(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ボウル面の上方領域は、上記ボウル面の上端から下方に向けて徐々に後退して形成されると共に、連続的に曲率半径が小さくなるように形成されている請求項1に記載の小便器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に示すような従来の小便器においては、ボウル面の上方に自動洗浄ユニットが配置され、且つ、ボウル面の左右両端から前方に立ち上がる側面部が形成されているので、使用者がボウル面に近づき難く、その結果、使用者は、ボウル面から離れた位置に立ち、用を足すことになるので、小便(尿)が床に垂れて床を汚す汚垂れを生じ易くなるという問題がある。また、スプレッダからの洗浄水の吐水が側面部を洗浄することができないため、不衛生となり、清掃に手間がかかるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に示すような従来の小便器においては、側面部を洗浄するためには、リム部、通水路及び吐水口を有し、洗浄水を頂部から流下させる比較的大きな装置であるよどかけ式の吐水装置をボウル面の頂部から前方に突出するように設ける構造が必要とされるので、使用者がボウル面に近づき難く、その結果、使用者は、ボウル面から離れた位置に立ち、用を足すことになるので、小便(尿)が床に垂れて床を汚す汚垂れを生じ易くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、使用者がボウル面に近い位置まで近づき易くなり、使用者の尿が床に垂れて床を汚す汚垂れを生じさせにくくなり、使用者が不快な思いをすることを防ぐことができる小便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、洗浄水によりボウル面を洗浄する小便器であって、小便を受ける上記ボウル面
を備える小便器本体と、ボウル面内の上方領域に設けられ、洗浄水をボウル面の左右方向に広がるように吐水する吐水装置と、を有し、ボウル面の吐水装置が設けられている上方領域は、
上記ボウル面の上端から下方に向かうにつれて上記ボウル面の左右方向の幅が小さくなるような凹曲面により形成され、上記凹曲面の接線の垂線が前記小便器本体の前方に向かう方向に延びることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、ボウル面
の吐水装置が設けられている上方領域
は、
ボウル面の上端から下方に向かうにつれてボウル面の左右方向の幅が小さくなるような凹曲面
により形成され、上記凹曲面の接線の垂線が前記小便器本体の前方に向かう方向に延び、従来のボウル面の側面部が設けられていないので、従来に比べて使用者がボウル面に近い位置まで近づきやすくすることができる。従って、使用者の尿が床に垂れて床を汚す汚垂れを生じさせにくくなり、使用者が不快な思いをすることを防ぐことができる。
また、ボウル面
の吐水装置が設けられている上方領域
は、
ボウル面の上端から下方に向かうにつれてボウル面の左右方向の幅が小さくなるような凹曲面
により形成され、凹曲面の接線の垂線が小便器本体の前方に向かう方向に延びるため、吐水により洗えない部分を生じていた従来のボウル面の側面部が設けられていないので、ボウル面の清掃性を向上させることができる。
また、左右方向に連続した凹曲面を有する
上方領域により、吐水装置からボウル面の左右方向に広がるように吐水される洗浄水が、ボウル面の外部へ飛び出すことを防止することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、吐水装置は、ボウル面の左右方向の斜め上方まで広がるように洗浄水を吐水するよう構成され、ボウル面の上方領域は、ボウル面の上端から下方に向けて後方に向かって傾斜して形成されている。
このように構成された本発明においては、左右方向の斜め上方まで広がるように吐水された洗浄水が、下方に向けて後方に向かって傾斜するボウル面の
上方領域に沿って流下するので、左右方向の斜め上方へ向かう洗浄水の勢いを弱めて、洗浄水の左右方向の広がりを抑制することができ、洗浄水がボウル面の外部へ飛び出すことを防止することができる。
