象が発生しなくなる場合がある。
【0038】
以上のごとく、本例の粒子状物質検出装置1によれば、粒子量検出手段2における被水割れ及び残留物の付着を抑制することができる。
【0039】
(確認試験1)
本確認試験においては、加熱手段24による加熱温度を変更した際の残留物及び被水割れの有無の確認を行った。
残留物の確認試験は、実施例1に示した粒子量検出手段2において、加熱手段24の加熱温度を100℃〜900℃の間において100℃刻みで設定し、各温度に加熱された被堆積部22に凝集水を滴下する。尚、凝集水は、Mn(No3)2、MgSO4等の不純物を約6wt%含むものである。凝集水の滴下量は、1μl及び2μlの2パターンとした。
【0040】
被堆積部22に凝集水を滴下した後、被堆積部22表面における成分分析を実施し、残留物の有無を確認した。表1における残留物に関する判定における「◎」は、1μl及び2μlのいずれにおいても残留物が検出されなかったことを示す。また、「○」は、1μlでは残留物が検出されず、2μlでは残留物が検出されたことを示す。また、「×」は、1μl及び2μlのいずれにおいても残留物が検出されたことを示す。
【0041】
被水割れの確認試験は、残留物の確認試験と同様に、実施例1に示した粒子量検出手段2において、加熱手段24の加熱温度を100℃〜900℃の間において100℃刻みで設定し、各温度に加熱された被堆積部22に凝集水を滴下する。凝集水の滴下量は、1μl及び1.5μlの2パターンとした。
【0042】
試験試料は、各温度に10個ずつ用意し、被堆積部22に凝集水を滴下した後、被水割れの有無を確認した。表1の被水割れに関する判定における「◎」は、1μl及び1.5μlのいずれにおいても被水割れが確認されなかったことを示す。また、「○」は、1μlでは被水割れが確認されず、1.5μlでは1つ以上の試験試料において被水割れが確認されたことを示す。また、「×」は、1μl及び2μlのいずれにおいても1つ以上の試験試料において被水割れが確認されたことを示す。
【0043】
また、表1の総合判定について、「◎」は、残留物の判定及び被水割れの判定のいずれも「◎」であったことを示す。また、「○」は、残留物の判定及び被水割れの判定のいずれか一方が「◎」で他方が「○」であったことを示す。また、「×」は、残留物の判定及び被水割れの判定のいずれか一方が「×」であったことを示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すごとく、残留物の確認試験においては、加熱手段24における加熱温度を300℃〜900℃とした場合には、1μlの凝集水を滴下しても残留物が確認されなかった。また、加熱手段24における加熱温度を400℃〜900℃とした場合には、2μlの凝集水を滴下しても残留物が確認されなかった。つまり、加熱手段24における加熱温度を300℃〜900℃とすることで残留物の付着を抑制できることが確認された。また、加熱手段24における加熱温度を400℃〜900℃とすることで、残留物の付着を抑制する効果が向上し、より多くの凝集水を滴下した場合にも、残留物の付着を抑制できることが確認された。
【0046】
また、残留物の確認試験においては、加熱手段24における加熱温度が100℃〜800℃の範囲では、1μlの凝集水を滴下しても被水割れが確認されなかった。また、加熱手段24における加熱温度が100℃〜700℃の範囲では、1.5μlの凝集水を滴下しても被水割れが確認されなかった。つまり、加熱手段24における加熱温度を100℃〜800℃とすることで被水割れの発生を抑制できることが確認された。また、加熱手段24における加熱温度を100℃〜700℃とすることで、被水割れの発生を抑制する効果が向上し、より多くの凝集水を滴下した場合にも、被水割れの発生を抑制できることが確認された。
【0047】
このように、加熱手段24における加熱温度を300℃〜800℃の範囲内に設定することで、残留物の付着の抑制効果と、及び被水割れの発生の抑制効果を得ることができる。また、加熱手段24における加熱温度を400℃〜700℃の範囲内に設定することで、残留物の付着の抑制効果と、及び被水割れの発生の抑制効果をさらに向上することができる。
【0048】
(確認試験2)
本確認試験においては、被堆積部22における表面粗度を変化させた際の残留物の有無の確認を行った。
残留物の確認試験は、表面粗度Rzを2.0μm、2.5μm、4.0μm、4.5μm、5.0μmとした粒子量検出手段を用いた。各粒子量検出手段は、加熱手段24の加熱温度を250℃〜500℃の間においては50℃刻みで、500℃〜800℃の間においては100℃刻みで設定し、各温度に加熱された被堆積部22に凝集水を滴下する。尚、凝集水は、Mnを約6wt%含むものである。凝集水の滴下量は、0.3μlとした。
【0049】
【表2】
【0050】
被堆積部22に凝集水を滴下した後、被堆積部22の表面における成分分析による残留物の有無の確認と、電極間における短絡の有無の確認を行った。表2は、各温度及び各表面粗度Rzにおける試験結果を示すものである。表2において、「○」は、残留物及び電極間の短絡のいずれも確認されなかったことを示す。また、「×」は、残留物及び電極間の短絡のいずれか一方又は両方が確認されたことを示す。
【0051】
加熱温度が350℃〜800℃の範囲においては、いずれの表面粗度Rzにおいても、残留物及び電極間の短絡は確認されなかった。また、加熱温度が300℃の場合には、表面粗度Rzが4.0μm以下において、残留物及び電極間の短絡は確認されなかった。また、加熱温度が250度の場合には、いずれの表面粗度Rzにおいても残留物及び電極間の短絡の少なくとも一方が生じた。
【0052】
このように、表面粗度Rzを4.0μm以下とすることにより、加熱温度を300℃〜800℃の範囲内において、残留物の付着の抑制効果をより確実に得ることができる。また、表面粗度Rzは、4.0μm以下でより小さいことが望ましいが、生産性の観点から0.01μm以上とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
1 粒子状物質検出装置
2 粒子量検出手段
22 被堆積部
23 対向電極
24 加熱手段
3 温度検出手段
4 コントロールユニット
5 内燃機関
53 排気管
6 粒子状物質
図1
図2
図3
図4