特許第6249297号(P6249297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249297
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/639 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   H01R13/639 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-223939(P2014-223939)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-91757(P2016-91757A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名和 徹夫
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−269946(JP,A)
【文献】 特開平10−199621(JP,A)
【文献】 実開平02−064176(JP,U)
【文献】 実開平04−033280(JP,U)
【文献】 実開昭48−092486(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに形成され、前記第1ハウジングの外面との間に確保された撓み空間内に進入するように弾性撓みし得るロックアームと、
前記第1ハウジングと嵌合可能な第2ハウジングと、
前記第2ハウジングに形成され、前記ロックアームと係止することで前記第1ハウジングと前記第2ハウジングを嵌合状態にロックするロック部と、
前記第1ハウジングの外面における前記ロックアームとの対向面を部分的に凹ませた形態のハウジング側凹部と、
前記ロックアームにおける前記第1ハウジングとの対向面のうち、少なくとも前記ハウジング側凹部と非対応の領域を凹ませた形態のアーム側凹部と、
前記第1ハウジングの外面における前記ロックアームとの対向面のうち、前記アーム側凹部と対応する領域に形成されたハウジング側凸部とを備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記第1ハウジングを前記第2ハウジングとの嵌合方向に見たときの正面形状が、略円形とされており、
前記第1ハウジングの内部には、複数のキャビティが略方形領域内において整列するように形成され、
前記第1ハウジングの外面には、前記第1ハウジングの正面形状と前記複数のキャビティの形成領域との形状の相違に起因する段差状凹部が形成され、
前記段差状凹部に前記ロックアームと前記撓み空間が配され、
前記第1ハウジングにおける前記ロックアームとの前記対向面には、一対の前記ハウジング側凹部を区画する前記ハウジング側凸部が、幅方向中央部において前記ロックアーム側へ突出するように形成され、
前記アーム側凹部が、前記ハウジング側凸部と対応するように幅方向中央部に配されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1ハウジングには、前記撓み空間を両側から挟むように配置された一対の壁部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ロックアームには、前記ロックアームを前記ロック部との係止から解除させる際に押し操作される操作部が形成され、
前記壁部は、前記操作部と対応する領域を他の領域よりも低くした形態であることを特徴とする請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1ハウジングの内部には、前記第1ハウジングの後端面に開口するキャビティが形成され、
前記第1ハウジングにおける前記ロックアームとの対向面には、前記ハウジング側凸部が、隣り合う2つの前記ハウジング側凹部を区画するように形成されており、
前記ハウジング側凸部の形成領域が、前記第1ハウジングの後端部に達する範囲とされていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、雄ハウジングと雌ハウジングとを嵌合する過程で、雄ハウジングに形成したロック部が弾性撓みし、両ハウジングが正規嵌合するとロック部が弾性復帰して雌ハウジングのロック開口に係止、この係止作用によって両ハウジングが嵌合状態にロックされるコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−330769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のコネクタでは、ロック部が雄ハウジングの外面に露出して形成され、雄ハウジングの外面とロック部との間に、ロック部を弾性撓みさせるための撓み空間が空いている。