特許第6249138号(P6249138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249138
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】未延伸フィルム及び成形体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   B32B27/36
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-525437(P2017-525437)
(86)(22)【出願日】2016年8月23日
(86)【国際出願番号】JP2016074480
(87)【国際公開番号】WO2017033916
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2017年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-164617(P2015-164617)
(32)【優先日】2015年8月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】前岨 晋一
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/038655(WO,A1)
【文献】 特開2013−087206(JP,A)
【文献】 特開2012−082267(JP,A)
【文献】 特開2004−058485(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0196120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1以上のポリエステル樹脂を含む、第1のフィルムと、第2のフィルムと、第3のフィルムと、を有し、
前記第2のフィルムが、前記第1のフィルムと前記第3のフィルムとの間に積層されて構成されるとともに、
少なくとも前記第2のフィルムが、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含み、
総厚が10μm以上であり、
前記第1のフィルムが、一方の最表層となるように積層されており、
前記第3のフィルムが、他方の最表層となるように積層されており、
前記第2のフィルム中のグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有割合が、前記第1のフィルムにおける含有割合及び前記第3のフィルムにおける含有割合よりも高く、
前記第1のフィルム中のグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有割合が1〜20質量%であり、前記第2のフィルム及び前記第3のフィルム中のグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有割合が5〜40質量%であり、
前記ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂のみからなる、未延伸フィルム。
【請求項2】
30℃以上、100℃以下で軟化点を示す、請求項1に記載の未延伸フィルム。
【請求項3】
前記未延伸フィルム同士をシール時間1秒、シール圧力0.1MPaの条件下で、シール温度210℃以上でシール強度を示し、前記シール強度が1N/15mm以上である、請求項1又は2に記載の未延伸フィルム。
【請求項4】
100℃における破断伸びが200%以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の未延伸フィルム。
【請求項5】
請求項1に記載の未延伸フィルムを2次加工することにより得られる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未延伸フィルム及び成形体に関する。
本願は、2015年8月24日に、日本に出願された特願2015−164617号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ラミネート用フィルムや成形用フィルムの材料として、種々の樹脂が検討されている。
その中でも、ポリエステル樹脂は、機械的性質及び化学的性質に優れるため、一般的によく用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ラミネート用のフィルムであって、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と記載することがある)を含むフィルムが開示されている。特許文献1では、フィルムに二軸延伸処理を施すことで、機械的強度及び耐熱性を向上させている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、内外装パネル等の意匠材用の積層フィルムであって、ポリエステル樹脂Aからなる層とポリエステル樹脂Bからなる層が交互にそれぞれ50層以上積層された構造を含む二軸延伸フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−006543号公報
