【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
本発明に係る有機蛍光材料のうち、4つの代表例について、ウルマン反応を用いた方法により合成した。
【0026】
(合成例1)BPS−p−Aの合成
下記に示すようなステップを経て、BPS−p−Aを合成した。
【0027】
【化4】
【0028】
まず、窒素雰囲気下、100ml二口フラスコに水50ml、水酸化ナトリウム130mg、化合物1 300mgを入れ、30分間室温で撹拌を行った。続いて、塩化銅(I)60mg、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン2.10g、ヨードベンゼン(化合物2)900mgを加え、還流撹拌を1日行った。放冷後、ジクロロメタン100mlで3回抽出を行い、有機層を水100mlで2回、飽和食塩水100mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(NHシリカゲル、ジクロロメタン:ヘキサン=2:3)で精製し、化合物3の無色鱗片状結晶を得た(303mg、収率76%)。
【0029】
【化5】
【0030】
次に、窒素雰囲気下、30ml二口フラスコに化合物3 50mg、ジクロロメタン10ml、トリエチルアミン78mg、無水酢酸79mgを入れ、室温で1日撹拌した。水10mlを加え、30分撹拌した後、ジクロロメタン30mlで3回抽出を行った。有機層を水30mlで5回、飽和食塩水100mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去し、化合物4の無色粉末を得た(61mg、収率97%)。
【0031】
【化6】
【0032】
そして、窒素雰囲気下、50ml二口フラスコに化合物4 68mg、ジクロロメタン20ml、m−CPBA75% 212mgを入れ、室温で1日撹拌した。その後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液10ml、1N水酸化ナトリウム水溶液10mlを加えて失活させ、反応溶液を分液ロートに移し、ジクロロメタン50ml、水50mlを加え、有機層と水層を分離した。水層をジクロロメタン40mlで10回抽出し、有機層と合わせ、飽和食塩水200mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去し、化合物5の無色粉末を得た(73mg、定量的)。
【0033】
【化7】
【0034】
そして、50ml二口フラスコに化合物5 55mg、6N塩酸6ml、テトラヒドロフラン8mlを入れ、還流撹拌を3時間行った。これを、4N水酸化ナトリウム水溶液400mlに少量ずつ加え、室温で1日激しく撹拌した後、吸引ろ過し、水50mlで洗浄し、ろ物を減圧乾燥し、化合物6(BPS−p−A)の黄緑色粉末を得た(44.3mg、収率98%)。
【0035】
(合成例2)BAS−p−Aの合成
下記に示すようなステップを経て、BAS−p−Aを合成した。
【0036】
【化8】
【0037】
まず、窒素雰囲気下、100ml二口フラスコに水75ml、エタノール10ml、水酸化ナトリウム190mg、化合物1 500mgを入れ、室温で30分間撹拌した。続いて、塩化銅(I)100mg、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン3.5g、2−ヨードアニリン(化合物7)1.42gを加え、還流撹拌を1日行った。放冷後、ジクロロメタン100mlで5回抽出を行い、この有機層を水100mlで2回、飽和食塩水100mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(NHシリカゲル、ジクロロメタン)で精製した。次いで、ジクロロメタン−ヘキサンの混合溶媒で再結晶を行い、化合物8の無色鱗片状結晶を得た(554mg、収率77%)。
【0038】
【化9】
【0039】
次に、窒素雰囲気下、100ml二口フラスコに化合物8 300mg、ジクロロメタン60ml、トリエチルアミン1.29g、無水酢酸1.30gを入れ、室温で1日撹拌した。水30mlを加え、30分間撹拌した。反応溶液を分液ロートに移し、ジクロロメタン50ml、水50mlを加え、水層と有機層を分離した。水層をジクロロメタン80mlで4回抽出し、有機層と合わせ、水100mlで2回、飽和食塩水100mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去し、化合物9の無色粉末を得た(440mg、定量的)。
