(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
日本の「ものづくり」産業を支えてきた技術の一つに、金型を用いた成形技術がある。かかる成形技術としては、加圧成形法、射出成形法および押出成形法などが挙げられる。これら成形法のうち、射出成形法は、射出成形用金型を用いて溶融樹脂原料から成形品を得る方法である。
【0003】
射出成形法においては、射出成形用金型200’の一方の金型(コア側金型)201’と他方の金型(キャビティ側金型)202’とから構成された金型キャビティ203’内に溶融樹脂原料が射出される(
図11参照)。射出された溶融樹脂原料は金型キャビティ203’で冷却固化に付され、成形品となる。金型キャビティ203’内への溶融樹脂原料の射出は、一般にスプルブッシュ100’を介して行われる。
【0004】
図11に示すように、射出成形用金型200’に用いられるスプルブッシュ100’には原料樹脂流路10’が設けられている。かかる原料樹脂流路10’は、溶融樹脂原料が導入される上流側始端10a’から金型キャビティ203’内へと通じる下流側末端10b’にまで延在している。
【0005】
原料樹脂流路10’には、成形品を取り出し易くするためにテーパが付けられている。具体的には、原料樹脂流路10’は、その上流側始端10a’から下流側末端10b’へと延在するにつれて幅寸法W’が漸次大きくなっている。
図11に示すように、原料樹脂流路10’の上流側10α’の幅寸法W
1’は相対的に小さいのに対して、原料樹脂流路10’の下流側10β’の幅寸法W
2’は相対的に大きくなっている。
【0006】
テーパが付けられた原料樹脂流路10’は、成形品の取出しの点で好ましいものの、溶融樹脂原料の冷却固化の点からは必ずしも好ましいといえない。例えばテーパが付けられた原料樹脂流路10’が長くなると、それに伴って相対的に大きい幅寸法W’の下流側の影響が大きくなり、溶融樹脂原料が冷却固化しにくくなる。溶融樹脂原料が冷却固化しにくいと、溶融原料樹脂の射出から成形品の取出しまでに要する時間が増し、結果として成形サイクルが長くなってしまう。それゆえ、
図11に示されるように原料樹脂流路10’の周囲に直管形態の冷却媒体流路20’が供されることがある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。図面における各種要素の形態および寸法は、あくまでも例示にすぎず、実際の形態および寸法を反映するものではない。
【0016】
本発明は、最終的に得られるスプルブッシュを少なくとも2つのパーツ(基部および造形部)から構成するといった技術的思想に基づく。ここでいう基部とは、既存のスプルブッシュを実質的に指す。基部は既存のスプルブッシュを実質的に指すため、基部それ自体に別のパーツ(造形部)を敢えて設けなくとも、基部を射出成形用部品として用いることができ得る。それにもかかわらず、本発明は、最終的に得られるスプルブッシュを少なくとも2つのパーツ(基部および造形部)から敢えて構成している点に特徴を有する。
【0017】
本発明の一実施形態に係るスプルブッシュ100は、
図1に示すように、基部100Aと、基部100A上に位置付けられるように構成される造形部100Bとを組み合わすことで得られる。なお、
図1では図示していないが、造形部100Bが基部100A上に位置付けられた後に、表面切削加工が施されてよい。かかるスプルブッシュ100は、図示するように、原料樹脂流路10およびその周囲に設けられた冷却媒体流路20を内部に有して成る。当該原料樹脂流路10は、最終的に得られる成形品の取出し易さの観点から上流側始端10aから下流側末端10bへ向かうにつれ幅寸法が漸次大きくなるように構成されている。
【0018】
ここでいう「スプルブッシュ100の冷却媒体流路20」とは、冷却媒体を流すための流路であって、原料樹脂流路10内の溶融樹脂原料を冷却させるための流路である。つまり、成形時においては冷却媒体流路20を流れる冷却媒体に起因して原料樹脂流路10内の溶融樹脂原料が降温に付されることになる。ここでいう「冷却媒体」とは、原料樹脂流路10内の溶融樹脂原料に対して冷却効果を与えることができる流体のことを指しており、例えば冷却水または冷却ガスなどである。ここでいう「原料樹脂流路10の上流側」とは、溶融樹脂原料が導入される上流側始端10aに対して近位側に位置する部分を指す。一方、ここでいう「原料樹脂流路10の下流側」とは、溶融樹脂原料が導入される上流側始端10aに対して遠位側に位置する部分を指す。原料樹脂流路10の上流側と下流側との境界は、特に限定されるものではないが、例えば本発明のスプルブッシュの高さの2分の1なる部分を指す。より具体的に例示すれば、「原料樹脂流路10の上流側」は、例えば原料樹脂流路10の上流側始端10aから“本発明のスプルブッシュの高さの2分の1なる部分”にまで至る領域に相当する。その一方、「原料樹脂流路10の下流側」は、例えば“本発明のスプルブッシュの高さの2分の1なる部分”から原料樹脂流路10の下流側末端10bにまで至る領域に相当する。
