(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バイオインピーダンス測定値の時系列を生じさせるため、前記第2の形式の複数のバイオインピーダンス測定値を別々の時点で得るステップと、前記時系列の現在のバイオインピーダンス測定が前記時系列の先のバイオインピーダンス測定値から著しく逸脱しているかどうかを判定するため、前記時系列の時間分析を実施するステップと、第1の形式のバイオインピーダンス測定値の新たな測定を実施すべきかどうかの指標又は警告メッセージを生じさせるステップとを含む、請求項1記載の方法。
前記較正データを導く前記ステップは、前記第1の形式のバイオインピーダンス測定結果と前記第2の形式のバイオインピーダンス測定結果を相関させるバイオインピーダンス基準データを用いるステップを含む、請求項1又は2記載の方法。
前記基準データを導き出すステップを含み、前記第1の形式のバイオインピーダンス測定は、第1の形式の電極形態を含み、前記第2の形式のバイオインピーダンス測定は、第2の形式の電極形態を含み、前記基準データを導き出す前記ステップは、前記第1の形式の電極形態を用いた測定を考慮する第1のフォーマットと第2の形式の電極形態を用いた測定を考慮する第2のフォーマットとの間に変換係数を適用するステップ(58)を含む、請求項3記載の方法。
【背景技術】
【0002】
腎臓は、人体の健常な状態を維持するために種々の機能を果たしている。腎臓は、一観点として、患者の血液量から過剰の流体(液体)を分離することによって流体バランスを制御する。第2に、腎臓は、廃棄物、例えば尿又はクレアチニンから血液を浄化するのに役立つ。さらに、腎臓は又、血液中の或る特定の物質、例えば電解質のレベルを制御して健常な且つ必要な濃縮レベルを保証する。
【0003】
腎不全の場合、過剰流体は、身体組織中に貯留し、循環系/血管系に対して増大するストレスを及ぼす。この過剰流体は、限外濾過を用いて患者から抜き出されなければならない。抜き出される流体の量が不十分である場合、長期間にわたる結果は、重篤な場合があり、それにより血圧の増大及び心不全が生じる場合がある。心不全の恐れは、透析患者について増大し、過剰流体は、この重要な要因であるとみて良い。また、過剰量の流体を除去することは、透析患者が脱水状態になり、その結果、低血圧になるので危険である。
【0004】
ドライウェイト(説明を簡単にするために、体重という用語と重量という用語は、医療実務に対応して、この用途では同義的に用いられるものとする)は、腎臓が正常に機能していたとすれば、到達する患者の体重を規定する。換言すると、ドライウェイトは、心臓血管のリスクを最小限に抑えるために到達すべき最適標的体重又は流体状態を表している。ドライウェイトは、診察における問題に取り組む上で常に困難であった。と言うのは、算定のための定量的手順が役に立たなかったからである。現在、ドライウェイトは、間接的指標、例えば血圧、心エコー図検査法及び主観的情報、例えばX線画像化を用いて取り上げられる場合が多い。加うるに、ドライウェイト基準として一般に受け入れられる1組の条件を構成することは困難であった。患者の流体状態を評価する上で期待の持てるやり方は、バイオインピーダンス測定を含む。患者に取り付けられる2つ又は3つ以上の電極を用いて小交番電流を患者に流し、そして電位の対応の差を測定する。種々の流体コンパートメントは、測定される信号に異なった仕方で寄与する。複数の周波数の使用により、細胞内量(ICV)及び細胞外量(ECV)を求めることができる。この目的のため、バイオインピーダンス測定データを分析する代表的なモデルは、サブモデルのチェーンを含む。第1ステップでは、例えば5kHz〜1MHzのスペクトルを及ぼし、複素インピーダンス
【数1】
をスペクトルについて記録し、その結果、複素インピーダンス平面内に半円状の曲線が得られる。次のステップ又はサブモデルとして、等価回路、例えば細胞外電流経路をモデル化した抵抗R
E並びに一緒になって細胞内電流経路をモデル化した抵抗R
I及びキャパシタを含む等価回路を用いて半円形インピーダンススペクトルをモデル化する。また、2つ以上の抵抗/キャパシタ組み合わせを有するより複雑な等価回路が提案されている。患者の水分過剰を算定するためのサブモデルの適当なチェーンが「モデルバジェアテス・インペダンツメッセンデス・アシステンツジステム・バイ・デア・ディアグノーゼ・ウント・テラピー・フォン・マンゲルエァネーェアウンク(Modellbasiertes impedanzmessendes Assistenzsystem bei der Diagnose und Therapie von Mangelernaehrung)」,ファウデーイー・ファーラーク(VDI Verlag),2009年,ISBN978‐3‐18‐327517‐5に記載されている。
