(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以降、図を参照していくつかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【0023】
以降で示す各実施形態において、「アンテナ装置」とは、磁束を放射するアンテナである。アンテナ装置は、通信相手側のアンテナと磁界結合を用いた近傍界通信のために用いられるアンテナであり、例えばNFC(Near field communication)等の通信に利用される。アンテナ装置は、使用する周波数帯が例えばHF帯で使用され、特に13.56MHzまたは13.56MHz近傍の周波数で用いられる。アンテナ装置の大きさは使用する周波数における波長λに比べて非常に小さく、使用周波数帯での電磁波の放射特性は悪い。後述するアンテナ装置が備えるコイルアンテナの大きさはλ/10以下である。なお、ここでいう波長とは、アンテナが形成される基材の誘電性や透磁性による波長短縮効果を考慮した実効的な波長のことを指す。コイルアンテナが有するコイル導体の両端は、使用周波数帯(HF帯、特に13.56MHzまたは13.56MHz近傍)を操作する給電回路に接続される。
【0024】
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態に係るアンテナ装置101の平面図であり、
図1(B)はコイル導体31に流れる電流と面状導体11に生じる電流との関係を示す、アンテナ装置101の平面図である。
【0025】
アンテナ装置101は、面状導体11、コイルアンテナ41を備える。面状導体11およびコイルアンテナ41は、面状導体11を平面視して(
図1(A)におけるZ方向から視て)、一部が重なる(本明細書中における「Z方向」とは、面状導体の主面の垂直方向であり、本明細書中における「Z方向から視て」とは、本発明の「面状導体を平面視して」に相当する。以下、同様。)。
【0026】
面状導体11は矩形状の平板導体である。面状導体11は例えばアンテナ装置101を備える電子機器の筐体の一部である。また、面状導体11は例えば電子機器の内部に配置されるプリント配線基板に形成されるグランド導体等であってもよい。
【0027】
コイルアンテナ41は、基材21、コイル導体31および電極P1,P2を有する。また、コイルアンテナ41は、Z方向から視て、コイル導体31が面状導体11に重なる第1領域F1と、コイル導体31が面状導体11に重ならない第2領域F2とを有する。
【0028】
基材21は、絶縁性材料からなる矩形状の平板である。基材21は例えばポリイミド(PI)や液晶ポリマー(LCP)等の樹脂製シートである。
【0029】
コイル導体31は、巻回軸AX1回りに巻回され、長手方向が横方向(
図1(A)におけるX方向)に一致した約3ターンの矩形スパイラル状の導体パターンである。本実施形態では、コイル導体31の巻回軸AX1がZ方向に平行である。コイル導体31は、スパイラル導体と引き回し導体とを有する。基材21の一方主面(
図1(A)における基材21の表面)に形成されるスパイラル導体の外周端は、基材21の一方主面に形成される電極P1に接続される。スパイラル導体の内周端は、基材21の他方主面(
図1(A)における基材21の裏面)に形成される引き回し導体および層間接続導体を介して、基材21の一方主面に形成される電極P2に接続される。電極P1,P2は図示しない給電回路に接続される。コイル導体31および電極P1,P2は例えばCu箔である。
【0030】
上述のとおり、アンテナ装置101のコイルアンテナ41および面状導体11は、Z方向から視て、一部が重なる。そのため、コイルアンテナ41は、Z方向から視て、コイル導体31が面状導体11に重なる第1領域F1と、コイル導体31が面状導体11に重ならない第2領域F2とを有する。
【0031】
図1(A)に示すように、第1領域F1のコイル導体31の線幅(
図1(A)におけるW1)は、第2領域F2のコイル導体31の一部(X方向に延伸する部分)の線幅(W2)よりも太い(W1>W2)。すなわち、コイル導体31は、第2領域F2に比べて第1領域F1に、線幅の太い部分を有する。なお、アンテナ装置101において、第1領域F1における隣接するコイル導体31同士の間隔(D1)は、第2領域F2の一部における隣接するコイル導体31同士の間隔(D2)に等しい(D1=D2)。なお、「隣接するコイル導体の間隔」とは、最も近接したコイル導体同士の間隙を言い、後に詳述するように、平面(XY平面)上で近接するコイル導体同士の間隙だけでなく、三次元において最も近接したコイル導体同士の間隙を言う。
【0032】
一般的に、コイルを形成するコイル導体の線幅が細い場合に比べて、コイル導体の線幅が太い場合の方がコイルのインダクタンスは低くなる。これは、コイル導体の線幅が太いことにより、コイル導体に流れる電流が広がることで、発生する磁束量が低下するためである。したがって、コイル導体31の第1領域F1における周方向の単位長当たりのインダクタンスは、コイル導体31の第2領域における周方向の単位長当たりのインダクタンスよりも小さい。
【0033】
なお、本発明におけるコイル導体の「周方向」とは、例えばコイル導体の延伸方向をいい、本発明におけるコイル導体の「径方向」とは、例えばコイル導体の延伸方向と直交する方向をいう。言い換えると、コイル導体によって囲まれるコイル開口に沿った方向がコイル導体の「周方向」であり、その周方向に直交する方向がコイル導体の「径方向」である。
【0034】
まず、コイル導体31のX方向に延伸する部分について説明すると、Z方向から視たコイル導体31の形成領域の第1領域F1における径方向の幅(
図1(B)におけるR11)は、Z方向から視たコイル導体31の形成領域の第2領域F2における径方向の幅(
図1(B)におけるR21)よりも大きい(R11>R21)。次に、コイル導体31のY方向に延伸する部分について説明すると、Z方向から視たコイル導体31の形成領域の第1領域F1における径方向の幅(
図1(B)におけるR12)は、Z方向から視たコイル導体31の形成領域の第2領域F2における径方向の幅(R12)と等しい。すなわち、第1領域F1におけるコイル導体31の平均径方向幅(R1)は、第2領域F2におけるコイル導体31の平均径方向幅(R2)よりも大きい(R1>R2)。
【0035】
ここで、「第1領域におけるコイル導体の平均径方向幅」とは、第1領域F1におけるコイル導体31の形成領域の径方向の幅の平均値をいう。また、「第2領域におけるコイル導体の平均径方向幅」とは、第2領域F2におけるコイル導体31の形成領域の径方向の幅の平均値をいう。本実施形態では、第1領域F1におけるコイル導体31の平均径方向幅(R1)は、Z方向から視たコイル導体31の形成領域の第1領域F1における径方向の幅(R11,R12)の間の値となる。また、本実施形態では、第2コイル導体31の平均径方向幅(R2)は、Z方向から視たコイル導体31の形成領域の第2領域F2における径方向の幅(R21,R12)の間の値となる。
【0036】
