特許第6249104号(P6249104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249104
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】非可逆回路素子
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/383 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   H01P1/383 A
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-540122(P2016-540122)
(86)(22)【出願日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】JP2015069390
(87)【国際公開番号】WO2016021352
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2016年11月24日
(31)【優先権主張番号】特願2014-159630(P2014-159630)
(32)【優先日】2014年8月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中池 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 礼滋
【審査官】 岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/168771(WO,A1)
【文献】 実開昭56−167617(JP,U)
【文献】 特開昭49−075049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/383−1/387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流磁界が印加されるフェライトに第1中心導体、第2中心導体及び第3中心導体をそれぞれ絶縁状態で交差させて配置し、
前記第1中心導体の一端を第1ポート、前記第2中心導体の一端を第2ポート、前記第3中心導体の一端を第3ポートとし、
前記第1ポートは第1端子に接続され、前記第2ポートは第2端子に接続され、前記第3ポートは第3端子に接続され、
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体のそれぞれの他端は互いに接続されるとともにグランドに接続され、
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体に対して容量素子がそれぞれ並列に接続され、
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体のそれぞれに並列に容量が設けられ、
前記第1中心導体に並列に設けられた前記容量は、前記第1ポートとグランドとの間に接続されており、
前記第2中心導体に並列に設けられた前記容量は、前記第2ポートとグランドとの間に接続されており、
前記第3中心導体に並列に設けられた前記容量は、前記第3ポートとグランドとの間に接続されている、
可逆回路素子。
【請求項2】
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体のそれぞれに設けられた前記容量と、前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体のそれぞれに対して並列に接続された前記容量素子とは、並列に接続されていること、を特徴とする請求項1に記載の非可逆回路素子。
【請求項3】
直流磁界が印加されるフェライトに第1中心導体、第2中心導体及び第3中心導体をそれぞれ絶縁状態で交差させて配置し、
前記第1中心導体の一端を第1ポート、前記第2中心導体の一端を第2ポート、前記第3中心導体の一端を第3ポートとし、
前記第1ポートは第1端子に接続され、前記第2ポートは第2端子に接続され、前記第3ポートは第3端子に接続され、
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体に対して容量素子がそれぞれ並列に接続され、
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体のそれぞれに直列に容量が設けられ、
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体のそれぞれの他端は、前記直列に設けられたそれぞれの容量を介して互いに接続されるとともに、グランドに接続されている、
非可逆回路素子。
【請求項4】
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体のそれぞれに直列に設けられた前記容量とグランドとの間に、直列に接続されたインダクタ素子と容量素子とが接続されていること、を特徴とする請求項3に記載の非可逆回路素子。
【請求項5】
前記第1端子と前記第2端子との間にいま一つの容量素子が直列に接続されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の非可逆回路素子。
【請求項6】
前記フェライトの表裏面に複数の導電体層及び絶縁層が積層されており、