【0005】
求めた電気抵抗R
E,R
I並びに身長h、体重m及び体型指数BMIのような擬人化パラメータに基づいて以下の公式を用いて細胞外量(ECV)及び細胞内量(ICV)を導き出すことができる。
【数2】
【数3】
求めた細胞内量(ICV)及び細胞外量(ECV)に基づいて、過剰流体の量又は脱水状態の観点で水和状態を算定することが可能である。かかる装置又は器具の一例が国際公開第2006/002685号パンフレットに記載されている。また、この器具により、患者の他の量コンパートメント、特に脂肪のない組織及び脂肪に富んだ組織のフラクションに関して身体成分を算定することが可能である。かくして、患者の栄養状態を判断することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、第1のインピーダンス測定と第2のインピーダンス測定の組み合わせ又は換言すると第2のバイオインピーダンス測定を較正するために用いられる第1のバイオインピーダンス測定から身体成分パラメータ又は水分過剰パラメータを算定するシステムを示している。
【0015】
図1のシステムは、第1のバイオインピーダンス測定データを得るために患者の第1のバイオインピーダンス測定を実施する第1のバイオインピーダンス測定ユニット101を含む。この目的のため、第1のバイオインピーダンス測定ユニット101は、第1及び第2の対をなす電極を有するのが良く又はこれら電極に取り付けられるのが良く、第1の対をなす電極は、電流源108に接続され、第1の電流電極104と第2の電流電極105との間に或る特定の電流を流し又はあらかじめ定める。第1の電流電極104及び第2の電流電極105は、これら電極を所定の領域のところで、例えば手首及び足首のところで患者の身体に取り付けることができるよう具体化されるのが良い。電流電極相互間の電流を所定の周波数スペクトルでスイープしたときに電圧の変化を記録するために電流電極に近接して第1の電流電極104と第2の電流電極105との間の電流経路上に第1の電圧電極106及び第2の電圧電極109が配置されるのが良い。電流電極と電圧電極のこの別々の形態は、4電極形態と呼ばれる場合がある。所定の周波数スペクトルは、例えば5kHz〜1MHzの周波数スペクトル又は任意他の適当な周波数スペクトルであるのが良い。第1の電流電極104と第2の電流電極105との間の駆動又は所定の電流と第1の電圧電極106と第2の電圧電極109との間で測定される結果としての電圧との関係を評価することによって、複素インピーダンススペクトルを算定して当該技術分野において知られている第1のバイオインピーダンス測定ユニット101内に記録するのが良い。記録された複素インピーダンススペクトルは、第1のバイオインピーダンス測定データであるのが良く又はこれに含まれるのが良い。変形例として、複素インピーダンススペクトルを評価して複素インピーダンススペクトルから導き出されたデータを得ても良く、例えば、水分過剰パラメータ又は身体成分パラメータを背景技術と関連して説明した複素インピーダンススペクトルから導き出すことができる。水分過剰パラメータ又は身体成分パラメータを導き出すため、患者からの別の入力データ、例えば身長、体重、性別、切断術(amputation)の実施の有無又は同時罹患率の存否等を用いるのが良い。本発明との関連において、バイオインピーダンス測定データとしては、即時測定結果、例えばバイオインピーダンス電極相互間の記録電圧又は記録された複素バイオインピーダンススペクトル並びに即時測定結果から導き出されたデータ、例えば記録複素バイオインピーダンススペクトルから導き出された水分過剰パラメータ又は身体成分パラメータが挙げられる。
【0016】
