特許第6249276号(P6249276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249276
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】燃料ノズル部材の燃料噴孔形成方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/06 20060101AFI20171211BHJP
   F02M 61/16 20060101ALI20171211BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20171211BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   F02M51/06 U
   F02M61/16 P
   F02M51/06 L
   B23K26/00 G
   B26F3/00 S
   B26F3/00 R
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-206407(P2013-206407)
(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2015-68335(P2015-68335A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 径裕
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−140036(JP,A)
【文献】 特開2004−066357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04
B26F 1/00− 3/16
B23P 5/00−17/06;23/00−25/00
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク支持台(11)に保持される燃料ノズル部材(14)に向けてトーチ(12)から水柱(W)と、この水柱(W)に誘導されるレーザビーム(R)とを射出して、前記燃料ノズル部材(14)に燃料噴孔(20)を形成する、燃料ノズル部材の燃料噴孔形成方法であって、
前記ワーク支持台(11)及びトーチ(12)の相対位置を固定して前記トーチ(12)からの水柱(W)及びレーザビーム(R)により前記燃料ノズル部材(14)に下孔(19)を形成する第1の工程と、前記トーチ(12)から水柱(W)及びレーザビーム(R)の射出を継続させながら前記ワーク支持台(11)及びトーチ(12)を相対移動することで前記下孔(19)を所望直径の燃料噴孔(20)に拡張させる第2の工程と、前記トーチ(12)からの前記レーザビーム(R)の射出のみを停止すると共に、前記燃料噴孔(20)の、前記トーチ(12)とは反対側の開口縁に向け且つその周縁をなぞるように前記トーチ(12)から水柱(W)を噴出して、前記開口縁に発生したバリ(21)を除去する第3の工程とを含み、前記第3の工程を前記第2の工程の直後に遅滞なく行うことを特徴とする、燃料ノズル部材の燃料噴孔形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の燃料ノズル部材の燃料噴孔形成方法において、
前記下孔(19)及び燃料噴孔(20)の形成に際して、前記トーチ(12)からの水柱(W)またはレーザビーム(R)に対して、前記燃料ノズル部材(14)の、燃料噴孔(20)の燃料出口側の面を対向させることを特徴とする、燃料ノズル部材の燃料噴孔形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク支持台に保持される燃料ノズル部材に向けてトーチから水柱と、この水柱に誘導されるレーザビームとを射出して、前記燃料ノズル部材に燃料噴孔を形成する、燃料ノズル部材の燃料噴孔形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物に向けてトーチから水柱と、この水柱に誘導されるレーザビームとを射出して被加工物に穿孔する穿孔方法は、特許文献1に開示されるように、既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3680864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記穿孔方法を利用して、燃料噴射弁の燃料ノズル部材に、所望直径を有すると共にバリの無い燃料噴孔を形成することを可能にする、燃料ノズル部材の燃料噴孔形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、ワーク支持台に保持される燃料ノズル部材に向けてトーチから水柱と、この水柱に誘導されるレーザビームとを射出して、前記燃料ノズル部材に燃料噴孔を形成する、燃料ノズル部材の燃料噴孔形成方法であって、前記ワーク支持台及びトーチの相対位置を固定して前記トーチからの水柱及びレーザビームにより前記燃料ノズル部材に下孔を形成する第1の工程と、前記トーチから水柱及びレーザビームの射出を継続させながら前記ワーク支持台及びトーチを相対移動することで、前記下孔を所望直径の燃料噴孔に拡張させる第2の工程と、前記トーチからの前記レーザビームの射出のみを停止すると共に、前記燃料噴孔の、前記トーチとは反対側の開口縁に向け且つその周縁をなぞるように前記トーチから水柱を噴出して、前記開口縁に発生したバリを除去する第3工程とを含み、前記第3の工程を前記第2の工程の直後に遅滞なく行うことを第1の特徴とする。
【0006】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記下孔及び燃料噴孔の形成に際して、前記トーチからの水柱またはレーザビームに対して、前記燃料ノズル部材の、燃料噴孔の燃料出口側の面を対向させることを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1の特徴によれば、トーチより射出する水柱及びレーザビームにより燃料ノズル部材の所望箇所に所望直径の燃料噴孔を形成することができる。しかも燃料噴孔の開口縁に発生するバリは、トーチからのレーザビームの射出を停止した状態でトーチからの水柱のみの衝撃圧力により除去するので、燃料噴孔の形成工程後、直ちに水柱によるバリ取り工程に移ることができ、燃料ノズル部材のワーク支持台からの移し替えを行わず、能率良く、バリの無い良好な燃料噴孔を燃料ノズル部材に形成することができる。
【0008】
