(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のスイッチング素子を備え、前記複数のスイッチング素子をオン/オフすることにより、電源から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータを制御する方法において、
前記複数のスイッチング素子によって構成される複数の相の出力端子には、前記複数の相の出力端子を短絡する短絡スイッチが設けられており、
前記短絡スイッチのオン期間中、前記複数の相を構成する前記複数のスイッチング素子のうち、それぞれの相ごとに少なくとも1つのスイッチング素子をスイッチングさせ、
前記短絡スイッチは、前記複数の相の出力端子を一括して短絡するスイッチである、
ことを特徴とするインバータの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、本実施形態に係るインバータ装置が示されている。このインバータ装置は、直流電源10からモータMGに供給される電力を調整する機能を備えた装置である。また、インバータ装置は、モータMGで生成されて直流電源10に供給される電力を調整する機能を備えていてもよい。
【0016】
モータMGは、例えば3相交流同期型モータであり、直流電源10から供給された電力によって駆動される。モータMGは、U相、V相及びW相の3つのコイルを備えた固定子と、図示しない回転子と、を含む。U相、V相及びW相の3つのコイルの一端は中点で互いに接続され、他端はインバータを構成するスイッチング素子に接続されている。モータMGは、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車又は燃料電池自動車の駆動源として用いられる。
【0017】
直流電源10は直流電圧を供給する電源である。直流電源10として、例えば充放電可能な電源が用いられてもよい。充放電可能な電源として、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等を用いることができる。
【0018】
ここで、直流電源10の電源ラインについて、高圧側のラインを正極側ライン12と称し、低圧側のラインを負極側ライン14と称することとする。直流電源10のプラス端子に接続されているラインが正極側ライン12であり、直流電源10のマイナス端子に接続されているラインが負極側ライン14である。
【0019】
インバータは、複数のスイッチング素子(スイッチング素子Q11〜Q16)を含み、直流電源10から供給された直流電力を3相交流電力に変換してモータMGに供給する。インバータは、正極側ライン12と負極側ライン14との間に互いに並行に配置されたU相アーム、V相アーム及びW相アームを含む。U相アームは、スイッチング素子Q11,Q12の直列接続によって構成され、V相アームは、スイッチング素子Q13,Q14の直列接続によって構成され、W相アームは、スイッチング素子Q15,Q16の直列接続によって構成されている。U相アームにおいて、スイッチング素子Q11が上アームに属するスイッチング素子であり、スイッチング素子Q12が下アームに属するスイッチング素子である。同様に、V相アームにおいて、スイッチング素子Q13が上アームに属するスイッチング素子であり、スイッチング素子Q14が下アームに属するスイッチング素子である。同様に、W相アームにおいて、スイッチング素子Q15が上アームに属するスイッチング素子であり、スイッチング素子Q16が下アームに属するスイッチング素子である。
【0020】
スイッチング素子Q11〜Q16は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)である。各スイッチング素子においては、コレクタとエミッタとの間に、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すダイオード(ダイオードD11〜D16)が配置されている。
【0021】
U相アームのスイッチング素子Q11,Q12の中間点は、モータMGのU相コイルに接続されている。V相アームのスイッチング素子Q13,Q14の中間点は、モータMGのV相コイルに接続されている。W相アームのスイッチング素子Q15,Q16の中間点は、モータMGのW相コイルに接続されている。例えば、スイッチング素子Q11〜Q16のそれぞれに駆動回路が設けられており、スイッチング素子Q11〜Q16は、制御部24からの制御信号に基づいて、対応する駆動回路によってスイッチング制御(オン又はオフ制御)される。これにより、電力が変換される。
【0022】
なお、インバータは、モータMGによって発電された交流電力を直流電力に変換して直流電源10に供給してもよい。
【0023】
短絡スイッチ16は、各相アームの中間点と各相コイルとの間に設けられ、各相アームの出力端子を短絡するスイッチである。短絡スイッチ16は、例えば3端子スイッチであり、U相アーム、V相アーム及びW相アームの出力端子を一括して短絡する機能、及び、その短絡を解消する機能を備えている。具体的には、短絡スイッチ16は、U相アームの中間点とU相コイルとの間、V相アームの中間点とV相コイルとの間、及び、W相アームの中間点とW相コイルとの間、に設けられている。短絡スイッチ16は、U相アームの中間点とU相コイルとを接続するライン18、V相アームの中間点とV相コイルとを接続するライン20、及び、W相アームの中間点とW相コイルとを接続するライン22、を接続又は遮断する機能を備えている。短絡スイッチ16がオンの場合、ライン18,20,22が短絡スイッチ16によって接続される。これにより、U相アームの出力端子とV相アームの出力端子とW相アームの出力端子とが短絡する。短絡スイッチ16がオフの場合、ライン18,20,22の接続が解消され、短絡が解消される。例えば、短絡スイッチ16に駆動回路が設けられており、短絡スイッチ16は、制御部24からの制御信号に基づいて、当該駆動回路によってスイッチング制御(オン又はオフ制御)される。これにより、各相アームの短絡又は遮断が実現される。
【0024】
制御部24は、インバータを構成するスイッチング素子Q11〜Q16のスイッチング動作を制御することにより、モータMGの動作を制御する。制御部24は、例えば、モータMGが目標トルクを出力するように、スイッチング素子Q11〜Q16のスイッチング動作を制御する。本実施形態では、制御部24は、PWM制御に従ってスイッチング素子Q11〜Q16のスイッチング動作を制御する。例えば、制御部24は、モータMGが目標トルクを出力するように、スイッチング素子Q11〜Q16をオン又はオフするためのPWM信号を生成する。そして、制御部24は、スイッチング素子Q11〜Q16のそれぞれに対応する駆動回路に、個々のスイッチング素子用のPWM信号を供給する。また、制御部24は、短絡スイッチ16のスイッチング動作を制御する。
【0025】
本実施形態では、制御部24は、短絡スイッチ16のオン期間中に、個々の相ごとに少なくとも1つのスイッチング素子をスイッチングさせる。すなわち、制御部24は、個々の相ごとに、上アームに属するスイッチング素子及び下アームに属するスイッチング素子の中の少なくとも一方のスイッチング素子をスイッチングさせる。一例として、制御部24は、下アームに属するスイッチング素子Q12,Q14,Q16をオンからオフに切り替え、上アームに属するスイッチング素子Q11,Q13,Q15をオフからオンに切り替える。または、制御部24は、下アームに属するスイッチング素子Q12,Q14,Q16をオフからオンに切り替え、上アームに属するスイッチング素子Q11,Q13,Q15をオンからオフに切り替えてもよい。このスイッチング制御は一例であり、もちろん、別のスイッチング制御が行われてもよい。制御部24は、PWM制御周期毎に、所定期間の間、短絡スイッチ16をオンにし、それ以外の期間においては、短絡スイッチ16をオフにする。
【0026】
制御部24は、例えばプロセッサや電子回路等のハードウェア資源を利用して実現することができ、その実現において必要に応じてメモリ等のデバイスが利用されてもよい。また、制御部24は、例えばコンピュータによって実現されてもよい。つまり、コンピュータが備えるCPUやメモリやハードディスク等のハードウェア資源と、CPU等の動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により、制御部24の機能が実現されてもよい。当該プログラムは、CDやDVD等の記録媒体を経由して、又は、ネットワーク等の通信経路を経由して、図示しない記憶装置に記憶される。別の例として、制御部24は、DSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等によって実現されてもよい。
