特許第6249285号(P6249285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ケーヒンの特許一覧

<>
  • 特許6249285-電磁弁 図000002
  • 特許6249285-電磁弁 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249285
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20171211BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   F16K31/06 305E
   F16K31/06 305D
   H01F7/16 R
   H01F7/16 P
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-58741(P2014-58741)
(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-183721(P2015-183721A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】及川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】木立 大介
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−030772(JP,U)
【文献】 実開昭64−049777(JP,U)
【文献】 特開平09−004745(JP,A)
【文献】 特開2000−074251(JP,A)
【文献】 特開2013−108534(JP,A)
【文献】 特開2009−085321(JP,A)
【文献】 実開昭59−098175(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に天井壁(5a)を一体に有すると共に他端を開放した有底円筒状の主ヨーク(5)と,この主ヨーク(5)の開放端を閉じる補助ヨーク(6)とでヨーク(4)を構成し,このヨーク(4)内に,ボビン(7)にコイル(8)を巻装してなるコイル組立体(9)を収容し,前記ボビン(7)の中空部(7a)に固定コア(15)を配置すると共に,この固定コア(15)の一端に形成したフランジ(15a)を前記天井壁(5a)及びボビン(7)により挟持し,前記補助ヨーク(6)を貫通する可動コア(17)を前記ボビン(7)の中空部(7a)において前記固定コア(15)に対向配置し,前記可動コア(17)の先端に弁体(25)を付設し,前記ヨーク(4)が固定される制御基体(B)に,前記コイル(8)の非通電時,前記弁体(25)が着座する弁座部材(26)を設け,前記可動コア(17)をコイルばね(20)により前記弁体(25)の弁座部材(26)との着座方向に付勢してなる電磁弁において,
前記天井壁(5a)を有する主ヨーク(5)をプレス製となし,前記固定コア(15)に,その両端面間を連通する中空部(15b)を形成して,この中空部(15b)に,前記天井壁(5a)及び可動コア(17)間に縮設される前記コイルばね(20)を配置し,前記ボビン(7)又はこのボビン(7)を被覆する被覆層(10)の,前記天井壁(5a)に対向する端面に,前記フランジ(15a)を囲繞するシール溝(24)を形成して,このシール溝(24)に,前記天井壁(5a)に密接するシール部材(16)を装着したことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項1記載の電磁弁において,
前記フランジ(15a)及びボビン(7)間に,これらフランジ(15a)及びボビン(7)を軸方向に沿って相互に離反方向に付勢する板ばね(21)を介装したことを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
請求項1記載の電磁弁において,
前記可動コア(17)を中実に形成すると共に,その内端に,前記コイルばね(20)の可動端を支持する短軸(17a)を,またその外端に前記弁体(25)をそれぞれ一体に形成したことを特徴とする電磁弁。
【請求項4】
請求項1又は2記載の電磁弁において,