【0019】
基部100Aは、原料樹脂流路10の上流側領域に相当する上流原料樹脂流路部10A、および上流原料樹脂流路部10Aの周囲に位置し、冷却媒体流路20の上流側領域に相当する上流冷却媒体流路部20Aを備えている。基部100Aの上流冷却媒体流路部20Aは、上流原料樹脂流路部10Aの周囲に配置された直管形態の流路である。
【0020】
造形部100Bは、原料樹脂流路10の下流側領域に相当する下流原料樹脂流路部10B、および下流原料樹脂流路部10Bの周囲に位置し、冷却媒体流路20の下流側領域に相当する下流冷却媒体流路部20Bを備えている。本発明のスプルブッシュ100では、基部100A内の上流原料樹脂流路部10Aと造形部100B内の下流原料樹脂流路部10Bとが相互に連結されるように、および基部100A内の上流冷却媒体流路部20Aと造形部100B内の下流冷却媒体流路部20Bとが相互に連結されるように、造形部100Bが基部100A上に位置付けられ得る。
【0021】
上述のように、スプルブッシュ100内部の原料樹脂流路10はその幅寸法が上流側10aから下流側10bへと向かうにつれ漸次大きくなるように構成され得るため、それに起因して下流原料樹脂流路部10B内の溶融樹脂原料は上流原料樹脂流路部10A内の溶融樹脂原料よりも冷却固化しにくい。そのため、下流原料樹脂流路部10B内の溶融樹脂原料を好適に冷却固化できるようにする必要があり得る。そこで、本発明の一実施形態では、溶融樹脂原料が冷却固化しにくい部分であり得る下流原料樹脂流路部10Bの周囲に位置する下流冷却媒体流路部20Bが、下流原料樹脂流路部10Bを取り囲むように構成される。特に限定されるものではないが、下流冷却媒体流路部20Bは螺旋構造を有するように構成されてよい。ここでいう「下流冷却媒体流路部20B」は、本発明のスプルブッシュ100の高さの2分の1未満の寸法を有するものを指す。つまり、造形部100Bは、スプルブッシュ100の高さ寸法の2分の1未満の寸法(長手寸法)を有するように構成されていてよい(
図1参照)。
【0022】
下流冷却媒体流路部20Bが下流原料樹脂流路部10Bを取り囲む構成は、原料樹脂流路10の幅寸法が上流側から下流側へと向かうにつれ漸次大きくなることに起因して、原料樹脂流路10内の溶融樹脂原料が下流側に向かうにつれ冷却固化しにくいことを考慮したものである。下流冷却媒体流路部20Bが下流原料樹脂流路部10Bを取り囲むように設けられていると、下流冷却媒体流路部20Bを流れる冷却媒体の冷却熱を、平面視においていずれの方向からも下流原料樹脂流路部10B内の溶融樹脂原料に対して供することが可能となる。そのため、これに起因して、下流冷却媒体流路部20Bを流れる冷却媒体の冷却熱を、下流原料樹脂流路部10B内の相対的に冷却固化しにくい溶融樹脂原料に好適に伝えることができ得る。これにより、下流原料樹脂流路部10B内の溶融樹脂原料を好適に冷却固化でき得る。従って、これに起因して溶融樹脂原料の射出開始から成形品の取出しまでに要する時間を減じることができ、その結果として成形サイクルを短くすることができる。
【0023】
本発明の一実施形態に係るスプルブッシュ100は、下記態様を採り得る。
【0024】
一態様では、スプルブッシュ100の下流側末端面101と冷却媒体流路20の最下流部分20aとの間の離隔距離Mが、原料樹脂流路10と冷却媒体流路20との間の離隔距離Sよりも小さくなっている(
図7参照)。
【0025】
ここでいう「スプルブッシュ100の下流側末端面101」とは、金型(具体的には金型内に形成されたランナー部R)と直接的に接するスプルブッシュ100の端面の実質的に全体を指し、「原料樹脂流路10の下流側末端10b」を含むものである。ここでいう「冷却媒体流路の最下流部分」とは、冷却媒体流路20のうち、スプルブッシュ100の下流側末端面101に最直近で向かう合う部分を指す(
図7参照)。又、ここでいう「離隔距離S」とは、スプルブッシュ100の下流側領域100Yにて、冷却媒体流路20のうち原料樹脂流路10に対して最直近側の部分と、当該最直近側の部分と向かい合う原料樹脂流路10との間の距離を指す。すなわち、「離隔距離S」とは、原料樹脂流路10と冷却媒体流路20との最短の幅寸法を実質的に指す。
【0026】
本態様は、上述のように、スプルブッシュ100の下流側末端面101と冷却媒体流路20の最下流部分20aとの間の離隔距離Mが原料樹脂流路10と冷却媒体流路20との間の離隔距離Sよりも小さいことを特徴とする。原料樹脂流路10と冷却媒体流路20との間の離隔距離Sは、原料樹脂流路10内の溶融樹脂原料に対して冷却媒体流路20内を流れる冷却媒体の冷却熱を伝え易くするため、一般的に相対的に小さくなるよう制御され得る。本態様では、当該離隔距離Sよりも離隔距離Mが更により小さくなるよう構成されている。この事は、冷却媒体流路20の最下流部分20aがスプルブッシュ100の下流側末端面101に“より”近接して位置付けられていることを意味する。
