(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。また、以下で説明する各実施の形態または変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0020】
<第1の実施の形態>
[超音波センサ100の回路構成]
図1を参照して、第1の実施の形態に従う超音波センサ100について説明する。
図1は、超音波センサ100の回路構成の一例を示す図である。
【0021】
超音波センサ100は、たとえば、車両、スマートフォン等に搭載される。超音波センサ100は、超音波を発してから反射波を受信するまでの時間に応じて自身から物体までの距離を計測する。あるいは、超音波センサ100は、反射波を受信したことに基づいて、物体が存在していることを検出する。
【0022】
図1に示されるように、超音波センサ100は、制御回路101と、メモリ102と、信号生成回路104と、電源105と、半導体素子107と、増幅器108と、受信回路110と、圧電素子200とを含む。
【0023】
制御回路101は、たとえば、マイコンである。半導体素子107は、たとえば、トランジスタである。制御回路101は、半導体素子107を駆動して、送信用電極10と受信用電極20との間の電気的な経路109を導通状態と非導通状態との間で切り替える。また、制御回路101は、メモリ102に格納されているデータを読み出して、超音波センサ100の駆動に適した制御信号を信号生成回路104に出力する。電源105は、たとえば12Vの直流電圧を信号生成回路104に出力する。信号生成回路104は、制御回路101から出力された制御信号に基づいて直流電圧から交流電圧を生成する。交流電圧は、必要に応じて増幅回路(図示しない)により昇圧された状態で圧電素子200に供給される。
【0024】
圧電素子200は、送信用電極10と、受信用電極20と、共通電極30と、圧電体50とを含む。圧電素子200は、たとえば、平板状である。送信用電極10には、端子DRVが設けられている。受信用電極20には、端子RECが設けられている。共通電極30には、端子COMが設けられている。圧電素子200は、端子DRV、端子REC、および端子COMからなる3端子構造を有している。端子COMは接地されているが、必ずしも接地される必要はない。
【0025】
圧電体50は、超音波を発信するための送信用領域50Aと、超音波の反射波を受信するための受信用領域50Bとを含む。送信用電極10は、送信用領域50Aを間に挟んで共通電極30に対向するように配置されており、送信用領域50Aに電気的に接続されている。受信用電極20は、受信用領域50Bを間に挟んで共通電極30に対向するように配置されており、受信用領域50Bに電気的に接続されている。共通電極30は、送信用領域50Aおよび受信用領域50Bに電気的に接続されている。
【0026】
増幅器108は、受信用電極20と半導体素子107とに直列に接続されている。一例として、増幅器108は、抵抗とオペアンプとで構成される反転増幅回路である。
【0027】
受信回路110は、反射波を受けて受信用領域50Bにおいて発生した受波信号を電圧値として検出し、当該電圧値を制御回路101に出力する。
【0028】
なお、
図1には、3端子構造の超音波センサ100が示されているが、超音波センサ100は、4つ以上の端子からなる構造を有してもよい。この場合、たとえば、送信用電極10および受信用電極20とは異なる電極が、圧電体50を間に挟んで共通電極30に対向するように配置される形態等がある。当該電極は、圧電体50に電気的に接続される。
【0029】
[超音波センサ100の動作]
図2を参照して、本実施の形態に従う超音波センサ100の動作について説明する。
図2は、超音波センサ100の動作例を概略的に示す概念図である。説明を分かりやすくするために、
図2においては、
図1に示される制御回路101、メモリ102、電源105、および受信回路110を示していない。
【0030】
図2に示されるように、本実施の形態に従う超音波センサ100は、超音波を発信するステップ(A)と、超音波の発信によって生じる残響振動を抑制するステップ(B)と、超音波の反射波を受信するステップ(C)とを順に実行する。以下では、ステップ(A)〜(C)について順に説明する。
【0031】
ステップ(A)において、制御回路101は、半導体素子107を駆動して経路109を非導通状態にする。その後、制御回路101が信号生成回路104に制御命令を出力することで、信号生成回路104は、圧電素子200の送信用領域50Aに交流電圧を印加する。好ましくは、交流電圧の周期は、圧電素子200の送信用領域50Aの共振周波数と等しい。送信用領域50Aは、交流電圧が印加されることで、逆圧電効果による振動を開始し、気中などに向けて超音波を発信する。
【0032】
ステップ(B)において、制御回路101は、超音波の発信を開始してから予め定められた時間(たとえば、数マイクロ秒〜数ミリ秒)が経過した後に送信用領域50Aに対する交流電圧の印加を停止する。このとき、送信用領域50Aの振動はすぐには治まらない。すなわち、交流電圧の印加が停止された後においても、送信用領域50Aはしばらく振動する。この振動(すなわち、残響振動)は、受信用領域50Bに影響を与え、受信用領域50Bは、送信用領域50Aと共振する。
【0033】
制御回路101は、交流電圧の印加の停止後に、経路109を非導通状態から導通状態に切り替える。これにより、送信用電極10、送信用領域50A、共通電極30、受信用領域50B、受信用電極20、および経路109の順で構成される閉回路が形成される。上述したように、送信用領域50Aと受信用領域50Bとは、残響振動によって振動する。残響振動が打ち消されるように、適切な位相の信号が与えられることで、送信用領域50Aおよび受信用領域50Bの残響振動が抑制される。たとえば、本実施の形態では、経路109上において残響振動の振動速度に対して180度位相がずれた電圧が送信端子にフィードバックされることで、残響振動が短時間で抑制される。すなわち、残響振動に応じて受信用領域50Bから出力される残響信号が電圧として送信用電極10にフィードバックされることで、圧電素子200の残響振動が抑制される。
【0034】
好ましくは、増幅器108は、受信用領域50Bから出力される残響信号を増幅し、増幅後の残響信号を送信用電極10に出力する。残響信号の増幅率は、設計時に予め決められていてもよいし、送信用領域50Aに印加される交流電圧の大きさに応じて変えられてもよい。
【0035】
ステップ(C)において、制御回路101は、残響信号を送信用電極10にフィードバックした後に、経路109を導通状態から非導通状態に切り替える。これにより、受信用領域50Bは、物体に反射された超音波を受信することができる。その結果、超音波センサ100は、反射波を正確に検出できる。受信用領域50Bは、超音波を受信することで振動し、圧電効果による信号を電圧値として制御回路101に出力する。
【0036】
[超音波センサ100の制御構造]
図3を参照して、超音波センサ100の制御構造について説明する。
図3は、超音波センサ100が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
図3の処理は、超音波センサ100の制御回路101(
図1参照)がプログラムを実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、CPU(Central Processing Unit)、その他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0037】
