(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態における電気自動車の電力供給システムについて
図1および
図2を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態1における電気自動車の電力供給システムの構成を説明する図である。
図2はこの電気自動車の電力供給システムの構成を示すブロック図である。なお、
図2において、実線矢印は信号の流れを、破線矢印は電力の流れを表している。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施の形態における電気自動車の電力供給システムは道路内に設置された給電装置2と、この給電装置2から給電を受ける電気自動車3と、により構成される。より具体的には、電気自動車3が、受電装置4にて給電装置2から給電された電力を受けて蓄電するものである。
【0018】
本発明の実施の形態1における電気自動車3は電気により推進力を得る車両であり、タイヤへ伝達される駆動力を電力にて発生させる電動機を備えている。この電動機は、蓄電部42(
図2参照)の電力により駆動する。また、蓄電部42に蓄積される電力は、電気自動車3の外部から供給される。
【0019】
本発明の電気自動車3には、電動機のみで推進するEV(Electric Vehicle)、および、エンジンおよび電動機で推進し、電気自動車3の外部にある電源から蓄電部42へ電力を供給することが可能なプラグインハイブリッド車(Plug-in Hybrid Vehicle)等が含まれる。
【0020】
以下、給電装置2および受電装置4の詳細な構成について詳細に説明する。
【0021】
給電装置2は、電気自動車3の受電部41へ非接触で電力を供給する給電部21と、所定の道路上の範囲内に電気自動車3が進入したか否かを検出する車両検知部22と、電気自動車3と通信を行う給電側通信部23と、給電装置2の各部を制御する給電側制御部24と、を備える。
【0022】
電気自動車3は、
図1の路面Aの上の所定範囲(以下「充電可能領域B」)内に停車すると非接触による充電が可能となる。
図1では、電気自動車3aが充電可能領域Bに入ろうとしており、電気自動車3bが電気自動車3aに隣接して停車している場合を示している。
【0023】
充電可能領域Bに電気自動車3aが入ったとき、給電装置2は、電気自動車3aと通信を確立し、電気自動車3aに電力を供給する。このとき、給電装置2には、隣接して停車している電気自動車3bと通信が確立しないように制御を行うことが求められる。以下、給電装置2の各部を詳細に説明する。
【0024】
給電部21は、電力を発生させ、電気自動車3に非接触にて電力を供給する。給電部21は、道路の路面近傍に配置されることが好ましい。
【0025】
給電部21は、給電コイルおよびこの給電コイルを駆動するコイル駆動回路を備える。コイル駆動回路は、所定周波数のパルスを給電コイルに加えることにより給電コイルを駆動させる。このパルスの所定周波数(チョッパ周波数)は、給電側制御部24により制御される。このパルスを励磁電流として、電流に比例した磁界が給電コイルに生じる。この磁界により受電部41の受電コイルに起電力が生成され、給電部21から受電部41に電力が供給される。
【0026】
ここで、電気自動車3が充電可能領域Bに入ったときに給電部21が供給する電力の大きさを第1の電力値Paとし、給電装置2と電気自動車3との通信が確立した後に給電部21が供給する電力の大きさを第2の電力値Pbとする。第1の電力値Paは人体に影響しない程度の電力である。ここで「人体に影響しない程度の電力」とは、給電部21近傍に動物等がいたとしても影響を及ぼさない程度の微弱な電力の大きさをいう。第2の電力値Pbは、第1の電力値Paよりも大きく、受電部41が蓄電部42へ蓄電することが可能な大きさである。例えば、第1の電力値Paは、数wから数十w程度であり、第2の電力値Pbは、数Kwから数十Kw程度である。
【0027】
車両検知部22は、電気自動車3が充電可能領域Bに入ったか否かを判定するためのセンサである。車両検知部22は、電気自動車3が充電可能領域Bに入ったか否かの判定結果を給電側制御部24へ送信する。
【0028】
車両検知部22は、例えば、所定の距離以内に物体があるか否かを検出する赤外線センサを有する。この赤外線センサは、充電可能領域Bの境界の対抗する位置に複数設置される。車両検知部22は、これらの複数の赤外線センサのすべてが物体を検知した場合に、充電可能領域B内に電気自動車3が入ったと判定する。なお、車両検知部22の他の例として、道路の周辺に、車両を撮像する撮像カメラを設置し、この撮像カメラで撮像した画像により、電気自動車3が充電可能領域Bに入出するのを検知するようにしてもよい。
