(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記目標加速度設定手段は、ギヤ段が高くなるほど、目標加速度を0に設定するアクセル開度を大きくする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、車両を直進状態から旋回へと移行(ターンイン)させるときに、ドライバは、ブレーキ操作を行った後にアクセル操作を行って、車両を定常走行させるようにする。従来の技術では、このようにドライバがブレーキペダルから足を離してアクセルペダルに踏み替えたときに、速やかに車両を定常走行させることが困難であった。具体的には、従来の技術では、車両を定常走行させるために、ドライバがアクセルペダルを修正操作する傾向にあった。したがって、ドライバがブレーキペダルから足を離してアクセルペダルに踏み替えるような状況において、ドライバがアクセル操作を行ったときに車両を容易且つ速やかに定常走行させることができれば良いと考えられる。特に、ドライバが意識せずに行うアクセル操作によって、車両を定常走行させることができれば良いと考えられる。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、アクセル操作に対する加速度の特性を改善して、アクセル操作が行われたときに車両を容易且つ速やかに定常走行させることができるエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、オルガン式のアクセルペダルの操作に基づいてエンジントルクを制御するエンジンの制御装置であって、アクセルペダルの開度であるアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、アクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度に基づいて、車両の目標加速度を設定する目標加速度設定手段と、目標加速度設定手段によって設定された目標加速度が実現されるように、エンジントルクを制御するエンジン制御手段と、を有し、アクセルペダルは、水平面に対する踏面の角度であるペダル角度が、当該アクセルペダルが踏み込まれていない状態において、所定の初期ペダル角度となるように設置され、目標加速度設定手段は、アクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度が、アクセルペダルが踏み込まれたときのペダル角度と初期ペダル角度との差が2度〜4度に対応するアクセル開度の範囲内にある場合に、目標加速度を0に設定
し、
アクセルペダルは、ドライバの足裏によって踏まれる踏面を含むペダル部が、高さ方向においてドライバの着座位置に近い位置に設けられ、ペダル角度が、ドライバが足の自重をペダル部にほとんど付与することなく、足首の動きによってペダル部を踏み込むような角度に設定されており、2度〜4度に対応するアクセル開度の範囲では、この範囲を下回るアクセル開度の範囲よりも、ドライバがアクセルペダルの操作のために足首を動かすのに使用する筋肉の負担が小さくなり、また、2度〜4度に対応するアクセル開度の範囲では、この範囲を上回るアクセル開度の範囲よりも、ドライバがアクセルペダルの操作のために足首を動かすのに使用する筋肉の負担が小さくなるように構成されている、ことを特徴とする。
このように構成された本発明では、アクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度が、アクセルペダルが踏み込まれたときのペダル角度と初期ペダル角度との差が2度〜4度に対応するアクセル開度の範囲内にある場合に、目標加速度を0に設定する。このアクセル開度の範囲は、アクセル操作するときの足の筋負担が最小になるような足首角度の範囲に相当するものである。したがって、本発明によれば、そのようなアクセル開度の範囲内において目標加速度を0に設定するので、例えばドライバがターンインに向けてブレーキペダルから足を離してアクセルペダルに踏み替えるような状況において、ドライバが特に意識せずに自然に足をアクセルペダルに乗せるだけで、車両を容易且つ速やかに定常走行させることができる。
なお、アクセルペダルが当該アクセルペダルを操作する足の自重による影響を受けないように、ドライバの着座位置(ヒップポイント)とアクセルペダルの設置位置との関係に応じて初期ペダル角度を設定したり、足の自重に釣り合うような反力(ペダル反力)を付与するようにアクセルペダルを構成したりするのがよい。
