(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
船舶は、積荷を搭載した時に喫水まで沈み安定し、また、プロペラスクリューも水中に沈むように設計される。したがって、積荷が搭載されていない状態では、浮力によって、浮き上がり過ぎ、船の安定性やプロペラスクリューの没水深度が確保できない。そこで、積荷を下した貨物船等は、寄港地で被処理液を取水し、船体内に溜めることで、喫水線を積荷を積んだ状態に近づける。この際に取水した被処理液をバラスト水と呼ぶ。
【0003】
バラスト水は、次の寄港地まで船舶の「重り」として運ばれ、積荷の積載と共に放出される。つまり、前の寄港地の海洋生物を次の寄港地に持ち込むこととなる。このように、ある場所の生物を他の場所に移してしまうことは、自然によって育まれたその地の生態系を破壊若しくは汚染することに繋がる可能性が高い。そこで、排出するバラスト水中に含まれる生物の量の基準を定めるバラスト水条約(船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約)が、国際海事機関(IMO)で採択されている。
【0004】
この基準では、船舶から排出されるバラスト水に含まれる50μm以上の生物(主として動物性プランクトン)の数が1m
3中に10個未満、10μm以上50μm未満の生物(主として植物性プランクトン)の数が1mL中に10個未満、コレラ菌の数が10mL中に1cfu未満、大腸菌の数が100mL中に250cfu未満、腸球菌の数が100mL中に100cfu未満となっている。なお、「cfu(colony forming unit)」はコロニー形成単位である。
【0005】
これらの基準を満たすため、近年バラスト水処理に関する技術が多く開示されている。具体的には、ろ過および遠心分離等によって水生生物を除去する方法、物理的・機械的に水生生物を死滅させる方法、熱により水生生物を死滅させる方法、化学薬品をバラストタンク中に注入する若しくは、塩素系物質等を発生させて水生生物を死滅させる方法等が挙げられる。
【0006】
ここで、遠心分離で水生生物を除去する方法は、フィルタ詰まり等の問題がなく、一定の比重を持つ水生生物の分離に有効であり、他の方法と併用することで、利用されている。
図8には、特許文献1で開示されている水処理装置100を示す。
【0007】
この水処理装置100は、海水取水ライン101と、取水された海水中の粗大物を除去するハイドロサイクロンで構成された粗ろ過装置102と、海水を送水するためのバラスト水供給装置としてのポンプ103と、ろ過された微生物や細菌類を殺滅させるための殺菌剤を供給する殺菌剤供給装置104と、殺菌剤が添加された海水を所定時間滞留させる滞留槽105と、この滞留槽105から導出された処理水を送水する処理水送水ライン106と、処理水送水ライン106から送水される処理水を貯留するバラストタンク107を備えている。
【0008】
特許文献1では、粗ろ過装置(以後「遠心式固液分離装置」と呼ぶ。)102の詳細な構成は開示されていない
。
【0009】
水処理装置の参考例としての図7を参照して、遠心式固液分離装置200は、複数のサイクロン202、204と、サイクロン202、204の下方に設けられた下液容器206、208と、下液容器206、208の下方に設けられたバルブ210、212と、バルブ210、212の下方に備えられた貯留容器214を含む。また、貯留容器214の上流側には、フラッシングポンプ216が設けられており、貯留容器214の下流側は、排出配管218を介して船体の排出口220に繋がる。
【0010】
サイクロン202、204は、液体入口202a、204aと、液体出口202b、204bと、下液口202c、204cを有する。なお、遠心式固液分離装置200の上流側には、取水ポンプ232、不活性化装置230が配置される。また、遠心式固液分離装置200の下流側には、処理済液貯留槽240が配置される。
【0011】
