(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
隣接する上下のランキンサイクルは、下段の蒸発器を兼ねる上段の前記第一凝縮器が、作動流体同士を混ぜることなく熱交換する間接熱交換器であるか、上段の前記第二凝縮器からの作動流体を気液分離して気相部が下段の膨張機に接続されると共に液相部が上段のポンプに接続される気液分離器である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加熱システム。
隣接する上下のランキンサイクルは、前記第一凝縮器の設置を省略する代わりに、上段の第二凝縮器と下段の膨張機とが接続される一方、下段のポンプと上段のポンプとを接続するか、これらポンプを一つのポンプとして構成される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加熱システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ランキンサイクルを単独で用いた場合、膨張機において取り出せる仕事量には限界がある。特に、蒸発器においてランキンサイクルの作動流体を加熱する与熱流体が一定温度(典型的には蒸発器において与熱流体が潜熱を放出して一定温度)であり、凝縮器においてランキンサイクルの作動流体で加熱される受熱流体を昇温(凝縮器において受熱流体が顕熱を取得)する場合、一つのランキンサイクルを用いただけでは、取り出せる仕事量に限界があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、蒸発器において一定温度の与熱流体により作動流体が加熱され、凝縮器において受熱流体を加熱して昇温する加熱システムにおいて、被動機へ取り出せる仕事量を増加させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、
並列に設置された複数のランキンサイクルを備え、前記複数のランキンサイクルは、各最上段の蒸発器において、一定温度の与熱流体により作動流体が加熱され、各最下段の凝縮器に受熱流体が順に通され、この受熱流体が通される順に段数が少なくなるよう構成され、受熱流体が最後に通されるランキンサイクルは、単段または複数段とされ、最上段のランキンサイクル同士が一つのランキンサイクルにまとめられ、最上段から一つ下段のランキンサイクル同士が一つのランキンサイクルにまとめられというように、並列に対応する段同士が一つにまとめられ、各まとめられたランキンサイクルは、第一凝縮器と第二凝縮器とを備え、各第一凝縮器は、一つ下段のランキンサイクルの蒸発器を兼ねており、各第二凝縮器に受熱流体が順に通されることを特徴とする加熱システムである。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、並列に設置された複数のランキンサイクルについて、並列に対応する段同士を一つにまとめることで、加熱システム全体の構成を簡略化することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は
、前記各最上段の蒸発器において、与熱流体は潜熱を放出し、前記各最下段の凝縮器において、受熱流体は顕熱を取得することを特徴とする請求項1に記載の加熱システムである。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば
、与熱流体は、潜熱を放出するので、ランキンサイクルの作動流体を安定して加熱することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、隣接する上下のランキンサイクルは、下段の蒸発器を兼ねる上段の前記第一凝縮器が、作動流体同士を混ぜることなく熱交換する間接熱交換器であるか、上段の前記第二凝縮器からの作動流体を気液分離して気相部が下段の膨張機に接続されると共に液相部が上段のポンプに接続される気液分離器であることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の加熱システムである。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、間接熱交換器または気液分離器を用いて、上下に隣接するランキンサイクルを接続することができる。
