(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御器は、さらに、前記所定の平均算出期間よりも短い期間である第二平均算出期間における第二の平均値を順次算出し、前記所定の平均算出期間における前記第二の平均値の最大値に基づいてボイラ水の水質を判定することを特徴とする請求項1又は2記載の水質モニタ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る水質モニタについて説明する。
図1は、本実施形態に係る水質モニタ10の構成を一部概略的に示す図である。なお、
図1では、水質センサ20の一部を断面図で示している。
図2は、本実施形態に係る水質モニタ10のボイラ80への設置状況を概略的に示す図である。
【0011】
水質モニタ10は、ボイラ80に設置されてボイラ水の水質判定を行うための装置であり、ボイラ水の水質に応じた水質信号を生成する水質センサ20と、この出力信号に基づいてボイラ水の水質を判定する制御器40とを備えている。
【0012】
水質センサ20は、ガルバニック腐食(異種金属接触腐食)を利用した腐食センサであり、ボイラ水の溶存酸素濃度、pH及び有害イオン濃度に応じた水質信号を出力する。ボイラ水の溶存酸素濃度、pH及び有害イオン濃度は、缶体81内のボイラ水の腐食性と相関が高く、水質モニタ10は、水質センサ20の水質信号に基づいてボイラ水の水質を判定することで、ボイラ水の腐食性を評価することができる。
【0013】
図1に示すように、水質センサ20は、電極保持器21と、第一電極23と、第二電極25と、センサケーブル30と、アンプ33とを備えている。電極保持器21は、第一電極23と第二電極25とを所定の隙間を開けて支持、固定するための保持器である。
【0014】
第一電極23は、鉄(SS:一般構造用圧延鋼材)製の電極であり、中空の略円筒型形状をしている。第二電極25は、ステンレス(SUS)製の電極であり、細い円柱形状をしている。第二電極25は、第一電極23の中空部分に所定の隙間を開けて同心で並行に設置され、止めねじによって、電極保持器21に固定されている。
【0015】
センサケーブル30は、一端が第一電極23と第二電極25に接続され、他端が制御器40に接続されている。センサケーブル30には、アンプ33が設置されており、センサケーブル30を流れる水質信号は、アンプ33により増幅されて制御器40へと送られる。
【0016】
図2に示すように、缶体81の下部ヘッダー82の側面には、水質センサ20を固定、設置するためのセンサ用ソケット83が設置されている。水質センサ20の本体部分は、第一電極23及び第二電極25が缶体81内に突出するようにセンサ用ソケット83に固定される。
【0017】
センサ用ソケット83は、下部ヘッダー82の側面であって、バーナ側の水管の近くに設置されている。下部ヘッダー82のバーナ側の水管の近傍は、缶体81内でも腐食の進行しやすい部分であるため、その近傍に水質センサ20を設置すれば、缶体81内のボイラ水の腐食性を精度良く検知することができる。
【0018】
このようにしてボイラ80に設置された水質センサ20においては、ボイラ水の溶存酸素濃度、pH及び有害イオン濃度に応じて、異種電極間にガルバニック電流(水質信号)が流れる。
【0019】
制御器40は、この水質信号に基づいてボイラ水の水質の良否を判定し、缶体81内のボイラ水の腐食性を評価する。制御器40は、ボイラ80の制御器と一体に構成しても良い。
図3は、本実施形態に係る制御器40による水質判定処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0020】
制御器40は、水質信号を1秒毎にサンプリングしながら、1日毎に水質信号の平均値を算出し、この平均値の変化量及び大きさ(絶対値)に基づいて、水質の異常判定を行うことを特徴としている。
【0021】
具体的には、まずS1において、制御器40は、サンプリング周期1秒で水質センサ20の出力信号である水質信号を取得する。次に、S2では、水質信号の取得を始めてから1日(平均値算出期間)が経過したか否かを判定し、1日経過すると、S3へ進み、水質信号の1日の平均値を算出する。
【0022】
S4では、この平均値の変化量に基づいて、水質の良否を判定する。すなわち、制御器40は、前回(前日)の平均値と今回算出した平均値との差である変化量を求め、算出した変化量が所定の変化量基準値(100μA)以上であった場合には、S6に進んで水質が異常であると判定し、そうでない場合には、S5に進み、次の判定を行う。
【0023】
S5では、上記平均値の大きさに基づいて、水質の良否を判定する。すなわち、制御器40は、今回算出した平均値が所定の絶対値基準値(300μA)以上であった場合には、S6に進んで水質が異常であると判定し、そうでない場合には、水質が異常ではないとしてS1に戻り、引き続き水質信号のサンプリングを行う。
