(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249308
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】身体冷却加熱具
(51)【国際特許分類】
A61F 7/10 20060101AFI20171211BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20171211BHJP
B29C 51/02 20060101ALI20171211BHJP
B29C 51/08 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
A61F7/10 330A
B29C49/42
B29C51/02
B29C51/08
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-114520(P2016-114520)
(22)【出願日】2016年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-755(P2017-755A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2016年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-116859(P2015-116859)
(32)【優先日】2015年6月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515156429
【氏名又は名称】梁川 英君
(74)【代理人】
【識別番号】100101605
【弁理士】
【氏名又は名称】盛田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】梁川 英君
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−194511(JP,U)
【文献】
米国特許第3830676(US,A)
【文献】
米国特許第4765338(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の一部を収容できる凹部を設けた内側壁部と、
上記内側壁部と所定の隙間を開けて対向する外側壁部と、
上記隙間に充填された保冷剤又は保温剤とを備え、
上記内側壁部及び上記外側壁部は、一体成形された中空状の樹脂製ブロー成形体から形成されており、
上記ブロー成形体は、上記内側壁部を構成する薄肉部と、上記外側壁部を構成する厚肉部とを備えるとともに、
上記内側壁部を構成する薄肉部を、上記外側壁部を構成する厚肉部の内側に、上記隙間を開けて折り返すことにより構成されている、身体冷却加熱具。
【請求項2】
上記ブロー成形体は中空球状に形成されているとともに、
一方の半球部分が、0.5mm以下の厚みで形成された上記薄肉部を構成している、請求項1に記載の身体冷却加熱具。
【請求項3】
上記内側壁部と上記外側壁部とを接合する接合部が所定箇所に設けられている、請求項1又は請求項2に記載の身体冷却加熱具。
【請求項4】
上記外側壁部と上記内側壁部とが一体的に連続しているとともに、
上記外側壁部と上記内側壁部の縁部に、上記隙間を設定する折り返し部が設けられている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の身体冷却加熱具。
【請求項5】
上記外側壁部と上記内側壁部を貫通する開口部を備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の身体冷却加熱具。
【請求項6】
上記内側壁部に、凹凸が設けられている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の身体冷却加熱具。
【請求項7】
上記内側壁部に、身体の所定箇所に熱を伝導する凸部が設けられている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の身体冷却加熱具。
【請求項8】
上記内側壁部の内面にシボ模様を設けた、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の身体冷却加熱具。
【請求項9】
上記外側壁部に、手指で握持できる把手が設けられている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の身体冷却加熱具。
