(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クランクケース(52)で回転自在に支持されるクランク軸(39)からの回転動力を変速する変速機(60)が、クランクケース(52)に回転自在に支持される入力軸(69,70)を有して前記クランクケース(52)に収容され、前記クランク軸(39)および前記入力軸(69,70)間の動力伝達を断・接する油圧クラッチ(63,64)が前記入力軸(69,70)と同軸に配置されるパワーユニットにおいて、
前記油圧クラッチ(63,64)を覆って前記クランクケース(52)に結合されるクラッチカバー(56)の外面に、前記油圧クラッチ(63,64)の断・接作動を切替え制御するクラッチアクチュエータ(125)と、前記クラッチカバー(56)との間で前記クラッチアクチュエータ(125)を液密に覆うアクチュエータカバー(220)とが取付けられ、
前記クラッチカバー(56)および前記アクチュエータカバー(220)間に形成されるオイル室(221)に貯留されるオイルの温度を検出する油温センサ(222)が、前記アクチュエータカバー(220)に取付けられ、
前記油圧クラッチ(63,64)からのオイルを前記オイル室(221)に排出する油圧クラッチ用リリーフオイル通路(223)が、前記クラッチアクチュエータ(125)の一部を構成して前記クラッチカバー(56)に取付けられるアクチュエータボディ(200)に設けられ、
前記クラッチアクチュエータ(125)から排出されるオイルを前記オイル室(221)に排出するクラッチアクチュエータ用リリーフオイル通路(224)が、前記アクチュエータボディ(200)に設けられることを特徴とするパワーユニット。
前記クラッチアクチュエータ(125)から排出されるオイルを前記オイル室(221)に排出するクラッチアクチュエータ用リリーフオイル通路(224)が、前記アクチュエータボディ(200)に設けられることを特徴とする請求項2に記載のパワーユニット。
前記オイル室(221)内のオイルを前記クランクケース(52)側に戻すオイル戻し通路(225)が、前記クラッチアクチュエータ(125)よりも上方に配置されるようにして前記クラッチカバー(56)の上部に設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパワーユニット。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお以下の説明で、前後、左右および上下は、荒地走行用四輪駆動車両に乗車した乗員から見た方向を言うものとする。
【0019】
先ず
図1〜
図3において、四輪車両である荒地走行用四輪駆動車の車体フレームFの前部には左右一対の前輪WFが懸架されており、前記車体フレームFの後部には左右一対の後輪WRが懸架される。
【0020】
前記車体フレームFは、前後方向に延びる左右一対のロアフレーム11と、それらのロアフレーム11の前後方向中間部から上方に立ち上がる左右一対のセンター起立フレーム12と、それらのセンター起立フレーム12の上端から前方に延びるとともに途中から前下がりに延びて前記ロアフレーム11の前部に連設される左右一対のフロントサイドフレーム13と、前記センター起立フレーム12の上端から後方に延びるとともに途中から下方に延びて前記ロアフレーム11の後部に連設される左右一対のリヤサイドフレーム14と、左右一対のセンター起立フレーム12の上端部間を連結するセンタークロスメンバー15と、左右一対のフロントサイドフレーム13の中間屈曲部間を連結するフロントクロスメンバー16と、左右一対のリヤサイドフレーム14の中間屈曲部間を連結する上部リヤクロスメンバー17と、左右一対のリヤサイドフレーム14の下部間を連結する下部リヤクロスメンバー18とを備える。
【0021】
左右一対の前記センター起立フレーム12および左右一対の前記フロントサイドフレーム13は、運転者および助手用の前部乗車空間FSの外郭を構成するものであり、運転者および助手が乗ることを可能として前記センター起立フレーム12の前方に配置されるフロントフロア19が前記車体フレームFの前部に支持される。また左右一対の前記センター起立フレーム12および左右一対の前記リヤサイドフレーム14は、同乗者用の後部乗車空間RSの外郭を構成するものであり、同乗者が乗ることを可能として前記センター起立フレーム12の後方に配置されるリヤフロア20が前記車体フレームFの後部に支持される。
【0022】
前記運転者および助手用の前部乗車空間FSには、左右一対の前輪WFを操向する操向ハンドル25の後方に配置される運転者席21と、その運転者席21の左右一側(この実施の形態では右側)に配置される助手席22とが車幅方向に離間して配置される。
【0023】
前記運転者席21および前記助手席22は、座部21a,22aと、該座部21a,22aの後部から上方に立ち上がる背もたれ部21b,22bとをそれぞれ備える。また前記運転者席21および前記助手席22の前記背もたれ部21b,22bよりも前方に変位した背もたれ部23bを有するとともに、前記運転者席21および前記助手席22の座部21a,22a間に配置される座部23aを有する第2の助手席23が、前記運転者席21および前記助手席22間に設けられる。一方、前記同乗者用の後部乗車空間RSには、左右一対の同乗者席24,24が設けられる。
【0024】
ところで、前記車体フレームFの前部はフロントカバー27で覆われており、前記前部乗車空間FSの後側下部を側方から覆うフロントサイドカバー28と、前記後部乗車空間RSの前側下部を側方から覆う左右一対のセンターサイドカバー29と、前記後部乗車空間RSの後側下部を側方から覆う左右一対のリヤサイドカバー30とが車体フレームFに取付けられる。また前記フロントカバー27の左右後部には、前記フロントサイドカバー28および前記フロントカバー27間にそれぞれ形成される前部出入り口31を開閉可能な左右一対の前部ドア33が上下一対のヒンジ部35で回動可能にそれぞれ支持され、前記リヤサイドカバー30の前部には、前記センターサイドカバー29および前記リヤサイドカバー30間にそれぞれ形成される後部出入り口32を開閉可能な後部ドア34が上下一対のヒンジ部36で回動可能にそれぞれ支持される。
【0025】