【0027】
図2には、3端子スイッチとしての短絡スイッチ16が示されている。3端子スイッチとしては公知のスイッチを用いることができる。例えば、短絡スイッチ16は、IGBT等によって構成されているスイッチング素子Q30と、ダイオードD31〜D36と、を含む。ダイオードD31,D32が直列に接続され、その中間点とU相アーム用のライン18とが接続されている。同様に、ダイオードD33,D34が直列に接続され、その中間点とV相アームのライン20とが接続されている。同様に、ダイオードD35,D36が直列に接続され、その中間点とW相アームのライン22とが接続されている。
【0028】
例えば、スイッチング素子Q30に駆動回路が設けられており、スイッチング素子Q30は、制御部24からの制御信号に基づいて、当該駆動回路によってスイッチング制御(オン又はオフ制御)される。スイッチング素子Q30がオンの場合、
図1に示されているライン18,20,22が接続され、これにより、U相アーム、V相アーム及びW相アームの出力端子が短絡する。一方、スイッチング素子Q30がオフの場合、ライン18,20,22の接続が解消され、短絡が解消される。
【0029】
以下、インバータの具体的な制御方法について説明する。
【0030】
図3には、PWM制御に関する信号の一例が示されている。横軸は時間を示している。キャリア信号26は、各相用のPWM信号を生成するためのキャリア波であり、一例としてノコギリ波である。具体的には、キャリア信号26の波形は、時間と共に徐々に下がっていって急上昇することを繰り返す波形である。もちろん、別の例として、波形が時間と共に上がっていき、急降下することを繰り返してもよい。
【0031】
キャリア信号26の波形が急上昇してから次に急上昇するまでの期間を1周期とし、この周期をPWM制御周期と称することとする。つまり、ノコギリ波が急上昇するタイミング(ノコギリ波のエッジタイミング)と、ノコギリ波が次に急上昇するタイミング(次のエッジタイミング)と、の間の期間を1周期(PWM制御周期)とする。
【0032】
U相用デューティ信号28、V相用デューティ信号30、及び、W相用デューティ信号32は、対応する相のPWM信号を生成するための信号であり、対応する相に対する指令電圧に応じた信号である。制御部24は、キャリア信号26、U相用デューティ信号28、V相用デューティ信号30、及び、W相用デューティ信号32に基づいて、U相用PWM信号34、V相用PWM信号36、及び、W相用PWM信号38を生成する。
【0033】
U相用PWM信号34は、U相アームに属するスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング動作を制御するためのPWM信号であり、スイッチング素子Q11,Q12のオン/オフのタイミングを示す信号である。U相用PWM信号34は、キャリア信号26とU相用デューティ信号28との比較によって生成される。キャリア信号26とU相用デューティ信号28とが交差するタイミングで、U相用PWM信号34のハイ(High)とロー(Low)とが切り替わる。制御部24は、U相用PWM信号34をU相アーム用の駆動回路に供給する。当該駆動回路は、U相用PWM信号34に従って、U相アームに属するスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング動作を制御する。U相用PWM信号34がハイ(High)を示す場合、駆動回路は、U相アームにおいて下アームに属するスイッチング素子Q12をオンにし、上アームに属するスイッチング素子Q11をオフにする。一方、U相用PWM信号34がロー(Low)を示す場合、駆動回路は、U相アームにおいて上アームに属するスイッチング素子Q11をオンにし、下アームに属するスイッチング素子Q12をオフにする。
【0034】
V相用PWM信号36は、V相アームに属するスイッチング素子Q13,Q14のスイッチング動作を制御するためのPWM信号であり、スイッチング素子Q13,Q14のオン/オフのタイミングを示す信号である。V相用PWM信号36は、キャリア信号26とV相用デューティ信号30との比較によって生成される。キャリア信号26とV相用デューティ信号30とが交差するタイミングで、V相用PWM信号36のハイ(High)とロー(Low)とが切り替わる。制御部24は、V相用PWM信号36をV相アーム用の駆動回路に供給する。当該駆動回路は、V相用PWM信号36に従って、V相アームに属するスイッチング素子Q13,Q14のスイッチング動作を制御する。V相用PWM信号36がハイ(High)を示す場合、駆動回路は、V相アームにおいて下アームに属するスイッチング素子Q14をオンにし、上アームに属するスイッチング素子Q13をオフにする。一方、V相用PWM信号36がロー(Low)を示す場合、駆動回路は、V相アームにおいて上アームに属するスイッチング素子Q13をオンにし、下アームに属するスイッチング素子Q14をオフにする。
【0035】
W相用PWM信号38は、W相アームに属するスイッチング素子Q15,Q16のスイッチング動作を制御するためのPWM信号であり、スイッチング素子Q15,Q16のオン/オフのタイミングを示す信号である。W相用PWM信号38は、キャリア信号26とW相用デューティ信号32との比較によって生成される。キャリア信号26とW相用デューティ信号32とが交差するタイミングで、W相用PWM信号38のハイ(High)とロー(Low)とが切り替わる。制御部24は、W相用PWM信号38をW相アーム用の駆動回路に供給する。当該駆動回路は、W相用PWM信号38に従って、W相アームに属するスイッチング素子Q15,Q16のスイッチング動作を制御する。W相用PWM信号38がハイ(High)を示す場合、駆動回路は、W相アームにおいて下アームに属するスイッチング素子Q16をオンにし、上アームに属するスイッチング素子Q15をオフにする。一方、W相用PWM信号38がロー(Low)を示す場合、駆動回路は、W相アームにおいて上アームに属するスイッチング素子Q15をオンにし、下アームに属するスイッチング素子Q16をオフにする。
【0036】
以上のように、キャリア信号26としてノコギリ状の波形を有する信号を用いることにより、キャリア信号26において波形が急上昇するタイミング(ノコギリ波のエッジタイミング)にて、各相に対するPWM信号がハイ(High)からロー(Low)に切り替わる。具体的には、ノコギリ波のエッジタイミングにて、U相用PWM信号34、V相用PWM信号36及びW相用PWM信号38が、ハイ(High)からロー(Low)に切り替わり、それらの切り替わるタイミング(各PWM信号のエッジタイミング)が一致することになる。これにより、ノコギリ波のエッジタイミングにて、各スイッチング素子のオン/オフのタイミング(スイッチング動作のタイミング)が一致することになる。具体的には、ノコギリ波のエッジタイミングにて、スイッチング素子Q11,Q13,Q15がオンからオフに切り替わり、スイッチング素子Q12,Q14,Q16がオフからオンに切り替わる。
【0037】
なお、キャリア信号26の波形として、時間と共に上がっていき、急降下することを繰り返す波形が用いられた場合、波形が急降下するタイミング(ノコギリ波のエッジタイミング)にて、各相に対するPWM信号がロー(Low)からハイ(High)に切り替わる。これにより、ノコギリ波のエッジタイミングにて、スイッチング素子Q11,Q13,Q15がオフからオンに切り替わり、スイッチング素子Q12,Q14,Q16がオンからオフに切り替わる。
【0038】