サイクロン202、204の動作について、サイクロン202を例にして説明する。サイクロン202を稼働させる際には、バルブ210を閉じ、下液容器206中に被処理液を満たす。船体内に取水された被処理液は、不活性化装置230を経て、液体入口202aからサイクロン202内に流入される。サイクロン202は、逆円錐台形状を有し、その内面202iは下方に向って傾斜面を有する。液体入口202aからサイクロン202内に流入した被処理液は、サイクロン202の内面202iに沿って渦を巻く。
【0012】
この渦を巻く間に、比重の重い水生生物は、内面202iの傾斜面に沿って下方に移動し、下液口202cから下液容器206に落下する。一方、被処理液の水成分は液体出口202bから取り出され、処理済液貯留槽240に送られる。下液容器206に水生生物が一定量溜まったら、下方のバルブ210を介して貯留容器214に水生生物を被処理液と共に排出する。貯留容器214はある程度大きな容量を有するパイプであるので、一定量の水生生物を始め、ゴミや有機物、無機物などの鉱物、水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)(以下「水生生物等」という。)を蓄積させることができる。
【0013】
貯留容器214の中は、貯留容器214の中の被処理液の量が一定以上になる若しくは、一定時間間隔で、フラッシングポンプ216によって強勢水を流す。水生生物等は、排出配管218、排出口220を介して船体外に排出される。この時、バルブ210、212は、貯留容器214内の水生生物等の逆流が発生しないように、閉じられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
サイクロンを用いた遠心式固液分離装置は、目詰まりが生じることがほとんどないので、生物殺滅装置(不活性化装置)と共に利用すると保守の手間が少なくてよいため有用である。遠心式固液分離装置を船舶に設置する場合、船体内では設置スペースが限られており、特に高さ制限がある場合に所定の分離効果(単位時間に分離できる量)を得ようとすると、小型のサイクロンを複数台設置する必要がある。
【0016】
従来、複数のサイクロンには、個々に下液容器とバルブおよびそれに付随する配管を設けているので、これらの制御のために複雑な制御系を設ける必要がある。また、このような構成にすると、下液容器およびバルブの数が多くなり、コスト高になると共に、貴重な船内のスペースを多く使用するという問題もある。これを改良するためには、下液容器を共通化することが考えられる。
【0017】
しかし、複数のサイクロンは同じように作製されたとしても、配管の取り回し長さの違いや、製造上の誤差によって下液口での水圧が同じにならない。すると、複数のサイクロンのうち、最も下液口の水圧の低いサイクロンでは、被処理液が逆流するという課題が生じる。これは、被処理液から分離した水生生物等を再びサイクロンに戻すことになる。
【0018】
また、特許文献1のように不活性化装置として殺菌剤供給装置を配置すると、殺菌剤の供給という保守が必要になるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上記の課題に鑑み、複数のサイクロンに対して共通の下液容器を設けても、各サイクロン間で逆流が生じない構造の遠心式固液分離装置を提供する。
その遠心式固液分離装置を用いた水処理装置は、取水口に接続された取水配管と、
前記取水配管に入水口が接続された不活性化装置と、
前記不活性化装置の出水口に接続され、複数に分岐した配管と、
前記配管がそれぞれ液体入口に接続された遠心式固液分離装置を有し、
前記遠心式固液分離装置は、
それぞれが少なくとも液体入口と液体出口と下液口を有する複数のサイクロンと、
前記複数のサイクロンの各下液口と連通した下液容器を有し、
前記下液容器は、前記複数のサイクロンの各下液口との連通開口端より上方側に空間形成部を有
し、
前記下液容器には排水孔が設けられ、
前記排水孔に一端が接続された連通部材と、
前記連通部材の他端が接続された貯留容器を、さらに有し、
前記貯留容器はパイプであり、前記パイプにフラッシングポンプが接続され、
前記取水口から取水された船外の被処理液は、前記不活性化装置で発生する次亜塩素酸により水生生物の殺滅処理が行われ、その殺滅処理が行われた被処理液は前記複数のサイクロンで水生生物が分離され、その分離された水生生物は前記各下液口から前記下液容器に落下し、前記下液容器内に蓄積され、その蓄積された水生生物は前記排水孔から前記パイプに排出され、その排出された前記パイプ内の水生生物は前記フラッシングポンプでくみ上げられた船外の被処理液により押し出され船外に放出され、前記複数のサイクロンの各液体出口から排出される被処理液は処理済液として送液されることを特徴とする。