前記車体フレームFには、左右一対の前輪WFおよび左右一対の後輪WRを回転駆動する動力を発揮する2気筒の内燃機関Eが平面視で車両の前後方向の略中央に配置されるようにして搭載されており、この内燃機関Eの機関本体38は、クランク軸39の軸線を前後方向に沿わせた縦置きにしつつシリンダ軸線Cを車幅方向で前記助手席22側に傾斜させた姿勢で前記車体フレームFに搭載され、車幅方向中央で前記運転者席21および前記助手席22の下方に配置される。
【0026】
図2および
図3に注目して、前記内燃機関Eの吸気装置40は、前記機関本体38のシリンダヘッド54に各気筒毎に接続されるスロットルボディ41と、平面視で前記運転者席21および前記助手席22間に配置されるエアクリーナ42と、前記スロットルボディ41およびエアクリーナ42間を結ぶ一対のコネクティングチューブ43と、前記エアクリーナ42に空気を導く単一の吸気ダクト44とを備える。
【0027】
ところで前記運転者席21および前記助手席22間に設けられる第2の助手席23の背もたれ部23bは、運転者席21および助手席22の背もたれ部21b,22bに一体に連なってそれらの背もたれ部21b,22bよりも前方に変位しており、運転者席21、助手席22および第2の助手席23の背もたれ部21b,22b,23bが平面視で前方側に凹んだ凹部45を形成することになり、その凹部45に前記エアクリーナ42が配置される。
【0028】
前記エアクリーナ42の右側部には、前記助手席22の座部22bの後方で車体の右側部まで延びる前記吸気ダクト44の下流端が接続され、この吸気ダクト44の複数箇所には、レゾネータ46,47,48が接続される。
【0029】
前記機関本体38のシリンダヘッド54の下部側壁に接続される一対の排気管50は、前記車体フレームFの後縁に沿って車幅方向に延びるように配置されて車体フレームFに支持される排気マフラー51に接続される。
【0030】
図4および
図5を併せて参照して、前記機関本体38は、車両前後方向に延びるクランク軸39を回転自在に支持するクランクケース52と、傾斜した前記シリンダ軸線Cを有して前記クランクケース52に結合されるシリンダブロック53と、該シリンダブロック53の上部に結合される前記シリンダヘッド54とを有する。
【0031】
また前記クランクケース52の背面には、機関本体28の一部を構成するスペーサプレート55が結合され、クラッチカバー56と、オイル貯留タンク57とが、前記クランクケース52から後方に突出するようにして前記スペーサプレート55を介して前記クランクケース52に結合される。また前記クランク軸39の軸線に関して前記オイル貯留タンク47とは反対側すなわち前記クランクケース52の前面側には副変速機ケース58が結合され、前記クランクケース52の下部にはオイルパン59が結合される。
【0032】
図6を併せて参照して、前記内燃機関Eの前記クランク軸39と、ともに駆動輪である前輪WFおよび後輪WRとの間の動力伝達系の途中には、前記内燃機関EとともにパワーユニットPを構成する動力伝達装置Tが設けられており、前記動力伝達装置Tは、変速機60と、該変速機60および前記クランク軸39間に介設される第1および第2油圧クラッチ63,64とを備える。
【0033】
前記パワーユニットPからの出力は、前後方向に延びる前輪用プロペラ軸65(
図3参照)を介して左右の前輪WFに伝達されるとともに、前後方向に延びる後輪用プロペラ軸66(
図3参照)を介して左右の後輪WRに伝達されるものであり、前記前輪用プロペラ軸65および前記後輪用プロペラ軸66は前記クランクケース52の右側方を通るように配置される。
【0034】
前記変速機60は、前記クランクケース52内に収容される主変速機61と、前記副変速機ケース58内に収容される副変速機62とを備え、前記副変速機ケース58は、前記クランクケース52の前面に結合される第1ケース部材67と、第1ケース部材67を前記クランクケース52との間に挟む第2ケース部材68とから成る。
【0035】
前記主変速機61は、変速機60への前記クランク軸39からの入力軸である第1メイン軸69および第2メイン軸70と、カウンタ軸71と、選択的に確立可能として第1メイン軸69および前記カウンタ軸71間に設けられる第1、第3および第5速用歯車列G1,G3,G5と、選択的に確立可能として第2メイン軸70および前記カウンタ軸71間に設けられる第2、第4および第6速用歯車列G2,G4,G6とを備える。
【0036】
第1および第2メイン軸69,70は、第1メイン軸69の一部を第2メイン軸70が同軸に囲繞するようにして前記クランクケース52に相対回転自在に支持されており、前記クランク軸39と平行な軸線を有するようにして前記クランク軸39の右側方に配置される。また前記カウンタ軸71は、第1および第2メイン軸69,70と平行な軸線を有して前記クランクケース52に回転自在に支持される。
【0037】
第1〜第6速用歯車列G1〜G6の選択的な確立は変速用電動モータ72の作動によって切替えられるものであり、この変速用電動モータ72は、
図4で明示するように、前記クラッチカバー56から右側方に突出するようにして前記スペーサプレート55に設けられた側方突部55aに取付けられる。
【0038】
前記第2メイン軸70にその軸方向後方側で隣接した位置で前記第1メイン軸69には、第1メイン軸69を同軸に囲繞する伝動筒軸73が、軸方向相対移動を不能としつつ相対回転自在に支持されており、第1油圧クラッチ63は、前記伝動筒軸73および第1メイン軸69間の動力断・接を切替え可能として第1メイン軸69上に設けられ、第2油圧クラッチ64は、前記伝動筒軸73および第2メイン軸70間の動力断・接を切換可能として伝動筒軸73および第2メイン軸70上に設けられる。
【0039】
前記伝動筒軸73には、前記クランク軸39からの回転動力が一次減速装置74およびダンパばね75を介して伝達される。一次減速装置74は、前記クランク軸39とともに回転する一次駆動歯車76と、この一次駆動歯車76に噛合するようにして第1および第2メイン軸69,70と同軸に配置される一次被動歯車77とから成り、一次被動歯車77が前記ダンパばね75を介して前記伝動筒軸73に連結される。
【0040】
第1油圧クラッチ63は、第1油圧室78を有して、一次減速装置74よりも軸方向外側に配置されており、第1油圧室78に油圧が作用していない状態では第1油圧クラッチ63は動力伝達を遮断したクラッチオフ状態にあり、第1油圧室78への油圧の作用時に第1油圧クラッチ63は、前記クランク軸39から前記一次減速装置74、前記ダンパばね75および前記伝動筒軸73を介して伝達される回転動力を第1メイン軸69に伝達するクラッチオン状態となる。