したがって、ボウル面を広範囲にわたって洗浄することができると共に、洗浄水の飛び出しを防止できる。
【0010】
本発明において、好ましくは、ボウル面の上方領域は、ボウル面の上端から下方に向けて徐々に後退して形成されると共に、連続的に曲率半径が小さくなるように形成されている。
このように構成された本発明においては、ボウル面の上方領域は、ボウル面の上端から下方に向けて徐々に後退して形成されると共に、連続的に曲率半径が小さくなるように形成されているので、下方に向かうにつれて徐々にボウル面の左右方向の幅が小さくなり、従来に比べて使用者がボウル面に近い位置に近づきやすくなり、使用者の尿が床に垂れて床を汚す汚垂れを生じさせにくくなり、使用者が不快な思いをすることを防ぐことができる。
また、ボウル面の上方領域は、ボウル面の上端から下方に向けて徐々に後退して形成されると共に、連続的に曲率半径が小さくなるように形成されているので、使用者の局部を、周囲の他人からより見えにくくすることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、ボウル面は、下方に向かうにつれて左右両端部が前方に突出するように形成されている。
このように構成された本発明においては、使用者の尿が当たりやすいボウル面の下方において、ボウル面の外部への尿跳ねをより確実に防止することができる。
また、ボウル面の左右両端部が前方に突出するように形成されているので、使用者の局部を、周囲の他人から見えにくく遮蔽することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、ボウル面
の上方領域がボウル面の上端から少なくとも200mmの範囲で形成されている。
このように構成された本発明においては、ボウル面
の上方領域は、ボウル面の上端から少なくとも200mmの範囲に形成されるので、特に使用者の局部を把持する手や腕が、従来のようにボウル面の側面部に接触することがないため、従来に比べて使用者がボウル面の
上方領域に近い位置に近づきやすくなっている。
【0013】
本発明において、好ましくは、ボウル面の上方領域は、水平断面において、左右両端近傍の接線の前方側が外側に開くように形成されている。
このように構成された本発明においては、ボウル面の上方領域は、水平断面において、左右両端近傍の接線の前方側が外側に開くように形成されているので、使用者が、自身の体の前側をボウル面の左右両端に接触することなく、ボウル面の
上方領域に近づけやすくなっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の小便器によれば、使用者がボウル面に近い位置に近づき易くなり、使用者の尿が床に垂れて床を汚す汚垂れを生じさせにくくなり、使用者が不快な思いをすることを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の実施形態による小便器を説明する。先ず、
図1乃至
図5により小便器の基本構造を説明する。
図1は本発明の実施形態による小便器を示す全体斜視図であり、
図2は
図1の小便器の正面図であり、
図3は
図1の小便器の側面図であり、
図4は
図2のIV-IV線に沿って見た縦断面図であり、
図5は
図1の小便器の平面図である。
【0017】
図1乃至
図5に示すように、符号1は、本発明の実施形態による小便器を示し、この小便器1は、陶器製の小便器本体2と、この小便器本体2を洗浄するための自動便器洗浄ユニット4(
図2及び
図3に図示され、他の図面においては省略する)を備えている。小便器1は自身の最下部が床面から浮かされた状態となるように背後の壁面に沿って取付けられる壁掛け式の小便器であるが、小便器1は床面上に直接配置される床置き式の小便器であってもよい。
【0018】
小便器1の小便器本体2は、上方端に上述した自動便器洗浄ユニット4を収納するための収納室6(
図2及び
図3に概略により図示され、他の図面においては省略する)と、この収納室6の前面7から下方に延びるボウル面8と、このボウル面8の底部に形成された排出口10とを備えている。
【0019】
収納室6は、小便器本体2と別体である蓋3により形成されている。また、収納室6の前面7は、詳細は後述するように、後方に向かって傾斜して形成されている。また、排出口10には、目皿板12が配置されている。さらに、排出口10は、下流側に配置された排水トラップ管路(図示せず)及び排水配管(図示せず)に接続されている。