【0029】
給電側通信部23は、無線により後述する電気自動車3の車両側通信部43と通信を行う。給電側通信部23は、給電側制御部24により制御される。
【0030】
給電側通信部23は、電波を受信するアンテナ、および、受信信号を変調または復調する変復調部を備える。給電側通信部23は、常時給電される。給電側通信部23は、道路の路面近傍に配置されることが好ましい。
【0031】
なお、本発明において、通信方式には限定はないが、通信可能距離が数メートル程度の近距離通信を行う通信方式が望ましい。なぜなら、給電側通信部23は、給電部21が電力を供給する電気自動車3(充電可能領域Bに入った電気自動車3)の車両側通信部43と通信ができれば十分であり、例えば
図1のように、電力を供給する電気自動車3aに隣接して停車している電気自動車3bと通信が確立しないようにする必要があるからである。なお、本発明に適用できる通信方式として、例えば、ZigBee(登録商標)、無線LAN、特定省電力帯域を使用した通信などが挙げられる。
【0032】
給電側制御部24は、車両検知部22の検出結果、および、給電側通信部23が受信した情報に応じて給電部21を制御する。
【0033】
具体的には、電気自動車3が充電可能領域B内に入ったことを車両検知部22が検知すると、給電側制御部24は、給電部21が供給する電力の大きさを第1の電力値Paに設定する。続いて、給電側制御部24は、給電側通信部23と車両側通信部43とが通信を確立するために、給電側通信部23にデータの送受信を行わせ、通信が確立した場合、給電部21が供給する電力の大きさを第2の電力値Pbに設定する。なお、給電側制御部24が行う制御の詳細は後述する。
【0034】
受電装置4は、電気自動車3の給電部21から供給された電力を受ける受電部41と、受電部41が受けた電力を蓄積する蓄電部42と、給電側通信部23と通信を行う車両側通信部43と、受電部41および車両側通信部43を制御する車両側制御部44と、を備える。以下、受電装置4の各部を詳細に説明する。
【0035】
受電部41は、電気自動車3の車体の底面に設けられ、受電コイルと整流回路とを備える。受電部41は、電気自動車3の道路に対抗する底面側に配置されるのが好ましい。
【0036】
受電コイルの表面は、合成樹脂等で覆われている。この受電コイルは、例えば、同一平面状に形成されたコイルであり、電磁誘導により給電部21から電力を受けることが可能となっている。電磁誘導により受けた電力は、整流回路に入力され直流に変換されて蓄電部42へ出力される。
【0037】
蓄電部42は、受電部41が受けた電力を蓄積する。蓄電部42には、エネルギ密度の高い二次電池(例えば、ニッケル水素充電池、または、リチウムイオン充電池)または、高容量のキャパシタが用いられる。蓄電部42に蓄積された電力は、電気自動車3のタイヤを駆動させるための動力源となり、電動機を動作するために使用される。蓄電部42に蓄積された電力は、電動機の他、例えば、カーナビゲーション装置、カーオーディオなどのアクセサリ、および、パワーウインドウ、ETC(登録商標)、ECU(Electronic Control Unit)などの電装品を動作させるための電力としても使用される。
【0038】
車両側通信部43は、無線により給電装置2の給電側通信部23と通信を行う。車両側通信部43は、車両側制御部44により制御される。
【0039】
車両側通信部43は、電波を受信するアンテナ、および、受信信号を変調または復調する変復調部を備える。車両側通信部43は、電気自動車3の道路に対抗する底面側に配置されるのが好ましい。そのため、アンテナも電気自動車3の底面から突出しない平面形状のアンテナであることが好ましい。
【0040】
なお、本発明において、通信方式には限定はないが、通信可能距離が数メートル程度の近距離通信を行う通信方式が望ましい。
【0041】
車両側通信部43は、受電部41が受けた電力に基づいて起動する。具体的には、車両側通信部43は、給電部21から受電部41に第1の電力値Pa以上の電力が供給されたときに起動し、受電部41が出力する電力により動作する。
【0042】
起動後、車両側通信部43は、給電側通信部23と通信を確立するための処理を行う。車両側通信部43は、通信が確立するまでは受電部41が受けた電力により動作し、通信が確立した後には蓄電部42の電力により動作する。
【0043】