【0041】
第2油圧クラッチ64は、第2油圧室79を有して、一次減速装置74を第1油圧クラッチ63との間に挟むようにして第1油圧クラッチ63よりも軸方向内側に配置されており、第2油圧室79に油圧が作用していない状態では動力伝達を遮断したクラッチオフ状態にあり、第2油圧室79への油圧の作用時に第2油圧クラッチ64は、前記クランク軸39から前記一次減速装置74、前記ダンパばね75および前記伝動筒軸73を介して伝達される回転動力を第2メイン軸70に伝達するクラッチオン状態となる。
【0042】
第1メイン軸69には、相互に平行な第1および第2軸方向油路80,81が内端を閉じるとともに軸方向に延びるようにして設けられ、第1軸方向油路80は第1油圧室78に連通し、第2軸方向油路81は第2油圧室79に連通する。しかも第1軸方向油路80に通じる第1油路82と、第2軸方向油路81に通じる第2油路83とが前記クラッチカバー56に形成される。
【0043】
前記副変速機62は、変速駆動軸85、アイドル軸86および駆動力出力軸87を備える。前記変速駆動軸85は、前記主変速機61の前記カウンタ軸71と同軸にして前後方向に延びるものであり、前記副変速機ケース58の第1および第2ケース部材67,68に回転自在に支持される。しかもこの変速駆動軸85の後端部は前記第1ケース部材67を回転自在に貫通して前記クランクケース52側に突出するものであり、前記クランクケース52を回転自在に貫通する前記カウンタ軸71の前端部が前記変速駆動軸85の後端部にダンパ機構88を介して同軸に連結される。すなわち前記カウンタ軸71の回転動力は前記ダンパ機構88を介して前記変速駆動軸85に伝達される。
【0044】
前記副変速機ケース58内で、前記変速駆動軸85には、高速駆動歯車89、低速駆動歯車90およびリバース用駆動歯車91が、前方側から順に配置されるようにして相対回転可能に支持される。第2ケース部材68および高速駆動歯車89間で前記変速駆動軸85には、前記変速駆動軸85との相対回転を不能とした高速切替え用シフタ92が、前記高速駆動歯車89に係合する位置、ならびに前記高速駆動歯車89との係合を解除する中立位置を切替えるようにしてスライド可能に支持される。また前記低速駆動歯車90および前記リバース用駆動歯車91間で前記変速駆動軸85には、前記変速駆動軸85との相対回転を不能とした前後進切替え用シフタ93が、前記低速駆動歯車90に係合する位置、前記リバース用駆動歯車91に係合する位置、ならびに前記低速駆動歯車90および前記リバース用駆動歯車91のいずれにも係合しない中立位置を切替えるようにしてスライド可能に支持される。
【0045】
前記アイドル軸86は、前記副変速機ケース58の第1および第2ケース部材67,68に回転自在に支持される支軸94を囲繞する円筒状に形成されており、この支軸94に相対回転可能に支持される。前記副変速機ケース58内で前記アイドル軸86の前部および後部には、小径アイドル歯車95および大径アイドル歯車96が一体に設けられており、前記大径アイドル歯車96が前記リバース用駆動歯車91に噛合される。
【0046】
また前記駆動力出力軸87には、前記小径アイドル歯車95ならびに前記変速駆動軸85の前記高速駆動歯車89および前記低速駆動歯車90に対応した位置に配置されるようにして円筒状のボス97が固定される。このボス97には、ダンパばね98を介して小径被動歯車99が連結されるとともに、ダンパばね100を介して大径被動歯車101が連結されており、前記小径被動歯車99に前記高速駆動歯車89が噛合され、前記大径被動歯車101に前記低速駆動歯車90および前記小径アイドル歯車95が噛合される。
【0047】
前記高速切替え用シフタ92を回転自在に抱持する第1のシフトフォーク102ならびに前記前後進切替え用シフタ93を回転自在に抱持する第2のシフトフォーク103は、前記変速駆動軸85と平行な軸線を有して副変速機ケース58の第1および第2ケース部材67,68に支持されるシフトフォーク軸104にスライド可能に支持される。また前記第1および第2ケース部材67,68には、前記シフトフォーク軸104と平行な軸線を有するシフトドラム105が回動可能に支持されており、このシフトドラム105の外周に設けられるガイド溝106,107に、第1および第2のシフトフォーク102,103が係合される。
【0048】
前記シフトドラム105の回動に伴って前記第1および第2のシフトフォーク102,103が前記シフトフォーク軸104に沿って移動することにより、前記高速駆動歯車89、前記低速駆動歯車90および前記リバース用駆動歯車91が、前記変速駆動歯車軸85に選択的に相対回転不能に連結される。
【0049】
前記副変速機ケース58には、前記クランクケース52よりも右側方に突出する出力軸支持部110が形成されており、第1および第2メイン軸69,70とは軸方向にオフセットした前記駆動力出力軸87が前記出力軸支持部110に回転自在に支持される。前記駆動力出力軸87の後部は、前記第1ケース部材67側で前記出力軸支持部110との間に、ボールベアリング111と、そのボールベアリング111の外方に配置されるオイルシール112とを介在させて前記出力軸支持部110を回転自在に貫通して後方に突出し、この出力軸支持部110の後端部に、前記クランクケース52の右側方を通る前記後輪用プロペラ軸66が連結される。また前記駆動力出力軸87の前部は、前記第2ケース部材67側で前記出力軸支持部110との間に、ボールベアリング113と、そのボールベアリング113の外方に配置されるオイルシール114とを介在させて前記出力軸支持部110を回転自在に貫通して前方に突出し、この出力軸支持部110の前端部に、前記クランクケース52の右側方を通る前記前輪用プロペラ軸65が連結される。
【0050】
前記第1ケース部材67および前記第2ケース部材68間には、前記駆動力出力軸87の後端部の前記出力軸支持部110からの突出部の上方に少なくとも一部が配置されるようにしたブリーザ室115が形成される。
【0051】