ステップS10において、制御回路101は、半導体素子107(
図2参照)を駆動して経路109(
図2参照)を非導通状態にする。
【0038】
ステップS12において、制御回路101は、圧電素子200の送信用領域50Aに交流電圧を印加し、送信用領域50Aから超音波を発信させる。
【0039】
ステップS20において、制御回路101は、送信用領域50Aに交流電圧を印加してから予め定められた時間(たとえば、数マイクロ秒〜数ミリ秒)が経過したか否かを判断する。制御回路101は、送信用領域50Aに交流電圧を印加してから予め定められた時間が経過したと判断した場合(ステップS20においてYES)、制御をステップS22に切り替える。そうでない場合には(ステップS20においてNO)、制御回路101は、ステップS20の処理を再び実行する。
【0040】
ステップS22において、制御回路101は、送信用領域50Aに対する交流電圧の印加を停止する。
【0041】
ステップS24において、制御回路101は、半導体素子107を駆動して、経路109を非導通状態から導通状態に切り替える。これにより、残響振動に応じて出力される残響信号が受信用領域から送信用電極にフィードバックされる。その結果、超音波センサ100の残響振動が抑制される。
【0042】
ステップS30において、制御回路101は、経路109を導通状態にしてから予め定められた時間(たとえば、数マイクロ秒〜数ミリ秒)が経過したか否かを判断する。制御回路101は、経路109を導通状態にしてから予め定められた時間が経過したと判断した場合(ステップS30においてYES)、制御をステップS32に切り替える。そうでない場合には(ステップS30においてNO)、制御回路101は、ステップS30の処理を再び実行する。
【0043】
ステップS32において、制御回路101は、半導体素子107を駆動して、経路109を導通状態から非導通状態に切り替える。
【0044】
ステップS34において、制御回路101は、発信した超音波の反射波を受信し、当該反射波を電圧値として受信回路110(
図1参照)に出力する。
【0045】
[比較結果1]
図4および
図5を参照して、残響振動を抑制した場合における超音波センサ100の出力と、残響振動を抑制しなかった場合における超音波センサ100の出力とを比較する。
図4は、残響振動を抑制しなかった場合における超音波センサ100の出力波形を示す図である。
図5は、残響振動を抑制した場合における超音波センサ100の出力波形を示す図である。
【0046】
図4のグラフ(A)には、制御回路101(
図1参照)が信号生成回路104(
図1参照)に出力する制御信号が示されている。信号生成回路104は、制御信号を受けると、圧電素子200の送信用領域50A(
図1参照)に交流電圧を印加する。
【0047】
より具体的には、時刻T1から時刻T2までの間、制御回路101は、信号生成回路104(
図1参照)に対して制御信号を出力する。これにより、信号生成回路104は、送信用領域50Aに交流電圧を印加する。時刻T2以降において、制御回路101は、信号生成回路104への制御信号の出力を停止する。これにより、信号生成回路104は、圧電素子200の送信用領域50Aに交流電圧を印加することを停止する。
【0048】
図4のグラフ(B)には、制御回路101が半導体素子107(
図1参照)に出力する制御信号が示されている。
図4のグラフ(B)に示されるように、制御回路101は、制御を開始してから終了するまでの間、半導体素子107に制御信号を出力しない。すなわち、残響信号の経路109(
図1参照)は、非導通状態に維持され、残響信号は、送信用領域50Aにフィードバックされない。
【0049】
図4のグラフ(C)には、超音波センサ100の出力波形が示されている。
図4の制御例においては、残響信号がフィードバックされないため、圧電素子200は、交流電圧の印加を停止した時刻T2以降においても振動している。時刻T4に受信された反射波は、残響振動に埋もれている(点線301参照)。そのため、超音波センサ100は、反射波を検出できない。
【0050】
図5のグラフ(A)には、制御回路101が信号生成回路104に出力する制御信号が示されている。
図5のグラフ(A)は、
図4のグラフ(A)と同じであるため、その説明については繰り返さない。
【0051】
図5のグラフ(B)には、制御回路101が半導体素子107に出力する制御信号が示されている。より具体的には、制御回路101は、制御を開始してから時刻T2までは、経路109を非導通状態にする。時刻T2から時刻T3までの間、制御回路101は、半導体素子107を駆動して、経路109を導通状態にする。すなわち、超音波センサ100は、受信用領域50Bから出力される残響信号を送信用領域50Aにフィードバックする。時刻T3以降において、制御回路101は、経路109を非導通状態にする。
【0052】
図5のグラフ(C)には、残響振動を抑制した場合における超音波センサ100の出力波形が示されている。時刻T2から時刻T3までの間、残響信号が送信用領域50Aにフィードバックされることで、残響振動が抑制されている(点線303参照)。これにより、超音波センサ100は、時刻T4に受信した反射波を検出することができる。
【0053】
このように、残響振動が抑制されることで、超音波センサ100は、残響振動が自然に治まることを待たずして、反射波を検出することができる。その結果、超音波センサ100は、より近くに存在している物体を検出でき、物体の検出精度や距離計測精度を向上することができる。
【0054】
[比較結果2]
図6を参照して、第1の実施の形態に従う超音波センサ100と、比較例に従う超音波センサ100Xとを比較する。
図6は、比較例に従う超音波センサ100Xの回路構成の一例を示す図である。
【0055】
(超音波センサ100Xの回路構成)
まず、比較例に従う超音波センサ100Xの回路構成について説明する。
図6に示されるように、超音波センサ100Xは、信号生成回路104と、半導体素子120,122と、増幅器121A〜121C,123A〜123Cと、圧電素子200Xとを含む。
【0056】
圧電素子200Xは、送受用電極10Xと、モニタ用電極20Xと、共通電極30Xと、圧電体50Xとを含む。送受用電極10Xには、端子DRVが設けられている。モニタ用電極20Xには、端子MONが設けられている。共通電極30Xには、端子COMが設けられている。
【0057】
信号生成回路104は、端子DRVと端子COMとに接続されている。増幅器121A〜121Cは、端子MONと半導体素子120との間に直列に接続されている。半導体素子120は、増幅器121Cと端子DRVとに接続されている。半導体素子122は、端子DRVに接続されており、半導体素子120と並列に接続されている。増幅器123A〜123Cは、半導体素子122に直列に接続されている。
【0058】
(超音波センサ100Xの動作)
引き続き
図6を参照して、比較例に従う超音波センサ100Xの動作について説明する。超音波センサ100Xは、超音波の発信時には、信号生成回路104に対して制御信号を出力することで、端子DRVと端子COMとの間に交流電圧を印加する。このとき、超音波センサ100Xは、半導体素子120を駆動して経路126を非導通状態にするとともに、半導体素子122を駆動して経路127を非導通状態にする。
【0059】
次に、超音波センサ100Xは、交流電圧の印加を停止するとともに、経路126を非導通状態から導通状態に切り替える。これにより、圧電素子200Xの残響振動に応じた残響信号が、増幅器121A〜121Cに増幅された上で、送受用電極10Xにフィードバックされる。その結果、残響振動が抑制される。