【0020】
また、不活性化装置として対向電極間に電圧を印加し電流を流す不活性化装置を遠心式固液分離装置の前段に配置した水処理装置を提供する。より具体的には、
取水口に接続された取水配管と、
前記取水配管に入水口が接続された不活性化装置と、
前記不活性化装置の出水口に接続され、複数に分岐した配管と、
前記配管がそれぞれ液体入口に接続された上記遠心式固液分離装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る遠心式固液分離装置は、複数のサイクロンに対して1つの下液容器を設けるだけなので、使用する資材が少なくできる。その結果本発明に係る遠心式固液分離装置は省スペースおよび省コストで実現出来る。また、貯留容器との間のバルブもサイクロンの数以下(少なくとも1つ)でよいので、制御系も単純になる。
【0022】
また、複数のサイクロンに対して共通の下液容器を設けているにも関わらず、各サイクロンにおいて分離水が逆流することがない。
【0023】
また、遠心式固液分離装置の前段に対向電極間に電圧を印加し電流を流す不活性化装置を配置すれば、コンパクトであり、かつ保守の手間が軽い水処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を用いて本発明に係る遠心式固液分離装置と、それを用いた水処理装置を説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一実施形態を例示するものであり、本発明は、以下の説明に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施形態は改変することができる。なお、本明細書で「被処理液」とは、海水、淡水および海水淡水の混合水を含むものとする。また、被処理液には、水生生物等が含まれていてもよい。また、本発明に係る水処理装置の最終段から得られた液を「処理済液」と呼ぶ。処理済液は、水生生物の殺滅処理が行われ、水生生物等の分離処理が行われた被処理液である。
【0026】
(実施形態1)
図1に本実施形態に係る水処理装置1の構成を示す。水処理装置1は、不活性化装置10と、遠心式固液分離装置20を含む。不活性化装置10は、船体の取水口11からの取水配管11aに本体12の入水口12aが接続される。取水配管11aには、取水ポンプ11bが配置されている。また本体12の出水口12bには、配管13が接続されている。
【0027】
遠心式固液分離装置20は、複数のサイクロン21、22と、下液容器24を含む。また、下液容器24の下方に設けられたバルブ25と、貯留容器26、フラッシングポンプ27、排出配管28を含んでもよい。なお、サイクロンの数は2以上であれば、特に制限はない。ここでは、サイクロンが2つある場合を例示する。遠心式固液分離装置20で、水生生物等を分離する工程を分離処理と呼ぶ。
【0028】
不活性化装置10は、対向電極14a、14b間に電源14vで電圧を印加するタイプの物を配置する。殺菌剤を用いる場合と異なり、保守の手間は軽くなる。また、不活性化装置10自体を小型にすることができる。不活性化装置10の出水口12bに接続された配管13は、途中で遠心式固液分離装置20のサイクロン21、22の液体入口21a、22aに向かって分岐する。不活性化装置10で水生生物等を殺滅する工程を殺滅処理と呼ぶ。
【0029】
サイクロン21、22の下液口21c、22cは、配管21d、22dを介して、下液容器24に連通されている。配管21d、22dにはバルブは配置しない。またサイクロン21、22の液体出口21b、22bには、配管21e、22eの一端が接続される。配管21e、22eの他端は処理済液貯留槽30に接続される。なお、処理済液貯留槽30は、バラストタンクであってもよいし、他の設備であってもよい。
【0030】
