【実施例1】
【0021】
図1は、本発明が好適に適用されるハイブリッド車両に備えられるハイブリッド車両用駆動装置12の構成を説明する骨子図である。この
図1に示すように、本実施例のハイブリッド車両用駆動装置12(以下、「駆動装置12」という。)は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース14(以下、「ケース14」という)内において共通の軸心上に配設された入力軸16と、その入力軸16に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパ(振動減衰装置)等を介して間接に連結された差動部18と、その差動部18と図示しない駆動輪との間の動力伝達経路に伝達部材(伝動軸)20を介して直列に連結されている自動変速部22と、その自動変速部22に連結された出力軸24とを、直列に備えている。
【0022】
本実施例の駆動装置12は、例えばハイブリッド車両(以下、「車両」という。)において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸16に連結された走行用の駆動力源としての例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン26により発生させられた動力を、出力軸24から図示しない差動歯車装置およびその差動歯車装置と一対の駆動輪との間の図示しない車軸を介して一対の駆動輪へと伝達する。なお、本実施例の駆動装置12において、エンジン26と差動部18とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパ等を介する連結はこの直結に含まれる。また、駆動装置12はその軸心に対して対称的に構成されているため、
図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
【0023】
差動部18は、第1電動機MG1と、前記入力軸16に入力されて前記エンジン26の出力を機械的に分配する機械的機構であってそのエンジン26の出力を第1電動機MG1及び伝達部材20に分配する差動機構としての動力分配装置28と、伝達部材20と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機MG2とを、備えている。本実施例の駆動装置12に備えられた第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、三相コイルが巻回された固定子と永久磁石が備えられた回転子から成る3相交流同期モータから構成されており、何れも電動機及び発電機として機能する所謂モータジェネレータとして機能する。斯かる構成により、差動部18は、第1電動機MG1及び第2電動機MG2を介して運転状態が制御されることにより、入力回転速度(入力軸16の回転速度)と出力回転速度(伝達部材20の回転速度)の差動状態が制御される電気式差動部として機能する。
【0024】
動力分配装置28は、シングルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されている。この遊星歯車装置は、サンギヤS0、遊星歯車P0、その遊星歯車P0を自転及び公転可能に支持するキャリアCA0、遊星歯車P0を介してサンギヤS0と噛み合うリングギヤR0を回転要素(要素)として備えており、キャリアCA0は入力軸16すなわちエンジン26に連結され、サンギヤS0は第1電動機MG1に連結され、リングギヤR0は伝達部材20に連結されている。また、エンジン26が連結された入力軸16は、ブレーキB0を介して非回転部材であるケース14に選択的に連結される。また、エンジン26により回転駆動されて作動油を吐出し、エンジン26の停止により油圧制御回路への作動油の供給を停止する、機械式油圧ポンプ30が入力軸16に連結されている。
【0025】
自動変速部22は、差動部18と図示しない駆動輪との間の動力伝達経路にシングルピニオン型の遊星歯車装置32、遊星歯車装置34を主体として構成され、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。遊星歯車装置32、34は、それぞれサンギヤS1、S2、遊星歯車P1、P2、それら遊星歯車P1、P2を自転及び公転可能に支持するキャリアCA1、CA2、遊星歯車P1、P2を介してサンギヤS1、S2と噛み合うリングギヤR1、R2を備えている。
【0026】