【0007】
本発明において、好ましくは、アクセルペダルの初期ペダル角度は、75度であり、目標加速度設定手段は、アクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度が、71度〜73度のペダル角度に対応するアクセル開度の範囲内にある場合に、目標加速度を0に設定する。
このように構成された本発明においては、足の自重をアクセルペダルにほとんど付与することなく、足の筋肉を用いた足首の動きによってアクセルペダルを踏み込むように、アクセルペダルが設置された車両(例えばスポーツカーなど)に関して、アクセル操作するときの足の筋負担が最小になる足首角度の範囲に対応するペダル角度の範囲(一義的にアクセル開度の範囲に対応する)において目標加速度を0に設定するので、ドライバが意識せずに行うアクセル操作によって、車両を容易且つ速やかに定常走行させることができる。
【0008】
別の観点では、上記の目的を達成するために、本発明は、オルガン式のアクセルペダルの操作に基づいてエンジントルクを制御するエンジンの制御装置であって、アクセルペダルの開度であるアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、アクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度に基づいて、車両の目標加速度を設定する目標加速度設定手段と、目標加速度設定手段によって設定された目標加速度が実現されるように、エンジントルクを制御するエンジン制御手段と、を有し、目標加速度設定手段は、アクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度が13%〜27%の範囲内にある場合に、目標加速度を0に設定
し、
アクセルペダルは、ドライバの足裏によって踏まれる踏面を含むペダル部が、高さ方向においてドライバの着座位置に近い位置に設けられ、ペダル角度が、ドライバが足の自重をペダル部にほとんど付与することなく、足首の動きによってペダル部を踏み込むような角度に設定されており、アクセル開度が13%〜27%の範囲内にある場合には、この範囲を下回る範囲にある場合よりも、ドライバがアクセルペダルの操作のために足首を動かすのに使用する筋肉の負担が小さくなり、また、アクセル開度が13%〜27%の範囲内にある場合には、この範囲を上回る範囲にある場合よりも、ドライバがアクセルペダルの操作のために足首を動かすのに使用する筋肉の負担が小さくなるように構成されている、ことを特徴とする。
このように構成された本発明によっても、アクセル操作するときの足の筋負担が最小になる足首角度の範囲に対応するアクセル開度の範囲において、目標加速度を0に設定するので、ドライバが特に意識せずに自然に足をアクセルペダルに乗せるだけで、車両を容易且つ速やかに定常走行させることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、目標加速度設定手段は、車速が高くなるほど、目標加速度を0に設定するアクセル開度を大きくする。
このように構成された本発明においては、車速が高くなるほど、目標加速度を0に設定するアクセル開度を大きくして、アクセルペダルに付与する踏力が大きくなるようにするので、エンジン負荷が高いという情報をアクセル操作を介してドライバに適切に伝えることができる。その結果、ドライバと車両との一体感を向上させることが可能となる。
【0010】
本発明において、好ましくは、目標加速度設定手段は、ギヤ段が高くなるほど、目標加速度を0に設定するアクセル開度を大きくする。
このように構成された本発明においては、ギヤ段が高くなるほど(つまり高速段になるほど)、目標加速度を0に設定するアクセル開度を大きくして、アクセルペダルに付与する踏力が大きくなるようにするので、エンジン負荷が高いという情報をアクセル操作を介してドライバに適切に伝えることができる。その結果、ドライバと車両との一体感を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエンジンの制御装置によれば、アクセル操作に対する加速度の特性を改善して、アクセル操作が行われたときに車両を容易且つ速やかに定常走行させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置について説明する。