【0020】
次に、
図2乃至
図10により、自動便器洗浄ユニット4について説明する。
図6は本発明の実施形態による小便器のスプレッダをボウル面に取付けた状態を側方から示す概略図であり、
図7は本発明の実施形態による小便器のスプレッダをボウル面に取付けた状態において、左右方向の中央よりわずかに左側にずれた位置における前後方向の縦断面を示す縦断面図であり、
図8は本発明の実施形態による小便器の自動便器洗浄ユニットの流路の構成を示す概略図であり、
図9は
図6のIX-IX線に沿って見た断面図であり、
図10は
図6のX-X線に沿って見た断面図である。
図6及び
図7のボウル面8は下部が後方側に向かって若干傾斜している状態である。
【0021】
自動便器洗浄ユニット4は、水道等の給水源から洗浄水を供給する主給水管14と、主給水管14から分岐される第1給水管16と、主給水管14から分岐される第2給水管18と、第1給水管16に設けられる第1流量調整装置20と、第1給水管16に取り付けられ給水の供給及び停止を行う第1開閉弁22と、第2給水管18に設けられる第2流量調整装置24と、第2給水管18に取り付けられ給水の供給及び停止を行う第2開閉弁26と、第1給水管16及び第2給水管18の先端に取り付けられた吐水部であるスプレッダ28と、使用者の有無を検知する人体検知センサ30と、人体検知センサ30からの検知信号及び所定の制御プログラム等に基づいて第1開閉弁22、第2開閉弁26等を制御することができる制御ユニット32と、を備えている。
【0022】
第1流量調整装置20は、第1給水管16内を通過する洗浄水を適正な一定流量に調整することができる定流量弁である。第1流量調整装置20は、流量センサ等を使用して洗浄水を適正な流量に調整することができる他の装置により構成されてもよい。第1流量調整装置20は、制御ユニット32により制御されるように構成されてもよい。第1流量調整装置20は、後述する下流側の第1供給通路38に供給する洗浄水の瞬間流量を、比較的高い瞬間流量の範囲、例えば、8〜17L/minの範囲、好ましくは11〜13L/minの範囲に調整するようになっている。
第1開閉弁22は、制御ユニット32の制御信号により第1給水管16の流路を開閉する電磁弁である。第1開閉弁22は、給水の供給及び停止を行うことができる他の流路開閉装置により構成されてもよい。
【0023】
第2流量調整装置24は、第2給水管18内を通過する洗浄水を適正な一定流量に調整することができる定流量弁である。第2流量調整装置24は、流量センサ等を使用して洗浄水を適正な流量に調整することができる他の装置により構成されてもよい。第2流量調整装置24は、制御ユニット32により制御されるように構成されてもよい。第2流量調整装置24は、後述する下流側の第2供給通路40に供給する洗浄水の瞬間流量を、比較的低い瞬間流量の範囲、例えば、2〜8L/minの範囲、好ましくは5〜7L/minの範囲に調整するようになっている。
第2開閉弁26は、制御ユニット32の制御信号により第2給水管18の流路を開閉する電磁弁である。第2開閉弁26は、給水の供給及び停止を行うことができる他の流路開閉装置により構成されてもよい。
【0024】
上述した
図10に示す本実施形態においては、自動便器洗浄ユニット4は、第1給水管16に取り付けられ給水の供給及び停止を行う第1開閉弁22と、第2給水管18に取り付けられ給水の供給及び停止を行う第2開閉弁26とを備え、制御ユニット32が第1開閉弁22を開閉して第1供給通路38への洗浄水の供給開始及び停止を制御し、第2開閉弁26を開閉して第2供給通路40への洗浄水の供給開始及び停止を制御している。
しかしながら、本実施形態においては、変形例として、自動便器洗浄ユニット4は、上述した第1開閉弁22及び第2開閉弁26に代えて、主給水管14と第1給水管16及び第2給水管18との分岐箇所に3方切換弁等の切換弁を設けるようにしてもよい。具体的には、主給水管14と第1給水管16及び第2給水管18との分岐箇所に設けられた切換弁を、制御ユニット32によって制御することにより、第1給水管16並びに第1供給通路38への洗浄水の供給開始及び停止、第2給水管18並びに第2供給通路40への洗浄水の供給開始及び停止、をそれぞれ独立して制御することができる。他の変形例として、自動便器洗浄ユニット4は、上述した第1開閉弁22及び第2開閉弁26に代えて、第1給水管16並びに第1供給通路38への洗浄水の供給開始及び停止、第2給水管18並びに第2供給通路40への洗浄水の供給開始及び停止、をそれぞれ独立して制御することができる他の弁構造及びこれらの組合せ構造を有していてもよい。