【0060】
その後、超音波センサ100Xは、経路126を導通状態から非導通状態に切り替えるとともに、経路127を非導通状態から導通状態に切り替える。超音波センサ100Xは、超音波の反射波を受信すると、反射波に応じて生じる信号を増幅器123A〜123Cで増幅した上で受信回路に出力する。
【0061】
(超音波センサ100の利点1)
以上のように、比較例に従う超音波センサ100Xにおいては、残響振動を検出するためのモニタ用電極20Xが、超音波の送受信を行なうための送受用電極10Xと別個に構成されている。そのため、残響信号をフィードバックするための回路構成と、反射波を受信するための回路構成との両方が必要となる。より具体的には、残響信号をフィードバックするための回路構成としては、半導体素子120および増幅器121A〜121Cなどが必要である。反射波を受信するための回路構成としては、半導体素子122および増幅器123A〜123Cなどが必要である。すなわち、超音波センサ100Xは、2つの半導体素子120,122と、6つの増幅器121A〜121C,123A〜123Cとが必要となる。
【0062】
これに対して、第1の実施の形態に従う超音波センサ100においては、残響振動を検出するための電極と、超音波を受信するための電極とが1つの受信用電極20として設けられている。そのため、超音波センサ100は、残響振動を検出するステップと反射波を受信するステップとで回路素子を共用できる。より具体的には、超音波センサ100は、残響振動の検出と反射波の受信との両方を、同一の半導体素子107と同一の増幅器108とで実現できる。同様に、後述する第4の実施の形態に従う超音波センサ100Cは、残響振動の検出と反射波の受信との両方を、同一の半導体素子107と同一の増幅器(増幅器108、オペアンプ141、バッファ回路113)とで実現できる。
【0063】
このように、超音波センサ100は、超音波センサ100Xよりも簡素な回路構成で残響振動の抑制を実現することができる。超音波センサ100の回路構成が簡素化されることで、超音波センサ100の小型化が実現される。
【0064】
(超音波センサ100の利点2)
図7および
図8を参照して、第1の実施の形態に従う超音波センサ100の利点についてさらに説明する。
図7は、半導体素子の切り替えにより生じるノイズ信号を示す図である。
図8は、比較例に従う超音波センサ100X(
図6参照)の出力波形を示す図である。
【0065】
図6において説明したように、超音波センサ100Xは、残響振動を抑制するときには、半導体素子120を駆動して経路126を導通状態にするとともに、半導体素子122を駆動して経路127を非導通状態にする。超音波センサ100Xは、反射波を受信するときには、半導体素子120を駆動して経路126を非導通状態にするとともに、半導体素子122を駆動して経路127を導通状態にする。
【0066】
このような半導体素子120,122の切り替えによって、ノイズ信号が生じる。このノイズ信号は、異電位間の回路接続、半導体素子のクロックフィードスルー、半導体素子のチャージインジェクション等に起因する。
図7を参照して、このようなノイズ信号が生じる原因についてさらに詳細に説明する。
【0067】
図7の回路例(A)には、PMOS(Positive-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタとしての半導体素子M1と、NMOS(Negative-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタとしての半導体素子M2とが示されている。半導体素子M1には、寄生容量C1,C2が生じている。半導体素子M2には、寄生容量C3,C4が生じている。
【0068】
図7のグラフ(B)には、位置P1における制御信号の波形が示されている。当該制御信号は、制御回路CLKによって出力される。制御信号は、素子INVによって反転された上で半導体素子M1に出力されるとともに、反転されずに半導体素子M2に出力される。グラフ(B)の例では、時刻T11,T12において、半導体素子M1,M2が駆動されている。
【0069】
図7のグラフ(C)には、位置P2における電圧の変化が示されている。
図7のグラフ(D)には、位置P3における電圧の変化が示されている。グラフ(C),(D)に示されるように、半導体素子M1,M2を駆動した時刻T11,T12において、寄生容量C1〜C4に起因する所謂電位の飛び(リンギング)が生じている(点線303参照)。さらに、制御回路CLKによるノイズ信号が、寄生容量C1〜C4を通過して、信号ラインA−Zに流入している(点線305参照)。
【0070】
半導体素子の切り替えによって生じるノイズ信号は、比較例に従う超音波センサ100Xにおいても生じる。
図8のグラフ(A)には、超音波センサ100Xが信号生成回路104(
図6参照)に出力する制御信号が示されている。
図8のグラフ(B)には、超音波センサ100Xが半導体素子120に出力する制御信号が示されている。
図8のグラフ(C)には、超音波センサ100Xの出力波形が示されている。
【0071】
図8のグラフ(C)に示されるように、半導体素子120を駆動した時刻T2,T3において、電位の飛びがノイズ信号として生じている(点線307,309参照)。一般的に、対象物からの反射波により生じる受信信号の強度は非常に弱いため、受信回路でゲインを数千〜数万倍にする。そのため、ノイズ信号自体が弱い場合であっても、ノイズ信号は、数千〜数万倍に増幅されてしまう。増幅されたノイズ信号は、受信回路110に流れ、出力波形に現れてしまう。
【0072】
これに対して、第1の実施の形態に従う超音波センサ100は、
図1に示されるように、受信回路110のために、半導体素子を必要としない。これにより、半導体素子の切り替えによって生じるノイズ信号が受信回路110において生じないため、上記のような問題が生じない。
【0073】
[圧電素子200の構造]
図9〜
図15を参照して、超音波センサ100に備えられる圧電素子200の構造について説明する。
図9は、圧電素子200を示す平面図である。
図10は、圧電素子200を示す斜視図である。
図11は、圧電素子200およびその内部構造を示す斜視図である。
図12は、圧電素子200に備えられる送信用電極10と、受信用電極20と、共通電極30とを示す斜視図である。
図13は、
図9中のXIII−XIII線に沿った矢視断面図である。
図14は、
図9中のXIV−XIV線に沿った矢視断面図である。
図15は、
図9中のXV−XV線に沿った矢視断面図である。
【0074】
積層型の超音波センサにおいては、圧電素子の積層数が多ければ多いほど、超音波の送信時の音圧が上がるが、反射波の受信時の感度が下がる。その反対に、圧電素子の積層数が少なければ少ないほど超音波の送信時の音圧が下がるが、反射波の受信時の感度が上がる。この点に着目して、超音波センサ100は、送信用領域50Aにおける圧電子の積層数が、受信用領域50Bにおける圧電子の積層数よりも多くなるように構成される。
【0075】
なお、
図9〜
図15においては、説明上の便宜のため矢印X,Y,Zを示している。矢印X,Y,Zは、互いに直交している。以下、圧電素子200の各構成について矢印X,Y,Zを参照しつつ説明する場合があるが、各構成の配置関係(直交および平行に関する特徴)は、必ずしも矢印X,Y,Zに示す配置関係に限定されるものではない。
【0076】
(圧電素子200)
図9〜
図15に示されるように、圧電素子200は、送信用電極10と、受信用電極20と、共通電極30と、圧電体50とを含む。圧電体50の外形形状は略直方体であり(
図10,
