(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記人検出手段は人の居る方向と合わせ、人の高さを検知する機能を有し、前記制御手段は、吹出し空気を前記風向可変機構によって、前記人検出手段が検知した人の高さよりも上方に向かって吹くように制御して成る請求項1に記載の空気清浄機。
前記人検出手段は、それぞれ個別に人を検出可能な検出素子であって上下方向に並べて配置された複数の検出素子を備えて成るとともに前記センサ動作機構は水平回転動作を行う請求項3に記載の空気清浄機。
前記制御手段は、前記風向制御機能が終了された後、前記人検出手段により前回と異なる条件の人の居る方向及び当該人の高さが検出されたときに、検出された前記人の居る方向及び当該人の高さに基づいて前記風向制御機能を実行する構成とした請求項6に記載の空気清浄機。
前記制御手段は、前記風向制御機能が終了された後、前記吸込口の方向を水平方向に回転させて前記汚れ度合を検出し、閾値よりも大きい汚れ度合が検出されたときに、前記風向を水平方向において前記吸込口の方向に向けて風向を制御する構成とした請求項6に記載の空気清浄機。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。なお、各図中において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化ないし省略する。また、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1から
図7を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1による空気清浄機を示す斜視図である。また、
図2は、
図1中の空気清浄機を示す縦断面図である。これらの図に示すように、本実施の形態の空気清浄機1は、床面設置型の空気清浄機として構成されている。空気清浄機1は、ケーシング2、台座3、吸込口4、吹出口5、送風手段6、風路7A,7B、清浄化手段8、可動ルーバ9、ルーバ駆動部10、開口可変機構11、開口駆動部12、整流機構13、整流駆動部14、水平回転機構15等を備えている。
【0011】
ケーシング2は、例えば略四角形の角筒状に形成され、部屋の床面に設置される台座3により水平方向に回転可能な状態で支持されている。ケーシング2の内部空間のうち、吸込口4から吹出口5に至る空間には、
図2に示すように、清浄化手段8、送風手段6及び風路7が上流から下流に向けて順に配置されている。なお、以下の説明では、ケーシング2の側面部のうち、主として室内の空間に面して配置される部分を正面部と表記し、正面部と対向する部分を背面部と表記する。また、ケーシング2の正面部が面した方向を前方と表記し、前方からみたケーシング2の左右両側に対応する方向を左右方向と表記し、更に、場合によっては鉛直方向を上下方向と表記する。空気清浄機1は、例えば部屋の何れかの壁に近い位置で床面上に設置され、ケーシング2の背面部を当該壁面に向けると共にケーシング2の正面部を室内の空間に向けた状態で使用される。
【0012】
吸込口4は、室内の空気をケーシング2の内部に吸込むための開口部であり、例えばケーシング2の正面部に設けられている。吹出口5は、ケーシング2の内部に吸込まれた空気を外部に吹出すための開口部であり、例えばケーシング2の上面部に開口した2個の吹出口5A,5Bにより構成されている。2個の吹出口5A,5Bは、ケーシング2の左右方向に沿って互いに並行に延びている。なお、以下の説明では、吹出口5A,5Bを特に区別しないときには、これらを単に「吹出口5」と表記する場合がある。また、吹出口5から吹出す空気は「吹出し空気」と表記する場合がある。なお、
図2には吹出し空気の最大風速箇所の風向ベクトル50を示している。風向ベクトル50は鉛直方向ベクトル50aと前後方向ベクトル50b、図示はしていないが左右方向ベクトル50cの合成から成る。なお、
図2の場合は吹出口5A、5Bの吹出し空気が合成されているため、風向ベクトル50は一か所として示しているが、吹出口5A、5Bそれぞれにおいて風向ベクトル50が存在する。また、本発明では、吸込口4を、ケーシング2の背面部、側面部、下面部等に配置してもよいし、吹出口5を、ケーシング2の正面部、側面部等に配置してもよい。さらに、ケーシング2には、1個のみの吹出口5を配置したり、3個以上の吹出口5を配置してもよい。即ち、吹出口5の位置又は個数は実施の形態1に限定されるものではない。