【0025】
人体検知センサ30は、小便器1の前方の使用者の有無及び使用者までの距離を検知する赤外線式のセンサである。この人体検知センサ30により使用者が用を足して小便器1から所定距離離れたことを検知した場合に、制御ユニット32から操作信号が発信され、この操作信号により、第2開閉弁26が開となり、第2給水管18からスプレッダ28に洗浄水が供給され、小便器1のボウル面8が洗浄されるようになっている。なお、人体検知センサ30は、赤外線式のセンサに限定されず、隠蔽可能な電波式センサ(マイクロ波センサ)であっても良い。
制御ユニット32は、人体検知センサ30の使用者の有無の検知結果を受けて、第2開閉弁26を開閉させる制御を行う他、予め設定された所定時間、例えば2時間等の時間が経過するごとに、制御ユニット32から操作信号が発信され、この操作信号により、第1開閉弁22を開状態とする制御を行う。これにより、洗浄水が、第1給水管16からスプレッダ28に供給され、小便器1のボウル面8が洗浄され、排出口10の下流側に配置された排水トラップ(図示せず)及び排水管路(図示せず)内の雑菌の繁殖を抑制し、尿石等の付着を抑制する設備保護洗浄を行えるようになっている。
【0026】
次に、
図6乃至
図10により、スプレッダ28の詳細構造を説明する。
図6等に示すように、この自動便器洗浄ユニット4において、スプレッダ28が、小便器本体2の正面部8aの収納室6の前面7に取り付けられている。
スプレッダ28は、洗浄水をボウル面8のほぼ中央領域に向けて吐水する第1吐水口部34と、第1吐水口部34よりも後方側に配置され、洗浄水をボウル面8のほぼ中央領域より広範囲の左右領域に広がるように吐水する第2吐水口部36と、第1吐水口部34に洗浄水を供給する第1供給通路38と、第2吐水口部36に洗浄水を供給する第2供給通路40と、を備えている。
【0027】
第1供給通路38は、第1給水管16の先端に接続され、第2供給通路40とは独立した通水路を形成している。第1供給通路38は、比較的高い瞬間流量の洗浄水を第1吐水口部34に供給する。第2供給通路40は、第2給水管18の先端に接続され、第1供給通路38とは独立した通水路を形成している。第2供給通路40は、比較的低い瞬間流量の洗浄水を第2吐水口部36に供給する。
【0028】
第1吐水口部34は、その第1吐水口部34の左右両端を形成する第1吐水口上壁34aと、その第1吐水口部34の前側の壁面を形成する第1吐水口前壁34bと、その第1吐水口部34の後側の壁面を形成する第1吐水口後壁34cとを備えている。第1吐水口部34は、スプレッダ28の下部の、左右の第1吐水口上壁34aとの間において、第1吐水口前壁34bと第1吐水口後壁34cとの間の扇形の第1開口通路34dを形成している。
第1吐水口部34は、鉛直下方から左右対称におよそ40°の位置に第1吐水口上壁34aが形成されている。従って、左右の第1吐水口上壁34aの間の角度A1は約80°に形成されている。左右の第1吐水口上壁34aの間の角度A1は、例えば、50°〜120°の範囲、好ましくは60°〜90°の範囲に形成されている。第1吐水口上壁34aは、第1吐水口部34の開口通路34dの上端を形成するので、第1吐水口部34から吐水される洗浄水が左右の第1吐水口上壁34aに沿って吐水され、第1吐水口部34から吐水される洗浄水の広がりの上縁を規制している。また、第1吐水口上壁34aは、水平より下方向きに延びているので、第1吐水口部34から流出する洗浄水の単位面積あたりの瞬間流量が増大される場合にも、洗浄水の左右方向への広がりを抑制することができる。
【0029】
第2吐水口部36は、第2吐水口部36の上端を形成する第2吐水口上壁36aと、その第2吐水口部36の中央下端に延びる第2吐水口垂下壁36eと、第2吐水口部36の前側の壁面を形成する第2吐水口前壁36bと、第2吐水口部36の後側の壁面を形成する第2吐水口後壁36cとを備えている。