前記導電体層にて前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体が形成されているとともに、前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体のそれぞれの他端がいま一つの導電体層を介してグランドに接続されていること、
を特徴とする請求項1に記載の非可逆回路素子。
【請求項7】
前記フェライトと前記導電体層と前記絶縁層とで積層体が形成されており、
前記第1端子、前記第2端子、前記第3端子及び前記いま一つの導電体層に接続された第4端子が前記積層体の側面に形成されていること、
を特徴とする請求項6に記載の非可逆回路素子。
【請求項8】
前記いま一つの導電体層と前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体の交差部分が平面視で重なっていること、を特徴とする請求項6又は請求項7に記載の非可逆回路素子。
【請求項9】
前記いま一つの導電体層が平面視で円形又は楕円形であること、を特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の非可逆回路素子。
【請求項10】
前記いま一つの導電体層の平面視面積が前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体の交差部分の平面視面積よりも大きいこと、を特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の非可逆回路素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非可逆回路素子、特に、マイクロ波帯で使用されるアイソレータやサーキュレータなどの非可逆回路素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アイソレータやサーキュレータなどの非可逆回路素子は、予め定められた特定方向にのみ信号を伝送し、逆方向には伝送しない特性を有している。この特性を利用して、例えば、サーキュレータは、携帯電話などの移動体通信機器の送受信回路部に使用されている。
【0003】
この種の非可逆回路素子として、特許文献1の図1には、第1中心導体、第2中心導体及び第3中心導体の他端をグランドに接続するとともに、該他端とグランドとの間に直列接続されたインダクタ素子と容量素子を接続した集中定数型サーキュレータが記載されている。しかしながら、このようなサーキュレータでは挿入損失特性を広帯域において満足させることが必ずしも十分ではなかった。
【0004】
また、前記サーキュレータでは、第1中心導体、第2中心導体及び第3中心導体の他端がそれぞれ独立したグランド接続用端子にて、第1中心導体、第2中心導体及び第3中心導体が形成されたフェライトが搭載される基板のグランド電極に接続されるように構成されているため、それぞれの中心導体の一端である三つの信号接続用端子と合わせて都合6個の端子が設けられている。しかし、実装用基板に都合6個の端子を接続するためのランドを設けるとなると、実装用基板の設計に多くの制約が課せられることになるという問題点も有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/168771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、挿入損失特性を広帯域にわたって小さくするようにした集中定数型の非可逆回路素子を提供することにある。また、本発明の他の目的は、接続用端子の数を減少させて実装用基板の設計自由度を向上させた非可逆回路素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態である非可逆回路素子は、
直流磁界が印加されるフェライトに第1中心導体、第2中心導体及び第3中心導体をそれぞれ絶縁状態で交差させて配置し、
前記第1中心導体の一端を第1ポート、前記第2中心導体の一端を第2ポート、前記第3中心導体の一端を第3ポートとし、
前記第1ポートは第1端子に接続され、前記第2ポートは第2端子に接続され、前記第3ポートは第3端子に接続され、
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体のそれぞれの他端は互いに接続されるとともにグランドに接続され、
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体に対して容量素子がそれぞれ並列に接続され、
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体のそれぞれに並列に容量が設けられ、
前記第1中心導体に並列に設けられた前記容量は、前記第1ポートとグランドとの間に接続されており、
前記第2中心導体に並列に設けられた前記容量は、前記第2ポートとグランドとの間に接続されており、
前記第3中心導体に並列に設けられた前記容量は、前記第3ポートとグランドとの間に接続されている。
本発明の第2の形態である非可逆回路素子は、
直流磁界が印加されるフェライトに第1中心導体、第2中心導体及び第3中心導体をそれぞれ絶縁状態で交差させて配置し、
前記第1中心導体の一端を第1ポート、前記第2中心導体の一端を第2ポート、前記第3中心導体の一端を第3ポートとし、
前記第1ポートは第1端子に接続され、前記第2ポートは第2端子に接続され、前記第3ポートは第3端子に接続され、