【特許文献2】特開2010−184493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたフィルムでは、フィルムに延伸処理を施しているため、ヒートシール性や成形加工性に劣るという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、広い温度条件でヒートシールが可能であり、かつ、成形加工性に優れる未延伸フィルム、及びこれを2次加工することにより得られる成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
〔1〕 少なくとも1以上のポリエステル樹脂を含む、第1のフィルムと、第2のフィルムと、第3のフィルムと、を有し、
前記第2のフィルムが、前記第1のフィルムと前記第3のフィルムとの間に積層されて構成されるとともに、
少なくとも前記第2のフィルムが、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含み、
総厚が10μm以上であり、
前記第1のフィルムが、一方の最表層となるように積層されており、
前記第3のフィルムが、他方の最表層となるように積層されており、
前記第2のフィルム中のグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有割合が、前記第1のフィルムにおける含有割合及び前記第3のフィルムにおける含有割合よりも高く、
前記第1のフィルム中のグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有割合が1〜20質量%であり、前記第2のフィルム及び前記第3のフィルム中のグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有割合が5〜40質量%であり、
前記ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂のみからなる、未延伸フィルム。
【0010】
〕 30℃以上、100℃以下で軟化点を示す、前記〔1〕に記載の未延伸フィルム。
【0012】
記未延伸フィルム同士をシール時間1秒、シール圧力0.1MPaの条件下で、シール温度210℃以上でシール強度を示し、前記シール強度が1N/15mm以上である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の未延伸フィルム。
【0013】
〕 100℃における破断伸びが200%以上である、前記〔1〕乃至〔〕のいずれかひとつに記載の未延伸フィルム。
【0017】
〕 前記〔1〕に記載の未延伸フィルムを2次加工することにより得られる成形体。
【発明の効果】
【0018】
本発明の未延伸フィルムは、少なくとも1以上のポリエステル樹脂を含むフィルムを、少なくとも2層以上有し、総厚が10μm以上であるため、広い温度条件でヒートシールが可能であり、かつ、成形加工性に優れる。
【0019】
また、本発明の成形体は、上記未延伸フィルムを2次加工することにより得られるため、容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用した一実施形態である未延伸フィルムの構成を示す断面図である。
図2】実施例1及び2、並びに比較例1で作製した各フィルムの動的粘弾性試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用した一実施形態である未延伸フィルム、及びこれを2次加工することにより得られる成形体について詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0022】
<未延伸フィルム>
先ず、本発明を適用した一実施形態である未延伸フィルムの構成について説明する。図1は、本発明を適用した一実施形態である未延伸フィルム1の断面模式図である。図1に示すように、本実施形態の未延伸フィルム1は、3層からなる積層フィルムであり、第1のフィルム2と、第2のフィルム3と、第3のフィルム4と、を備えて概略構成されている。
【0023】
本実施形態では、3層からなる未延伸フィルム1について説明するが、2層以上であれば、特に限定されるものではない。
【0024】
未延伸フィルム1は、機能性シーラント等のラミネート用途や、深絞り成形やインサート成形等の成形用途に用いることができる。
【0025】
本実施形態の未延伸フィルム1は、第1のフィルム2と第3のフィルム4との間に第2のフィルム3が挿入され、第1のフィルム2及び第3のフィルム4が最表層となるように積層されている。
【0026】
また、本実施形態の未延伸フィルム1は、製造過程において延伸処理を施していないフィルムである。延伸処理を施さないことにより、広い温度条件でヒートシールが可能であり、かつ、成形加工性に優れる。
【0027】
第1のフィルム2、第2のフィルム3、及び第3のフィルム4は、少なくとも1以上のポリエステル樹脂を含む。
【0028】