【0027】
そのため、冷却媒体流路20に流す冷却媒体の冷却熱を、かかる最下流部分20aの位置からスプルブッシュ100の下流側末端面101に好適に伝えることができ得る。かかる冷却熱をスプルブッシュ100の下流側末端面101に好適に伝えることができ得るため、それに起因して最も冷却しにくい原料樹脂流路10の下流側末端10bに位置する溶融樹脂原料に好適に伝えることができ得る。従って、原料樹脂流路10の下流側末端10bに位置する溶融樹脂原料を好適に冷却固化でき得る。更に、スプルブッシュ100は射出成形用金型に接するように配置され得るため、冷却媒体流路20に流す冷却媒体の冷却熱を、スプルブッシュ100と接する射出成形用金型(具体的には射出成形用金型のランナー部R)に好適に伝えることができ得る。これにより、スプルブッシュ100との接触領域近傍に位置する射出成形用金型内部の溶融樹脂原料も好適に冷却固化でき得る。
【0028】
なお、上記のスプルブッシュ100の下流側末端面101と冷却媒体流路20の最下流部分20aとの間の離隔距離Mは、0.1mm〜5mm、好ましくは0.5mm〜2mmとなっていてよい。
【0029】
スプルブッシュ100の下流側末端面101と冷却媒体流路20の最下流部分20aとの間の距離Mは0.1mm〜5mmと相対的に小さい値であり得る。そのため、冷却媒体流路20に流す冷却媒体の冷却熱を、かかる最下流部分20aの位置からスプルブッシュ100の下流側末端面101に好適に伝えることができ得る。かかる冷却熱をスプルブッシュ100の下流側末端面101に好適に伝えることができ得るため、それに起因して最も冷却しにくい原料樹脂流路10の下流側末端10bに位置する溶融樹脂原料に好適に伝えることができ得る。
【0030】
一態様では、スプルブッシュ100の下流側末端面101の形成領域が、当該形成領域以外の他の領域を構成する材料とは異なる材料を含んで成っていてよい(又は当該異なる材料から構成されていてよい)。なお、ここでいう「スプルブッシュ100の下流側末端面101の形成領域」とは、スプルブッシュ100の下流側末端面101と当該下流側末端面101の近傍部分(特に限定されるものではないが、一例としてスプルブッシュ100の下流側末端面101と冷却媒体流路20の最下流部分20aとの間の領域/当該下流側末端面101の面上領域)とを含む領域を指す。
【0031】
上記では、最も冷却しにくい原料樹脂流路10の下流側末端10bに位置する溶融樹脂原料に冷却媒体の冷却熱を好適に伝えるための態様として、冷却媒体流路20の最下流部分20aをスプルブッシュ100の下流側末端面101に“より”近接して配置する態様を示した。しかしながら、かかる態様はこれに限定されない。例えば、スプルブッシュ100の下流側末端面101の形成領域が当該形成領域以外の他の領域を構成する材料とは異なる材料を含む態様が挙げられる。
【0032】
具体的には、スプルブッシュ100の下流側末端面101の形成領域に含まれる材料としては、一例として熱伝導率が相対的に高い材料であるAg、Cu、Al、およびNi等から成る群から選択される少なくとも1種が挙げられる。この中でも、スプルブッシュ100の下流側末端面101の形成領域にAlが含まれることが好ましい。一方、スプルブッシュ100の下流側末端面101の形成領域以外の領域に含まれる材料としては、一例としてFeが挙げられる。
【0033】
上記熱伝導率が相対的に高い材料を含むスプルブッシュ100の下流側末端面101の形成領域は、後述する“粉末焼結積層法”(当該形成領域を含むスプルブッシュ100の造形部を形成するために用いられる方法)にて形成することができる。つまり、“粉末焼結積層法”にて造形部を形成する間にて、造形部の構成要素である「スプルブッシュ100の下流側末端面101の形成領域」と成る部分と、「スプルブッシュ100の下流側末端面101の形成領域」と成る以外の部分とで用いる材料を変える。なお、これに限定されず、当該形成領域は、スプルブッシュ100の下流側末端面101に対応する面領域上に熱伝導率が相対的に高い材料(Ag、Cu、Al、およびNi等から成る群から選択される少なくとも1種、好ましくはAl)を別途溶接することで供されてもよい。
【0034】