【0016】
さらに、
請求項4に記載の発明は、隣接する上下のランキンサイクルは、前記第一凝縮器の設置を省略する代わりに、上段の第二凝縮器と下段の膨張機とが接続される一方、下段のポンプと上段のポンプとを接続するか、これらポンプを一つのポンプとして構成されることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の加熱システムである。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、上下のランキンサイクルを一つにまとめることで、加熱システム全体の構成をさらに簡略化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蒸発器において一定温度の与熱流体により作動流体が加熱され、凝縮器において受熱流体を加熱して昇温する加熱システムにおいて、被動機へ取り出せる仕事量を増加させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。但し、本発明の加熱システムは、下記各実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜に変更可能である。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の加熱システム1の実施例1を示す概略図である。また、
図2は、本実施例1の加熱システム1のT−S線図であり、縦軸が温度T、横軸がエントロピSを示している。
【0022】
本実施例の加熱システム1は、第一ランキンサイクル2と第二ランキンサイクル3とを備える。
【0023】
第一ランキンサイクル2は、本実施例では単段のランキンサイクルから構成される。具体的には、第一ランキンサイクル2は、給水ポンプ4、蒸発器5、膨張機6および凝縮器7が順次環状に接続されて構成され、この回路内には作動流体が相変化を伴って循環される。なお、作動流体は、たとえば水または冷媒である。
【0024】
給水ポンプ4は、凝縮器7にて液化した作動流体を、蒸発器5へ供給する。
【0025】
蒸発器5は、作動流体を与熱流体で加熱して気化する。つまり、蒸発器5は、作動流体と与熱流体との間接熱交換器であり、与熱流体の熱で作動流体を加熱して蒸気とする。なお、
図1において、流路8に、与熱流体が通される。
【0026】
膨張機6は、蒸発器5にて気化した作動流体が通され、作動流体の圧力と温度を低下させる。膨張機6は、特に問わないが、たとえば、タービン、スクリュ式膨張機またはスクロール式膨張機である。膨張機6は、典型的には、蒸発器5からの作動流体で回転され、被動機(図示省略)を稼働させる。被動機は、特に問わないが、典型的には発電機または圧縮機(たとえば空気圧縮機)である。
【0027】
凝縮器7は、作動流体を受熱流体で冷却して液化する。つまり、凝縮器7は、作動流体と受熱流体との間接熱交換器であり、作動流体を受熱流体で冷却して凝縮させる。この際、受熱流体は、作動流体の熱で加熱されて昇温する。なお、
図1において、流路9に、受熱流体が通される。
【0028】
蒸発器5において作動流体を加熱する与熱流体は、本実施例では一定温度である。典型的には、与熱流体は、蒸発器5において潜熱を放出する。つまり、与熱流体は蒸気(たとえば水蒸気)であり、蒸発器5において凝縮して、その凝縮潜熱で作動流体を一定温度(飽和温度)で加熱する。但し、与熱流体が大量に存在しその温度変化を無視できる場合、与熱流体は、蒸発器5において顕熱を放出してもよい。
【0029】
凝縮器7において作動流体で加熱される受熱流体は、作動流体で加熱され昇温される。つまり、受熱流体は、凝縮器7において顕熱を取得する。たとえば、受熱流体は水であり、凝縮器7において作動流体により加熱され、温水として導出される。
【0030】
