特許第6249148号(P6249148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249148
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ブラシ付DCモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20171211BHJP
   H02K 23/00 20060101ALI20171211BHJP
   H01R 39/18 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H02K13/00 N
   H02K23/00 A
   H01R39/18
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-260957(P2012-260957)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-108001(P2014-108001A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】黒田 稔
(72)【発明者】
【氏名】小村 篤史
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−339914(JP,A)
【文献】 特開平05−258637(JP,A)
【文献】 実開昭62−095473(JP,U)
【文献】 実開平04−080273(JP,U)
【文献】 実開昭56−009874(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0006315(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
H01R 39/18
H02K 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の周方向に複数設けられた整流子セグメントと、
前記整流子セグメントに接触して電流を供給するブラシと、を有し、
前記ブラシは、
前記整流子セグメントと接触する接点材と、
前記整流子セグメントに向かって湾曲した円弧状に折り曲げられたバネ材と、を有し、
前記整流子セグメントに対向する前記接点材の表面は、前記整流子セグメントに向かって湾曲した円弧状に折り曲げられたバネ材に沿った、円弧状の形状を備え、
前記接点材において、前記整流子セグメントに向かって湾曲した形状は、バネ材に向かって湾曲した形状を備え、
前記ブラシを複数備え、
前記複数のブラシは、ハの字状に配置され、
前記複数のブラシはそれぞれ、異なる前記整流子セグメントに接触しているブラシ付きDCモータ。
【請求項2】
前記接点材に接触した前記整流子セグメントの表面は、前記接点材の表面に沿った円弧状の形状を備える、請求項1に記載のブラシ付きDCモータ。
【請求項3】
前記複数の整流子セグメントのうち、第1整流子セグメントと、当該第1整流子セグメントに隣接する第2整流子セグメント及び第3整流子セグメントとを備え、
前記複数のブラシのうち、一方のブラシが跨って接触した前記第1整流子セグメント及び前記第2整流子セグメントと、他方のブラシが接触した前記第3整流子セグメントとの間に流れる電流は、当該一方のブラシが接触した前記第2整流子セグメントと、当該他方のブラシが接触した第3整流子セグメントとの間に流れる電流より大きい、請求項1又は請求項2に記載のブラシ付きDCモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ付DCモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、モータの小型化にともない、各部品も小さくなってきている。ブラシ付DCモータのブラシの小型化においては、インレイ接合よりトップレイ接合した帯状のクラッド材を用いた電気接触片が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−258637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のブラシ付DCモータでは、ブラシの摩耗が進むと、ブラシが整流子セグメントのスリット間を跨いでショートを起こしやすくなるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、ブラシが磨耗しても整流子セグメント間のショートを起こし難いブラシ付DCモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために提案されたものであり、本発明のブラシ付DCモータは、回転軸と、前記回転軸の周方向に複数設けられた整流子セグメントと、前記整流子セグメントに接触して電流を供給するブラシと、を有し、前記ブラシは、バネ材と、前記整流子セグメントと接触する接点材と、を有し、前記整流子セグメントに対向する前記接点材の表面は、当該整流子セグメントに向かって湾曲した形状を備え、前記整流子セグメントに向かって湾曲した形状は、バネ材に向かって湾曲した形状を備える。