バイオインピーダンス測定データを得るデータ提供ユニット110が第1のバイオインピーダンス測定ユニット101から第1のバイオインピーダンス測定データを受け取り、そしてこの第1のバイオインピーダンス測定データを更に処理ユニット111に伝送するようになっている。処理ユニット111は、第1のバイオインピーダンス測定データからバイオインピーダンス較正データを導き出すようになっており、このバイオインピーダンス較正データは、患者の第2のバイオインピーダンス測定から得られた又は得られるべき第2のバイオインピーダンス測定データを較正するのに適しており、第2のバイオインピーダンス測定は、第2の形式のバイオインピーダンス測定である。第2のバイオインピーダンス測定は、バイオインピーダンス分光検査法を用いて実施されても良く、或いは、第2のバイオインピーダンス測定は、制限された数(代表的には、3つ又は4つ)の周波数を用いた又は単一周波数だけを用いたバイオインピーダンス測定を用いて実施されても良い。第2のバイオインピーダンス測定は、第2のバイオインピーダンス測定ユニット120を用いて実施されても良く、この第2のバイオインピーダンス測定ユニット120は、互いに異なる領域のところで人体に接触する1対の電極124,123に接続され、これら互いに異なる領域間でバイオインピーダンスが測定される。一例では、電極124,123は、それぞれ右手及び左手に接続可能であり、別の例では、電極124,123は、右足及び左足にそれぞれ接続可能である。バイオインピーダンス測定のために1対の電極を利用するこの形態は、2電極形態と呼ばれる。変形例として、電流をあらかじめ定めるための電極と電圧を測定する電極を分離する4電極形態を利用しても良い。
【0017】
第2のインピーダンス測定は、有利には、第1のバイオインピーダンス測定とは異なる少なくとも1つの特性を備えたバイオインピーダンス測定であり、例えば、第1のバイオインピーダンス測定は、バイオインピーダンス分光法を用いたバイオインピーダンス測定であり、第2のバイオインピーダンス測定は、複素インピーダンスを算定するために制限された数の又はたった1つの周波数を用いたバイオインピーダンス測定である。
【0018】
データ獲得ユニット121が第2のバイオインピーダンス測定データを受け取り、そしてこれを較正ユニット122にわたすよう動作でき、較正ユニット122は、バイオインピーダンス較正データを用いて第2のバイオインピーダンス測定データを較正するのに適している。
【0019】
バイオインピーダンス較正データは、第2のバイオインピーダンス測定データを較正するよう機能し、その結果、水分過剰パラメータ又は身体成分パラメータを第2のバイオインピーダンス測定データから導き出すことができ、この第2のバイオインピーダンス測定データは、バイオインピーダンス較正データと組み合わせられ又は換言するとこのバイオインピーダンス較正データを用いて較正される。これにより、第2のバイオインピーダンス測定データの重要性を高めることができ、例えば、第2のバイオインピーダンス測定データは、第2のバイオインピーダンス測定データだけを評価することによっては身体成分パラメータ又は水分過剰パラメータを導き出すのに足るほど重要ではない場合があっても、第2のバイオインピーダンス測定データは、身体成分パラメータ又は水分過剰パラメータをバイオインピーダンス較正データと組み合わせて採用される第2のバイオインピーダンス測定データから導き出すのに充分なだけ重要である場合がある。
【0020】
水分過剰パラメータ又は身体成分パラメータを得るためにバイオインピーダンス測定データをどのように較正すれば良いかについて
図2を参照して説明する。
【0021】
図2の方法は、バイオインピーダンス測定の第1の形式に属する複数のバイオインピーダンス基準測定を実施するステップ201及び第2の形式に属する複数の第2のバイオインピーダンス基準測定を実施するステップ202を含む。複数の第1の形式のバイオインピーダンス基準測定を複数の第2の形式のバイオインピーダンス基準測定と相関させて相関ステップ203においてバイオインピーダンス基準データを得る。
図2の説明との関連で、バイオインピーダンス測定の第1の形式及びバイオインピーダンス測定の第2の形式は、これらの用語が
図1の説明に一致して導入されたのと同じ意味に理解される。
【0022】
バイオインピーダンス基準データを生成するのに必要な第1形式のバイオインピーダンス測定及び第2形式のバイオインピーダンス測定は、基準母集団、例えば透析患者の母集団について実施されるのが良い。これは、基準母集団に属する個人の各々が第1形式のバイオインピーダンス測定を用いて測定され、それと同時に、例えば透析セッションを患者について実施する度に第2形式のバイオインピーダンス測定も又用いて測定する仕方で実施されるのが良い。
【0023】