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体に対して容量素子がそれぞれ並列に接続され、
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体のそれぞれに直列に容量が設けられ、
前記第1中心導体、前記第2中心導体及び前記第3中心導体のそれぞれの他端は、前記直列に設けられたそれぞれの容量を介して互いに接続されるとともに、グランドに接続されている。
【0008】
前記非可逆回路素子は、直流磁界が印加されるフェライトに第1中心導体、第2中心導体及び第3中心導体をそれぞれ絶縁状態で交差させて配置した集中定数型である。第2ポートから入力された高周波信号は第1ポートから出力され、第1ポートから入力された高周波信号は第3ポートから出力され、第3ポートから入力された高周波信号は第2ポートから出力される。なお、高周波信号の入出力関係は、永久磁石から印加される直流磁界を反転させることにより、逆転する。
【0009】
前記非可逆回路素子においては、第1中心導体、第2中心導体及び第3中心導体のそれぞれに直列又は並列に容量が設けられているため、挿入損失特性が広帯域にわたって小さくなる。
【0010】
前記非可逆回路素子は、前記フェライトの表裏面に複数の導電体層及び絶縁層が積層されており、前記導電体層にて第1中心導体、第2中心導体及び第3中心導体が形成されているとともに、第1中心導体、第2中心導体及び第3中心導体のそれぞれの他端がいま一つの導電体層を介してグランドに接続されていることが好ましい。第1中心導体、第2中心導体及び第3中心導体の他端がいま一つの導電体層でまとめられて一つの接続用端子で済むため、接続用端子の設置個数が減少する。その結果、実装用基板の設計自由度が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、集中定数型の非可逆回路素子において挿入損失特性が広帯域にわたって小さくなり、また、実装用基板の設計自由度を向上させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施例である非可逆回路素子(3ポート型サーキュレータ)を示す等価回路図である。
図2】第1実施例である非可逆回路素子を示す分解斜視図である。
図3】第1実施例である非可逆回路素子を構成する中心導体組立体を示す分解斜視図である。
図4】第1実施例である非可逆回路素子の特性を示すグラフである。
図5】第2実施例である非可逆回路素子(3ポート型サーキュレータ)を示す等価回路図である。
図6】第2実施例である非可逆回路素子の特性を示すグラフである。
図7】第2実施例である非可逆回路素子において束ね電極の大きさを変更した場合の特性を示すグラフである。
図8】第3実施例である非可逆回路素子(3ポート型サーキュレータ)を構成する中心導体組立体を示す分解斜視図である。
図9】第3実施例である非可逆回路素子の特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る非可逆回路素子の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において同じ部材には共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
(第1実施例、図1図4参照)
第1実施例である非可逆回路素子は、図1に示す等価回路を有する3ポート型サーキュレータである。即ち、永久磁石により矢印A方向に直流磁界が印加されるフェライト20に第1中心導体21(L1)、第2中心導体22(L2)及び第3中心導体23(L3)をそれぞれ絶縁状態で所定の角度で交差させて配置し、第1中心導体21の一端を第1ポートP1、第2中心導体の一端を第2ポートP2、第3中心導体23の一端を第3ポートP3としている。
【0015】
さらに、各中心導体21,22,23のそれぞれの他端は互いに接続される(第4ポートP4)とともに直列に接続されたインダクタ素子Lgと容量素子Cgとを介してグランドに接続されている。各中心導体21,22,23に対して並列に容量素子C1,C2,C3がそれぞれ接続されている。また、各中心導体21,22,23のそれぞれに並列に容量C1’、C2’,C3’が設けられている。ここで、容量C1’、C2’,C3’は各ポートP1,P2,P3とグランドとの間に接続されている。
【0016】
さらに、第1ポートP1と第1外部接続用端子41との間には容量素子Cs1が接続され、第2ポートP2と第2外部接続用端子42との間には容量素子Cs2が接続され、第3ポートP3と第3外部接続用端子43との間には容量素子Cs3が接続されている。また、第1外部接続用端子41と第2外部接続用端子42との間には容量素子Cjが直列に接続されている。
【0017】
以上の等価回路からなる3ポート型サーキュレータは、具体的には、図2及び図3に示すように、実装用基板30と、中心導体組立体10と、永久磁石25と、で構成されている。
【0018】
中心導体組立体10は、図3に示すように、矩形状のマイクロ波フェライト20の上下面に導電体層11a〜11g及び絶縁体層12a〜12eを積層したものである。即ち、フェライト20の上面に導電体層11aを形成し、その上に絶縁層12aを形成するとともに導電体層11bを形成し、その上に絶縁層12bを形成するとともに導電体層11cを形成している。また、フェライト20の下面に導電体層11dを形成し、その下に絶縁層12cを形成するとともに導電体層11eを形成し、その下に絶縁層12dを形成するとともに導電体層11fを形成し、その下に絶縁層12eを形成するとともに導電体層11gを形成している。
