(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6249258
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】風力発電システムおよびこれに用いる風受けブレード
(51)【国際特許分類】
F03D 5/02 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
F03D5/02
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-43595(P2017-43595)
(22)【出願日】2017年3月8日
【審査請求日】2017年4月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517081909
【氏名又は名称】江副 良二
(73)【特許権者】
【識別番号】517081910
【氏名又は名称】江副 栄子
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江副 良二
【審査官】
冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−144695(JP,A)
【文献】
特開2013−130071(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/162762(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の、風の風向に応じて開閉する風受けブレードを一定間隔で取り付けた2本の牽引索をループ状に形成し、これを発電機用回転輪と1または複数の回転支持手段とにかけ渡した風力発電システムであって、前記風受けブレードは、2枚のプレートと、上下を牽引索で固定される軸を有し、2枚のプレートはそれぞれその一辺で前記軸に回動可能に取り付けられ、他辺は自由端となっていることを特徴とする風力発電システム。
【請求項2】
風受けブレードは、2本の牽引索の上下でこの牽引索に固定される請求項1記載の風力発電システム。
【請求項3】
発電機用回転輪および回転支持手段の回転輪が2段で構成される請求項1または2記載の風力発電システム。
【請求項4】
風受けブレードの、2枚のプレートの面積が異なる請求項1ないし3のいずれかの項記載の風力発電システム。
【請求項5】
風受けブレードの、2枚のプレートの先端が外側に湾曲する請求項1ないし4のいずれかの項記載の風力発電システム。
【請求項6】
2枚のプレートが最大に開いた場合の角度が、90〜180°に制約された請求項1ないし5のいずれかの項記載の風力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風力発電システムに関し、さらに詳細には、循環する多数の風受けブレードに対する風力を利用する風力発電システムおよびこのシステムで使用する風受けブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
風力エネルギーは再生可能エネルギーのひとつとして、自然環境の保全、エネルギーセキュリティの確保可能なエネルギー源として認められ、多くの地に風力発電所や風力発電装置が建設されている。
【0003】
風力エネルギーの利用として、風力発電には発電風車(風力タービン)が用いられている。巨大な風力発電所(ウインドファーム)は、送電線に接続されている何百機もの風車で構成されている。最近のEUの調査では、新規に建設された陸上風車は安価な発電源であり、石炭・ガスなどの化石燃料による発電所より安価で、競争力を持っているという。また、小型陸上風力発電所は送電網に連系して送電したり、あるいは連系しないで電気を自己消費する。
【0004】
ところで、風力発電には、風車が使用され、その形式として水平軸のプロペラ型が最も多く用いられているが、その他に、用途に応じて垂直軸のダリウス型、ジャイロミル型、サボニウス型またはその併用型などが用いられている。
【0005】
しかしながら、いずれの発電用風車も、構造物としてかなりの大きさおよび高さを持つものであり、その建設に費用がかかるうえ、その維持管理にも高所での作業が必要となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−106622
【特許文献2】特開2012− 67742
【特許文献3】特開2013−130071
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明は、装置として従来のものより簡素であり、維持管理も容易である風力発電システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、巨大な建造物の建築が不要であり、かつ維持管理も簡単な風力発電システムに関し検討した結果、ループ状に形成した牽引索に、風の風向に応じて開閉する風受けブレードを一定の間隔で取り付け、これで発電機に連結した回転輪を回転させることで風力発電が可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、複数の、風の風向に応じて開閉する風受けブレードを一定間隔で取り付けた牽引索をループ状に形成し、これを発電機用回転輪と1または複数の回転支持手段とにかけ渡したことを特徴とする風力発電システムである。
【0010】
また本発明は、上記システムで使用する、2枚のプレートと、上下を牽引索で固定される軸を有し、2枚のプレートはそれぞれその一辺で前記軸に回動可能に取り付けられ、他辺は自由端となっていることを特徴とする風受けブレードである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、簡単な構成を有するものであり、その建設にも、また維持管理にも費用が安いものである。また、従来の風力発電機と異なり平面的なものであるので、例えば、太陽光発電などで利用される土地の周りにその発電の妨害とならずに設置することができたり、耕作を行う田畑の周りに設置することができるので、自然エネルギーからの電力を効率良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の風力発電システムを平面的に示した模式図である。図中、矢印は風向を、太矢印は牽引索の進行方向を示す。
【
図2】本発明の風力発電システムの発電機用回転輪付近の部分正面図である。
【
図4】本発明で使用される風受けブレードの斜視図である。
【