第二ランキンサイクル3は、本実施例では上下二段のランキンサイクルから構成される。具体的には、高温側の上段ランキンサイクル3Aと、低温側の下段ランキンサイクル3Bとから構成される。第二ランキンサイクル3を構成する上下各段のランキンサイクル3A,3Bは、基本的には前述した単段の第一ランキンサイクル2と同様の構成である。つまり、給水ポンプ10A,10B、蒸発器11A,11B、膨張機12A,12Bおよび凝縮器13A,13Bが順次環状に接続されて構成される。本実施例では、上下のランキンサイクル3A,3Bは、互いの作動流体を混ぜることなく熱交換する間接熱交換器14で接続されており、この間接熱交換器14が、上段ランキンサイクル3Aの凝縮器13Aと下段ランキンサイクル3Bの蒸発器11Bを兼ねる。第二ランキンサイクル3は、上段ランキンサイクル3Aの蒸発器11Aにおいて、作動流体が一定温度の与熱流体で加熱され、下段ランキンサイクル3Bの凝縮器13Bにおいて、作動流体で受熱流体を加熱して昇温する。なお、上段ランキンサイクル3Aと下段ランキンサイクル3Bとを接続する熱交換器は、各ランキンサイクル3A,3Bの作動流体同士を混ぜることなく熱交換する間接熱交換器14としたが、場合により、作動流体同士を直接に接触させて熱交換する直接熱交換器としてもよい。
【0031】
与熱流体は、図示例では、第一ランキンサイクル2の蒸発器5に通された後、第二ランキンサイクル3の上段の蒸発器11Aに通されるが、これとは逆に、第二ランキンサイクル3の上段の蒸発器11Aに通された後、第一ランキンサイクル2の蒸発器5に通されてもよい。あるいは、与熱流体は、第一ランキンサイクル2の蒸発器5と第二ランキンサイクル3の上段の蒸発器11Aとに並列に通されてもよい。いずれにしても、本実施例では、第一ランキンサイクル2の蒸発器5と第二ランキンサイクル3の上段の蒸発器11Aとにおいて、各ランキンサイクル2,3の作動流体が、一定温度の与熱流体により加熱される。
【0032】
受熱流体は、第二ランキンサイクル3の下段の凝縮器13Bに通された後、第一ランキンサイクル2の凝縮器7に通される。受熱流体は、各ランキンサイクル3,2の凝縮器13B,7を順に通されることで、順次加熱され昇温される。
【0033】
なお、第一ランキンサイクル2の膨張機6、および第二ランキンサイクル3の各膨張機12A,12Bでは、たとえば発電機や空気圧縮機などの被動機を稼働させるが、この際、各膨張機6,12A,12Bからの動力をまとめて一つの(つまり共通の)被動機を稼働させてもよいし、各膨張機6,12A,12Bにおいて被動機を個別に稼働させてもよい。
【0034】
ところで、典型的には、第二ランキンサイクル3の上段の凝縮器13Aにおける作動流体の温度および圧力は、第一ランキンサイクル2の凝縮器7における作動流体の温度および圧力と、同等(同一または設定範囲内)とされるのがよい。つまり、第二ランキンサイクル3の上段ランキンサイクル3Aと、第一ランキンサイクル2とは、作動流体を含めて同一の構成とするのがよい。
【0035】
後述するように、第二ランキンサイクル3は、並列に設置された複数のランキンサイクルから構成されてもよいが、その場合も、並列に設置された複数のランキンサイクルは、最上段から数えて順次対応する段のランキンサイクルにおいて、凝縮器における作動流体の温度および圧力が同等とされるのがよい。たとえば、単段の第一ランキンサイクル、二段の第二ランキンサイクル、および三段の第三ランキンサイクルを並列に備える加熱システムの場合、各最上段のランキンサイクル同士は、凝縮器における作動流体の温度および圧力が同等とされ、第二ランキンサイクルの下段と第三ランキンサイクルの中段のランキンサイクル同士は、凝縮器における作動流体の温度および圧力が同等とされるのがよい。
【0036】
本実施例の加熱システム1は、
図2に示すように、T−S線図において、三つの略台形として示される。三つの略台形の内、右上の略台形が第一ランキンサイクル2を示し、左上の略台形が第二ランキンサイクル3の上段ランキンサイクル3Aを示し、左下の略台形が第二ランキンサイクル3の下段ランキンサイクル3Bを示す。そして、各ランキンサイクル2,3A,3Bにおいて、作動流体は、a1−b1、a2H−b2H、a2L−b2L間で給水ポンプ4,10A,10Bによる断熱圧縮、b1−b1´−c1、b2H−b2H´−c2H、b2L−b2L´−c2L間で蒸発器5,11A,11Bによる等圧加熱、c1−d1、c2H−d2H、c2L−d2L間で膨張機6,12A,12Bによる断熱膨張、d1−a1、d2H−a2H、d2L−a2L間で凝縮器7,13A,13Bによる等圧冷却される。なお、図から明らかなとおり、好ましくは、a1=d2H=c2Lの関係にある。さらに、典型的には、S3=(S1+S2)/2の関係にある。