【請求項10】
上記身体冷却加熱具が、人体の頭部に対応した凹部を備える中空半球状に構成された、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の身体冷却加熱具。
【請求項11】
上記外側壁部に、上記外側壁部の折り曲げを可能とする薄肉帯部が設けられている、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の身体冷却加熱具。
【請求項12】
上記外側壁部が半球外面形状を備え、
上記薄肉帯部は、上記半球外面の頂部を通って上記半球外面の縁部に到る凸条を設けて構成されており、
上記薄肉帯部に沿って、内側壁部を対接するように折り畳むことができるように構成されている、請求項11に記載の身体冷却加熱具。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載された身体冷却加熱具の製造方法であって、
ブロー成形法によって中空体を形成するブロー成形工程と、
上記中空体の一側の壁部を、他側の壁部の内側に折り返す折り返し工程と、
上記一側の壁部と上記他側の壁部を所定部位で接合する接合工程と、
上記一側の壁部と上記他側の壁部の間の隙間に、保冷剤又は保温剤を充填する充填工程とを含み、
上記ブロー成形工程において、上記外側壁部を構成する厚肉部と、上記内側壁部を構成する薄肉部が形成されるとともに、
上記折り返し工程において、上記厚肉部の内側に、上記薄肉部を、上記所定の隙間を開けて折り返す、身体冷却加熱具の製造方法。
【請求項14】
上記ブロー成形工程において、上記薄肉部を0.5mm以下に設定する、請求項13に記載の身体冷却加熱具の製造方法。
【請求項15】
上記一側の壁部と上記他側の壁部とを貫通する開口部を設ける開口部形成工程を含む、請求項13又は請求項14に記載の身体冷却加熱具の製造方法。
【請求項16】
請求項1から請求項12に記載した身体冷却加熱具を製造するブロー成形金型装置であって、
上記外側壁部を形成する凹部を設けた第1金型と、
上記内側壁部を形成する凹部を設けた第2金型と、
上記第2金型で成形される成形材料の厚みを、上記第1金型で成形される成形材料の厚みより小さくなるように、上記成形材料を上記第1金型及び第2金型から形成される成形空間内に注入できる樹脂材料注入装置とを備え、
上記第2金型の凹部の内側各部の深さを、上記第1金型の凹部の内側各部の深さに対して、少なくとも上記隙間分小さく設定された、ブロー成形金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、身体冷却加熱具に関する。詳しくは、身体の各部を効率よく冷却あるいは加熱することができる身体冷却加熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、風邪等によって発熱した場合や、熱中症になった場合、対症療法として頭部の冷却が行われる。また、一部の筋肉を酷使した場合にも、上記筋肉を直接冷却するため氷嚢や冷却パッド等が用いられる。さらに、思考力等を高めるためや育毛効果を得るために、頭部全体あるいは頭部の所要箇所を冷却したり、加熱したりすることがある。
【0003】
上記従来の冷却加熱具は、内部に保冷剤又は保温剤(以下、保冷剤等という)を充填して、冷蔵庫や電子レンジ等を用いて冷却加熱されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−18935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
身体の各部は一定の形態をしているわけではなく、各人の体形等によって寸法や形態が異なる。冷却効果や加熱効果を得るには、上記身体の各部の形態に応じた形状のものを採用するのが好ましい。
【0006】
たとえば、頭部を冷却する場合、枕状や巾着状の氷嚢を用いると、頭部の一部のみしか冷却することができない。このため、上記のような従来の冷却加熱具では、充分な効果を期待することはできない。
【0007】
頭部を冷却する場合、頭部を収容できる半球状の凹部を設けた冷却加熱具も提供されている。しかしながら、製造コストが大きく、家庭等において日常的に使用できるものではない。
【0008】