【0014】
<システム構成>
まず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態によるエンジンの制御装置が適用されたシステムの構成について説明する。
図1は、本実施形態によるエンジンの制御装置が適用された車両の概略構成を示す平面図であり、
図2は、本実施形態によるエンジンの制御装置が適用されたエンジンシステムの概略構成図である。
【0015】
図1に示すように、車両においては、エンジンシステム100内のエンジン10が、燃料と空気との混合気を燃焼させて、車両の推進力としてのエンジントルク(駆動トルク)を発生し、このエンジントルクを、クランクシャフト16を介して変速機202に伝達する。この変速機202は、複数の段階にギヤ段(例えば1速〜6速)を変化させることが可能な機構であり、エンジン10からのエンジントルクは、変速機202に設定されたギヤ段にて、一対のドライブシャフト204を介して、各ドライブシャフト204の車幅方向外側端部に取り付けられた一対の車輪206に伝達される。例えば、変速機202は、ドライバによって任意にギヤ段が選択される手動変速機(マニュアルトランスミッション)である。
【0016】
また、車両においては、ECU(Electronic Control Unit)50が、車両内における各種の制御を行う。本実施形態では、ECU50は、エンジンの制御装置として機能し、ドライバによるアクセルペダルの操作に応じて、エンジン10から出力させるエンジントルクを制御して、このエンジントルクを車両に付与することで、アクセル操作に対する所望の加速度特性が実現されるようにする。
【0017】
図2に示すように、エンジンシステム100は、主に、外部から導入された吸気(空気)が通過する吸気通路1と、この吸気通路1から供給された吸気と、後述する燃料噴射弁13から供給された燃料との混合気を燃焼させて車両の動力を発生するエンジン10(具体的にはガソリンエンジン)と、このエンジン10内の燃焼により発生した排気ガスを排出する排気通路25と、エンジンシステム100に関する各種の状態を検出するセンサ30〜39と、エンジンシステム100全体を制御するECU50とを有する。
【0018】
吸気通路1には、上流側から順に、外部から導入された吸気を浄化するエアクリーナ3と、通過する吸気の量(吸入空気量)を調整するスロットルバルブ5と、エンジン10に供給する吸気を一時的に蓄えるサージタンク7と、が設けられている。
【0019】
エンジン10は、主に、吸気通路1から供給された吸気を燃焼室11内に導入する吸気バルブ12と、燃焼室11に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁13と、燃焼室11内に供給された吸気と燃料との混合気に点火する点火プラグ14と、燃焼室11内での混合気の燃焼により往復運動するピストン15と、ピストン15の往復運動により回転されるクランクシャフト16と、燃焼室11内での混合気の燃焼により発生した排気ガスを排気通路25へ排出する排気バルブ17と、を有する。
【0020】
また、エンジン10は、吸気バルブ12及び排気バルブ17のそれぞれの動作タイミング(バルブの位相に相当する)を、可変バルブタイミング機構(Variable Valve Timing Mechanism)としての可変吸気バルブ機構18及び可変排気バルブ機構19によって可変に構成されている。可変吸気バルブ機構18及び可変排気バルブ機構19としては、公知の種々の形式を適用可能であるが、例えば電磁式又は油圧式に構成された機構を用いて、吸気バルブ12及び排気バルブ17の動作タイミングを変化させることができる。
【0021】
排気通路25には、主に、例えばNOx触媒や三元触媒や酸化触媒などの、排気ガスの浄化機能を有する排気浄化触媒26a、26bが設けられている。以下では、排気浄化触媒26a、26bを区別しないで用いる場合には、単に「排気浄化触媒26」と表記する。
【0022】
