特許第6249260号(P6249260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6249260
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】レジスト剥離液及びレジストの剥離方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20171211BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   G03F7/42
   H01L21/30 572B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-111724(P2017-111724)
(22)【出願日】2017年6月6日
【審査請求日】2017年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-226997(P2016-226997)
(32)【優先日】2016年11月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向 喜広
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−316029(JP,A)
【文献】 特開2012−032757(JP,A)
【文献】 特開2001−249465(JP,A)
【文献】 特開2014−194965(JP,A)
【文献】 特開2006−243507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/42
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アミン、
(B)有機溶剤、及び、
(C)重量平均分子量5000〜1000000のポリアニリンスルホン酸又はその
を含有し、
(C)成分の含有量は5.0重量%以下であり、
(D)水を含有しないか、又は、(D)水を含有し、かつ、(D)成分の含有量が60重量%以下であることを特徴とするレジスト剥離液。
【請求項2】
(C)成分の含有量は0.0025〜5.0重量%である、請求項に記載のレジスト剥離液。
【請求項3】
(A)成分はアルカノールアミンであり、(A)成分の含有量は1〜40重量%である、請求項1又は2に記載のレジスト剥離液。
【請求項4】
さらに(D)水を含有し、(B)成分と(D)成分との重量比((B):(D))は、0.2:1〜70:1である、請求項1〜のいずれか1項に記載のレジスト剥離液。
【請求項5】
銅及び/又はIGZOを備える基材のレジストを剥離するための、請求項1〜のいずれか1項に記載のレジスト剥離液。
【請求項6】
金属配線及び/又は金属酸化物膜を備える基材からレジストを剥離する方法であって、請求項1〜のいずれか1項に記載のレジスト剥離液を用いることを特徴とするレジストの剥離方法。
【請求項7】
金属配線の材質が銅であり、金属酸化物膜の材質がIGZOである、請求項に記載のレジストの剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト剥離液及びレジストの剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板等は微細な配線を施した電極構造を有しており、その製造工程でレジストが使用されている。薄膜トランジスタ(TFT)では、IGZO等の酸化物半導体膜と、銅等の金属配線とを組合せた電極構造が知られている。電極構造は、例えば、基材上に形成された銅等の金属配線やIGZO等の酸化物半導体膜の上にレジストを塗布し、これに露光、現像の処理を施してレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして導電性金属層や酸化物半導体膜等をエッチング処理した後、不要となったレジストをレジスト剥離液で除去して製造される。
【0003】
例えば特許文献1には、半水溶性の剥離および洗浄組成物であって、アミノベンゼンスルホン酸、水混和性有機溶剤、および、水を特定量含有する組成物が提案されている。しかしながら、特許文献1に記載された組成物は、金属配線及び/又は金属酸化物膜を備える基材上のレジストの剥離に用いた場合、いったん剥離されたレジストが金属配線及び/又は金属酸化物膜を備える基材に再付着してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−224782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金属配線及び/又は金属酸化物膜を備える基材からレジストを剥離するためのレジスト剥離液であって、剥離性に優れ、剥離されたレジストの再付着量が少なく、消泡性にも優れたレジスト剥離液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、アミン及び有機溶剤を含有するレジスト剥離液において、再付着防止剤として、特定の重量平均分子量を有するスルホン酸若しくはカルボン酸又はこれらの塩を特定量以下用い、かつ、水を含まないか、又は、水の含有量を特定量以下に調整することにより、優れた剥離性を有するとともに、剥離されたレジストの再付着量が少なく、消泡性にも優れたレジスト剥離液を得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明のレジスト剥離液は、
(A)アミン、
(B)有機溶剤、及び、
(C)重量平均分子量5000〜1000000のスルホン酸若しくはカルボン酸又はこれらの塩
を含有し、
(C)成分の含有量は5.0重量%以下であり、