下液容器24は、排水側に排水孔24eが設けられる。また、上方部分に開閉可能な空気抜き24rが設けられてもよい。そして、配管21d、22dの下液容器24内での連通開口端21do、22doは、下液容器24の天井24tより下方に設けられている。
【0031】
本実施形態に係る遠心式固液分離装置20では、複数のサイクロン21、22に共通の下液容器24内において、配管21d、22dの連通開口端21do、22doと下液容器24の天井24tとの間に空間24sが設けられている点が特徴である。
【0032】
排水孔24eには、連通部材24pが連結されている。連通部材24pは、貯留容器26に連結されている。また連通部材24pには、バルブ25が設けられている。
【0033】
貯留容器26は、下液容器24内に沈殿した水生生物等を排出するために、取込む容器である。強勢水で水生生物等を押し出す場合は、パイプ状のものが好適に利用できる。なお、沈殿した水生生物等が貯留できれば、貯留容器26の形状は特に限定されない。また、貯留容器26には、中和装置29が設けられていてもよい。
【0034】
不活性化装置10が対向電極14a、14bを用いるタイプの場合は、不活性化装置10を通過した被処理液中に次亜塩素酸が含まれる。中和装置29は、貯留容器26内の被処理液を排出する際に、この次亜塩素酸を中和してから排出するために設けられる。具体的には、チオ硫酸ナトリウムを貯留容器26内に投入する装置が好適に利用できる。
【0035】
貯留容器26の上流側には、フラッシングポンプ27が接続されていてもよい。貯留容器26内の被処理液を強勢水で排出するためである。また貯留容器26の下流側には、排出配管28が連結されている。排出配管28の下流端28bは、船外に開放している排出口である。
【0036】
次に本実施形態に係る水処理装置1の動作について説明する。なお、ここでは、水処理装置1で処理済液を処理済液貯留槽30に貯留する場合を例にして説明する。処理済液貯留槽30に処理済液を貯留する場合は、船体外面に設けられた取水口11から取水ポンプ11bを介して被処理液を取水する。取水された被処理液は、取水配管11aを通過して、不活性化装置10に入る。なお、下液容器24の排水孔24eに繋がる連通部材24pのバルブ25は、閉じている。また、空気抜き24rは、通常閉じておいてよい。
【0037】
不活性化装置10内では、対向電極14a、14b間に電圧が印加され電流が流れている。被処理液は、この対向電極14a、14b間で電気分解される。この際に陽極から塩素ガスが発生し、溶解することで次亜塩素酸が発生する。この次亜塩素酸によって、生物を死滅させることができる。
【0038】
不活性化装置10の出水口12bから出た被処理液は、配管13を通って、液体入口21a、22aからサイクロン21、22に注入される。
【0039】
サイクロン21、22の下液口21c、22cは直接下液容器24に連通している。したがって、被処理液は下液容器24に落ちる。下液容器24の水面Lが上昇し、サイクロン21、22の配管21d、22dの連通開口端21do、22doまで水面Lが到達すると、それ以上水面Lは上昇しない。つまり、下液容器24内は、連通開口端21do、22doまでの被処理液と、連通開口端21do、22doから天井24tまでの間の空間24sに分けられる。
【0040】
サイクロン21、22には、液体入口21a、22aから被処理液が続けて流入するので、サイクロン21、22内は、被処理液で満たされ、液体出口21b、22bから処理済液として排出される。この時、被処理液は、サイクロン21、22内の内面21i、22iの傾斜面に沿って渦を巻く。そして、渦の遠心力で内面21i、22iの傾斜面に押し付けられる程度の比重の水生生物等は、内面21i、22iに沿って回転しながら下方に向い、下液口21c、22cから配管21d、22dを通り、下液容器24に落下する。サイクロン21、22で分離できる比重の大きさを「サイクロンの分粒特性」と言ってもよい。
【0041】
なお、ここで水生生物等中の水生生物には、バラスト水条約で規制の対象となっている生物および菌を含み、またそれらの死骸を含んでもよい。
【0042】
一方、処理済液自体は、液体出口21b、22bからサイクロン21、22外に排出され、処理済液貯留槽30に貯留される。
【0043】