相関ステップは、第1形式のバイオインピーダンス測定が第1のバイオインピーダンス基準測定から身体成分パラメータ又は水分過剰パラメータを算定するのに足るほど重要であると言える仕方で実施されるのが良い。例えば、第1形式のバイオインピーダンス測定は、バイオインピーダンス分光法であるのが良く、関連技術と関連して上述したモデルは、水分過剰パラメータ又は身体成分パラメータを算定するために使用できる。第1形式のバイオインピーダンス測定を或る特定の患者について算定する度に水分過剰パラメータ又は身体成分パラメータを導き出すことができる。第1形式のバイオインピーダンス測定データは、例えば、第1の周波数と第2の周波数との間、例えば5kHzと1MHzとの間で取られた複素インピーダンススペクトルであるのが良い。
【0024】
第1形式のバイオインピーダンス測定を実施するのと同時に第2のバイオインピーダンス測定を実施するのが良い。第2のバイオインピーダンス測定データは、少なくとも絶対量ではなく且つ較正データを更に用いないで取られた場合ではなく、第2形式のバイオインピーダンス測定だけから水分過剰パラメータ又は身体成分パラメータを算定するのに足るほど重要ではない場合がある。第2形式のバイオインピーダンス測定データは、単一周波数バイオインピーダンス測定からのデータ、例えば或る特定の周波数についての複素インピーダンスであるのが良い。
【0025】
次に、相関ステップ203において、第1形式のバイオインピーダンス測定データを第2形式のバイオインピーダンス測定データと相関させてバイオインピーダンス基準データ、例えば、早期の第1形式のバイオインピーダンス基準測定と組み合わせた現在の第2形式のバイオインピーダンス測定に依存する水分過剰パラメータ又は身体成分パラメータを説明する関数を得る。
【0026】
次に、ステップ204において早期に実施された第1形式のバイオインピーダンス基準測定からのデータを組み合わせステップ205でバイオインピーダンス基準データと組み合わせてバイオインピーダンス較正データを得るのが良く、バイオインピーダンス較正は、第2形式のバイオインピーダンス測定に依存した水分過剰パラメータを説明する関数のフォーマットを有するのが良い。
【0027】
例えば、第2のバイオインピーダンス測定は、或る特定の高い周波数、例えば50kHzで実施される単一周波数バイオインピーダンス測定であるのが良く、第2のバイオインピーダンス測定を用いて得られたデータは、その或る特定の周波数で取られた複素インピーダンス、例えば、50kHzで取られた複素インピーダンスであるのが良く、これは、Z
50kHzと呼ばれる場合がある。この場合、較正データは、その単一の高い周波数、例えば50kHzで取られた複素インピーダンスに依存した水分過剰又は他の身体成分パラメータ及び更に擬人化尺度の関数を有するのが良い。擬人化尺度は、身長又は体重、有利には、組み合わせて採用される身長と体重であるのが良い。かくして、較正データは、患者の身長及び体重と組み合わせて採用される50kHzで取られた複素インピーダンスZ
50kHzに依存する水分過剰パラメータの関数を有するのが良い。
【0028】
較正データの適当なフォーマットに関する別のシナリオは、第1形式のバイオインピーダンス測定中、インピーダンスの複素スペクトルを求めると共にこれに加えて複素インピーダンスを単一周波数で求めることであると言える。複素スペクトル及び何らかの擬人化尺度から当該技術分野において知られているように水分過剰又は別の身体成分パラメータを導き出すことができる。較正データは、水分過剰又は身体成分パラメータと単一周波数複素インピーダンスの組み合わせで構成されるのが良い。
【0029】
先の単一周波数測定と同一の単一周波数でその後に取られた第2のバイオインピーダンス測定を次に用いて先の単一周波数測定に対するインピーダンスの差を導き出すことができ、そして次に、インピーダンスの差を用いて水分過剰又は身体成分パラメータを修正することができる。
【0030】
較正データの別のフォーマットは、水分過剰又は身体成分パラメータのフォーマットであり、これは、第2形式のバイオインピーダンス測定に従って修正でき、この第2形式のバイオインピーダンス測定は、或る特定の周波数、例えば50kHzで測定された複素インピーダンスであるのが良い。この例において実際の身体成分パラメータを算定するため、現在の複素インピーダンスの絶対値と先に算定された基準複素インピーダンスの絶対値の比が実際の身体成分パラメータと先に算定された身体成分パラメータの比に一致するものと考えられ、即ち、
【数4】
であり、この式において、
OHrefは、基準測定を用いて先に算定された水分過剰パラメータであり、