また、自動変速部22では、サンギヤS1がブレーキB1を介してケース14に選択的に連結されるようになっている。また、キャリアCA1とリングギヤR2とが一体的に連結され、第2ブレーキB2を介してケース14に選択的に連結されるようになっていると共に、一方向クラッチF1を介してそのケース14に対する一方向の回転が許容されつつ逆方向の回転が阻止されるようになっている。また、サンギヤS2が第1クラッチC1を介して伝達部材20に選択的に連結されるようになっている。また、一体的に連結されたキャリアCA1及びリングギヤR2が第2クラッチC2を介して伝達部材20に選択的に連結されるようになっている。また、リングギヤR1とキャリアCA2とが一体的に連結されると共に出力軸24に連結されている。また、
図1には図示しないが、出力軸24にはパーキングロック機構37のパーキングギヤ38が固定的に連結されている。
【0027】
自動変速部22においては、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により第3速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1の係合により第4速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、自動変速部22は、たとえば第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2の全ての解放によりニュートラル「N」状態とされる。差動部18は、ブレーキB0の係合により第1電動機MG1および第2電動機MG2の両方で一対の駆動輪を駆動可能な状態すなわち両駆動状態となり、車両は自動変速部22が動力伝達可能な状態となると、モータ走行となる。
【0028】
図2は、駆動装置12に備えられるシフトバイワイヤ方式の走行制御モード切替装置36の構成を示す図である。走行制御モード切替装置36は、電動アクチュエータ46と、電動アクチュエータ46により出力軸24のパーキングロック状態と非パーキングロック状態とを切り換えるパーキングロック機構37と、マニュアルバルブ68とを、備えている。パーキングロック機構37は、図示しない駆動輪と作動的に連結されている出力軸24に固定されたパーキングギヤ38と、パーキングギヤ38と噛み合う噛合位置へ回動可能に設けられて選択的にパーキングギヤ38の回転をロックするパーキングロックポール54と、パーキングロックポール54と当接するテーパカム部56に挿し通されてテーパカム部56を一端部において支持するコントロールロッド58と、コントロールロッド58に設けられてテーパカム部56をその小径方向へ付勢するスプリング60と、制御軸64に固定されることにより支持され、コントロールロッド58の他端部に回動可能に接続されて節度機構によりパーキングロック位置と非パーキングロック位置とに位置決めされるディテントレバー62と、ディテントレバー62の回転に節度を与えつつパーキングロック位置および複数の非パーキングロック位置のうちのいずれか一つの回動位置にディテントレバー62を保持するディテントスプリング66と、を備えている。制御軸64により支持されたディテントレバー62は、電動モータ48(SBWモータ)により一回動中心線Oまわりに回動させられる。
【0029】
図2では、パーキングロック機構37が非パーキングロック状態にある場合を表している。パーキングロックポール54は、コントロールロッド58の一端に設けられているテーパカム部56との当接位置が変化させられることで、その位置が調節される。例えば、矢印A方向にテーパカム部56が移動させられ、パーキングロックポール54がテーパカム部56の小径部と当接する場合、パーキングロックポール54の先端が鉛直下方(矢印B方向)に移動されるに伴って、パーキングギヤ38との噛合いが外れ、パーキングロック機構37のパーキングロック状態が解除される(
図2)。一方、パーキングロックポール54がテーパカム部56の大径部と当接する場合、パーキングギヤ38とパーキングロックポール54とが噛み合うことで、パーキングロック機構37が図示しないパーキングロック状態とされる。パーキングロック機構37がパーキングロック状態にある場合、パーキングロックポール54とパーキングギヤ38とが噛み合わされることで、パーキングギヤ38の回転が阻止され、駆動輪の回転も同様に阻止される。
【0030】