図11参照)、圧電体50は、上面51、側面52〜55、および下面56を有している。
【0077】
上面51は、圧電体50のうちの矢印Z方向の側に位置する表面であり、下面56は、圧電体50のうちの矢印Z方向とは反対方向の側に位置する表面である。側面52,54は、圧電体50のうちの矢印X方向に対して直交する表面であり、互いに対向する位置関係を有している。側面53,55は、圧電体50のうちの矢印Y方向に対して直交する表面であり、互いに対向する位置関係を有している。
【0078】
(送信用電極10)
送信用電極10は、側壁部11、上面部12、および中間部13,14を含む(
図12参照)。側壁部11、上面部12、および中間部13,14は、いずれも板状の形状を有している。側壁部11は、圧電体50の側面52(
図10参照)に対向し、側面52に接するように配置される。側壁部11は、圧電体50の側面52の全部を覆う表面形状を有している(
図9,
図14,
図15参照)。
【0079】
上面部12は、側壁部11の矢印Z方向の側(および矢印Yとは反対方向の側)の端部に連設され、圧電体50の上面51上に配置される。矢印Y方向における寸法を「幅」とすると、上面部12は側壁部11よりも幅が狭い。上面部12の矢印Yとは反対方向の端部は、圧電体50の側面53と面一の関係を有している。上面部12には、端子DRVが設けられている。端子DRVには、配線(図示しない)が接続される。
【0080】
上面部12および中間部13,14は、平行な位置関係を有し、中間部13,14は、上面部12よりも矢印Zとは反対方向の側に位置する。中間部13は、上面部12と中間部14との間に位置する。中間部13と中間部14とは間隔を空けて対向している。中間部13,14は、送信用電極10のうちの圧電体50の内部に配置される部位であり、圧電素子200が完成した状態ではこれらは視認されない(
図10参照)。詳細は後述されるが、中間部13と中間部14との間には、共通電極30の中間部33が配置される(
図13〜
図15等参照)。
【0081】
中間部13,14の内側には、円形形状を有するくり抜き部13H,14H(
図12)がそれぞれ設けられる。くり抜き部13H,14Hの大きさ(外径)は、受信用電極20の円盤部21の大きさ(外径)よりも大きい。くり抜き部13H,14Hの位置は、受信用電極20の円盤部21の位置に対応している。くり抜き部13H,14Hは、受信用電極20の円盤部21を矢印Zとは反対方向に投影した場合に、円盤部21の投影像に重ならない位置に配置されている(
図13,
図15参照)。
【0082】
中間部13,14の内側には、切り欠き部13T,14Tもそれぞれ設けられる。切り欠き部13T,14Tは、くり抜き部13H,14Hが位置している側から圧電体50の側面52が位置している側に向かって(矢印Xとは反対方向に向かって)延びるように配置される。切り欠き部13T,14Tの位置は、受信用電極20の延出部22の位置に対応している。
図12および
図14に示されるように、中間部13,14の矢印Xとは反対方向における端部は、側壁部11に接続している。一方で、中間部13,14の矢印X方向における端部は、共通電極30の側壁部31に接続しておらず、側壁部31から離れている。
【0083】
(受信用電極20)
受信用電極20は、円盤部21および延出部22を含み、全体として板状の形状を有している(
図12参照)。延出部22は、外形が矩形状であり、円盤部21の外縁から外方に向かって延出する形状を有する。延出部22には、端子RECが設けられている。端子RECには、配線(図示しない)が接続される。
【0084】
受信用電極20は、円盤部21が圧電体50の上面51の中央に位置するように上面51上に配置される。延出部22は、円盤部21が位置している側から圧電体50の側面52が位置している側に向かって(矢印Xとは反対方向に向かって)延びるように配置される。
【0085】
(共通電極30)
共通電極30は、側壁部31、上面部32、中間部33および下面部34を含む(
図12参照)。側壁部31、上面部32、中間部33および下面部34は、いずれも板状の形状を有している。側壁部31は、圧電体50の側面54(
図10)に対向し、側面54に接するように配置される。側壁部31は、圧電体50の側面54の全部を覆う表面形状を有している(
図9,
図14,
図15参照)。下面部34は、圧電体50の下面56に対向し、下面56に接するように配置される。下面部34は、圧電体50の下面56の全部を覆う表面形状を有している。
【0086】
上面部32は、側壁部31の矢印Z方向の側の端部に連設され、圧電体50の上面51上に配置される。矢印Y方向における寸法を「幅」とすると、上面部32の幅は、圧電体50の上面51の幅に等しい。上面部32の矢印Yにおける両端部は、圧電体50の側面53,55とそれぞれ面一の関係を有している。上面部32には、端子COMが設けられている。端子COMには、配線(図示しない)が接続される。
【0087】
上面部32、中間部33および下面部34は、平行な位置関係を有し、中間部33および下面部34は、上面部32よりも矢印Zとは反対方向の側に位置する。中間部33は、上面部32と下面部34との間に位置する。中間部33は、共通電極30のうちの圧電体50の内部に配置される部位であり、圧電素子200が完成した状態では中間部33は視認されない(
図10参照)。
【0088】
上面部32および中間部33の内側には、円形形状を有するくり抜き部32H,33H(
図12参照)がそれぞれ設けられる。くり抜き部32H,33Hの大きさ(外径)は、受信用電極20の円盤部21の大きさ(外径)よりも大きい。くり抜き部32H,33Hの位置は、受信用電極20の円盤部21の位置に対応している。くり抜き部32Hの内側に、受信用電極20の円盤部21が配置される(
図10参照)。くり抜き部33Hは、受信用電極20の円盤部21を矢印Zとは反対方向に投影した場合に、円盤部21の投影像に重ならない位置に配置されている(
図13,
図15参照)。
【0089】
上面部32および中間部33の内側には、切り欠き部32T,33Tもそれぞれ設けられる。切り欠き部32T,33Tは、くり抜き部32H,33Hが位置している側から圧電体50の側面52が位置している側に向かって(矢印Xとは反対方向に向かって)延びるように配置される。切り欠き部32T,33Tの位置は、受信用電極20の延出部22の位置に対応している。切り欠き部32Tの内側に、受信用電極20の延出部22が配置される(
図10参照)。上面部32のうちの矢印Yとは反対方向における部分には、後退部32Fが設けられる。後退部32Fは、送信用電極10の上面部12の配置を許容するための部位である。
【0090】
図12および
図14に示されるように、上面部32、中間部33および下面部34の矢印X方向における端部は、側壁部31に接続している。一方で、上面部32、中間部33および下面部34の矢印Xとは反対方向における端部は、送信用電極10の側壁部11に接続しておらず、側壁部11から離れている。
【0091】
(送信用領域50Aおよび受信用領域50B)
図13〜
図15に示されるように、圧電体50の内部には、送信用領域50Aおよび受信用領域50Bが形成される。送信用領域50Aは、圧電体層A1〜A4からなる4層構造を有している。
図13〜
図15中の白色矢印は、各圧電体層の分極方向を示している。
【0092】
圧電体層A1〜A4は、短冊形状を有する薄肉の圧電セラミックよりなる4層の圧電体層の間に、送信用電極10の中間部13、共通電極30の中間部33、および送信用電極10の中間部14を介在させてこれらを積層し、一体に焼成することにより作製される。圧電体層A1〜A4は、送信用電極10および共通電極30によって電気的に並列に接続される。