(D)水を含有しないか、又は、(D)水を含有し、かつ、(D)成分の含有量が60重量%以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明のレジスト剥離液において、(C)成分はポリアニリンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸若しくはポリアクリル酸又はこれらの塩であることが好ましい。
【0009】
本発明のレジスト剥離液において、(C)成分の含有量は0.0025〜5.0重量%であることが好ましい。
【0010】
本発明のレジスト剥離液において、(A)成分はアルカノールアミンであり、(A)成分の含有量は1〜40重量%であることが好ましい。
【0011】
本発明のレジスト剥離液は、さらに(D)水を含有し、(B)成分と(D)成分との重量比((B):(D))は、0.2:1〜70:1であることが好ましい。
【0012】
本発明のレジスト剥離液は、銅及び/又はIGZOを備える基材のレジストを剥離するために使用することが好ましい。
【0013】
本発明のレジストの剥離方法は、金属配線及び/又は金属酸化物膜を備える基材からレジストを剥離する方法であって、本発明のレジスト剥離液を用いることを特徴とする。
【0014】
本発明のレジストの剥離方法において、金属配線の材質が銅であり、金属酸化物膜の材質がIGZOであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレジスト剥離液は、再付着防止剤として、特定の重量平均分子量を有するスルホン酸若しくはカルボン酸又はこれらの塩を特定量以下含有し、かつ、水を含まないか、又は、水の含有量を特定量以下に調整したものであるため、優れた剥離性を有するとともに、剥離されたレジストの再付着量が少なく、消泡性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<レジスト剥離液>>
本発明のレジスト剥離液は、
(A)アミン、
(B)有機溶剤、及び、
(C)重量平均分子量5000〜1000000のスルホン酸若しくはカルボン酸又はこれらの塩
を含有し、
(C)成分の含有量は5.0重量%以下であり、
(D)水を含有しないか、又は、(D)水を含有し、かつ、(D)成分の含有量が60重量%以下であることを特徴とする。該レジスト剥離液は、好ましくは銅及び/又はIGZOを備える基材のレジストを剥離するために使用する。
【0017】
<(A)アミン>
(A)アミン(以下、単に(A)成分ともいう)としては、特に限定されないが、例えば、N−メチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノメチルアミン、モノエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン、2−エトシキプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリ−n−オクチルアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトシキプロピルアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イミノプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらの中で、レジスト剥離性の観点からは、アルカノールアミンが好ましく、N−メチルエタノールアミン(MMA)、モノエタノールアミン(MEA)、モノメチルジエタノールアミン(MDA)、トリエタノールアミン(TEA)がより好ましい。これらの(A)成分は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0018】
本発明のレジスト剥離液において、(A)成分の含有量は、特に限定されないが、1〜40重量%であることが好ましく、5〜25重量%であることがより好ましい。(A)成分の含有量が1重量%未満であると、レジスト剥離性が低下することがあり、40重量%を超えると、粘度が高くなり、作業上の不具合を生じることがある。
【0019】
<(B)有機溶剤>
(B)有機溶剤(以下、単に(B)成分ともいう)としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、モノアルコール類(例えば、メタノール、エタノール等)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコール等)、ピロリドン類(例えば、N−メチル−2−ピロリドン等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、エチレンカーボネート等が挙げられる。これらの中で、レジスト剥離性の観点からは、グリコール類、スルホキシド類、及び、アミド類からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。これらの(B)成分は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0020】
本発明のレジスト剥離液において、(B)成分の含有量は、特に限定されないが、レジスト剥離性等の観点から、10〜95重量%であることが好ましく、15〜90重量%がより好ましく、25〜80重量%であることが更に好ましい。
【0021】
<(C)重量平均分子量5000〜1000000のスルホン酸若しくはカルボン酸又はこれらの塩>
本発明のレジスト剥離液は、再付着防止剤として、(C)重量平均分子量5000〜1000000のスルホン酸若しくはカルボン酸又はこれらの塩(以下、単に(C)成分ともいう)を含有するため、優れた剥離性を有するとともに、剥離されたレジストの再付着量が少ない。
【0022】