また、コントロールロッド58の軸方向への移動は、制御軸64の回転位置すなわちディテントレバー62の回動位置に応じて調節される。ディテントレバー62は、制御軸64を介して電動アクチュエータ46の出力ギヤ104に作動的に連結されており、コントロールロッド58と共に電動アクチュエータ46により一回動軸線Oまわりに回転駆動される。ディテントレバー62は、板状部材であり、下端部に制御軸64が固定され、その上端部にパーキング凹溝72と、ニュートラル凹溝74などの複数の非パーキング凹溝とを、含む係合凹溝76を備えている。また、ディテントスプリング66は、板バネであり、その基端部がバルブボデー67に固定され、その先端部に回転可能に支持された係合ローラ78をディテントレバー62の係合凹溝76の溝底に係合するように付勢した状態で備えている。マニュアルバルブ68は、その一端部においてディテントレバー62のアーム部80に設けられたピン82を介してディテントレバー62に係合している。そして、マニュアルバルブ68のスプール84は、ディテントレバー62の回動により、バルブボデー67内でその軸心方向に移動可能に設けられており、ディテントレバー62の回動位置に応じて軸心方向の位置が決められる。これにより、マニュアルバルブ68の油路が車両の走行に関わる走行制御モードに応じた油路に切り換えられる。ここで、制御軸64すなわちディテントレバー62の回転位置が、パーキング凹溝72にディテントスプリング66の係合ローラ78が係合されるパーキングロック位置(P位置)にあるときは、走行制御モード(シフトレンジ)はパーキング(P)モード(Pレンジ)であり、ニュートラル凹溝74などの非パーキング凹溝に係合ローラ78が係合される非パーキングロック位置(非P位置)にあるときは、走行制御モード(シフトレンジ)は、たとえばニュートラル(N)モード(Nレンジ)、ドライブ(D)モード(Dレンジ)、リバース(R)モード(Rレンジ)などの非パーキング(非P)モード(非Pレンジ)である。
【0031】
各走行制御モードについて説明すると、シフトレバー112がR操作位置へシフト操作されることにより選択されるRモードは、車両を後進させる駆動力が駆動輪に伝達される後進走行モードである。また、シフトレバー112がN操作位置へシフト操作されることにより選択されるNモードは、動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態とするための中立モードである。また、シフトレバー112がD操作位置へシフト操作されることにより選択されるDモードは、車両を前進させる駆動力が駆動輪に伝達される前進走行モードである。Rモード、Nモード、Dモードは、本発明の走行モード状態に対応する。また、走行制御モードが非Pモードにある状態で、Pスイッチ114の押釦が操作されたときに所定の条件が満たされている場合に選択されるPモードは、動力伝達経路が遮断され、且つパーキングロック機構37がパーキングロック状態とされる駐車モードである。なお、走行制御モードが非Pモードにあるときには、パーキングロック機構37は非パーキングロック状態である。
【0032】
たとえば、Dモードが選択された場合には、スプール84がディテントレバー62の非P位置のうちのD位置に対応する軸心方向の位置に移動されてマニュアルバルブ68の油路が車両を前進させる駆動力が駆動輪に伝達されるのに必要な前進走行油圧が出力されるDモードに対応する状態に切り換えられる。前進走行油圧は、リニアソレノイドバルブなどにより調圧されて第1クラッチC1などの油圧式摩擦係合装置に供給され、自動変速部22において第1速ギヤ段などが成立させられる。このように、本実施例の車両は、シフト操作装置110の操作に基づき、電動アクチュエータ46が駆動されることによりディテントレバー62を介してマニュアルバルブ68のスプール84が軸方向に移動させられ、走行制御モードが切り換えられるようになっている。
【0033】
制御軸64の一端部である
図2における左側端部には、断面長方形状の係合部86が形成されている。この係合部86は、電動アクチュエータ46の出力ギヤ104に接続されている。電動アクチュエータ46は、電動モータ48と減速ギヤ機構90、とを備えている。電動モータ48の出力軸には、ウォームギヤ92が形成されている。ウォームギヤ92には、ケーシング94に回転可能に支持された軸98に連結されたウォームホイール96が噛合している。軸98には小径ギヤ100が固定されている。この小径ギヤ100には、ケーシング94に回転可能に支持された中間軸101に形成された大径ギヤ102が噛合している。また、中間軸101に形成された小径ギヤには、部分円弧に噛合歯が形成された扇形状の出力ギヤ104が嵌合されている。出力ギヤ104はケーシング94に回転可能に支持され、その回動中心には、断面長方形状の係合穴106が形成されている。軸98の小径ギヤ100、中間軸101の大径ギヤ102、中間軸101の小径ギヤおよび出力ギヤ104などのギヤ列により減速ギヤ機構90が構成されている。出力ギヤ104の係合穴106には、前述の制御軸64の係合部86が係合される。