前記出力軸支持部110の上部に対応する部分で前記第1ケース部材67には、後方に膨らんだ膨出部116が一体に設けられており、この膨出部116と、前記出力軸支持部110に対応した位置で前記第2ケース部材68の上部との間に前記ブリーザ室115が形成される。また前記副変速機ケース58における前記第2ケース部材68には、前記駆動力出力軸87を側方から覆うようにして該駆動力出力軸87の軸線方向に沿って前方に延びる筒状部68aが一体に形成される。
【0052】
図7において、第1および第2油圧クラッチ63,64の断・接はクラッチアクチュエータ125で切替えられるものであり、このクラッチアクチュエータ125は、前記クラッチカバー56に配設される。ところで前記スペーサプレート55および前記オイル貯留タンク57間には、一時的にオイルを貯留するオイル溜め126が形成されるものであり、このオイル溜め126からオイルを吸い上げる第1オイルフィードポンプ127からのオイルが、第1オイルフィルタ130を介して前記クラッチアクチュエータ125に供給され、前記クラッチアクチュエータ125は、第1油圧クラッチ63の第1油圧室78に通じる第1油路82および第1軸方向通路80への油圧の作用および解放と、第2油圧クラッチ64の第2油圧室79に通じる第2油路83および第2軸方向通路81への油圧の作用および解放とを切替えるように作動し、それによって第1および第2油圧クラッチ63,64の断・接が切替えられる。また第1オイルフィードポンプ127からの余剰オイルは第1リリーフ弁133を介して前記オイル溜め126に戻される。
【0053】
前記オイル溜め126には、第1オイルフィードポンプ127と共通にして第2オイルフィードポンプ128が接続されており、この第2オイルフィードポンプ128からのオイルは、パワーユニットPの複数の被潤滑部132に第2オイルフィルタ131を介して供給され、第2オイルフィードポンプ128からの余剰オイルは第2リリーフ弁134を介して前記オイル溜め126に戻される。
【0054】
第2オイルフィードポンプ128の吐出容量は前記第1オイルフィードポンプ127の吐出容量よりも大きく設定されるものであり、したがって第2オイルフィルタ131は第1オイルフィルタ130よりも大型に構成される。
【0055】
また前記オイルパン59内のオイルはストレーナ135を介してスカベンジポンプ129で吸い上げられるものであり、このスカベンジポンプ129から吐出されるオイルは、オイルクーラ136を経て前記オイル溜め126に供給される。
【0056】
図4に注目して、前記第1オイルフィードポンプ127、前記第2オイルフィードポンプ128および前記スカベンジポンプ129は、前記クランク軸39から伝達される回転動力で駆動されるようにして前記クランク軸39の軸線と平行な方向に並んで同軸に配置され、協働してポンプユニット138を構成して前記スペーサプレート55に配設される。
【0057】
前記オイル貯留タンク57は、前記クラッチカバー56の一部を収容する凹部140を有して前記クラッチカバー56に隣接配置される。また前記クランク軸39に関して前記変速機60と反対側すなわち前記クラッチカバー56と反対側で前記オイル貯留タンク57の外側壁57aに、第1および第2オイルフィルタ130,131が上下に並んで配置されるようにして取付けられる。また前記オイルクーラ136は、前記オイル貯留タンク57の上部の車両後方に臨む外面に取付けられる。
【0058】
図8において、前記クラッチアクチュエータ125は、油圧制御用の弁であるリニアソレノイド弁141と、該リニアソレノイド弁141からのオイルを第1および第2の油圧クラッチ63,64の第1および第2油圧室78,79に択一的に切換えて供給するための油路切替え弁142と、その油路切替え弁142を切替え作動せしめるためのオイルの供給、排出を切替え制御する切替え制御弁143と、切替え制御弁143の切替え作動を制御する弁である一対のシフトソレノイド弁144,145と、第1および第2の油圧クラッチ63,64の第1および第2油圧室78,79に択一的に切換えて接続される排出油路147を開閉する弁である排出制御用ソレノイド弁146とを備える。
【0059】
前記リニアソレノイド弁141は、入力ポート148と、出力ポート149と、該出力ポート149に通じるフィードバックポート150とを有し、オイルが入力される入力ポート148の圧力を供給される電流に応じた圧力に制御して出力ポート149から出力するものであり、前記入力ポート148には、前記第1オイルフィードポンプ127から前記第1オイルフィルタ130を介して供給されるオイルを導くオイル供給路151が接続される。
【0060】
前記油路切替え弁142は、第1油圧クラッチ63の第1油圧室78に連なる第1油路82に接続される第1出力ポート152と、第2油圧クラッチ64の第2油圧室79に連なる第2油路83に接続される第2出力ポート153と、接続油路160に連なる入力ポート154と、前記排出油路147に共通に通じる一対の排出ポート155,156と、パイロット室157に一端を臨ませるとともに他端には戻しばね158のばね力が作用するように配置されるスプール弁体159とを備え、前記接続油路160には、前記リニアソレノイド弁141で圧力が調整されたオイルもしくはオリフィス167を有して前記オイル供給路151から分岐するとともに前記リニアソレノイド弁141を迂回する第1分岐オイル供給路151aからのオイルが導かれる。
【0061】
前記切替え制御弁143は、前記油路切替え弁142の前記パイロット室157に接続される出力ポート161と、オリフィス168を有して前記オイル供給路151から分岐した第2分岐オイル供給路151bに接続される入力ポート162と、解放ポート163と、パイロット室164に一端を臨ませるとともに他端には戻しばね165のばね力が作用するように配置されるスプール弁体166とを備え、解放ポート163には、オリフィス169を有する解放油路170が接続される。
【0062】
一対の前記シフトソレノイド弁144,145は、前記パイロット室164に前記オイル供給路151を通じさせる状態、ならびに前記パイロット室164のオイルを外部に逃がす状態を切替えるようにして、前記オイル供給路151と、前記パイロット室164との間に並列に接続される。
【0063】
また前記排出制御用ソレノイド弁146は、オリフィス171を有する解放油路172を介して前記排出油路147の作動油を外部に逃がす状態と、前記排出油路147の作動油を絞ることなく外部に逃がすようにして解放油路173に導く状態とを切替え可能である。