短絡用信号40は、短絡スイッチ16のオン/オフのタイミングを示す信号である。短絡用信号40は、例えば制御部24によって生成される。短絡用信号40の波形は、キャリア信号26の波形が急上昇するタイミング(ノコギリ波のエッジタイミング)を含む前後の期間(以下、「短絡期間」と称する)において、ハイ(High)状態になり、それ以外の期間においてはロー(Low)状態になる。制御部24は、短絡用信号40を短絡スイッチ16の駆動回路に供給する。当該駆動回路は、短絡用信号40に従って、短絡スイッチ16のスイッチング動作を制御する。短絡用信号40がハイ(High)を示す場合、駆動回路は、短絡スイッチ16をオンにする。これにより、短絡期間中、各相アームの出力端子が短絡する。一方、短絡用信号40がロー(Low)を示す場合、駆動回路は、短絡スイッチ16をオフにする。これにより、短絡期間以外の期間中、各相アームの出力端子の短絡が解消される。短絡期間は、一例として数μ秒である。
【0039】
なお、各相に対するPWM信号のエッジタイミング、つまり、各相に対するPWM信号がハイ(High)からロー(Low)に切り替わるタイミング、又は、各相に対するPWM信号がロー(Low)からハイ(High)に切り替わるタイミングは、厳密に一致していなくてもよい。短絡用信号40がハイ(High)になっている短絡期間内に、各相に対するPWM信号のエッジタイミングが含まれていればよい。つまり、各相アームに属するスイッチング素子Q11〜Q16のオン/オフのタイミングは、厳密に一致していなくてもよく、短絡スイッチ16がオン状態になっている短絡期間中に、スイッチング素子Q11〜Q16がスイッチング動作すればよい。
【0040】
本実施形態では、1PWM制御周期中、符号42,44,46で示すタイミングにてスイッチング損失が発生し、短絡スイッチ16がオンになっている短絡期間中においては、スイッチング素子Q11〜Q16にてスイッチング損失は発生しない。それ故、スイッチング損失の発生回数が減少し、スイッチング損失の合計を低減することが可能となる。
図3に示す例では、1PWM制御周期中におけるスイッチング損失の発生回数を3回に抑えて、スイッチング損失の合計を低減することが可能となる。つまり、短絡スイッチ16がオンのときは、スイッチング素子Q11〜Q16の受け持つ電圧が0Vとなるため、又は、短絡スイッチ16に電流が流れることによりスイッチング素子Q11〜Q16に流れる電流が0Aとなるため、スイッチング損失が発生しなくなる。
【0041】
以下、
図4から
図10を参照して、短絡期間中にてスイッチング損失が発生しない理由について説明する。
【0042】
図4には、本実施形態に係るインバータにおけるスイッチング損失のグラフが示されている。
図4中のグラフにおいて、横軸は時間を示しており、縦軸はインバータにて発生するスイッチング損失(単位:per unit)を示している。グラフ48は、シミュレーションによって得られた波形であり、ノコギリ波(キャリア信号26)のエッジタイミングを含む前後の期間において、スイッチング素子Q11〜Q16及び短絡スイッチ16にて発生するスイッチング損失の合計を示すグラフである。つまり、グラフ48は、U相用PWM信号34、V相用PWM信号36及びW相用PWM信号38が、ハイ(High)からロー(Low)に切り替わるタイミングを含む前後の期間において、スイッチング素子Q11〜Q16及び短絡スイッチ16にて発生するスイッチング損失の合計を示している。以下では、ノコギリ波のエッジタイミングを含む前後の期間を期間A〜Eに分け、各期間におけるスイッチング素子Q11〜Q16の動作について説明する。期間A,Eでは、短絡スイッチ16はオフ状態となっており、期間B,C,Dでは、短絡スイッチ16はオン状態になっている。
【0043】
図5には、期間Aにおけるスイッチング素子Q11〜Q16及び短絡スイッチ16の状態が示されている。期間Aでは、U相用PWM信号34、V相用PWM信号36及びW相用PWM信号38が、ハイ(High)を示している。それ故、下アームに属するスイッチング素子Q12,Q14,Q16がオンになっており、上アームに属するスイッチング素子Q11,Q13,Q15はオフになっている。また、期間Aでは、短絡用信号40がロー(Low)を示している。それ故、短絡スイッチ16はオフ状態になっている。
図5中の矢印は、電流経路を示している。期間Aにおいては、電流は、U相用のライン18を経由してモータMGのU相コイルに供給され、U相コイルを経由してV相コイル及びW相コイルに供給される。このとき、電流は、ダイオードD12を経由してU相用のライン18に供給される。そして、電流は、V相コイル及びV相用のライン20を経由してスイッチング素子Q14に供給される。同様に、電流は、W相コイル及びW相用のライン22を経由してスイッチング素子Q16に供給される。この段階では、スイッチング素子Q11〜Q16及び短絡スイッチ16にてスイッチング動作が発生していないため、スイッチング損失は発生しない。
【0044】
図6には、期間Bにおけるスイッチング素子Q11〜Q16及び短絡スイッチ16の状態が示されている。期間Bは、スイッチング素子Q11〜Q16のオン/オフが切り替わる直前の期間である。期間Bでは、U相用PWM信号34、V相用PWM信号36及びW相用PWM信号38が、ハイ(High)を示している。それ故、下アームに属するスイッチング素子Q12,Q14,Q16がオンとなっており、上アームに属するスイッチング素子Q11,Q13,Q15はオフとなっている。また、期間Bでは、短絡用信号40がハイ(High)を示している。それ故、短絡スイッチ16はオンになっている。
図6中の矢印は、電流経路を示している。期間Bにおいては、電流は、U相用のライン18を経由してモータMGのU相コイルに供給され、U相コイルを経由してV相コイル及びW相コイルに供給される。このとき、電流は、ダイオードD12を経由してU相用のライン18に供給される。そして、電流は、V相コイル及びV相用のライン20を経由してスイッチング素子Q14に供給される。同様に、電流は、W相コイル及びW相用のライン22を経由してスイッチング素子Q16に供給される。この段階では、短絡スイッチ16の全端子の電位は0Vであり、短絡スイッチ16の受け持つ電圧(端子間電位差)は0Vとなる。それ故、短絡スイッチ16にてスイッチング損失は発生しない。つまり、ゼロ電圧スイッチング(無損失)が実現される。なお、期間B中、U相アームにおいては電流はダイオードD12を流れるため、スイッチング素子Q12をオフにしてもよい。以下に説明する動作についても同様である。つまり、電流がダイオードを流れる場合、そのダイオードが接続されているスイッチング素子はオフになっていてもよい。もちろん、そのスイッチング素子はオンになっていてもよい。
【0045】
ここで、
図7を参照して、期間Bにおいてゼロ電圧スイッチングが実現される理由につて説明する。
図7には、スイッチング素子Q12,Q14,Q16及び短絡スイッチ16を含む回路の等価回路が示されている。期間Bにおいては、電流はダイオードD12を流れているので、この部分では、導通しているとみなすことができる。また、短絡スイッチ16がオン状態であるため、スイッチング素子Q12,Q14,Q16の端子間電位がゼロとなる。それ故、期間Bにおいては、ゼロ電圧スイッチングが実現される。
【0046】
図8には、期間Cにおけるスイッチング素子Q11〜Q16及び短絡スイッチ16の状態が示されている。期間Cはデッドタイム期間であり、スイッチング素子Q11〜Q16がオフ状態になる期間である。期間Cでは、U相用PWM信号34、V相用PWM信号36及びW相用PWM信号38が、ロー(Low)を示している。それ故、下アームに属するスイッチング素子Q12,Q14,Q16はオフとなる。なお、上記のように、期間Bにおいてスイッチング素子Q12を予めオフにしておいてもよい。また、直流電源10の短絡を回避するために、スイッチング素子Q12,Q14,Q16がオンになっているタイミングと、スイッチング素子Q11,Q13,Q15がオンになっているタイミングとを完全に一致させず、期間C(デッドタイム)においては、スイッチング素子Q11,Q13,Q15もオフにしている。つまり、期間Cでは、すべてのスイッチング素子をオフにしている。また、期間Cでは、短絡用信号40がハイ(High)を示している。それ故、短絡スイッチ16はオンになっている。
図8中の矢印は、電流経路を示している。期間Cにおいては、電流は、短絡スイッチ16及びU相用のライン18を経由してU相コイルに供給され、U相コイルを経由してV相コイル及びW相コイルに供給される。そして、電流は、V相コイル及びV相用のライン20を経由して短絡スイッチ16に供給される。同様に、電流は、W相コイル及びW相のライン22を経由して短絡スイッチ16に供給される。この段階では、短絡スイッチ16がオンになっているため、スイッチング素子Q12,Q14,Q16が受け持つ電圧は0Vとなる。それ故、スイッチング素子Q12,Q14,Q16をオンからオフにした場合であっても、スイッチング素子Q12,Q14,Q16にてスイッチング損失は発生しない。つまり、ゼロ電圧スイッチング(無損失)が実現される。