また、充分な冷却効果や温熱効果を発揮させるには、皮膚の形態に沿った形状のものを採用するのが好ましい。上記枕状のものや巾着状のものは、頭部表面に添着される部分においては、たとえば額の凹凸形態等に応じて変形することができるが、頭部の所望の部位に位置決めして固定することは困難である。また、保形性がないため、手指で握持等して所定部位を冷却等するのも困難な場合が多い。さらに、手指で上記冷却加熱具を握持すると、保冷剤等の熱が手指に伝わって消失したり、温度によっては手指で握持し続けるの困難な場合もある。
【0009】
本願発明は、上記課題を解決するために案出されたものであって、安価に製造できるとともに、身体の特定部位を効率よく冷却あるいは加熱できる身体冷却加熱具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明に係る身体冷却加熱具は、身体の一部を収容できる凹部を設けた内側壁部と、上記内側壁部と所定の隙間を開けて対向する外側壁部と、上記隙間に充填された保冷剤又は保温剤とを備え、
上記内側壁部及び上記外側壁部は、一体成形された中空状の樹脂製ブロー成形体から形成されており、上記ブロー成形体は、上記内側壁部を構成する薄肉部と、上記外側壁部を構成する厚肉部とを備えるとともに、上記内側壁部を構成する薄肉部を、上記外側壁部を構成する厚肉部の内側に、上記隙間を開けて折り返すことにより構成されている。
【0011】
上記内側壁部に凹部を設け、この凹部に身体の一部を収容して冷却等できるため、身体を非常に効率よく冷却等することができる。
【0012】
しかも、上記内側壁部と外側壁部とが、樹脂で一体的に連続した構成を採用することにより、ブロー成形法を用いて身体冷却加熱具を樹脂で一体成形することが可能となる。このため、身体冷却加熱具を非常に安価に製造できるとともに、一般家庭等において、日常的に使用できる身体冷却加熱具を提供することができる。
【0013】
上記保温剤又は上記保冷剤の種類等は特に限定されることはない。たとえば、ゲル状の保温剤等を上記隙間に充填して、冷蔵庫や電子レンジ等で所定温度に冷却あるいは加熱して用いることができる。
【0014】
上記外側壁部と上記内側壁部とをブロー成形によって一体成形することにより、上記内側壁部を上記外側壁部と所定の隙間を形成するように折り返して構成することができる。
【0015】
すなわち、球状あるいは風船状の中空体をブロー成形法によって形成するとともに、その一部を、他部の内側に内部に凹ませるようにして、上記凹部を形成することができる。
【0016】
ブロー成形法を利用することにより、上記構成の身体冷却加熱具を非常に安価に製造することができる。しかも、上記凹部の形態を、身体の各部形態に合わせて凹ませることができるため、身体各部に応じた身体冷却加熱具を容易に形成することができる。
【0017】
上記内側壁部を、上記外側壁部より小さな厚みで形成するのが好ましい。また、上記内側壁部を、身体の表面形態に応じて変形できる厚みで形成する一方、上記外側壁部を、所定の形状を保形できる厚みで形成するのが好ましい。これにより、上記内側壁部を、身体の表面形態に応じて変形させることができる一方、上記外側壁部を、所定の形状に保形することができる。
上記内側壁部及び上記外側壁部は、一体成形された中空状の樹脂製ブロー成形体から形成される。上記ブロー成形体は、上記内側壁部を構成する薄肉部と、上記外側壁部を構成する厚肉部とを備えて構成される。そして、上記内側壁部を構成する薄肉部を、上記外側壁部を構成する厚肉部の内側に、上記隙間を開けて折り返すことにより、上記形態の身体冷却加熱具が構成される。上記内側壁部を身体の表面形態に応じて容易に変形できるように構成するには、その厚みを0.5mm以下に設定するのが好ましい。また、全体をポリエチレン樹脂で形成する場合には、内側壁部の厚みを0.3mm以下に設定することができる。一方、上記外側壁部を所定の形状、たとえば、球状に保持する所要の強度をもたせるには、その厚みを0.5mmを越えるように設定するのが好ましい。
【0018】
身体に添着した時に内側壁部の変形を許容することにより、身体各部の表面へのフィット性を高め、冷却等の効率を高めることができる。一方、外側壁部に保形性を持たせることにより、身体冷却加熱具の全体としての保形性が確保されて取り扱いが容易になる。
【0019】
しかも、内側壁部の厚みを小さく設定することにより、身体に伝わる熱量が大きくなる。一方、外側壁部の厚みを大きくすることにより、外側壁部から熱が逃げるのを防止できる。また、外側壁部を手指で握持しながら、患部に添着しても保冷剤等の熱が手指に奪われるのを防止できる。このため、保冷剤又は保温剤が保持する熱を効果的に利用することができる。また、手指に熱が伝わらないことから、取り扱いが容易になり、使い勝手も格段に向上する。