前記フランジ(15a)を一端に有する固定コア(15)をプレス製としたことを特徴とする電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,一端に天井壁を一体に有すると共に他端を開放した有底円筒状の主ヨークと,この主ヨークの開放端を閉じる補助ヨークとでヨークを構成し,このヨーク内に,ボビンにコイルを巻装してなるコイル組立体を収容し,前記ボビンの中空部に固定コアを配置すると共に,この固定コアの一端に形成したフランジを前記天井壁及びボビンにより挟持し,前記補助ヨークを貫通する可動コアを前記ボビンの中空部において前記固定コアに対向配置し,前記可動コアの先端に弁体を付設し,前記ヨークが固定される制御基体に,前記コイルの非通電時,前記弁体が着座する弁座部材を設け,前記可動コアをコイルばねにより前記弁体の弁座部材との着座方向に付勢してなる電磁弁の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝる電磁弁は,特許文献1に開示されるように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−242916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報記載の電磁弁では,ボビンの中空部の外部との連通を遮断するために,固定コアのフランジとボビンとの間に,固定コアを囲繞するシール部材を介装しているので,そのシール部材は,フランジと軸方向に重なることで,電磁弁の軸方向長さを多少とも長くさせる欠点がある。また可動コアを弁体の閉弁方向に付勢するコイルばねのばね定数は,低い方が可動コアの開弁応答性を高める上で有利であるが,上記公報記載のものでは,コイルばねを固定コア及び可動コア間の狭いスペースに縮設しているので,コイルばねの全長を充分長く採れず,所定のセット荷重を確保しながらばね定数を低く設定することが困難である欠点もある。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,軸方向長さを長くさせることなくシール部材を設置して,ボビンの中空部の外部との連通を遮断することができ,また全長の長いコイルばねの設置を可能にして,所定のセット荷重を確保しながらばね定数を低く設定し得るようにした前記電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために,本発明は,一端に天井壁を一体に有すると共に他端を開放した有底円筒状の主ヨークと,この主ヨークの開放端を閉じる補助ヨークとでヨークを構成し,このヨーク内に,ボビンにコイルを巻装してなるコイル組立体を収容し,前記ボビンの中空部に固定コアを配置すると共に,この固定コアの一端に形成したフランジを前記天井壁及びボビンにより挟持し,前記補助ヨークを貫通する可動コアを前記ボビンの中空部において前記固定コアに対向配置し,前記可動コアの先端に弁体を付設し,前記ヨークが固定される制御基体に,前記コイルの非通電時,前記弁体が着座する弁座部材を設け,前記可動コアをコイルばねにより前記弁体の弁座部材との着座方向に付勢してなる電磁弁において,前記天井壁を有する主ヨークをプレス製となし,前記固定コアに,その両端面間を連通する中空部を形成して,この中空部に,前記天井壁及び可動コア間に縮設される前記コイルばねを配置し,前記ボビン又はこのボビンを被覆する被覆層の,前記天井壁に対向する端面に,前記フランジを囲繞するシール溝を形成して,このシール溝に,前記天井壁に密接するシール部材を装着したことを第1の特徴とする。尚,前記シール部材は,後述する本発明の実施形態中の第2シール部材16に対応する。
【0007】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記フランジ及びボビン間に,これらフランジ及びボビンを軸方向に沿って相互に離反方向に付勢する板ばねを介装したことを第2の特徴とする。
【0008】
さらに本発明は,第1の特徴に加えて,前記可動コアを中実に形成すると共に,その内端に,前記コイルばねの可動端を支持する短軸を,またその外端に前記弁体をそれぞれ一体に形成したことを第3の特徴とする。
【0009】
さらにまた本発明は,第1又は第2の特徴に加えて,前記フランジを一端に有する固定コアをプレス製としたことを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の特徴によれば,ボビンの中空部の外部との連通を遮断するシール部材は,固定コアのフランジを囲繞するシール溝に装着されるので,シール部材は,フランジと周方向で並ぶことになり,電磁弁の軸方向長さを長くすることがなく,電磁弁のコンパクト化に寄与し得る。
【0011】
またプレス製の主ヨークの天井壁の平滑な内面そのものが,フランジが当接する面となり,シール部材が密接する面ともなるので,天井壁の内面に特別な切削加工を施すことなく,フランジが当接する面,並びにシール部材が密接する面を得ることができ,製作が容易になる。
【0012】