また、Z方向から視たコイル導体31の形成領域の第1領域F1における径方向の単位長当たりの導体本数(3本/R1)は、Z方向から視たコイル導体31の形成領域の第2領域F2における径方向の単位長当たりの導体本数(3本/R2)よりも少ない((3本/R1)<(3本/R2))。ここで、「コイル導体の第1領域における径方向の単位長当たりの導体本数」とは、第1領域F1におけるコイル導体31の導体本数を、コイル導体31の第1領域F1における平均径方向幅(R1)で除した値である。また、「コイル導体の第2領域における径方向の単位長当たりの導体本数」とは、第2領域F2におけるコイル導体31の導体本数を、コイル導体31の第2領域F2における平均径方向幅(R2)で除した値である。なお、導体本数に数えられるコイル導体31の互いに直列接続された導体部分を指す。コイル導体31の一部として電流が流れない導体部分は導体本数に数えない。また、コイル導体31の互いに並列接続された導体部分は、並列接続された導体部分をまとめて1本として数える。
【0037】
一般的に、コイルを形成するコイル導体の形成領域の径方向の幅が小さい部分に比べて、コイル導体の形成領域の径方向の幅が大きい部分の方がコイルのインダクタンスは低くなる。また、一般的に、コイルを形成するコイル導体の径方向の単位長当たりの導体本数が少ない部分に比べて、コイル導体の径方向の単位長当たりの導体本数が多い部分の方がコイルのインダクタンスは高くなる。これは、コイル導体間の間隔(間隙)が大きいために径方向の幅が大きい場合には、コイル導体間の磁界結合が弱まるため、コイル導体間の相互インダクタンスが低下するためである。また、コイル導体の線幅が太いために径方向の幅が大きい場合には、上述したように、コイル導体に流れる電流が広がることで、発生する磁束量が低下するためである。したがって、コイル導体31の第1領域F1における周方向の単位長当たりのインダクタンスは、コイル導体31の第2領域における周方向の単位長当たりのインダクタンスよりも小さい。
【0038】
この構成では、コイル導体31の周方向の単位長当たりのインダクタンスが小さい第1領域が、Z方向から視て、面状導体11に重なるため、面状導体11とコイルアンテナ41との位置関係によるコイルアンテナ41のインダクタンスの変化は小さい。そのため、高い寸法精度や組立て精度を必要とすることなく、コイルアンテナ41のインダクタンスの変動を抑制したアンテナ装置を実現できる。したがって、面状導体11とコイルアンテナ41とが重なる構成でも、コイルアンテナを用いた通信回路の共振周波数等の変動を小さくでき、結果的に通信回路の通信特性は安定する。
【0039】
また、アンテナ装置101では、コイルアンテナ41(コイル導体31)と面状導体11とが、電界、磁界もしくは電磁界を介して結合する。そのため、コイル導体31の第1方向(
図1(B)における時計回り)に電流i0が流れた場合、電流i0によって面状導体11に電流i1が誘起される。すなわち、コイル導体31と面状導体11とが近接する部分で、電流i0によって、電流i0を打ち消す方向の電流i1が生じる。このとき、縁端効果により面状導体11の外縁の電流密度は高い。そのため、面状導体11に誘起された電流i1は、面状導体11の外縁に沿って流れる。
【0040】
図1(B)に示すように、コイル導体31に流れる電流i0の向きと、面状導体11の外縁に流れる電流i1の向きは同じである。そのため、面状導体11はコイルアンテナ41(コイル導体31)に対するブースターアンテナとして機能し、磁束が出入りする実質的なコイル開口の面積は大きくなる。したがって、磁束を放射(集磁)する範囲および距離が大きくなることで、通信相手側のコイルアンテナと結合し易くなる。
【0041】
なお、上述の例では、アンテナ装置101が送信側アンテナである場合についての作用を説明したが、アンテナの可逆定理により、送受が逆転しても成り立つ。すなわち、アンテナ装置101が受信側アンテナである場合にも同様に作用する。
【0042】
《第2の実施形態》
図2(A)は第2の実施形態に係るアンテナ装置102Aの平面図であり、
図2(B)はコイル導体32に流れる電流と面状導体12Aに生じる電流との関係を示す、アンテナ装置102Aの平面図である。
図3(A)はアンテナ装置102Bの平面図であり、
図3(B)はコイル導体32に流れる電流と面状導体12Bに生じる電流との関係を示す、アンテナ装置102Bの平面図である。
【0043】
アンテナ装置102A,102Bは、第1の実施形態に係るアンテナ装置101に対して、コイルアンテナ42の基材22および面状導体12A,12Bの形状が異なる。また、アンテナ装置102は、デバイス50をさらに備える点でアンテナ装置101と異なる。その他の構成については、アンテナ装置101と同じである。以下、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる部分について説明する。
【0044】
コイル導体32は、巻回軸AX2回りに巻回された正方形スパイラル状の導体パターンである。コイルアンテナ42の基材22は、コイル導体32および電極P1,P2の外形と略同じ形状(L字形)の平板である。基材22は、コイル導体32のコイル開口に応じた位置に矩形の開口を有する。
【0045】
アンテナ装置102Aの面状導体12Aは、Z方向から視て、内側から外縁に向かって延伸するスリット部CP1を有する凹形状(U字状)の平板導体である。このスリット部CP1が、本発明における「切り欠き部」に相当する。
【0046】
コイルアンテナ42のコイル開口の少なくとも一部は、Z方向から視て、スリット部CP1に重なる。そのため、アンテナ装置102Aは、Z方向から視て、第1領域F1と第2領域F2とを有する。なお、
図2(A)に示すように、正方形スパイラル状のコイル導体32は、Z方向から視て、三辺(X方向の二辺およびY方向の一辺)が面状導体12Aに重なる。したがって、アンテナ装置102Aの第1領域F1は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101の第1領域F1よりも大きい。
【0047】
アンテナ装置102Bの面状導体12Bは、Z方向から視て、内側から外縁に向かって延伸するスリット部CP1と、幅広部CP2とを有する。これらスリット部CP1および幅広部CP2が、本発明における「切り欠き部」に相当する。
【0048】
コイルアンテナ42のコイル開口の少なくとも一部は、Z方向から視て、幅広部CP2に重なる。そのため、アンテナ装置102Bは、Z方向から視て、第1領域F1と第2領域F2とを有する。なお、
図3(A)に示すように、正方形スパイラル状のコイル導体32は、Z方向から視て、略全体(X方向の二辺およびY方向の二辺)が面状導体12Bに重なる。したがって、アンテナ装置102Bの第1領域F1は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101の第1領域F1よりも大きい。
【0049】
また、
図3(A)に示すように、幅広部CP2内にはデバイス50が配置されている。デバイス50は例えば、カメラモジュールやフラッシュ、スピーカー、イヤホンジャック、カードスロット、USBなどの端子、電池カバー、ボタン、センサなどのデバイスである。
【0050】
なお、コイル導体32は、第2領域F2に比べて第1領域F1に、線幅の太い部分を有する。また、Z方向から視たコイル導体32の形成領域の第1領域F1における径方向の幅(