【0037】
また、蒸発器5,11Aにおいて作動流体に熱を与える与熱流体が一定温度T2であり、凝縮器13B,7において作動流体から熱を受ける受熱流体をT1LからT1Hまで昇温し、膨張機6,12A,12Bにおいて被動機(たとえば発電機)を稼働して仕事を取り出すことができる。詳細は実施例2において説明するが、本実施例の加熱システム1によれば、左下の略台形の分だけ、従来技術よりも仕事を取り出すことができる。
【0038】
次に、本実施例1の変形例について説明する。
上記実施例では、第一ランキンサイクル2を単段のランキンサイクルから構成し、第二ランキンサイクル3を上下二段のランキンサイクル3A,3Bから構成したが、第二ランキンサイクル3が第一ランキンサイクル2よりも段数が多い限り、各ランキンサイクル2,3の段数は適宜に変更可能である。いずれにしても、第一ランキンサイクル2の最上段の蒸発器5と、第二ランキンサイクル3の最上段の蒸発器11Aとにおいて、一定温度の与熱流体により作動流体が加熱される。また、第二ランキンサイクル3の最下段の凝縮器13Bと、第一ランキンサイクル2の最下段の凝縮器7とに、受熱流体が順に通され、各ランキンサイクル2,3の作動流体が冷却される一方、受熱流体を加熱して昇温する。特に、各最上段の蒸発器5,11Aにおいて、与熱流体は潜熱を放出し、各最下段の凝縮器13B,7において、受熱流体は顕熱を取得するのがよい。
【0039】
また、前記実施例において、第二ランキンサイクル3は、並列に設置された複数のランキンサイクルから構成されてもよい。言い換えれば、前記実施例において、第一ランキンサイクル2や第二ランキンサイクル3に加えて、第三ランキンサイクルを設けてもよい他、さらに第四ランキンサイクル、第五ランキンサイクル、…というように、全体としてn個(n≧2)のランキンサイクルを並列に設置してもよい。この場合も、このn個のランキンサイクルは、各最上段の蒸発器において、一定温度の与熱流体により作動流体が加熱され、各最下段の凝縮器に受熱流体が順に通されて昇温され、この受熱流体が通される順に段数が少なくなるよう(好ましくは一段ずつ少なくなるよう)構成される。
【実施例2】
【0040】
図3は、本発明の加熱システム1の実施例2を示す概略図である。また、
図4は、本実施例2の加熱システムのT−S線図であり、縦軸が温度T、横軸がエントロピSを示している。
【0041】
本実施例2の加熱システム1は、基本的には前記実施例1およびその変形例と同様である。そこで、以下において、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0042】
本実施例2の加熱システム1は、前記実施例1において、第一ランキンサイクル2と、第二ランキンサイクル3の上段ランキンサイクル3Aとを、一つのランキンサイクルとしてまとめたものに相当する。そして、全体としては、上下二段のランキンサイクルから構成される。
【0043】
上段ランキンサイクル3Aは、第一凝縮器15と第二凝縮器16とを備える。第一凝縮器15は、本実施例では、上段ランキンサイクル3Aの作動流体と下段ランキンサイクル3Bの作動流体との間接熱交換器であり、上段ランキンサイクル3Aの凝縮器13Aと下段ランキンサイクル3Bの蒸発器11Bとを兼ねている。一方、第二凝縮器16は、上段ランキンサイクル3Aの作動流体と受熱流体との間接熱交換器である。受熱流体は、下段ランキンサイクル3Bの凝縮器13Bに通された後、上段ランキンサイクル3Aの第二凝縮器16に通されて、順に加熱され昇温される。その他の構成は、前記実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
本実施例の加熱システム1は、
図4に示すように、T−S線図において、二つの略台形として示される。二つの略台形の内、実線で示される上側の略台形が上段ランキンサイクル3Aを示し、二点鎖線で示される下側の略台形が下段ランキンサイクル3Bを示す。
【0045】