【0013】
送風手段6は、吸込口4からケーシング2の内部に空気を吸込んで当該空気を吹出口5から吹出すもので、装置の本体部分であるファン6Aと、ファン6Aを回転させる電動式のモータ6Bとを備えている。ファン6Aの回転数は、制御手段23により制御されるもので、当該回転数に応じて吹出し空気の風量が変更される。ケーシング2の内部には、
図2に示すように、例えば2個の送風手段6が前後方向に位置をずらした状態で、上下方向に並べて配置されている。
【0014】
また、ケーシング2の内部には、送風手段6と吹出口5とを接続し、送風手段6から吹出された空気を吹出口5に案内する風路7が設けられている。風路7は、ケーシング2の内部に設けられた隔壁2Aにより、正面側の風路7Aと背面側の風路7Bとに分割されている。2つの風路7A,7Bは、ケーシング2の内部で上下方向に伸長し、例えば水平断面で見ると、前後方向に並列に配置されている。
【0015】
風路7A,7Bの下部側は、それぞれ異なる送風手段6に接続され、風路7A,7Bの上部側は、それぞれ吹出口5A,5Bに接続されている。即ち、空気清浄機1は、一方の送風手段6から風路7Aを介して吹出口5Aに到達する第1の送風系統と、他方の送風手段6から風路7Bを介して吹出口5Bに到達する第2の送風系統とを備えており、これらの送風系統では、風量、風向及び風速を別々に制御することができる。
【0016】
このように、実施の形態1では、ケーシング2の内部に隔壁2Aを配置し、2個の風路7A,7Bを前後方向に並列に形成している。また、2個の送風手段6のうち、少なくとも
図2中の上側に位置する一方の送風手段6は、ファン6Aの内部にモータ6Bの一部が埋込まれたモータ内蔵型の送風手段により構成されている。これにより、ケーシング2の内部に2つの送風系統を効率よく形成しながら、空気清浄機1の設置面積を小型化することができ、小型で高性能な空気清浄機1を実現することができる。
【0017】
清浄化手段8は、ケーシング2の内部を通過する空気を清浄化するもので、例えば吸込口4と送風手段6との間に設けられている。ここで、「清浄化」とは、例えば空気中に浮遊する塵埃、煙、花粉、ウイルス、カビ、菌、アレルゲン、臭気分子等からなる汚染物質を除去することを意味するもので、具体的には、これらの汚染物質を捕集、不活性化、吸着又は分解する動作を意味している。本実施の形態の清浄化手段8は、このような清浄化が可能な装置として、例えば空気中の塵埃等を捕集する集塵フィルタ、臭気成分を吸着する脱臭フィルタ、電極に高電圧を印加することで汚染物質を除去及び分解する電圧印加デバイス等により構成されるか、またはこれらの組み合わせにより構成されている。なお、
図4では電圧印加デバイスを想定し、清浄化手段8が制御手段23に電気的に接続され、制御されるように示している。しかしながら、清浄化手段8は脱臭フィルタや集塵フィルタ等、電気的に制御が出来ない部材で構成される場合の方が一般的であり、清浄化手段8と制御手段23は必ずしも電気的に接続されるものでは無く、清浄化手段8は制御手段23によって制御されるとは限らない。本記載は清浄化手段8が電気的な制御によるものに限定するものでは無く、制御手段23によって制御される事に限定するものでも無い。基本的には空気を汚染する何らかの物質を捕集、不活化、分解等の手段で浄化する機能があれば清浄化手段8の範疇に入るものとする。
【0018】
空気の流れ方向において清浄化手段8の上流側には、ケーシング2の内部に吸込んだ汚染物質の量を検知する汚れ検出装置20が設けられている。汚れ検出装置20は、例えば埃センサ、ガスセンサ、風速センサ等により構成されるか、または、これらのセンサを組合わせた複合型センサにより構成されている。汚れ検出装置20によれば、空気清浄機1により特定の方向に空気を吹出し、この方向から還流してくる空気中の汚染物質の量を検出することにより、特定の方向における空気の汚れ度合を検出することができる。なお、汚れ検出装置20は、本実施の形態において、汚れ度合の指標となる情報を検出する汚れ度合情報検出手段の具体例を構成している。
【0019】
図3は、可動ルーバ及び整流機構の作動状態(a),(b)を示す