【0024】
なお、S6において、水質が異常であると判定された場合には、ボイラ水において、溶存酸素濃度が高い状態、pHが悪化した状態、有害イオン濃度が高い状態等、腐食性の高い状態が発生しており、将来的に缶体パンクなどが発生する可能性が高いと考えられる。よって、ボイラ80の管理者は、水質悪化の原因を調べ、使用する薬品を変更するなどの対策を施す。
【0025】
なお、本実施形態では、平均算出期間が1日であるため、水質の悪化の原因がボイラ80の修理や部品交換等である場合には、管理者がその日に行った作業をふり返ることで、容易に原因を特定できる場合もある。
【0026】
このように、制御器40は、所定のサンプリング周期で取得した水質信号の所定の平均算出期間(1日)での平均値を算出し、この平均値に基づいてボイラ水の水質を判定しているので、短時間の給水や濃縮ブロー等のイベントによる水質信号の一時的に急激な変化を不必要に検知することなく、ボイラ水の水質の判定を良好に行うことができる。
【0027】
また、算出した平均値の変化量に基づいて水質の判定を行うことで、水質センサ20の出力が低下してしまった場合などであっても、ボイラ水質の急な悪化を確実に検知することができる。例えば、ボイラ導入初期には、水質センサ20の鉄の第一電極23の表面に酸化皮膜が形成され、電極表面での化学反応が抑制されるケースが発生するが、本実施形態であれば、このようなケースでも良好な水質判定を行うことができる。
【0028】
一方、変化量による水質判定の場合には、ボイラ80への給水源(地下水、工業用水、水道水等)の水質がゆっくりと悪化している場合など、水質センサ20の出力信号が徐々に上昇する場合には水質の悪化を検知することができない。しかし、本実施形態のように、算出した平均値の大きさにも基づいて水質判定を行うことで、徐々に水質が悪化する場合であっても良好な水質判定を行うことが可能である。
【0029】
もちろん、上記水質判定処理方法は適宜変更可能であり、例えば、上述したS4の変化量による判定処理と、S5の絶対値による判定処理の順序は変更しても良いし、同時に行うようにしても良い。
【0030】
また、上記S4では、今回の平均値と前日の平均値の差を変化量として水質判定を行っているが、今回の平均値と過去数日間の平均値との差を変化量として判定を行っても良い。
【0031】
また、水質判定処理で用いる各パラメータの値も適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、サンプリング周期を1秒としているが、サンプリング周期は、1秒以下であっても良いし、1秒以上(例えば、5秒や10秒)であっても良い。但し、ボイラ80の給水や濃縮ブロー等のイベントによる水質の変化を検知可能としておくため、サンプリング周期は、給水が実施される周期や濃縮ブローが実施される周期よりも短い周期であることが望ましい。
【0032】
また、制御器40が平均値を算出する期間(平均算出期間)も適宜変更可能であり、例えば、1時間、5時間、半日、2日等であっても良い。但し、平均算出期間が短くなり過ぎると、ボイラ80の給水や濃縮ブローによる水質の一時的な急変化を検知してしまい、平均値の一時的に大きくなりすぎてしまうおそれがある。
【0033】
したがって、平均算出期間は、給水(例えば、周期が5分程度)や濃縮ブロー(例えば、周期が20〜30分程度)がそれぞれ複数回実施されるような長さの期間であることが望ましい。一方、平均算出期間が長すぎると、平均値の変化量が小さくなりすぎてしまうおそれがあるため、水質の悪化を検知できる程度の長さにする必要がある。
【0034】
また、S4での水質の判定基準である変化量基準値や、S5での水質の判定基準である絶対値基準値もボイラ80の設置環境等に応じて、適宜変更可能である。
【0035】
続いて、
図4を参照しながら、本実施形態による水質判定処理の例について説明する。
図4は、本実施形態に係る水質センサ20の水質信号の時間経過を示す図であり、縦軸が水質信号[μA]、横軸が時間を示している。
【0036】
図4では、試運転後のボイラ80の稼働開始時刻をt
0とし、その後、変化量判定による水質異常検知(t
3)、絶対値判定による水質異常検知(t
4)、全濃縮ブロー及びセンサ洗浄(t
5)、濃縮ブロー(t
7)のイベントが発生した状態をモデルとして示している。
【0037】
まず、t
0においては、試運転後のボイラ導入初期であるため、ボイラ水の水質が安定しておらず、水質信号が大きな出力値を示す可能性が高い。よって、本実施形態では、制御器40は、水質が安定するまで所定の期間X
6(t
0〜t