さらにコイルばねは,固定コアの中空部を貫通して,天井壁と可動コアとの間に縮設されることで,その全長を固定コアの軸方向長さ以上に長く設定することができる。したがって,コイルばねには,所定のセット荷重を付与しながら,そのばね定数を充分低く設定することが可能となり,可動コアの吸引応答性,即ち弁体の開弁応答性を高めることができる。
【0013】
本発明の第2の特徴によれば,フランジ及びボビン間に,これらフランジ及びボビンを軸方向に沿って相互に離反方向に付勢する板ばねを介装したので,フランジ及びボビン間のガタを排除でき,また組立時など,合成樹脂製のボビンに軸方向の過負荷が加わることを回避して,その破損を防ぐことができる。
【0014】
本発明の第3の特徴によれば,可動コアを中実に形成すると共に,その内端に,コイルばねの可動端を支持する短軸を,またその外端に弁体をそれぞれ一体に形成したので,可動コアに特別な部材を付加することなく,コイルばねの支持,並びに弁体の結合を行うことができ,部品点数の削減を図ることができる。
【0015】
本発明の第4の特徴によれば,フランジ付きの固定コアをプレス製としたので,主ヨークをプレス製としたことゝ相俟って,主ヨークの天井壁の平滑な内面に固定コアの平滑なフランジを当接させて組立精度を高めることができる。しかも固定コアにおいては,プレス加工によりフランジ及び中空部を一挙に形成することができ,製作が更に容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る電磁弁の平面図。
図2図1の2−2線拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0018】
図1及び図2において,油路1を有する制御基体Bに,その油路1を開閉する電磁弁Sのブラケット2がボルト3により締結される。
【0019】
図2に明示するように,電磁弁Sのヨーク4は,一端に天井壁5aを一体に有すると共に他端を開放した有底円筒状の主ヨーク5と,この主ヨーク5の開放端部の内周面に圧入される補助ヨーク6とで構成され,主ヨーク5の下端に前記ブラケット2が一体に形成される。主ヨーク5はプレス製である。
【0020】
ヨーク4内には,ボビン7にコイル8を巻装してなるコイル組立体9が収容され,このコイル組立体9の外周には,合成樹脂製の被覆層10が射出成形時により形成される。その際,カプラ12が,コイル組立体9の一側方に張り出すように被覆層10と一体に成形され,このカプラ12により,コイル8に連なる給電端子11が保持される。前記主ヨーク5には,このカプラ12の頸部が通過する切欠き13が設けられる。補助ヨーク6及びボビン7間には,第1シール部材14が介装される。
【0021】
上記ボビン7の中空部7aに配置される固定コア15の上端には,前記天井壁5aの内面とボビン7の上端面とで挟持されるフランジ15aが一体に形成されており,このフランジ15a及びボビン7間にはウエーブワッシャ等の板ばね21が介装され,これによりフランジ15a及びボビン7間のガタが排除され,また組立時など,合成樹脂製のボビン7に軸方向の過負荷が加わることを回避して,その破損を防ぐことができる。
【0022】
またボビン7又はボビン7を被覆する被覆層10の上端面には,フランジ15aを囲繞する環状のシール溝24が設けられており,このシール溝24に,前記天井壁5aの内面に密接する第2シール部材16が装着される。
【0023】
またボビン7の中空部7aにおいて固定コア15に対向する可動コア17が,補助ヨーク6の透孔18を貫通するように配設され,この可動コア17を保持する非磁性のセットカラー19が透孔18に装着される。このセットカラー19は,その内端(上端)にボビン7及び補助ヨーク6間に配置される取り付けフランジ19aを有し,またその外端(下端)に可動コア17の脱落を防ぐ内向き鍔19bを有している。このセットカラー19は,ヨーク4のブラケット2を制御基体Bに取り付ける前に,可動コア17の透孔18からの離脱を防ぐもので,ブラケット2を制御基体Bに取り付けた後は,可動コア17の往復作動に干渉しないようになっている。
【0024】
固定コア15は,その両端面間を連通する中空部15bを有しており,その中空部15bに,前記天井壁5a及び可動コア17間に縮設されるコイルばね20が収容される。上記のようにフランジ15a及び中空部15bを有する固定コア15は,プレス製である。
【0025】
一方,前記可動コア17は中実に形成され,この可動コア17の吸引面(上端面)には,コイルばね20の可動端を位置決め保持する短軸17aが,またその外端面(下端面)には円錐状の弁体25がそれぞれ一体に形成される。また可動コア17の外周面には,可動コア17の両端面間を連通する複数条の溝28が設けられる。また可動コア17の吸引面には,コイルばね20により保持される非磁性のワッシャ23が配設される。
【0026】