図1中の要部拡大図である。可動ルーバ9は、
図2及び
図3に示すように、吹出し空気の風向を上下方向に揺動させるもので、ケーシング2の吹出口5A,5Bに1個ずつ設けられている。詳しく述べると、可動ルーバ9は、例えばケーシング2の左右方向に延在する細長い平板等により形成されている。そして、可動ルーバ9の基端側は、吹出口5A,5Bにそれぞれ設けられたルーバ駆動部10を介して個々の吹出口5A,5Bに取付けられ、可動ルーバ9の先端側は、ルーバ駆動部10により上下方向に揺動可能となっている。また、2個の可動ルーバ9は、吹出口5A,5Bから吹出す空気の風向をそれぞれ個別に変更可能に構成されている。なお、本実施の形態では、2個の可動ルーバ9を備える場合を例示したが、本発明は、吹出口5の個数に応じて1個のみまたは3個以上の可動ルーバ9を備える構成としてもよい。
【0020】
可動ルーバ9は、上下方向に揺動することにより、当該揺動角に応じて吹出し空気の風向を前方と上方との間で上下方向にスイングさせる。風向の仰角は、可動ルーバ9の仰角とほぼ等しい角度に変更される。なお、本明細書において、「仰角」とは、床面と平行な水平方向を基準として、上方に傾斜した角度を意味している。即ち、仰角=0°は水平方向を表し、仰角=90°は鉛直方向の真上を表している。
【0021】
ルーバ駆動部10は、可動ルーバ9を揺動可能に支持する支軸と、この支軸を回転させるアクチュエータ(図示せず)とを備えている。可動ルーバ9及びルーバ駆動部10は、吹出し空気の風向を上下方向に変更することが可能な風向可変機構の具体例を構成している。開口可変機構11は、
図2に示すように、例えば片方の可動ルーバ9と前後方向で対向する位置に設けられ、当該可動ルーバ9と協働して吹出口5Aの開口面積を変更するものである。なお、
図1及び
図3では、後述の整流機構13を明示するために、開口可変機構11の図示を省略している。また、
図2では、一方の吹出口5Aのみに開口可変機構11を配置する場合を例示したが、本発明はこれに限らず、他方の吹出口5Bのみ、または両方の吹出口5A,5Bに開口可変機構11を配置する構成としてもよい。
【0022】
開口可変機構11は、例えばケーシング2の左右方向に延在する細長い平板等により形成されている。開口可変機構11の基端部は、ルーバ駆動部10とほぼ同様の構成を有する開口駆動部12を介して吹出口5Aに取付けられている。開口可変機構11の先端部は、開口駆動部12により前後方向に揺動され、可動ルーバ9に対して近接及び離間するように変位する。これにより、開口可変機構11は、吹出口5Aの開口面積を増減させ、当該開口面積に応じて吹出し空気の風速を変更することができる。即ち、開口可変機構11及び開口駆動部12は、吹出し空気の風速を変更することが可能な送風変更手段の具体例を構成している。なお、開口可変機構11は、吹出口5ではなく風路7A,7Bの一方または両方に配置し、風路7の開口面積(つまり流路面積)を変更する機構としてもよい。
【0023】
整流機構13は、可動ルーバ9により設定された風向の仰角を保持した状態で、当該風向を左右方向に調整するものである。整流機構13は、
図2及び
図3に示すように、例えば略三角形状(又は扇形状)のフィンにより形成され、各可動ルーバ9の受風面側から突出すると共に、左右方向に間隔をもって複数個配置されている。そして、個々の整流機構13は、
図3(a),(b)に示すように、左右方向に揺動し、当該揺動角に応じて吹出し空気の風向を左右方向に変化させる。
【0024】
また、整流機構13の揺動動作は、例えば可動ルーバ9に設けられた整流駆動部14(
図4にのみ図示)により実行される。すなわち、整流機構13及び整流駆動部14は、吹出し空気の風向を左右方向に変更することが可能な風向可変機構の具体例を構成している。なお、本発明では、必ずしも整流機構13を設ける必要はない。また、整流機構13は、例えば可動ルーバ9の左右両端側にのみ1個ずつ配置する構成としてもよい。
【0025】
水平回転機構15は、
図1及び