図2(A)におけるR11)は、Z方向から視たコイル導体32の形成領域の第2領域F2における径方向の幅(
図2(A)におけるR21)よりも大きい(R11>R21)。次に、Z方向から視たコイル導体32の形成領域の第1領域F1における径方向の幅(
図2(A)におけるR12)は、Z方向から視たコイル導体32の形成領域の第2領域F2における径方向の幅(R21)よりも大きい(R12>R21)。すなわち、第1領域F1におけるコイル導体32の平均径方向幅(R1)は、第2領域F2におけるコイル導体32の平均径方向幅(R2)よりも大きい(R1>R2)。
【0051】
さらに、Z方向から視たコイル導体32の形成領域の第1領域F1における径方向の単位長当たりの導体本数(3本/R1)は、Z方向から視たコイル導体32の形成領域の第2領域F2における径方向の単位長当たりの導体本数(3本/R2)よりも少ない((3本/R1)<(3本/R2))。
【0052】
したがって、アンテナ装置102は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と基本的な構成は同じであり、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。
【0053】
また、アンテナ102Bに示すように、デバイス50を備えるために面状導体に設けられた切り欠き部(幅広部CP2およびスリット部CP1)を利用することができる。
【0054】
また、アンテナ装置102A,102Bでは、コイルアンテナ42(コイル導体32)と面状導体12A,12Bの切り欠き部(スリット部CP1または幅広部CP2)とが、電界、磁界もしくは電磁界を介して結合する。そのため、コイル導体32の第1方向(
図2(B)における時計回り)に電流i0が流れた場合、電流i0によって、面状導体12A,12Bに切り欠き部(スリット部CP1または幅広部CP2)を周回するような電流i1が誘起される。しかし、面状導体12A,12Bには内側から外縁に向かって延伸する切り欠き部(スリット部CP1)が形成されているので、面状導体12A,12Bに渦電流が流れることなく、切り欠き部(スリット部CP1)を経由して面状導体12A,12Bの外縁に沿って電流が流れる。
【0055】
図2(B)および
図3(B)に示すように、コイル導体32に流れる電流i0の向きと、面状導体12A,12Bの外縁に流れる電流i1の向きは同じである。そのため、アンテナ装置102A,102Bでは、面状導体12A,12Bがコイルアンテナ42(コイル導体32)に対するブースターアンテナとして機能する。
【0056】
上述のとおり、アンテナ装置102A,102Bの第1領域F1は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101の第1領域F1よりも大きい。そのため、アンテナ装置102A,102Bのコイルアンテナ42(コイル導体32)と面状導体12A,12Bとの結合度は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101のコイルアンテナ41(コイル導体31)と面状導体11との結合度よりも大きい。しかし、この構成であっても、コイル導体32の周方向の単位長当たりのインダクタンスが小さい第1領域が、Z方向から視て、面状導体12A,12Bに重なるため、面状導体12A,12Bとコイルアンテナ42との位置関係によるコイルアンテナ42のインダクタンスの変化は小さい。したがって、高い寸法精度や組立て精度を必要とすることなく、コイルアンテナ42のインダクタンスの変動を抑制したアンテナ装置を実現できる。
【0057】
《第3の実施形態》
図4(A)は第3の実施形態に係るアンテナ装置103の平面図であり、
図4(B)はコイル導体32に流れる電流と面状導体13に生じる電流との関係を示す、アンテナ装置103の平面図である。
【0058】
アンテナ装置103は、面状導体13の形状が第1の実施形態に係るアンテナ装置102A,102Bと異なる。その他の構成については、アンテナ装置102A,102Bと同じである。以下、第2の実施形態に係るアンテナ装置102A,102Bと異なる部分について説明する。
【0059】
面状導体13は、Z方向から視て、T字状の開口部CP3を有する矩形状の平板導体である。
図4(A)に示すように、コイルアンテナ42のコイル開口は、Z方向から視て、開口部CP3に重なる。そのため、アンテナ装置103は、Z方向から視て、コイル導体32が面状導体13に重なる第1領域F1と、コイル導体32が面状導体13に重ならない第2領域F2とを有する。開口部CP3は、面状導体13の外縁に接続されていない(開口部CP3は閉じている)ため、コイルアンテナ42に流れる電流i0とは向きが逆の電流i1が開口部CP3の周りに流れる。しかし、開口部CP3は、Z方向から視て、コイルアンテナ42のコイル導体32の形成領域の外側にまで広がっていて、電流i1は電流i0より離れた経路を流れる。そのため、コイル導体32から生じる磁束は、開口部CP3(Z方向から視て、コイル導体32の形成領域の外側にまで広がる部分)を通る。したがって、この構成により、コイルアンテナ42のコイル導体32から生じる磁束が、面状導体13によって妨げられることを抑制できる。また、送受が逆転した場合(アンテナ装置103が受信側アンテナである場合)でも、この構成により、通信相手側のコイルアンテナからの磁束が、面状導体13によって妨げられることを抑制できる。
【0060】
また、第1領域F1のコイル導体32の線幅は、第2領域F2のコイル導体32の一部(X方向に延伸する部分)の線幅よりも太い。すなわち、コイル導体32は、第2領域F2に比べて第1領域F1に、線幅の太い部分を有する。また、Z方向から視たコイル導体32の形成領域の第1領域F1における径方向の幅(
図4(A)におけるR11)は、Z方向から視たコイル導体32の形成領域の第2領域F2における径方向の幅(
図4(A)におけるR21)よりも大きい(R11>R21)。次に、Z方向から視たコイル導体32の形成領域の第1領域F1における径方向の幅(
図4(A)におけるR12)は、Z方向から視たコイル導体32の形成領域の第2領域F2における径方向の幅(R21)よりも大きい(R12>R21)。すなわち、第1領域F1におけるコイル導体32の平均径方向幅(R1)は、第2領域F2におけるコイル導体32の平均径方向幅(R2)よりも大きい(R1>R2)。
【0061】
さらに、Z方向から視たコイル導体32の形成領域の第1領域F1における径方向の単位長当たりの導体本数(3本/R1)は、Z方向から視たコイル導体32の形成領域の第2領域F2における径方向の単位長当たりの導体本数(3本/R2)よりも少ない((3本/R1)<(3本/R2))。
【0062】
したがって、この構成でも、高い寸法精度や組立て精度を必要とすることなく、コイルアンテナ41のインダクタンスの変動を抑制したアンテナ装置103を実現できる。
【0063】
《第4の実施形態》
図5は第4の実施形態に係るアンテナ装置104の平面図である。
【0064】
アンテナ装置104は、コイルアンテナ44(コイル導体34)の構成が第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる。その他の構成については、アンテナ装置101と同じである。以下、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる部分について説明する。