図2(a)には、サイクロン21、22および下液容器24だけを示す。今、サイクロン21、22の下液口21c、22cに、圧力差が発生したとする。ここでは、下液口22cの圧力P22が下液口21cの圧力P21より高くなるとする。すると、下液容器24内の水面Lは上昇する。
図2では、上昇後の水面を「L1」とした。しかし、サイクロン21内に下液容器24内の被処理液が逆流することはない。下液容器24内の空間24sの容積が減ることで、下液口22cの圧力P22の増加分を吸収するからである。
【0044】
一方、
図2(b)に示すように、もし下液容器24内に空間24sがなく、全て被処理液で満たされていたとする。
図2(b)では、水面Lが下液容器24の天井24tまで上昇していることを示している。このような状態は、サイクロン21、22からの配管21d、22dの連通開口端21do、22doが、下液容器24の天井24t(
図1参照)面と一致している場合等に生じる。このような場合は、サイクロン22の下液口22cの圧力P22が、サイクロン21の下液口21cの圧力P21より高くなると、下液容器24内の被処理液はサイクロン21内に逆流する。
【0045】
サイクロン21、22を分離手段として用いる場合、下液口21cまたは下液口22cからの逆流は、液体入口21a、22aから流入した被処理液が、そのまま液体出口21b、22bから処理済液として排出されることを意味する。すなわち、処理済液貯留槽30には、水生生物等が分離されていない(分離処理されていない)被処理液が処理済液として送られる。
【0046】
サイクロン21、22に流入する被処理液は不活性化装置10を通過しているので、ほとんどの水生生物等は死滅していると考えられる。しかし、目視できる程度の大型の水生生物等は生きている虞がある。したがって、分離処理されていない被処理液が処理済液として処理済液貯留槽30内に貯留されると、バラスト水として被処理液が運搬される間に水生生物が処理済液貯留槽30内で増殖し、次の寄港地で排出されると、環境汚染を起こすおそれがある。
【0047】
一方、
図1および
図2(a)に示す下液容器24内の空間24sは、サイクロン21、22間の下液口21c、22cの圧力差によるサイクロン21、22内への逆流を防止する。すなわち、複数のサイクロン21、22に対して、下液容器24を共通にした場合、下液容器24内に、空間24sを設けることで、サイクロン21、22内への逆流を防止する逆流防止機能を発揮させることができる。
【0048】
下液容器24内に蓄積した水生生物等は、一定の期間毎に下液容器24の下の排水孔24eから貯留容器26に排出される。これは、連通部材24pに設けられたバルブ25を開くことで行われる。バルブ25を開くと、下液容器24内の水生生物等は、貯留容器26中に排出される。下液容器24の内容物を排出したら、バルブ25は閉じられる。
【0049】
バルブ25が閉じられたら、貯留容器26の上流のフラッシングポンプ27を作動させる。フラッシングポンプ27は、船外の被処理液をくみ上げ、高圧力で貯留容器26の下流方向に向かって強勢水を流す。これによって、貯留容器26内の水生生物等は、排出配管28を通って、下流端28bから船外に放出される。なお、フラッシングポンプ27は無くてもよい。フラッシングポンプ27を使用しなくても貯留容器26中の水生生物等を船外に放出できるからである。
【0050】
また、貯留容器26の設置は、不活性化装置10で発生させた次亜塩素酸を中和し、水生生物等を集めて水域に戻せるという効果を有する。さらに、貯留容器26の内容物を排出する前に中和装置29から中和剤を投入することで、次亜塩素酸を中和することができる。なお、図示してはいないが、処理済液貯留槽30の後段にも中和装置29等が設けられていてもよい。
【0051】
図3には、本実施形態に係る遠心式固液分離装置20の他の実施形態を示す。下液容器24内の配管21d、22dの連通開口端21do、22doは、下液容器24内の天井24tと面一に設けられている。しかし、下液容器24は、配管21d、22dが接続された部分の他の部分で、連通開口端21do、22doより上側に空間形成部24xを有する。
【0052】