OHactは、実際のバイオインピーダンス測定で算定された水分過剰パラメータであり、Z
50refは、基準測定において先に算定された複素インピーダンスであり、Z
50actは、実際のバイオインピーダンス測定で算定された複素インピーダンスである。
【0031】
先に算定された水分過剰又は身体成分パラメータと単一周波数で測定された複素インピーダンスの先に算定された絶対値の比、即ち、
【数5】
を次にバイオインピーダンス較正データとみなし、実際の水分又は身体成分は、次の公式、即ち、
【数6】
を用い、実際のバイオインピーダンス測定を用いて算定できる。
【0032】
複素インピーダンスの絶対値の代替手段として、複素インピーダンスの実数部又は虚数部を考慮することができる。
【0033】
第1形式のバイオインピーダンス基準測定は、例えば特定の患者が透析セッションを実施するために診療所を訪れる度に又は患者が透析セッションを実施するためにn回目ごとに診療所を訪れる度に、特定の患者について取られる第1形式のバイオインピーダンス基準測定であるのが良い。
【0034】
次に、測定ステップ206において第2形式のバイオインピーダンス測定を実施するのが良く、次に、測定ステップ206で得られた第2形式の測定データをステップ205で得られたバイオインピーダンス較正データと組み合わせてステップ207において水分過剰パラメータ又は身体成分パラメータを得るのが良い。
【0035】
使用上のシナリオは、特定の患者について、第2形式のバイオインピーダンス測定を透析セッションごとに、例えば透析患者が透析セッションのために診療所を訪れる度に実施するのが良く、そして基準データを生成するための第1形式のバイオインピーダンス測定を透析患者が透析診療所を訪れるn回目ごとに実施するのが良く、nは、整数であり、好ましくは3〜10である。これにより、第1形式の透析測定を実施するより複雑精巧な測定機器を良好に利用することができる。
【0036】
別の使用上のシナリオによれば、患者は、在宅透析、例えば腹膜透析を実施する通院患者であり、第2形式のバイオインピーダンス測定を毎日又は患者が在宅透析治療を受ける度に実施する。それほど頻繁ではないが、患者は、臨床状態の一般的評価を実施するために透析診療所を訪れ、かかる訪問時に第1形式のバイオインピーダンス測定を実施する。
【0037】
これにより、水分過剰又は身体成分パラメータの正確な状態を通院患者について高い周波数で得ることができる。
【0038】
これらの使用上のシナリオの両方に従って、第2形式のバイオインピーダンス測定データが第1形式のバイオインピーダンス測定データよりも頻繁に取られる。
【0039】
使用上のシナリオの両方に関し、患者の状態は、以下の仕方で経時的にモニタでき、即ち、第2形式の複数のバイオインピーダンス測定を互いに異なる時点で経時的に実施し、それによりバイオインピーダンス測定の時系列を生じさせる。第2形式のバイオインピーダンス測定データのこの時系列に関し、時間分析を実施してこの時系列の現在のバイオインピーダンス測定が時系列の以前のバイオインピーダンス測定から著しく逸脱しているかどうかを判定する。もしそうであれば、患者に警告し又は患者に第1形式のバイオインピーダンス測定の新たな測定を実施すべきかどうかを指示するメッセージを生じさせるのが良い。
【0040】
時系列分析を実施するため、測定されたバイオインピーダンスの複素平面を
図10及び
図11と関連して以下に更に説明するように回転軸線を備えた複素平面内に考慮するのが良い。
【0041】
図3は、第1形式のバイオインピーダンス測定を実施するための第1のバイオインピーダンス測定装置31及び第2形式のバイオインピーダンス測定を実施するための第2のバイオインピーダンス測定装置33を示すブロック図である。
【0042】
図3の説明との関連で、第1形式のバイオインピーダンス測定という用語と第2形式のバイオインピーダンス測定という用語は、これらの用語が
図1の説明に従って導入されたのと同じ意味で理解される。
【0043】
図3では「BCMマスタ装置」と呼ばれる第1のバイオインピーダンス測定装置31を透析臨床環境で使用するのが良く、かかる装置は、
図2の説明と関連して上述した第1形式のバイオインピーダンス測定、較正データの生成及び第1形式のバイオインピーダンス測定のその他の処理を実施するのに適していると言える。
【0044】
図3において「BCMスレーブ装置」又は「BCM@home」と呼ばれる第2のバイオインピーダンス測定装置は、通院患者の在宅環境内で使用することができ、かかる装置は、
