特許第6249160号(P6249160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249160石英結晶子径に基づいて遊離石灰量を制御したクリンカーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249160
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】石英結晶子径に基づいて遊離石灰量を制御したクリンカーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/02 20060101AFI20171211BHJP
   C04B 7/36 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   C04B7/02
   C04B7/36
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-270818(P2013-270818)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-124129(P2015-124129A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】山下 牧生
(72)【発明者】
【氏名】土肥 浩大
(72)【発明者】
【氏名】白濱 暢彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 久順
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−190140(JP,A)
【文献】 特開2007−326752(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086754(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/179702(WO,A1)
【文献】 特開2005−255456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリンカー調合原料の硅石に含まれる石英結晶子径をモニターし、この石英結晶子径に応じて原料ミルの運転条件を調整して調合原料の粉末度を制御することによってクリンカーの遊離石灰量を0.7〜1.0wt%に制御するクリンカーの製造方法。
【請求項2】
硅石の石英結晶子径に基づいて硅石を含む調合原料のブレーン値を調整してクリンカー中の遊離石灰量を制御するクリンカーの製造方法であって、ブレーン値調整前のクリンカーの遊離石灰量が0.75〜0.80wt%になる石英結晶子径と調合原料のブレーン値を定めて基準とし、(イ)基準の石英結晶子径より小さい石英結晶子径の硅石を含む調合原料については、そのブレーン値を基準のブレーン値の0.98倍以下にし、(ロ)基準の石英結晶子径より大きい石英結晶子径の硅石を含む調合原料については、そのブレーン値を基準のブレーン値の1.03倍以上にしてクリンカーの遊離石灰量を制御する請求項1に記載するクリンカーの製造方法。
【請求項3】
石英結晶子径が200nm以上〜250nm未満の硅石を含む調合原料のブレーン値が4600cm/g〜4700cm/gのときに、クリンカーの遊離石灰量が0.75〜0.80wt%である焼成条件において、
(イ)硅石の石英結晶子径が200nm未満の場合には、調合原料のブレーン値を4500cm/g以下にし、
(ロ)硅石の石英結晶子径が250nm以上〜300nm未満の場合には、調合原料のブレーン値4850cm/g以上〜4950cm/g未満にし、
(ハ)硅石の石英結晶子径が300nm以上の場合には、調合原料のブレーン値を5200cm/g以上にする請求項1または請求項2に記載するクリンカーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリンカー調合原料の硅石に含まれる石英結晶子径に基づいて遊離石灰量を制御したクリンカーの製造方法に関する。より詳しくは、クリンカー調合原料の硅石に含まれる石英結晶子径をモニターし、この石英結晶子径に応じて原料ミルの運転条件を調整して調合原料の粉末度を制御することによってクリンカーの遊離石灰量を一定範囲に制御したクリンカーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントの製造工程において、クリンカー中の遊離石灰量はセメントの物性に影響を及ぼすので、遊離石灰量が一定範囲内に収まるようにクリンカーを製造している。