本発明の第2の特徴によれば、水柱及びレーザビームによって、燃料ノズル部材の燃料噴孔の燃料出口側開口縁部は漏斗状に形成されるため、前記燃料ノズル部材を組み込んだ燃料噴射弁では、前記燃料噴孔から燃料が噴射されるとき、その燃料の流れが前記燃料噴孔の漏斗状の燃料出口で渦流を起こさず、良好な燃料の噴霧フォームを形成し、燃費の改善に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の燃料ノズル部材の燃料噴孔形成方法を実施するための装置の概要斜視図。
図2】燃料ノズル部材に燃料噴孔の下孔を形成する工程説明図。
図3】上記下孔を拡張して燃料噴孔を形成する工程説明図。
図4】上記燃料噴孔のバリを除去する工程説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて以下に説明する。
【0011】
先ず、図1において、本発明の燃料ノズル部材の燃料噴孔形成方法を実施するための装置10は、ワーク支持台11と、それの上方に配設されるトーチ12とを備える。ワーク支持台11の上面には治具13が取り付けられ、この治具13の所定位置に、燃料噴射弁の燃料ノズル部材としてのインジェクタプレート14がクランプ15により保持される。
【0012】
トーチ12には、その下端に開口するノズル孔が設けられており、そのノズル孔より前記インジェクタプレート14に向けて水柱W(図3参照)を射出する高圧水ポンプ16がトーチ12に接続される。またトーチ12にはレーザ発振装置17が接続され、それから発振されたレーザビームRは、前記水柱Wに誘導されて前記インジェクタプレート14に向けて照射されるようになっている。さらにトーチ12には不活性ガス供給装置18が接続され、それから供給されるアルゴンやヘリウム等の不活性ガスGが、前記水柱Wを包囲するようにトーチ12から噴射されるようになっている。
【0013】
ワーク支持台11は、相互に直交するX、Y、Zの三軸に沿って平行移動が可能であると共に、自己の中心軸線AをZ軸に対してαで示すように傾けることが可能であり、且つ自己の中心軸線A周りに回転が可能である。
【0014】
トーチ12も、X、Y、Zの三軸に沿って平行移動が可能であると共に、自己の中心軸線BをZ軸に対してβで示すように傾けることが可能である。
【0015】
ワーク支持台11及びトーチ12の上記の動きは、コンピュータ数値制御により作動するサーボモータ(図示せず)によって制御される。
【0016】
この実施形態の場合、インジェクタプレート14はステンレス鋼板で、その板厚は0.1mmである。また水柱Wを射出するトーチ12のノズル孔の直径は20μm、水柱Wには純水が使用され、その圧力は50Mpaである。
【0017】
次に、この実施形態の作用について説明する。
【0018】
インジェクタプレート14に燃料噴孔20を形成するに当たっては、先ず図2に示すように、治具13の所定位置にインジェクタプレート14をセットする。その際、インジェクタプレート14は、それに形成される燃料噴孔20(図3参照)の燃料出口側の面を、トーチ12に対向するように上向きにする。
【0019】
次に、ワーク支持台11の中心軸線Aとトーチ12の中心軸線Bとを、互いに所定距離e偏心した平行状態に固定して、トーチ12からインジェクタプレート14に向けて水柱W、レーザビームR及び不活性ガスGを射出する。トーチ12から射出されるレーザビームRは水柱Wに誘導されるので、水柱Wのインジェクタプレート14上のターゲットにレーザビームRが照射され、このレーザビームRによりインジェクタプレート14に下孔19を穿つことができる。その際、上記不活性ガスGは、レーザビームRによるインジェクタプレート14の穿孔部の酸化を防ぐことは勿論、水柱Wの飛散を防いでターゲットの安定化に寄与する。
【0020】
而して、下孔19は、ワーク支持台11の中心軸線Aに対して前記距離eだけ偏心することになる。
【0021】
次に、図3に示すように、トーチ12からの水柱W、レーザビームR及び不活性ガスGの射出を継続しがら、ワーク支持台11を、その中心軸線A周りに回転する。すると、トーチ12からの水柱Wのインジェクタプレート14上のターゲットがワーク支持台11の中心軸線A周りに回転することにより、前記下孔19を拡張し、所望直径Dの燃料噴孔20を形成することができる。この燃料噴孔20の直径Dは、下孔19の直径dと、前記偏心距離eの2倍との和となる。即ち、D=d+2eとなる。
【0022】
上記燃料噴孔20の、トーチ12側の開口縁部20aは、水柱WまたはレーザビームRによって、図3に示すように漏斗状に形成される。このため、前記インジェクタプレート14を組み込んだ燃料噴射弁では、前記燃料噴孔20から燃料が噴射されるとき、その燃料の流れが前記燃料噴孔20の漏斗状の燃料出口で渦流を起こさず、良好な燃料の噴霧フォームを形成し、燃費の改善に寄与し得る。
【0023】
また燃料噴孔20の、トーチ12と反対側の開口縁には環状のバリ21が発生する。このバリを除去するため、次に、図4に示すように、トーチ12からのレーザビームRの射出を停止し、水柱W及び不活性ガスGの射出を継続した状態で、トーチ12の中心軸線Bをワーク支持台11の中心軸線Aに対して角度θ傾けて、水柱Wのターゲットを環状のバリ21の一部に設定する。そして、ワーク支持台11をその中心軸線A周りに回転させると、水柱Wの衝撃圧力により環状のバリ21の全てを除去することができる。また上記水柱Wの衝撃圧力によれば、レーザビームRによる穿孔時、インジェクタプレート14に付着したスパッタをも除去することができる。
【0024】
このように本発明によれば、トーチ12より射出する水柱W及びレーザビームRによりインジェクタプレート14の所望箇所に所望直径の燃料噴孔20を形成することができる。しかも燃料噴孔20の開口縁に発生するバリ21は、トーチ12からのレーザビームRの射出を停止した状態でトーチ12からの水柱Wのみの衝撃圧力により除去するので、燃料噴孔20の形成工程後、直ちに水柱Wによるバリ取り工程に移ることができ、インジェクタプレート14の治具13からの移し替えを行わず、能率良く、バリの無い良好な燃料噴孔20をインジェクタプレート14に形成することができる。
【0025】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、燃料噴孔20は、インジェクタプレート14に限らず、カップ型等、種々の形状のノズル部材に形成することができ、また燃料噴孔20の個数も任意である。
【符号の説明】
【0026】
R・・・・・レーザビーム
W・・・・・水柱
11・・・・ワーク支持台
12・・・・トーチ
14・・・・燃料ノズル部材(インジェクタプレート)
19・・・・下孔
20・・・・燃料噴孔
20a・・・燃料噴孔の燃料出口側開口縁
21・・・・バリ
図1
図2
図3
図4