第2吐水口部36は、左右の第2吐水口上壁36aの間において、共通の第2吐水口前壁36bと第2吐水口後壁36cとの間のスプレッダ28の下部において概ね扇形の第2開口通路36dを形成している。
【0030】
第2吐水口部36は、鉛直下方から左右対称に約115°の位置に第2吐水口上壁36aが形成されている。従って、左右の第2吐水口上壁36aの間の角度A2は約230°に形成されている。左右の第2吐水口上壁36aの間の角度A2は、例えば、190°〜250°の範囲、好ましくは210°〜230°の範囲に形成されている。第2吐水口上壁36aは、第2吐水口部36の第2開口通路36dの上端を形成するので、第2吐水口部36から吐水される洗浄水が左右の第2吐水口上壁36aに沿って吐水され、第2吐水口部36から吐水される洗浄水の広がりの上縁を決定している。第2吐水口上壁36aは、水平より上方向きに延びているので、第2吐水口部36から第2吐水口上壁36aに沿って流出する洗浄水の上縁は、スプレッダ28から斜め上方に上昇するように吐水される。
第2吐水口部36は、左右の第2吐水口上壁36aの間の領域にわたって拡散するように洗浄水を吐水することができ、左右斜め上方から左右方向の左右両端近傍まで広がる水幕を形成することができる。
【0031】
次に、
図1乃至
図5、
図11乃至
図14により、小便器1の小便器本体2の詳細構造を説明する。
図11は
図2のXI-XI線に沿って見た断面図であり、
図12は
図2のXII-XII線に沿って見た断面図であり、
図13は
図2のXIII-XIII線に沿って見た断面図であり、
図14は
図2のXIV-XIV線に沿って見た断面図である。
【0032】
先ず、
図2及び
図3に示すように、本実施形態による小便器1は、自動便器洗浄ユニット4が小便器本体2の上方端に形成された収納室6内に収納されたタイプの小便器である。本実施形態においては、このようなタイプの小便器1において、小便器本体2の収納室6の前面7がボウル面8と連続し且つ後方に向かって傾斜して形成されている。小便器本体2において、収納室6の前面7は、ボウル面8と一体構造となっている。さらに、収納室6の前面7は、ボウル面8の上方側と連続して形成され、さらに、後方に向かって傾斜して形成されている。ここで、収納室6の前面7とボウル面8の「連続」は、収納室6の前面7とボウル面8が、面一に、又は、ほぼ面一に形成されていることを意味している。
また、完全な面一である必要はなく、例えば、小さな段差があってもよく、収納室6の前面からボウル面8へと流れる洗浄水が剥離することがなければ良い。
【0033】
ボウル面8は、その上部から下部まで、前面が使用者に対向するように開いた円弧形状(アーチ形状)の正面部8aを有している。ボウル面8は、ボウル面8のうち、スプレッダ28が設けられている上方領域において、従来のようなボウル面から前方に壁状に突出する側面部が設けられておらず、正面部8aのみから形成されている。このような正面部8aは自身の曲面の接線の垂線が小便器本体2の前方に立っている使用者に向かう方向に延びるような前向きの曲面を形成している。
【0034】
ボウル面8の正面部8aは、左右方向に連続した凹曲面で形成されている。この正面部8aは、使用者の胴体の曲面を受け入れやすいように使用者の胴体の曲面に沿うような湾曲面である。ボウル面8の正面部8aのみから形成されている上方領域は、平面視において、ボウル面8の左側端部8bから右側端部8cまで1つの曲率半径Rで描かれる1つの円弧(曲率半径Rが途中で概ね変化しないような1つの円弧であり、シングルRと称される円弧)に沿って形成され、その弧の中央部が後方側に配置されているシングルR領域8gを形成している。すなわち、シングルR領域8gにおいては曲面がほぼ単一の曲率半径Rを有するほぼ単一の円弧形状により形成されている。このシングルR領域8gにおいては、ボウル面8の上端8dから下方に向かうにつれて、円弧の曲率半径が徐々に減少するように形成され、曲率が徐々に増大するように形成され、下方に向かうにつれて徐々にボウル面8の左右方向の幅が小さくなるように形成されている。ボウル面8のシングルR領域8gは、少なくともボウル面8の上端から200mmの範囲、好ましくは上端から300mmの範囲の領域において形成されている。