車両側通信部43は、通信が確立した後には、通信待ちの状態となる。車両側通信部43が、通信が確立するまで受電部41が受けた電力により動作することにより、蓄電部42の電力を持ち出すことなく通信を開始することが可能となる。
【0044】
車両側制御部44は、受電装置4の車両側通信部43および受電部41を制御する。具体的には、車両側制御部44は、受電準備のために受電部41を制御するとともに、給電側通信部23と車両側通信部43とが通信を確立するために、車両側通信部43にデータを送受信させる。なお、車両側制御部44が行う制御の詳細は後述する。
【0045】
車両側制御部44および給電側制御部24は、CPU、ROM、RAM等とから構成される。CPUが、ROMに格納されるプログラムを実行することにより、各種演算、制御信号の出力等を行う。また、CPUは、プログラムの実行中、RAMを作業領域として使用する。
【0046】
次に、以上のように構成された電気自動車の電力供給システムについて、
図3から
図5を用いてその処理動作を説明する。
図3は給電装置の動作を説明する図である。
図4は受電装置の動作を説明する図である。また、
図5は通信確立処理を説明する図である。
【0047】
まず、
図3を用いて給電装置の動作を説明する。
図3の「スタート」では、給電部21は、電力を供給していない。
【0048】
最初に、給電側制御部24は、車両検知部22の検出結果に基づいて電気自動車3が充電可能領域Bに入ったか否かを判定する(S10)。電気自動車3が充電可能領域Bに入っていない場合(S10でNO)、給電側制御部24は再度S10を実行する。
【0049】
電気自動車3が充電可能領域Bに入った場合(S10でYES)、給電側制御部24は、給電部21が第1の電力値Paで電力を供給するように給電部21を制御する(S11)。
【0050】
次に、給電側通信部23は、充電可能領域Bに入った電気自動車3の車両側通信部43との通信を確立する処理を行う(S12)。なお、この処理の詳細は後述する。
【0051】
S12にて通信が確立された後、給電側制御部24は、給電部21が第2の電力値Pbで電力を供給するように給電部21を制御する(S13)。S13にて給電部21が第2の電力値Pbとなると電気自動車3は受電を開始する。
【0052】
S13にて電力の供給が開始された後、給電側制御部24は、電気自動車3が充電可能領域Bを出たか否かを判断する(S14)。充電可能領域Bを出た場合(S14でYES)、給電側制御部24は、給電部21に対して給電を停止させる(S16)。この処理は、電気自動車3が充電を完了したか否かにかかわらず行われる。電気自動車3が充電中であっても、なんらかの要因で電気自動車3が移動した場合、第2の電力値Pbで給電されている給電部21が露出することになり危険であるからである。
【0053】
電気自動車3が充電可能領域Bから出ていない場合(S14でNO)、給電側制御部24は、給電側通信部23が車両側通信部43から給電停止信号を受信したか否かを判断する(S15)。給電停止信号を受信したとき(S15でYES)、給電側制御部24は、給電部21に対して給電を停止させる(S16)。一方、電停止信号を受信していないとき(S15でNO)、給電側制御部24は、処理をS14に戻す。S16が終了すると、
図3のスタートと同じ状態となる。
【0054】
次に、
図4を用いて受電装置4の動作を説明する。
【0055】
最初に、車両側制御部44は、受電部41が第1の電力値Paの電力を受けるための準備を行う(S20)。この準備は、受電部41が受電を可能にするための処理である。この準備は、例えば、車両の速度が所定の速度以下になった場合に開始される。高速で走行している際に充電することは通常考えられないからである。
【0056】
S20が終了すると、車両側制御部44は、車両側通信部43が起動したか否かを判断する(S21)。車両側通信部43は、受電部41が第1の電力値Paの電力を受けた場合に起動する。車両側通信部43が起動していないとき(S21でNO)、車両側制御部44はS21を繰り返す。
【0057】
車両側通信部43は、受電部41が第1の電力値Paの電力を受けて起動した後(S21でYES)、給電装置2の給電側通信部23との通信を確立する処理を行う(S22)。なお、この処理の詳細は後述する。
【0058】
S21、S22において、受電部41が第1の電力値Paの電力を受けているときには、車両側通信部43は、受電部41から出力される電力にて動作する。
【0059】
S22にて通信が確立した後、車両側制御部44は、受電部41が第2の電力値Pbの電力を受けるための準備を行う(S23)。この準備は、例えば、図示しない受電部41と蓄電部42とを接続するリレーをオンする処理などをいう。
【0060】