【0007】
上記発明において、前記接点材が設けられた前記バネ材の部分は湾曲している又は山形状である。
上記発明において、前記接点材が設けられた前記バネ材の部分は直線状である。
上記発明において、前記ブラシを複数備え、前記複数のブラシは、ハの字状に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブラシが磨耗しても整流子セグメント間のショートを起こし難いブラシ付DCモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態におけるブラシ付DCモータの断面図である。
図2】本発明の実施形態におけるブラシ付DCモータのブラシを説明する図である。
図3】本発明の実施形態におけるブラシ付DCモータにおけるロータ巻線の配線図である。
図4】従来のブラシ付DCモータのブラシを説明する図である。
図5】従来のブラシ付DCモータのブラシが磨耗した状態を示す図である。
図6】本発明の実施形態におけるブラシ付DCモータのブラシが磨耗した状態を説明する図である。
図7】ブラシが整流子セグメント間を跨がない状態の回路図である。
図8】ブラシが整流子セグメント間を跨いでいる場合の回路図である。
図9】本発明の実施形態のブラシ付DCモータのブラシの変形例1を説明する図である。
図10】本発明の実施形態のブラシ付DCモータのブラシの変形例2を説明する図である。
図11】本発明の実施形態のブラシ付DCモータのブラシの変形例3を説明する図である。
図12】本発明の実施形態のブラシ付DCモータのブラシの変形例4を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0011】
図1は、本発明の実施形態におけるブラシ付DCモータの断面図である。
図1に示すように、ブラシ付直流(DC)モータ100は、筒状のフレーム10と、フレーム10の内周面に取り付けられ円筒状の駆動マグネット80と、シャフト20と、6極の電機子60、フレーム10に設けられた焼結軸受21と、ブラケット30に設けられた焼結軸受22とを有する。
シャフト20は、回転軸となり、焼結軸受21、22によって両端を回転自在に支持される。シャフト20には、シャフト20の回転に伴って回転する整流子70が設けられている。ブラシ90は、整流子70に摺動して電流を供給する。
【0012】
図2は、本発明の実施形態におけるブラシ付DCモータのブラシを説明する図である。図2に示すように、整流子70は、シャフト20と共に回転する整流子基台71と、整流子基台71の周方向に配列される複数の整流子セグメント72(1)〜72(6)とを有する。複数の整流子セグメント72(1)〜72(6)間にはそれぞれ整流子スリットが形成されている。整流子セグメント72(1)〜72(6)は、電機子60の相コイルの接続点に接続されている。
【0013】
ブラシ90は、整流子セグメント72に対して略ハ字状に配置されており、整流子セグメント72に接触して電流を供給する。ブラシ90は、整流子セグメント72との接触面が円弧状に形成されている。ブラシ90は、バネ材91と、整流子セグメント72と接触する接点材92とを有し、接点材92がバネ材91にトップレイ接合されている。ブラシ90は、バネ材91の接点材92に対応する箇所が湾曲した円弧状に折り曲げ加工されており、この構成によって整流子セグメント72との接触面となる接点材92の表面が湾曲した円弧状に形成されている。このようにブラシ90は、整流子セグメント72との接触面が湾曲した形状をしていることにより、ブラシ90が摩耗しても整流子セグメント72間でショートを起こし難い構造にしている。
【0014】
図3は、本発明の実施形態におけるブラシ付DCモータにおけるロータ巻線の配線図である。図3に示すように、電機子60の突極が6極であって、整流子セグメント72(1)〜72(6)も6個設けられており、ブラシ90は略ハ字状に配置してある。ブラシ90は、72(1)−72(5)、72(2)−72(6)、72(3)−72(1)、72(4)−72(2)、72(5)−72(3)・・・・というように回転にともなって、順次整流子セグメント72と接触する。
【0015】
図4は、従来のブラシ付DCモータのブラシを説明する図である。図5は、従来のブラシ付DCモータのブラシが磨耗した状態を示す図である。図6は、本発明の実施形態におけるブラシ付DCモータのブラシが磨耗した状態を説明する図である。