ボウル面8のシングルR領域8gよりさらに下方の領域は、2種類の曲率半径Rを有する円弧の組み合わせ、又は円弧と直線との組み合わせによる複合的な形状部分である複合R領域8hを形成している。
【0035】
具体的には、
図11に示すように、ボウル面8は、シングルR領域8gにおける、ボウル面8の上端8dからの距離L1(L1=150mm)の位置、すなわち収納室6の前面7且つスプレッダ近傍の高さ位置において、平面視で、大きな曲率半径である曲率半径R1(R1=300mm)による単一の曲率半径の円弧により形成される正面部8aにより形成されている。
図12に示すように、ボウル面8は、シングルR領域8gにおける、ボウル面8の上端8dからの距離L2(L2=300mm)の位置において、平面視で、曲率半径R1よりも小さな曲率半径である曲率半径R2(R2=200mm)による単一の曲率半径の円弧により形成される正面部8aにより形成されている。
シングルR領域8gにおける正面部8aの曲率半径は、例えば、200〜500mmの範囲、好ましくは200〜400mmの範囲に設定されるようになっている。このような範囲とすることで、使用者の局部を把持する手や腕が、ボウル面に接触することを抑制できるため、使用者が用足し時に小便器に近づきやすくなり、結果として尿垂れにより床を汚してしまうという事態の発生を抑制することができる。
【0036】
ボウル面8は、複合R領域8hにおける、ボウル面8の上端8dからの距離L3(L3=450mm)の位置においては、平面視で、2種類の曲率半径を有する円弧を組み合わせた複合的な円弧形状を有している正面部8aにより形成されている。
ボウル面8は、さらに下部の複合R領域8hにおいては、左側端部8bと右側端部8cとが前方に延び、中央部8eが後方側に後退し、例えば、ボウル面8の上端8dからの距離L4(L4=500mm)の位置においては、平面視で、使用者に向かう方向に開くような円弧形状部分8i(正面部8a)とその両側で使用者に向かって突出する直線部分8j(側面部8k)とにより形成されている。
ボウル面8は、上端8dからの距離L4の位置より下方の領域においては、正面部8aと使用者に向かって突出する側面部8kとを有している。
【0037】
ボウル面8は、その上部側の高さ、特にシングルR領域8g内の高さ、例えばスプレッダ28近傍の高さにおいて、
図11に示すように、左側端部8b近傍のボウル面8の水平断面の接線Lが前方側が外側に開くように形成され、同様に、右側端部8c近傍のボウル面8の水平断面の接線Lが前方側が外側に開くように形成されている。
【0038】
ボウル面8は、ある水平断面において、左側端部8bと右側端部8cとが中央部8eよりも前方に突出するように配置されている。さらに、ボウル面8は、下方に向かうにつれて、左側端部8bと右側端部8cとが徐々に前方に突出するように配置されている。左側端部8bと右側端部8cとが中央部8eよりも前方に突出するように配置されているので、小便器1の使用中の使用者が、自身の局部を、周囲の他者(隣の小便器の使用者等)から見えにくく遮蔽することができる。
また、ボウル面8の正面部8aは、ボウル面8の上端8dから下方に向けて後方に向かって傾斜して形成されている。従って、その正面部8aの中央部8eは、上端8dから下方に向けて徐々に後退するように奥側に形成されている。
また、スプレッダ28が中央部8eにやや後方側に配置されているので、使用者が正面部8aに近づきやすくなっている。
【0039】
ボウル面8は、下部においては、左側端部8bと右側端部8cとが先端8fに向かって前方に突出されている。ボウル面8の上部においては使用者がボウル面8に近づけるようになっているのに対し、ボウル面8下部の先端8fが使用者側に突出しているので、使用者の尿が床に垂れて床を汚す汚垂れを生じさせにくくなっている。ボウル面8の下部は、その下方側において、流下する洗浄水を集めて排出口10に導くように形成されている。
【0040】
次に、本発明の実施形態による小便器の動作を説明する。
先ず、本発明の実施形態による小便器1による小便洗浄動作の流れを説明する。
通常、使用者が小便器1の前に立つと、人体検知センサ30が使用者の存在を検出して検出情報を制御ユニット32に送り、制御ユニット32は使用者の存在を認識する。使用者が小便器1のボウル面8に放尿を終え、放尿を済ませた使用者が小便器1の前から立ち去り、人体検知センサ30が非検出状態となると、制御ユニット32は使用者が小便器1から立ち去ったと判断して、制御ユニット32が小便洗浄を開始する。