S22にて通信が確立した後には、車両側制御部44は、車両側通信部43が蓄電部42から給電された電力を電源として動作するように、車両側通信部43への給電元を切り換える。ひとたび通信が確立した後には、通信を確実にするために安定して給電を行うことが可能な蓄電部42に給電元を切り換えることが好ましいからである。
【0061】
S23が終了すると、受電部41は、給電部21から受電を開始する。車両側制御部44は、この受電中に、蓄電部42が満充電となったか否かを判断する(S24)。
【0062】
蓄電部42が満充電でないと判断すると(S24でNO)、車両側制御部44は、引き続き受電部41が受電を継続するために、所定時間経過後に、S24の処理を再び行う。
【0063】
蓄電部42が満充電となったと判断すると(S24でYES)、車両側制御部44は、車両側通信部43から給電停止信号を送信させる(S25)。この給電停止信号は、給電装置2に対して給電部21の第2の電力値Pbの供給を停止させるための信号である。蓄電部42が満充電となった後も充電をし続けると、過充電となり蓄電部42の加熱・寿命の低下などを招く。そこで、給電停止信号により給電を停止させる。
【0064】
給電停止信号を送信した後、車両側制御部44は受電終了処理を行う。ここで、受電終了処理とは、例えば、図示しない受電部41と蓄電部42とを接続するリレーをオフする処理などをいう。
【0065】
次に、
図5を用いて通信確立処理について説明する。
図5の左側のフロー図が給電側の処理(S12)であり、右側のフロー図が車両側の処理(S22)である。
【0066】
S21にて車両側通信部43が起動した後、車両側制御部44は、乱数を発生させる(S221)。次に、車両側制御部44は、この乱数に基づいて所定の時間Ttestおよび所定の電力値Ptestを生成する(S222)。
【0067】
これら所定の時間Ttestおよび所定の電力値Ptestは、給電装置2への設定値となるものである。車両側制御部44は、所定の時間Ttestが経過した後に、給電部21が所定の電力値Ptestとなっていれば給電装置2と通信が確立できたと判断する。
【0068】
ここで、所定の時間Ttestは、数秒程度の時間である。この時間が、長過ぎると給電開始までに時間を要してしまう。一方、この時間が短過ぎると、給電装置2が応答できなくなる。
【0069】
また、所定の電力値Ptestは、第1の電力値Paより大きく、第2の電力値Pbより小さい値であって、数wから数十Kw程度である。この電力値Ptestは、大き過ぎると給電部21の周辺に影響を及ぼし、小さすぎると車両側通信部43が起動できなくなる。
【0070】
例えば、S221にて車両側制御部44が8ビット(0から255)の乱数を発生させたとすると、車両側制御部44は、所定の時間Ttestおよび所定の電力値Ptestの上記望ましい範囲を256等分して、発生させた乱数に対応する数値を選択するようにすればよい。複数の給電装置2が併設され、各々の給電装置2の上に電気自動車3が停車して充電を行う場合、隣り合う車両の所定の時間Ttestおよび所定の電力値Ptestを同じ値にすると、給電装置2と電気自動車3との対応が誤って判断されてしまうおそれがある。乱数を用いることにより、隣り合う車両の所定の時間Ttestおよび所定の電力値Ptestが同じ値になることを極力避けることができる。
【0071】
次に、車両側制御部44は、所定の時間Ttestおよび所定の電力値Ptestを含んだ要求信号を生成して車両側通信部43に送信させる(S223)。
【0072】
車両側通信部43から送信された要求信号は、給電側通信部23に受信される。給電側制御部24は、S11において給電部21が第1の電力値Paで電力供給を開始した時点から所定時間Tlimit以内に給電側通信部23が要求信号を受信したか否かを判断する(S121)。所定時間Tlimitは、例えば、数秒程度の時間である。
【0073】
所定時間Tlimit以内に要求信号を受信していない場合(S121がNO)、給電側制御部24は、給電部21に対して供電を停止させる(S16)。第1の電力値Paにて電力供給を開始した後、車両が充電可能領域Bを通過してしまったような場合を考えると、継続して第1の電力値Paにて電力供給を行うことは電力の浪費となる。そこで、所定時間内に応答がない場合は、給電対象がないと判断して給電を停止することが好ましい。
【0074】
所定時間Tlimit以内に要求信号を受信している場合(S121がYES)、給電側制御部24は、要求信号に含まれた所定の時間Ttestおよび所定の電力値Ptestに基づいて給電部21を制御する。具体的には給電側通信部23が要求信号を受信してから所定の時間Ttestが経過した後に給電部21の供給電力が所定の電力値Ptestとなるように制御する(S122)。