前記制御基体Bの油路1には,前記弁体25が着座する弁座部材26が介装される。而して,弁体25の弁座部材26に対する離座及び着座により油路1は開閉される。
【0027】
補助ヨーク6及び制御基体B間には,セットカラー19を囲繞する第3シール部材27が介装される。
【0028】
次に,この実施形態の作用について説明する。
【0029】
コイル8の非通電時には,コイルばね20のセット荷重により可動コア17が固定コア15から離間して弁体25を弁座部材26に着座させ,油路1を閉じている。コイル8に通電すると,それによって発生する磁束が,固定コア15,主ヨーク5,補助ヨーク6,可動コア17及び固定コア15へと順次流れ,固定コア15及び可動コア17間に発生する磁力により,可動コア17がコイルばね20のセット荷重に抗して固定コア15に吸引され,そして非磁性のワッシャ23を介して吸着され,弁体25が開弁,即ち弁座部材18から離座することにより,油路1が開放される。
【0030】
ところで,ボビン7の中空部7aは,常に油路1の作動油で満たされているが,その中空部7aは,ボビン7と主ヨーク5の天井壁5aとの間に介装される第2シール部材16と,前述の第1シール部材14及び第3シール部材27との協働により,外部との連通を遮断されているので,ボビン7内の作動油が外部に漏洩することを防ぎ,また外部から塵埃がボビン内に侵入することをも防ぐことができる。
【0031】
しかも上記第2シール部材16は,固定コア15のフランジ15aを囲繞するシール溝24に装着されるので,第2シール部材16は,フランジ15aと周方向で並ぶことになり,電磁弁Sの軸方向長さを長くすることがなく,電磁弁Sのコンパクト化に寄与し得る。
【0032】
またプレス製の主ヨーク5の天井壁5aの平滑な内面そのものが,プレス製の固定コア15の平滑なフランジ15aが当接する面となり,第2シール部材16が密接する面ともなるので,天井壁5aの内面やフランジ15aに特別な切削加工を施すことなく,天井壁5a及びフランジ15a相互の平滑な当接面,並びに第2シール部材16が密接する面を得ることができ,組立精度が高まると共に,製作が容易になる。特に,固定コア15においては,プレス加工によりフランジ15a及び中空部15bを一挙に形成することができ,製作が更に容易になる。
【0033】
またコイルばね20は,固定コア15の中空部15bを貫通して,天井壁5aと可動コア17との間に縮設されることで,その全長を固定コア15の軸方向長さ以上に長く設定することができる。したがって,コイルばね20には,所定のセット荷重を付与しながら,そのばね定数を充分低く設定することが可能となる。コイルばね20のばね定数が低いということは,可動コア17が弁体25の開弁方向に作動するとき,コイルばね20の反発力の増加が少ないことであり,これにより可動コア17の吸引応答性,即ち弁体25の開弁応答性を高めることができる。
【0034】
コイル8への通電を絶つと,コイルばね20の反発力により,可動コア17は,固定コア15から離間して,弁体25を閉弁状態に戻すことになる。その際,可動コア17の吸引面に設けた非磁性のワッシャ23が両コア15,17間の残留磁気を解消して,可動コア17の戻り応答性の向上を図る。しかも上記ワッシャ23は,コイルばね20を利用して可動コア17の吸引面に保持されるので,その保持構造が簡単である。
【0035】
また可動コア17は中実に形成されると共に,その内端に,コイルばね20の可動端を支持する短軸17aが,またその外端に弁体25をそれぞれ一体に形成されるので,可動コア17に特別な部材を付加することなく,コイルばね20の支持,並びに弁体25の結合を行うことができ,部品点数の削減を図ることができる。しかも中実の可動コア17の外周面には,その両端面間を連通する複数条の溝28が設けられるので,可動コア17の往復作動時,その溝28を作動油が流通することで,その往復作動が阻害されることはない。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,中実の可動コア17の両端面間を連通するため,可動コア17の外周に,前記複数条の溝28に代わる複数の平坦面を形成することもできる。
【符号の説明】
【0037】
B・・・・制御基体
S・・・・電磁弁
4・・・・ヨーク
5・・・・主ヨーク
5a・・・天井壁
6・・・・補助ヨーク
7・・・・ボビン
7a・・・ボビンの中空部
8・・・・コイル
9・・・・コイル組立体
10・・・被覆層
15・・・固定コア
15a・・固定コアのフランジ
15b・・固定コアの中空部
16・・・シール部材(第2シール部材)
17・・・可動コア
17a・・短軸
20・・・コイルばね
21・・・板ばね
24・・・シール溝
25・・・弁体
26・・・弁座部材
図1
図2