図3に示すように、この下液容器24に被処理液が溜まると、被処理液は下液容器24の天井24tまで溜まる。しかし、それ以上には貯留することはない。このように、下液容器24は、配管21d、22dの連通開口端21do、22doより上側に空間24sを有する構造であればよい。
【0053】
再度
図1を参照する。
図3で示した空間形成部24xは、下液容器24が
図3の下液容器24のように特殊な形状をしていなくても、サイクロン21、22からの配管21d、22dの連通開口端21do、22doと下液容器24によって構成することができる。
【0054】
言い換えると、下液容器24が気密に構成され、下液容器24の天井24tよりも、配管21d、22dの連通開口端21do、22doが、低い位置にあれば、天井24tと連通開口端21do、22doの間の空間24sは、空間形成部24xであるといってもよい。すなわち、下液容器24は、サイクロン21、22からの配管21d、22dの連通開口端21do、22doより上方側に空間形成部24xを有している。
【0055】
また、下液容器24とサイクロン21、22との連通は配管21d、22dに限ることではない。
図4は、サイクロン21、22の下液口21c、22cが直接下液容器24内部にまで貫設されている場合を示す。このような場合は、下液口21c、22cが連通開口端21do、22do(
図3参照)であると言ってよい。
図4のように、サイクロン21、22の下液口21c、22cを連通開口端21do、22doとすると、配管21d、22dの長さ分だけ、遠心式固液分離装置20の高さを抑えることができる。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る水処理装置1は、遠心式固液分離装置20の複数のサイクロン21、22の下液容器24を共通化したにもかかわらず、各サイクロンにおいて分離水が逆流することなく、構造が簡単になり、部品点数も減らすことができる。また、下液容器24の排水側に貯留容器26を設けたので、不活性化装置10で発生させた次亜塩素酸を中和して排出することができる。
【0057】
(実施形態2)
図5に本実施形態に係る水処理装置2の構成を示す。実施形態1と同じ符号については説明を省略する。本実施形態においては、水処理装置2は、遠心式固液分離装置20bと不活性化装置10で構成される。実施形態1の場合との違いは、不活性化装置10が、遠心式固液分離装置20bより後段に配置されている点および遠心式固液分離装置20bは、サイクロン21、22と下液容器24だけで構成され、貯留容器26を有していない点である。
【0058】
本実施形態に係る水処理装置2では、取水口11から取り込んだ被処理液中の比較的大きな水生生物等を最初に分離しておき、その後、不活性化装置10によって、微小な水生生物等を死滅させる。このようにすると、遠心式固液分離装置20bの排水には、取水した状態の被処理液に何も加えていないので、中和剤などを加えることなく、そのまま水域へ戻すことができる。
【0059】
したがって、実施形態1の場合と比較して、さらに部材およびスペースの簡略化を図ることができる。
【0060】
図5を参照して、水処理装置2は、遠心式固液分離装置20bと、不活性化装置10を含む。また、処理済液貯留槽30を含めてもよい。船体面に形成された取水口11から取水配管11aが延設される。取水配管11aは分岐してサイクロン21、22の液体入口21a、22aに連通する。取水配管11aには取水ポンプ11bが設けられている。
【0061】
サイクロン21、22の下液口21c、22cは、下液容器24と連通する。下液容器24の排水孔24eには、排出配管28が接続される。排出配管28の下流端28bは、排出口である。
【0062】
サイクロン21、22の液体出口21b、22bは配管21e、22eを介して、不活性化装置10の入水口12aに連通している。不活性化装置10の出水口12bは、配管13を介して処理済液貯留槽30に連通している。
【0063】
以上の構成を有する水処理装置2の動作を説明する。被処理液は、取水口11から取水され、サイクロン21、22に送られる。サイクロン21、22では、予め決められた比重に基づいて、水生生物等が分離される。つまり決められた比重以上の水生生物等は、下液容器24に落下し、決められた比重以下の水生生物等を含む被処理液は、液体出口21b、22bから、不活性化装置10に送られる。