【0040】
【化10】
【0041】
そして、窒素雰囲気下、200ml二口フラスコに化合物9 150mg、ジクロロメタン100ml)、m−CPBA75% 660mgを加え室温で1日撹拌した。その後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液30ml、1N水酸化ナトリウム水溶液30mlを加えて失活させ、反応溶液を分液ロートに移し、ジクロロメタン50ml、水50mlを加え、水層と有機層を分離した。水層をジクロロメタン80mlで5回抽出し、有機層と合わせ、飽和食塩水200mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去し、化合物10の無色粉末を得た(165mg、定量的)。
【0042】
【化11】
【0043】
そして、100ml二口フラスコに化合物10 70mg、6N塩酸30ml、テトラヒドロフラン30mlを加え、還流撹拌を3時間行った。これを、4N水酸化ナトリウム水溶液600mlに少量ずつ加え、室温で1日激しく撹拌した後、吸引ろ過し、水50mlで洗浄し、ろ物を減圧乾燥し、黄緑色粉末を得た。これを、1,2−ジクロロエタン30mlでコーティングし、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=30:1)で精製し、化合物10(BAS−p−A)の黄緑色粉末を得た(34mg、収率69%)。
【0044】
(合成例3)BThS−p−A
下記に示すようなステップを経て、BThS−p−Aを合成した。
【0045】
【化12】
【0046】
まず、窒素雰囲気下、200ml三口フラスコに水140ml、水酸化ナトリウム270mg、化合物1 800mgを入れ、室温で30分間撹拌した。続いて、塩化銅(I)30mg、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン5.3g、2−ヨードチオフェン(化合物12)3.1gを加え、還流撹拌を1日行った。放冷後、ジクロロメタン150mlで3回抽出し、有機層を水100mlで3回、飽和食塩水100mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(中性シリカゲル、ジクロロメタン)、(NHシリカゲル、ジクロロメタン)で精製し、化合物3の黄色鱗片状結晶を得た(704mg、収率65%)。
【0047】
【化13】
【0048】
次に、窒素雰囲気下、200ml三口フラスコに化合物13 500mg、ジクロロメタン100ml、トリエチルアミン1.63g、無水酢酸1.52gを入れ、室温で6日間撹拌した。水100mlを加え、30分撹拌した。反応溶液を分液ロートに移し、有機層と水層を分離した。続いて、有機層を水100mlで2回、飽和食塩水100mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去し、酢酸エチル50ml、次いで、ジクロロメタン10mlで洗浄し、化合物14の無色粉末を得た(602mg、収率96%)。
【0049】
【化14】
【0050】
そして、窒素雰囲気下、200ml三口フラスコに化合物14 100mg、クロロホルム100ml、m−CPBA75% 280mgを入れ、室温で5日間撹拌した。その後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液10ml、1N水酸化ナトリウム水溶液50mlを加えて失活させ、反応溶液を分液ロートに移し、有機層と水層を分離した。水層をクロロホルム50mlで5回抽出し、有機層と合わせ、飽和食塩水200mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(NHシリカゲル、ジクロロメタン)で精製し、化合物15の無色粉末を得た(115mg、定量的)。
【0051】
【化15】
【0052】
そして、200ml三口フラスコに化合物15 100mg、6N塩酸60ml、テトラヒドロフラン60mlを入れ、還流撹拌を7日間行った。この際、24時間ごとに濃塩酸10mlを加えた。これを、4N水酸化ナトリウム水溶液1200mlに少量ずつ加え、室温で1日激しく撹拌した後、吸引ろ過し、水50mlで洗浄した。ろ物を減圧乾燥し、化合物16(BThS−p−A)の黄緑色粉末を得た(82mg、定量的)。
【0053】
(合成例4)BMeS−p−A
下記に示すようなステップを経て、BMeS−p−Aを合成した。
【0054】
【化16】
【0055】