上記ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸成分とグリコール成分からなるポリマーであり、ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。これらのジカルボン酸成分のうち、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましい。一方、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリオキシエチレングリコール等が挙げられる。これらのグリコール成分のうち、エチレングリコールが好ましい。これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は、1種類を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記ポリエステル樹脂としては、上記のジカルボン酸成分とグリコール成分からなるポリマーであれば、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、PET樹脂、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」と記載することがある)樹脂、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であるグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(以下、「PETG」と記載することがある)樹脂等が挙げられる。
【0030】
上記ポリエステル樹脂としてPET樹脂を選択することで、未延伸フィルム1のシール性、成形性を改善することができる。
また、上記ポリエステル樹脂としてPBT樹脂を選択することで、未延伸フィルム1の耐熱性を改善することができる。
また、上記ポリエステル樹脂としてPETG樹脂を、PET樹脂又はPBT樹脂と併せて用いることで、PET樹脂又はPBT樹脂の結晶化を抑制し、未延伸フィルム1の脆性を改善することができる。
【0031】
第1のフィルム2、第2のフィルム3、及び第3のフィルム4の各フィルム中に含まれるPETG樹脂の含有割合は、各フィルムで同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、PETG樹脂の含有割合は、各フィルムに含まれるポリエステル樹脂(PETG樹脂を除く)の種類や、未延伸フィルム1の用途によって適宜設定することができる。
【0032】
例えば、未延伸フィルム1を構成する各フィルムにPET樹脂が含まれる場合、第2のフィルム3にのみPETG樹脂を含有させてもよい。このとき、PETG樹脂の含有割合は、第2のフィルム3の質量に対して、1〜40質量%であるのが好ましく、5〜20質量%であるのがより好ましい。
【0033】
第2のフィルム3において、PETG樹脂の含有割合が1質量%以上であることにより、第2のフィルム3の脆性を改善することができる。また、PETG樹脂の含有割合が40質量%以下であることにより、フィルムの剛性を維持することができる。
【0034】
また、例えば、未延伸フィルム1を構成する各フィルムにPBT樹脂が含まれ、かつ、第1のフィルム2側を被着体にラミネートする用途で未延伸フィルム1を用いる場合、PETG樹脂の含有割合が、被着体と接触する面である第1のフィルム2において、1〜20質量%であるのが好ましく、5〜10質量%であるのがより好ましい。また、第2のフィルム3及び第3のフィルム4において、5〜40質量%であるのが好ましく、10〜30質量%であるのがより好ましい。
【0035】
第2のフィルム3及び第3のフィルム4において、PETG樹脂の含有割合が5質量%以上であることにより、第2のフィルム3及び第3のフィルム4の脆性を改善することができる。また、PETG樹脂の含有割合が40質量%以下であることにより、フィルムの耐熱性を維持することができる。また、第1のフィルム2において、第2のフィルム3及び第3のフィルム4よりもPETG樹脂の含有割合を下げることで、被着体との耐溶剤性及び密着性を確保することができる。
【0036】
第1のフィルム2及び第3のフィルム4には、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等のマスターバッチ(以下、「MB」と記載することがある)が添加されていてもよい。これにより、未延伸フィルム1の滑りを改善し、製造時にシワが入る等のトラブルを防止することができる。
【0037】
MBの添加量としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、第1のフィルム2又は第3のフィルム4の各フィルムに対して1〜5質量%が好ましい。
【0038】
第1及び第3のフィルムの厚さは、1〜10μmであるのが好ましい。また、第2のフィルムの厚さは、10〜100μmであるのが好ましい。
本実施形態の未延伸フィルム1の総厚としては、具体的には、例えば、10〜1000μmであるのが好ましく、20〜500μmがより好ましく、20〜300μmが特に好ましい。未延伸フィルム1の総厚が10μm以上、1000μm以下が好ましく、この範囲を外れると製膜性が著しく悪化する。
【0039】
本実施形態の未延伸フィルム1は、延伸処理を施さないことにより、広い温度条件でヒートシールが可能である。具体的には、例えば、第1のフィルム2、第2のフィルム3、及び第3のフィルム4に含まれるポリエステル樹脂として、PET樹脂を選択した場合、未延伸フィルム1同士をシール時間1秒、シール圧力0.1MPaの条件下でヒートシールした際に、シール温度110℃以上でシール強度を示し、このときのシール強度が1N/15mm以上であることが好ましく、5N/15mm以上であることがより好ましい。
【0040】