図4及び図5に示すように、従来のブラシ110は、バネ材111と、バネ材に接合された接点材112とを備え、整流子セグメント72(1)〜72(6)との接触面が直線状に形成されている。図4に示すように、接触面が直線形状に形成された従来のブラシ110の場合には磨耗が進むと、図5に示すようになる。
一方、本実施形態のように、接触面が円弧状に形成されたブラシ90の場合には磨耗が進むと、図6に示すようになる。
【0016】
ここで、ブラシの摩耗量δが直線状のブラシ110と円弧状のブラシ90とで同じ場合、直線状のブラシ110と整流子セグメント72が接触している円弧の長さをL1、円弧状のブラシ90と整流子セグメント72が接触している円弧の長さをL2とすると、L1>L2の関係となり、接触している円弧の長さは、円弧状のブラシ90の方が直線状のブラシ110よりも反っている分だけ短くなる。すなわち、円弧状のブラシ90の方が接触している円弧の長さが短いため、ブラシ90が隣り合う整流子セグメント72を跨ぐ時間は短くなる。整流子セグメント72を跨いでいる間は、大電流が流れるため、跨ぐ時間が短ければ、大電流が流れる時間を抑えることができ、これによりブラシの寿命が延びる。
【0017】
具体的に、図7図8の回路図を用いて説明する。図7は、ブラシが整流子セグメント間を跨がない状態であって、整流子セグメント72(1)-72(5)間に通電している場合の回路図である。図8は、ブラシが整流子セグメント72(5)と整流子セグメント72(6)を跨いでおり、整流子セグメント72(1)-72(5)と72(6)間に通電している場合の回路図である。
図7に示すように、ブラシの跨ぎが無い場合、整流子セグメント72(1)−72(5)間を流れる電流はI=V/Z(Z=4R/3)となる。
一方、図8に示すように、ブラシが整流子セグメント72(5)と整流子セグメント72(6)を跨いでいる場合、整流子セグメント72(1)-72(5)と72(6)間を流れる電流はI=V/Z(Z=R)となる。
したがって、ブラシが整流子セグメント間を跨いでいる場合は、跨いでいない場合よりも抵抗値が下がり電流が上がる。よって、整流子セグメント72を跨いでいる間は、大電流が流れるため、できるだけブラシは整流子セグメント72を跨がないほうが望ましく、接触する部分を円弧状にすることで、直線状のものより、ブラシの寿命を延ばすことできる。
【0018】
次に、本発明の実施形態のブラシ付DCモータのブラシの変形例について説明する。図9は、本発明の実施形態のブラシ付DCモータのブラシの変形例1を説明する図である。図9に示すブラシ90aは、バネ材91aと、接点材92aを有し、バネ材91aの接点材92aに対応する部分を折り曲げ加工して円弧状に形成することにより、整流子セグメント72との接触面を円弧状に形成している。
【0019】
図10は、本発明の実施形態のブラシ付DCモータのブラシの変形例2を説明する図である。図10に示すブラシ90bは、バネ材91bと、接点材92bを有し、バネ材91bの接点材92bに対応する部分を山形状に形成することにより、整流子セグメント72との接触面を円弧状に形成している。
【0020】
図11は、本発明の実施形態のブラシ付DCモータのブラシの変形例3を説明する図である。図11に示すブラシ90cは、バネ材91cと、接点材92cを有し、バネ材91cの接点材92cに対応する部分を直線形状に形成し、接点材92cの表面を円弧状に形成することにより、整流子セグメント72との接触面を円弧状に形成している。
【0021】
図12は、本発明の実施形態のブラシ付DCモータのブラシの変形例4を説明する図である。図12に示すブラシ90dは、バネ材91dと、接点材92dを有し、バネ材91dの接点材92dに対応する部分を山形に形成し、さらに接点材92dの表面を円弧状に形成することにより、整流子セグメント72との接触面を円弧状に形成している。
本実施形態によれば、整流子セグメント72との接触面を円弧状に形成することにより、整流子セグメント72間のショートを起こしにくくできるため、モータ寿命を向上させることができる。
また、従来、整流子セグメント間のショートを防ぐために接点材の幅を極端に短くすると、整流子のスリット間ギャップに接点材が引っ掛かり、動作不良を起こすという問題があったが、本実施形態の整流子セグメントとの接触面を円弧状にしたブラシによれば、接点材の幅を極端に短くする必要が無いため、整流子スリットへのブラシの引っ掛かりが無くなり、動作不良を防止できる。
【0022】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれものである。
【符号の説明】
【0023】
10 フレーム
20 シャフト
60 電機子
70 整流子
71 整流子基台
72(1)〜72(6) 整流子セグメント
80 駆動マグネット
90 ブラシ
91 バネ材
92 接点材
100 ブラシ付DCモータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12