【0019】
詳しくは、上方から順次、導電体層11cには第1中心導体21を形成する5本の導体21a、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれ、接続用端子電極P1が導体21aの一端に接続されている。導電体層11bには第3中心導体23を形成する5本の導体23a、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれ、接続用端子電極P3が導体23aの一端に接続されている。導電体層11aには第2中心導体22を形成する5本の導体22a、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれ、接続用端子電極P2が導体22aの一端に接続されている。導電体層11dには第2中心導体22を形成する4本の導体22b、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれている。導電体層11eには第3中心導体23を形成する4本の導体23b、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれている。導電体層11fには第1中心導体21を形成する4本の導体21b、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれている。導電体層11gには平面視で円形状の束ね電極14、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれている。
【0020】
導体21a,21bが所定のビア導体13を介してコイル状に接続されて第1中心導体21を形成する。導体22a,22bが所定のビア導体13を介してコイル状に接続されて第2中心導体22を形成する。導体23a,23bが所定のビア導体13を介してコイル状に接続されて第3中心導体23を形成する。束ね電極14は、各中心導体21,22,23の交差部分と、導電体層と絶縁体層の積層方向に重なるように配置され、各中心導体21,22,23との間で容量C1',C2',C3'を形成する。
【0021】
それぞれの導電体層11a〜11gは薄膜導体、厚膜導体、又は、導体箔として形成することができる。各種容量素子やインダクタ素子はチップ部品を使用している(図2参照)。絶縁体層12a〜12eは感光性ガラスを好適に使用することができる。
【0022】
実装用基板30は、その上面に、接続用端子電極P1〜P4やチップタイプの各種容量素子及びインダクタ素子を実装するための電極(図示せず)が形成されており、図2に示すように、中心導体組立体10及び永久磁石25を積み重ねて実装用基板30上に実装することにより、図1に示す等価回路の3ポート型サーキュレータが形成される。また、実装用基板30の下面には、図示されていないが、第1外部接続用端子41、第2外部接続用端子42、第3外部接続用端子43及びグランド接続用端子44が形成されている。
【0023】
第1実施例である3ポート型サーキュレータにおいて、第2外部接続用端子42(第2ポートP2)から入力された高周波信号は、第1外部接続用端子41(第1ポートP1)から出力され、第1外部接続用端子41(第1ポートP1)から入力された高周波信号は第3外部接続用端子43(第3ポートP3)から出力され、第3外部接続用端子43(第3ポートP3)から入力された高周波信号は第2外部接続用端子42(第2ポートP2)から出力される。
【0024】
本3ポート型サーキュレータを携帯電話の送受信回路部とアンテナとの間に設置する場合、第1外部接続用端子41は送信回路に接続され、第2外部接続用端子42は受信回路に接続され、第3外部接続用端子43はアンテナに接続される。従って、第2外部接続用端子42から第1外部接続用端子41へは信号が伝達されないように構成される。
【0025】
本3ポート型サーキュレータにおいて、第1外部接続用端子(TX)41から第3外部接続用端子(ANT)43への挿入損失特性は図4(A)の曲線Xに示すとおりであり、第3外部接続用端子(ANT)43から第2外部接続用端子(RX)42への挿入損失特性は図4(B)の曲線Xに示すとおりである。図4(A),(B)において、曲線Yは容量C1',C2',C3'を省略した場合の特性を比較例として示している。曲線X,Yを比較すると明らかなように、容量C1',C2',C3'を挿入した場合の特性Xのほうが広帯域で減衰量の改善が見られる。さらに、本第1実施例のごとく、容量C1',C2',C3'を配置することで、各中心導体21,22,23のそれぞれに対して容量の最適化を行うことができ、より広帯域にわたって挿入損失特性を改善できる。
【0026】
第1外部接続用端子(TX)41から第2外部接続用端子(RX)42へのアイソレーション特性は図4(C)の曲線Xに示すとおりであり、同図には曲線Yで容量C1',C2',C3'を省略した場合の特性を比較例として示している。曲線X、Yを比較すると、アイソレーション特性の劣化は見られない。
【0027】
また、第1中心導体21、第2中心導体22及び第3中心導体23の他端がいま一つの導電体層(束ね電極14)で一つの接続用端子電極P4にまとめられている。それゆえ、中心導体組立体10においては都合四つの接続用端子電極P1〜P4で済むため、接続用端子電極の設置個数が減少する。その結果、実装用基板30の設計自由度が向上する。