図2に示すように、ケーシング2と台座3との間に設けられ、ケーシング2を台座3上で少なくとも左右方向に回転させるものである。吹出口5の向きは、ケーシング2と共に水平方向に変化するので、水平回転機構15は、吹出し空気の風向を左右方向に変更することが可能な風向可変機構の具体例を構成している。また、同様に、吸込口4の向きについても、ケーシング2と共に水平方向に変化するので、水平回転機構15は、吸込口4を水平方向に回転させる吸込口水平回転機構の具体例を構成している。なお、前述するように、本実施の形態1は、ファンを二つ上下方向に並べる構造とすることで、ファン一つで駆動する同風量の装置よりも正方形や円形に成型しやすくし、設置面積を小型化している。特に、正方形や円形は水平方向に回転動作する際に必要な設置面積をも小型化する事が可能であり、水平回転機構15を稼働させる上で最適な形状となっている。これにより、水平回転機構15を有していても、家具等の間に設置し易く、部屋の状況に応じて使用者が自由に配置換えを出来、汎用性がある構成を実現している。
【0026】
また、ケーシング2の正面上部側には人検出装置21が設けられている。人検出装置21は、室内に存在する人を検出する人検出手段として機能するものである。人検出装置21は、赤外線を利用して人を検出する人検出センサとしての赤外線センサ40と、当該赤外線センサ40の向きをケーシング2に対して水平方向(つまり左右方向の両側)に回転駆動させるセンサ水平回転機構としてのセンサ稼動部44とを備えている。なお、人検出装置21の詳細については後述する。
【0027】
(制御系統)
次に、
図4等を参照して、空気清浄機1の制御系統について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1による空気清浄機の制御系統を示す構成図である。空気清浄機1は、赤外線センサ40及び汚れ検出装置20を含むセンサ系統と、空気清浄機1を操作するための操作部22と、空気清浄機1の運転状態を制御する制御手段23とを備えている。
【0028】
一方、操作部22は、空気清浄機1のユーザが各種の設定及び運転の切換を行うときに操作するもので、空気清浄機1を起動及び停止するための電源スイッチと、空気清浄機1の運転状態等を表示する表示部とを備えている。また、操作部22は、制御手段23に対して双方向の通信が可能な状態で接続されている。
【0029】
制御手段23は、空気清浄機1の運転状態を制御するもので、図示しない演算処理装置、入出力ポート及び記憶回路等を備えている。制御手段23の入力側には、
図4に示すように、赤外線センサ40及び汚れ検出装置20を含むセンサ系統が接続されている。制御手段23の出力側には、送風手段6、清浄化手段8、ルーバ駆動部10、開口駆動部12、整流駆動部14、水平回転機構15、センサ稼動部44等を含むアクチュエータが接続されている。そして、制御手段23は、センサ系統の出力に基いてアクチュエータを制御することにより、空気清浄機1を作動させる。
【0030】
次に、空気清浄機1の基本的な動作について説明する。空気清浄機1の作動時には、まず、制御手段23により送風手段6及び清浄化手段8が駆動される。これにより、ケーシング2の吸込口4から内部に空気が吸込まれ、この空気は、清浄化手段8により清浄化される。そして、清浄化された空気は、各送風手段6及び風路7A,7Bを経由して吹出口5A,5Bに到達し、吹出口5A,5Bから外部に送風される。このとき、本実施の形態の空気清浄機1の制御手段23は、人検出装置21を用いて室内に居る人の方向及び当該人の高さを検出する人検出制御、及び検出された人の頭上のエリアに吹出風が送風されるように可動ルーバ9、開口可変機構11、整流機構13、水平回転機構15等を駆動する風向制御を行う。以下、人検出装置21の構成、人検出制御、及び風向制御について順に説明する。
【0031】
(人検出装置の構成)
次に、
図5から
図7を参照して、人検出装置21の構成について説明する。
図5は、赤外線センサの構造を模式的に示す断面図である。
図6は、赤外線センサを構成する受光素子の配置及び各受光素子の検出範囲を示す斜視図である。
図7は、センサ稼動部による赤外線センサの回転動作(a),(b),(c)を示す説明図である。上述したように、人検出装置21は、赤外線センサ40とセンサ稼動部44とを備えている。赤外線センサ40は、検出対象物から発生する赤外線を検出するもので、
図5に示すように、複数の受光素子41a〜41hにより構成された多素子受光ユニット41と、集光レンズ42とを備えている。なお、