【0065】
図5に示すように、第1領域F1における隣接するコイル導体34間の間隔(
図5におけるD1)は、第2領域F2の一部(X方向に延伸する部分)における隣接するコイル導体34間の間隔(D2)よりも広い(D1>D2)。すなわち、コイル導体34は、第2領域F2に比べて第1領域F1に、隣接するコイル導体34間の間隔の広い部分を有する。なお、アンテナ装置104において、コイル導体34の線幅は全て一定である。すなわち、第1領域のコイル導体34の線幅(W1)は、第2領域F2のコイル導体34の線幅(W2)に等しい(D1=D2)。
【0066】
一般的に、隣接するコイル導体間の間隔(間隙)が狭い場合に比べて、隣接するコイル導体間の間隔が広い場合の方がコイルのインダクタンスは低くなる。これは、コイル導体間の間隔(間隙)が広がることで、コイル導体間の磁界結合が弱まるため、コイル導体間の相互インダクタンスが低下するためである。したがって、コイル導体34の第1領域F1における周方向の単位長当たりのインダクタンスは、コイル導体34の第2領域における周方向の単位長当たりのインダクタンスよりも小さい。
【0067】
また、X方向に延伸するコイル導体34について説明すると、Z方向から視たコイル導体34の形成領域の第1領域F1における径方向の幅(
図5におけるR11)は、Z方向から視たコイル導体34の形成領域の第2領域F2における径方向の幅(
図5におけるR21)よりも大きい(R11>R21)。次に、Y方向に延伸するコイル導体34についても説明すると、Z方向から視たコイル導体34の形成領域の第1領域F1における径方向の幅(
図5におけるR12)は、Z方向から視たコイル導体34の形成領域の第2領域F2における径方向の幅(R12)と等しい。すなわち、第1領域F1におけるコイル導体34の平均径方向幅(R1)は、第2領域F2におけるコイル導体34の平均径方向幅(R2)よりも大きい(R1>R2)。
【0068】
さらに、Z方向から視たコイル導体34の形成領域の第1領域F1における径方向の単位長当たりの導体本数(3本/R1)は、Z方向から視たコイル導体34の形成領域の第2領域F2における径方向の単位長当たりの導体本数(3本/R2)よりも少ない((3本/R1)<(3本/R2))。
【0069】
この構成では、コイル導体34の周方向の単位長当たりのインダクタンスが小さい第1領域が、Z方向から視て、面状導体11に重なるため、面状導体11とコイルアンテナ44との位置関係によるコイルアンテナ44のインダクタンスの変化は小さい。したがって、本実施形態に係るアンテナ装置104でも、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。
【0070】
《第5の実施形態》
図6は第5の実施形態に係るアンテナ装置105Aの平面図である。
図7は第5の実施形態に係るアンテナ装置105Bの平面図である。
【0071】
アンテナ装置105A,105Bは、第2の実施形態に係るアンテナ装置102A,102Bに対して、コイルアンテナ45の基材25の形状が異なる。その他の構成については、アンテナ装置102A,102Bと同じである。以下、第2の実施形態に係るアンテナ装置102A,102Bと異なる部分について説明する。
【0072】
コイル導体35は、巻回軸AX5回りに巻回された正方形スパイラル状の導体パターンである。コイルアンテナ45の基材25は、コイル導体35および電極P1,P2の外形と略同じ形状(L字形)の平板である。基材25は、コイル導体35のコイル開口に応じた位置に矩形の開口を有する。
【0073】
アンテナ装置105Aのコイルアンテナ45のコイル開口は、Z方向から視て、スリット部CP1に重なる。アンテナ装置105Bのコイルアンテナ45は、幅広部CP2に重なる。そのため、アンテナ装置105A,105Bは、
図6および
図7に示すように、Z方向から視て、コイル導体35が面状導体12A,12Bに重なる第1領域F1と、コイル導体35が面状導体11に重ならない第2領域F2とを有する。
【0074】
また、コイル導体35は、第2領域F2に比べて第1領域F1に、コイル導体35の間隔の広い部分を有する。そのため、コイル導体35の第1領域F1における周方向の単位長当たりのインダクタンスは、コイル導体35の第2領域における周方向の単位長当たりのインダクタンスよりも小さい。
【0075】
また、Z方向から視たコイル導体35の形成領域の第1領域F1における径方向の幅(
図6におけるR11)は、Z方向から視たコイル導体35の形成領域の第2領域F2における径方向の幅(
図6におけるR21)よりも大きい(R11>R21)。次に、Z方向から視たコイル導体35の形成領域の第1領域F1における径方向の幅(
図6におけるR12)は、Z方向から視たコイル導体35の形成領域の第2領域F2における径方向の幅(R21)よりも大きい(R12>R21)。すなわち、第1領域F1におけるコイル導体35の平均径方向幅(R1)は、第2領域F2におけるコイル導体35の平均径方向幅(R2)よりも大きい(R1>R2)。
【0076】
さらに、Z方向から視たコイル導体35の形成領域の第1領域F1における径方向の単位長当たりの導体本数(3本/R1)は、Z方向から視たコイル導体35の形成領域の第2領域F2における径方向の単位長当たりの導体本数(3本/R2)よりも小さい((3本/R1)<(3本/R2))。
【0077】
このように、アンテナ装置105A,105Bは第2の実施形態に係るアンテナ装置102A,102Bと基本的な構成は同じであり、アンテナ装置102A,102Bと同様の作用・効果を奏する。
【0078】
《第6の実施形態》
図8は第6の実施形態に係るアンテナ装置106の平面図である。
【0079】
アンテナ装置106は、コイルアンテナ45の構成が第3の実施形態に係るアンテナ装置103と異なる。その他の構成については、アンテナ装置103と同じである。なお、コイルアンテナ45は、第5の実施形態で説明したものと同じである。
【0080】
図8に示すように、コイルアンテナ45のコイル開口は、Z方向から視て、開口部CP3の一部に重なる。そのため、アンテナ装置106は、Z方向から視て、コイル導体35が面状導体13に重なる第1領域F1と、コイル導体35が面状導体13に重ならない第2領域F2とを有する。
【0081】
このように、アンテナ装置106は第3の実施形態に係るアンテナ装置103と基本的な構成は同じであり、アンテナ装置103と同様の作用・効果を奏する。
【0082】
《第7の実施形態》
図9(A)は第7の実施形態に係るアンテナ装置107の平面図であり、
図9(B)はアンテナ装置107の断面図である。
【0083】
アンテナ装置107は、コイルアンテナ47(磁性体部材1をさらに有し、且つ、コイル導体37の形状が異なる。)が第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる。その他の構成については、アンテナ装置101と同じである。以下、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる部分について説明する。