以上により、熱伝導率が相対的に高い材料が局所的に用いられると、これに起因して、スプルブッシュ100の下流側末端面101の形成領域は、当該形成領域以外の他の領域よりも熱伝導率が相対的に高い“高熱伝導領域”として好適に機能し得る。かかる形成領域が“高熱伝導領域”として好適に機能すると、これに起因して最下流部分20aの位置からスプルブッシュ100の下流側末端面101に対して冷却熱を効果的に伝えることができ得る。下流側末端面101に対して冷却熱を効果的に伝えることができると、それに起因して下流側末端面の領域にある最も冷却しにくい原料樹脂流路10の下流側末端10bに位置する溶融樹脂原料に対しても冷却媒体の冷却熱を効果的に伝えることが可能となる。これにより、最も冷却しにくい原料樹脂流路10の下流側末端10bに位置する溶融樹脂原料を効果的に冷却固化でき得る。又、かかる形成領域が“高熱伝導領域”として好適に機能すると、これに起因して最下流部分20aの位置からスプルブッシュ100の下流側末端面101に対して効果的に伝えられ得る冷却熱を、スプルブッシュ100と接する射出成形用金型に効果的に伝えることが可能となる。より具体的には、当該冷却熱をスプルブッシュ100と接する射出成形用金型のランナー部Rに効果的に伝えることができ得る。つまり、スプルブッシュ100との接触領域近傍に位置する射出成形用金型内部の溶融樹脂原料も効果的に冷却固化できる。
【0035】
一態様では、スプルブッシュ100の下流側領域100Yにおいて、原料樹脂流路10と冷却媒体流路20との間の離隔距離Sが原料樹脂流路10の長手方向のいずれにおいても略一定となっていてよい(
図8参照)。
【0036】
スプルブッシュ100の下流側領域100Yにおいて、冷却媒体流路20の下流側が原料樹脂流路10を取り囲むように構成されていると、冷却媒体流路20の下流側を流れる冷却媒体の冷却熱を、平面視においていずれの方向からも原料樹脂流路10の下流側内の溶融樹脂原料に対して供することができ得る。この場合において、原料樹脂流路10と、当該原料樹脂流路10を取り囲む冷却媒体流路20との離隔距離Sが原料樹脂流路10の長手方向のいずれにおいても略一定となっていると、平面視で原料樹脂流路10を取り囲むように設けられた冷却媒体流路20の下流側と原料樹脂流路10の下流側との間の距離をいずれのポイントでも略等しくし得る。そのため、これに起因して、原料樹脂流路10の下流側内のいずれのポイントにも冷却媒体流路20の下流側を流れる冷却媒体の冷却熱を均一に伝えることができ得る。これにより、相対的に冷却固化しにくい原料樹脂流路10の下流側内の溶融樹脂原料を均一に溶融固化でき得る。
【0037】
一態様では、スプルブッシュ100の下流側領域100Yでは、断面視における冷却媒体流路20のピッチが、スプルブッシュ100の下流側末端面101に向かうにつれて漸次小さくなっていてよい(
図9参照)。
【0038】
原料樹脂流路10はスプルブッシュ100の下流側末端101に向かうにつれて幅寸法が漸次大きくなるように構成されているところ、当該幅寸法が大きくなるにつれて、冷却媒体流路20の表面積が大きくなり得る。そのため、それに起因して冷却媒体流路20に流す冷却媒体の冷却熱を溶融樹脂原料に好適に伝えることができにくくなり得る。特に、この事はスプルブッシュ100の下流側末端面101、すなわち原料樹脂流路10の下流側末端10bに向かうにつれ顕著となり得る。
【0039】
そこで、本態様では、スプルブッシュ100の下流側領域100Yでは断面視における冷却媒体流路20のピッチが、スプルブッシュ100の下流側末端面101に向かうにつれて漸次小さくなるよう構成されている。かかる構成を採ることにより、スプルブッシュ100の下流側末端面101の近傍において、断面視にて冷却媒体流路20が“密”に配置されることとなる。これにより、冷却媒体の冷却熱を、原料樹脂流路10の下流側末端10bおよび下流側末端10bの近傍に集中的に伝えることができ得る。これにより、下流側末端10bおよび下流側末端10bの近傍内部に位置する溶融樹脂原料に対して冷却熱を効果的に伝えることができ得る。
【0040】
一態様では、スプルブッシュ100の下流側領域100Yにおいて、原料樹脂流路10と冷却媒体流路20との間の離隔距離Sが原料樹脂流路10の長手方向のいずれにおいても略一定となっており、かつスプルブッシュ100の下流側領域100Yでは断面視における冷却媒体流路20のピッチが、スプルブッシュ100の下流側末端面101に向かうにつれて漸次小さくなっていてよい(
図10参照)。
【0041】
本態様は、上述の「下流側領域100Yにて原料樹脂流路10と冷却媒体流路20との間の離隔距離Sの略一定性」に関する特徴と、「スプルブッシュ100の下流側末端面101に向かうにつれての冷却媒体流路20のピッチの漸次低減」に関する特徴とを組み合わせたものである。かかる組合せにより、本態様は、下記の第1の効果と第2の効果の両方が奏される点で有利である。第1に、「下流側領域100Yにて原料樹脂流路10と冷却媒体流路20との間の離隔距離Sの略一定性」に関する特徴により、平面視で原料樹脂流路10を取り囲むように設けられた冷却媒体流路20の下流側と原料樹脂流路10の下流側との間の距離をいずれのポイントでも略等しくし得る。