【0064】
このようなクラッチアクチュエータ125によれば、前記一対のシフトソレノイド弁144,145によって、前記オイル供給路151を切替え制御弁143のパイロット室164に通じさせた状態では、切替え制御弁143のスプール弁体166は、第2分岐オイル供給路151bに通じる前記入力ポート162を出力ポート161に通じさせるとともに解放ポート163を出力ポート161から遮断する位置となる。このような切替え制御弁143の作動に応じて、前記油路切替え弁142の前記スプール弁体159は、前記第1出力ポート152を前記接続油路160に通じさせるものの前記第1排出ポート155から遮断するとともに前記第2出力ポート152を前記第2排出ポート156に通じさせるものの前記接続油路160から遮断する位置となる。
【0065】
また前記一対のシフトソレノイド弁144,145によって、切替え制御弁143のパイロット室164のオイルを外部に逃がすと、切替え制御弁143のスプール弁体166は、第2分岐オイル供給路151bに通じる前記入力ポート162を出力ポート161から遮断するとともに解放ポート163を出力ポート161に連通させる位置となる。このような切替え制御弁143の作動に応じて、前記油路切替え弁142の前記スプール弁体159は、前記第2出力ポート153を前記接続油路160に通じさせるものの前記第2排出ポート156から遮断するとともに前記第1出力ポート152を前記第1排出ポート155に通じさせるものの前記接続油路160から遮断する位置となる。
【0066】
前記リニアソレノイド弁141と、前記油路切替え弁142の入力ポート154に連なる前記接続油路160との間には、前記リニアソレノイド弁141を迂回する前記第1分岐オイル供給路151aを介して第1オイルフィードポンプ127らのオイルを前記油路切替え弁142側に導くことを可能とした手動切替え弁175が設けられる。
【0067】
この手動切替え弁175は、前記リニアソレノイド弁141の出力ポート149に通じる第1入力ポート176と、前記第1分岐オイル供給路151aに通じる第2入力ポート177と、前記接続油路160に通じる出力ポート178と、オリフィス180を有する解放路181に接続される解放ポート179と、第1入力ポート176を前記出力ポート178に通じさせる位置ならびに第2入力ポート177を前記出力ポート178に通じさせる位置間での移動を可能としたスプール弁体182と、第1入力ポート176を前記出力ポート178に通じさせる位置側に前記スプール弁体182を付勢するばね183と、第2入力ポート176を前記出力ポート178に通じさせる位置側に前記スプール弁体182を前記ばね183の付勢力に抗して押圧移動させることを可能として前記ばね183と反対側から前記スプール弁体182に当接する操作ピストン184とを備える。
【0068】
前記操作ピストン184は前記クラッチカバー56に進退可能に螺合されるものであり、この操作ピストン184の外端部外周には環状の係止凹部185が形成される。この係止凹部185に係合し得る係合板186がねじ部材187で前記クラッチカバー56に締結されており、前記係止凹部185に前記クラッチカバー56に締結した前記係合板186を係合した状態で前記スプール弁体182は
図8で示す後退位置に在る。また前記係合板186の前記クラッチカバー56への締結を解除して前記係止凹部185との係合を解除した状態で前記操作ピストン184をねじ込んで前進させると、前記スプール弁体182は前進位置に移動し、このスプール弁体182の前進位置は、前記クラッチカバー56に締結した前記係合板186を前記操作ピストン184の外端に係合することで保持される。
【0069】
前記スプール弁体182の外周には、該スプール弁体182の位置にかかわらず前記出力ポート178に通じるとともに第2入力ポート177との連通は遮断された環状凹部188が、前記スプール弁体182の後退位置では第2入力ポート177を前記解放ポート179に通じさせるものの前記スプール弁体182の前進位置では第1入力ポート176とは遮断させるようにして形成されるとともに、前記スプール弁体182の前進位置で前記第2入力ポート177および前記解放ポート179に通じるものの前記スプール弁体182の後退位置では前記第2入力ポート177および前記解放ポート179から遮断させる環状溝189が形成され、さらに前記スプール弁体182には前記環状凹部188および前記環状溝189間を結ぶオリフィス通路190が設けられる。
【0070】
前記オイル供給路151には、前記第1オイルフィルタ130を介して供給される第1オイルフィードポンプ127からのオイル供給圧を検出する第1油圧センサ191が設けられ、第1油路82には、第1油圧クラッチ63に作用する油圧を検出する第2油圧センサ192が設けられ、第2油路83には、第2油圧クラッチ64に作用する油圧を検出する第3油圧センサ193が設けられる。
【0071】
図9〜
図11を併せて参照して、前記クラッチカバー56の外面には前記クラッチアクチュエータ125を取付けるためのアクチュエータ取付け部56aが一体に突設されており、前記手動切替え弁175は、右上がりに傾斜しつつ上下方向に延びるようにして前記アクチュエータ取付け部56aに取付けられる。またクラッチアクチュエータ125の故障等の緊急時に手動操作可能な前記操作ピストン184はその外端部をアクチュエータ取付け部56aの右側外方に臨ませて前記アクチュエータ取付け部56aに進退自在に螺合され、工具を係合させて操作ピストン184を回転操作すること可能とするための工具係止凹部194が前記操作ピストン184の外端に形成される。
【0072】
前記クラッチアクチュエータ125は、前記リニアソレノイド弁141、前記油路切替え弁142、前記切替え制御弁143、前記シフトソレノイド弁144,145および前記排出制御用ソレノイド弁146に加えて、それらの弁141〜146の支持ならびにそれらの弁141〜146相互間の油路を構成するために、第1仕切板197、第1アクチュエータボディ、第2仕切板199および第2アクチュエータボディ200を備えるものであり、前記アクチュエータ取付け部56aには、第1仕切り板197を介して第1アクチュエータボディ198が取付けられ、この第1アクチュエータボディ198に前記クラッチカバー56とは反対側から重なる第2アクチュエータボディ200が、第1アクチュエータボディ198との間に第2仕切り板199を介在させて取付けられる。