【0075】
次に、車両側制御部44は、要求信号を送信してから所定の時間Ttestが経過した後に受電部41で受けた電力が所定の電力値Ptestとなっているか否かを判断する(S224)。
【0076】
電力値Ptestとなっていなければ(S224でNO)、車両側制御部44は、給電装置2と通信が確立できなかったと判断し、処理を
図4のスタートに戻す。
【0077】
一方、所定の電力値Ptestとなっていれば(S224でYES)、車両側制御部44は、給電側通信部23と車両側通信部43との間で通信が確立できたと判断し、車両側通信部43を制御して給電開始信号を送信させる(S225)。次に、車両側制御部44は処理をS23に進める。
【0078】
S225にて車両側通信部43から送信された給電開始信号は、給電側通信部23にて受信される。給電側制御部24は、S122の電力供給を開始してから所定時間Tlimit以内に給電開始信号を受信したか否かを判断する(S123)。所定時間Tlimit以内に受信できない場合(S123でNO)、給電側制御部24は、給電部21に対して給電を停止させる(S16)。
【0079】
一方、所定時間Tlimit以内に給電開始信号を受信した場合(S123でYES)、給電側制御部24は、給電側通信部23と車両側通信部43との間で通信が確立できたと判断し、処理をS13に進めて、給電部21が第2の電力値Pbで電力供給するように制御する。なお、所定時間Tlimit以内に受信できたか否かを判断する理由はS121に記載した理由と同じである。
【0080】
なお、給電側制御部24は、S121において、所定時間Tlimit以内に要求信号を受信している場合(S121がYES)に、給電側通信部23と車両側通信部43との間で通信が確立できたと判断してもよい。この場合、S222における所定の電力値Ptestの算出、S223における所定の電力値Ptestの送信が不要となる。そして、給電側制御部24は、S122において、要求信号を受信してから所定の時間Ttestが経過した後に給電部21の供給電力が第2の電力値Pbとなるように制御する。車両側制御部44は、S224において第2の電力値Pbとなっていれば、給電側通信部23と車両側通信部43との間で通信が確立できたと判断する。また、S225、S123の処理は不要となる。
【0081】
次に、
図6を用いて給電部21が供給する電力値の変化について説明する。
図6は、本発明の実施の形態1におけるタイミング図である。T0が
図3の「スタート」の状態であり、給電部21が供給する電力値はゼロである。T1は、車両が充電可能領域Bに入った場合であり(S10がYES)、給電部21が供給する電力の大きさは第1の電力値Paとなる。
【0082】
給電部21が供給する電力の大きさが第1の電力値Paとなることにより、車両側通信部43が起動し(S21がYES)、車両側通信部43が要求信号を送信する(S223)。
【0083】
給電側制御部24は、T2で車両が充電可能領域Bに入ってから所定時間Tlimit以内に給電側通信部23が要求信号を受信したとき(S121)、T2〜T3にかけて要求信号に含まれる所定の時間Ttestが経過した時点で、要求信号に含まれる所定の電力値Ptestとなるように給電部21を制御する(S122)。
【0084】
車両側制御部44は、T3にて要求信号送信から所定の時間Ttestが経過した時点で、所定の電力値Ptestとなっていることを確認すると(S224でYES)、給電開始信号を送信する(S225)。また、給電側制御部24は、T3〜T4にかけて給電部21を第2の電力値Pbとなるように制御する(S123)。
【0085】
車両が充電可能領域Bから出た場合(S14でYES)、または、蓄電部42が満充電となった場合、給電側制御部24は、給電部21に対して給電を停止させる(T4以降)。
【0086】
以上のように、本実施の形態における電力供給システムは、給電側制御部24が、電気自動車3が充電可能領域Bに入ったことを車両検知部22が検知した場合に給電部21に対して第1の電力値Paで電力を供給するように制御し、この状態で給電側通信部23と車両側通信部43との間で通信が確立できたと判断した場合に、給電部21に対して第2の電力値Pbで電力を供給するように制御する。
【0087】
これにより、給電装置2が電力供給を行う電気自動車3と、給電装置2と通信を行う電気自動車3とを正確に対応付けることができる。
【0088】