また、エンジンシステム100には、当該エンジンシステム100に関する各種の状態を検出するセンサ30〜39が設けられている。これらセンサ30〜39は、具体的には以下の通りである。アクセル開度センサ30は、アクセルペダル29の開度(ドライバがアクセルペダル29を踏み込んだ量に相当する)であるアクセル開度を検出する。エアフローセンサ31は、吸気通路1を通過する吸気の流量に相当する吸入空気量を検出する。スロットル開度センサ32は、スロットルバルブ5の開度であるスロットル開度を検出する。圧力センサ33は、エンジン10に供給される吸気の圧力に相当するインマニ圧(インテークマニホールドの圧力)を検出する。クランク角センサ34は、クランクシャフト16におけるクランク角を検出する。水温センサ35は、エンジン10を冷却する冷却水の温度である水温を検出する。温度センサ36は、エンジン10の気筒内の温度である筒内温度を検出する。カム角センサ37、38は、それぞれ、吸気バルブ12及び排気バルブ17の閉弁時期を含む動作タイミングを検出する。車速センサ39は、車両の速度(車速)を検出する。これらの各種センサ30〜39は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号S30〜S39をECU50に出力する。
【0023】
ECU50は、上述した各種センサ30〜39から入力された検出信号S30〜S39に基づいて、エンジンシステム100内の構成要素に対する制御を行う。具体的には、ECU50は、スロットルバルブ5に制御信号S5を供給して、スロットルバルブ5の開閉時期やスロットル開度を制御し、燃料噴射弁13に制御信号S13を供給して、燃料噴射量や燃料噴射タイミングを制御し、点火プラグ14に制御信号S14を供給して、点火時期を制御し、可変吸気バルブ機構18及び可変排気バルブ機構19のそれぞれに制御信号S18、S19を供給して、吸気バルブ12及び排気バルブ17の動作タイミングを制御する。
【0024】
次に、
図3を参照して、本実施形態によるアクセルペダル29の構成について説明する。
図3は、本実施形態によるアクセルペダル29の側面図である。
【0025】
図3に示すように、アクセルペダル29は、オルガン式に構成されており、ドライバの足裏によって踏まれる踏面を備えるペダル部29aがベース部29bに回動可能に取り付けられている。このペダル部29aは、その下端がベース部29bに軸支されて立設されており、ドライバの足裏で踏み込まれて無負荷時の初期位置(初期ペダル角度に対応する位置)から車両前方側の終端位置まで所定角度(例えば15°)回動するように構成されている。
【0026】
また、ペダル部29aの下方には、ベース部29bと一体的に形成されたハウジング29cが設けられている。このハウジング29c内には、図示しない復帰ばね(いわゆるリターンスプリング)が設けられていると共に、ハウジング29cの内部構造体とペダル部29aとの間には、複数のリンク29d(具体的には合計3個のリンクを有するが、図ではそのうちの1つのみを示している)が設けられている。このような復帰ばねと複数のリンク29dとの両者により、ペダル反力発生機構29eが構成される。ペダル反力発生機構29eは、ペダル部29aの回動量に比例した反力を発生する機構である。
【0027】
また、ハウジング29cには、上述したアクセル開度センサ30が設けられている。アクセル開度センサ30は、ペダル部29aの回動位置(角度)に応じたアクセル開度に対応する検出信号S30を発生する。
【0028】
なお、アクセルペダル29において、ペダル部29aの下面と対向するハウジング29cの上面部に、ペダル部29aの終端位置に向けた回動に抗するような、ペダル反力発生機構29eよりも大きい所定のピーク反力を発生するキックダウンスイッチ(不図示)を更に設けてもよい。
【0029】
次に、
図4を参照して、本実施形態によるECU50の機能構成について説明する。
図4に示すように、本実施形態によるECU50は、機能的には、アクセル開度検出部50aと、目標加速度設定部50bと、エンジン制御部50cと、を有する。
【0030】
アクセル開度検出部50aは、アクセル開度センサ30が出力した検出信号S30に基づき、アクセル開度(例えば「%」で表される)を取得する。
【0031】
目標加速度設定部50bは、アクセル開度検出部50aが検出したアクセル開度に基づいて、車両の目標加速度を設定する。具体的には、目標加速度設定部50bは、アクセル開度に対して設定すべき目標加速度が事前に規定されたマップ(以下では「加速度特性マップ」と呼ぶ。)を参照して、アクセル開度検出部50aが検出したアクセル開度に対応する目標加速度を設定する。この加速度特性マップは、車速及びギヤ段ごとに、アクセル開度に対して設定すべき目標加速度が規定されたマップである。
【0032】