【0084】
コイルアンテナ47は、基材21、コイル導体37、電極P1,P2および磁性体部材1を有する。磁性体部材1は矩形状の平板であり、平面形状が基材21と実質的に同じ形状である。磁性体部材1は基材21の一方主面側に貼付される。磁性体部材1は例えばフェライト粉等の磁性体粉がエポキシ樹脂等の樹脂中に分散された樹脂シートである。
【0085】
図9(A)および
図9(B)に示すように、第1領域F1のコイル導体37の線幅(W1)は、第2領域F2のコイル導体37の一部(X方向に延伸する部分)の線幅(W2)よりも太い(W1>W2)。すなわち、コイル導体37は、第2領域F2に比べて第1領域F1に、線幅の太い部分を有する。
【0086】
さらに、第1領域F1におけるコイル導体37同士の間隔(D1)は、第2領域F2の一部におけるコイル導体37同士の間隔(D2)よりも広い(D1>D2)。すなわち、コイル導体37は、第2領域F2に比べて第1領域F1に、コイル導体37の間隔の広い部分を有する。
【0087】
したがって、コイル導体37の第1領域F1における周方向の単位長当たりのインダクタンスは、コイル導体37の第2領域F2における周方向の単位長当たりのインダクタンスよりも小さい。
【0088】
このように、アンテナ装置107は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と基本的な構成は同じであり、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。
【0089】
本実施形態に係るアンテナ装置107では、磁性体部材1の集磁効果により、通信相手のアンテナとの磁界結合を高めることができる。また、コイルアンテナ47が磁性体部材1を有するため、大型化することなく、所定のインダクタンスを得ることができる。さらに、磁性体部材1を有することにより、基材21の一方主面側に対する磁気シールド効果も得られる。
【0090】
《第8の実施形態》
図10(A)は第8の実施形態に係るアンテナ装置108Aの平面図であり、
図10(B)はアンテナ装置108Aが備えるコイルアンテナ48Aを示す平面図である。
図10(A)および
図10(B)では、構造を分かりやすくするために、基材28の裏面に形成されたコイル導体38Bをテクスチャーパターンにより示している。
【0091】
アンテナ装置108Aは、面状導体12A、コイルアンテナ48Aを備える。面状導体12Aは第2の実施形態で示したものと同じである。コイルアンテナ48Aは、基材28、2つのコイル導体38A,38B、層間接続導体(図示省略)および電極P1,P2を有する。基材28は、絶縁性材料からなる矩形状の平板である。
【0092】
コイル導体38Aは、基材28の一方主面(
図10(A)における基材28の表面)に形成され、巻回軸AX8回りに巻回される約2ターンの矩形スパイラル状の導体パターンである。コイル導体38Bは、基材28の他方主面(
図10(A)における基材28の裏面)に形成され、巻回軸AX8回りに巻回される約2ターンの矩形スパイラル状の導体パターンである。コイル導体38Aの一端は、基材28の一方主面に形成される電極P1に接続される。コイル導体38Aの他端は、図示しない層間接続導体を介して、基材28の他方主面に形成されるコイル導体38Bの一端に接続される。コイル導体38Bの他端は、図示しない層間接続導体を介して、基材28の一方主面に形成される電極P2に接続される。
【0093】
アンテナ装置108Aのコイルアンテナ48Aおよび面状導体12Aは、Z方向から視て、一部が重なる。そのため、コイルアンテナ48Aは、Z方向から視て、コイル導体38A,38Bが面状導体12Aに重なる第1領域F1と、コイル導体38A,38Bが面状導体12Aに重ならない第2領域F2とを有する。
【0094】
図10(A)および
図10(B)に示すように、第1領域F1における隣接するコイル導体38A同士の間隔D1Aは、第2領域F2における隣接するコイル導体38A同士の間隔D2Aに等しい(D1A=D2A)。また、第1領域F1における隣接するコイル導体38B同士の間隔D1Bは、第2領域F2における隣接するコイル導体38B同士の間隔D2Bに等しい(D1B=D2B)。つまり、本実施形態に係るコイルアンテナ48は、第1領域F1および第2領域F2に関わらず、同じ層に形成された隣接するコイル導体同士の間隔は等しい。
【0095】
また、Z方向から視たコイル導体38A,38Bの形成領域の第1領域F1における径方向の幅(
図10(A)におけるR11)は、Z方向から視たコイル導体38A,38Bの形成領域の第2領域F2における径方向の幅(
図10(A)におけるR21)よりも大きい(R11>R21)。次に、Z方向から視たコイル導体38A,38Bの形成領域の第1領域F1における径方向の幅(
図10(A)におけるR12)は、Z方向から視たコイル導体38A,38Bの形成領域の第2領域F2における径方向の幅(R21)よりも大きい(R12>R21)。すなわち、第1領域F1におけるコイル導体38A,38Bの平均径方向幅(R1)は、第2領域F2におけるコイル導体38A,38Bの平均径方向幅(R2)よりも大きい(R1>R2)。
【0096】
ここで、本実施形態で示したコイルアンテナ48のように、コイル導体が複数の層に形成されている場合の「第1領域におけるコイル導体の平均径方向幅」とは、Z方向(巻回軸AX8方向)から視た、コイル導体の形成領域の第1領域F1における径方向の幅の平均値をいう。また、コイル導体が複数の層に形成されている場合の「第2領域におけるコイル導体の平均径方向幅」とは、Z方向(巻回軸AX8方向)から視た、コイル導体の形成領域の第2領域F2における径方向の幅の平均値をいう。
【0097】
また、Z方向から視たコイル導体38A,38Bの形成領域の第1領域F1における径方向の単位長当たりの導体本数(4本/R1)は、Z方向から視たコイル導体38A,38Bの形成領域の第2領域F2における径方向の単位長当たりの導体本数(4本/R2)よりも少ない((4本/R1)<(4本/R2))。
【0098】
したがって、コイル導体38A,38Bの第1領域F1における周方向の単位長当たりのインダクタンスは、コイル導体38A,38Bの第2領域における周方向の単位長当たりのインダクタンスよりも小さい。
【0099】
次に、アンテナ装置108Aとは構成が一部異なるアンテナ装置について説明する。
図11(A)は第8の実施形態に係る別のアンテナ装置108Bの平面図であり、
図11(B)はアンテナ装置108Bが備えるコイルアンテナ48Bを示す平面図である。
図11(A)および
図11(B)では、構造を分かりやすくするために、基材28の裏面に形成されたコイル導体38Bをテクスチャーパターンにより示している。
【0100】
アンテナ装置108Bは、コイル導体38A,38Bの構造がアンテナ装置108Aと異なり、その他の構成は、アンテナ装置108Aと実質的に同じである。
【0101】
アンテナ装置108Bは、面状導体12A、コイルアンテナ48Bを備える。コイルアンテナ48Bは、基材28、複数のコイル導体38A,38B、層間接続導体(図示省略)および電極P1,P2を有する。
【0102】
図11(A)および