【0041】
制御ユニット32は、小便洗浄動作においては、第2開閉弁26に制御信号を送って第2開閉弁26を開き、主給水管14から供給される洗浄水を第2給水管18から第2供給通路40に供給させる。このとき、第2供給通路40に供給される洗浄水の単位面積あたりの瞬間流量は、第2流量調整装置24により上述の比較的低い瞬間流量の範囲に調整される。後述するように、1つの主給水管14から、互いに異なる瞬間流量の洗浄水を供給する第1給水管16及び第2給水管18を通過して洗浄水がボウル面8に供給されることになる。第2供給通路40に供給された洗浄水は、第2吐水口部36において、第2吐水口前壁36bに衝突するようにして拡散され、左右の第2吐水口上壁36aの間に広がるように流れる。第2吐水口部36から吐水される洗浄水は、左右方向においては、左右の第2吐水口上壁36aの間から、上方まで広がるように吐出され、前後方向においては、第2吐水口前壁36bと第2吐水口後壁36cとの間からさらに後方側のボウル面8に向かって後方に吐出されている。
図1及び
図12において、第2吐水口部36から吐水される洗浄水の流れを矢印Aによって示す。第2吐水口部36内において上部の洗浄水は、水平から上り傾斜している第2吐水口上壁36aに沿って、左右斜め上方に上昇するように吐水される。
【0042】
左右の第2吐水口上壁36aの間の角度は比較的大きく形成されているので、第2吐水口部36から吐水される洗浄水は、ボウル面8の左右上方から中央下方まで広範囲に吐水される。また、第2吐水口部36から吐水される洗浄水は、スプレッダ28の左右斜め上方側の左右領域並びに、ボウル面8の中央領域より広範囲の左右領域まで広範囲にわたって洗浄することができる。このとき、第2吐水口部36から吐水される洗浄水は、上端8dから下方に向けて後方に向かって傾斜して形成されているボウル面8の正面部8aに沿って流下され、左右方向の斜め上方へ向かう洗浄水の勢いが弱められ、さらに、洗浄水の左右方向の広がりが抑制されることができ、洗浄水がボウル面8の外部へ飛び出すことを防止されている。第2吐水口部36から吐水される洗浄水は、比較的低い瞬間流量の洗浄水であるので、洗浄水がボウル面8の左右両端近傍まで到達して洗浄を行う一方、ボウル面8の左右両端を超えて外部に流出することなく、ボウル面8の左側端部8b及び右側端部8cの両端近傍領域を洗浄しながら流下することができる。
【0043】
このように、スプレッダ28の第2吐水口部36から吐水される洗浄水は、スプレッダ28から放射状方向に、ボウル面8の面上を洗浄できない部分を生じさせないように広く広がるように流れ、ボウル面8を流下しながらボウル面8全体の良好な洗浄を行うことができる。洗浄水は、ボウル面8を流下し排出口10より排出され、この下流の排水トラップ管路(図示せず)を通過し、さらに下流の排水配管(図示せず)に向かって流れる。
スプレッダ28の第2吐水口部36からの所定の瞬間流量の吐水が一定時間継続されると、制御ユニット32は、第2開閉弁26を閉止して、スプレッダ28からの吐水を終了させ、小便洗浄動作を終了させる。
【0044】
次に、本発明の実施形態による小便器1による設備保護洗浄動作の流れを説明する。
制御ユニット32は、小便洗浄動作とは別に、設備保護洗浄動作を行う。
制御ユニット32は、前回の設備保護洗浄が行われてから一定の経過時間が経過していること(例えば、前回の設備保護洗浄が行われてから2時間の経過時間が経過していること)の他、小便器1の使用回数が一定期間に一定回数に達していること等の使用条件を満たす場合に、設備保護洗浄動作を開始する。
【0045】
制御ユニット32は、設備保護洗浄動作において、第1開閉弁22に制御信号を送って第1開閉弁22を開き、主給水管14から供給される洗浄水を第1給水管16から第1供給通路38に供給させる。このとき、第1供給通路38に供給される洗浄水の瞬間流量は、第1流量調整装置20により上述の比較的高い瞬間流量の範囲に調整される。
図1及び