図4のT−S線図に基づき、本発明の加熱システム1のメリットについて説明する。ここでは、蒸発器11Aにおいて作動流体に熱を与える与熱流体が一定温度T2であり、凝縮器13B,16において作動流体から熱を受ける受熱流体をT1LからT1Hまで昇温し、膨張機12A,12Bにおいて被動機(たとえば発電機)を稼働して仕事を取り出す場合を考える。
【0046】
図中、実線で示すサイクルは、従来のランキンサイクルである。周知のとおり、理想状態では、作動流体は、a−b間で給水ポンプによる断熱圧縮、b−b´−c間で蒸発器による等圧加熱、c−d間で膨張機による断熱膨張、d−a間で凝縮器による等圧冷却される。また、与熱流体の状態を示す水平線L2、および受熱流体の状態を示す傾斜線L1は、物質に応じて定まり既知である。
【0047】
さて、ランキンサイクルの作動流体は、与熱流体との熱交換で加熱される関係上、与熱流体の温度T2よりも高くはできない。そのため、ランキンサイクルの作動流体の蒸発温度は、理論上、T2が限界である。もちろん、実際には、与熱流体と作動流体との間の熱交換には所定の温度差が必要であるから、作動流体の蒸発温度は、与熱流体の温度T2よりも低くなる。
【0048】
一方、膨張機において、断熱熱落差があるほど、仕事量を取り出すことができる。しかし、ランキンサイクルの作動流体は、受熱流体との熱交換で冷却される関係上、受熱流体の凝縮器出口温度(加熱目標温度)T1Hよりも低くはできない。そのため、ランキンサイクルの作動流体の凝縮温度は、理論上、T1Hが限界である。もちろん、実際には、受熱流体と作動流体との熱交換には所定の温度差が必要であるから、作動流体の凝縮温度は、受熱流体の凝縮器出口温度T1Hよりも高くなる。
【0049】
また、ランキンサイクルで囲まれた面積は、仕事量であるから、最大限に仕事を引き出すには、T−S線図上で可能な限り大きくランキンサイクルを組むのが好適である。このようなことから、従来、実線で示すように、ランキンサイクルが組まれる。
【0050】
一方、本発明では、この実線で示す従来のランキンサイクルに、さらに二点鎖線で示すランキンサイクルを付加したものに相当する。従って、この付加したランキンサイクルに相当する分だけ、さらに仕事を取り出すことができる。たとえば、膨張機で発電機を稼働させる場合、システム全体の発電効率を向上することができる。
【0051】
次に、本実施例2の変形例について説明する。
前記実施例1の変形例で述べたように、加熱システム1を構成するランキンサイクルの段数は、二段に限らず、三段以上とすることもできる。その場合も、各段のランキンサイクルには、最下段を除き、凝縮器として第一凝縮器15と第二凝縮器16とを設け、第一凝縮器15を用いて上下のランキンサイクルを接続し、受熱流体を、最下段の凝縮器13Bに通した後、下段から上段へ向けて各第二凝縮器16に順に通して昇温すればよい。言い換えれば、次のような構成と等価である。
【0052】
すなわち、前記実施例1の変形例で述べたように、前記実施例1において第二ランキンサイクル3は、並列に設置された複数のランキンサイクルから構成されてもよいが、並列に設置された複数のランキンサイクルは、最上段のランキンサイクル同士が一つのランキンサイクルにまとめられ、最上段から一つ下段のランキンサイクル同士が一つのランキンサイクルにまとめられというように、並列に対応する段同士が一つにまとめられてもよい。そして、各まとめられたランキンサイクルは、最下段を除き、第一凝縮器15と第二凝縮器16とを備え、各第一凝縮器15は、一つ下段のランキンサイクルの蒸発器を兼ねており、各第二凝縮器16に受熱流体が順に通される。
【実施例3】
【0053】
図5は、本発明の加熱システム1の実施例3を示す概略図である。
本実施例3の加熱システム1は、基本的には前記実施例2およびその変形例と同様である。そこで、以下において、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0054】
前記実施例2では、上段ランキンサイクル3Aと下段ランキンサイクル3Bとを接続する第一凝縮器15は、各ランキンサイクル3A,3Bの作動流体同士を混ぜることなく熱交換する間接熱交換器14としたが、本実施例3では、上段の第二凝縮器16からの作動流体を気液分離して気相部が下段の膨張機12Bに接続されると共に液相部が上段のポンプ10Aに接続される気液分離器17とされる。
【0055】
具体的には、