1)、水質モニタ10による水質判定を休止している。
【0038】
本実施形態では、判定休止期間X
6は、高燃焼換算で50時間である。このように、ボイラ水の水質が安定しない期間を判定休止期間とすることで、ボイラ水の腐食性と関連性の低い水質変化を不要に検知してしまうのを防止することができる。
【0039】
また、t
3では、制御器40は、上述したS4の変化量判定(矢印A)により、水質異常であると判定する。すなわち、t
3において、制御器40は、水質信号の平均算出期間X
3(1日)の平均値を算出後、前日のt
2において算出した平均算出期間X
2(1日)の平均値との差である変化量X
1(100μA)を求める。本実施形態では、変化量基準値が100μAであるため、制御器40は、t
3において水質異常であると判定する。
【0040】
また、t
4では、制御器40は、上述したS5の絶対値判定(矢印B)により、水質異常であると判定する。すなわち、t
4において、制御器40は、水質信号の平均算出期間X
5(1日)の平均値X
5(300μA)を算出する。本実施形態では、絶対値基準値が300μAであるため、制御器40は、t
4において水質異常であると判定する。
【0041】
また、t
5で全濃縮ブロー及びセンサ洗浄が行われると、缶体81内のボイラ水が大きく入れ替わり、ボイラ水の水質が安定していない。よって、上述したt
0〜t
1と同様に、水質モニタ10による水質判定を休止している。不要な水質異常検知を防止するための判定休止期間X
7(t
5〜t
6)は、高燃焼換算で20時間である。
【0042】
また、t
7で濃縮ブローが行われると、同じくボイラ水の入れ替えにより水質が安定しないため、制御器40は、同様に水質モニタ10による水質判定を休止している。不要な水質異常検知を防止するための判定休止期間X
8(t
7〜t
8)は、高燃焼換算で1時間である。
【0043】
以上、本実施形態について説明したが、本実施形態によれば、ボイラ80の給水や濃縮ブロー等によって生じる一時的な水質の変化に影響されず、ボイラ水の水質判定を良好に行うことができる。
【0044】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。本変形例では、上記実施形態のボイラ水の水質判定において、さらに、水質センサ20の水質信号の60秒毎の平均値である第二平均値に基づいて水質悪化の判定を行うことを特徴としている。
【0045】
具体的には、制御器40は、上記平均算出期間(1日)よりも短い第二平均算出期間(60秒)で第二の平均値を順次算出し、この第二の平均値の上記平均算出期間(1日)における最大値が、最大値基準値以上であった場合には水質が異常であると判定する。
【0046】
ここで、最大値基準値は所定の値であり、上記絶対値基準値(300μA)と同じであっても良いし、異なる値であっても良い。但し、ボイラ80の給水や濃縮ブローによる水質変化については、水質悪化と判定しないような値にしておくのが望ましい。
【0047】
このように、より短い第二平均算出期間(60秒)での第二の平均値に基づいて、水質判定を行うことで、1日単位の平均値では影響が消されてしまうような一時的な水質信号の変化を検知できるようになる。
【0048】
例えば、多缶設置のボイラシステムにおいては、低負荷運転のボイラに凝縮水が持ち込まれ、一時的に低負荷運転ボイラのボイラ水の腐食性が高まるケースが起こりうるが、水質信号の1日での平均値では、このような水質の変化を検知することができない。
【0049】
これに対して、本変形例によれば、低負荷運転ボイラへの凝縮水の流れ込みによる一時的な水質悪化を検知することができ、何らかの対策を施すことで、ボイラ水の腐食性を改善することができる。
【0050】
もちろん、第二平均算出期間は適宜変更可能であり、上記平均算出期間(1日)よりも短い期間であれば、上記S5の絶対値判定では検知できない水質変化を検知することができる。なお、ボイラ水の腐食性と相関の無い、ボイラ80の給水(10秒程度)による水質信号の一時的な急上昇を検知しないようにするためには、第二平均算出期間を30秒以上とするのが望ましい。
【0051】
以上、変形例を含めて本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、水質センサの電極の材料は適宜変更することができる。但し、ガルバニック腐食を利用した腐食センサの場合には、イオン化傾向の異なる異種金属からなる電極を組み合わせる必要がある。
【0052】
また、上記実施形態では、ガルバニック電流を水質信号とするガルバニック腐食を利用した腐食センサを用いているが、ボイラ水の水質に応じた水質信号を出力する水質センサであれば、適宜、他のセンサを用いることができる。例えば、分極抵抗方式のセンサを用いても良い。