【0073】
ところで、前記アクチュエータ取付け部56aは、前記変速機60の前記第1および第2メイン軸69,70の軸線CAに沿う方向から見て前記第1および第2油圧クラッチ63,64に少なくとも一部が重なる位置に配置されるようにして前記クラッチカバー56の外面に設けられるものであり、この実施の形態では、前記第1および第2メイン軸69,70の軸線CAに対して車幅方向左側に偏った位置に配置される。
【0074】
前記第1仕切り板197および第1アクチュエータボディ198は、前記第1および第2メイン軸69,70の軸線CAに対して前記アクチュエータ取付け部56aよりもさらに車幅方向左側に偏倚した位置で前記アクチュエータ取付け部56aに取付けられるものであり、
図12で示すように、第1仕切り板197の外周部には周方向に間隔をあけた6個の挿通孔201が設けられ、
図13で示すように、第1アクチュエータボディ198の外周部には、周方向に間隔をあけた6個の挿通孔202が前記挿通孔201に個別に対応してそれぞれ設けられ、
図11で示すように、前記挿通孔201,202に対応した6個の有底のねじ孔203が前記アクチュエータ取付け部56aに設けられる。
【0075】
また前記第1アクチュエータボディ198の右側側面の上下方向中間部には、第1仕切板197よりも右側に膨出するようにしてボス部198aが一体に設けられており、このボス部198aには、前記第2仕切板199側に開放した有底のねじ孔204が設けられる。
【0076】
図14において、第2仕切板199には、前記第1仕切板197および前記第1アクチュエータボディ198の前記挿通孔201,202に対応した6個の挿通孔205と、前記第1アクチュエータボディ198における前記ボス部198aの前記ねじ孔204に対応した挿通孔206とが設けられる。
【0077】
図15において、第2アクチュエータボディ200には、前記第1仕切板197、前記第1アクチュエータボディ198および前記第2仕切板299の前記挿通孔201,202,205に対応した6個の挿通孔207と、前記第2仕切板299の前記挿通孔206に対応した挿通孔208とが設けられる。
【0078】
前記第1仕切板198、前記第2仕切板199および前記第2アクチュエータボディ200は、前記クラッチカバー56のアクチュエータ取付け部56aに、前記挿通孔201,202,205,207に挿通されるボルト209を前記アクチュエータ取付け部56aのねじ孔203に螺合して締め付けるとともに、前記挿通孔206,208に挿通したボルト210を前記第1アクチュエータボディ198の前記ねじ孔204に螺合して締め付けることで前記第1アクチュエータボディ198に取付けられる。
【0079】
第1アクチュエータボディ198には、前記クラッチアクチュエータ125の一部を構成する複数の弁である前記リニアソレノイド弁141、前記油路切替え弁142、前記切替え制御弁143、前記シフトソレノイド弁144,145および前記排出制御用ソレノイド弁146のうちの一部である前記切替え制御弁143および前記シフトソレノイド弁144,145が配設される。
【0080】
前記第1アクチュエータボディ198には、第1および第2油圧クラッチ63,63の軸線すなわち前記第1および第2メイン軸69,70の軸線CAと直角に交差する平面に沿って水平に延びるとともに第1アクチュエータボディ198の右側側面に開口する第1および第2弁取付け孔211,212が前記シフトソレノイド弁144,145をそれぞれ取付けるようにして設けられるとともに、それらの弁取付け孔211,212間に平行に配置されて前記第1アクチュエータボディ198の左側面に開口する第3弁取付け孔213が前記切替え制御弁143を取付けるようにして設けられる。
【0081】
すなわち前記第1アクチュエータボディ198には、前記切替え制御弁143および前記シフトソレノイド弁144,145がそれらの作動軸線を前記第1および第2メイン軸69,70の軸線CAと直角に交差する平面に沿って水平としつつ上下方向に並んで配設される。
【0082】
また前記第2アクチュエータボディ200には、前記リニアソレノイド弁141、前記油路切替え弁142、前記切替え制御弁143、前記シフトソレノイド弁144,145および前記排出制御用ソレノイド弁146のうち前記切替え制御弁143および前記シフトソレノイド弁144,145を除く残余の前記リニアソレノイド弁141、前記油路切替え弁142および前記排出制御用ソレノイド弁146が配設される。
【0083】
第2アクチュエータボディ200には、前記第1および第2メイン軸69,70の軸線CAと直角に交差する平面に沿って水平に延びるとともに第2アクチュエータボディ198の左右両側面に両端を開口する第4弁取付け孔214と、前記第1および第2メイン軸69,70の軸線CAと直角に交差する平面に沿って水平延びるとともに第2アクチュエータボディ198の右側面に開口する第5弁取付け孔215とが上下に間隔をあけて設けられ、前記第4弁取付け孔214に前記リニアソレノイド弁146が取付けられ、前記第5弁取付け孔215に前記切替え制御弁143が取付けられる。
【0084】
また第2アクチュエータボディ200の下部には、前記第5取付け孔215の下方に位置する第6取付け孔216が、前記第1および第2メイン軸69,70の軸線CAと平行に延びて前記クラッチカバー56とは反対側に開放するようにして設けられ、この第6取付け孔216に前記排出制御用ソレノイド弁146が取付けられる。
【0085】
ところで前記リニアソレノイド弁141、前記油路切替え弁142、前記切替え制御弁143、前記シフトソレノイド弁144,145および前記排出制御用ソレノイド弁146相互間を結ぶ油路の一部は、前記第1および第2アクチュエータボディ198,200に設けられる複数の溝、透孔および有底孔と、第1および第2仕切板197,199に設けられる透孔とで構成される。
【0086】
前記クラッチカバー56における前記アクチュエータ取付け部56aの外周部には相互に間隔をあけた複数のねじ孔218が設けられ、前記アクチュエータ取付け部56aとの間で前記クラッチアクチュエータ125を液密に覆うアクチュエータカバー220が、前記ねじ孔218に螺合される複数のボルト219で取付けられ、前記クラッチカバー56の前記アクチュエータ取付け部56aおよび前記アクチュエータカバー220間にオイル室221が形成される。