図5から明らかなとおり、上段ランキンサイクル3Aの作動流体は、上段膨張機12Aから第二凝縮器16を通された後、第一凝縮器15を構成する気液分離器(中空タンク)17へ吐出される。気液分離器17の気相部の作動流体は、下段ランキンサイクル3Bの膨張機12Bへ送られる。一方、気液分離器17の液相部の作動流体は、上段ランキンサイクル3Aの給水ポンプ10Aへ送られる。下段ランキンサイクル3Bの給水ポンプ10Bからの作動流体は、気液分離器17に供給されるか、気液分離器17から上段ランキンサイクル3Aの給水ポンプ10Aへの管路に合流される。
【0056】
本実施例3においても、加熱システム1を構成するランキンサイクルの段数は、二段に限らず、三段以上とすることもできる。その場合も、各段のランキンサイクルには、最下段を除き、凝縮器として第一凝縮器15と第二凝縮器16とを設け、第一凝縮器15を用いて上下のランキンサイクルを接続し、受熱流体を、最下段の凝縮器に通した後、下段から上段へ向けて各第二凝縮器16に順に通して昇温すればよい。そして、第一凝縮器15として、
図5に示すような気液分離器17を用いることができる。但し、一部の段において、気液分離器17ではなく、
図3に示すような間接熱交換器14を用いてもよい。
【実施例4】
【0057】
図6は、本発明の加熱システム1の実施例4を示す概略図である。
本実施例4の加熱システム1は、基本的には前記実施例2およびその変形例と同様である。そこで、以下において、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0058】
本実施例4の加熱システム1では、前記実施例2と比較して、隣接する上下のランキンサイクル3A,3Bは、第一凝縮器15の設置を省略する代わりに、上段の第二凝縮器16と下段の膨張機12Bとが接続される一方、下段の給水ポンプ10Bと上段の給水ポンプ10Aとを直列に接続するか、これら給水ポンプ10A,10Bを一つの給水ポンプ10として構成される。図示例の場合、作動流体は、給水ポンプ10、上段の蒸発器11A、上段の膨張機12A、上段の凝縮器7(第二凝縮器16)、下段の膨張機12B、および下段の凝縮器13Bを順に循環する。
【0059】
本実施例4においても、加熱システム1を構成するランキンサイクルの段数は、二段に限らず、三段以上とすることもできる。その場合において、隣接する上下のランキンサイクル同士の接続に関し、上段の凝縮器7(第二凝縮器16)の出口側と下段の膨張機12Bの入口側とを接続する一方、最下段の凝縮器13Bの出口側と最上段の蒸発器11Aの入口側とを給水ポンプ10で接続すればよい。
【0060】
ところで、前記各実施例およびその変形例において、第一ランキンサイクル2および/または第二ランキンサイクル3は、それを構成する各ランキンサイクルに代えて、
図7に示すように、蒸気駆動装置18が設けられてもよい。蒸気駆動装置18とは、ランキンサイクルの膨張機と同様に、蒸気の力で被動機を稼働させる機械である。図示例では、一段の蒸気駆動装置18と、二段の蒸気駆動装置18とが並列に設けられて構成されるが、さらに三段以上の蒸気駆動装置18を並列に設けてもよい。いずれの蒸気駆動装置18にも、図において上方から蒸気が噴き込まれ、下方へ吐出する。最下段の蒸気駆動装置18にて使用後の蒸気は、受熱流体と間接熱交換して凝縮するか、受熱流体が流れる管路内に噴き込まれる。そして、受熱流体との間接熱交換により凝縮した作動流体、または作動流体が噴き込まれて昇温された受熱流体は、たとえばボイラの給水タンクへ供給して用いることができる。
【0061】
ボイラからの蒸気を蒸気駆動装置18に供給して被動機を駆動し、蒸気駆動装置18で使用後の蒸気のドレンをボイラへ戻す蒸気システムを観察すると、水はボイラで蒸気化され、その蒸気で蒸気駆動装置18を回転させ、蒸気のドレンは給水ポンプを介してボイラへ戻される。つまり、ランキンサイクルの作動流体と同様の作用を行っており、ランキンサイクルに代えて蒸気駆動装置18を用いることができることになる。言い換えれば、第一ランキンサイクル2および/または第二ランキンサイクル3は、それを構成する各ランキンサイクル(一部または全部のランキンサイクル)に代えて、蒸気駆動装置18を用いることができることになる。なお、作動流体として、水以外を用いてもよい。