そのため、他のコネクタに取り付けられている電線が、雄ハウジングの外面とロック部との間の撓み空間に噛み込んで、その電線が引っ張られたときに、ロック部に過大な応力が作用することが懸念される。電線の噛み込みを回避するためには、撓み空間を狭くすれば良いのであるが、そうすると、ロック部の撓み代が十分に確保されず、ひいては、ロック部とロック開口との係止代が小さくなって、ロック機能の信頼性を低下させることになる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の噛み込みを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコネクタは、
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに形成され、前記第1ハウジングの外面との間に確保された撓み空間内に進入するように弾性撓みし得るロックアームと、
前記第1ハウジングと嵌合可能な第2ハウジングと、
前記第2ハウジングに形成され、前記ロックアームと係止することで前記第1ハウジングと前記第2ハウジングを嵌合状態にロックするロック部と、
前記第1ハウジングの外面における前記ロックアームとの対向面を部分的に凹ませた形態のハウジング側凹部と、
前記ロックアームにおける前記第1ハウジングとの対向面のうち、少なくとも前記ハウジング側凹部と非対応の領域を凹ませた形態のアーム側凹部と、
前記第1ハウジングの外面における前記ロックアームとの対向面のうち、前記アーム側凹部と対応する領域に形成されたハウジング側凸部とを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
第1ハウジングの外面とロックアームとの間の撓み空間は、ハウジング側凹部とアーム側凹部を形成したことにより、ラビリンス状に屈曲した形状をなしている。したがって、電線の噛込み防止のために、ハウジング側の対向面のうちハウジング側凹部が形成されていない領域と、ロックアーム側の対向面のうちアーム側凹部が形成されていない領域との間隔を狭くしても、ロックアームの撓み代を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のコネクタを構成する第1ハウジングの側面図
図2】第1ハウジングと第2ハウジングが嵌合状態にロックされている様子をあらわす側断面図
図3図2のX−X線断面図
図4】第1ハウジングと第2ハウジングの離脱過程をあらわす側断面図
図5図4のY−Y線断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明のコネクタは、
前記第1ハウジングを前記第2ハウジングとの嵌合方向に見たときの正面形状が、略円形とされており、
前記第1ハウジングの内部には、複数のキャビティが略方形領域内において整列するように形成され、
前記第1ハウジングの外面には、前記第1ハウジングの正面形状と前記複数のキャビティの形成領域との形状の相違に起因する段差状凹部が形成され、
前記段差状凹部に前記ロックアームと前記撓み空間が配され、
前記第1ハウジングにおける前記ロックアームとの前記対向面には、一対の前記ハウジング側凹部を区画するハウジング側凸部が、幅方向中央部において前記ロックアーム側へ突出するように形成され、
前記アーム側凹部が、前記ハウジング側凸部と対応するように幅方向中央部に配されていてもよい。
この構成によれば、第1ハウジングの正面形状が略円形であり、複数のキャビティの形成領域が略方形であるという形状の相違に着目し、ハウジング側凸部とアーム側凹部を、幅方向中央部に配した。段差状凹部の底面を基準とする第1ハウジングの略円形の外周形状との寸法差は、幅方向中央部で最大となる。したがって、ハウジング側凸部の高さ寸法とアーム側凹部の深さ寸法を、十分に大きく確保することができる。
【0010】
(2)本発明のコネクタは、
前記第1ハウジングに、前記撓み空間を両側から挟むように配置された一対の壁部が形成されていてもよい。
この構成によれば、壁部によって撓み空間への異物の侵入を防止できる。
【0011】
(3)本発明のコネクタは、(2)において、
前記ロックアームには、前記ロックアームを前記ロック部との係止から解除させる際に押し操作される操作部が形成され、
前記壁部は、前記操作部と対応する領域を他の領域よりも低くした形態であってもよい。
この構成によれば、操作部を押し操作する際に、作業者の指が壁部と干渉し難くなるので、ロック解除の作業性が良好となる。
【0012】
(4)本発明のコネクタは、