遊離石灰量を制御する方法としては、クリンカー原料の混合比率(原料混合物の化学成分の調整)、キルンに対する原料投入量、キルンの回転速度、バーナ火炎の長さ、キルン排ガス誘引量などを制御し、あるいは鉱化剤を添加する方法などが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1の製造方法では、クリンカー等に含まれる遊離石灰量を0.5質量%以下になるように制御している。また、特許文献2の方法では、セメント中の遊離石灰量とフッ素含有量が一定の関係式を満足するように制御している。さらに、特許文献3には、クリンカー焼成物がフッ素と硫黄と塩素および臭素からなる群から選ばれる何れか1つ以上と、第3族元素〜第12族元素からなる群より選ばれる何れか1つ以上の金属元素とを含有することによって、フッ素量を増大させずにセメントクリンカー焼成温度を低下させることができる製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献1〜3の方法に代えて、クリンカー中の三酸化硫黄量、フッ素量、水硬率などを因子にした制御式に基づいてクリンカー中の遊離石灰量を制御する方法が知られている(特許文献4)。この方法は、SO3源である燃料ないし廃石膏の使用量、フッ素源である蛍石などの鉱化剤の添加量を制御式に従って調整することによって、クリンカー中の遊離石灰量を的確に制御できる利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−285370号公報
【特許文献2】特開2001−130932号公報
【特許文献3】特開2011−207752号公報
【特許文献4】特開2013−203645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3の方法による遊離石灰量の制御は十分ではなく、クリンカー中の遊離石灰量は大きく変動しているのが現状である。遊離石灰量が変動すると、セメント(コンクリート)の凝結性状、強度や流動性などの基礎的物性が影響を受ける。本発明は従来の上記方法による課題を解決したものであり、クリンカーの遊離石灰量を容易に制御することができるクリンカーの製造方法を提供する。
また、特許文献4の方法は、クリンカー中の遊離石灰量を的確に制御できるが、本発明をさらに適用することによって、クリンカーの遊離石灰量をより的確に制御したクリンカーを製造することができる。
【0007】
本発明は、以下の構成からなるクリンカーの製造方法である。
〔1〕クリンカー調合原料の硅石に含まれる石英結晶子径をモニターし、この石英結晶子径に応じて原料ミルの運転条件を調整して調合原料の粉末度を制御することによってクリンカーの遊離石灰量を0.7〜1.0wt%に制御するクリンカーの製造方法。
〔2〕硅石の石英結晶子径に基づいて硅石を含む調合原料のブレーン値を調整してクリンカー中の遊離石灰量を制御するクリンカーの製造方法であって、ブレーン値調整前のクリンカーの遊離石灰量が0.75〜0.80wt%になる石英結晶子径と調合原料のブレーン値を定めて基準とし、(イ)基準の石英結晶子径より小さい石英結晶子径の硅石を含む調合原料については、そのブレーン値を基準のブレーン値の0.98倍以下にし、(ロ)基準の石英結晶子径より大きい石英結晶子径の硅石を含む調合原料については、そのブレーン値を基準のブレーン値の1.03倍以上にしてクリンカーの遊離石灰量を制御する請求項1に記載するクリンカーの製造方法。
〔3〕石英結晶子径が200nm以上〜250nm未満の硅石を含む調合原料のブレーン値が4600cm/g〜4700cm/gのときに、クリンカーの遊離石灰量が0.75〜0.80wt%である焼成条件において、
(イ)硅石の石英結晶子径が200nm未満の場合には調合原料のブレーン値を4500cm/g以下にし、
(ロ)硅石の石英結晶子径が250nm以上〜300nm未満の場合には調合原料のブレーン値4850cm/g以上〜4950cm/g未満にし、
(ハ)硅石の石英結晶子径が300nm以上の場合には調合原料のブレーン値を5200cm/g以上にする請求項1または請求項2に記載するクリンカーの製造方法。
【0008】
〔具体的な説明〕
本発明は、クリンカー調合原料の硅石に含まれる石英結晶子径をモニターし、この石英結晶子径に応じて原料ミルの運転条件を調整して調合原料の粉末度を制御することによってクリンカーの遊離石灰量を0.7〜1.0wt%に制御するクリンカーの製造方法である。
【0009】
セメントクリンカーの原料として、主に石灰石、粘土、鉄原料、硅石などが用いられる。これらは原料ミルに投入され、適度な粉末度、例えばブレーン値4000cm2/g〜11000cm2/gに粉砕されて調合される。粉砕された調合原料はキルンに投入され、1000℃前後で仮焼され、さらに1450℃以上で焼成されてクリンカーが製造される。
【0010】
本発明は、このクリンカーの製造において、原料の硅石に含まれる石英の結晶子径と、硅石を含む調合原料の粉末度(ブレーン値)と、クリンカーに含まれる遊離石灰量との間に一定の関係があることを見出した。
【0011】
一般に、一個の石英粒子は複数の結晶子の集合体である。結晶子は単結晶とみなせる範囲の平均的な大きさを有している。ふるいや顕微鏡にて分離または弁別可能な粒子の大きさを粒子径と云う。粒子径と結晶子径の関係を図1に示す。