エンジン制御部50cは、目標加速度設定部50bが設定した目標加速度が実現されるように、エンジントルクを制御する。具体的には、エンジン制御部50cは、実加速度を目標加速度にするために必要な目標トルクを設定し、この目標トルクをエンジン10から出力させるように、スロットルバルブ5の制御、及び/又は、可変吸気バルブ機構18を介した吸気バルブ12の制御に加えて、燃料噴射弁13の制御などを行う。
【0033】
このように、ECU50は、本発明における「エンジンの制御装置」に相当する。
【0034】
<加速度特性>
次に、本実施形態において適用する、ドライバによるアクセル操作に対して設定する加速度特性について説明する。本実施形態においては、ドライバがアクセル操作するときの足の筋負担を考慮して加速度特性を設定する。したがって、まず最初に、
図5乃至
図8を参照して、ドライバがアクセル操作するときの足の筋負担について説明する。
【0035】
図5は、ドライバがアクセル操作するときに用いる足の筋肉について説明するための図を示す。具体的には、
図5は、アクセル操作するドライバの足付近を拡大して示した側面図である。本実施形態を適用する車両(例えばスポーツカー)では、
図5に示すように、ドライバの着座位置(ヒップポイント)が低く設定されている。具体的には、着座位置が高さ方向においてアクセルペダル29のペダル部29aに近い位置となっている。このような着座位置とペダル部29aとの位置関係においては、ドライバは、足の踵を水平面H(車両のフロア)に付けたまま、足の自重をペダル部29aにほとんど付与することなく(足の自重の大部分が踵にかかるため)、大腿直筋、前脛骨筋及びヒラメ筋を用いた足首の動きによってペダル部29aを踏み込むこととなる。これは、スポーツカーなどにおいては、外乱となる足の自重をできるだけ排除した状態で、アクセルペダル29のペダル部29aを操作できるようにしたものである。
【0036】
ここで、
図5に示すように、足の甲部分と足の脛部分とが成す角度(符号α参照)を「足首角度」と定義し、アクセルペダル29におけるペダル部29aの踏面とアクセルペダル29が設置された水平面H(車両のフロア)との成す角度(符号β参照)を「ペダル角度」と定義する。アクセルペダル29は、当該アクセルペダル29のペダル部29aが踏み込まれていない状態においてペダル角度(初期ペダル角度)が75度となるように設置されているものとする。このようなペダル角度は、足の自重をペダル部29aにほとんど付与することなく、大腿直筋、前脛骨筋及びヒラメ筋を用いた足首の動きによってペダル部29aを踏み込むことを想定した角度となっており、足の自重を利用してペダル部29aを踏み込むことを想定した構成(この構成では、着座位置が高さ方向においてアクセルペダル29のペダル部29aよりも高い位置となる)よりも大きな角度となっている。
【0037】
本実施形態は、
図5に示すように、ドライバの着座位置(ヒップポイント)とアクセルペダル29の設置位置との関係に応じてアクセルペダル29の初期ペダル角度が設定された車両への適用を想定し、以下では、そのような車両の構成を前提にして説明を行うものとする。
【0038】
図6は、ドライバがアクセル操作したときの足の筋負担の変化の一例を示すタイムチャートである。
図6は、上から順に、アクセル開度、足首角度、大腿直筋の筋電位、前脛骨筋の筋電位及びヒラメ筋の筋電位のそれぞれについて時間変化を示している(筋電位はそれぞれ筋電計によって計測されたものである)。
図6に示すように、時刻T11から、アクセルペダル29が徐々に踏み込まれて、それに伴い、アクセル開度及び足首角度が徐々に大きくなっていく。このようにアクセル操作に応じて足首角度が変化した場合、最初に、大腿直筋、前脛骨筋及びヒラメ筋の筋電位が一旦低下していき、その後、大腿直筋及びヒラメ筋の筋電位が上昇していくことがわかる(矢印A11、A12、A13参照)。
【0039】
図7は、足首角度(deg)と、足首角度を変えるときの大腿直筋、前脛骨筋及びヒラメ筋のそれぞれの筋発揮力(%)との関係を示す図である。
図7において、グラフG11は、大腿直筋の筋発揮力を示し、グラフG12は、前脛骨筋の筋発揮力を示し、グラフG13は、ヒラメ筋の筋発揮力を示している。そして、グラフG14は、これら大腿直筋、前脛骨筋及びヒラメ筋の筋発揮力を合計した筋発揮力を示している。なお、グラフG11〜G13は、例えば、足首角度を変化させたときの筋発揮力の計測を複数人に対して行って、複数人から得られた計測結果を平均化したものである。