【0093】
受信用領域50Bは、圧電体層B1の1層構造を有している。圧電体層B1は、短冊形状を有する薄肉の圧電セラミックよりなる4層の圧電体層の間に、電極を介在させないでこれらを積層し、一体に焼成することにより作製される。
【0094】
共通電極30の下面部34は、送信用領域50Aおよび受信用領域50Bの双方に及んで広がる形状を有している。送信用電極10の上面部12は、圧電体層A1〜A4を含む送信用領域50Aを間に挟んで共通電極30の下面部34に対向している。受信用電極20の円盤部21は、圧電体層B1を含む受信用領域50Bを間に挟んで共通電極30の下面部34に対向している。すなわち、圧電体50のうち、送信用電極10の上面部12と共通電極30の下面部34との間に位置する領域が送信用領域50Aとして機能し、受信用電極20の円盤部21と共通電極30の下面部34との間に位置する領域が受信用領域50Bとして機能する。
図13および
図15に示されるように、本実施の形態においては、送信用領域50Aと受信用領域50Bとは、X−Y面方向において互いに隣り合う位置に形成されている。
【0095】
[小括]
以上のようにして、本実施の形態に従う超音波センサ100は、交流電圧の印加の停止後に、送信用電極10および受信用電極20に電気的に接続されている半導体素子107を駆動して、送信用電極10および受信用電極20の間の経路109を導通状態にする。これにより、超音波センサ100は、超音波の発信後に生じる残響振動に応じて受信用領域50Bから出力される残響信号を送信用電極10にフィードバックする。
【0096】
物体が超音波センサ100に近いほど、超音波を発信してから反射波を受信するまでの時間が短くなる。超音波センサ100は、残響振動が治まるのを待たずして反射波を検出できるので、物体が近くに存在している場合であっても、物体からの反射波を検出することができる。
【0097】
また、第1の実施の形態に従う超音波センサ100においては、残響振動を検出するための電極と、超音波を受信するための電極とが1つの受信用電極20として設けられている。そのため、超音波センサ100は、残響振動を検出するための検出回路と、反射波を受信するための受信回路とで回路素子を共用できる。これにより、超音波センサ100の回路構成が簡素化され、超音波センサ100の小型化が実現される。
【0098】
特に、本実施の形態においては、受信回路110のために半導体素子を設ける必要がない。そのため、超音波センサ100においては、半導体素子の切り替えによって生じるノイズ信号を抑制できる。結果として、超音波センサ100は、S/N(Signal/Noise)比を抑制することができる。
【0099】
なお、上述の実施の形態では、半導体素子107が制御回路101によって駆動されるトランジスタとして構成されている例を示したが、半導体素子107は、トランジスタに限定されない。たとえば、半導体素子107は、後述の
図24に示されるように、ダイオードで構成されてもよい。この場合、残響信号は、ダイオードを駆動する閾値電圧(たとえば、順方向電圧)よりも高くなり、超音波の反射波に伴う出力信号は、当該閾値電圧よりも低くなる。そのため、残響振動を抑制するステップでは、残響信号が電圧として送信用電極10にフィードバックされるが、超音波の反射波を受信するステップでは出力信号が送信用電極10にフィードバックされない。したがって、この場合でも第1の実施の形態に従う超音波センサ100と同様の効果が得られる。
【0100】
<第2の実施の形態>
[超音波センサ100A]
図16を参照して、第2の実施の形態に従う超音波センサ100Aについて説明する。
図16は、超音波センサ100Aの回路構成の一例を示す図である。
【0101】
超音波センサ100Aは、位相調整器111をさらに備える点で第1の実施の形態に従う超音波センサ100と異なる。位相調整器111以外の構成については、上述の通りであるので説明を繰り返さない。
【0102】
図16に示されるように、超音波センサ100Aは、信号生成回路104と、半導体素子107と、増幅器108と、受信回路110と、位相調整器111と、圧電素子200とを備える。位相調整器111は、経路109において半導体素子107と増幅器108とに電気的に接続されている。
【0103】
残響信号は、回路特性や周囲の環境(たとえば、温度)などに応じて、意図しているよりもずれることがある。
【0104】
位相調整器111は、残響振動が最もよく抑制され得るように受信用領域50Bからの残響信号の位相を調整し、調整後の残響信号を送信用電極10にフィードバックする。位相調整器111によってシフトされる位相の大きさは、設計時に予め決められていてもよいし、周囲の環境(たとえば、温度等)や回路特性等に応じて変えられてもよい。
【0105】
[小括]
以上のようにして、第2の実施の形態に従う超音波センサ100Aは、位相を調整した状態で残響信号を送信用電極10にフィードバックする。これにより、超音波センサ100Aは、より確実に残響振動を抑制することができる。
【0106】
<第3の実施の形態>
[超音波センサ100B]
図17を参照して、第3の実施の形態に従う超音波センサ100Bについて説明する。
図17は、超音波センサ100Bの回路構成の一例を示す図である。
【0107】
超音波センサ100Bは、バッファ回路113をさらに備える点で第2の実施の形態に従う超音波センサ100Aと異なる。バッファ回路113以外の構成については、上述の通りであるので説明を繰り返さない。
【0108】
図17に示されるように、超音波センサ100Bは、信号生成回路104と、半導体素子107と、増幅器108と、受信回路110と、位相調整器111と、バッファ回路113と、圧電素子200とを備える。バッファ回路113は、経路109において位相調整器111と半導体素子107とに電気的に接続されている。
【0109】
バッファ回路113が設けられることで、超音波センサ100Bは、送信用電極10から経路109を通って受信回路110にノイズ信号が流入することを防ぐ。これにより、受信回路110におけるSN比を下げることができる。
【0110】
[小括]
以上のようにして、第3の実施の形態に従う超音波センサ100Bにおいては、バッファ回路113によって、残響振動を低減するために設けられている経路109と、超音波を受信するために設けられている経路114とがより確実に電気的に分離される。これにより、超音波センサ100Bは、ノイズ信号が受信回路110に流入することを防ぐことができる。
【0111】
<第4の実施の形態>
[新たな知見]
図18を参照して、第3の実施の形態に従う超音波センサ100Bにおいて新規に発見された知見について説明する。
図18は、超音波センサ100Bに生じる寄生容量を示す図である。
【0112】
発明者らは、送信用電極10と受信用電極20との間に寄生容量115が生じることを新たに発見した。発明者らの知る限り、送信用電極10と受信用電極20との間に寄生容量115が生じることを示す先行技術文献は存在しない。このことが今までに発見されていなかった理由としては、送信用電極10、受信用電極20、および共通電極30からなる3端子構造の超音波センサ自体が新規であることが考えられる。
【0113】
送信用領域50Aから出力される残響信号や、受信用領域50Bからフィードバックされる残響信号は、寄生容量115を通過して、経路109に流入してしまうことがある。その結果、圧電素子200が異常発振してしまう可能性がある。第4の実施の形態に従う超音波センサ100Cは、以下で説明するように、このような異常発振を防ぐことができる。
【0114】
[超音波センサ100C]