図2の説明と関連して上述した第2形式のバイオインピーダンス測定、較正データの処理、水分過剰又は身体成分パラメータの算定及び第2形式のバイオインピーダンス測定のその他のデータ処理を実施するのに適していると言える。
【0045】
図2と関連して上述した第1のバイオインピーダンス測定装置31から第2のバイオインピーダンス測定装置33への較正データの伝送及び第1のバイオインピーダンス測定装置と第2のバイオインピーダンス測定装置との間の他のデータ交換を可能にするために第1のバイオインピーダンス測定装置31と第2のバイオインピーダンス測定装置33との間には双方向データ転送32が設けられている。
【0046】
有利には、他のデータ交換の中には、第1のバイオインピーダンス測定装置のところ又は第1のバイオインピーダンス測定装置に接続されたネットワークコンピュータ(図示せず)のところでのバイオインピーダンス基準データの向上を可能にするための第2のバイオインピーダンス測定装置33から第1のバイオインピーダンス測定装置31への現在及び過去のバイオインピーダンス測定データの転送がある。双方向データ転送は、ケーブルによるデータ伝送、USB(ユニバーサル・シリアルバス)カード、例えば患者カードのようなカードを介するワイヤレス伝送として又は第1のバイオインピーダンス測定装置と第2のバイオインピーダンス測定装置が次に同一の第3の装置(例えば、データベース)に接続されて事実上、第1のバイオインピーダンス測定装置31と第2のバイオインピーダンス測定装置33との間でデータが伝送されるような仕方で具体化されるのが良い。
【0047】
第1のバイオインピーダンス測定装置31と第2のバイオインピーダンス測定装置33との間でのデータの伝送を可能にするデータベースの後者の場合、データベースは又、バイオインピーダンス較正データとバイオインピーダンス基準データの両方を得ると共にバイオインピーダンス較正データを第2のバイオインピーダンス測定装置に提供するよう第1のバイオインピーダンス測定データ及び第2のバイオインピーダンス測定データを集めるのが良い。
【0048】
透析臨床環境と在宅環境との間で動く患者について繰り返し実施される方法40の一連の処理ステップが
図4に示されている。
図4との関連で、第1の形式のバイオインピーダンス、第2の形式のバイオインピーダンス測定、バイオインピーダンス較正データ及びバイオインピーダンス基準データは、
図1及び
図2の説明に関して開示したのと同じ意味に理解される。
【0049】
方法40は、透析臨床環境内での患者の第1形式のバイオインピーダンス測定又はバイオインピーダンス基準測定を実施して第1形式のバイオインピーダンス測定データを得ると共に第1形式のバイオインピーダンス測定又はバイオインピーダンス基準測定から流体状態又は他の身体成分パラメータを導き出す測定ステップ41で始まる。
【0050】
次のデータ伝送ステップ42では、第1形式のバイオインピーダンス測定データかバイオインピーダンス較正データを含む第1形式のバイオインピーダンス測定データから導き出されたデータかのいずれかを透析臨床環境から在宅環境に転送する。データの転送は、患者が処理する患者カードのような物理的記憶要素によっても良く、或いは、データ転送は、データネットワーク接続手段を介する透析臨床環境におけるバイオインピーダンス測定装置又は他の装置と在宅環境におけるバイオインピーダンス測定装置又は他の装置との間の転送であっても良い。
【0051】
在宅環境では、処理ステップ43を実施し、この処理ステップでは、第2形式のバイオインピーダンス測定を実施して第2形式のバイオインピーダンス測定データを得る。在宅環境では、バイオインピーダンス較正データと第2形式のバイオインピーダンス測定データを互いに組み合わせて患者の水分過剰又は他の身体成分パラメータを導き出し又はアップデートするのが良い。
【0052】
次に、転送ステップ44において、第2形式のバイオインピーダンス測定データを在宅環境から透析臨床環境へ転送し、ここで、これを処理してバイオインピーダンス基準データを向上させる。
【0053】
バイオインピーダンス測定装置の考えられる形態が
図5に示されている。
図5との関連で、第1の形式のバイオインピーダンス測定、第2の形式のバイオインピーダンス測定、バイオインピーダンス較正データ及びバイオインピーダンス基準データは、
図1及び
図2の説明に関して開示したのと同じ意味に理解される。