図11に示すように、第1吐水口部34から吐水される洗浄水の流れを矢印Bによって示す。左右の第1吐水口上壁34aの間の角度は比較的小さく形成されているので、第1吐水口部34から吐水される洗浄水は、ボウル面8の中央付近の比較的狭い範囲に吐水される。従って、第1吐水口部34から吐水される洗浄水は、比較的高い瞬間流量の洗浄水であるにもかかわらず、洗浄水がボウル面8の左側端部8b及び右側端部8cの両端を超えて外部に流出することなく、ボウル面8の中央周辺の領域を洗浄しながら流下することができる。このように、第1吐水口部34から吐水される比較的高い瞬間流量の洗浄水が、排出口10に流入する。比較的高い瞬間流量の洗浄水が、排出口10の下流の排水トラップ管路(図示せず)を通過し、さらに下流の排水配管(図示せず)に向かって流れるので、水かさが上昇した洗浄水が、排水トラップ管路及び排水配管を洗浄しながら流れ、これら配管内の尿の排出及び陰毛等の異物を除去し、さらに尿石や異物を洗い流せ、バクテリアの増殖を抑制し、尿石の付着(発生)を抑制することができる。
【0046】
次に、上述した本発明の実施形態による小便器の作用効果を説明する。
上述した本実施形態による小便器1によれば、ボウル面8は、スプレッダ28が設けられている上方領域において、使用者に対向する正面部8aのみから形成され、この正面部8aは左右方向に連続した凹曲面で形成され、従来のボウル面の側面部が設けられていないので、従来に比べて使用者がボウル面8に近い位置まで近づきやすくすることができる。従って、使用者の尿が床に垂れて床を汚す汚垂れを生じさせにくくなり、使用者が不快な思いをすることを防ぐことができる。
また、ボウル面8が、スプレッダ28が設けられている上方領域において、使用者に対向する正面部8aのみから形成され、この正面部8aは左右方向に連続した凹曲面で形成され、吐水により洗えない部分を生じていた従来のボウル面の側面部が設けられていないので、ボウル面8の清掃性を向上させることができる。
また、左右方向に連続した凹曲面を有する正面部8aにより、スプレッダ28からボウル面8の左右方向に広がるように吐水される洗浄水が、ボウル面8の外部へ飛び出すことを防止することができる。
【0047】
また、本実施形態による小便器1においては、左右方向の斜め上方まで広がるように吐水された洗浄水が、下方に向けて後方に向かって傾斜するボウル面8の正面部8aに沿って流下するので、左右方向の斜め上方へ向かう洗浄水の勢いを弱めて、洗浄水の左右方向の広がりを抑制することができ、洗浄水がボウル面8の外部へ飛び出すことを防止することができる。したがって、ボウル面8を広範囲にわたって洗浄することができると共に、洗浄水の飛び出しを防止できる。
【0048】
また、本実施形態による小便器1においては、正面部8aは、ボウル面8の上端8dから下方に向けて徐々に後退して形成されると共に、連続的に曲率半径が小さくなるように形成されているので、下方に向かうにつれて徐々にボウル面の左右方向の幅が小さくなり、従来に比べて使用者がボウル面8に近い位置に近づきやすくなり、使用者の尿が床に垂れて床を汚す汚垂れを生じさせにくくなり、使用者が不快な思いをすることを防ぐことができる。
また、正面部8aは、ボウル面8の上端8dから下方に向けて徐々に後退して形成されると共に、連続的に曲率半径が小さくなるように形成されているので、使用者の局部を、周囲の他人からより見えにくくすることができる。
【0049】
また、本実施形態による小便器1においては、使用者の尿が当たりやすいボウル面8の下方において、ボウル面8の外部への尿跳ねをより確実に防止することができる。
また、ボウル面8の左右両端部8b、8cが前方に突出するように形成されているので、使用者の局部を、周囲の他人から見えにくく遮蔽することができる。
【0050】
また、本実施形態による小便器1においては、ボウル面8は、ボウル面8の上端8dから少なくとも200mmの範囲において、正面部8aのみから形成されるので、特に使用者の局部を把持する手や腕が、従来のようにボウル面の側面部に接触することがないため、従来に比べて使用者がボウル面8の正面部8aに近い位置に近づきやすくなっている。
【0051】
また、本実施形態による小便器1においては、ボウル面8の上方領域の正面部8aは、水平断面において、左右両端8b、8c近傍の接線の前方側が外側に開くように形成されているので、使用者が、自身の体の前側をボウル面8の左右両端8b、8cに接触することなく、ボウル面8の正面部8aに近づけやすくなっている。