図19を参照して、第4の実施の形態に従う超音波センサ100Cについて説明する。
図19は、超音波センサ100Cの回路構成の一例を示す図である。
【0115】
超音波センサ100Cは、I/V変換回路としてのフィルタ回路140および保護回路160をさらに備える点で第3の実施の形態に従う超音波センサ100Bと異なる。フィルタ回路140および保護回路160以外の構成については、上述の通りであるので説明を繰り返さない。
【0116】
(フィルタ回路140)
図19に示されるように、超音波センサ100Cは、信号生成回路104と、半導体素子107と、増幅器108と、受信回路110と、位相調整器111と、バッファ回路113と、フィルタ回路140と、保護回路160とを備える。
【0117】
フィルタ回路140は、超音波センサ100Cが異常発振する原因となる周波数帯域の信号をフィルタリングする。フィルタ回路140は、経路109上に設けられている。これにより、フィルタ回路140は、寄生容量115から経路109に流入するノイズ信号をフィルタリングすることができ、超音波センサ100Cが異常発振することが防止され得る。
【0118】
図19の例では、フィルタ回路140は、オペアンプ141と、抵抗143と、コンデンサ145とからなるI/V変換回路として構成されている。なお、フィルタ回路140は、電流を電圧に変換することによって、特定の周波数をカットする機能を有するものであればよい。たとえば、オペアンプ141の代わりにチャージアンプが用いられてもよい。
【0119】
オペアンプ141の反転入力端子は、受信用電極20(端子REC)に電気的に接続されている。オペアンプ141の非反転入力端子は、接地されている。オペアンプ141の出力端子は、増幅器108に電気的に接続されている。
【0120】
抵抗143は、オペアンプ141の反転入力端子とオペアンプ141の出力端子とに電気的に接続されている。コンデンサ145は、オペアンプ141の反転入力端子とオペアンプ141の出力端子とに電気的に接続されている。オペアンプ141と、抵抗143と、コンデンサ145とは、互いに並列に接続されている。
【0121】
このように構成されることで、フィルタ回路140は、寄生容量115とコンデンサ145の容量との比で決まるローパスフィルタとして機能する。当該比は、たとえば、寄生容量115をコンデンサ145の容量で割った値として表される。好ましくは、コンデンサ145の容量は、寄生容量115よりも大きい。これにより、フィルタ回路140は、異常発振する周波数帯域の信号成分に対するゲイン応答を下げることができ、超音波センサ100Cを安定的に動作させることができる。
【0122】
なお、
図19の例では、フィルタ回路140がローパスフィルタとして機能するI/V変換回路で示されているが、フィルタ回路140は、I/V変換回路に限定されない。たとえば、フィルタ回路140は、バンドパスフィルタであってもよいし、チャージアンプ回路であってもよい。バンドパスフィルタは、圧電素子200の共振周波数を含む周波数帯域を通過するように構成される。すなわち、バンドパスフィルタは、圧電素子200の共振周波数以外の周波数帯域の信号をカットするように構成される。
【0123】
図20を参照して、超音波センサが異常発振する可能性のある回路例(A),(B)について説明する。
図20は、比較例に従う超音波センサ100Y,100Zのそれぞれの回路構成の一例を示す図である。
【0124】
図20の回路例(A)に示されるように、超音波センサ100Yは、フィルタ回路140(
図19参照)の代わりに、ボルテージフォロア回路170を備える。ボルテージフォロア回路170は、オペアンプ171を含む。超音波センサ100Yの寄生容量115にノイズ信号が流れた場合、当該ノイズ信号は、オペアンプ171の
非反転入力端子に直接流れる。このノイズ信号が原因となり、超音波センサ100Yは、異常発振してしまう可能性がある。
【0125】
図20の回路例(B)に示されるように、超音波センサ100Zは、フィルタ回路140(
図19参照)の代わりに、反転増幅回路180を備える。反転増幅回路180は、コンデンサ181と、オペアンプ183と、抵抗184,185とを含む。超音波センサ100Zの寄生容量115にノイズ信号が流れた場合、当該ノイズ信号は、オペアンプ183の反転入力端子に直接流れる。このノイズ信号が原因となり、超音波センサ100Zは、異常発振してしまう可能性がある。
【0126】
(保護回路160)
図19を再び参照して、保護回路160について説明する。超音波センサ100Cの共振特性によりオペアンプ141には、電源電圧以上の電圧が印加されることがある。保護回路160は、このような過剰な電圧がオペアンプ141に印加されることを防止する。
【0127】
保護回路160は、ダイオード161,163を備える。ダイオード161のカソードは、経路109に接続されている。ダイオード161のアノードは、接地されている。ダイオード163のカソードは、接地されている。ダイオード163のアノードは、経路109に接続されている。なお、保護回路160は、超音波センサ100Cに必ずしも設けられる必要はない。
【0128】
[シミュレーション結果1]
図19を引き続き参照しつつ、
図21を参照して、第4の実施の形態に従う超音波センサ100Cを用いたシミュレーション結果について説明する。
図21は、異常発振が生じている場合のシミュレーション結果と、異常発振が生じていない場合のシミュレーション結果とを示す図である。
【0129】
より具体的には、
図21のグラフ(A1),(B1)には、超音波センサ100Cが信号生成回路104に出力する制御信号が示されている。
図21のグラフ(A2),(B2)には、超音波センサ100Cが半導体素子107に出力する制御信号が示されている。
【0130】
図21のグラフ(A3)には、寄生容量115を50pF(picoFarad)と仮定し、コンデンサ145の容量を10pFと仮定した場合における超音波センサ100Cの出力波形が示されている。グラフ(A3)に示されるように、残響振動が抑制されている時刻T2から時刻T3までの間に、寄生容量115を通過したノイズ信号が出力波形として現れている(点線311参照)。超音波センサ100Cは、このノイズ信号に起因して、時刻T3以降において異常発振している。そのため、超音波センサ100Cは、時刻T4に受信された反射波を検出できない(点線313参照)。
【0131】
図21のグラフ(B3)には、寄生容量115を50pFと仮定し、コンデンサ145の容量を100pFと仮定した場合における超音波センサ100Cの出力波形が示されている。グラフ(B3)に示されるように、残響振動を抑制している時刻T2から時刻T3までの間に、寄生容量115からのノイズ信号が出力波形として現れていない(点線31
5参照)。そのため、超音波センサ100Cは、時刻T3以降において異常発振せずに、時刻T4に受信された反射波を検出することができる。
【0132】
[シミュレーション結果2]
図19を再び参照しつつ、
図22を参照して、第4の実施の形態に従う超音波センサ100Cを用いた他のシミュレーション結果について説明する。
図22は、残響振動の抑制時に超音波センサ100Cに流れる信号の周波数と、当該信号に対する超音波センサ100Cのゲインとの関係(以下、「オープンループ特性」ともいう。)を示す図である。
【0133】
図22のグラフ(A)には、フィルタ回路140を設けない場合において、寄生容量115を0.1pF,1pF,10pF,100pFとしたときにおけるオープンループ特性が示されている。フィルタ回路140が設けられていない場合、共振周波数以外の周波数帯域において、ゲインが0dB以上になる(点線321参照)。この周波数帯域の信号は、異常発振の原因となる。