【0034】
図3は、パーキングロック制御用コンピュータ108(SBW−ECU108)および電源制御用コンピュータ120(PM−ECU120)を説明する図である。パーキングロック制御用コンピュータ108および電源制御用コンピュータ120は、CPU、ROM、RAMおよび入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。パーキングロック制御用コンピュータ108には、シフト操作装置110のシフトレバー112の操作位置に応じて出力されたシフトレバー位置信号、およびパーキングスイッチ114(Pスイッチ(P−SW)114)の押釦の押圧操作に応じたPモードへの切換要求としてのPスイッチ信号が、供給される。また、パーキングロック制御用コンピュータ108には、車速センサ116により検出された車速Vを表す信号、車両のドアの開閉を検出するためのドア開閉スイッチ118からの車両のドアが開かれたドア開状態Donを表す信号、などが供給される。
【0035】
シフト操作装置110は、たとえば運転席の近傍に配設され、複数のシフト操作位置へ操作される自動復帰式の操作子すなわち操作力を解くと元位置(M位置)へ自動的に復帰するシフトレバー112を備えている。また、シフト操作装置110は、パーキングロックを作動させるための自動復帰すなわちモーメンタリ式の押釦型のPスイッチ114をシフトレバー112の近傍に別スイッチとして備えている。
【0036】
シフトレバー112は、
図3に示されるように、縦方向に配列された3つの操作位置PshであるR操作位置、N操作位置、D操作位置、とそれに平行に配列されたM操作位置、B操作位置とへそれぞれ操作されるようになっており、シフト操作装置110は、シフトレバー112のシフト操作位置Pshに応じたシフトレバー位置信号をパーキングロック制御用コンピュータ108へ出力する。
【0037】
Pスイッチ114は、たとえば操作部材としての押釦への操作力を解くと押釦が元の位置へ自動的に復帰する自動復帰式すなわちモーメンタリ式の押釦型スイッチであって、ユーザにより押込み操作される毎にPスイッチ信号をパーキングロック制御用コンピュータ108へ出力する。また、このPスイッチ114にはP位置インジケータランプ115が内蔵されており、パーキングロック機構37のパーキングロックの作動状態を示すP位置信号に基づいて、パーキングロック状態である場合には、P位置インジケータランプ115が点灯される。
【0038】
シフト操作装置110のM操作位置は、シフトレバー112の初期位置(ホームポジション)であり、M操作位置以外の操作位置Psh(R、N、D、B操作位置)へシフト操作されていたとしても、運転者がシフトレバー112を解放すればすなわちシフトレバー112に作用する外力が無くなれば、バネなどの機械的機構によりシフトレバー112はM操作位置へ戻るようになっている。
【0039】
また、パーキングロック制御用コンピュータ108には、電源制御用コンピュータ120(PM−ECU120)から、Pスイッチ114の操作に拘わらず、車両電源OFF(Ready−OFF、レディーオフ)時にパーキングロック機構37をパーキングロック状態へ切替えるReady−OFF時オートPロック切替要求信号が供給される。電源制御用コンピュータ120は、たとえばドライバにより操作される自動復帰式すなわちモーメンタリ式押釦型の車両電源スイッチ122からのパワースイッチ操作信号が供給されたときキーが所持され且つブレーキオン状態Bonであるとき車両電源OFFから車両電源ONへ切り替える、少なくともブレーキオフ状態Boffであるときに車両電源をONからOFFへ切替える。電源制御用コンピュータ120には、上記の車両電源スイッチ122におけるスイッチ操作を表すパワースイッチ信号の他に、たとえば車速センサ116により検出された車速Vを表す信号、パーキングロック制御用コンピュータ108からパーキングロック機構37がパーキングロック状態にあるか非パーキングロック状態にあるかを表すPロック状態信号、常用ブレーキの作動を検出するための不図示のフットブレーキペダルが操作されたことを示すブレーキスイッチ124からのブレーキオン状態Bonを表すブレーキ操作信号などが供給される。