さらに、電気自動車3へ給電を行うための第2の電力値Pbよりも小さい第1の電力値Paに基づいて電気自動車3の車両側通信部43を起動させるので、給電装置2の給電部21の周辺に高い電力を放出することがなく、安全性を向上させることができる。
【0089】
なお、本実施の形態では、車両側通信部43が、通信が確立するまで受電部41に供給された電力により動作し、通信が確立した後には蓄電部42の電力により動作する場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られず、車両側通信部43が、常時、蓄電部42から給電された電力を電源として動作するようにしてもよい。このとき、車両側通信部43は、受電部41が出力する第1の電力値Pa以上の電力を受けたことを表す信号をトリガとして起動する。これにより、常時、車両側通信部43を通信待ち状態にすることができるので、車両側通信部43が受電部41により供給された電力により起動する場合と比べて通信開始までの時間を短縮することができる。
【0090】
また、本実施の形態では、S223において、車両側制御部44がS222で生成した所定の時間Ttestおよび所定電力値Ptestを含んだ要求信号を生成して車両側通信部43に送信させる場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られず、所定の時間Ttestおよび所定の電力値Ptestのいずれか一方のみを送信させることもできる。
【0091】
所定の時間Ttestのみを送信した場合には、所定の電力値Ptestは予め定めた値を給電装置2および受電装置4で共有しておくことにより、
図5のS122およびS224の動作をそのまま適用することができる。
【0092】
また、所定の電力値Ptestのみを送信した場合には、給電側制御部24は、要求信号を受信すると即座に要求信号に含まれた所定の電力値Ptestに基づいて給電部21を制御する。車両側制御部44は、S224にて要求信号を送信した後、即座に受電部41で受けた電力が所定の電力値Ptestとなっているか否かを判断するようにする。
【0093】
なお、受電部41および車両側通信部43は電気自動車3の道路に対抗する底面側に配置されるとともに、給電部21および給電側通信部23は道路の路面近傍に配置されることが好ましい。
【0094】
これにより、電気自動車3が受電部41および車両側通信部43が配置された道路の路面上に位置するのみで容易に車両側通信部43起動させることができる。さらに、電気自動車3が遮蔽材の役割をなすため、他の電気自動車と通信してしまうことを防止することができる。
【0095】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における電気自動車の電力供給システムについて
図7を用いて説明する。
図7は、本発明の実施の形態2における通信確立処理を説明する図である。なお、
図7において、実施の形態1の説明で用いた
図5と共通するステップについては、同一符号を付しその説明を省略する。
【0096】
実施の形態2は、実施の形態1の電力値Ptestの代わりに、チョッパ周波数Ftestに基づいて通信が確立したか否かを判定する点で実施の形態1と相違する。
【0097】
チョッパ周波数とは、直流の電源から電流のON−OFFを繰り返すことによって交流を作り出す際の、この電流のON−OFFの周期である。車両側制御部44は、受電部41の出力を専用の測定回路で測定することによりチョッパ周波数Ftestを求めることができる。
【0098】
図7に示すように車両側制御部44は、既に説明したS211の次に、乱数に基づいて時間Ttestおよびチョッパ周波数Ftestを算出し(S216)、この時間Ttestおよびチョッパ周波数Ftestを含めた要求信号を車両側通信部43から送信させる(S217)。
【0099】
給電側制御部24は、給電側通信部23が受信した要求信号に従い、時間Ttestが経過した後にチョッパ周波数Ftestとなるように給電部21から電力を供給するように制御する(S124)。
【0100】
車両側制御部44は、要求信号の送信から時間Ttestが経過した後に受電部41が受けた電力のチョッパ周波数Ftestとなっているか否かを判定する(S218)。車両側制御部44は、チョッパ周波数Ftestとなっていれば(S218でYES)、通信が確立できたとして給電開始信号を車両側通信部43から送信させる(S215)。
【0101】