【0134】
図22のグラフ(B)には、フィルタ回路140を設けた場合において、寄生容量115を0.1pF,1pF,10pF,100pFとしたときにおけるオープンループ特性が示されている。グラフ(B)の例では、フィルタ回路140のコンデンサ145の容量は、100pFとする。グラフ(B)においては、共振周波数以外の周波数帯域における信号のゲインがフィルタ回路140によって抑制されている。
【0135】
[小括]
以上のようにして、超音波センサ100Cは、異常発振する原因となる周波数帯域の信号をフィルタリングするフィルタ回路140を備える。これにより、超音波センサ100Cは、異常発振を防止することができる。
【0136】
[実験結果1]
図23を参照して、第4の実施の形態に従う超音波センサ100Cの利点についてさらに説明する。
図23は、第4の実施の形態に従う超音波センサ100Cおよび比較例に従う超音波センサ100Zにおける温度に対する残響時間の違いを示す図である。
【0137】
図23に示される実験結果から、第4の実施の形態に従う超音波センサ100Cの方が比較例に従う超音波センサ100Zよりも温度に対する残響時間のばらつきが少ないことが分かる。このような結果となった理由は、I/V変換回路の入力が理想的にはバーチャルショートの状態になるので、超音波センサの制動容量の影響を受けずに超音波センサの振動速度に応じた信号を取り出すことができ、制動容量の温度特性による影響を受けにくいからであると考えられる。
【0138】
<第5の実施の形態>
[超音波センサ100D]
図24を参照して、第5の実施の形態に従う超音波センサ100Dについて説明する。
図24は、超音波センサ100Dの回路構成の一例を示す図である。
【0139】
第1の実施の形態に従う超音波センサ100においては、半導体素子107がトランジスタとして構成されていた。これに対して、第5の実施の形態に従う超音波センサ100Dにおいては、半導体素子107がダイオード191,192として構成される。半導体素子107以外の構成については、上述の通りであるので説明を繰り返さない。
【0140】
ダイオード191,192は、経路109上に設けられており、互いに並列に接続されている。ダイオード191のカソードは、増幅器108に接続されている。ダイオード191のアノードは、端子DRVに接続されている。ダイオード192のカソードは、端子DRVに接続されている。ダイオード192のアノードは、増幅器108に接続されている。
【0141】
[小括]
以上のように、第5の実施の形態に従う超音波センサ100Dにおいては、半導体素子107がダイオード191,192として構成される。残響信号は、ダイオード191,192を駆動する閾値電圧(たとえば、順方向電圧)よりも高くなり、超音波の反射波に伴う出力信号は、当該閾値電圧よりも低くなる。そのため、残響振動を抑制するステップでは、残響信号が電圧として送信用電極10にフィードバックされるが、超音波の反射波を受信するステップでは出力信号が送信用電極10にフィードバックされない。したがって、この場合でも第1の実施の形態に従う超音波センサ100と同様の効果が得られる。
【0142】
<第6の実施の形態>
[超音波センサ100E]
図25を参照して、第6の実施の形態に従う超音波センサ100Eについて説明する。
図25は、超音波センサ100Eの回路構成の一例を示す図である。
【0143】
第6の実施の形態に従う超音波センサ100Eにおいては、第1の実施の形態に従う超音波センサ100における送信用電極10と受信用電極20とを接続する電気的な経路109に昇圧トランス106がさらに設けられる。より具体的には、昇圧トランス106は、送信用電極10の端子DRV側の位置、すなわち送信用電極10の前段に接続されている。昇圧トランス106以外の構成については、上述の通りであるので説明を繰り返さない。
【0144】
昇圧トランス106は、一次コイルと二次コイルとを備える。昇圧トランス106の一次コイルは、信号生成回路104および半導体素子107に接続されている。昇圧トランス106の二次コイルは、端子DRVに接続されている。一次コイル側の電圧と二次コイル側の電圧との比は、たとえば1:10である。以上のように構成されることで、残響信号は、受信用電極20から送信端子にフィードバックされる際に昇圧トランス106によって増幅される。その結果、残響信号が微小であったとしても、残響振動が抑制される。
【0145】
<第7の実施の形態>
[概要]
第7の実施の形態に従う超音波センサ100Fの概要を説明する。第7の実施の形態に従う超音波センサ100Fは、検知距離が互いに異なる複数の動作モードを有する点で、第1の実施の形態に従う超音波センサ100Aとは異なる。超音波センサ100Fは、検知距離が互いに異なる複数の動作モードを順に切り替え、現在の動作モードに応じた制御条件で圧電素子200(
図1参照)を制御する。これにより、検知可能な距離の範囲が広くなる。また、超音波センサ100Fは、あらゆる場所にある物体を検知することが可能になる。なお、超音波センサ100Fは、少なくとも2つの動作モードを有すればよい。
【0146】
第7の実施の形態に従う超音波センサ100Fのハードウェア構成などは、第1の実施の形態に従う超音波センサ100と同じであるので、以下では、それらの説明については繰り返さない。
【0147】
[超音波センサ100Fの制御構造]
図26および
図27を参照して、第7の実施の形態に従う超音波センサ100Fについて説明する。
図26は、第7の実施の形態に従う超音波センサ100Fが実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
図26の処理は、超音波センサ100Fを制御するための制御回路101(
図1参照)がプログラムを実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、CPU、その他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0148】
ステップS2において、制御回路101は、
図27に示される制御情報124を読み込む。
図27は、制御情報124の内容を示す図である。制御情報124は、たとえば、制御回路101の記憶領域などに予め格納されている。
図27に示されるように、超音波センサ100Fの動作モードの各々には、超音波センサ100Fの検知距離に応じて圧電素子200(
図1参照)の制御条件が対応付けられている。
【0149】
ステップS4において、制御回路101は、超音波センサ100Fの現在の動作モードに対応する制御条件を制御情報124から、取得する。
【0150】
ステップS10において、制御回路101は、半導体素子107(
図2参照)を駆動して経路109(
図2参照)を非導通状態にする。
【0151】
ステップS12Aにおいて、制御回路101は、ステップS4で取得された制御条件に基づいて、圧電素子200(
図1参照)の送信用領域50Aに交流電圧を印加する。より具体的には、ステップS4で取得された制御条件には、圧電素子200の駆動電圧と、圧電素子200の駆動周波数とが規定されており、制御回路101は、当該駆動電圧および当該駆動周波数で圧電素子200を駆動する。これにより、圧電素子200の送信用領域50Aから超音波が発せられる。
【0152】
ステップS20において、制御回路101は、送信用領域50Aに交流電圧を印加してから予め定められた時間(たとえば、数マイクロ秒〜数ミリ秒)が経過したか否かを判断する。制御回路101は、送信用領域50Aに交流電圧を印加してから予め定められた時間が経過したと判断した場合(ステップS20においてYES)、制御をステップS22に切り替える。そうでない場合には(ステップS20においてNO)、制御回路101は、ステップS20の処理を再び実行する。