【0047】
図9には、期間Dにおけるスイッチング素子Q11〜Q16及び短絡スイッチ16の状態が示されている。期間Dは、デッドタイム期間の直後の期間である。期間Dでは、U相用PWM信号34、V相用PWM信号36及びW相用PWM信号38が、ロー(Low)を示している。それ故、下アームに属するスイッチング素子Q12,Q14,Q16はオフとなっており、上アームに属するスイッチング素子Q11,Q13,Q15がオンとなっている。また、期間Dでは、短絡用信号40がハイ(High)を示している。それ故、短絡スイッチ16はオンになっている。
図9中の矢印は、電流経路を示している。期間Dにおいては、電流は、短絡スイッチ16及びU相用のライン18を経由してU相コイルに供給され、U相コイルを経由してV相コイル及びW相コイルに供給される。そして、電流は、V相コイル及びV相用のライン20を経由して短絡スイッチ16に供給される。同様に、電流は、W相コイル及びW相用のライン22を経由して短絡スイッチ16に供給される。この段階では、電流は短絡スイッチ16を流れているため、上アームに属するスイッチング素子Q11,Q13,Q15には流れない。それ故、スイッチング素子Q11,Q13,Q15をオフからオンにした場合であっても、スイッチング素子Q11,Q13,Q15にてスイッチング損失は発生しない。つまり、ゼロ電流スイッチング(無損失)が実現される。
【0048】
図10には、期間Eにおけるスイッチング素子Q11〜Q16及び短絡スイッチ16の状態が示されている。期間Eでは、U相用PWM信号34、V相用PWM信号36及びW相用PWM信号38が、ロー(Low)を示している。それ故、下アームに属するスイッチング素子Q12,Q14,Q16はオフになっており、上アームに属するスイッチング素子Q11,Q13,Q15がオンになっている。また、期間Eでは、短絡用信号40がロー(Low)を示している。それ故、短絡スイッチ16はオフになっている。
図10中の矢印は、電流経路を示している。期間Eにおいては、電流は、スイッチング素子Q11及びU相用のライン18を経由してU相コイルに供給され、U相コイルを経由してV相コイル及びW相コイルに供給される。そして、電流は、V相コイル及びV相用のライン20を経由してダイオードD13を流れる。同様に、電流は、W相コイル及びW相用のライン22を経由してダイオードD15を流れる。この段階では、上アームに属するスイッチング素子Q11,Q13,Q15がオン状態であるため、短絡スイッチ16の全端子の電位は入力電圧Vinとなる。それ故、短絡スイッチ16が受け持つ電圧(端子間電位差)が0Vとなり、短絡スイッチ16にてスイッチング損失は発生しない。つまり、ゼロ電圧スイッチング(無損失)が実現される。
【0049】
以上のように、本実施形態では、短絡スイッチ16のオン期間中に、スイッチング素子Q12,Q14,Q16をオンからオフにスイッチングさせ、スイッチング素子Q11,Q13,Q15をオフからオンにスイッチングさせる。これにより、ゼロ電圧スイッチング及びゼロ電流スイッチングを実現することが可能となり、スイッチング損失の発生を防止することが可能となる。例えば、
図4に示すグラフ48のように、スイッチング損失の合計を低減することが可能となる。
【0050】
(比較例1)
次に、
図11を参照して、比較例1に係るインバータ装置及び制御方法について説明する。比較例1に係るインバータ装置には、短絡スイッチ16が含まれていない。短絡スイッチ16以外のインバータの回路構成は、
図1に示されている回路構成と同じものであるとする。
【0051】
図11には、比較例1に係るPWM制御に関する信号が示されている。横軸は時間を示している。キャリア信号50は、各相用のPWM信号を生成するためのキャリア波であり、三角波である。具体的には、キャリア信号50の波形は、時間と共に徐々に上がっていき、その後、徐々に下がっていくことを繰り返す波形である。キャリア信号50の最下点と次の最下点との間の期間を1周期(1PWM制御周期)とする。
【0052】
U相用デューティ信号52、V相用デューティ信号54、及び、W相用デューティ信号56は、対応する相のPWM信号を生成するための信号であり、対応する相に対する指令電圧に応じた信号である。キャリア信号50、U相用デューティ信号52、V相用デューティ信号54、及び、W相用デューティ信号56に基づいて、U相用PWM信号58、V相用PWM信号60、及び、W相用PWM信号62が生成される。
【0053】
U相用PWM信号58は、U相アームに属するスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング動作を制御するためのPWM信号であり、スイッチング素子Q11,Q12のオン/オフのタイミングを示す信号である。U相用PWM信号58は、キャリア信号50とU相用デューティ信号52との比較によって生成される。キャリア信号50とU相用デューティ信号52とが交差するタイミングで、U相用PWM信号58のハイ(High)とロー(Low)とが切り替わる。U相用PWM信号58は、U相アーム用の駆動回路に供給される。当該駆動回路は、U相用PWM信号58に従って、U相アームに属するスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング動作を制御する。U相用PWM信号58がハイ(High)を示す場合、駆動回路は、U相アームにおいて下アームに属するスイッチング素子Q12をオンにし、上アームに属するスイッチング素子Q11をオフにする。一方、U相用PWM信号58がロー(Low)を示す場合、駆動回路は、U相アームにおいて上アームに属するスイッチング素子Q11をオンにし、下アームに属するスイッチング素子Q12をオフにする。
【0054】
V相用PWM信号60は、V相アームに属するスイッチング素子Q13,Q14のスイッチング動作を制御するためのPWM信号であり、スイッチング素子Q13,Q14のオン/オフのタイミングを示す信号である。V相用PWM信号60は、キャリア信号50とV相用デューティ信号54との比較によって生成される。キャリア信号50とV相用デューティ信号54とが交差するタイミングで、V相用PWM信号60のハイ(High)とロー(Low)とが切り替わる。V相用PWM信号60は、V相アーム用の駆動回路に供給される。当該駆動回路は、V相用PWM信号60に従って、V相アームに属するスイッチング素子Q13,Q14のスイッチング動作を制御する。V相用PWM信号60がハイ(High)を示す場合、駆動回路は、V相アームにおいて下アームに属するスイッチング素子Q14をオンにし、上アームに属するスイッチング素子Q13をオフにする。一方、V相用PWM信号60がロー(Low)を示す場合、駆動回路は、V相アームにおいて上アームに属するスイッチング素子Q13をオンにし、下アームに属するスイッチング素子Q14をオフにする。
【0055】
W相用PWM信号62は、W相アームに属するスイッチング素子Q15,Q16のスイッチング動作を制御するためのPWM信号であり、スイッチング素子Q15,Q16のオン/オフのタイミングを示す信号である。W相用PWM信号62は、キャリア信号50とW相用デューティ信号56との比較によって生成される。キャリア信号50とW相用デューティ信号56とが交差するタイミングで、W相用PWM信号62のハイ(High)とロー(Low)とが切り替わる。W相用PWM信号62は、W相アーム用の駆動回路に供給される。当該駆動回路は、W相用PWM信号62に従って、W相アームに属するスイッチング素子Q15,Q16のスイッチング動作を制御する。W相用PWM信号62がハイ(High)を示す場合、駆動回路は、W相アームにおいて下アームに属するスイッチング素子Q16をオンにし、上アームに属するスイッチング素子Q15をオフにする。一方、W相用PWM信号62がロー(Low)を示す場合、駆動回路は、W相アームにおいて上アームに属するスイッチング素子Q15をオンにし、下アームに属するスイッチング素子Q16をオフにする。
【0056】