図5では、多素子受光ユニット41を8個の受光素子41a〜41hにより構成する場合を例示した。しかし、本発明において、受光素子の個数は8個に限定されるものではなく、多素子受光ユニット41は、7個以下または9個以上となる任意の個数の受光素子により構成してもよい。
【0032】
各受光素子41a〜41hは、赤外線の受光及び人の検出をそれぞれ個別に実行可能な検出素子であり、例えば上下方向に直線状に並べて配置されている。これにより、赤外線センサ40は、室内の温度を互いに高さが異なる8個のエリアに区分して検出する機能を備えている。集光レンズ42は、多素子受光ユニット41に対して赤外線を効率よく集光するもので、例えば凸レンズにより構成されている。集光レンズ42は、多素子受光ユニット41のZ方向上部に配置してもよい。赤外線センサ40は、個々の受光素子41a〜41hにより検出対象物の温度を検出し、例えば室内の熱画像データに対応する信号を出力する。
【0033】
図6は、赤外線センサの各受光素子の配置及び配光視野角を示す斜視図である。この図に示すように、各受光素子41a〜41hの配光視野角43a〜43hは、互いに大きさが等しい四角形状のエリアとして設定されている。また、1個の受光素子41a(41b〜41hでもよい)の配光視野角43a(43b〜43h)は、例えば上下方向における縦配光視野角が7°に設定され、左右方向の横配光視野角が8°に設定されている。
【0034】
配光視野角43a〜43hを合わせた全体の配光視野角43は、上下方向に細長いエリアとして設定され、配光視野角43の上限である視野角上限43maxと、配光視野角43の下限である視野角下限43minとを有している。なお、本発明では、配光視野角43a〜43hを必ずしも同じ形状、同じ大きさにする必要はなく、縦配光視野角及び横配光視野角の具体的な値についても、上記例示に限定されるものではない。
【0035】
センサ稼動部44は、赤外線センサ40の向きをケーシング2に対して水平方向に回転可能に構成されている。センサ稼動部44は、例えば、赤外線センサ40の回転駆動角度を正確に調整可能なステッピングモータが用いられ、上述した水平回転機構15の動作とは独立して制御可能に構成される。
図7は、センサ稼動部による赤外線センサの回転動作を示す説明図であり、(a)は右端部へ回転駆動された場合を、(b)は中央部に回転駆動された場合を、そして(c)は左端部へ回転駆動された場合をそれぞれ示している。この図に示すように、人検出装置21は、まず、センサ稼動部44により赤外線センサ40の向き(検出方向)を左右方向に回転駆動する。より具体的に述べると、赤外線センサ40の向きは、
図7中(a)に示す右端部から(b)に示す中央部を経由して(c)に示す左端部まで回転駆動される。そして、(c)に示す左端部に到達すると、回転方向を反転して(c)に示す左端部から(b)に示す中央部を経由して(a)に示す右端部に戻される。人検出装置21はこのような動作を繰り返し行うことにより、室内の温度検出対象範囲を左右方向に走査して温度を順に検出する。
【0036】
(人検出制御)
次に、制御手段23により実行される人検出制御について説明する。制御手段23は、人検出装置21を用いて室内の壁又は床の熱画像データを取得し、当該熱画像データに基づいて室内に在室する人の検出を行う。より詳しくは、先ず、制御手段23は、センサ稼動部44を予め定められた可動角度(ここでは1.6°とする)左右方向に可動させる。これにより、赤外線センサ40は1.6°回転駆動される。次に、赤外線センサ40を予め定められた待機時間(例えば0.1〜0.2秒)停止させる。そして、この間に赤外線センサ40の8個の受光素子41a〜41hによって熱画像データがそれぞれ検出され、制御手段23に取り込まれる。待機時間の経過後、制御手段23は、再びセンサ稼動部44を可動角度(1.6°)左右方向に可動させる。そして、上記同様の動作によって熱画像データが制御手段23に取り込まれる。このような処理が可動角度1.6°毎に94箇所において行われる。この場合、赤外線センサ40の左右方向の可動範囲(すなわち左右方向に回転駆動する角度範囲)は、約150.4°となる。
【0037】