【0153】
ステップS22において、制御回路101は、圧電素子200の送信用領域50Aに対する交流電圧の印加を停止する。
【0154】
ステップS23において、制御回路101は、ステップS4で取得された制御条件に基づいて、残響振動を抑制するか否かを判断する。より具体的には、ステップS4で取得された制御条件には、残響振動を抑制することを有効にするか否かを表わす抑制モードが規定されている。ステップS4で取得された制御条件に規定されている抑制モードがONである場合には、制御回路101は、残響振動を抑制すると判断する。ステップS4で取得された制御条件に抑制モードがOFFである場合には、制御回路101は、残響振動を抑制しない判断する。制御回路101は、残響振動を抑制すると判断した場合(ステップS23においてYES)、制御をステップS24に切り替える。そうでない場合には(ステップS23においてNO)、制御回路101は、制御をステップS34Aに切り替える。
【0155】
ステップS24において、制御回路101は、半導体素子107を駆動して、経路109を非導通状態から導通状態に切り替える。これにより、残響振動に応じて出力される残響信号が圧電素子200の受信用領域50B(
図2参照)から送信用電極10(
図2参照)にフィードバックされる。その結果、超音波センサ100Fの残響振動が抑制される。
【0156】
ステップS30Aにおいて、制御回路101は、経路109を導通状態にしてから所定時間が経過したか否かを判断する。当該所定時間は、ステップS4で取得された制御条件に規定されている。すなわち、制御回路101は、ステップS4で取得された制御条件に規定されている時間だけ経路109を導通状態にする。制御回路101は、経路109を導通状態にしてから所定時間が経過したと判断した場合(ステップS30AにおいてYES)、制御をステップS32に切り替える。そうでない場合には(ステップS30AにおいてNO)、制御回路101は、ステップS30Aの処理を再び実行する。
【0157】
ステップS32において、制御回路101は、半導体素子107を駆動して、経路109を導通状態から非導通状態に切り替える。
【0158】
ステップS34Aにおいて、制御回路101は、ステップS4で取得された制御条件に基づいて、圧電素子200の受信用領域50Bを制御する。ステップS4で取得された制御条件には、超音波を発してから反射波を受信するまでの待ち時間と、当該反射波を受けて出力される受信信号のゲインとが規定されている。制御回路101は、超音波を発してから当該待ち時間が経過するまでの間に受信した反射波を、当該ゲインに応じた電圧値として受信回路110(
図1参照)に出力する。制御回路101は、超音波を発してから当該待ち時間が経過したことに基づいて、制御をステップS40に切り替える。
【0159】
ステップS40において、制御回路101は、超音波センサ100Fの全ての動作モードについて本実施の形態に従う制御処理が実行されたか否かを判断する。制御回路101は、超音波センサ100Fの全ての動作モードについて本実施の形態に従う制御処理が実行されたと判断した場合(ステップS40においてYES)、本実施の形態に従う制御処理を終了する。そうでない場合には(ステップS40においてNO)、制御回路101は、制御をステップS50に切り替える。
【0160】
ステップS50において、制御回路101は、超音波センサ100Fの動作モードを現在の動作モードから他の動作モードに切替える。ステップS40,S50の処理により、
図26に示される処理は、超音波センサ100Fの動作モードの数だけ繰り返される。
【0161】
[小括]
以上のようにして、超音波センサ100Fは、検知距離が互いに異なる複数の動作モードを順に切り替え、現在の動作モードに応じた制御条件で圧電素子200を制御する。これにより、検知可能な距離の範囲が広くなる。また、超音波センサ100Fは、あらゆる場所にある物体を検知することが可能になる。
【0162】
<第8の実施の形態>
[概要]
第8の実施の形態に従う超音波センサ100Gの概要を説明する。第8の実施の形態に従う超音波センサ100Gは、少なくとも、近距離を検知するための動作モード(第1動作モード)(以下、「近距離モード」ともいう。)と、遠距離を検知するための動作モード(第2動作モード)(以下、「遠距離モード」ともいう。)とを有する点で、第7の実施の形態に従う超音波センサ100Fとは異なる。
【0163】
検知対象の物体が超音波センサ100Gから離れている場合には、残響振動は自然に収まる。そのため、検知対象の物体が超音波センサ100Gから離れている場合には、残響振動が抑制される必要がない。この点に着目して、超音波センサ100Gは、動作モードが遠距離モードである場合に残響信号を抑制する処理を実行しない。すなわち、この場合には、残響信号を抑制する処理が停止される。これにより、超音波センサ100Gの消費電力が抑制される。
【0164】
なお、ハードウェア構成などのその他の点については上述の通りであるので、それらの説明を繰り返さない。
【0165】
[超音波センサ100Gの制御構造]
図28を参照して、第8の実施の形態に従う超音波センサ100Gについて説明する。
図28は、第8の実施の形態に従う超音波センサ100Gが実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
図28の処理は、超音波センサ100Gを制御するための制御回路101(
図1参照)がプログラムを実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、CPU、その他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0166】
なお、ステップS23A以外の処理は
図3で説明した通りであるので、以下ではそれらの説明については繰り返さない。
【0167】
ステップS23Aにおいて、制御回路101は、超音波センサ100Gの動作モードが近距離モードであるか否かを判断する。超音波センサ100Gの動作モードは、たとえばユーザーによって任意に設定される。制御回路101は、超音波センサ100Gの動作モードが近距離モードであると判断した場合(ステップS23AにおいてYES)、制御をステップS24に切り替える。そうでない場合には(ステップS23AにおいてNO)、制御回路101は、制御をステップS34に切り替える。
【0168】
ステップS23Aの処理により、超音波センサ100Gの動作モードが近距離モードである場合には、制御回路101は、残響振動を抑制するためのステップS24〜S32の処理を実行する。すなわち、この場合には、制御回路101は、残響信号を圧電素子200(
図1参照)の送信用電極10にフィードバックする処理を実行する。超音波センサ100Gの動作モードが遠距離モードである場合には、制御回路101は、残響振動を抑制するためのステップS24〜S32の処理を実行しない。すなわち、この場合には、制御回路101は、残響信号を圧電素子200の送信用電極10にフィードバックする処理が停止される。
【0169】
[小括]
以上のようにして、本実施の形態に従う超音波センサ100Gは、動作モードが遠距離モードである場合には、残響振動を抑制するための処理を実行しない。これにより、これにより、超音波センサ100Gの消費電力が抑制される。
【0170】
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。