【0040】
グラフG14より、足首角度が97度〜99度の範囲(符号R11参照)にあるときに、大腿直筋、前脛骨筋及びヒラメ筋の筋発揮力を合計した筋発揮力が最小になることがわかる。したがって、足首角度が97度〜99度の範囲にあるときに、足首を動かすときに用いる筋肉の負担(筋負担)が最小になると言える、つまりアクセル操作を行うように足首を動かすときの筋負担が最小になると言える。
【0041】
図8は、ドライバがアクセル操作を行うときの足首角度(deg)と、ペダル角度(deg)及びアクセル開度(%)との関係を示す図である。具体的には、
図8のグラフG15は、平均的なドライバがアクセル操作を行うときの足首角度に対応するペダル角度及びアクセル開度を示している。グラフG15に示すように、ドライバがアクセル操作を行うときに足首角度を大きくしていくと、ペダル角度が小さくなっていくと共に、アクセル開度が大きくなっていく。なお、ペダル角度とアクセル開度とは一義的に対応するものである(以下同様とする)。
【0042】
図8中の符号R21は、上記したような足首を動かすときの筋負担が最小になる97度〜99度の足首角度の範囲を示しており(
図7中の符号R11も参照)、この足首角度の範囲では、符号R22に示すペダル角度及びアクセル開度の範囲となる。具体的には、97度〜99度の足首角度の範囲では、71度〜73度のペダル角度の範囲になると共に、13%〜27%のアクセル開度の範囲となる。したがって、ペダル角度が71度〜73度の範囲にあるときに、換言するとアクセル開度が13%〜27%の範囲にあるときに、アクセル操作に用いる足の筋肉の負担(筋負担)が最小になると言える。
【0043】
以上述べたような結果を受けて、本実施形態では、足の筋負担が最小になる足首角度の範囲においてアクセル操作が行われたときに、車両に付与される加速度が0になるように制御を行う、つまり走行抵抗(空気抵抗、路面抵抗及び道路勾配により受ける抵抗などを含む)と車輪に付与される駆動力とが釣り合うように制御を行う。こうすることで、例えば、ドライバがターンインに向けてブレーキペダルから足を離してアクセルペダル29に踏み替えたときに、ドライバが特に意識せずに足をアクセルペダル29に乗せるだけで、車両を容易且つ速やかに定常走行させられるようにする。より具体的には、本実施形態では、アクセル操作するときの足の筋負担が最小になる足首角度の範囲に対応する71度〜73度のペダル角度の範囲(この範囲ではペダル角度と初期ペダル角度(75度)との差が2度〜4度となる)において、即ち13%〜27%のアクセル開度の範囲において、目標加速度を0に設定するように、上記したECU50の目標加速度設定部50bが用いる加速度特性マップを規定する。
【0044】
図9を参照して、本実施形態による加速度特性マップについて具体的に説明する。
図9は、本実施形態による、車速及びギヤ段ごとの加速度特性マップの一例を示す図である。
図9(A)〜(C)は、それぞれ、横軸にアクセル開度を示し、縦軸に目標加速度を示している。
【0045】
具体的には、
図9(A)は、30km/hの車速において適用する加速度特性マップを示し、
図9(B)は、50km/hの車速において適用する加速度特性マップを示し、
図9(C)は、100km/hの車速において適用する加速度特性マップを示している。また、
図9(A)に示すグラフG21〜G26は、それぞれ、1速、2速、3速、4速、5速、6速のギヤ段に対して適用する加速度特性マップを示し、
図9(B)に示すグラフG31〜G36は、それぞれ、1速、2速、3速、4速、5速、6速のギヤ段に対して適用する加速度特性マップを示し、
図9(C)に示すグラフG43〜G46は、3速、4速、5速、6速のギヤ段に対して適用する加速度特性マップを示している。
なお、
図9では、30km/h、50km/h及び100km/hにおいて適用する加速度特性マップを一例として示しており、実際には、これら以外の種々の車速について適用する加速度特性マップが用意される。また、
図9(C)では、車速が100km/hと比較的高く、この車速において低速ギヤ段(1速及び2速)に適用されるマップが例外的なものであるため、図示を省略している。
【0046】
図9(A)、(B)、(C)中の符号R31、R32、R33に示すように、本実施形態では、上述した、アクセル操作を行うときの足の筋負担が最小になる97度〜99度の足首角度の範囲に対応する13%〜27%のアクセル開度の範囲において(