これにより、原料樹脂流路10の下流側内のいずれのポイントにも冷却媒体流路20の下流側を流れる冷却媒体の冷却熱を均一に伝えることができ得る。その結果、相対的に冷却固化しにくい原料樹脂流路10の下流側内の溶融樹脂原料を均一に溶融固化でき得る。第2に、「スプルブッシュ100の下流側末端面101に向かうにつれての冷却媒体流路20のピッチの漸次低減」に関する特徴により、スプルブッシュ100の下流側末端面101の近傍において、断面視にて冷却媒体流路20が“密”に配置されることとなる。これにより、冷却媒体の冷却熱を、原料樹脂流路10の下流側末端10bおよび下流側末端10bの近傍に集中的に伝えることができ得る。これにより、下流側末端10bおよび下流側末端10bの近傍内部に位置する溶融樹脂原料に対して冷却熱を効果的に伝えることができ得る。
【0042】
以下、本発明のスプルブッシュの製造方法について説明する。
【0043】
<1.基部の用意>
図2(a)に示すように、上流側始端10Aaから下流側末端10Abまで貫通するように延在する上流原料樹脂流路部10Aを内部に備えた基部100Aを用意する。ここでいう「基部100A」とは、既存のスプルブッシュを実質的に指す。また、上流原料樹脂流路部10Aは、下流側に向かうにつれ幅寸法が漸次大きくなるように構成されていてよい。
【0044】
図2(b)に示すように、上流冷却媒体流路部20Aが基部100Aの内部に形成されるように、基部100Aを切削加工に付す。具体的には、基部100Aを切削加工に付して、上流原料樹脂流路部10Aの周囲に直管形態の上流冷却媒体流路部20Aを内部に形成する。特に限定されるものでないが、上流冷却媒体流路部20Aに流す冷却媒体熱を上流原料樹脂流路部10A中の原料樹脂に均一に供する観点から、当該上流冷却媒体流路部20Aを、上流原料樹脂流路部10Aの延在方向に対して略平行に延在するように位置付けてよい。又、特に限定されるものではないが、冷却媒体を流入および/または流出させるための開口部が基部100Aの上流側の側部に供されてよい。つまり、詳細には、冷却媒体流路20Aは、当該開口部から、原料樹脂流路10Aの周囲に配置される直管部分まで連続する構造を採ってよい。切削加工するための切削工具としては、例えばエンドミルを用いることができ得る。特に限定されるものではないが、エンドミルとしては、例えば超硬素材の二枚刃ボールエンドミル等を挙げることができ得る。以上により、上流原料樹脂流路部10Aおよび下流冷却媒体流路部20Aを内部に備えた基部100Aを用意する。
【0045】
<2.造形部の形成>
本発明の一実施形態では、
図2(c)に示すように基部100A上に位置付けられる造形部100Bを形成する。当該造形部100Bは例えば“粉末焼結積層法”で形成することができ得る。
【0046】
造形部100Bの形成に用いられる“粉末焼結積層法”とは、光ビームを粉末材料に照射することを通じて三次元形状造形物を製造できる方法である。粉末焼結積層法では、以下の工程(i)および(ii)に基づいて粉末層形成と固化層形成とを交互に繰り返し実施して三次元形状造形物を製造する。
(i)粉末層の所定箇所に光ビームを照射し、かかる所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する工程。
(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を形成し、同様に光ビームを照射して更なる固化層を形成する工程。
【0047】
このような製造技術に従えば、複雑な三次元形状造形物を短時間で製造することが可能となる。粉末材料として金属粉末を用いる場合、得られる三次元形状造形物を造形部100Bとして用いることができ得る。
【0048】
粉末焼結積層法で、粉末材料として金属粉末を用いて三次元形状造形物を製造する場合を例にとる。
図3に示すように、まず、スキージング・ブレード23を動かして造形プレート21上に所定厚みの粉末層22を形成する(
図3(a)参照)。次いで、粉末層22の所定箇所に光ビームLを照射して粉末層22から固化層24を形成する(
図3(b)参照)。引き続いて、得られた固化層の上に新たな粉末層を形成して再度光ビームを照射して新たな固化層を形成する。このようにして粉末層形成と固化層形成とを交互に繰り返し実施すると固化層24が積層することになり(
図3(c)参照)、最終的には積層化した固化層24から成る三次元形状造形物を得ることができ得る。
【0049】
特に、本発明の一実施形態では、
図2(c)に示すように、下流原料樹脂流路部10Bおよび当該下流原料樹脂流路部10Bの周囲に下流冷却媒体流路部がそれぞれ内部に形成されるように、造形部100Bを粉末焼結積層法で形成する。なお、最終的に得られるスプルブッシュ100内部の原料樹脂流路10はその幅寸法が上流側から下流側へと向かうにつれ漸次大きくなるように構成され得る(