前記第1ハウジングの内部には、前記第1ハウジングの後端面に開口するキャビティが形成され、
前記第1ハウジングにおける前記ロックアームとの対向面には、隣り合う2つの前記ハウジング側凹部を区画するハウジング側凸部が形成されており、
前記ハウジング側凸部の形成領域が、前記第1ハウジングの後端部に達する範囲とされていてもよい。
この構成によれば、キャビティとハウジング側凹部とを区画する外壁の厚さや、この外壁に連なってキャビティ同士を区画する隔壁の厚さが薄くても、ハウジング側凸部によって外壁や隔壁が補強される。
【0013】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図5を参照して説明する。本実施例1のコネクタは、合成樹脂製の第1ハウジング10と、合成樹脂製の第2ハウジング30とを備えて構成されている。両ハウジング10,30は、第1ハウジング10に一体形成したロックアーム18と、第2ハウジング30に一体形成したロック部33との係止作用によって、正規の嵌合状態にロックされるようになっている。
【0014】
第1ハウジング10は、その前端(図1,2,4における左側の端部)から後端に亘って形成された端子収容部11と、端子収容部11の前端側領域を包囲する筒状嵌合部12とを一体に形成して構成されている。第1ハウジング10のうち筒状嵌合部12が形成されている前端側領域は、全体として軸線を前後方向(図1,2,4における左右方向)に向けた略円柱形をなしている。この前後方向の軸線は、両ハウジング10,30の嵌合方向と平行である。したがって、図3,5に示すように、第1ハウジング10を両ハウジング10,30の嵌合方向と平行に見たときの正面形状は、略円形である。筒状嵌合部12の後端部は端子収容部11の外面に連なって支持されている。そして、端子収容部11の外周の前端側領域と筒状嵌合部12との間の空間は、後述する第2ハウジング30のフード部32を嵌入させるための嵌入空間13となっている。
【0015】
第1ハウジング10(端子収容部11)の内部には、第1ハウジング10の後端面に開口する4つのキャビティ14が形成されている。4つのキャビティ14のうち3室には、第1ハウジング10の後方(図1,2,4における右方)から雌端子金具(図示省略)が挿入されるようになっている。図3,5に示すように、4つのキャビティ14は、上下方向及び左右方向(つまり、両ハウジング10,30の嵌合方向と直交する二次元方向)において縦横に整列して配置されている。したがって、4つのキャビティ14の形成領域は、略方形であり、第1ハウジング10の正面形状である略円形の範囲内である。
【0016】
この第1ハウジング10(筒状嵌合部12)の正面形状と、4つのキャビティ14(端子収容部11)の略方形の形成領域との形状の相違により、第1ハウジング10(端子収容部11)の外面(上面)には、図2に示すように、段差状凹部15が形成されている。前後方向における段差状凹部15の形成領域は、第1ハウジング10の前端部を除いた広い範囲(つまり、第1ハウジング10のほぼ全領域)に亘っている。筒状嵌合部12には、段差状凹部15の前端側領域を外部へ開放させるための切欠部16が形成されている。第1ハウジング10の上面(外面)のうち段差状凹部15が形成されている領域は、ロックアーム18との対向するハウジング側対向面17となっている。
【0017】
この段差状凹部15には、前後方向に細長く延びた形態のロックアーム18が配されている。ロックアーム18における第1ハウジング10(ハウジング側対向面17)と対向する面は、アーム側対向面19となっている。アーム側対向面19の長さ方向における略中央部には脚部20が形成され、ロックアーム18は脚部20を介してハウジング側対向面17に支持されている。ロックアーム18は、脚部20を支点としてシーソー状に弾性撓みし得るようになっている。図2,3に示すように、ロックアーム18が弾性撓みしていない自由状態であるときには、アーム側対向面19がハウジング側対向面17と略平行をなして対向している。
【0018】
アーム側対向面19の前端部には、ロック突起21が形成されている。ロックアーム18の後端部は、ロックアーム18をロック解除方向へ弾性撓みさせる際に作業者が押し操作するための操作部22となっている。ロックアーム18(操作部22)の後端は、第1ハウジング10(ハウジング側対向面17)の後端よりも前方に位置している。
【0019】
第2ハウジング30は、端子保持部31と、端子保持部31の前端部外周縁から前方(図2,4における右方)へ略円筒状に延出するフード部32を一体に形成して構成されている。端子保持部31には、複数の雄端子金具(図示省略)が保持されている。フード部32内には、雄端子金具の先端のタブ(図示省略)が、雌端子金具と対向する配置で収容されている。フード部32の上面には、突起状のロック部33が形成されている。