(C)成分として使用されるスルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、ポリアニリンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、ポリ{2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸}、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジメチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アニリンスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等が挙げられる。カルボン酸としては、特に限定されないが、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸の重合体、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸/マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらのスルホン酸及びカルボン酸は共重合体であってもよく、例えば、アクリル酸/スルホン酸共重合体であってもよい。また、これらのスルホン酸又はカルボン酸と塩を形成するカチオンとしては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、有機アミン等が挙げられる。これらの中で、銅やIGZO等に対する再付着量が少ないという観点からは、ポリアニリンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸若しくはポリアクリル酸又はこれらの塩が好ましく、泡立ち抑制等の観点からは、ポリアニリンスルホン酸が好ましい。これらの(C)成分は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0023】
(C)成分の重量平均分子量は、5000〜1000000である限り特に限定されないが、10000〜75000であることが好ましい。(C)成分の重量平均分子量が5000未満であると、レジスト再付着量が増大することがある。
【0024】
本発明のレジスト剥離液において、(C)成分の含有量は、5.0重量%以下である限り特に限定されないが、0.0025〜5.0重量%であることが好ましく、0.025〜1.0重量%であることがより好ましい。(C)成分の含有量が0.0025重量%未満であると、レジスト再付着抑制効果が低いことがあり、5.0重量%を超えると、レジスト剥離性が低下することがある。
【0025】
本発明のレジスト剥離液は、上述の(A)〜(C)成分に加えて、任意に他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、特に限定されないが、(D)水、防食剤、pH調整剤、消泡剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
<(D)水>
本発明のレジスト剥離液は、(D)水(以下、単に(D)成分ともいう)を含有しなくても良いが、液ライフ等の観点からは、さらに(D)成分を含有することが好ましい。
【0027】
本発明のレジスト剥離液が(D)成分を含有する場合、その含有量は、60重量%以下である限り特に限定されないが、40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。(D)成分の含有量が60重量%を超えると、剥離性が低下することがある。なお、(D)成分を含有する場合、(D)成分の含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%であってよく、1重量%であってよい。
【0028】
本発明のレジスト剥離液が(D)成分を含有する場合、(B)成分と(D)成分との重量比((B):(D))は、特に限定されないが、0.2:1〜70:1であることが好ましい。(B)成分の重量比が(D)成分1に対して0.2未満であると、レジスト剥離性が低下することがあり、(D)成分1に対して70を超えると、液ライフが低下することがある。
【0029】
<防食剤>
本発明のレジスト剥離液が防食剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、レジスト剥離性等の観点から0.01〜1.0重量%であることが好ましい。
【0030】
本発明のレジスト剥離液は、上述の(A)〜(C)成分、及び、任意に含有される他の成分を、常法により混合することにより得られる。
【0031】
<<レジストの剥離方法>>
本発明のレジストの剥離方法は、金属配線及び/又は金属酸化物膜を備える基材からレジストを剥離する方法であって、本発明のレジスト剥離液を用いることを特徴とする。本発明のレジスト剥離液を用いて金属配線及び/又は金属酸化物膜を備える基材からレジストを剥離する方法としては、特に限定されないが、例えば、金属配線及び/又は金属酸化物膜を備える基材を本発明のレジスト剥離液に浸漬する方法、超音波方式、シャワー方式、スプレー方式、ブラシ方式、浸漬揺動、枚葉式等が挙げられる。本発明のレジスト剥離液は、ポジ型、ネガ型のいずれのフォトレジストの剥離方法にも使用することができる。
【0032】
金属配線の材質は、特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウム、チタン、モリブデン、クロム、タングステン等が挙げられる。これらの中で、導電性の観点からは、銅であることが好ましい。
【0033】
金属酸化物膜の材質は、特に限定されないが、例えば、IGZO(酸化インジウムガリウム亜鉛)、IGO(酸化インジウムガリウム)、ITO(酸化インジウム錫)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、GZO(酸化ガリウム亜鉛)、ZTO(酸化亜鉛錫)、ZnO(酸化亜鉛)、ZAO(酸化亜鉛アルミニウム)等が挙げられる。これらの中で、レジスト再付着防止の観点からは、IGZOであることが好ましい。