図2(d)参照)。この場合、最終的に得られるスプルブッシュ100内部の原料樹脂流路10はその幅寸法が上流側から下流側へと向かうにつれ漸次大きくなるように構成され得るため、それに起因して、下流側内の溶融樹脂原料は冷却固化しにくくなり得る。そのため、最終的に得られるスプルブッシュ100の原料樹脂流路10の下流側、すなわち下流原料樹脂流路部10B内の溶融樹脂原料を好適に冷却固化でき得るようにする必要がある。
【0050】
そこで、本発明の一実施形態では、溶融樹脂原料が相対的に冷却固化しにくい部分であり得る原料樹脂流路10の下流側、すなわち下流原料樹脂流路部10Bを取り囲むように下流冷却媒体流路部20Bを設ける。特に限定されるものではないが、螺旋構造を有する下流冷却媒体流路部20Bを設けてよい。ここでいう「下流冷却媒体流路部20B」とは、本発明のスプルブッシュ100の高さの2分の1未満の寸法を有するものを指す。つまり、スプルブッシュ100の高さ寸法の2分の1未満の寸法(長手寸法)を有するように造形部100Bを基部100A上に設けてよい(
図1、
図2(c)および
図2(d)参照)。
【0051】
この事は、スプルブッシュ100内部の原料樹脂流路10の幅寸法が上流側から下流側へと向かうにつれ漸次大きくなるように構成されており、それに起因して原料樹脂流路10内の溶融樹脂原料が下流側に向かうにつれ冷却固化しにくいことを考慮したものである。下流原料樹脂流路部10Bを取り囲むように下流冷却媒体流路部20Bを設けると、下流冷却媒体流路部20Bを流れる冷却媒体の冷却熱を、平面視においていずれの方向からも下流原料樹脂流路部10B内の溶融樹脂原料に対して供することができ得る。そのため、これに起因して、下流冷却媒体流路部20Bを流れる冷却媒体の冷却熱を、下流原料樹脂流路部10B内の相対的に冷却固化しにくい溶融樹脂原料に好適に伝えることができ得る。これにより、下流原料樹脂流路部10B内の溶融樹脂原料を好適に冷却固化でき得る。従って、これに起因して溶融樹脂原料の射出開始から成形品の取出しまでに要する時間を減じることができ、その結果として成形サイクルを短くすることができる。
【0052】
また、上述の下流原料樹脂流路部10B、および当該下流原料樹脂流路部10Bを取り囲むように設けられる下流冷却媒体流路部20Bを形成するために、以下の態様を採り得る。まず、固化層を形成する際に光ビームが部分的に照射されない非照射部を形成する。具体的には、粉末焼結積層法で固化層を形成する際、下流原料樹脂流路部10Bおよび当該下流原料樹脂流路部10Bを取り囲むように設けられる下流冷却媒体流路部20Bとなる所定領域には光ビームを照射しないことで非照射部を形成する。非照射部を形成した後、かかる非照射部に存在し得る粉末を最終的に除去する。これにより、造形部100Bの内部に下流原料樹脂流路部10Bおよび当該下流原料樹脂流路部10Bを取り囲むように設けられる下流冷却媒体流路部20Bが形成され得る。
【0053】
<3.基部上への造形部の位置付け>
本発明の一実施形態では、基部100A上に造形部100Bを位置付けることで、最終的にスプルブッシュ100を得ることができ得る。具体的には、基部100Aの上流原料樹脂流路部10Aと造形部100Bの下流原料樹脂流路部10Bとが相互に連結され、および基部100Aの上流冷却媒体流路部20Aと、下流原料樹脂流路部10Bを取り囲むように設けられる下流冷却媒体流路部20Bとが相互に連結されるように基部100A上に造形部100Bを位置付けることで、最終的にスプルブッシュ100を得ることができ得る。
【0054】
<4.切削加工の実施>
最後に、
図2(d)に示すように、基部100A上に造形部100Bを位置付けることで得られる本発明のスプルブッシュ100の表面、特に造形部100Bの設置領域の表面を切削加工に付すことがよい。
【0055】
粉末焼結積層法で得られる造形部100Bは、比較的粗い表面を有している。例えば、造形部100Bは数百μmRz程度の表面粗さの表面を有している。かかる表面粗さは、造形部100Bを成す固化層の表面に粉末が付着することに起因している。固化層形成の際には光ビームのエネルギーが熱に変換されることによって光ビームが照射される粉末層の所定箇所の粉末が焼結又は溶融固化する。この際、かかる所定箇所の周辺の粉末温度も上昇し得るため、当該周辺の粉末が固化層の表面に付着してしまう。このように付着粉末に起因して造形部100B(三次元形状造形物)に表面粗さがもたらされることになる。従って、基部100A上に造形部100Bを位置付けることで得られる本発明のスプルブッシュ100の表面、特に造形部100Bの設置領域の表面を切削加工に付すことがよい(
図6参照)。
【0056】
なお、本発明の製造方法は、以下の態様を採ってよい。
【0057】
一態様では、造形部100Bの形成を基部100A上にて実施して、基部100A上に造形部100Bを位置付けてよい。
【0058】
具体的には、