【0028】
ところで、本3ポート型サーキュレータにおいて、挿入損失を広帯域において満足させるためには、中心導体組立体10と永久磁石25とからなる磁気回転子と各入出力ポートP1,P2,P3とのマッチング精度を高める必要がある。このマッチングは、容量C1’,C2’,C3’の直列接続と並列接続を組み合わせると精度が高まる。本実施例では、容量C1’,C2’,C3’を各中心導体21,22,23にそれぞれ並列に設けることにより、容量素子Cs1,Cs2,Cs3の接続と相俟って、各入出力ポートP1,P2,P3において高精度でのマッチングをとることができる。その結果、磁気回転子と各入出力ポートP1,P2,P3とのマッチング精度が高まり、ひいては、挿入損失特性を広帯域において満足させることができた。
【0029】
特に、本実施例のように、フェライト20に中心導体21,22,23を積層して中心導体組立体10を構成する場合には、中心導体21,22,23などの積み順などの関係で、磁気回転子と入出力ポートとのマッチング精度が低下する傾向にある。容量C1’,C2’,C3’はこのマッチング精度の低下を補うことができる。
【0030】
なお、本3ポート型サーキュレータにおいて、挿入損失が広帯域な特性を得られるのは、各中心導体21,22,23の他端をインダクタ素子Lgと容量素子Cgとからなる直列共振回路を介してグランドに接続したことも寄与している。また、容量素子Cjは、第1外部接続用端子41から第3外部接続用端子43への挿入損失特性の改善に寄与している。
【0031】
(第2実施例、図5図7参照)
第2実施例である非可逆回路素子は、図5に示す等価回路を有する3ポート型サーキュレータであり、図1に示した前記第1実施例とは基本的に同様の回路構成を有している。異なるのは、各中心導体21,22,23のそれぞれの他端が容量C1',C2',C3'を介して互いに接続される(第4ポートP4)とともに直列に接続されたインダクタ素子Lgと容量素子Cgとを介してグランドに接続されている点である。
【0032】
このような等価回路からなる3ポート型サーキュレータは、図2及び図3に示した実装用基板30と、中心導体組立体10と、永久磁石25と、で構成されている。中心導体組立体10は第1実施例と同じものであり、容量C1’,C2’,C3’は、第1実施例と同様に、束ね電極14と各中心導体21,22,23との間で形成される。
【0033】
第2実施例である3ポート型サーキュレータにおける高周波信号の伝達形態は前記第1実施例と同様であり、携帯電話などの送受信回路部とアンテナとの間に設置される。第1外部接続用端子(TX)41から第3外部接続用端子(ANT)43への挿入損失特性は図6(A)の曲線Xに示すとおりであり、第3外部接続用端子(ANT)43から第2外部接続用端子(RX)42への挿入損失特性は図6(B)の曲線Xに示すとおりである。図6(A),(B)において、曲線Yは容量C1',C2',C3'を省略した場合の特性を比較例として示している。曲線X,Yを比較すると明らかなように、容量C1',C2',C3'を挿入した場合の特性Xのほうが広帯域で減衰量の改善が見られる。さらに、本第2実施例のごとく、容量C1',C2',C3'を配置することで、各中心導体21,22,23のそれぞれに対して容量の最適化を行うことができ、より広帯域にわたって挿入損失特性を改善できる。
【0034】
第1外部接続用端子(TX)41から第2外部接続用端子(RX)42へのアイソレーション特性は図6(C)の曲線Xに示すとおりであり、同図には曲線Yで容量C1',C2',C3'を省略した場合の特性を比較例として示している。曲線X、Yを比較すると、アイソレーション特性の劣化は見られない。
【0035】
また、第1中心導体21、第2中心導体22及び第3中心導体23の他端がいま一つの導電体層(束ね電極14)で一つの接続用端子電極P4にまとめられている。それゆえ、中心導体組立体10においては都合四つの接続用端子電極P1〜P4で済むため、接続用端子電極の設置個数が減少する。その結果、実装用基板30の設計自由度が向上する。
【0036】
なお、本3ポート型サーキュレータにおいて、挿入損失が広帯域な特性を得られるのは、各ポートP1,P2,P3に容量素子Cs1,Cs2,Cs3を接続するとともに、各中心導体21,22,23の他端をインダクタ素子Lgと容量素子Cgとからなる直列共振回路を介してグランドに接続したことにもよっている。また、容量素子Cjは、第1外部接続用端子41から第3外部接続用端子43への挿入損失特性の改善に寄与している。
【0037】
(束ね電極の大きさ、図7参照)
前記第2実施例である非可逆回路素子において、束ね電極14の平面視での形状を円形状とし、その直径を0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mmに変更してその特性をシミュレートした。図7は第1外部接続用端子(TX)41から第3外部接続用端子(ANT)43への挿入損失特性を示している。ちなみに、各中心導体21,22,23が平面視で交差している部分は略円形状であり、その直径は0.5mmである。この交差部分は束ね電極14と平面視で重なっている。
【0038】