電源制御用コンピュータ120は、車両電源OFF時にパーキングロック機構37を自動的に非パーキングロック状態からパーキングロック状態へ切り替えるためのオートパーキングロック(オートPロック)制御を開始する所定条件が成立しているか否かを判定する。電源制御用コンピュータ120は、パーキングロック機構37が非パーキングロック状態にあるときに、車両の電源状態がON状態で車速Vが所定車速Vr未満であり、且つ車両電源スイッチ122の操作により車両電源OFF状態への切替え要求を認識すると、上記所定条件が成立したと判定し、Ready−OFF時オートPロック切替要求信号をパーキングロック制御用コンピュータ108に出力する。
【0040】
図3のパーキングロック制御用コンピュータ108内にはその制御機能の要部を示す機能ブロックが示されている。パーキングロック制御用コンピュータ108は、手動操作パーキングロック制御部126、ドア操作パーキングロック制御部128、パーキングロック禁止部130、パーキングロックリジェクト履歴記憶部132およびパーキングロック許可部134を備えている。
【0041】
パーキングロック制御用コンピュータ108は、電動アクチュエータ46を駆動して、パーキングロック状態と非パーキングロック状態とに切換可能なパーキングロック機構37の作動を制御するパーキングロック機構の制御装置として機能する。手動操作パーキングロック制御部126は、Pスイッチ114の手動操作により入力されるPスイッチ信号、あるいは車両電源スイッチ122の手動操作により電源制御用コンピュータ120から入力されるReady−OFF時オートPロック切替要求信号に従って、Pロック許可車速Vp以下においてパーキングロック機構37をパーキングロック状態へ切り替える手動操作Pロック切替信号を電動アクチュエータ46へ出力して、パーキングロック位置(P位置)に制御軸64を回転駆動させることによりパーキングロック機構37をパーキングロック状態へ切り替える。ここで、Pロック許可車速Vpは、パーキングロック機構37のパーキングロック状態への切換えが許可される車速Vの上限値であり、予め実験的に定められている。また、オートパーキングロック制御の開始条件の1つである前記所定車速Vrは、Pロック許可車速Vpよりも大きい値であり、予め実験的に定められている。また、パーキングロック制御用コンピュータ108は、シフトレバー位置信号に応じて、ブレーキオンBon且つパーキングロック機構37がパーキングロック状態にある場合には、電動モータ48を回転駆動させることにより、制御軸64をシフトレバー位置信号に対応する非パーキングロック位置(NotP位置)に回動させ、パーキングロック機構37を非パーキングロック状態へ切り替える。なお、Pスイッチ114および車両電源スイッチ122は、本発明のパーキングロック操作装置に対応し、Pロック許可車速Vpが、本発明の所定車速に対応する。
【0042】
ところで、ドライバによりPスイッチ114あるいは車両電源スイッチ122の手動操作が行われた際の車速VがPロック許可車速Vpよりも大きく、パーキングロック機構37が実際にはパーキングロック状態に切り替わっていない状態におけるドライバの降車を防ぐために、車両のドアを開くドア開操作に基づいてパーキングロック機構37を自動的にパーキングロック状態へ切り替えるドア操作パーキングロック制御部128が備えられている。Pスイッチ114の操作時の車速VがPロック許可車速Vpよりも大きく、パーキングロック機構37が依然として非パーキングロック状態であることにドライバが気づかない場合がある。パーキングロック制御用コンピュータ108は、上記のように、ドライバにパーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替えの意図があった場合に、ドア開操作に基づいてパーキングロック機構37をパーキングロック状態へ切り替える。一方、パーキングロック制御用コンピュータ108は、ドライバの意図しないドアの開操作に基づくパーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替えを許可しない。
【0043】