以上のように、本実施の形態における電力供給システムは、チョッパ周波数Ftestに基づいて通信が確立したか否かを判定するようにした。実施の形態1のごとく電力値Ptestを測定する場合は、電力の絶対値の測定となるので距離による減衰で誤差を含む可能性がある。一方、チョッパ周波数Ftestの測定値は距離によらず一定である。このため、チョッパ周波数Ftestを用いることにより、電力値Ptestを用いるよりも測定誤差を小さくすることができる。
【0102】
なお、本実施の形態では、S217において、車両側制御部44は、S216で生成した所定の時間Ttestおよびチョッパ周波数Ftestを含んだ要求信号を生成して車両側通信部43に送信させる場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られず、所定の時間Ttestおよびチョッパ周波数Ftestのいずれか一方のみを送信させることもできる。
【0103】
所定の時間Ttestのみを送信した場合は、チョッパ周波数Ftestは予め定めた値を給電装置2および受電装置4で共有しておくことで
図7のS124およびS218の動作をそのまま適用することができる。
【0104】
また、チョッパ周波数Ftestのみを送信した場合は、給電側制御部24は、要求信号を受信すると即座に要求信号に含まれたチョッパ周波数Ftestに基づいて給電部21を制御する。車両側制御部44は、S218にて要求信号を送信した後、即座に受電部41で受けた電力がチョッパ周波数Ftestとなっているか否かを判断するようにする。
【0105】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3における電気自動車の電力供給システムについて
図8を用いて説明する。
図8は、本発明の実施の形態3における電気自動車の電力供給システムのブロック図である。
図8において、実線矢印は信号の流れを、破線矢印は電力の流れを表している。なお、
図8において、実施の形態1の説明で用いた
図2と共通する構成については、同一符号を付しその説明を省略する。
【0106】
実施の形態1では、車両側通信部43と給電側通信部23との通信が確立するまでは車両側通信部43は受電部41で受けた電力で動作し、通信が確立した後は蓄電部42に蓄積された電力を電源として動作する場合について説明した。これに対し、実施の形態3では、車両側通信部43は常に受電部41で受けた電力を電源として動作する。そのため、
図8では
図2に記載した蓄電部42から車両側通信部43への電源供給が削除されている。
【0107】
実施の形態1では、通信が確立した後、車両側通信部43が蓄電部42の電力で動作する。これは、受電部41から一度、蓄電部42に蓄積された電力を使用することとなる。一度、蓄電部42に電力を蓄積し、その電力を使用するときには必ず損失が発生する。
【0108】
実施の形態3では、通信が確立した後も蓄電部42に蓄電することなく、直接、受電部41から車両側通信部43へ給電するので、少ない電力損失で車両側通信部43を動作させることができる。
【0109】
(実施の形態4)
実施の形態4では、複数の給電装置が、互いに異なる第1の電力値Paで給電する場合について説明する。以下、本発明の実施の形態4における電気自動車の電力供給システムについて
図9、
図10を用いて説明する。
図9は、本発明の実施の形態4における電気自動車の電力供給システムの構成を説明する図である。
図10は、本発明の実施の形態4における通信確立処理を説明する図である。なお、本実施の形態における給電装置2および受電装置4の構成は、実施の形態1の説明で用いた
図2に示したものと同一である。
【0110】
図9では、3つの給電装置2a、2b、2cが示されている。給電装置2aの給電部21aは、充電可能領域B1に電気自動車3aが入ったとき、第1の電力値Pa1の電力を電気自動車3aに供給する。給電装置2bの給電部21bは、充電可能領域B2に電気自動車3bが入ったとき、第1の電力値Pa2の電力を電気自動車3bに供給する。給電装置2cの給電部21cは、充電可能領域B3に電気自動車3cが入ったとき、第1の電力値Pa3の電力を電気自動車3cに供給する。第1の電力値Pa1、Pa2、Pa3は、いずれも、数wから数十w程度であり、互いに異なる値である。
【0111】
次に、
図10を用いて通信確立処理について説明する。
図10の左側のフロー図が給電側の処理(S12)であり、右側のフロー図が車両側の処理(S22)である。
【0112】
S21にて車両側通信部43が起動した後、車両側制御部44は、受電部41が受信した電力値と車両識別番号を含んだ要求信号を生成して車両側通信部43に送信させる(S41)。
【0113】
