(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249298
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】グロメットおよびグロメット付きワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20171211BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20171211BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20171211BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20171211BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
H02G3/22
B60R16/02 622
B60R16/02 623U
F16L5/02 A
H01B17/58 C
H01B7/00 301
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-257061(P2014-257061)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-119750(P2016-119750A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 洋和
【審査官】
松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−225509(JP,A)
【文献】
特開平08−185746(JP,A)
【文献】
特開2004−320951(JP,A)
【文献】
特開2000−195356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
B60R 16/02
F16L 5/02
H01B 7/00
H01B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスの外装部材を包囲する筒状をなして前記外装部材の外周面に密着する筒状部と、
前記筒状部の外周面に設けられてケースの開口部の周りに密着するシール部と、
を有し、
前記筒状部の軸方向の一端から前記シール部に向かって前記シール部に至らない位置まで延びるスリットが形成されるとともに、
前記筒状部の前記一端の周方向における一部から前記シール部とは反対側に延出する延出部が前記スリットを間にした幅方向の両側に一対設けられているグロメット。
【請求項2】
前記スリットのうち前記シール部側の端部に、前記スリットの幅寸法よりも大きい幅寸法を有する孔部が設けられている請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記筒状部の軸方向の他端から前記シール部とは反対側に延出する延出部が設けられている請求項1または請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のグロメットがワイヤハーネスに取り付けられているグロメット付きワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメットおよびグロメット付きワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車に装備される電気接続箱のように、ケースの内部に電気部品が収容されたものにおいて、ワイヤハーネスを導出入するためのケースの開口部から水が浸入することを防ぐべく、開口部にゴム成形品のグロメットを装着する技術が知られている。
【0003】
例えば下記特許文献1に記載のグロメットは、ワイヤハーネスを包囲する筒状をなしてその内周面がワイヤハーネスの外周面に密着し、かつ外周面がケースの開口部に密着することで開口部を止水するものである。グロメットには、軸方向の全長にスリットが形成されており、スリットを開くことで、グロメットをワイヤハーネスに容易に装着することができる。そして、スリットのうちケースの外側に配される部分は、テープ巻きにより閉鎖するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−290956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにスリットをテープ巻きにより閉鎖する方法では、テープの巻き方や、テープの劣化等により十分にスリットが閉鎖されない虞があり、シール性を安定させることが難しかった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ワイヤハーネスに容易に装着することができ、かつシール性を安定させることが可能なグロメットおよびグロメット付きワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のグロメットは、ワイヤハーネスの外装部材を包囲する筒状をなして前記外装部材の外周面に密着する筒状部と、前記筒状部の外周面に設けられてケースの開口部の周りに密着するシール部と、を有し、前記筒状部の軸方向の一端から前記シール部
に向かって前記シール部に至らない位置まで延びるスリットが形成されるとともに、前記筒状部の前記一端
の周方向における一部から前記
シール部とは反対側に延出する延出部が前記スリットを間にした幅方向の両側に一対設けられているものである。
本発明のグロメット付きワイヤハーネスは、前記グロメットがワイヤハーネスに取り付けられているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一対の延出部を把持してスリットを開くことで、比較的容易にグロメットをワイヤハーネスに装着することができ、シール部にスリットが形成されていないから、シール性を安定させることができる。すなわち、グロメットをワイヤハーネスに容易に装着することができ、かつシール性を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】グロメットによってケースの開口部を止水した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