パーキングロック禁止部130は、Pロック許可車速Vpを上回る状態でPスイッチ114あるいは車両電源スイッチ122が操作されたときに手動操作パーキングロック制御部126によるパーキングロック作動を禁止する。パーキングロック禁止部130は、Pスイッチ114の手動操作により供給されるPスイッチ信号あるいは、車両電源スイッチ122の手動操作によりオートパーキングロックを開始するための前記所定条件が成立されることにより電源制御用コンピュータ120から供給されるReady−OFF時オートPロック切替要求信号を取得すると、車速VがPロック許可車速Vp以下であるかを判定する。パーキングロック禁止部130は、車速VがPロック許可車速Vpよりも大きい場合には、パーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替えを禁止する手動操作Pロック禁止信号を手動操作パーキングロック制御部126に出力する。また、パーキングロック禁止部130は、パーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替えを禁止するとともに、Nモード以外の走行制御モードからNモードに切り換えるためのNモード切替指令信号を電動アクチュエータ46へ出力して、走行制御モードをNモードに切り換える。一方、パーキングロック禁止部130は、車速VがPロック許可車速Vp以下である場合には、上記手動操作Pロック禁止信号を手動操作パーキングロック制御部126に出力せず、手動操作パーキングロック制御部126によるパーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替えを許可する。
【0044】
パーキングロックリジェクト履歴記憶部132は、Pスイッチ114の手動操作によるPスイッチ信号あるいは車両電源スイッチ122の手動操作により、前記所定条件が成立することによるReady−OFF時オートPロック切替要求信号によるパーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替要求すなわちPモードへの切替要求があり、且つ走行制御モードがNモードにあるとの条件が満たされたか否かに基づいて、パーキングロック禁止部130により手動操作パーキングロック制御部126によるパーキングロック作動が禁止されたか否かを判定する。パーキングロックリジェクト履歴記憶部132は、上記条件が満たされた場合には、Pスイッチ114の手動操作に基づく、あるいは車両電源スイッチ122の手動操作に基づき車両の電源状態がレディーオフとされる際の、手動操作パーキングロック制御部126による電動アクチュエータ46を介したパーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替えすなわちパーキングロック作動が、パーキングロック禁止部130により禁止されたと判定し、パーキングロック禁止部130により禁止された、手動操作パーキングロック制御部126によるパーキングロック作動をパーキングロックリジェクト履歴(P切替操作リジェクト履歴)として記憶する。また、パーキングロックリジェクト履歴記憶部132は、たとえばPモードへの切替要求に応じて、手動操作パーキングロック制御部126によりパーキングロック機構37がパーキングロック状態へ切替えられた場合などの上記条件が満たされない場合には、パーキングロックリジェクト履歴を記憶しない。また、パーキングロックリジェクト履歴記憶部132は、シフトレバー112のR操作位置、N操作位置あるいはD操作位置への操作により車両がRモード、NモードあるいはDモードの走行モード状態となった場合には、それまで記憶していたパーキングロックリジェクト履歴をリセットする。言い換えれば、パーキングロックリジェクト履歴記憶部132は、車両が走行モード状態となるまでパーキングロックリジェクト履歴を記憶する。
【0045】
パーキングロック許可部134は、車速VがPロック許可車速Vp以下であり、且つパーキングロックリジェクト履歴記憶部132によりパーキングロックリジェクト履歴が記憶されているとの条件が満たされているか否かを判定する。パーキングロック許可部134は、上記条件が満たされている場合には、車両のドアの開操作に基づいたドア操作パーキングロック制御部128によるパーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替えを許可するドア操作Pロック許可信号をドア操作パーキングロック制御部128に出力する。また、パーキングロック許可部134は、上記条件が満たされていない場合には、ドア操作Pロック許可信号をドア操作パーキングロック制御部128に出力せず、ドア開操作時のドア操作パーキングロック制御部128によるパーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替えを許可しない。