【0012】
石英の結晶子径は粉末X線回折によって測定することができる。例えば、測定方法は規格(JIS K 0131:1996「X線回折分析通則」)に定められている。粉末X線回折において、試料に依存する回折線の広がりは、結晶子の大きさと結晶内部のひずみ(不均一ひずみ)の程度によって異なる。結晶子径および不均一ひずみの関係式(次式[1])を使用すれば、複数の回折線を用いることによって、結晶子径および不均一ひずみを算出することができる。
β=λ/(ε×cosθ)+2ηtanθ [1]
(式[1]において、β:試料に依存する回折線の広がり、λ:波長、ε:結晶子径、θ:回折角度、η:不均一ひずみ)
【0013】
本発明では、不均一ひずみを一定とし、試料による回折線の広がりはすべて結晶子径に起因するものとして求めた見かけの結晶子径を結晶子径とした。また、クリンカー原料には硅石と共に粘土や石灰石などが用いられており、これらにも石英が含まれている。本発明においてはこれらの石英の結晶子径も含めて結晶子径とした。
【0014】
本発明において、硅石に含まれる石英の結晶子径とクリンカーの遊離石灰量の関係を調べた。この結果を図2に示す。このグラフに示すように、石英の結晶子径が大きいほど、クリンカーに含まれる遊離石灰量が多くなる傾向がある。この傾向は硅石の種類(A〜F)が異なっても同様である。
【0015】
また、本発明において、粉砕した硅石の粉末度(ブレーン値)とクリンカーの遊離石灰量の関係を調べた。この結果を図3に示す。このグラフに示すように、硅石のブレーン値が大きいほど、クリンカーに含まれる遊離石灰量が減少する。この傾向は硅石の種類(A〜F)が異なっても同様である。
【0016】
本発明の製造方法は、図2および図3の結果に基づき、硅石の石英結晶子径に基づいて硅石を含む調合原料のブレーン値を調整してクリンカー中の遊離石灰量を制御するクリンカーの製造方法であり、具体的には、クリンカー調合原料の硅石に含まれる石英結晶子径をモニターし、この石英結晶子径に応じて原料ミルの運転条件を調整して調合原料の粉末度を制御することによってクリンカーの遊離石灰量を0.7〜1.0wt%に制御するクリンカーの製造方法である。
【0017】
例えば、ブレーン値調整前のクリンカーの遊離石灰量が0.75〜0.80wt%になる石英結晶子径と調合原料のブレーン値を定めて基準とし、(イ)基準の石英結晶子径より小さい石英結晶子径の硅石を含む調合原料については、そのブレーン値を基準のブレーン値の0.95倍以上にし、(ロ)基準の石英結晶子径より大きい石英結晶子径の硅石を含む調合原料については、そのブレーン値を基準のブレーン値の1.03倍以上にしてクリンカーの遊離石灰量を制御する。
【0018】
クリンカーの製造において、硅石の産地や焼成条件などによって、クリンカーの焼成反応が異なるので、ブレーン値調整前のクリンカーの遊離石灰量が0.75〜0.80wt%になる石英結晶子径と調合原料のブレーン値を定めて基準とする。この基準に基づいて、石英結晶子径に応じてブレーン値を調整することによって、同じ焼成条件下で、クリンカーの遊離石灰量を制御することができる。
【0019】
例えば、石英結晶子径が200nm以上〜250nm未満の硅石を含む調合原料のブレーン値が4600cm2/g〜4700cm2/gのときに、クリンカーの遊離石灰量が0.75〜0.80wt%であるとき、この石英結晶子径の範囲と調合原料のブレーン値の範囲を基準に定める。
【0020】
次に、原料ミルの出口において、粉砕した調合原料の石英結晶子径と調合原料のブレーン値をモニターし、基準の石英結晶子径より小さい石英結晶子径の硅石を含む調合原料については、原料ミルの運転条件を調整して、原料ミル出口の調合原料のブレーン値を上記基準のブレーン値の0.98倍以下にし、粉末度を下げる。調整後のブレーン値が基準の0.98倍より大きいと、クリンカーの遊離石灰量が目標の範囲よりも少なくなる。
【0021】
具体的には、例えば、硅石の石英結晶子径が200nm未満の場合には、調合原料のブレーン値を4500cm2/g以下にする。図2に示すように、石英結晶子径が小さい場合には遊離石灰量が減少する傾向があり、一方、図3に示すように、ブレーン値が小さい場合には遊離石灰量が増加する傾向があるので、石英結晶子径が基準より小さい場合にはブレーン値を小さくすることによって、焼成条件を変えずにクリンカーの遊離石灰量を一定範囲にすることができる。
【0022】
さらに、原料ミルの出口において、粉砕した調合原料の石英結晶子径と調合原料のブレーン値をモニターし、基準の石英結晶子径より大きい石英結晶子径の硅石を含む調合原料については、原料ミルの運転条件を調整して、原料ミル出口の調合原料のブレーン値を上記基準のブレーン値の1.03倍以上にし、粉末度を上げる。調整後のブレーン値が基準の1.03倍より小さいと、クリンカーの遊離石灰量が目標の範囲よりも多くなる。
【0023】