また、例えば、第1のフィルム2、第2のフィルム3、及び第3のフィルム4に含まれるポリエステル樹脂として、PBT樹脂を選択した場合、未延伸フィルム1同士をシール時間1秒、シール圧力0.1MPaの条件下でヒートシールした際に、シール温度210℃以上でシール強度を示し、このときのシール強度が1N/15mm以上であることが好ましく、2N/15mm以上であることがより好ましい。
【0041】
シール強度の測定は、引張試験機(例えば、エー・アンド・デイ社製、TENSILON RTG−1310等)を用いて、シール幅15mmでのシール強度を測定することにより行うことができる。
【0042】
本実施形態の未延伸フィルム1は、延伸処理を施さないことにより、軟化点が低く、かつ、破断伸びが高いため、成形加工性に優れる。
本実施形態の未延伸フィルム1の軟化点としては、具体的には、例えば、30〜100℃の範囲内に存在するのが好ましく、40〜90℃の範囲内に存在するのがより好ましい。
【0043】
軟化点の測定は、動的粘弾性測定装置(例えば、セイコーインスツル社製、EXSTAR6000等)を用いて行うことができる。
【0044】
また、本実施形態の未延伸フィルム1の破断伸びとしては、具体的には、例えば、100℃における破断伸びが200%以上であるのが好ましい。
【0045】
破断伸びの測定は、オートグラフ装置(例えば、島津製作所製、AUTOGRAPH AGS−X等)を用いて、JIS Z7127に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0046】
<未延伸フィルムの製造方法>
次に、上述した未延伸フィルム1の製造方法について説明する。
本実施形態の未延伸フィルム1は、上述した第1のフィルム2と、第2のフィルム3と、第3のフィルム4とを、例えば、空冷式または水冷式共押出インフレーション法、共押出Tダイ法で製膜する方法等で製造してもよい。これらの方法のうち、共押出Tダイ法で製膜する方法が、各層の厚さを制御する点で優れ好ましい。本実施形態の未延伸フィルム1は、製造過程において延伸処理を施していない。また、本実施形態の未延伸フィルム1は、上述した第1のフィルム2と、第2のフィルム3と、第3のフィルム4とを別々に製造してからラミネーター等により接合して製造してもよい。
【0047】
<成形体>
本実施形態の成形体は、上述した未延伸フィルム1を2次加工することによって得られる。
本実施形態の成形体としては、具体的には、例えば、未延伸フィルム1をラミネート用途で用いた場合、機能性シーラント等が挙げられる。また、例えば、未延伸フィルム1を成形用途で用いた場合、深絞り成形用途やインサート成形用途等が挙げられる。本実施形態の成形体は、上述した未延伸フィルム1を2次加工することにより得られるため、容易に成形することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の未延伸フィルム1によれば、少なくとも1以上のポリエステル樹脂を含むフィルムを、少なくとも2層以上有し、総厚が10μm以上であるため、広い温度条件でヒートシールが可能であり、かつ、成形加工性に優れる。
【0049】
また、本実施形態の未延伸フィルム1によれば、第1のフィルム2と、第2のフィルム3と、第3のフィルム4と、を有し、第2のフィルム3が、第1のフィルム2と第3のフィルム4との間に積層されて構成されるとともに、少なくとも第2のフィルム3が、PETG樹脂を含み、第2のフィルム3中のPETG樹脂の含有割合が、第1のフィルム2における含有割合及び第3のフィルム4における含有割合よりも高いため、例えば、未延伸フィルム1表面で剛性を確保しつつ、脆性を改善することができる。
【0050】
また、本実施形態の成形体は、上記未延伸フィルム1を2次加工することにより得られるため、容易に成形することができる。
【0051】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、上述した未延伸フィルム1では、ポリエステル樹脂を含む3層から構成される例について説明したが、各層の間や最表層に、別の機能を有する層を新たに設けてもよい。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の効果を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0053】
<未延伸フィルムの作製>
(実施例1)
第1のフィルム、第2のフィルム、及び第3のフィルムに含まれるポリエステル樹脂としてPET樹脂(三菱化学社製、銘柄:GM700Z)を用意した。また、第2のフィルムに含まれるポリエステル樹脂としてPETG樹脂(SK−ケミカル社製、銘柄:S2008)をさらに用意した。PETG樹脂中のグリコール成分は、エチレングリコールである。
【0054】
次に、第1のフィルムとしてPET樹脂と、第2のフィルムとしてPET樹脂とPETG樹脂を混合した樹脂組成物と、第3のフィルムとしてPET樹脂とを、この順番で共押出成形して積層フィルムを作製した。その際、第2のフィルムでは、PET樹脂が93質量%、PETG樹脂が7質量%となるように、混合比を調整した。作製した積層フィルムを未延伸フィルムとした。
【0055】
第1のフィルムの厚さは3μm、第2のフィルムの厚さは24μm、第3のフィルムの厚さは3μmであり、未延伸フィルムの総厚は30μmであった。
【0056】
(実施例2)
第1のフィルム、第2のフィルム、及び第3のフィルムに含まれるポリエステル樹脂としてPBT樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、銘柄:5020)及びPETG樹脂(SK−ケミカル社製、銘柄:S2008)を用意した。