図11(B)に示すように、第2領域F2のコイル導体38A,38Bは、Z方向から視て、一部重なっている。
【0103】
このような構成であっても、第1領域F1におけるコイル導体38A,38Bの平均径方向幅(R1)は、第2領域F2におけるコイル導体38A,38Bの平均径方向幅(R2)よりも大きい(R1>R2)。また、Z方向から視たコイル導体38A,38Bの形成領域の第1領域F1における径方向の単位長当たりの導体本数(4本/R1)は、Z方向から視たコイル導体38A,38Bの形成領域の第2領域F2における径方向の単位長当たりの導体本数(4本/R2)よりも少ない((4/R1)<(4/R2))。したがって、コイル導体38A,38Bの第1領域F1における周方向の単位長当たりのインダクタンスは、コイル導体38A,38Bの第2領域における周方向の単位長当たりのインダクタンスよりも小さい。
【0104】
なお、本実施形態では、2つのコイル導体38A,38Bを有するコイルアンテナの例を示したが、この構成に限定されるものではない。コイルアンテナが有するコイル導体の数量は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能であり、コイルアンテナが3つ以上のコイル導体を有する構成であってもよい。
【0105】
また、本実施形態で示したように、複数のコイル導体は同一平面上に形成されていなくてもよい。なお、本実施形態では、基材28の表裏面にそれぞれコイル導体を形成したコイルアンテナを示したが、この構成に限定されるものではない。例えば複数の基材層を積層してなる積層体を有するコイルアンテナの場合、複数のコイル導体がそれぞれ異なる基材層に形成されていてもよく、2つ以上のコイル導体が同じ基材層に形成されていてもよい。
【0106】
次に、コイル導体が複数の層に形成されている場合の「隣接するコイル導体の間隔」について、図を参照して説明する。
図12(A)は、アンテナ装置108Aの第2領域における拡大断面図であり、
図12(B)は、アンテナ装置108Bの第2領域における拡大断面図である。
【0107】
本発明における「隣接するコイル導体の間隔」とは、最も近接したコイル導体同士の間隙を言う。すなわち、同一平面(XY平面)上で近接するコイル導体同士の間隙(例えば
図12における間隔D2A,D2B)のみではなく、異なる平面上で近接するコイル導体同士の間隔(例えば
図12における間隔D3)を含めたものの中で、最も小さな間隙を「隣接するコイル導体の間隔」という。
【0108】
例えばアンテナ装置108Aの第2領域では、
図12(A)に示すように、隣接するコイル導体38Aとコイル導体38Bとの間隔D3が「隣接するコイル導体の間隔」となる。また、例えばアンテナ装置108Bの第2領域では、
図12(B)に示すように、隣接するコイル導体38Aとコイル導体38Bとの間隔S4が「隣接するコイル導体の間隔」となる。
【0109】
《第9の実施形態》
図13は、第9の実施形態に係る電子機器の筐体内部の構造を示す平面図である。
【0110】
上記電子機器は、例えば携帯電話(スマートフォンやフィーチャーフォンを含む)、ウェアラブル端末(スマートウォッチやスマートグラス等)、ノートパソコン、タブレット端末、PDA、カメラ、ゲーム機、玩具、RFIDタグやICタグやSD(登録商標)(Secure Digital)カード、SIMカードやICカード等の情報媒体等である。
【0111】
第9の実施形態に係る電子機器は、アンテナ装置102Cおよび定在波型アンテナの放射素子81,82を有し、上部筐体91と下部筐体92とを備える。
【0112】
アンテナ装置102Cは面状導体12Cおよびコイルアンテナ42Cを備える。コイルアンテナ42Cは第2の実施形態で説明したコイルアンテナ42と実質的に同じである。面状導体12Cは内側から外縁に向かって延伸するスリット部CP4(切り欠き部)を有する。面状導体12Cは、Z方向から視て、凹字状(U字状)の導体であり、且つ、縦方向(
図13におけるY方向)から視て、凹字状(U字状)の導体である
図13に示すように、コイルアンテナ42Cのコイル開口は、Z方向から視て、面状導体12Cのスリット部CP4に重なる。
【0113】
アンテナ装置102Aの面状導体12Cおよび定在波型アンテナの放射素子81,82は、上記電子機器の下部筐体92の一部である。下部筐体92は、
図13に示すように、間隙部S1,S2を挟んで、定在波型アンテナの放射素子81、アンテナ装置102Cおよび定在波型アンテナの放射素子82の順で縦方向(Y方向)に配置された構造である。
【0114】
上部筐体91の内部にはデバイス63、回路基板71,72、バッテリーパック64等が収められている。回路基板72には、第1給電回路61、第2給電回路67,68、リアクタンス素子65,66,キャパシタ62および接続ピン51,52等が実装されている。
【0115】
また、
図13に示すように、スリット部CP4内にはデバイス63が配置されている。デバイス63は例えば、カメラモジュールやフラッシュ、スピーカー、イヤホンジャック、カードスロット、USBなどの端子、電池カバー、ボタン、センサなどのデバイスである。
【0116】
図13に示すように、第1給電回路61が、接続ピン51,52等を介してコイル導体32Cの両端(電極P1,P2)に接続され、コイル導体32Cにキャパシタ62が並列接続される。コイル導体32Cとキャパシタ62と第1給電回路61自身が持つ容量成分とでLC共振回路が構成される。この構成により、コイル導体32Cが面状導体12Cと結合し、面状導体12Cがコイル導体32Cに対するブースターアンテナとして機能する。第1給電回路61は例えば13.56MHzのNFC用のRFIC素子であり、キャパシタ62は例えば共振回路用のチップコンデンサである。接続ピン51,52は例えば可動型プローブピンである。
【0117】
第2給電回路67は、リアクタンス素子65およびケーブル74を介して定在波型アンテナの放射素子81に接続される。第2給電回路68は、リアクタンス素子66を介して定在波型アンテナの放射素子82に接続される。第2給電回路67,68はUHF帯またはSHF帯用のICであり、例えば1.5GHz帯のGPS用の通信システムの給電回路および2.4GHz帯の無線LANの通信システムの給電回路である。リアクタンス素子65,66は例えばチップキャパシタ等の電子部品である。
【0118】
この構成により、コイルアンテナ42Cと面状導体12Cとが重なる構成でも、高い寸法精度や組立て精度を必要とすることなく、コイルアンテナ42Cのインダクタンスの変動を抑制したアンテナ装置102Cを備える電子機器を実現できる。
【0119】
本実施形態に係る電子機器では、面状導体12Cが筐体の一部であるため、アンテナ装置102Cを容易に形成できる。すなわち、面状導体12Cを別途形成する必要がないため、製造が容易で低コスト化が図れる。なお、本実施形態では、アンテナ装置102Cの面状導体12Cが筐体の一部である構成例を示したが、これに限定されるものではない。面状導体を別途設けてもよいし、筐体内に収められる回路基板に形成された導体パターン(グランド導体等)を利用してもよい。
【0120】