本発明のグロメットは、前記スリットのうち前記シール部
側の端部に、前記スリットの幅寸法よりも大きい幅寸法を有する孔部が設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、スリットを大きく開いても、スリットが裂けてシール部に至ることを防ぐことができる。
【0011】
また、本発明のグロメットは、前記筒状部の軸方向の他端から
前記シール部とは反対側に延出する延出部が設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、軸方向における両端部に設けられた延出部にテープを巻き付ける等により、グロメットをワイヤハーネスに固着することができる。
【0012】
<実施例>
以下、本発明を具体化した一実施例について、
図1および
図2を参照しつつ詳細に説明する。
本実施例におけるグロメット10は、図示しない電気部品が内部に収容されたケース30において、ワイヤハーネス40を導出入するために設けられた開口部31から、ケース30内に水が浸入することを防ぐべく、開口部31に嵌着されるものである。
【0013】
ケース30は、上方に開口するロアカバー32と、ロアカバー32の上面側を覆うアッパカバー33とを有している。開口部31は、ロアカバー32の側壁に形成された切欠部34を有し、アッパカバー33により切欠部34の上方が塞がれることで全周閉じた形態となる。以下、各構成部材において、
図2の右側(ケース30の内側)を前方、左側(ケース30の外側)を後方、また上側を上方、下側を下方として説明する。
【0014】
グロメット10は、弾性を有するゴム材によって一体に形成され、内側にコルゲートチューブ(外装部材)41を包囲する筒状をなしてコルゲートチューブ41に密着する筒状部11と、筒状部11の後端(軸方向の一端)から後方に延びる一対の第1延出部12と、筒状部11の前端(軸方向の他端)から前方に延びる一対の第2延出部13とを備えている。
【0015】
コルゲートチューブ41は、内側にワイヤハーネス40の電線44が複数本挿通される円筒状をなしている。コルゲートチューブ41は、周方向に連続する山部42と谷部43とが軸方向に交互に設けられた樹脂成形品であり、屈曲しやすいものである。
【0016】
筒状部11は、内部空間がコルゲートチューブ41の外形に整合する大きさの円筒形状をなし、その内周面は、コルゲートチューブ41の外周面に密着可能なシール面14とされている。
【0017】
グロメット10がケース30の開口部31に嵌着された状態では、筒状部11のうち略前半部分がケース30の内側に突出して配され、略後半部分がアッパカバー33とロアカバー32とに挟み込まれる。以下、筒状部11のうちケース30の内側に収容される部分を収容部15、アッパカバー33とロアカバー32とに挟み込まれる部分を挟持部16と称する。
【0018】
収容部15の内周面(シール面14)には、コルゲートチューブ41の凹凸形状(山部42および谷部43)に係止可能な係止部17が設けられている。係止部17は、コルゲートチューブ41の谷部43に嵌合可能な複数(本実施例では3つ)の突部18を備え、軸方向に隣接する突部18の間には、コルゲートチューブ41の山部42が入り込むことが可能な溝部19が形成されている。各突部18および溝部19は、それぞれコルゲートチューブ41の外形(山部42および谷部43)に整合する周方向に連続した形状をなしている。
【0019】
挟持部16の外周面には、ケース30の開口部31の内周面35に密着するリップ部(シール部)21が設けられている。リップ部21は、挟持部16の外周面に全周にわたり連続して突設され、開口部31の内周面35に全周にわたり密着可能とされている。リップ部21は、挟持部16のうち前側寄り(収容部15側寄り)の位置に設けられている。なお、グロメット10はケース30の外側に突出することなく開口部31に嵌着され、筒状部11の後端はケース30の外面に揃った位置に配される。
【0020】
筒状部11には、
図1に示すように、後端(軸方向の一端)からリップ部21の手前の位置まで軸方向に沿って直線状に延びるスリット22が形成され、筒状部11の後端はスリット22により切り離されている。スリット22の前端部(リップ部21の手前に位置する端部)には、スリット22の幅寸法よりも大きい幅寸法を有する孔部23が形成されている。孔部23は、円形状をなして筒状部11の内外方向に貫通している。
【0021】
第1延出部12は、スリット22を間にした幅方向の両側に一対が設けられている。各第1延出部12は、筒状部11の周方向における一部から段差なく後方へ延出する形態をなし、コルゲートチューブ41の外周面の周方向における一部に沿って配される。各第1延出部12は、筒状部11の半径と同等の半径を有する円弧形状をなしている。一対の第1延出部12は、筒状部11の軸線を中心に対称な形状とされている。一対の第1延出部12の間は上下方向に開口している。
【0022】
第2延出部13は、第1延出部12と前後方向に対称な形状をなし、筒状部11の幅方向の両側に一対が設けられている。各第2延出部13は円弧形状をなし、筒状部11の周方向における一部から前方へ延出している。
【0023】
次に、グロメット10を用いてケース30の開口部31をシールする作業の一例を説明する。
まず、ワイヤハーネス40にグロメット10を装着する。ワイヤハーネス40の先方からグロメット10を後方に通して装着する。ワイヤハーネス40のうちコルゲートチューブ41から先方に引き出されている電線44や図示しない端子金具等はコルゲートチューブ41に比して細いので、スムーズにグロメット10を通すことができる。
【0024】