比較例1では、1PWM制御周期中、符号64,66,68,70,72,74で示すタイミングにてスイッチング損失が発生する。つまり、1PWM制御周期中におけるスイッチング損失の発生回数は6回となる。一方、本実施形態では、
図3に示すように、その発生回数を3回に低減することが可能となる。それ故、本実施形態によると、比較例1と比べて、スイッチング損失の発生回数を半分に減らすことが可能となる。
【0057】
(比較例2)
次に、
図12から
図15を参照して、比較例2に係るインバータ装置及び制御方法について説明する。比較例2に係るインバータ装置は、短絡スイッチ16が含まれていない。短絡スイッチ16以外のインバータの回路構成は、
図1に示されている回路構成と同じものであるとする。また、比較例2においては、
図3に示されている本実施形態に係る信号に従って、スイッチング素子Q11〜Q16のスイッチング動作が制御されるものとする。つまり、ノコギリ波であるキャリア信号26を用いて、U相用PWM信号34、V相用PWM信号36及びW相用PWM信号38が生成され、これらのPWM信号に従って、スイッチング素子Q11〜Q16のスイッチング動作が制御されるものとする。ただし、比較例2においては、短絡スイッチ16が使用されないので、各相の出力端子が短絡することはない。
【0058】
図12は、比較例2に係るインバータにおけるスイッチング損失のグラフが示されている。
図12中のグラフにおいて、横軸は時間を示しており、縦軸はインバータにて発生するスイッチング損失(単位:per unit)を示している。グラフ76〜82は、シミュレーションによって得られた波形であり、ノコギリ波(キャリア信号26)のエッジタイミングを含む前後の期間において、発生するスイッチング損失を示すグラフである。つまり、グラフ76〜82は、U相用PWM信号34、V相用PWM信号36及びW相用PWM信号38が、ハイ(High)からロー(Low)に切り替わるタイミングを含む前後の期間において、発生するスイッチング損失を示すグラフである。具体的には、グラフ76は、スイッチング素子Q14にて発生するスイッチング損失を示しており、グラフ78は、スイッチング素子Q16にて発生するスイッチング損失を示しており、グラフ80は、スイッチング素子Q11にて発生するスイッチング損失を示している。また、グラフ82は、スイッチング素子Q11〜Q16にて発生するスイッチング損失の合計を示すグラフである。以下では、ノコギリ波のエッジタイミングを含む前後の期間を期間F〜Hに分け、各期間におけるスイッチング素子Q11〜Q16の動作について説明する。
【0059】
図13には、期間Fにおけるスイッチング素子Q11〜Q16の状態が示されている。期間Fでは、U相用PWM信号34、V相用PWM信号36及びW相用PWM信号38が、ハイ(High)を示している。それ故、下アームに属するスイッチング素子Q12,Q14,Q16がオンになっており、上アームに属するスイッチング素子Q11,Q13,Q15がオフになっている。
図13中の矢印は、電流経路を示している。期間Fにおいては、電流は、U相用のライン18を経由してモータMGのU相コイルに供給され、U相コイルを経由してV相コイル及びW相コイルに供給される。このとき、電流は、ダイオードD12を経由してU相用のライン18に供給される。そして、電流は、V相コイル及びV相用のライン20を経由してスイッチング素子Q14に供給される。同様に、電流は、W相コイル及びW相用のライン22を経由してスイッチング素子Q16に供給される。この段階では、スイッチング素子Q11〜Q16にてスイッチング動作が発生していないため、スイッチング損失は発生しない。
【0060】
図14には、期間Gにおけるスイッチング素子Q11〜Q16の状態が示されている。期間Gはデッドタイム期間であり、スイッチング素子Q11〜Q16がオフ状態になる期間である。期間Gでは、U相用PWM信号34、V相用PWM信号36及びW相用PWM信号38が、ロー(Low)を示している。それ故、下アームに属するスイッチング素子Q12,Q14,Q16はオフになる。また、直流電源10の短絡を回避するために、スイッチング素子Q12,Q14,Q16がオンになっているタイミングと、スイッチング素子Q11,Q13,Q15がオンになるタイミングとを完全に一致させず、期間G(デッドタイム)においては、スイッチング素子Q11,Q13,Q15もオフにしている。つまり、期間Gでは、すべてのスイッチング素子をオフにしている。
図14中の矢印は、電流経路を示している。期間Gにおいては、電流は、ダイオードD12及びU相用のライン18を経由してU相コイルに供給され、U相コイルを経由してV相コイル及びW相コイルに供給される。そして、電流は、V相コイル及びV相用のライン20を経由してダイオードD13を流れる。同様に、電流は、W相コイル及びW相用のライン22を経由してダイオードD15を流れる。この段階では、電流はダイオードD12を流れるので、スイッチング素子Q12においてスイッチング損失は発生しない。しかし、スイッチング素子Q14,Q16をオンからオフに切り替えた段階で、スイッチング素子Q14,Q16においてスイッチング損失が発生する。
【0061】
図15には、期間Hにおけるスイッチング素子Q11〜Q16の状態が示されている。期間Hでは、U相用PWM信号34、V相用PWM信号36及びW相用PWM信号38が、ロー(Low)を示している。それ故、下アームに属するスイッチング素子Q12,Q14,Q16はオフになっており、上アームに属するスイッチング素子Q11,Q13,Q15がオンになっている。
図15中の矢印は、電流経路を示している。期間Hにおいては、電流は、スイッチング素子Q11及びU相用のライン18を経由してU相コイルに供給され、U相コイルを経由してV相コイル及びW相コイルに供給される。そして、電流は、V相コイル及びV相用のライン20を経由してダイオードD13を流れる。同様に、電流は、W相コイル及びW相用のライン22を経由してダイオードD15に流れる。この段階では、電流はダイオードD13,D15を流れるので、スイッチング素子Q13,Q15においてスイッチング損失は発生しない。しかし、スイッチング素子Q11をオフ状態からオン状態に切り替えた段階で、スイッチング素子Q11においてスイッチング損失が発生する。
【0062】
以上のように、比較例2では、スイッチング素子Q12,Q14,Q16をオン状態からオフ状態にスイッチングさせると、スイッチング素子Q14,Q16にてスイッチング損失が発生し、スイッチング素子Q11,Q13,Q15をオフからオンにスイッチングさせると、スイッチング素子Q11にてスイッチング損失が発生する。それ故、
図12に示すように、スイッチング損失の合計が増大することになる。
【0063】
図4に示されている本実施形態に係るグラフ48と、
図12に示されている比較例2に係るグラフ82と、を比較すると、本実施形態では、スイッチング損失の合計を低減することが可能となる。
【0064】
(変形例1)
次に、変形例1に係るインバータ装置について説明する。
図16には、変形例1に係るインバータ装置が示されている。このインバータ装置は、2つのインバータを備え、直流電源10からモータMG1,MG2に供給される電力を調整する機能を備えた装置である。また、インバータ装置は、モータMG1,MG2で生成され直流電源10に供給される電力を調整する機能を備えていてもよい。
【0065】
モータMG1,MG2は、
図1に示されているモータMGと同じ構成を備えたモータであり、直流電源10から供給される電力によって駆動される。
【0066】
ここで、直流電源10の電源ラインについて、高圧側のラインを正極側ライン12a,12bと称し、低圧側のラインを負極側ライン14a,14bと称することとする。正極側ライン12a及び負極側ライン14aは、第1インバータ用の電源ラインであり、正極側ライン12b及び負極側ライン14bは、第2インバータ用の電源ラインである。正極側ライン12aには正極側ライン12bが接続されており、負極側ライン14bには負極側ライン14aが接続されている。
【0067】