まず、窒素雰囲気下、25ml二口フラスコにメタノール10ml、金属ナトリウム190mgを入れ、室温で5分間撹拌した。化合物1 520mgを加え、室温で5分間撹拌し、次いで、ヨードメタン620mgを加えて、室温で4時間撹拌した。1N水酸化ナトリウム水溶液6mlを加えて失活させ、反応溶液を分液ロートに移し、ジクロロメタン50ml、水50mlを加え、有機層と水層に分離した。水層をジクロロメタン50mlで4回抽出し、有機層と合わせ、飽和食塩水150mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去し、化合物17の深緑色鱗片状結晶を得た(400mg、収率95%)。
【0056】
【化17】
【0057】
次に、窒素雰囲気下、100ml二口フラスコに化合物17 300mg、ジクロロメタン40ml、トリエチルアミン1.52g、無水酢酸1.53gを入れ、室温で1日撹拌した。反応溶液を吸引ろ過し、ろ物を減圧乾燥した(260mg)。また、ろ液を分液ロートに移し、ジクロロメタン100ml、水100mlを加え、有機層と水層に分離した。水層をジクロロメタン50mlで5回抽出し、有機層と合わせ、水150mlで2回、飽和食塩水150mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去し、ろ物と合わせて、化合物18の無色粉末を得た(385mg、収率90%)。
【0058】
【化18】
【0059】
そして、窒素雰囲気下、100ml二口フラスコに化合物18 135mg、ジクロロメタン50ml、m-CPBA75% 1090mgを入れ、室温で2日間撹拌した。次いで、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液10ml、6N水酸化ナトリウム水溶液20mlを加え、室温で18時間撹拌した。反応溶液を分液ロートに移し、水20mlを加えた、有機層と水層を分離した。水層をジクロロメタン50mlで5回抽出し、有機層と合わせ、水150ml、飽和食塩水150mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータで溶媒を留去し、ジクロロメタン30mlに懸濁させ、吸引ろ過し、ろ物を減圧乾燥した(30mg)。また、ろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(NHシリカゲル、ジクロロメタン)で精製し、ろ物と合わせて、化合物19(BMeS−p−A)の黄緑色粉末を得た(40mg、収率32%)。
【0060】
(光学特性評価)
上記において合成したBPS−p−A、BAS−p−A、BThS−p−A及びBMeS−p−Aについて、それぞれ、THF溶液における吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定を行った。
BMeS−p−Aについては、水溶液における測定も行い、比較のため、汎用の水溶性蛍光色素であるフルオレセイン(0.1N水酸化ナトリウム水溶液)についても同様に測定した。なお、フルオレセインの構造式を下記に示す。
【0061】
【化19】
【0062】
これらの結果を表1にまとめて示す。
なお、表1における量子効率Φは、9,10−ジフェニルアントラセン(シクロヘキサン溶液)を0.95とした場合に対応する値である。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示した結果から分かるように、本発明に係る有機蛍光材料であるBPS−p−A、BAS−p−A、BThS−p−A及びBMeS−p−Aはいずれも、高い蛍光量子効率及び大きなストークスシフトを示すことが認められた。
また、BMeS−p−Aは、水溶性を示し、水中において、より高い蛍光量子効率及び大きなストークスシフトを示し、かつ、汎用の水溶性蛍光色素である
フルオレセインと比較して、ストークスシフトの優位性が認められた。
【0065】
(安定性評価)
BMeS−p−A及びフルオレセインについて、水中での安定性の評価を行った。
なお、BMeS−p−Aは2.5×10
-5Mの水溶液、また、フルオレセインは1.0×10
-5Mの0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて、150Wキセノンランプによる白色光を照射し、その照射時間の経過に伴う吸光度の変化を測定することにより、安定性を評価した。
図1に、それぞれの照射時間と吸光度減少率の関係をグラフとして示す。
【0066】
図1に示したグラフから、BMeS−p−Aは、汎用の蛍光色素であるフルオレセインよりも高い安定性を示すことが認められた。