図7において、曲線X1は束ね電極14の直径を0.6mm、曲線X2は直径を0.5mm、曲線X3は直径を0.4mm、曲線X4は直径を0.3mmとした場合の挿入損失特性を示している。曲線Yは束ね電極14を配置しない場合、即ち、容量C1',C2',C3'を省略した場合の特性を比較例として示している。束ね電極14を配置したことによる特性はいずれの直径においても好ましい特性を示しており、特に、束ね電極14の面積が各中心導体21,22,23の交差部分の面積よりも相対的に大きい(直径0.6mm)場合に、挿入損失特性の改善が顕著である(図7の曲線X1参照)。
【0039】
(第3実施例、図8及び図9参照)
図8に第3実施例である非可逆回路素子の中心導体組立体10を示す。本第3実施例の等価回路は図5に示した第2実施例と同様である。即ち、容量C1’,C2’,C3’を中心導体21,22,23のそれぞれに直列に設けている。この中心導体組立体10も図3に示したものと同様に、矩形状のマイクロ波フェライト20の上下面に導電体層11a〜11g及び絶縁体層12a〜12eを積層したものである。即ち、フェライト20の上面に導電体層11aを形成し、その上に絶縁層12aを形成するとともに導電体層11bを形成し、その上に絶縁層12bを形成するとともに導電体層11cを形成している。また、フェライト20の下面に導電体層11dを形成し、その下に絶縁層12cを形成するとともに導電体層11eを形成し、その下に絶縁層12dを形成するとともに導電体層11fを形成し、その下に絶縁層12eを形成するとともに導電体層11gを形成している。
【0040】
詳しくは、上方から順次、導電体層11cには第1中心導体21を形成する5本の導体21a、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれ、接続用端子電極P1が導体21aの一端に接続されている。導電体層11bには第3中心導体23を形成する5本の導体23a、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれ、接続用端子電極P3が導体23aの一端に接続されている。導電体層11aには第2中心導体22を形成する5本の導体22a、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれ、接続用端子電極P2が導体22aの一端に接続されている。導電体層11dには第1中心導体21を形成する4本の導体21b、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれている。導電体層11eには第3中心導体23を形成する4本の導体23b、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれている。導電体層11fには第2中心導体22を形成する4本の導体22b、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれている。導電体層11gには略三角形状の束ね電極14、接続用端子電極(ポート)P1〜P4、多数のビア導体13が含まれている。
【0041】
導体21a,21bが所定のビア導体13を介してコイル状に接続されて第1中心導体21を形成する。導体22a,22bが所定のビア導体13を介してコイル状に接続されて第2中心導体22を形成する。導体23a,23bが所定のビア導体13を介してコイル状に接続されて第3中心導体23を形成する。束ね電極14は各中心導体21,22,23の交差部分の直下に配置されることで、各中心導体21,22,23との間で容量C1',C2',C3'を形成し、この容量C1',C2',C3'が分布定数的にサーキュレータ回路に付加される点は前記第2実施例と同様である。
【0042】
本第3実施例におけるサーキュレータとしての機能は前記第2実施例と基本的に同様であり、同様の作用効果を奏する。特に、図9(A),(B)において、曲線X11は束ね電極14を三角形状とした場合の挿入損失及びアイソレーションの特性を示す。図9(A),(B)では、参考のために、前記第2実施例で直径を0.6mmとした束ね電極14を用いた場合の特性を曲線X1として重ねて示している。挿入損失特性及びアイソレーション特性について、束ね電極14の形状としては円形状が最も好ましい改善がみられるが、三角形状であっても好ましい特性を示している。なお、第3実施例での図9に示す特性をシミュレートした際の各種素子の数値は前記第2実施例で示したものと同様である。
【0043】
(他の実施例)
なお、本発明に係る非可逆回路素子は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0044】
例えば、中心導体の構成や形状などは任意である。容量C1',C2',C3'に関しては、チップタイプの容量素子を実装用基板に配置して用いてもよい。また、素子C1,C2,C3などの各種容量素子や素子Lgなどのインダクタ素子は、チップタイプとして実装用基板上に配置する以外に、実装用基板に内蔵した内部導体で構成してもよい。さらに、束ね電極の平面視での形状や面積は任意であり、円形状や略三角形状以外にも、楕円形状、多角形状などであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…中心導体組立体
14…束ね電極
20…フェライト
21…第1中心導体
22…第2中心導体
23…第3中心導体
25…永久磁石
41,42,43,44…端子
P1,P2,P3,P4…ポート
C1,C2,C3…容量素子
Lg…インダクタ素子
Cg,Cj,Cs1,Cs2,Cs3…容量素子
C1',C2',C3'…容量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9