第1インバータは、スイッチング素子Q11〜Q16を含み、直流電源10から供給された直流電力を3相交流電力に変換してモータMG1に供給する。第1インバータは、正極側ライン12aと負極側ライン14aとの間に互いに並行に配置されたU相アーム、V相アーム及びW相アームを含む。U相アームは、スイッチング素子Q11,Q12の直列接続によって構成され、V相アームは、スイッチング素子Q13,Q14の直列接続によって構成され、W相アームは、スイッチング素子Q15,Q16の直列接続によって構成されている。スイッチング素子Q11,Q13,Q15が上アームに属するスイッチング素子であり、スイッチング素子Q12,Q14,Q16が下アームに属するスイッチング素子である。各スイッチング素子においては、コレクタとエミッタとの間に、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すダイオード(ダイオードD11〜D16)が配置されている。
【0068】
U相アームのスイッチング素子Q11,Q12の中間点は、モータMG1のU相コイルに接続されている。V相アームのスイッチング素子Q13,Q14の中間点は、モータMG1のV相コイルに接続されている。W相アームのスイッチング素子Q15,Q16の中間点は、モータMG1のW相コイルに接続されている。例えば、スイッチング素子Q11〜Q16のそれぞれに駆動回路が設けられており、スイッチング素子Q11〜Q16は、制御部24からの制御信号に基づいて、対応する駆動回路によってスイッチング制御(オン又はオフ制御)される。これにより、電力が変換される。
【0069】
第2インバータは、スイッチング素子Q21〜Q26を含み、直流電源10から供給された直流電力を3相交流電力に変換してモータMG2に供給する。第2インバータは、正極側ライン12bと負極側ライン14bとの間に互いに並行に配置されたU相アーム、V相アーム及びW相アームを含む。U相アームは、スイッチング素子Q21,Q22の直列接続によって構成され、V相アームは、スイッチング素子Q23,Q24の直列接続によって構成され、W相アームは、スイッチング素子Q25,Q26の直列接続によって構成されている。スイッチング素子Q21,Q23,Q25が上アームに属するスイッチング素子であり、スイッチング素子Q22,Q24,Q26が下アームに属するスイッチング素子である。各スイッチング素子においては、コレクタとエミッタとの間に、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すダイオード(ダイオードD21〜D26)が配置されている。
【0070】
U相アームのスイッチング素子Q21,Q22の中間点は、モータMG2のU相コイルに接続されている。V相アームのスイッチング素子Q23,Q24の中間点は、モータMG2のV相コイルに接続されている。W相アームのスイッチング素子Q25,Q26の中間点は、モータMG2のW相コイルに接続されている。例えば、スイッチング素子Q21〜Q26のそれぞれに駆動回路が設けられており、スイッチング素子Q21〜Q26は、制御部24からの制御信号に基づいて、対応する駆動回路によってスイッチング制御(オン又はオフ制御)される。これにより、電力が変換される。
【0071】
短絡スイッチ84は、各相アームの中間点と各相コイルとの間に設けられ、各相アームの出力端子を短絡するスイッチである。短絡スイッチ84は、例えば6端子スイッチであり、第1及び第2インバータのU相アーム、V相アーム及びW相アームの出力端子を、一括して短絡する機能、及び、その短絡を解消する機能を備えている。具体的には、短絡スイッチ84は、第1インバータのU相アームの中間点とモータMG1のU相コイルとの間、第1インバータのV相アームの中間点とモータMG1のV相コイルとの間、及び、第1インバータのW相アームの中間点とモータMG1のW相コイルとの間、に設けられている。また、短絡スイッチ84は、第2インバータのU相アームの中間点とモータMG2のU相コイルとの間、第2インバータのV相アームの中間点とモータMG2のV相コイルとの間、及び、第2インバータのW相アームの中間点とモータMG2のW相コイルとの間、に設けられている。短絡スイッチ84は、第1インバータのU相アームの中間点とモータMG1のU相コイルとを接続するライン18a、第1インバータのV相アームの中間点とモータMG1のV相コイルとを接続するライン20a、第1インバータのW相アームの中間点とモータMG1のW相コイルとを接続するライン22a、第2インバータのU相アームの中間点とモータMG2のU相コイルとを接続するライン18b、第2インバータのV相アームの中間点とモータMG2のV相コイルとを接続するライン20b、及び、第2インバータのW相アームの中間点とモータMG2のW相コイルとを接続するライン22b、を接続又は遮断する機能を備えている。短絡スイッチ84がオン状態の場合、ライン18a,20a,22a,18b,20b,22bが短絡スイッチ84によって接続される。これにより、第1及び第2インバータのU相アーム、V相アーム及びW相アームの出力端子が短絡する。短絡スイッチ84がオフ状態の場合、ライン18a,20a,22a,18b,20b,22bの接続が解消され、短絡が解消される。例えば、短絡スイッチ84に駆動回路が設けられており、短絡スイッチ84は、制御部24からの制御信号に基づいて、当該駆動回路によってスイッチング動作(オン又はオフ制御)される。これにより、第1及び第2インバータにおける各相アームの短絡又は遮断が実現される。
【0072】
制御部24は、第1インバータを構成するスイッチング素子Q11〜Q16のスイッチング動作を制御することにより、モータMG1の動作を制御する。制御部24は、例えば、モータMG1が目標トルクを出力するように、スイッチング素子Q11〜Q16のスイッチング動作を制御し、モータMG2が目標トルクを出力するように、スイッチング素子Q21〜Q26のスイッチング動作を制御する。例えば、制御部24は、モータMG1が目標トルクを出力するように、スイッチング素子Q11〜Q16をオン又はオフするためのPWM信号を生成し、モータMG2が目標トルクを出力するように、スイッチング素子Q21〜Q26をオン又はオフするためのPWM信号を生成する。そして、制御部24は、スイッチング素子Q11〜Q26のそれぞれに対応する駆動回路に、個々のスイッチング素子用のPWM信号を供給する。
【0073】
変形例1では、制御部24は、短絡スイッチ84のオン期間中に、スイッチング素子Q11〜Q26をスイッチング動作させる。例えば、制御部24は、下アームに属するスイッチング素子Q12,Q14,Q16,Q22,Q24,Q26をオンからオフに切り替え、上アームに属するスイッチング素子Q11,Q13,Q15,Q21,Q23,Q25をオフからオンに切り替える。または、制御部24は、下アームに属するスイッチング素子Q12,Q14,Q16,Q22,Q24,Q26をオフからオンに切り替え、上アームに属するスイッチング素子Q11,Q13,Q15,Q21,Q23,Q25をオンからオフに切り替える。例えば、制御部24は、PWM制御周期毎に、所定期間の間、短絡スイッチ84をオンにし、それ以外の期間においては、短絡スイッチ84をオフにする。
【0074】
図17には、6端子スイッチとしての短絡スイッチ84が示されている。6端子スイッチとしては公知のスイッチを用いることができる。例えば、短絡スイッチ84は、IGBT等によって構成されているスイッチング素子Q40と、ダイオードD41〜D52と、を含む。ダイオードD41〜D46は第1インバータ用のダイオードであり、ダイオードD47〜D52は第2インバータ用のダイオードである。ダイオードD41,D42が直列に接続され、その中間点とU相アーム用のライン18aとが接続される。同様に、ダイオードD43,D44が直列に接続され、その中間点とV相アーム用のライン20aとが接続される。同様に、ダイオードD45,D46が直列に接続され、その中間点とW相アーム用のライン22aとが接続される。また、ダイオードD47,D48が直列に接続され、その中間点とU相アーム用のライン18bとが接続される。同様に、ダイオードD49,D50が直列に接続され、その中間点とV相アームのライン20bとが接続される。同様に、ダイオードD51,D52が直列に接続され、その中間点とW相アームのライン22bとが接続される。
【0075】
例えば、スイッチング素子Q40に駆動回路が設けられており、スイッチング素子Q40は、制御部24からの制御信号に基づいて、当該駆動回路によってスイッチング制御(オン又はオフ制御)される。スイッチング素子Q40がオンの場合、
図16に示されているライン18a,20a,22a,18b,20b,22bが接続され、これにより、第1及び第2インバータのU相アーム、V相アーム及びW相アームの出力端子が短絡する。一方、スイッチング素子Q40がオフの場合、ライン18a,20a,22a,18b,20b,22bの接続が解消され、短絡が解消される。