また、本実施形態に係る電子機器で示したように、デバイス63を備えるために面状導体に設けられた切り欠き部(スリット部CP4)を利用することができる。なお、アンテナ102Cでは、切り欠き部(スリット部CP4)内にデバイス63が配置される例を示したが、切り欠き部(スリット部CP4)および間隙部S1,S2が樹脂で覆われる構成であってもよい。
【0121】
なお、本実施形態では、電子機器が直方体状である構成例を示したが、これに限定されるものではない。電子機器の形状は適宜変更可能である。
【0122】
《第10の実施形態》
図14は、第10の実施形態に係る電子機器の筐体内部の構造を示す平面図である。
図15は、第10の実施形態に係る電子機器が備える上部筐体91Aの平面図である。なお、
図15では、電子機器の構造を分かりやすくするために、上部筐体と下部筐体を組み合わせたときのコイルアンテナ42Dが備えるコイル導体32Dの位置を示している。
【0123】
図14に示す第10の実施形態に係る電子機器は、アンテナ装置、上部筐体91Aおよび下部筐体92A等を備える。
【0124】
上部筐体91Aの内部にはデバイス63A,63B,63C、回路基板73、バッテリーパック64等が収められている。回路基板73には、UHF帯アンテナ83,84、第1給電回路61、キャパシタ62および接続ピン51,52等が実装されている。回路基板73の内部にはグランド導体14が形成されている。なお、デバイス63Aは回路基板73に形成された切り欠き部内に配置されている。デバイス63Aは例えばディスプレイ側にあるフロントカメラであり、デバイス63Bは例えば背面側にあるリアカメラであり、デバイス63Cは例えばイヤホンジャックである。UHF帯アンテナ83,84は例えばセルラーシステム、GPS(Global Positioning System)、Wi−Fi(登録商標)またはBluetooth(登録商標)等に使用されるアンテナである。
【0125】
本実施形態では、回路基板73の内部に形成されたグランド導体14が本発明における「面状導体」に相当する。
【0126】
下部筐体92Aの内部にはコイルアンテナ42Dが貼付されている。下部筐体92Aにはリアカメラ用の孔93が設けられている。コイルアンテナ42Dは第2の実施形態で説明したコイルアンテナ42と実質的に同じである。
【0127】
本実施形態に係るアンテナ装置は、コイルアンテナ42Dおよびグランド導体14(面状導体)を備える。グランド導体14は、Z方向から視て、デバイス63A,63B,63Cが配置される部分に切り欠き部を有する平面状の導体である。
図15に示すように、コイルアンテナ42Dのコイル開口は、Z方向から視て、デバイス63Aに重なる。上部筐体91Aと下部筐体92Aが組み合わされることにより、コイルアンテナ42Dのコイル導体32Dの一部が、Z方向から視て、グランド導体14に重なる。そのため、コイルアンテナ42Dは、Z方向から視て、コイル導体32Dがグランド導体14に重なる第1領域F1と、コイル導体32Dがグランド導体14に重ならない第2領域F2とを有する。
【0128】
第1給電回路61は、接続ピン51,52等を介してコイル導体32Dの両端(電極P1,P2)に接続され、キャパシタ62はコイル導体32Dに並列接続される。この構成により、コイル導体32Dがグランド導体14と結合し、グランド導体14がコイル導体32Dに対するブースターアンテナとして機能する。
【0129】
このように、回路基板73の内部に形成される導体パターン(グランド導体)等を面状導体として利用することもできる。
【0130】
なお、本実施形態では、電子機器の下部筐体にコイルアンテナを貼付する構成例を示したが、これに限定されるものではない。コイルアンテナは筐体に貼付されるものだけでなく、例えば回路基板と筐体との間にあるインナーカバー等に固定されていてもよい。
【0131】
《第11の実施形態》
図16は、第11の実施形態に係る別の電子機器の筐体内部の構造を示す平面図である。
図17は、第11の実施形態に係る電子機器が備える上部筐体91Bの平面図である。
【0132】
なお、
図17では、電子機器の構造を分かりやすくするために、上部筐体と下部筐体を組み合わせたときのコイルアンテナ42Eが備えるコイル導体32Dの位置を示している。
【0133】
本実施形態に係る電子機器の構成は、コイルアンテナの構造および配置が第10の実施形態に係る電子機器と異なる。その他の構成については、第10の実施形態に係る電子機器と実質的に同じである。
【0134】
下部筐体92Bの内部にはコイルアンテナ42Eが貼付されている。コイルアンテナ42Eは孔94を有する点で上述のコイルアンテナ42Dと異なる。その他の構成については、上述のコイルアンテナ42Dと実質的に同じである。
【0135】
コイルアンテナ42Eの孔94は、コイルアンテナ42Eのコイル開口に形成された孔であり、下部筐体92Bに設けられたリアカメラ用の孔93と略同一形状である。コイルアンテナ42Eは、コイルアンテナ42Eの孔94と下部筐体92Bに設けられたリアカメラ用の孔93とが一致するように下部筐体92Bの内部に貼付される。
【0136】
本実施形態に係るアンテナ装置は、コイルアンテナ42Eおよびグランド導体14を備える。コイルアンテナ42Eの孔94およびリアカメラ用の孔93は、Z方向から視て、デバイス63Bに重なる。
【0137】
《第12の実施形態》
図18は、第12の実施形態に係る電子機器の筐体内部の構造を示す平面図である。
図19は、第12の実施形態に係る電子機器が備える上部筐体91Cの平面図である。なお、
図19では、電子機器の構造を分かりやすくするために、上部筐体と下部筐体を組み合わせたときのコイルアンテナ42Dが備えるコイル導体32Dの位置を示している。
【0138】
本実施形態に係る電子機器は、回路基板上に実装されたシールドケースを備える点で第10の実施形態に係る電子機器と異なる。また、本実施形態に係る電子機器は、グランド導体14の形状が第10の実施形態に係る電子機器と異なる。その他の構成については、第10の実施形態に係る電子機器と実質的に同じである。
【0139】
回路基板73には、UHF帯アンテナ83,84、第1給電回路61、シールドケース15、キャパシタ62および接続ピン51,52等が実装されている。回路基板73の内部にはグランド導体14A,14Bが形成されている。シールドケース15は例えば回路基板に実装され、集積回路等を収納する金属性のカバーである。
【0140】
本実施形態では、回路基板73に実装されるシールドケース15および回路基板73の内部に形成されるグランド導体14Bが、本発明における「面状導体」に相当する。
【0141】
下部筐体92Cの内部にはコイルアンテナ42Dが貼付されている。
【0142】
本実施形態に係るアンテナ装置は、コイルアンテナ42Dおよびシールドケース15(面状導体)を備える。グランド導体14A,14Bは、平面形状が矩形の平面状の導体である。シールドケース15は、Z方向から視て、デバイス63A,63Bが配置される部分に切り欠き部を有する導体である。
図19に示すように、コイルアンテナ42Dのコイル開口は、Z方向から視て、デバイス63Aに重なる。上部筐体91Cと下部筐体92Cが組み合わされることにより、コイルアンテナ42Dのコイル導体32Dの一部が、Z方向から視て、シールドケース15およびグランド導体14Bに重なる。そのため、コイルアンテナ42Dは、Z方向から視て、コイル導体32Dがシールドケース15およびグランド導体14に重なる第1領域F1と、コイル導体32Dがシールドケース15およびグランド導体14に重ならない第2領域F2とを有する。