【0087】
前記第1および第2アクチュエータボディ198,200の下方、この実施の形態では前記第1および第2アクチュエータボディ198,200を覆う前記アクチュエータカバー220の下方で、前記クラッチカバー56の下部外面には、第1および第2油圧クラッチ63,64に作用する油圧を個別に検出する第2および第3油圧センサ192,193が車幅方向に並ぶようにして取付けられ、第1オイルフィードポンプ127からのオイル供給圧を検出する第1油圧センサ191が、第2油圧センサ192を第3油圧センサ191との間に挟む位置で前記クラッチカバー56の下部外面に取付けられる。
【0088】
前記オイル室221内に貯留されるオイルの温度は油温センサ222で検出されるものであり、この油温センサ222は、その検出部222aが、前記第1および第2メイン軸69,70の軸線に沿う方向から見て前記第2アクチュエータボディ200の左側下部に重なるようにして前記オイル室221内の下部に配置されるようにしつつ、前記アクチュエータカバー220の左側下部に取付けられる。
【0089】
しかも前記第1および第2油圧クラッチ63,64からのオイルを前記オイル室221に排出すべく、前記解放油路172,173に連なる油圧クラッチ用リリーフオイル通路223(
図15参照)が、前記第2アクチュエータボディ200の下部に出口が開口するように設けられる。すなわち前記油温センサ222が、その検出部222aを前記油圧クラッチ用リリーフオイル通路223の前記出口の近傍に配置するようにして、前記アクチュエータカバー220に取付けられることになる。
【0090】
また前記クラッチアクチュエータ125から排出されるオイルを前記オイル室221に排出するようにしたたとえば3個のクラッチアクチュエータ用リリーフオイル通路224(
図15参照)が、前記第2アクチュエータボディ200の上部に設けられる。
【0091】
また前記オイル室221内のオイルを前記クランクケース52側に戻すオイル戻し通路225が、前記クラッチアクチュエータ125よりも上方に配置されるようにして前記クラッチカバー56におけるアクチュエータ取付け部56aの上部に設けられ、前記第1仕切板197、第1アクチュエータボディ198、第2仕切板199および第2アクチュエータボディ200には、それら197〜200の上部を前記アクチュエータ取付け部56aに取付けるための2つのボルト209,209間に配される凹部226,227,228,229が前記オイル戻し通路225を臨ませるように形成される。
【0092】
図16において、前記パワーユニットPにおける内燃機関Eの前記クランク軸39は、左右一対の後輪WRに連なる一対の駆動軸230の軸線と直交するようにして前後方向に軸線を指向させて配置される。また前記クランク軸39の左右方向右側に配置される変速機60の駆動力出力軸87からの駆動力を左右の後輪WR側に伝達するための後輪用プロペラ軸66も、前記クランク軸39と平行すなわち前記駆動軸230の軸線と直交する方向に延出されており、左右一対の前記駆動軸230間に設けられる差動機構231に前記後輪用プロペラ軸66の後端部が連結される。
【0093】
しかも前記クラッチアクチュエータ125ならびに該クラッチアクチュエータ125を覆う前記アクチュエータカバー220は、前記差動機構231の一部を構成して前記プロペラ軸66の前記差動機構231側の端部を保持する軸保持部231aに対して左右方向の他側に配置されるようにして、前記第1および第2油圧クラッチ63,64の中心軸線すなわち第1および第2メイン軸69,70の軸線CAからオフセットした位置で、前記差動機構231に前方から対向するように配置される前記クラッチカバー56に取付けられる。すなわち前記変速機60が前記クランク軸39に関して左右方向右側に配置されるのに対して、前記クラッチアクチュエータ125および前記アクチュエータカバー220は、前記軸保持部231aに関して左右方向左側に配置されるようにして第1および第2メイン軸69,70の軸線CAからオフセットした位置で前記クラッチカバー56に取付けられることになる。
【0094】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、クランク軸39と、変速機60の第1および第2メイン軸69,70との間の動力伝達を断・接する第1および第2油圧クラッチ63,64を覆ってクランクケース52に結合されるクラッチカバー56に、第1および第2油圧クラッチ63,64の断・接作動を切替え制御するクラッチアクチュエータ125が取付けられ、そのクラッチアクチュエータ125の一部を構成する複数の弁141,142,143,144,145,146のうちの一部の弁である切替え制御弁143およびシフトソレノイド弁144,145が、第1および第2メイン軸69,70の軸線CAに沿う方向から見て第1および第2油圧クラッチ63,64に少なくとも一部が重なる位置に配置されるようにして前記クラッチカバー56の外面に取付けられる第1アクチュエータボディ198に配設され、第1アクチュエータボディ198にクラッチカバー56とは反対側から重ねるようにして前記クラッチカバー56に取付けられる第2アクチュエータボディ200に、前記複数の弁141〜146のうちの残余の弁であるリニアソレノイド弁141、油路切替え弁142および排出制御用ソレノイド弁146が配設されるので、第1および第2油圧クラッチ63,64の径方向でのクラッチカバー56の大型化を回避することができるとともに各弁間の油通路の形成が容易となる。しかも第1アクチュエータボディ198に配置される切替え制御弁143およびシフトソレノイド弁144,145の作動軸線が、第1および第2メイン軸69,70の軸線CAと交差する平面に沿うものであるので、第1および第2メイン軸69,70の軸線CAに沿う方向でのクラッチアクチュエータ125の前記クラッチカバー56からの突出量を抑えることができ、パワーユニットPを搭載する車両の大型化を回避することができる。
【0095】