【0020】
上記内側壁部と上記外側壁部とを接合する接合部を所定箇所に設けるのが好ましい。内側壁部内面と外側壁部内面との間の隙間が連続していると、上記隙間を一定に保持することが困難になり、保冷剤あるいは保温剤を均一に保持させにくくなる。また、身体冷却加熱具をブロー成形法によって形成した場合、内側壁部を外側壁部の内側に折り返しただけでは、内側壁部を所定位置に位置決めするのが困難である。たとえば、頭部を冷却するような大きな凹部を必要とする場合、上記内側壁部の変形範囲や変位する範囲が大きくなり過ぎる。
【0021】
上記接合部の数や範囲は特に限定されることはない。上記内側壁部の所要の変形を許容できる部位、及び所要の接合部を設けるのが好ましい。たとえば、半球状の凹部を設ける場合、所定の間隔を開けて、円形状あるいは点状の接合部を設けることができる。また、所定長さのライン状の接合部を設けることができる。上記内側壁部の所要の変形を許容するように、上記隙間に充填する保冷剤等の量を調整するのが好ましい。すなわち、上記内側壁部に所要の弛みを持たせて上記保冷剤又は保温剤を充填すると、身体の表面形態に応じて上記保冷剤又は保温剤が流動して、フィット性が高まる。
【0022】
また、上記保冷剤等の充填量を調整することにより、適用できる身体の寸法範囲を広げることができる。すなわち、頭部を収容できる半球状の凹部を備えて構成する場合、頂部に保冷剤等の溜まり部分を設ける一方、縁部の弛み変形(脹らみ変形)を許容するように構成するのが好ましい。この構成の身体冷却加熱具を頭部に装着した場合、上記溜まり部分にある保冷剤等が、頭頂部に押されて上記縁部に移動させられ、内側壁部の縁部が内側に拡張されて頭側部表面との隙間が小さくなる。これにより、上記隙間から熱が逃げるのを防止できるとともに、頭部の大きさが多少異なっても上記保冷剤等の流動により寸法調整効果を発揮させることが可能となる。また、冷却あるいは加熱効果も高まる。
【0023】
上記外側壁部と上記内側壁部との接合手法は特に限定されることはない。加熱プレスや超音波溶着等によって接合することができる。
【0024】
上記外側壁部と上記内側壁部を貫通する開口部を形成することができる。上記開口部は、プレス型等を用いて上記外側壁部と上記内側壁部の溶着縁部を形成することにより、容易に形成することができる。上記開口部の大きさや数は、特に限定されることはない。
【0025】
上記開口部を設けることにより、身体が収容された内部空間の温度を調整したり、加熱する際の蒸れ等を防止できる。また、開口部が形成された部位には、保温剤等が存在しないため、所定部位が冷却されないように構成することもできる。
【0026】
上記内側壁部に、所定の凹凸を形成することができる。上記凹凸を形成することにより、皮膚に直接接触させる面積を調節し、皮膚に伝わる熱量を調節することができる。また、上記内側壁部に収容される部位の所定の部位を選択的に冷却、あるいは加熱することができる。さらに、全体を過度に冷却あるいは加熱するのを防止する効果も期待できる。上記凹凸は、内側壁部と一体的に形成することもできるし、別部材を設けて構成することもできる。
【0027】
上記凹凸の一形態として、上記内側壁部に、身体の所定箇所に熱を伝導する凸部を設けることができる。たとえば、いわゆる身体のつぼに対応した部位を集中的に冷却あるいは加熱するように上記凸部を設けることができる。上記凸部は、上記内側壁部と一体的に形成することもできるし、熱伝導率の高い材料、たとえば、金属を内側壁部に貼着等して構成することができる。
【0028】
上記保冷剤の温度が低い場合、内側壁部の表面で皮膚からの蒸気が凍結することが考えられる。この場合、使用者の毛髪が上記内側壁部に蒸気とともに凍結付着する恐れがある。上記不都合を回避するため、上記内側壁の表面にシボ模様を設けるのが好ましい。上記シボ模様を設けることにより、毛髪の付着面積を低減させ、凍結付着した場合であっても、容易に引き離すことができる。上記シボ模様の深さ等は特に限定されることはなく、毛髪の付着面積を低減させるものであればよい。
【0029】
上記外側壁部に、手指で握持できる把手を設けるのが好ましい。上記把手は、上記外側壁部と一体的に形成するのが好ましい。
上記外側壁部は、上記ブロー成形体の厚肉部から形成されるため、強度の高い把持を一体的に設けることができる。また、上記把手を、別部材から形成することもできる。
【0030】