車両側通信部43から送信された要求信号は、給電側通信部23に受信される。給電側制御部24は、要求信号に含まれる電力値と、S11において給電部21が供給している第1の電力値Paとが略一致しているか否かを判断する(S31)。なお、「略一致している」とは、要求信号に含まれる電力値が、第1の電力値Paを含む所定の範囲内に入っていることをいう。
【0114】
要求信号に含まれる電力値が、給電部21が供給している第1の電力値Paと一致していない場合(S31がNO)、給電側制御部24は、給電部21に対して供電を停止させる(S16)。これは、この場合には、給電装置2が電力を供給する電気自動車3と、給電装置2と通信を行う電気自動車3とが一致していないと考えられるためである。
【0115】
要求信号に含まれる電力値が、給電部21が供給している第1の電力値Paと略一致している場合(S31がYES)、給電側制御部24は、要求信号に含まれた車両識別番号を含む返答信号を生成して給電側通信部23に送信させる(S32)。なお、この場合には、給電装置が電力を供給する電気自動車と、給電装置と通信を行う電気自動車とが一致していると考えられる。
【0116】
次に、車両側制御部44は、要求信号を送信してから所定の時間Ttestが経過する前に、車両側通信部43が自己の車両識別番号を含む返答信号を受信したか否かを判断する(S42)。
【0117】
返答信号を受信していなければ(S42でNO)、車両側制御部44は、給電装置2と通信が確立できなかったと判断し処理を
図4のスタートに戻す。
【0118】
返答信号を受信していれば(S42でYES)、車両側制御部44は、給電側通信部23と車両側通信部43との間で通信が確立できたと判断し、車両側通信部43を制御して給電開始信号を送信させる(S43)。次に、車両側制御部44は処理をS23に進める。
【0119】
S43にて車両側通信部43から送信された給電開始信号は、給電側通信部23にて受信される。給電側制御部24は、S11の電力供給を開始してから所定時間Tlimit以内に給電開始信号を受信したか否かを判断する(S33)。所定時間Tlimit以内に受信できない場合(S33でNO)、給電側制御部24は、給電部21に対して給電を停止させる(S16)。
【0120】
所定時間Tlimit以内に給電開始信号を受信した場合(S33でYES)、給電側制御部24は、給電側通信部23と車両側通信部43との間で通信が確立できたと判断し、処理をS13に進めて、給電部21が第2の電力値Pbで電力供給するように制御する。
【0121】
以上のように、本実施の形態における電力供給システムは、給電側制御部24が、電気自動車3が充電可能領域Bに入ったことを車両検知部22が検知した場合に給電部21に対して第1の電力値Paで電力を供給するように制御する。このとき、各給電部21a、21b、21cは、互いに異なる第1の電力値Pa(Pa1、Pa2、Pa3)で給電する。そして、給電側制御部24が、この状態で給電側通信部23と車両側通信部43との間で通信が確立できたと判断した場合に、給電部21に対して第2の電力値Pbで電力を供給するように制御する。
【0122】
これにより、給電装置2が電力供給を行う電気自動車3と、給電装置2と通信を行う電気自動車3とを正確に対応付けることができる。
【0123】
本実施の形態において、第1の電力値Pa(Pa1、Pa2、Pa3)は、各給電装置2(2a、2b、2c)に固定で割り当てても良く、電力を供給する時間に応じて決められたパタンに従って各給電装置2(2a、2b、2c)に割り当てても良い。第1の電力値Paのパタンは給電装置2毎に異なるものである。
【0124】
この場合、車両側制御部44は、上記S41において、受電部41が受信した電力値を含んだ要求信号を生成する代わりに、受電部41が受信した第1の電力値Paのパタンを含んだ要求信号を生成する。給電側制御部24は、上記S32において、要求信号に含まれる第1の電力値Paのパタンが、自己の給電装置2が備える給電部21が供給している第1の電力値Paのパタンと略一致している場合に、要求信号に含まれた車両識別番号を含む返答信号を生成して給電側通信部23に送信させる。
【0125】
第1の電力値Pa(Pa1、Pa2、Pa3)は、給電部21と受電部41との位置のずれにより、受電部41における電力値が変化する場合がある。給電装置2毎に互いに異なるパタンで時間的に変化させることで、第1の電力値Paを受電部41が受電した差異の電力値の絶対値が変化しても、電力値の時間変化にて給電装置2と通信を行う電気自動車3とを正確に対応付けることができる。
【0126】
2010年10月1日出願の特願2010−223759の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。