そして、グロメット10がコルゲートチューブ41の端部に至ったら、グロメット10の後側に延出している一対の第1延出部12を両手で把持し、一対の第1延出部12を開いてスリット22を広げ、筒状部11をコルゲートチューブ41の端部に被せる。その際、第1延出部12を片方ずつ交互に引っ張るようにして、コルゲートチューブ41の前端と筒状部11の前端とがほぼ揃う位置まで引っ張り、筒状部11をコルゲートチューブ41の端部へ被せ付ける。グロメット10は、係止部17がコルゲートチューブ41の外周面に係止することで、コルゲートチューブ41に対し軸方向に固定される。
【0025】
次いで、ワイヤハーネス40にグロメット10を固着する。第1延出部12および第2延出部13のまわりにテープTを巻き付ける。テープTは、第1延出部12からコルゲートチューブ41にかけて螺旋状に巻き付けられ、また第2延出部13から電線44にかけて螺旋状に巻き付けられる。詳しくは、テープTは筒状部11の後方においてはコルゲートチューブ41の外周面のうち一対の第1延出部12の間の開口から外側に露出している部分および第1延出部12の外周面に巻き付けられ、また筒状部11の前方においては束ねられた電線44の外周面のうち一対の第2延出部13の間の開口から外側に露出している部分および第2延出部13の外周面に巻き付けられる。これにより、グロメット10は、筒状部11がコルゲートチューブ41の端部に密着した状態で、ワイヤハーネス40に固着される。なお、テープ巻きではなく第1延出部12または第2延出部13のまわりに結束バンドを締め付ける等によりグロメット10をワイヤハーネス40に固着してもよい。
【0026】
次に、ワイヤハーネス40に固着されたグロメット10をケース30の開口部31に嵌め込む。グロメット10の挟持部16をロアカバー32の切欠部34に上方から嵌め込み、アッパカバー33を被せる。すると、グロメット10の挟持部16がロアカバー32とアッパカバー33との間で挟み込まれ、リップ部21が弾性的に潰れて開口部31の内周面35の全周に密着する。こうして、筒状部11のリップ部21が開口部31に、筒状部11のシール面14がコルゲートチューブ41の外周面にそれぞれ密着した状態になる。
以上により、グロメット10を用いてケース30の開口部31をシールする作業が完了する。
【0027】
次に、上記のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
本実施例のグロメット10は、ワイヤハーネス40のコルゲートチューブ41を包囲する筒状をなしてその内周面がコルゲートチューブ41の外周面に密着する筒状部11と、筒状部11の外周面に設けられてケース30の開口部31の周りに密着するリップ部21と、を有し、筒状部11の後端(軸方向の一端)からリップ部21の手前の位置まで軸方向に沿って延びるスリット22が形成されるとともに、筒状部11の後端から軸方向に延出する第1延出部12がスリット22を間にした幅方向の両側に一対設けられている。
【0028】
この構成によれば、一対の第1延出部12を把持してスリット22を開くことで、比較的容易にワイヤハーネス40にグロメット10を装着することができる。また、リップ部21にスリット22が形成されていないから、シール性を安定させることができる。すなわち、グロメット10をワイヤハーネス40に容易に装着することができ、かつシール性を安定させることができる。
【0029】
また、スリット22のうちリップ部21の手前に位置する端部に、スリット22の幅寸法よりも大きい幅寸法を有する孔部23が設けられている。この構成によれば、スリット22を大きく開いても、スリット22が裂けてシール部に至ることを防ぐことができる。
【0030】
また、筒状部11の前端(軸方向の他端)から軸方向に延出する第2延出部13が設けられている。この構成によれば、前後両端部に設けられた第1延出部12および第2延出部13にテープTを巻き付ける等により、グロメット10をワイヤハーネス40に固着することができる。
【0031】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、孔部23は円形状とされているが、これに限らず、孔部の形状はいかなる形状であってもよく、例えば方形状であってもよい。
(2)上記実施例では、第2延出部13が設けられているが、これに限らず、第2延出部は必ずしも設けなくても良い。
(3)上記実施例では、シール部が開口部31の内周面35に密着するリップ部21である場合を例示したが、これに限らず、シール部は開口部の周りに密着するものであればどのような形態のものであってもよく、例えば、シール部は、ケースの内面側において開口部の周りに密着するものであってもよい。
(4)上記実施例では、ワイヤハーネス40の外装部材がコルゲートチューブ41である場合について説明したが、これに限らず、外装部材は、例えば複数本の電線を束ねるようにして外周に巻き付けられたテープであってもよく、また、各種の電線保護用チューブ等であってもよい。
(5)上記実施例では、筒状部11のシール面14に、コルゲートチューブ41の外周面に係止する係止部17が設けられているが、これに限らず、筒状部のシール面は、コルゲートチューブの内周面に密着可能であればどのような形状であってもよく、例えば上記のような係止部を有さない平坦な面であってもよく、また例えば、コルゲートチューブに密着するリップ部を有するものであっても良い。
(6)上記実施例では、グロメット10の係止部17に、コルゲートチューブ41の谷部43に係止可能な複数の突部18が形成されているが、これに限らず、例えばグロメットの係止部に一の突部のみを設けて、コルゲートチューブと係止させるものとしてもよい。
(7)上記実施例では、グロメット10に第2延出部13が一対設けられているが、これに限らず、第2延出部の数は適宜変更することができ、1のみまたは3以上の第2延出部を設けても良い。
(8)上記実施例では、一対の第2延出部13の間があいているが、これに限らず、例えば第2延出部を全周にわたって閉じた形態としてもよい。
(9)上記実施例では、グロメット10に第1延出部12が一対設けられているが、これに限らず、幅方向の両側に加えて、例えば下側に延出部を設けても良い。
【符号の説明】
【0032】
10…グロメット
11…筒状部
12…第1延出部
13…第2延出部
21…リップ部(シール部)
22…スリット
23…孔部
30…ケース
31…開口部
40…ワイヤハーネス
41…コルゲートチューブ(外装部材)