図4に示すように、造形プレート21上に上流原料樹脂流路部10Aおよび上流冷却媒体流路部20Aを内部に備えた基部100Aを固定する。基部100Aを固定した後、固定した基部100A上にて、下流原料樹脂流路部および当該下流原料樹脂流路部を取り囲むように設けられる下流冷却媒体流路部が内部に形成されるように粉末焼結積層法で造形部100Bを形成し得る。これにより、本発明のスプルブッシュ100が形成され得る。この時、基部100Aの上流原料樹脂流路部10Aと造形部100Bの下流原料樹脂流路部とが相互に連結され、および基部100Aの上流冷却媒体流路部20Aと造形部100Bの下流冷却媒体流路部とが相互に連結されるように基部100A上にて造形部100Bを形成することがよい。
【0059】
造形部100Bの形成を基部100A上にて実施する場合、基部100A上に位置する粉末層の所定箇所に光ビームLを照射することで固化層(造形部100Bの構成要素)が形成される。この場合、光ビームLの照射により、基部100A上にて金属粉末が溶融固化するため、溶融固化した金属粉末から得られる固化層と基部100Aとの接続強度が向上され得る。なお、説明の重複を避けるため、造形部100Bの下流原料樹脂流路部および当該下流原料樹脂流路部を取り囲むように設けられる下流冷却媒体流路部の粉末焼結積層法での形成方法は本段落では記載しない。
【0060】
一態様では、基部100A上での造形部の形成に先立って、基部100Aのうち造形部の形成が実施される面101Aを粗面加工に付してよい。
【0061】
特に限定されるものではないが、例えば、
図5に示すように、造形プレート21上に上流原料樹脂流路部10Aおよび上流冷却媒体流路部20Aを内部に備えた基部100Aを固定する。基部100Aを固定した後、固定した基部100A上に造形部を形成するに先立って、造形部が設けられる基部100Aの面101Aを、切削工具4を用いて切削することで粗面加工に付してよい。基部100Aの面101Aとしては、例えば基部100Aの天面であってよい。具体的には、切削工具4を水平方向に動かして切削することで造形部が設けられる基部100Aの面101Aを粗面加工に付してよい。切削工具4としては、例えばエンドミルを用いることができ得る。特に限定されるものではないが、エンドミルとしては、例えば超硬素材の二枚刃ボールエンドミル等を挙げることができ得る。これに限定されず、例えば、造形部が設けられる基部100Aの面101Aをブラスト処理、レーザー処理等して、粗面加工に付してよい。粗面加工に付すと、当該面101Aの粗さが大きくなり得るため、これに起因して造形部が設けられる基部100Aの面101Aの表面積を粗面加工前と比べて大きくし得る。そのため、基部100A上に造形部を形成するために基部100A上に固化層を形成する段階において、当該固化層と造形部が設けられる基部100Aの面101Aとの接触領域を相対的に大きくし得る。また、造形部が設けられる基部100Aの面101Aの粗さが大きくなり得るため、造形部が設けられる基部100Aの面101A上に形成される固化層が、基部100Aの面101Aに嵌合するように形成され得る。これにより、全体として基部100Aと造形部との接続強度がより向上され得る。
【0062】
一態様では、基部100A上以外の場所で造形部100Bを形成し、形成した造形部100Bを基部100A上に設置してよい(
図1参照)。
【0063】
具体的には、下流原料樹脂流路部10Bおよび当該下流原料樹脂流路部10Bを取り囲むように設けられる下流冷却媒体流路部20Bを内部に備えた造形部100Bを、基部100A上以外の場所で粉末焼結積層法で予め形成しておく。粉末焼結積層法で造形部100Bを形成した後、当該造形部100Bと基部100Aとを相互に接続させる(
図1参照)。具体的には、形成した造形部100Bが上流原料樹脂流路部10Aおよび上流冷却媒体流路部20Aを内部に備えた基部100A上に位置付けられるように、当該造形部100Bと基部100Aとを相互に接続させ得る。なお、基部100A上には、形成した造形部100Bをロウ付け等により設置固定することが好ましい。これにより、本発明のスプルブッシュ100が形成され得る。基部100Aについては、切削加工を施して上流原料樹脂流路部10Aの周囲に直管形態の上流冷却媒体流路部20Aを内部に形成する必要がある。これにつき、本態様では、造形部100Bを独立して形成することから、直管形態の上流冷却媒体流路部20Aの形成と、造形部100Bとの形成を同時併行で行うことができ得る。かかる同時併行の形成により、全体として本発明のスプルブッシュ100の製造時間を短縮することが可能となり得る。
【0064】
一態様では、基部上に造形部を設けるに先立って、基部を切削加工に付して基部の高さ寸法を減じてよい。
【0065】