図5】風受けブレードの平面図である。図中、Aは開いた状態、Bは閉じた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の風力発電システムの一態様を示す図面を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明の風力発電システムを平面的に示した模式図であり、
図2は、その発電機用回転輪付近の部分正面図である。図中、1は発電システム、2は発電機用回転輪、3は発電機、4は回転支持手段、5は風受けブレード、6は牽引索、7は固定軸、8は連結部材をそれぞれ示す。
【0015】
本発明のシステムは、
図1で示すように、複数の風受けブレード5の上端と下端が連結された2本の牽引索6を、2段の回転輪を有する発電機用回転輪2と、これまた2段の回転保持部を有する1または複数の回転支持手段4の間にループを形成し、かけ渡したものである。
【0016】
上記発電機用回転輪2および回転支持手段4は、回転輪や、
図3に示すような、例えばスキーのリフトなどで使用されているようなものなどを利用することができる。また、これを2段として使用するのは、風受けブレード5の上下方向の揺れを防ぎ、動きを抑えるためである。ここで回転支持手段4は1個であっても良いが、その場合は、発電機用回転輪2との直線方向の風力しか利用できず、不利であり、回転支持手段4を複数とすることで、風向に関係なく発電可能となる。
【0017】
図4は、本発明で用いる風受けブレード5の一態様を示す斜視図である。図中、5、6、7および8は前記と同じであり、10はストッパを示す。この図からわかるように風受けブレード5は、2枚のプレート5a、5bが、それらの一辺において、固定軸7に結合され、他端は自由辺となっているものであり、固定軸7を中心に回動可能である。
【0018】
上記プレート5a、5bは、同じ面積であってもよいが、その面積を異なるものとした方が、風上側に向かう際の閉の状態から、風下側に向かう際に横からの風で開になりやすいため好ましい。また形状も平坦な板状よりも、先端側(自由端側)で外に向かって若干そり気味に開いている方が、風上側では閉になりやすく、また風下側へ向かう際は開きやすいため好ましい。
【0019】
また、本発明のブレード5においては、風を最大に受けるため、開いた状態でのプレート5a、5bの角度が90〜180°程度になるようにすることが好ましく、特に90〜120°とすることが好ましい。このためにはストッパ10を用い、開き度合いを調整することが好ましい。このストッパ10は、
図5に示すように、プレート5a、5bの上にそれぞれ各末端が回動可能な部材を用い、所定の開き角度以上にならないようにしても良い。また、連結部材8上に棒状物として突出したストッパ10を設けたり、連結部材8自体の一部を切り欠き、プレート5a、5bの動きを制約するようにしても、更には、プレート5a、5bの一部に紐穴を設け、ここに通した紐を利用し、開き度合いを調整してもよい(いずれも図示せず)。なお、プレート5a、5bの材質は、特に制約されるものではないが、ある程度以上の強度を持ち、腐食しにくい材質、例えば金属板やFRP板であることが好ましい。
【0020】
前記態様では、2枚のプレート5a、5bが、それらの一辺において、固定軸7に蝶番構造で結合され、回動可能となっているが、これに限らず2枚のプレートが回動可能な構造であれば良く、例えば、腕木等を用い、それぞれの上辺、下辺のみで、あるいはさらに中間部の複数個所で固定軸7に開閉可能に取り付けても良い。
【0021】
本発明の風受けブレード5を取り付ける2本の牽引索6は、ある程度以上の強度を持ち、腐食しにくい材質であることが好ましい。具体的には、鋼・ステンレス製のロープや、アラミド繊維などのロープであることが好ましい。また、ロープでなく、チェーンを利用することもでき、この場合は回転輪2側を歯車(ギア)とすることで回転輪2を回す力を高めることができる。
【0022】
風受けブレード5を取り付けた2本の牽引索6は、縄バシゴ状であり、発電機用回転輪2の2段の回転輪と、好ましくは、複数の回転支持手段4の各々2段の回転輪あるいは回転保持部の間でかけ渡されることにより、発電機用回転輪2を回転させ、発電が可能となる。
【0023】
本発明の風力発電システム1では、上記のように構成されるので、風受けブレード5が前から風を受ける場合は、その抵抗によりプレート5a、5bは閉じ、移動の際の抵抗はほとんどない。一方、後ろから風を受ける場合は、その力によってプレート5a、5bは開き、この開いたプレートが風力を受けることになり、この風力が連結されている牽引索を通して発電機用回転輪2を回すことで、発電機3での発電が可能となる。具体的には、例えば発電機用回転輪2の回転を、回転軸側歯車9aを介して発電機側歯車9bに伝えるが、その際ギア比の違いによって発電機側歯車9bの速度が上がり、発電に十分な回転力を得ることができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の風力発電システムは、大きな構造物を伴わないものであるため、例えば、ある程度の面積が必要で、日当たりの良いことが求められる太陽光発電プラントでも風が吹くところであれば問題なく稼働させることができる。また、これに限られず、畑や推断の周囲に設置し、作物を耕作しながら稼働させることや、ビルの屋上を利用して稼働させることもできる。
【0025】
そして、例えば太陽光発電プラントにおいて、その外側を取り囲むように設置すれば、太陽光発電のできない夜間等であっても発電することが可能となり、効率よく自然エネルギーの電力として売電することができ、極めて有利である。
【符号の説明】
【0026】
1 … … 発電システム
2 … … 発電機用回転輪
3 … … 発電機
4 … … 回転支持手段
41 … … 支柱
42 … … 滑車
43 … … 腕木
5 … … 風受けブレード
6 … … 牽引索
7 … … 固定軸
8 … … 連結部材
9 … … 歯車
9a … … 回転軸側歯車
9b … … 発電機側歯車
10 … … ストッパ
【要約】
【課題】装置として従来のものより簡素であり、維持管理も容易である風力発電システムを提供する。
【解決手段】複数の、風の風向に応じて開閉する風受けブレードを一定間隔で取り付けた牽引索をループ状に形成し、これを発電機用回転輪と1または複数の回転支持手段とにかけ渡したことを特徴とする風力発電システムおよびこれに利用する2枚のプレートと、上下を牽引索で固定される軸を有し、2枚のプレートはそれぞれその一辺で前記軸に回転可能に取り付けられ、他辺は自由端となっていることを特徴とする風受けブレード。
【選択図】
図4