また切替え制御弁143およびシフトソレノイド弁144,145が、それら143〜145の作動軸線を相互に平行にしつつ上下方向に並ぶように前記第1アクチュエータボディ198に配設されるので、切替え制御弁143およびシフトソレノイド弁144,145を安定して支持するようにしつつ第1アクチュエータボディ198の小型化を図ることができる。
【0096】
また前記第1および第2アクチュエータボディ198,200の下方、この実施の形態では第1および第2アクチュエータボディ198,200を含むクラッチアクチュエータ125を覆うアクチュエータカバー220の下方で、前記クラッチカバー56の外面には、第1および第2油圧クラッチ63,64に作用する油圧を個別に検出する第2および第3油圧センサ192,193と、クラッチアクチュエータ125側に第1オイルフィードポンプ127から供給されるオイルの圧力を検出する第1油圧センサ191とが設けられるので、第1および第2アクチュエータボディ198,200の周囲の空きスペースを活用して第1〜第3油圧センサ191〜193をコンパクトに配設することができ、第1〜第3油圧センサ191〜193で検出する部分を下方位置とすることで上方へのエア抜け性を高めて、検出精度の向上すなわち第1および第2油圧クラッチ63,64の断・接切替え制御の精度を高めることができる。
【0097】
また一対のシフトソレノイド弁144,145と、それらのシフトソレノイド弁144,145の作動に応じて作動することで第1および第2油圧クラッチ63,64に対しての油圧作用状態および油圧解放状態を切替えるようにして前記一対のシフトソレノイド弁144,145間に配置される切替え制御弁143とが、前記第1アクチュエータボディ198に配設されるので、第1および第2油圧クラッチ63,64の油圧作用状態および油圧解放状態を一対のシフトソレノイド弁144,145の作動によって切替えることでシフトソレノイド弁144,145の小型化を図りつつ信頼性を高めることができ、小型の一対のシフトソレノイド弁144,145間に生じるスペースに切替え制御弁143を効果的に配置して、クラッチアクチュエータ125の小型化を図ることができる。
【0098】
しかも左右一対の後輪WRに連なる一対の駆動軸230の軸線と直交する方向にクランク軸39の軸線を指向させて配置されるクランクケース52に、前記クランク軸39の左右方向右側に配置される変速機60が収容されるとともに、前記一対の駆動軸230間に設けられる差動機構231に車両前後方向に沿う前方から対向するようにして前記クラッチカバー56が結合され、前記クランク軸39と平行に配置される後輪用プロペラ軸66が前記変速機60から出力される駆動力を伝達するようにして前記差動機構231に連結され、前記クラッチアクチュエータ125が、前記差動機構231の一部を構成して前記後輪用プロペラ軸66の前記差動機構231側の端部を保持する軸保持部231aに対して左右方向の左側に配置されるようにして、第1および第2油圧クラッチ63,64の中心軸線CAからオフセットした位置で前記クラッチカバー56に取付けられるので、パワーユニットPおよび差動機構231を近接させることで、パワーユニットPを左右の後輪WRに近づけた位置に配置するようにして車両のコンパクト化を図ることができる。
【0099】
また前記クラッチカバー56の外面に取付けられる前記クラッチアクチュエータ125を、前記クラッチカバー56との間で液密に覆うアクチュエータカバー220が前記クラッチカバー56に取付けられ、前記クラッチカバー56および前記アクチュエータカバー220間に形成されるオイル室221に貯留されるオイルの温度を検出する油温センサ222が、前記アクチュエータカバー220に取付けられるので、第1および第2油圧クラッチ63,64の近傍に、クラッチアクチュエータ125と、油温センサ222とを近づけて配置することで、第1および第2油圧クラッチ63,64内部の温度により近い温度検出が可能となり、第1および第2油圧クラッチ63,64の制御精度を高めることができる。
【0100】
また第1および第2油圧クラッチ63,64からのオイルを前記オイル室221に排出する油圧クラッチ用リリーフオイル通路223が、前記クラッチアクチュエータ125の一部を構成して前記クラッチカバー56に取付けられる第2アクチュエータボディ200に設けられるので、第1および第2油圧クラッチ63,64から排出されてオイル室221に流入したオイルの温度を油温センサ220で検出することになり、第1および第2油圧クラッチ63,64内のオイルの温度により近い温度を検出して、第1および第2油圧クラッチ63,64の制御精度をより高めることができる。
【0101】
また前記クラッチアクチュエータ125から排出されるオイルを前記オイル室221に排出するクラッチアクチュエータ用リリーフオイル通路224が、前記第2アクチュエータボディ200に設けられるので、第1および第2油圧クラッチ63,64に供給される側のオイルと、第1および第2油圧クラッチ63,64から排出される側のオイルとがオイル室221内で混合され、その混合されたオイルの温度を油温センサ222が検出することになり、第1および第2油圧クラッチ63,64内のオイルの温度を正確に検出して、第1および第2油圧クラッチ63,64の制御精度をさらに高めることができる。
【0102】
また前記油圧クラッチ用リリーフオイル通路223の出口が、前記第2アクチュエータボディ200の下部に設けられ、前記油温センサ222が、その検出部222aを前記油圧クラッチ用リリーフオイル通路223の前記出口の近傍に配置するようにして、前記アクチュエータカバー220に取付けられるので、始動直後に第1および第2油圧クラッチ63,64から排出されるオイルの温度を油温センサ222で速やかに検出し、暖機時の第1および第2油圧クラッチ63,64の制御性をより高くすることができる。
【0103】
さらに前記オイル室221内のオイルを前記クランクケース52側に戻すオイル戻し通路225が、前記クラッチアクチュエータ125よりも上方に配置されるようにして前記クラッチカバー56の上部に設けられるので、クラッチアクチュエータ125がオイル室221内の油面よりも下方にあり、クラッチアクチュエータ125をその周囲のオイルで保温することができ、クラッチアクチュエータ125の温度変化を小さくして第1および第2油圧クラッチ63,64の制御性能を高めることができる。
【0104】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。