上述のように本発明のスプルブッシュは、基部と基部上に造形部を位置付けることで形成され得る。基部は既存のスプルブッシュを実質的に指すため、基部それ自体に別のパーツ(造形部)を敢えて設けなくとも、基部を射出成形用部品として用いることができ得る。そのため、基部を特に加工することなく、基部上に造形部を位置付けると、全体として最終的に得られる本発明のスプルブッシュの寸法が所望のものと比べて大きくなり得る。そこで、基部として用いる既存のスプルブッシュを切削加工に付して、切削加工前と比べてその寸法が減じられるように調節することがよい。具体的には、基部、すなわち既存のスプルブッシュは概してフランジ部と当該フランジ部上に設けられた延在部を備えているところ、当該延在部の長手寸法が小さくなるように基部を切削加工に付すことで、基部の寸法を小さくしてよい。基部の寸法をどの程度小さくするかについては、最終的に得られる本発明のスプルブッシュのサイズを考慮の上決定することがよい。これにより、寸法が調節された基部上に造形部を位置付けると、全体として最終的に得られる本発明のスプルブッシュの寸法を所望の寸法にすることができ得る。
【0066】
以上、本発明の一実施形態に係るスプルブッシュおよびその製造方法について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく、特許請求の範囲に規定される発明の範囲から逸脱することなく種々の変更が当業者によってなされると理解されよう。
【0067】
なお、上述のような本発明の一実施形態は、次の好適な態様を包含している。
第1態様:
スプルブッシュの製造方法であって、
原料樹脂流路および冷却媒体流路を備えた基部上に対して造形部を設けて前記スプルブッシュを製造しており、
前記造形部には、前記スプルブッシュの原料樹脂流路の下流側領域に相当する下流原料樹脂流路部を設けると共に、該下流原料樹脂流路部の周囲に位置し、該スプルブッシュの冷却媒体流路の下流側領域に相当する下流冷却媒体流路部を設け、および
前記下流原料樹脂流路部を取り囲むように前記下流冷却媒体流路部を設ける、スプルブッシュの製造方法。
第2態様:
上記第1態様において、前記スプルブッシュの高さ寸法の2分の1未満の寸法を有するように前記造形部を前記基部上に設ける、スプルブッシュの製造方法。
第3態様:
上記第1態様又は第2態様において、前記造形部の形成を前記基部上で実施することによって前記基部上に前記造形部を設ける、スプルブッシュの製造方法。
第4態様:
上記第3態様において、前記造形部の形成に先立って、前記造形部が設けられる前記基部の面を粗面加工に付す、スプルブッシュの製造方法。
第5態様:
上記第1態様又は第2態様において、前記基部上以外の場所で前記造形部を形成し、該形成した該造形部を該基部上に設置する、スプルブッシュの製造方法。
第6態様:
上記第1態様〜第5態様のいずれかにおいて、前記基部上に前記造形部を設けるに先立って、前記基部を切削加工に付して該基部の高さ寸法を減じる、スプルブッシュの製造方法。
第7態様:
上記第1態様〜第6態様のいずれかにおいて、粉末焼結積層法で前記造形部を形成する、スプルブッシュの製造方法。
第8態様:
原料樹脂流路および該原料樹脂流路の周囲に位置する冷却媒体流路を備えたスプルブッシュであって、
前記スプルブッシュが、基部と該基部上に設けられた造形部とから構成されており、
前記基部は、原料樹脂流路の上流側領域に相当する上流原料樹脂流路部を有すると共に、該上流原料樹脂流路部の周囲に位置し、前記冷却媒体流路の上流側領域に相当する上流冷却媒体流路部を有しており、
前記造形部は、前記原料樹脂流路の下流側領域に相当する下流原料樹脂流路部を有すると共に、該下流原料樹脂流路部の周囲に位置し、前記冷却媒体流路の下流側領域に相当する下流冷却媒体流路部を有しており、および
前記造形部の前記下流冷却媒体流路部は、前記下流原料樹脂流路部を取り囲むように設けられている、スプルブッシュ。
第9態様:
上記第8態様において、前記スプルブッシュの前記下流側領域において、前記原料樹脂流路と前記冷却媒体流路との間の離隔距離が前記原料樹脂流路の長手方向のいずれにおいても略一定となっている、スプルブッシュ。
第10態様:
上記第8態様又は第9態様において、前記造形部は、前記スプルブッシュの高さ寸法の2分の1未満の寸法を有するように構成されている、スプルブッシュ。
原料樹脂流路内の溶融樹脂原料を全体として好適に冷却可能なスプルブッシュの製造方法を提供するために、本発明の一実施形態では、スプルブッシュの製造方法であって、原料樹脂流路および冷却媒体流路を備えた基部上に対して造形部を設けてスプルブッシュを製造しており、造形部には、スプルブッシュの原料樹脂流路の下流側領域に相当する下流原料樹脂流路部を設けると共に、下流原料樹脂流路部の周囲に位置し、スプルブッシュの冷却媒体流路の下流側領域に相当する下流冷却媒体流路部を設け、および下流原料樹脂流路部を取り囲むように下流冷却媒体流路部を設ける、スプルブッシュの製造方法が提供される。