【0020】
第1ハウジング10と第2ハウジング30を嵌合する過程では、フード部32が嵌入空間13内に進入し、ロック突起21がロック部33と干渉することにより、ロックアーム18が、その前端部をハウジング側対向面17から遠ざけるように弾性撓みしてロック解除姿勢となる。このとき、ハウジング側対向面17とアーム側対向面19との間の空間のうち、脚部20よりも後方でロックアーム18の後端よりも前方の領域は、ロックアーム18がロック解除姿勢へ弾性撓みすることを許容するための撓み空間23として機能する。そして、両ハウジング10,30が正規の嵌合状態に至ると、ロックアーム18が弾性復帰し、ロック突起21とロック部33とが係止する。この係止作用により、両ハウジング10,30が、嵌合状態にロックされ、離脱を規制される。
【0021】
また、嵌合状態の両ハウジング10,30を離脱する際には、ロックアーム18の操作部22をアーム側対向面19とは反対側から押し操作する。すると、ロックアーム18が弾性撓みさせられてロック解除姿勢へ変位するので、ロック突起21がロック部33から解離する。このようにロック突起21とロック部33との係止が解除された状態のまま、両ハウジング10,30を引き離せば、両ハウジング10,30を離脱させることができる。
【0022】
本実施例のコネクタでは、ロックアーム18が第1ハウジング10の外面に露出して形成され、第1ハウジング10の外面とロックアーム18との間に、ロックアーム18を弾性撓みさせるための撓み空間23が空いている。そのため、他のコネクタに取り付けられている電線等(図示省略)が、この撓み空間23内に噛み込むことが懸念される。もし、撓み空間23に噛み込んだ電線等が引っ張られると、ロックアーム18には通常のロック動作及びロック解除動作で弾性撓みする方向(ロック解除方向)とは反対側へ変形させられようとする。また、電線等から受ける外力が強いと、ロックアーム18には過大な応力が作用することになる。
【0023】
撓み空間23への電線等の噛み込みを回避するためには、ロックアーム18の撓み方向における撓み空間23の寸法(つまり、ハウジング側対向面17とアーム側対向面19の対向間隔)を小さくすれば良い。しかし、撓み空間23を狭めると、ロックアーム18の撓み代が十分に確保されず、ひいては、ロックアーム18とロック部33との係止代が小さくなり、ロック機能の信頼性を低下させることになる。
【0024】
この対策として、本実施例のコネクタでは、第1ハウジング10のハウジング側対向面17に左右対称な一対のハウジング側凹部24を形成するとともに、ロックアーム18のアーム側対向面19にアーム側凹部25を形成している。図5に示すように、一対のハウジング側凹部24は、ハウジング側対向面17を凹ませた形態である。前後方向におけるハウジング側凹部24の形成領域は、ハウジング側対向面17のうち筒状嵌合部12よりも後方の領域である。つまり、ハウジング側凹部24は、筒状嵌合部12の後端から第1ハウジング10の後端(ハウジング側対向面17の後端)に亘って連続して形成されている。一対のハウジング側凹部24は、幅方向(両ハウジング10,30の嵌合方向及びロックアーム18の弾性撓み方向の両方向に対して交差する方向)に間隔を空けて並ぶように配されている。
【0025】
また、ハウジング側対向面17のうち一対のハウジング側凹部24の間の領域は、ロックアーム18側向かってリブ状に突出した形態となっている。このリブ状に突出した領域は、一対のハウジング側凹部24を区画するハウジング側凸部26となっている。前後方向におけるハウジング側凸部26の形成範囲は、ハウジング側凹部24と同じである。つまり、ハウジング側凸部26は、筒状嵌合部12の後端から第1ハウジング10(ハウジング側対向面17)の後端に亘り、前後方向に連続して細長く延びた形態である。
【0026】
幅方向におけるハウジング側凸部26の形成領域は、ハウジング側対向面17(端子収容部11)の幅方向中央位置である。上下左右に整列配置された4つのキャビティ14のうち上側の2つのキャビティ14と、段差状凹部15とは、外壁14Aによって区画されているのであるが、ハウジング側凸部26は、この外壁14Aから突出した形態となっている。また、4つのキャビティ14のうち右側のキャビティ14と左側のキャビティ14は、隔壁14Bによって区画されているのであるが、ハウジング側凸部26は、幅方向においてこの隔壁14Bと対応するように配置されている。
【0027】