このような人検出装置21の構成によれば、赤外線センサ40の左右方向の可動範囲において、熱画像データを時間毎に比較することにより、室内空間内に現れた人の方向及び高さを検出することができる。また、本実施の形態の人検出装置21によれば、赤外線センサ40の8個の受光素子41a〜41hによって各配光視野角43a〜43hのエリアの熱画像データがそれぞれ取り込まれるので、何れの配光視野角のエリアに人の存在が検出されたかによって人体の高さについても高精度に検出することが可能となる。更に、制御手段23は、センサ稼動部44を水平回転機構15の動作とは独立して制御するので、後述する風向制御に影響を与えることなく赤外線センサ40の左右方向の向きを回転駆動させることができる。
【0038】
なお、人検出装置21は、必ずしも赤外線センサ40により構成する必要はなく、室内に居る人の方向及びその高さを検出可能なセンサであれば、汚れセンサ、動体センサ、距離センサ、湿度センサ、又は照度センサ等、またはこれらのセンサと赤外線センサ40とを組み合わせることにより構成してもよい。
【0039】
ここで、汚れセンサ(埃センサ)は、半導体素子、光学素子等により構成され、空気中の塵埃、煙、花粉等の濃度を検出する。距離センサは、例えば超音波センサ、光センサ、画像認識センサ等の非接触式センサにより構成され、音波または電磁波を利用して、空気清浄機1と検出対象物との距離を検出する。検出対象物には、室内における壁、天井、家具、人、動物等が含まれる。照度センサは、照度の変化に基づいて、室内における人及び動物の有無、動き等を検出する。また、湿度センサの出力は、上記各センサの感度を湿度に応じて補正するときに用いられる。なお、上記各センサの組合わせは一例に過ぎず、本発明は、上記各センサの組合わせによる人検出手段に限定されるものではない。
【0040】
(風向制御)
次に、制御手段23により実行される風向制御について説明する。制御手段23は、人検出装置21の赤外線センサ40により取得された熱画像データに基づいて、室内に人が存在すると判断した場合に、風向制御を実行する。風向制御では、先ず、空気清浄機1の正面部を人の方向に向けるために必要な水平方向の回転角度θ1を算出する。次に、制御手段23は、水平回転機構15によりケーシング2を回転角度θ1だけ回転させる。これにより、吹出口5は、水平方向において人がいる方向に向いた状態となる。また、風向ベクトル50の少なくとも前後方向ベクトル50bは人の方向を向いた状態となる。
【0041】
次の処理では、上下方向における可動ルーバ9の仰角θ2、即ち、風向の仰角θ2を、風向が人の高さよりも上方の送風エリアに向くように設定する。ここでは、例えば、受光素子41a〜41hのうち受光素子41f〜41hにおいて人を検知した場合、受光素子41a〜41eの部分を送風エリアとする。そして、この送風エリアに対して送風可能な可動ルーバ9の仰角θ2を算出し、可動ルーバ9を駆動する。これにより、室内に在室する人の頭上に吹出風が送風される。即ち、風向ベクトル50の鉛直方向ベクトル50aは人に向かないように設定され、各ベクトル成分50a、50b、50cの合計である風向ベクトル50は人の方向を向かないようになる。なお、ここでは鉛直方向ベクトル50aを動かして、前後方向ベクトル50bを人の方向に向かせつつ合計の風向ベクトル50を人に向かせないようにしているが、左右方向ベクトル50cを変更しても良いし、50a、50cの両方を変更しても良い。即ち、前後方向ベクトル50bは人の方向を向きつつも、風向ベクトル50は人の方向を向いていない事が重要である。
【0042】
可動ルーバ9の仰角θ2は、各受光素子41a〜41hのうち、人体を検知した受光素子の数である人体検知素子数Nと、風量Q及び風速Vで送風した際の気流の広がり角度Δθ2のうち、下側の広がり角度Δθ2
−(Q,V)と、視野角下限43minを水平から下方向へ傾斜させた傾斜角θ3を用いて、次式(1)により決定することができる。
θ2≧7×N−θ3+Δθ2
−(Q,V) ・・・(1)
【0043】
なお、上記風向制御において、可動ルーバ9の仰角θ2は上式(1)の右辺の値(固定値)としてもよいし、また、
上式(1)の右辺の値以上となる範囲で変動させて、可動ルーバ9を送風エリア内において揺動させることとしてもよい。
【0044】