【0054】
バイオインピーダンス測定装置50は、第1のバイオインピーダンス測定ユニット55及び第2のバイオインピーダンス測定ユニット56を有する。第1のバイオインピーダンス測定ユニット55及び第2のバイオインピーダンス測定ユニット56は、バイオインピーダンス測定を実施するために患者に取り付け可能なバイオインピーダンス電極に接続されている。第1のバイオインピーダンス測定ユニット55と第2のバイオインピーダンス測定ユニット56の両方は、接続状態の電極相互間の所定の高い周波数での所定の電流を生じさせる源及びバイオインピーダンス電極相互間の複素インピーダンスを求めるために結果としての電圧差を測定する電圧測定ユニット(図示せず)を含み又はこれらに接続されている。別個の手段として図示されているが、第1のバイオインピーダンス測定ユニット55及び第2のバイオインピーダンス測定ユニット56は、共通のハードウェア、即ち共通の電流源及び共通の電圧測定ユニットを利用するのが良い。第1のバイオインピーダンス測定ユニット55と第2のバイオインピーダンス測定ユニット56の両方は、2電極形態又は4電極形態を利用するのが良い。
【0055】
所定の周波数は、選択可能であるのが良く、適当な例示の値は、50kHz又は100kHzであるのが良い。かくして、第1のインターフェース55及び第2のインターフェース56は、或る特定の高い周波数について実数値、虚数値又は複素インピーダンス値、例えばR
50kHz、R
100kHz、X
50kHz、X
100kHz、Z
50kHz又はZ
100kHzを含む単一周波数バイオインピーダンス測定データ57又は501を生じさせ、変形例として、バイオインピーダンス測定データは、例えば細胞外抵抗R
E及び細胞内抵抗R
Iのようなバイオインピーダンスを解釈するために用いられるモデルの複素インピーダンスであっても良い。
【0056】
一実施形態では、変換ユニット58内で第1形式の電極セットアップ及び第2形式の電極セットアップを考慮する変換係数を用いてバイオインピーダンス測定データを第1のフォーマットと第2のフォーマットの間で変換する。これは、バイオインピーダンス測定データを他のバイオインピーダンス測定データと組み合わせることができ又はかかるデータと比較できる場合に適当であると言える。
【0057】
例えば、バイオインピーダンス測定装置50を用いて実施されるバイオインピーダンス測定は、
図1及び
図2と関連して開示された手段に従って第2形式のバイオインピーダンス測定を実施することができ、第2形式のバイオインピーダンス測定からのバイオインピーダンス測定データと第1形式のバイオインピーダンス測定からのバイオインピーダンス測定データを比較し又は組み合わせることが望ましい。
【0058】
したがって、第1形式のバイオインピーダンス測定は、第1形式の電極形態を伴うのが良く、第2形式のバイオインピーダンス測定は、第2形式の電極形態を伴う場合がある。例えば、代表的には、複数の周波数で実施されるバイオインピーダンス測定は、電極の手‐足形態を伴い、単一周波数で実施されるバイオインピーダンス測定は、電極の手‐手又は足‐足形態を伴う。
【0059】
第1及び第2の電極形態を用いて得られるバイオインピーダンス測定データを比較可能に又は組み合わせ可能にするため、変換ユニット58が設けられており、この変換ユニットにより、第1形式の電極形態を用いて得られたバイオインピーダンス測定データのフォーマットと第2形式の電極形態を用いて得られたバイオインピーダンス測定データのフォーマットの変換が可能である。
【0060】
変換は、例えば、足‐足又は手‐手形態を用いた測定を考慮するフォーマットから手‐足形態を用いた測定を考慮するフォーマットへの変換であるのが良い。
【0061】
このようにして得られたバイオインピーダンス測定データは、或る特定の高い周波数に関するインピーダンス値の実数部R及び虚数部X、例えばR
50kHz、R
100kHz、X
50kHz又はX
100kHzのフォーマットを有するのが良く、変形例として、例えば細胞外抵抗R
E及び細胞内抵抗R
Iのようなバイオインピーダンスを解釈するために用いられるモデルの複素インピーダンスのフォーマットを有しても良い。
【0062】
このようにして得られたバイオインピーダンスデータ59は、バイオインピーダンス測定データ59及びバイオインピーダンス較正データ51に基づいて水分過剰又は他の身体成分パラメータを計算するための処理ユニット52に提供される。
【0063】