具体的には、例えば、硅石の石英結晶子径が250nm以上の場合には、調合原料のブレーン値4850cm2/g以上にする。このように、石英結晶子径が基準より大きい場合にはブレーン値を大きくすることによって、焼成条件を変えずにクリンカーの遊離石灰量を一定範囲にすることができる。
【0024】
硅石の石英結晶子径が250nm以上の場合には、石英結晶子径の大きさをさらに区分し、区分された石英結晶子径に応じて調合原料のブレーン値を調整すると良い。例えば、硅石の石英結晶子径が250nm以上〜300nm未満の場合には調合原料のブレーン値4850cm2/g以上〜4950cm2/g未満(基準のブレーン値の1.03倍〜1.07倍)にすると良い。
【0025】
また、硅石の石英結晶子径が300nm以上の場合には、調合原料のブレーン値を5200cm2/g以上にすると良い。
【発明の効果】
【0026】
本発明の製造方法によれば、クリンカー中の遊離石灰量を一定範囲に制御することができる。例えば、硅石の石英結晶子径が異なる原料を用いた場合でも、クリンカー中の遊離石灰量を0.7〜1.0wt%、好ましくは0.75〜0.90wt%の範囲に制御することができる。
【0027】
また、本発明の製造方法は、原料ミル出口の調合原料の石英結晶子径をモニターし、この結晶子径に基づいて原料ミルの運転条件を調整して調合原料のブレーン値を調整するので特別な設備を必要とせず、既存の設備を利用して実施することができるので、容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】石英粒子の粒子径と結晶子径の関係を示す模式説明図。
図2】石英結晶子径とクリンカー中の遊離石灰量との関係を示すグラフ。
図3】硅石のブレーン値とクリンカー中の遊離石灰量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔試料の調製、焼成条件〕
クリンカー原料として、石灰石(埼玉県秩父郡産)、粘土原料(火力発電所産の石炭灰)、鉄原料(銅製錬所産スラグ)、硅石(産地A,B,C,D,E,F)、調整用原料(無水石膏、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム)を用いた。硅石以外の原料の粉末度は一定にした。表1に示す化学組成、および表2に示すモジュラスおよび鉱物組成になるように上記各原料を混合し、水を添加して(水/粉体=10wt%)、円柱状の試料を調製した。この試料を105℃の恒温炉にて18時間乾燥した後、1000℃で60分仮焼成し、1450℃で所定時間本焼成してクリンカーとした。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
〔測定方法〕
原料の硅石に含まれる石英の結晶子径を規格(JIS K 0131:1996)に従って測定し、上記式[1]に基づいて結晶子径を定めた。このとき、不均一ひずみを一定とし、試料による回折線の広がりはすべて結晶子径に起因するものとして求めた見かけの結晶子径を結晶子径とした。クリンカー中の遊離石灰量を規格(JCAS I-01-1997「遊離酸化カルシウムの定量方法」)に従って測定した。
【0033】
〔実施例1〕
硅石の石英結晶子径が異なる調合原料を焼成し(焼成温度1450℃)、クリンカー中の遊離石灰量(f.CaO)と石英結晶子径との関係を調べた。この結果を図2に示した。図示するように、石英の結晶子径が大きいほど、クリンカーに含まれる遊離石灰量が多くなる傾向がある。この傾向は硅石の種類(A〜F)が異なっても同様である。
【0034】
〔実施例2〕
硅石の粉末度を変えた調合原料を焼成し(焼成温度1450℃)、クリンカー中の遊離石灰量(f.CaO)とブレーン値との関係を調べた。この結果を図3に示した。図示するように、硅石のブレーン値が大きいほど、クリンカーに含まれる遊離石灰量が減少する。この傾向は硅石の種類(A〜F)が異なっても同様である。
【0035】
〔比較例〕
石英結晶子径がおのおの200nm以下、200nm〜250nm、250nm〜300nm、300nm以上の各硅石を用いた場合について、石英結晶子径にかかわらず、調合原料をブレーン値4650cm2/gに粉砕して焼成し(焼成温度1450℃)、クリンカー中の遊離石灰量(f.CaO)を測定した。石英結晶子径の範囲に応じた遊離石灰量を表3に示した。
表3に示すように、クリンカー中の遊離石灰量は1.0wt%以上および0.70wt%以下の広い範囲に及んでいる。
【0036】
【表3】
【0037】
〔実施例3〕
比較例において、調合原料のブレーン値4650cm2/gのときに、クリンカー中の遊離石灰量が0.75wt%〜0.80wt%である石英結晶子径は200nm〜250nmであるので、これを基準にし、石英結晶子径の大きさに応じて、調合原料のブレーン値が表4になるように粉砕して焼成し(焼成温度1450℃)、クリンカー中の遊離石灰量(f.CaO)を測定した。この結果を表4に示した。
表4に示すように、クリンカー中の遊離石灰量は0.79wt%〜0.86wt%の狭い範囲に制御されている。
【0038】
【表4】
図1
図2
図3