【0076】
図18には、PWM制御に関する信号の一例が示されている。横軸は時間を示している。キャリア信号26は、第1及び第2インバータ用のPWM信号を生成するための共通のキャリア波であり、一例としてノコギリ波である。なお、第1インバータと第2インバータとで、別々のキャリア信号が用いられてもよい。
【0077】
U相用デューティ信号28a、V相用デューティ信号30a、及び、W相用デューティ信号32aは、第1インバータにおいて対応する相のPWM信号を生成するための信号であり、対応する相に対する指令電圧に応じた信号である。同様に、U相用デューティ信号28b、V相用デューティ信号30b、及び、W相用デューティ信号32bは、第2インバータにおいて対応する相のPWM信号を生成するための信号であり、対応する相に対する指令電圧に応じた信号である。制御部24は、キャリア信号26、U相用デューティ信号28a、V相用デューティ信号30a、及び、W相用デューティ信号32aに基づいて、第1インバータ用のU相用PWM信号34a、V相用PWM信号36a、及び、W相用PWM信号38aを生成する。同様に、制御部24は、キャリア信号26、U相用デューティ信号28b、V相用デューティ信号30b、及び、W相用デューティ信号32bに基づいて、第2インバータ用のU相用PWM信号34b、V相用PWM信号36b、及び、W相用PWM信号38bを生成する。
【0078】
U相用PWM信号34aは、第1インバータにおいてU相アームに属するスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング動作を制御するためのPWM信号である。U相用PWM信号34aがハイ(High)を示す場合、スイッチング素子Q12がオンになり、スイッチング素子Q11がオフになる。一方、U相用PWM信号34aがロー(Low)を示す場合、スイッチング素子Q11がオンになり、スイッチング素子Q12がオフになる。
【0079】
V相用PWM信号36aは、第1インバータにおいてV相アームに属するスイッチング素子Q13,Q14のスイッチング動作を制御するためのPWM信号である。V相用PWM信号36aがハイ(High)を示す場合、スイッチング素子Q14がオンになり、スイッチング素子Q13がオフになる。一方、V相用PWM信号36aがロー(Low)を示す場合、スイッチング素子Q13がオンになり、スイッチング素子Q14がオフになる。
【0080】
W相用PWM信号38aは、第1インバータにおいてW相アームに属するスイッチング素子Q15,Q16のスイッチング動作を制御するためのPWM信号である。W相用PWM信号38aがハイ(High)を示す場合、スイッチング素子Q16がオンになり、スイッチング素子Q15がオフになる。一方、W相用PWM信号38aがロー(Low)を示す場合、スイッチング素子Q15がオンになり、スイッチング素子Q16がオフになる。
【0081】
U相用PWM信号34bは、第2インバータにおいてU相アームに属するスイッチング素子Q21,Q22のスイッチング動作を制御するためのPWM信号である。U相用PWM信号34bがハイ(High)を示す場合、スイッチング素子Q22がオンになり、スイッチング素子Q21がオフになる。一方、U相用PWM信号34bがロー(Low)を示す場合、スイッチング素子Q21がオンになり、スイッチング素子Q22がオフになる。
【0082】
V相用PWM信号36bは、第2インバータにおいてV相アームに属するスイッチング素子Q23,Q24のスイッチング動作を制御するためのPWM信号である。V相用PWM信号36bがハイ(High)を示す場合、スイッチング素子Q24がオンになり、スイッチング素子Q23がオフになる。一方、V相用PWM信号36bがロー(Low)を示す場合、スイッチング素子Q23がオンになり、スイッチング素子Q24がオフになる。
【0083】
W相用PWM信号38bは、第2インバータにおいてW相アームに属するスイッチング素子Q25,Q26のスイッチング動作を制御するためのPWM信号である。W相用PWM信号38bがハイ(High)を示す場合、スイッチング素子Q26がオンになり、スイッチング素子Q25がオフになる。一方、W相用PWM信号38bがロー(Low)を示す場合、スイッチング素子Q25がオンになり、スイッチング素子Q26がオフになる。
【0084】
以上のように、ノコギリ状の波形を有する共通のキャリア信号26を用いることにより、キャリア信号26において波形が急上昇するタイミング(ノコギリ波のエッジタイミング)にて、第1及び第2インバータの各相に対するPWM信号が、ハイ(High)からロー(Low)に切り替わる。これにより、ノコギリ波のエッジタイミングにて、第1及び第2インバータにおける各スイッチング素子のオン/オフのタイミングが一致することになる。具体的には、ノコギリ波のエッジタイミングにて、スイッチング素子Q11,Q13,Q15,Q21,Q23,Q25がオンからオフに切り替わり、スイッチング素子Q12,Q14,Q16,Q22,Q24,Q26がオフからオンに切り替わる。
【0085】
なお、変形例1においても、キャリア信号26の波形として、時間と共に上がっていき、急降下することを繰り返す波形が用いられてもよい。この場合、波形が急降下するタイミング(ノコギリ波のエッジタイミング)にて、第1及び第2インバータの各相に対するPWM信号がロー(Low)からハイ(High)に切り替わる。これにより、ノコギリ波のエッジタイミングにて、スイッチング素子Q11,Q13,Q15,Q21,Q23,Q25がオフからオンに切り替わり、スイッチング素子Q12,Q14,Q16,Q22,Q24,Q26がオンからオフに切り替わる。
【0086】
短絡用信号86は、短絡スイッチ84のオン/オフのタイミングを示す信号である。短絡用信号86は、例えば制御部24によって生成される。短絡用信号86の波形は、キャリア信号26の波形が急上昇するタイミング(ノコギリ波のエッジタイミング)を含む前後の期間(短絡絡期間)において、ハイ(High)状態になり、それ以外の期間においてはロー(Low)状態になる。短絡用信号40がハイ(High)を示す場合、短絡スイッチ84はオンになる。これにより、短絡期間中、第1及び第2インバータにおける各相アームの出力端子が短絡する。一方、短絡用信号40がロー(Low)を示す場合、短絡スイッチ84はオフになる。これにより、短絡期間以外の期間中、第1及び第2インバータにおける各相アームの出力端子の短絡が解消される。短絡期間は、一例として数μ秒である。
【0087】
なお、変形例1においても、第1及び第2インバータにおける各相に対するPWM信号のエッジタイミングは、厳密に一致していなくてもよい。短絡用信号86がハイ(High)になっている短絡期間内に、各相に対するPWM信号のエッジタイミングが含まれていればよい。
【0088】
変形例1によると、上述した実施形態と同様に、短絡期間中においては、スイッチング素子Q11〜16,Q21〜26にてスイッチング損失は発生しない。この理由は、上述した実施形態に係る理由と同じである。変形例1においても、スイッチング損失の発生回数が減少し、スイッチング損失の合計を低減することが可能となる。例えば、第1インバータにおけるスイッチング損失の発生回数は3回となり、第2インバータにおけるスイッチング損失の発生回数は3回となる。比較例1と比べると、スイッチング損失の発生回数を半分に減らすことが可能となる。
【0089】
変形例1においては、短絡スイッチ84によって、第1及び第2インバータのU相アーム、V相アーム及びW相アームの出力端子を、一括して短絡することが可能となる。これにより、第1及び第2インバータのそれぞれに別々の短絡スイッチを設ける場合と比べて、部品点数を削減し、インバータ装置の製造コストを削減することが可能となる。
【0090】
なお、本実施形態に係る制御方法は、3台以上のインバータに対して適用されてもよい。この場合においても、短絡期間中に全スイッチング素子をスイッチングさせることにより、スイッチング損失を低減することが可能となる。また、全相の出力端子を一括して短絡する短絡スイッチが用いられてもよい。
【0091】
(変形例2)