また、上記風向制御により人の上方の送風エリアに送風が行われている間、制御手段23は、汚れ検出装置20を用いて、吸込口4から吸い込まれる空気の汚れ度合を常に検出している。そして、制御手段23は、検出された汚れ度合が閾値以下となったか否かを判定する。ここで、閾値は、空気が清浄されたことを示す汚れ度合の閾値として予め設定された値が用いられる。その結果、検出された汚れ度合が閾値以下となったと判定された場合には、現在の風向のエリアの空気は十分に清浄化されたと判断できるので、当該風向に対する風向制御を終了する。次に、制御手段23は、上記人検出制御によって現在送風が向けられている人とは異なる人が室内に在室しているか否かを判定する。その結果、室内に前回と異なる条件の人が居ると判定された場合には、次に、当該異なる条件の人を対象とした風向制御を実行する。これにより、室内に居る人の方向に対して順次送風を行うことができる。
【0045】
一方、室内に異なる人が在室していないと判定された場合には、送風を継続しつつ水平回転機構15を駆動させて吹出し空気の風向を変更し、汚れ検出装置20によって閾値よりも大きな汚れ度合が検出される風向があるか否かを確認する。その結果、汚れ度合が閾値よりも大きな値となる風向が存在する場合には、当該風向に向けて重点的に吹出し空気の送風を行う第二風向制御を行う。一方、汚れ度合が閾値よりも大きな値となる風向が存在しない場合には、空気清浄機1の水平回転機構15を初期位置に戻して風量を下げた運転を行う。このような制御を行うことにより、室内に人が居ない場合であっても汚れ度合が大きいエリアの空気を重点的に清浄化することができる。
【0046】
ところで、上述した風向き制御では、人検出制御によって検出された在室している人の方向及び人の高さに基づいて、風向を調整することとしているが、在室している人が室内を移動することも想定される。そこで、人検出制御は常に動作させて在室している人の動きを常に監視し、在室している人が移動した場合にはそれを受けて風向制御の送風エリアも変更することが望ましい。また、在室している人数が途中で増えた場合には、それぞれの人の方向に送風した場合の汚れ度合を汚れ検出装置20を用いて検出し、検出された汚れ度合が大きい方の人の方向から順に優先的に送風を行うことが望ましい。なお、複数の人が近傍に固まっている場合はそこを人エリアとして認識し、人と人との間を狙って送風する事で、人エリア全体を一括して空清する方が良い場合も有る。即ち予め送風する風で清浄化可能な範囲を測定しておき、人と人との距離感に応じた送風条件を定める事で、水平回転する動作回数を減らし、無駄を減らした効率の良い空気清浄が出来る。これにより、在室している人が移動した場合、または在
室している人数が増えた場合であっても、在室する人に対して不快感を与えることなく、人の周囲の空気を効率的に清浄化することが可能となる。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態の空気清浄機によれば、吹出口5から吹出される清浄空気を直接人に当てずに且つ人の方向に送風させることができる。この際、吹出風は高速であるため、人の居るエリアから空気清浄機1の吸込口4への誘引気流が発生する。また、吹出風は清浄された空気であるため、周囲との濃度勾配による気流も発生する。これにより、人に与える吹かれ感を抑制しつつ、人の居るエリアの埃を吸込口4へ有効に誘引して人の周囲を優先的に浄化することができる。
【0048】
また、本実施の形態の空気清浄機によれば、風向制御において、水平回転機構15によって左右方向の風向を調整し、可動ルーバ9によって上下方向の風向を調整することとしている。これにより、風向制御を高精度に行うことができるので、在室している人に対して常に同じ効果を安定して提供することが可能となる。
【0049】
尚、風向制御では、整流機構13により風向を左右方向に調整することもできる。但し、整流機構13による風向の調整は人の真上へ精度よく送風することが難しく左右方向にズレが生じ易い。また、整流機構13による風向の調整は、特に左右端へ送風する際の圧力損失が大きいという特徴もある。しかしながら、整流機構13は水平回転機構15よりも制御応答性が優れている。このため、左右方向の風向制御においては、これらの機構の互いの利点を勘案しつつ適宜各機構の動作を組み合わせて実行すればよい。
【0050】
また、本実施の形態の空気清浄機によれば、整流機構13を左右別の方向へ向けることで室内の左右方向に広がった気流を発生させることができる。これにより、複数人の人が在室し、人のいるエリアが広い場合にもその頭上への送風を広く網羅することができる。
【0051】