図8中の符号R21、R22参照)、目標加速度を0に設定するように加速度特性マップを規定している。具体的には、車速及びギヤ段に依らずに、13%〜27%のアクセル開度の範囲において、目標加速度を0に設定するように加速度特性マップを規定している。より厳密に言うと、本実施形態では、車速が高くなるほど、目標加速度を0に設定するアクセル開度を大きくすると共に、ギヤ段が高くなるほど(つまり高速段になるほど)、目標加速度を0に設定するアクセル開度を若干大きくしている。
【0047】
ここで、
図10を参照して、本実施形態において、車速及びギヤ段に応じて目標加速度を0に設定するペダル角度及びアクセル開度について説明する。
図10は、横軸に車速(km/h)を示し、縦軸にペダル角度(deg)及びアクセル開度(%)を示している。具体的には、グラフG51〜G56は、それぞれ、1速、2速、3速、4速、5速、6速のギヤ段での、車速と、加速度特性マップにおいて目標加速度を0に設定するペダル角度及びアクセル開度との関係を示している。また、符号R41は、アクセル操作を行うときの足の筋負担が最小になる97度〜99度の足首角度の範囲に対応する、71度〜73度のペダル角度の範囲及び13%〜27%のアクセル開度の範囲を示している(
図8中の符号R21、R22参照)。
【0048】
図10に示すように、本実施形態では、車速が高くなるほど、目標加速度を0に設定するアクセル開度を大きくすると共に、ギヤ段が高くなるほど(つまり高速段になるほど)、目標加速度を0に設定するアクセル開度を若干大きくするように、加速度特性マップを規定している。こうしているのは、高車速及び高速ギヤ段になると、目標加速度を0に設定するアクセル開度を大きくして、アクセルペダル29に付与する踏力が高くなるようにして、エンジン負荷が高いという情報(高車速及び高速ギヤ段ではエンジン負荷が高くなる)を、アクセル操作を介してドライバに伝えるためである。これにより、ドライバと車両との一体感を向上させるようにしている。
なお、20km以下の低車速域では、アクセル開度が大きくなると加速度が速やかに大きくなるようにして(つまり目標加速度を0に設定するように加速度特性マップを規定していない)、車両の加速を優先している。こうしているのは、20km以下の低車速を維持することはあまり考えられないからである。
【0049】
<制御処理>
次に、
図11を参照して、本実施形態によるエンジン制御処理について説明する。
図11は、本発実施形態によるエンジン制御処理を示すフローチャートである。このフローは、エンジンシステム100内のECU50によって、所定の周期で繰り返し実行される。
【0050】
まず、ステップS1では、ECU50は、車両の運転状態を取得する。具体的には、ECU50は、アクセル開度センサ30が検出したアクセル開度(詳しくは、アクセル開度センサ30が出力した検出信号S30に基づき、ECU50のアクセル開度検出部50aが取得したアクセル開度)、車速センサ39が検出した車速、及び、変速機202に現在設定されているギヤ段などを運転状態として取得する。
【0051】
次いで、ステップS2では、ECU50の目標加速度設定部50bが、ステップS1で取得されたアクセル開度、車速及びギヤ段に基づき、目標加速度を設定する。具体的には、目標加速度設定部50bは、種々の車速及び種々のギヤ段について規定された、
図9に示したような加速度特性マップ(予め作成されてメモリなどに記憶されている)の中から、現在の車速及びギヤ段に対応する加速度特性マップを選択し、選択した加速度特性マップを参照して現在のアクセル開度に対応する目標加速度を決定し、この目標加速度を設定する。
【0052】
次いで、ステップS3では、ECU50のエンジン制御部50cが、ステップS2で設定された目標加速度を実現するためのエンジン10の目標トルクを設定する。この場合、エンジン制御部50cは、現在の車速などに基づき、目標トルクを設定する。これは、車速が高くなると走行抵抗が高くなるため、目標トルクを大きく設定する必要があるからである。また、エンジン制御部50cは、エンジン10が出力可能なトルクの範囲内で、目標トルクを設定するようにする。
【0053】