【0143】
このように、回路基板73に実装されるシールドケース15および回路基板73の内部に形成されるグランド導体14を面状導体として利用してもよい。なお、面状導体として利用される部材は、グランド導体等の導体パターンやシールドケースのみに限定されるものではなく、ディスプレイ背面に形成される導電性シールドやバッテリーパックであってもよい。また、本実施形態で示したように、アンテナ装置は複数の面状導体を備える構成であってもよい。
【0144】
また、回路基板73や面状導体が有する切り欠き部内には、上述した各実施形態で示したカメラ以外にも、フラッシュ、スピーカー、イヤホンジャック、カードスロット、USBなどの端子、電池カバー、ボタン、センサ、機械スイッチ等の機能部品を配置してもよい。
【0145】
《第13の実施形態》
図20は、第13の実施形態に係る電子機器の筐体内部の構造を示す平面図である。
図21は、第13の実施形態に係る電子機器が備える上部筐体91Dの平面図である。なお、
図21では、電子機器の構造を分かりやすくするために、上部筐体と下部筐体を組み合わせたときのコイルアンテナ42Fが備えるコイル導体32Dの位置を示している。
【0146】
本実施形態に係る電子機器は、コイルアンテナの構造等が第11の実施形態に係る電子機器と異なる。また、本実施形態に係る電子機器は、給電コイル54を備える点で第11の実施形態に係る電子機器と異なる。その他の構成については、第11の実施形態に係る電子機器と実質的に同じである。
【0147】
下部筐体92Dの内部にはコイルアンテナ42Fが貼付されている。コイルアンテナ42Fは、コイル導体32Dの両端が接続素子69で接続されている。接続素子69は例えば基材22Eの表面に形成される導体パターンである。
【0148】
回路基板73には、UHF帯アンテナ83,84、第1給電回路61、キャパシタ62および給電コイル54等が実装されている。
【0149】
図20に示すように、第1給電回路61の入出力端子はそれぞれ給電コイル54に接続される。キャパシタ62は給電コイル54に対して並列接続される。給電コイル54とキャパシタ62と第1給電回路61自身が持つ容量成分とでLC共振回路が構成される。第1給電回路61は、給電コイル54を介してコイルアンテナ42Fのコイル導体32Dと磁界結合する。
【0150】
このように、コイルアンテナのコイル導体は磁界結合を介して給電回路に接続されていてもよい。
【0151】
なお、本実施形態では、接続素子69が基材22Eの表面に形成される導体パターンである例を示したが、この構成に限定されるものではない。接続素子69は例えば共振用のキャパシタ等であってもよい。
【0152】
《その他の実施形態》
上述の実施形態では、コイルアンテナの基材が矩形またはL字形等の平板である例を示したが、これに限定されるものではない。コイルアンテナの基材の平面形状は、正方形、多角形、T字形、Y字形、円形、楕円形等、適宜変更可能である。また、基材は平板に限らず、立体構造等とすることも可能である。なお、後述するように、本発明のアンテナ装置において、基材は必須ではない。
【0153】
なお、上述の実施形態では、矩形スパイラル状または正方形スパイラル状のコイル導体を有するコイルアンテナの例を示したが、これに限定されるものではない。コイルアンテナ(コイル導体)は、多角形、円形、楕円形等のスパイラル状であってもよく、ヘリカル状であってもよい。また、スパイラル状のコイル導体が形成された基材を積層したヘリカル状の積層コイルアンテナでもよい。さらに、コイルアンテナは巻線コイルであってもよい。すなわち、コイルアンテナの基材は必須ではない。
【0154】
また、上述の実施形態では、コイル導体の巻回軸がZ方向(面状導体の主面の垂直方向)に平行である例について示したが、これに限定されるものではない。コイル導体の周方向の単位長当たりのインダクタンスが小さい第1領域が、Z方向から視て、面状導体に重なるという構成を満たせば、コイル導体の巻回軸がいずれの方向に向いていてもよい。
【0155】
上述の実施形態では、面状導体が矩形または正方形等の平板である例を示したが、これに限定されるものではない。面状導体の平面形状は、多角形、L字形、T字形、円形、楕円形等、適宜変更可能である。また、面状導体は平板に限らず、第9・12の実施形態に示したように、立体構造等とすることも可能である。また、面状導体の主面は、平面に限定されるものではなく、曲面等であってもよい。
【0156】
なお、上述の実施形態では、1つの面状導体を有するアンテナ装置の例を示したが、これに限定されるものではない。コイル導体の周方向の単位長当たりのインダクタンスが小さい第1領域が、Z方向から視て、面状導体に重なるという構成を満たせば、第12の実施形態で示したように、本発明のアンテナ装置は複数の面状導体を備える構成であってもよい。
【0157】
また、上述の実施形態に示す面状導体は、多角形状の切り欠き部を有する構成例について示したが、これに限定されるものではない。面状導体が有する切り欠き部の形状、個数等は適宜変更可能である。また、上述の実施形態に示す面状導体は、平面(XY平面)方向に延伸する切り欠き部を有する構成例について示したが、これに限定されるものではない。立体構造の面状導体が、平面(XY平面)方向および厚み方向(Z方向)に延伸する切り欠き部を有していてもよい。
【0158】
また、上述実施形態では、コイルアンテナ(コイル導体)が給電回路に直接接続される例を示したが、この構成に限定されるものではない。第13の実施形態で示したように、コイルアンテナ(コイル導体)に対して、電界、磁界もしくは電磁界を介して結合することにより、コイルアンテナ(コイル導体)が給電回路に接続される構成でもよい。
【0159】
なお、上述の実施形態では、主にNFC等の磁界結合を利用した通信システムにおけるアンテナ装置及び電子機器を説明したが、上述の実施形態におけるアンテナ装置及び電子機器は、磁界結合を利用した非接触電力伝送システム(電磁誘導方式、磁界共鳴方式)もの同様に用いることができる。つまり、上述の実施形態におけるアンテナ装置は、例えばHF帯(特に6.78MHzまたは6.78MHz近傍)の周波数で使用される磁界共鳴方式の非接触電力伝送システムにおける受電装置の受電アンテナ装置や送電装置の送電アンテナ装置として適用できる。アンテナ装置は受電装置に備わった負荷(二次電池等)に電力を供給する給電回路(受電回路)に接続される。この場合でも、コイルアンテナや面状導体は、送電アンテナ装置または受電アンテナ装置として機能する。アンテナ装置のコイルアンテナが有するコイル導体の両端は、使用周波数帯(HF帯、特に6.78MHzまたは6.78MHz近傍)を操作する受電回路や送電回路に接続される。特に、磁界共鳴方式の非接触電力伝送システムでは、電力伝送効率を高めるために、特定の周波数において、アンテナ装置に高いQ値(共振の鋭さ)の精度が要求される。よって、本発明の構成を利用すれば、コイルアンテナのインダクタンスの変動が抑制されるため、Q値(共振の鋭さ)の変動や、共振周波数の変動が抑えられ、安定した電力伝送システムを構築できる。