この目的のため、処理ユニット52は、データ源60に接続された双方向インターフェース65を介してバイオインピーダンス較正データ51を受け取るよう構成されている。データ源60は、
図1及び
図2と関連して上述した第1形式のバイオインピーダンス測定からのバイオインピーダンス測定データを用いて得られた較正データを含む。
【0064】
処理ユニット52で得られた処理結果は、記憶ユニット53内に記憶され、そして、双方向インターフェース65を経てデータ源60にフィードバックされ、ここで、処理結果は、バイオインピーダンス基準データの向上を支援する。
【0065】
処理結果の表示は、ディスプレイ制御ユニット54によって制御され、ディスプレイ502上に表示されるのがよい。
【0066】
処理結果の時系列分析は、処理ユニット52で実施されるのが良く、それにより得られた処理結果を分析して現在のバイオインピーダンス測定又は導き出された水分過剰若しくは身体成分パラメータが以前のバイオインピーダンス測定又は導き出された水分過剰若しくは身体成分パラメータから著しく逸脱しているかどうかを判定する。著しい逸脱が存在する場合、これは、ディスプレイ制御ユニット54に指示されてディスプレイ502上に表示されるのが良い。
【0067】
図6は、手‐足形態を考慮したバイオインピーダンス測定のフォーマットと手‐手形態を考慮したフォーマットとの間の変換のための複素インピーダンスの振幅相互間の関係を示している。各ドットは、手‐手形態を用いて得られたバイオインピーダンス振幅値及び手‐足形態を用いて得られたバイオインピーダンス振幅値を含む特定の測定値を表している。両方の測定値は、同一の高い周波数で取られており、これは、この実施例では、50kHzである。
【0068】
横軸又はx軸は、手‐足形態に対応し、縦軸又はy軸は、手‐手形態に対応している。直線当て嵌めが右上側の公式によって表されている。R
2に関する値は、直線当て嵌めの算定係数を表している。
【0069】
図7は、上述の
図6の振幅関係と同様、手‐足電極形態と足‐足電極形態との間の変換に関する振幅関係を表している。
【0070】
図8は、手‐足形態を考慮したバイオインピーダンス測定のフォーマットと手‐手形態を考慮したフォーマットとの間の変換に関する複素インピーダンスの位相相互間の関係を示している。各ドットは、手‐手形態を用いて得られたバイオインピーダンス位相値及び手‐足形態を用いて得られたバイオインピーダンス振幅値を含む特定の測定値を表している。両方の測定値は、同一の高い周波数で取られており、これは、この実施例では、50kHzである。
【0071】
横軸又はx軸は、手‐足形態に対応し、縦軸又はy軸は、手‐手形態に対応している。二乗適合が公式によって表されている。R
2に関する値は、二乗適合の算定係数を表している。
【0072】
図9は、上述の
図8の位相関係と同様、手‐足電極形態と足‐足電極形態との間の変換に関する位相関係を表している。
【0073】
図10は、特定の患者について連続して並んだ時点における或る特定の単一周波数、例えば50kHzで測定された複素インピーダンスの適時変化を示している。抵抗として記載された複素インピーダンスの実数部は、横軸上に示され、複素インピーダンスの虚数部は、リアクタンスとして記載されて縦軸上に示されている。回転座標系は、傾きの小さな領域と傾きの大きな領域との間の第1の軸線及び流体の少ない領域と流体の多い領域との間の第2の軸線を有する。流体の少ない領域と流体の多い領域との間の軸線上に射影されたインピーダンスの変化は、流体状態の変化によるものであり、脂肪の少ない領域と脂肪の多い領域との間の軸線上に射影されたインピーダンスの変化は、身体成分の変化によるものである。理解できるように、
図10に示された特定の患者は、主として、流体状態の変化を呈している。
【0074】
図11は、連続して並んだ時点での別の患者に関する単一周波数で測定された複素インピーダンスの適時変化を示している。複素インピーダンスの実数部及び虚数部の意味並びにインピーダンスの変化の原因を流体状態又は身体成分であるとする回転座標系の意味は、
図10を参照して説明した意味に一致している。理解できるように、
図11に示された患者は、身体成分の変化を呈している。
【0075】
経時的なインピーダンスの変化について実施される時系列分析は、上述の第1の軸線及び第2の軸線上への射影を考慮するのが良い。かくして、測定されたインピーダンスの著しい変化を指示する警告は、身体成分の変化と流体状態の変化を区別することができる。