アーム側凹部25は、アーム側対向面19を溝状に凹ませた形態であり、前後方向に細長く延びた形態である。幅方向におけるアーム側凹部25の形成範囲は、ハウジング側凸部26の全幅領域と、ハウジング側凸部26の左右両側の領域(つまり、ハウジング側凹部24のうちハウジング側凸部26に沿った領域)とに対応する領域である。前後方向におけるアーム側凹部25の形成領域は、ロックアーム18の後端部の限定された範囲である。つまり、ロックアーム18がロック解除姿勢になったときに、ハウジング側凸部26と干渉し得る範囲に留めている。
【0028】
また、ロックアーム18がロック解除姿勢では、アーム側対向面19が、ハウジング側凸部26の上面に対して斜めになるので、アーム側対向面19を基準とするアーム側凹部25の深さは、ロックアーム18の後端で最も深く、前方ほど浅くなっている。この形状設定により、ロックアーム18の弾性撓み量が最大になったときには、アーム側凹部25の上面とハウジング側凸部26の上面とが面当たりするようになっている。
【0029】
アーム側対向面19のうちアーム側凹部25が形成されていない領域は、一対のハウジング側凹部24と対応する左右対称な一対のアーム側凸部27となっている。このアーム側凸部27は、ハウジング側凸部26と非対応の領域に配されている。各アーム側凸部27の幅寸法は、アーム側凹部25の幅寸法に比べて十分に大きい寸法に設定されている。この幅寸法の設定は、アーム部を含む第1ハウジング10を射出成形する際に、比較的肉薄のロックアーム18における溶融樹脂の流れを良好にするために好適である。
【0030】
また、第1ハウジング10の上面には、ハウジング側凹部24の上面から立ち上がる左右対称な一対の壁部28が形成されている。一対の壁部28は、ハウジング側対向面17の左右両側縁に配され、左右両側からロックアーム18と撓み空間23を挟むように位置している。前後方向における壁部28の形成領域は、筒状嵌合部12の後端から、ロックアーム18の後端と対応する位置に亘る範囲である。また、壁部28のうち操作部22と対応する後端部においては、そのハウジング側凹部24の上面を基準とする高さが、後方に向かって次第に低くなるように傾斜している。
【0031】
次に、本実施例の作用を説明する。図2,3に示すように、ロックアーム18が弾性撓みしていない自由状態にあるとき、ハウジング側凸部26の上面とアーム側凸部27の下面との間における上下方向(ロックアーム18の弾性撓み方向)の間隔は、撓み空間23への噛み込みが想定される電線等の異物よりも小さい寸法である。そして、このハウジング側凸部26とアーム側凸部27の上下間隔は、正常な両ハウジング10,30の嵌合過程におけるロックアーム18の弾性撓み量よりも小さい。
【0032】
しかし、ハウジング側対向面17には、アーム側凸部27と対応するハウジング側凹部24が形成され、アーム側対向面19には、ハウジング側凸部26と対応するアーム側凹部25が形成されている。そして、ロックアーム18が自由状態であるとき、ハウジング側凸部26とアーム側凹部25との上下対向間隔と、ハウジング側凹部24とアーム側凸部27との上下対向間隔は、いずれも、正常な両ハウジング10,30の嵌合過程におけるロックアーム18の弾性撓み量よりも大きく設定されている。したがって、両ハウジング10,30の嵌合過程でロックアーム18が弾性撓みする際に、ハウジング側対向面17とアーム側対向面19が干渉することがなく、ロックアーム18の弾性撓みが支障なく行われる。
【0033】
本実施例のコネクタは、第1ハウジング10と、第1ハウジング10と嵌合可能な第2ハウジング30とを有する。第1ハウジング10には、第1ハウジング10の外面との間に確保された撓み空間23内に進入するように弾性撓みし得るロックアーム18が形成されている。第2ハウジング30には、ロックアーム18と係止することで両ハウジング10,30を嵌合状態ロックするロック部33が形成されている。そして、第1ハウジング10の外面におけるロックアーム18との対向面(ハウジング側対向面17)には、その一部を部分的に凹ませた形態のハウジング側凹部24が形成されている。一方、ロックアーム18における第1ハウジング10との対向面(アーム側対向面19)には、その少なくともハウジング側凹部24と非対応の領域を凹ませた形態のアーム側凹部25が形成されている。
【0034】
この構成によれば、第1ハウジング10の外面とロックアーム18との間の撓み空間23は、ハウジング側凹部24とアーム側凹部25を形成したことにより、ラビリンス状に屈曲した形状をなしている。したがって、電線等の噛込み防止のために、ハウジング側対向面17のうちハウジング側凹部24が形成されていない領域(ハウジング側凸部26)と、ロックアーム18側対向面のうちアーム側凹部25が形成されていない領域(アーム側凸部27)との間隔を狭くしても、ロックアーム18の撓み代を十分に確保することができる。