また、本実施の形態の空気清浄機によれば、人検出装置21による人検出制御が風向制御とは個別に動作するように構成されている。このため、風向を変化させずに広い範囲で人を検知することができる。また、風向制御の実行中に常に人を見張ることができるので、人の動作に対して柔軟に対応することができる。
【0052】
なお、人検出装置21による人検出制御では、センサ稼動部44による赤外線センサ40の回転駆動に水平回転機構15によるケーシング2の回転駆動を組み合わせることとしてもよい。このような動作によれば、二軸にて赤外線センサ40を可動させることができるので、同一箇所の画像を異なる方向から得ることができる。これにより、在室している人の方向及びその高さ情報だけでなく位置情報も取得することができるので、風向制御の更なる精度向上が期待できる。
【0053】
また、本実施の形態の空気清浄機では、吸込口4がケーシング2の正面に配置されているため、水平回転機構15によって吸込口4を人の方向に向けつつ風向を人の方向に調整することができる。これにより、人を中心とした気流、すなわち吹出口5から吹き出されて人の頭上を通過し、壁伝いに背面を通過し、足元をすり抜けて吸込口4へ吸い込まれる気流の形成が容易となるので、人の周囲の埃を効率よく誘引することが可能となる。
【0054】
なお、本実施の形態の空気清浄機では、吸込口4がケーシング2の正面に配置されているが、吸込口4がケーシング2の正面に配置されていない態様も想定される。そこで、このような態様の場合には、水平回転機構15の動作に整流機構13の動作を組み合わせて風向制御を実行することができる。より詳しくは、水平回転機構15によって吸込口4を人の居る方向に向け、更に整流機構13によって風向を左右方向において人の居る方向へ向けるように制御すればよい。これにより、吸込口4がケーシング2の正面に配置されていない場合であっても、人を中心とした気流を有効に発生させることができる。
【0055】
また、本実施の形態の空気清浄機では、汚れ検出装置20によって吸込み空気の汚れ度合を検出可能に構成されている。在室している人の周囲を浄化しても、汚れの発生源が別にある場合には室内が清浄化されたとはいえない。また、人が動くときに、動いた先が浄化されて居なければ快適性を保持することはできない。汚れ検出装置20と人検出装置21との連動はこれらの課題を解決する方法で、この動作により人が動いた先でも快適を保持することが可能となる。即ち、先ずは人を検知して人の周囲を浄化する事が必要だが、人の周囲の清浄度が所定の状態よりも改善された場合は、人が居ない方向へも向いて、汚れ検出装置20の値に応じ人以外の空間全体を浄化するように制御されて成る事が望ましい。
【0056】
ところで、人検出装置21では、例えば人が椅子等に座っている場合に、足元を検知することができないことが想定される。また、人検出装置21では、例えば家具に体が隠れてしまう場合には、誤って人が居ないと判断してしまうことが想定される。このような人検出装置21による誤検出があると、意図する風向制御が行われずに空気清浄動作を効率よく行うことができないおそれがある。そこで、本実施の形態1の空気清浄機では、家の間取り又は障害物に関する室内情報を入力する手段を備える構成としてもよい。より詳しくは、例えば室内の家具、窓又は扉の位置、又は部屋の広さ等の室内情報を入力しておく室内情報取得手段を備え、この入力された情報を用いて風向制御における風向を補正することとしてもよい。
【0057】
なお、上述した室内情報取得手段は、データを直接入力する形態に限らず、例えば、人検出装置21に超音波センサ等を合わせて持たせることとし、間取り情報をセンシングする構成でもよい。また、公知の通信手段によって、スマートフォン又はパソコン等の外部機器と連動可能な構成とし、これらの外部機器から通信によって間取り情報を取得する形態でもよい。また、通信手段には、他の製品からのセンシング情報又は動作情報、位置情報を受信可能な機能を持たせることが望ましい。これにより、例えばエアコンにて高い位置から得た人情報を取得し、家具に隠れた人を見つけるような動作が可能となる。また、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、又はTV等の動作情報又は位置情報を取得し、人以外の熱源を予め把握しておくことで、誤検知を防止することも可能となる。