【0046】
ドア操作パーキングロック制御部128は、車速VがPロック許可車速Vp以下であり、パーキングロックリジェクト履歴が記憶されている場合にパーキングロック許可部134から出力されるドア操作Pロック許可信号が供給された状態で、閉じられていたドアが開かれてドア開閉スイッチ118からのドア開状態Donを示すドア開信号がOFFからONに切り替わるドア開操作時に、パーキングロック機構37をパーキングロック状態に切り替えるドア開操作時オートPロック切替要求信号を電動アクチュエータ46に出力し、走行制御モードをNモードからPモードに切り替え、パーキングロック状態とする。また、ドア操作パーキングロック制御部128は、ドア開操作時にドア操作Pロック許可信号が供給されていない場合には、ドア開信号がOFFからONに切り替わるときにドア開操作時オートPロック切替要求信号を電動アクチュエータ46に出力せず、パーキングロック機構37をパーキングロック状態に切り替えない。
【0047】
これにより、たとえばPロック許可車速Vp以下で、DモードからRモードに切り換えてドアを開いて後方を確認する場合、あるいはPロック許可車速Vp以下で、Nモードにてドアを開いて降車する場合などのドライバがパーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替えを意図しない場合には、パーキングロックリジェクト履歴が記憶されないため、ドア開操作によりパーキングロックが作動しない。また、たとえば急停車時などの大きな車速Vの変化がある場合には、車速センサ116により検出される車速Vが実車速よりも大きく検出されることが生じやすい。このため、車速VがPロック許可車速Vpよりも大きい状態でPスイッチ114あるいは車両電源スイッチ122が手動操作されて、パーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替えがドライバにより意図されているにも拘わらず、手動操作パーキングロック制御部126によるパーキングロック作動が禁止されることが起こりやすい。しかしながら、このような場合にはパーキングロックリジェクト履歴が記憶されるため、車速Vが所定車速Vp以下であれば、ドライバの降車時のドア開操作によりパーキングロックが作動することから、ドライバ降車後に車両が動くことが防がれる。
【0048】
図4は、パーキングロック制御用コンピュータ108の制御作動の要部を説明するフローチャートである。パーキングロック禁止部130の機能に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する。)S1において、Pモード(Pレンジ)への切替要求があるか否かが判定される。S1の判定が肯定される場合には、S2が実行される。S1の判定が否定される場合には、S5が実行される。パーキングロックリジェクト履歴記憶部132の機能に対応するS2において、Pスイッチ114の手動操作によるPスイッチ信号あるいは、車両電源スイッチ122の手動操作により前記所定条件が成立することによるReady−OFF時オートPロック切替要求信号によるパーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替要求すなわちPモードへの切替要求があり、且つ走行制御モードがNモードにあるとの条件が満たされたか否かに基づいて、パーキングロック禁止部130により手動操作パーキングロック制御部126のパーキングロック作動が禁止されたか否かが判定される。S2の判定が肯定される場合には、パーキングロックリジェクト履歴記憶部132の機能に対応するS3において、パーキングロックリジェクト履歴が記憶されて、パーキングロックリジェクト履歴有りとされる。S3実行後、S5が実行される。S2の判定が否定される場合には、パーキングロックリジェクト履歴記憶部132の機能に対応するS4において、パーキングロックリジェクト履歴が記憶されずに、パーキングロックリジェクト履歴が無しとされる。