【0035】
また、第1ハウジング10を第2ハウジング30との嵌合方向に見たときの正面形状が、略円形とされており、第1ハウジング10の内部には複数のキャビティ14が略方形領域内において整列するように形成されている。そして、第1ハウジング10の外面には、第1ハウジング10の正面形状と複数のキャビティ14の形成領域との形状の相違に起因する段差状凹部15が形成され、この段差状凹部15にロックアーム18と撓み空間23が配されている。さらに、第1ハウジング10におけるロックアーム18との対向面(ハウジング側対向面17)には、一対のハウジング側凹部24を区画するハウジング側凸部26が、幅方向中央部においてロックアーム18側へ突出するように形成されており、アーム側凹部25が、ハウジング側凸部26と対応するように幅方向中央部に配されている。
【0036】
つまり、本実施例では、第1ハウジング10の正面形状が略円形であり、複数のキャビティ14の形成領域が略方形であるという形状の相違に着目し、ハウジング側凸部26とアーム側凹部25を、幅方向中央部に配した。段差状凹部15の上面(底面)を基準とする第1ハウジング10の略円形の外周形状との寸法差は、幅方向中央部で最大となる。したがって、ハウジング側凸部26の高さ寸法とアーム側凹部25の深さ寸法を、十分に大きく確保することができた。
【0037】
また、第1ハウジング10には、撓み空間23を両側から挟むように配置された一対の壁部28が形成されているので、壁部28によって撓み空間23への異物の侵入を防止できる。また、ロックアーム18には、ロックアーム18をロック部33との係止から解除させる際に押し操作される操作部22が形成されていることに着目し、壁部28は、操作部22と対応する領域を他の領域よりも低くした形態となっている。これにより、操作部22を押し操作する際に、作業者の指が壁部28と干渉し難くなので、ロック解除の作業性が良好となる。
【0038】
また、第1ハウジング10の内部には、第1ハウジング10の後端面に開口するキャビティ14が形成されている。そして、第1ハウジング10におけるロックアーム18との対向面(ハウジング側対向面17)には、隣り合う2つのハウジング側凹部24を区画するハウジング側凸部26が形成され、このハウジング側凸部26の形成領域は、第1ハウジング10の後端部に達する範囲とされている。この構成によれば、キャビティ14とハウジング側凹部24とを区画する外壁14Aの厚さや、この外壁14Aに連なってキャビティ14同士を区画する隔壁14Bの厚さが薄くても、ハウジング側凸部26によって外壁14Aや隔壁14Bが補強されている。
【0039】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、ハウジング側凸部の幅寸法よりもアーム側凹部の幅寸法を大きくしたが、ハウジング側凸部の幅寸法とアーム側凹部の幅寸法をほぼ同じ寸法としてもよい。このようにすれば、ロックアームが弾性撓みする過程で、ハウジング側凸部とアーム側凹部との摺接によって、ガイド機能を発揮させることができる。
(2)上記実施例では、第1ハウジングに撓み空間を両側から挟む一対の壁部を形成したが、このような壁部を形成しない形態としてもよい。
(3)上記実施例では、壁部が操作部と対応する領域を他の領域よりも低くした形態であるが、壁部は全領域に亘って一定の高さであってもよい。
(4)上記実施例では、ハウジング側凸部の形成領域が第1ハウジングの後端部に達するようにしたが、ハウジング側凸部の形成領域は第1ハウジングの後端よりも前方の位置、あるいは、ロックアームの後端よりも前方の位置であってもよい。
(5)上記実施例では、ロックアームがシーソー状に傾動撓みする形態としたが、ロックアームは、嵌合方向における後方へ片持ち状に延出した形態や、両端が第1ハウジングの外面に支持された両持ち梁形態であってもよい。
(6)上記実施例では、2つのハウジング側凹部を形成したが、ハウジング凹部の数は、1つでもよく、3つ以上でもよい。
(7)上記実施例では、1つのアーム側凹部を形成したが、アーム側凹部の数は、複数であってもよい。
(8)上記実施例では、第1ハウジングを第2ハウジングとの嵌合方向に見た正面形状が略円形であるが、第1ハウジングの正面形状は略方形でもよい。
【符号の説明】
【0040】
10…第1ハウジング
14…キャビティ
15…段差状凹部
17…ハウジング側対向面(対向面)
18…ロックアーム
19…アーム側対向面(対向面)
22…操作部
23…撓み空間
24…ハウジング側凹部
25…アーム側凹部
26…ハウジング側凸部
28…壁部
30…第2ハウジング
33…ロック部
図1
図2
図3
図4
図5