【0064】
下液容器24中の水生生物等は、排出口28bから水域へ戻される。この際、水域へ戻される水生生物等は、その場で取水した被処理液中に存在した水生生物等である。また、水生生物等と共に水域へ戻される被処理液は、不活性化装置10を通過していない。したがって、下液容器24から直接水域へ戻しても、環境に負担をかけることがない。つまり、貯留容器26も中和装置29も省略することができる。
【0065】
不活性化装置10では、対向電極14a、14b間に発生させられた次亜塩素酸によって、被処理液中の水生生物等が死滅させられる。水生生物等が死滅させられた被処理液は、処理済液として処理済液貯留槽30に貯留される。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る水処理装置2は、貯留容器26を含まない遠心式固液分離装置20bと、不活性化装置10と処理済液貯留槽30だけで構成できるので、実施形態1の水処理装置1より構成を簡略にすることができる。
【0067】
(実施形態3)
図6に本実施形態に係る水処理装置3の構成を示す。実施形態1と同じ符号については、説明を省略する。本実施形態においては、水処理装置3は、遠心式固液分離装置20bと、不活性化装置10と遠心式固液分離装置40で構成される。ここで最初の遠心式固液分離装置20bを第1の遠心式固液分離装置20bとよび、次の遠心式固液分離装置40を第2の遠心式固液分離装置40と呼んでもよい。
【0068】
第1の遠心式固液分離装置20bは、実施形態2の遠心式固液分離装置20bと同じである。また、第2の遠心式固液分離装置40は、実施形態1の遠心式固液分離装置20と同じであるが、符号番号が異なっている。
【0069】
水処理装置3は、取水した被処理液中の比較的大きな水生生物等を最初に分離しておき、不活性化装置10で水生生物等を死滅させた後、さらに水生生物等を分離する。この場合、第2の遠心式固液分離装置40は、不活性化装置10で発生させた次亜塩素酸をサイクロン41、42によって攪拌することで被処理液全体に行き渡らせ、水生生物等の死滅をより確実にする。
【0070】
また、第2の遠心式固液分離装置40の貯留容器46に中和装置49を設けることで、不活性化装置10で発生させた次亜塩素酸を中和して排出することができる。
【0071】
以下水処理装置3の構成を動作と共に説明する。取水口11から取水された被処理液は、取水配管11aを介して第1の遠心式固液分離装置20bのサイクロン21、22の液体入口21a、22aに注入される。サイクロン21、22の分粒特性に従って、所定の比重の水生生物等が分離され、下液容器24に沈殿する。下液容器24中の水生生物等は、排出配管28を介して、排出口28bから排出される。
【0072】
一方、サイクロン21、22の液体出口21b、22bから排出された被処理液は、不活性化装置10の入水口12aに向かう。不活性化装置10は、対向電極14a、14b間に電圧を印加し電流を流すことによって、次亜塩素酸を生成している。被処理液は、この対向電極14a、14b間を通過することにより次亜塩素酸に晒される。被処理液中の水生生物等は、この次亜塩素酸によって死滅させられる。
【0073】
不活性化装置10の出水口12bから排出された被処理液は、第2の遠心式固液分離装置40のサイクロン41、42の液体入口41a、42bに向かう。被処理液は、サイクロン41、42によって、激しく攪拌され被処理液中の水生生物等は、より確実に次亜塩素酸に晒され、死滅させられる。
【0074】
そして、サイクロン41、42の分粒特性に従って、再度分離された水生生物等(ほぼ水生生物等の死骸である)は、下液容器44に落下する。下液容器44中の水生生物等は、貯留容器46中に集められる。貯留容器46へ水生生物等を集める際には、空気抜き44rを利用してもよい。そして、貯留容器46に設けられた中和装置49によって、被処理液中の次亜塩素酸は中和される。貯留容器46中の水生生物等は、被処理液とともに、排出口48bから船外へ排出される。排出の際には、フラッシングポンプ47を用いてもよい。
【0075】
サイクロン41、42の液体出口41b、42bから排出される被処理液は、処理済液として処理済液貯留槽30に送液される。