【0034】
IGZO等の金属酸化物膜と銅等の金属配線とを有するTFTの製造に本発明のレジスト剥離液を用いる場合、金属酸化物膜、金属配線の双方に対してレジスト再付着量が少ないレジスト剥離液を用いることが好ましい。この場合、レジストの剥離は複数回実施してもよく、複数回実施する場合、具体的には、金属酸化物膜(金属配線)を有する基板からレジストを剥離した後、別のレジストマスクを利用して金属配線(金属酸化物膜)を形成し、金属酸化物膜及び金属配線を有する基板からレジストを剥離する。このとき、全てのレジスト剥離工程において本発明のレジスト剥離液を使用してもよいし、いずれかの剥離工程において本発明のレジスト剥離液を使用してもよい。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0036】
1.使用材料
以下の実施例及び比較例では、下記の材料を使用した。
【0037】
1−1.(A)成分
・N−メチルエタノールアミン(MMA)
・モノエタノールアミン(MEA)
・モノメチルジエタノールアミン(MDA)
・トリエタノールアミン(TEA)
【0038】
1−2.(B)成分
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル(EDG)
【0039】
1−3.(C)成分
・ポリアニリンスルホン酸(重量平均分子量10000)
・メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物(重量平均分子量30000)
・ポリアクリル酸(重量平均分子量10000)
・ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物MEA塩(重量平均分子量5600)
・ポリスチレンスルホン酸(重量平均分子量75000)
・ポリスチレンスルホン酸(重量平均分子量1000000)
【0040】
1−4.(C)成分以外の添加剤
・アニリンスルホン酸(重量平均分子量173)
・ポリオキシエチレントリデシルエーテル(重量平均分子量420)
・エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(重量平均分子量3500)
・塩化アルキル(C16−18)トリメチルアンモニウム(重量平均分子量348)
・アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(重量平均分子量322)
・ラウリル硫酸ナトリウム(重量平均分子量288)
【0041】
1−5.(D)成分
・純水
【0042】
2.実施例
(実施例3、5、9、12、参考例1、2、4、6〜8、10、11、13、14、比較例1〜11)
表1及び表2に示す重量比となるように(A)〜(D)成分を混合し、レジスト剥離液を得た。得られたレジスト剥離液について、下記の方法により、再付着量、剥離性、消泡性を評価した。結果を表1及び表2に示す。なお、参考例6、8、10、11、13、14、比較例9〜11については、IGZOに対する再付着量は評価しなかった。また、参考例2、4、7、10、実施例5、9、12、比較例1、2については、剥離性は評価しなかった。また、参考例13、14、比較例7〜11については、消泡性は評価しなかった。なお、参考例1は粘度が高く、作業性に難が見られた。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
3.評価方法
(再付着量)
各実施例及び比較例で得られたレジスト剥離液に、1%のレジスト固形物を添加した後、5インチのSi基板上にCu及びIGZOをそれぞれ成膜したウェハーを用いて、常温で1分間、パドル処理を行った。その後、水洗、乾燥を行い、ウェハー上のレジスト付着物の数をレーザースキャニング表面ダスト検査計(株式会社トプコン製)にて測定し、下記4段階で評価した。
◎:500個未満
○:500個以上1500個未満
△:1500個以上2500個未満
×:2500個以上
【0046】
(剥離性)
銅膜を有するガラス基板上にフォトレジストを形成し、エッチング処理したレジスト付基板を評価対象とした。50℃に調整したレジスト剥離液に基板を浸漬し、120秒間浸漬処理した後、基板を水洗及び空気ブロー乾燥した。光学顕微鏡(キーエンス社製)を用いて基板を観察し、フォトレジストの剥離具合を確認し、下記4段階で評価した。
◎:完全に剥離されている
○:微量に剥離残りがある
△:大部分で剥離残りがある
×:全く剥離できていない
【0047】
(消泡性)
100mlの比色管に各実施例及び比較例で得られたレジスト剥離液を30ml入れ、TS式シェーカーにセットし、2分間震盪した。震盪停止後、1分後に、泡高さ(mm)を測定し、測定結果を下記基準により評価した。なお、泡高さが5mm以下の場合には、泡の発生が実質的になく装置の運転に支障はなく、5mmを超えるが15mm以下の場合には多少の泡の発生があるものの装置の運転に実質的支障は生じない。しかし、15mmを超える場合には泡の発生により装置の運転に支障が生じるおそれが大きい。
◎:0mm
○:0mmを超えるが5mm以下である
△:5mmを超えるが15mm以下である
×:15mmを超える
【要約】
【課題】金属配線及び/又は金属酸化物膜を備える基材からレジストを剥離するためのレジスト剥離液であって、剥離性に優れ、剥離されたレジストの再付着量が少なく、消泡性にも優れたレジスト剥離液を提供すること。
【解決手段】(A)アミン、(B)有機溶剤、及び、(C)重量平均分子量5000〜1000000のスルホン酸若しくはカルボン酸又はこれらの塩を含有し、(C)成分の含有量は5.0重量%以下であり、(D)水を含有しないか、又は、(D)水を含有し、かつ、(D)成分の含有量が60重量%以下であることを特徴とするレジスト剥離液。
【選択図】なし