次いで、ステップS4では、エンジン制御部50cは、ステップS3で設定した目標トルクが出力されるようにエンジン10を制御する。具体的には、エンジン制御部50cは、目標トルクに応じた空気量がエンジン10に導入されるように、エアフローセンサ31が検出した吸入空気量を考慮して、スロットルバルブ5の開度の制御、及び/又は、可変吸気バルブ機構18を介した吸気バルブ12の動作タイミングの制御(吸気VVT制御)を行うと共に、上記の目標トルクに応じた空気量に対応する、理論空燃比から定まる燃料噴射量が噴射されるように、燃料噴射弁13を制御する。
【0054】
<作用効果>
次に、本実施形態によるエンジンの制御装置の作用効果について説明する。
【0055】
図12を参照して、本実施形態によるエンジンの制御装置の作用効果について具体的に説明する。
図12は、車両が直進状態から旋回状態へと移行するときに(詳しくはターンインからクリッピングポイントに向けてコーナリングするとき)、上記した本実施形態による加速度特性マップを適用した場合の車両の挙動の一例を示すタイムチャートである。具体的には、
図12は、上から順に、ステアリングの操舵角、ブレーキ操作により付与されたブレーキ圧、アクセル操作によるアクセル開度、車両の実際の加速度を示している。
【0056】
図12に示すように、まず、時刻T21において、ドライバがアクセルペダル29から足を離すことで、アクセル開度が0になり、この後の時刻T22において、ドライバがブレーキペダルを足で踏み込むことで、ブレーキ圧が上昇する。これと同時に、ドライバがステアリングを操舵することで、車両を旋回させるようにする。そして、時刻T23において、ドライバがブレーキペダルから足を離すことで、ブレーキ圧が0になり、この直後の時刻T24において、ドライバがアクセルペダル29を足で踏み込むことで、アクセル開度が立ち上がる。このとき、ドライバは、車両を定常走行させるように、最初に、特に意識せずに足をアクセルペダル29に乗せてアクセル操作を行う(矢印A21参照)。本実施形態では、このようにドライバが特に意識せずに自然にアクセル操作したときの足首角度の範囲(つまり足の筋負担が最小になる足首角度の範囲)に対応するアクセル開度の範囲において、目標加速度を0に設定するように加速度特性マップを規定している(
図8及び
図9参照)。そのため、この加速度特性マップに規定された目標加速度に基づいてエンジントルクが制御されることで、ドライバが特に意識せずに自然にアクセル操作を行ったときに、車両の加速度をほぼ0に適切に一定にすることができる(矢印A22参照)。
【0057】
したがって、本実施形態によれば、ドライバがターンインに向けてブレーキペダルから足を離してアクセルペダル29に踏み替えるような状況において、ドライバが特に意識せずに自然に足をアクセルペダル29に乗せるだけで、車両を速やかに定常走行させることができる。この場合、ドライバはアクセルペダル29に対する修正操作を行うことなく、1回のアクセルペダル29に対する操作のみで、車両を容易に定常走行させることができる。
【0058】
このようにして、加速度特性マップを用いて目標加速度を0に設定することで、車両が加速も減速もせずに車速を一定に保てるアクセル開度をドライバに瞬時に把握させることができる。その結果、ドライバは、把握した車速を一定に保てるアクセル開度を中心にして足首を動かしてアクセル操作を行うことで、車両の加減速を自在にコントロールすることが可能となる。
【0059】
更に、本実施形態によれば、車速が高くなるほど、目標加速度を0に設定するアクセル開度を大きくすると共に、ギヤ段が高くなるほど、目標加速度を0に設定するアクセル開度を大きくするように、加速度特性マップを規定している(
図10参照)。そのため、高車速及び高速ギヤ段になると、目標加速度を0に設定するアクセル開度が大きくなり、アクセルペダル29に付与する踏力が大きくなるので、エンジン負荷が高いという情報をアクセル操作を介してドライバに適切に伝えることができる。その結果、ドライバと車両との一体感を向上させることが可能となる。
【0060】
<変形例>
上記した実施形態では、本発明をガソリンエンジンとしてのエンジン10に適用する構成を示したが(
図2参照)、本発明は、ガソリンエンジンへの適用に限定されず、ディーゼルエンジンにも同様に適用することができる。
【0061】
また、上記した実施形態では、車速及びギヤ段の両方に応じて、目標加速度を0に設定するアクセル開度を変化させていたが、他の例では、車速及びギヤ段の一方のみに応じて、目標加速度を0に設定するアクセル開度を変化させることとし、車速及びギヤ段の他方に依らずに、目標加速度を0に設定するアクセル開度を固定にしてもよい。