また、パーキングロックリジェクト履歴が記憶された状態において、シフトレバー112のR操作位置、N操作位置、あるいはD操作位置への操作により車両が走行モード状態とされてS2の判定が否定される場合には、S4において、それまで記憶されていたパーキングロックリジェクト履歴がリセットされてパーキングロックリジェクト履歴が有りから無しとされる。S4実行後、S5が実行される。パーキングロック許可部134の機能に対応するS5において、パーキングロックリジェクト履歴が記憶された履歴有りの状態であり、且つ車速VがPロック許可車速(P入り許可車速)Vp以下であるか否かが判定される。S5の判定が肯定される場合には、S6が実行され、S5の判定が否定される場合には本フローチャートは終了させられる。ドア操作パーキングロック制御部128の機能に対応するS6において、車両のドア開操作が行われたか否かが判定される。S6の判定が肯定される場合には、S7が実行され、S6の判定が否定される場合には、本フローチャートは終了させられる。ドア操作パーキングロック制御部128の機能に対応するS7において、ドア開操作時にドア開操作時オートPロック切替要求信号が電動アクチュエータ46へ出力され、車両のドア開操作に基づいてパーキングロック機構37がパーキングロック状態へ切り替えられる。
【0049】
上述のように、本実施例のパーキングロック制御用コンピュータ108によれば、車両のドアが開かれるドア開操作に基づいてパーキングロック機構37をパーキングロック状態へ切り換えるドア操作パーキングロック制御部128と、車速VがPロック許可車速Vpを上まわる状態でPスイッチ114の手動操作によるPスイッチ信号あるいは車両電源スイッチ122の手動操作によりReady−OFF時のオートPロック制御を開始する前記所定条件が成立されて電源制御用コンピュータ120からのReady−OFF時オートPロック切替要求信号が入力されたときに、手動操作パーキングロック制御部126のパーキングロック作動を禁止するパーキングロック禁止部130と、前記パーキングロック禁止部130により禁止された手動操作パーキングロック制御部126のパーキングロック作動をシフトレバー112のR操作位置、N操作位置あるいはD操作位置への操作により車両が走行モード状態となるまでパーキングロックリジェクト履歴として記憶するパーキングロックリジェクト履歴記憶部132と、車速VがPロック許可車速Vp以下であり且つパーキングロックリジェクト履歴記憶部132によりパーキングロックリジェクト履歴が記憶されている場合に、ドア操作パーキングロック制御部128によるパーキングロック状態への切り換え動作を許可するパーキングロック許可部134と、を含む。このため、ドライバのPスイッチ114あるいは車両電源スイッチ122の手動操作に基づくパーキングロック状態への切替要求があり、車速VがPロック許可車速Vpを上まわる状態でPスイッチ114あるいは車両電源スイッチ122が操作されることによりパーキングロック作動が禁止されてパーキングロックリジェクト履歴が記憶されている場合には、ドア開操作によりパーキングロック機構37がパーキングロック状態に切り替えられる。これにより、ドライバの意図しないドア開操作によるパーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替えが抑制されるとともに、ドライバがパーキングロック状態への切替えを意図していた場合にドア開操作によるパーキングロック機構37のパーキングロック状態への切替えが実行される。
【0050】
また、本実施例のパーキングロック制御用コンピュータ108によれば、Pスイッチ114は、操作部材としての押釦を備え、その押釦への操作力を解くと押釦が元の位置へ自動的に復帰する自動復帰式の押釦型スイッチである。このため、車速VがPロック許可車速Vpよりも大きいときにPスイッチ114の押釦が押されて、手動操作パーキングロック制御部126のパーキングロック作動が禁止されることによりパーキングロック状態への切替えが行われない場合に、操作力が解かれることに伴いPスイッチ114の押釦は元の位置へ自動的に復帰し、Pスイッチ114を視認しただけではパーキングロック状態にあるか非パーキングロック状態にあるかが認識されにくいため、非パーキングロック状態であるにも拘わらずパーキングロック状態であるとのドライバの誤認が生じ易いが、記憶されたパーキングロックリジェクト履歴からドア開操作によりパーキングロック機構37がパーキングロック状態へ切り替えられる。これにより、自動復帰式の押しボタンスイッチであるPスイッチ114を備えた車両において、非パーキングロック状態でのドライバの降車が抑制される。