【0057】
次に、第1のフィルムとしてPBT樹脂とPETG樹脂を混合した樹脂組成物と、第2のフィルムとしてPBT樹脂とPETG樹脂を混合した樹脂組成物と、第3のフィルムとしてPBT樹脂とPETG樹脂を混合した樹脂組成物とを、この順番で共押出成形して積層フィルムを作製した。その際、第1のフィルムでは、PBT樹脂が93質量%、PETG樹脂が7質量%となり、第2のフィルムでは、PBT樹脂が80質量%、PETG樹脂が20質量%となり、第3のフィルムでは、PBT樹脂が82質量%、PETG樹脂が18質量%となるように、混合比を調整した。作製した積層フィルムを未延伸フィルムとした。
【0058】
第1のフィルムの厚さは2μm、第2のフィルムの厚さは14μm、第3のフィルムの厚さは4μmであり、未延伸フィルムの総厚は20μmであった。
【0059】
(比較例1)
比較例1として、市販の二軸延伸PETフィルム(東洋紡社製、銘柄:E5107)を用意した。
二軸延伸フィルムの総厚は25μmであった。
【0060】
<ヒートシール性の評価>
実施例1で作製した未延伸フィルム、及び比較例1で作製した二軸延伸フィルムについて、ヒートシール性の評価を行った。ヒートシール性の評価は、同じフィルム同士をヒートシールしたものに対して行った。ヒートシール条件は、シール温度を110〜180℃、シール時間を1秒、シール圧力を0.1MPaで行った。また、ヒートシール性の評価は、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、TENSILON RTG−1310)を用いて、シール幅15mmでのシール強度を測定することにより行った。
【0061】
表1に、各シール温度でシールした時のシール強度について示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示すように、実施例1の未延伸フィルムでは、シール温度110℃以上でシール強度を示したのに対し、比較例1の二軸延伸フィルムでは、シール温度が180℃であってもシール強度を示さなかった。
【0064】
次に、実施例2で作製した未延伸フィルム、及び比較例1で作製した二軸延伸フィルムについても同様にヒートシール性の評価を行った。ヒートシール条件は、シール温度を210〜240℃、シール時間を1秒、シール圧力を0.1MPaで行った。
【0065】
表2に、各シール温度でシールした時のシール強度について示す。
【0066】
【表2】
【0067】
表2に示すように、実施例2の未延伸フィルムでは、シール温度210℃以上でシール強度を示したのに対し、比較例1の二軸延伸フィルムでは、シール温度210℃でシール強度を示さなかった。
【0068】
以上の結果より、実施例1,2の未延伸フィルムは、低い温度で合ってもヒートシールが可能であり、広い温度条件でヒートシールが可能であることを確認できた。
【0069】
<軟化点の測定>
実施例1,2で作製した未延伸フィルム、及び比較例1で作製した二軸延伸フィルムについて、軟化点の測定を行った。軟化点の測定は、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツル社製、EXSTAR6000)を用いて行った。
【0070】
図2に、各フィルムの動的粘弾性試験の結果を示す。図2において、弾性率が急激に減少したときの温度を軟化点とした。動的粘弾性試験の結果から、実施例1の未延伸フィルムの軟化点は約90℃であり、実施例2の未延伸フィルムの軟化点は約50℃であり、比較例1の二軸延伸フィルムの軟化点は約140℃であることを確認した。このように、実施例1,2の軟化点は30〜100℃の範囲内に存在していた。
【0071】
軟化点はフィルムの弾性率の数値が大きく減少したときの温度とした。一方、二軸延伸フィルムでは、明確な軟化点がなく、徐々に弾性率が低減すため、弾性率の桁数が変化したときの温度を軟化点とした。
【0072】
<破断伸びの測定>
実施例1,2で作製した未延伸フィルム、及び比較例1で作製した二軸延伸フィルムについて、破断のびの測定を行った。破断伸びの測定は、オートグラフ装置(例えば、島津製作所製、AUTOGRAPH AGS−X等)を用いて、JIS Z7127に記載の方法に準拠して測定した。また、破断伸びの測定は、23℃及び100℃において、MD方向及びTD方向の2方向で行った。
【0073】
表3に、各フィルムの23℃及び100℃における破断伸びを示す。
【0074】
【表3】
【0075】
表3に示すように、実施例1,2の未延伸フィルムでは、100℃における破断伸びが500%以上であるのに対し、比較例1の二軸延伸フィルムでは、100℃における破断伸びが200%以下であった。
【0076】
以上の結果より、実施例1,2の未延伸フィルムは、軟化点が低く、かつ、破断伸びが高いため、成形加工性に優れることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の未延伸フィルムは、広い温度条件でヒートシールが可能であり、かつ、成形加工性に優れるので、機能性シーラント等のラミネート用途や、深絞りやインサート成形等の成形用途に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0078】
1 未延伸フィルム
2 第1のフィルム
3 第2のフィルム
4 第3のフィルム
図1
図2