次に、変形例2について説明する。変形例2では、各相用のPWM信号を生成するためのキャリア波として三角波が用いられる。また、個々の相毎に個別のキャリア波が用いられる。短絡スイッチ16がオンになっている短絡期間中にスイッチング素子Q11〜Q16にてスイッチング動作が発生するように、各キャリア波の位相差が制御される。
【0092】
図19には、変形例2に係るPWM制御に関する信号が示されている。横軸は時間を示している。U相用キャリア信号88は、U相用のPWM信号を生成するためのキャリア波である。V相用キャリア信号90は、V相用のPWM信号を生成するためのキャリア波である。W相用キャリア信号92は、W相用のPWM信号を生成するためのキャリア波である。これらのキャリア波は三角波である。具体的には、これらの信号の波形は、時間と共に徐々に上がっていき、その後、徐々に下がっていくことを繰り返す波形である。
【0093】
U相用デューティ信号94、V相用デューティ信号96、及び、W相用デューティ信号98は、対応する相のPWM信号を生成するための信号であり、対応する相に対する指令電圧に応じた信号である。制御部24は、各相用のデューティ信号に応じて、各相用のキャリア波の位相差を制御する。制御部24は、各相用のキャリア信号と各相用のデューティ信号に基づいて、U相用PWM信号100、V相用PWM信号102、及び、W相用PWM信号104を生成する。
【0094】
U相用PWM信号100は、U相アームに属するスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング動作を制御するためのPWM信号であり、スイッチング素子Q11,Q12のオン/オフのタイミングを示す信号である。U相用PWM信号100は、U相用キャリア信号88とU相用デューティ信号94との比較によって生成される。U相用キャリア信号88とU相用デューティ信号94とが交差するタイミングで、U相用PWM信号100のハイ(High)とロー(Low)とが切り替わる。制御部24は、U相用PWM信号100をU相アーム用の駆動回路に供給する。当該駆動回路は、U相用PWM信号100に従って、U相アームに属するスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング動作を制御する。U相用PWM信号100がハイ(High)を示す場合、駆動回路は、U相アームにおいて下アームに属するスイッチング素子Q12をオンにし、上アームに属するスイッチング素子Q11をオフにする。一方、U相用PWM信号100がロー(Low)を示す場合、駆動回路は、U相アームにおいて上アームに属するスイッチング素子Q11をオンにし、下アームに属するスイッチング素子Q12をオフにする。
【0095】
V相用PWM信号102は、V相アームに属するスイッチング素子Q13,Q14のスイッチング動作を制御するためのPWM信号であり、スイッチング素子Q13,Q14のオン/オフのタイミングを示す信号である。V相用PWM信号102は、V相用キャリア信号90とV相用デューティ信号96との比較によって生成される。V相用キャリア信号90とV相用デューティ信号96とが交差するタイミングで、V相用PWM信号102のハイ(High)とロー(Low)とが切り替わる。制御部24は、V相用PWM信号102をV相アーム用の駆動回路に供給する。当該駆動回路は、V相用PWM信号102に従って、V相アームに属するスイッチング素子Q13,Q14のスイッチング動作を制御する。V相用PWM信号102がハイ(High)を示す場合、駆動回路は、V相アームにおいて下アームに属するスイッチング素子Q14をオンにし、上アームに属するスイッチング素子Q13をオフにする。一方、V相用PWM信号102がロー(Low)を示す場合、駆動回路は、V相アームにおいて上アームに属するスイッチング素子Q13をオンにし、下アームに属するスイッチング素子Q14をオフにする。
【0096】
W相用PWM信号104は、W相アームに属するスイッチング素子Q15,Q16のスイッチング動作を制御するためのPWM信号であり、スイッチング素子Q15,Q16のオン/オフのタイミングを示す信号である。W相用PWM信号104は、W相用キャリア信号92とW相用デューティ信号98との比較によって生成される。W相用キャリア信号92とW相用デューティ信号98とが交差するタイミングで、W相用PWM信号104のハイ(High)とロー(Low)とが切り替わる。制御部24は、W相用PWM信号104をW相アーム用の駆動回路に供給する。当該駆動回路は、W相用PWM信号104に従って、W相アームに属するスイッチング素子Q15,Q16のスイッチング動作を制御する。W相用PWM信号104がハイ(High)を示す場合、駆動回路は、W相アームにおいて下アームに属するスイッチング素子Q16をオンにし、上アームに属するスイッチング素子Q15をオフにする。一方、W相用PWM信号104がロー(Low)を示す場合、駆動回路は、W相アームにおいて上アームに属するスイッチング素子Q15をオンにし、下アームに属するスイッチング素子Q16をオフにする。
【0097】
短絡用信号106は、短絡スイッチ16のオン/オフのタイミングを示す信号である。短絡用信号106は、例えば制御部24によって生成される。制御部24は、短絡用信号106を短絡スイッチ16の駆動回路に供給する。当該駆動回路は、短絡用信号106に従って、短絡スイッチ16のスイッチング動作を制御する。短絡用信号106がハイ(High)を示す場合、駆動回路は、短絡スイッチ16をオンにする。これにより、各相アームの出力端子が短絡する。一方、短絡用信号106がロー(Low)を示す場合、駆動回路は、短絡スイッチ16をオフにする。これにより、各相アームの出力端子の短絡が解消される。短絡期間は、一例として数μ秒である。
【0098】
変形例2では、制御部24は、各相のデューティ信号の変化に応じて各相のキャリア信号の位相差を制御するとともに、短絡スイッチ16がオンになっている短絡期間中に、各相に対するPWM信号がハイ(High)からロー(Low)に切り替わるように、各キャリア信号の位相差を制御する。例えば、短絡期間中に、各スイッチング素子のオン/オフのタイミング(スイッチング動作のタイミング)が一致するように、各相のキャリア信号の位相差が制御される。なお、別の例として、短絡期間中に、各相に対するPWM信号がロー(Low)からハイ(High)に切り替わるように、各相のキャリア信号が生成されてもよい。
【0099】
なお、上記の実施形態と同様に、各相に対するPWM信号のエッジタイミング、つまり、各相に対するPWM信号がハイ(High)からロー(Low)に切り替わるタイミング、又は、各相に対するPWM信号がロー(Low)からハイ(High)に切り替わるタイミングは、厳密に一致していなくてもよい。短絡用信号106がハイ(High)になっている短絡期間内に、各相に対するPWM信号のエッジタイミングが含まれていればよい。
【0100】
変形例2においても、短絡期間中においては、スイッチング素子Q11〜Q16にてスイッチング損失は発生しない。それ故、スイッチング損失の発生回数が減少し、スイッチング損失の合計を低減することが可能となる。
【0101】
なお、各相に対するPWM信号のエッジタイミングを短絡期間中に含めるためのキャリア信号は、上記の実施形態及び変形例2に係る信号に限定されるものではない。もちろん、これら以外の信号であっても、PWM信号のエッジタイミングを短絡期間中に含めることができるのであれば、キャリア信号として用いることができる。
【0102】
上記の実施形態及び変形例1,2によると、例えば3レベルインバータよりも部品点数を削減することが可能となり、インバータ装置の製造コストを削減することが可能となる。例えば、2つのインバータを用いる場合において、スイッチング損失を低減するために必要な追加部品について説明する。特許文献1に記載の3レベルインバータにおいては、12個のスイッチング素子、12個のゲートドライバ、12個のダイオード、及び、中間電圧出力用の電源回路、を追加する必要がある。一方、変形例1に係るインバータ装置においては、1個のスイッチング素子(スイッチング素子Q40)、1個のゲートドライバ、及び、12個のダイオード(ダイオードD41〜D52)、を追加することにより、スイッチング損失を低減することができる。このように、本実施形態及び変形例に係る回路構成及び制御方法によると、3レベルインバータと比べて、より少ない部品点数でスイッチング損失を低減することが可能となる。