上記把手を設けることにより、身体冷却加熱具を使用者等の手指で握持して位置決めしながら、患部を冷却あるいは加熱することができる。しかも、上記把手を、外側壁部に設けることにより熱伝導性を低く抑えることができる。このため、冷却剤等の熱が手指に伝わることも少なく、使用勝手が格段に高まるとともに、冷却剤等の熱の利用効率も高まる。
【0031】
本願発明に係る身体冷却加熱具は、凹部を備える立体形状を備えるため、保冷剤又は保温剤を、加熱あるいは冷却するのが困難な場合がある。
【0032】
上記不都合を回避するため、上記外側壁部の外面形態に対応した凹部、又は内側壁部の内面形態に対応した凸部を備える冷却加熱装置を用いて、加熱あるいは冷却を行うのが好ましい。
【0033】
上記冷却加熱具は、上記身体冷却加熱具に対接する部分に熱伝導性の高い材料を用いて形成することができる。たとえば、冷蔵庫で冷却する場合、金属板を内側壁部の形状に対応した中空半球状に形成して構成することができる。また、上記冷却加熱具は、冷蔵庫や温蔵庫で使用するものに限られることはなく、それ自体に加熱装置あるいは冷却装置を備えて構成することもできる。
【0034】
本願発明に係る冷却加熱具を、冷却あるいは加熱するためには所要のスペースが必要である。特に、冷却する場合冷蔵庫を用いる場合が多いが、冷蔵庫内に上記スペースを確保するのが困難な場合が多い。特に、家庭用冷蔵庫の冷凍室に上記スペースを確保するのは困難である。
【0035】
上記不都合を回避するため、身体冷却加熱具を折り畳み可能に構成するのが望ましい。一方、上記外側壁部は所要の保形性が付与される厚みに形成されているため、そのままでは折り畳むことができない。上記外側壁部を折り畳むため、外側壁部の厚みを低減させる薄肉部を設けることができる。上記薄肉部の形態は特に限定されることはないが、折り畳み線に沿って形成するのが好ましい。また、上記薄肉部は直線状に限定されることはなく、立体的に形成された冷却加熱具においては、曲線状に形成した薄肉部に沿って折り畳むように構成することもできる。
【0036】
たとえば、上記身体冷却加熱具を、人体の頭部に対応した凹部を備える中空半球状に構成した場合、上記半球外面の頂部を通って半球縁部に到る上記薄肉部を設けることができる。上記身体加熱冷却具をブロー成形によって形成する場合、上記薄肉部を、上記外側壁部の外面に沿う凸条を設けることにより形成できる。すなわち、外側壁部の外面の一部を外方に膨出させると、その分樹脂材料が外方に移動させられて内面が窪み、薄肉部が形成される。上記薄肉部を形成することにより、上記薄肉部に沿って、内側壁部を対接するように、二つ折り状に折り畳むことができる。なお、上記薄肉部は、1本に限定されることはない。たとえば、頂部を通る2本の薄肉部を設け、半球状の本体を4つ折り状に折り畳むように構成することもできる。
【0037】
本願発明に係る身体冷却加熱具は、
ブロー成形法によって中空体を形成するブロー成形工程と、上記中空体の一側の壁部を、他側の壁部の内側に折り返す折り返し工程と、上記一側の壁部と上記他側の壁部を所定部位で接合する接合工程と、上記一側の壁部と上記他側の壁部の間の隙間に、
保冷剤又は保温剤を充填する充填工程とを含
み、上記ブロー成形工程において、上記外側壁部を構成する厚肉部と、上記内側壁部を構成する薄肉部が形成されるとともに、上記折り返し工程において、上記厚肉部の内側に、上記薄肉部を、上記所定の隙間を開けて折り返して製造することができる。
【0038】
上記ブロー成形工程において、上記折り返し工程において外側に位置する一側の壁部の厚みを、内側に位置する他側の壁部の厚みより大きく形成することができる。たとえば、ブロー成形法では、凹部を備えるとともに対向して配置された一対の金型間に成形材料を一方向から中空筒状に注入した後、この中空筒状に注入された材料を上記一対の金型で挟み、上記中空筒状の材料の内部に空気を吹き込んで成形が行われる。上記成形材料を注入する際に、中空筒状の周方向の厚みを異ならせることにより、上記一側の厚みを上記他側の厚みより大きく形成することができる。
【0039】
さらに、上記一側の壁部と上記他側の壁部とを貫通する開口部を設ける開口部形成工程を含ませることもできる。上記開口部形成工程は、上記ブロー成形を行う金型の一方の金型装置に、プレス成形用の新たな金型を組み合わせて連続して行うこともできるし、開口部成形工程を、別途に設定したプレス金型を用いて行うこともできる。
【0040】
本願発明に係る身体冷却加熱具をブロー成形法によって製造する場合、球状あるいは風船状の中空体の一側を他側に折り返すようにして、上記凹部が形成される。このため、上記成形を行うブロー成形金型装置を、上記外側壁部を形成する凹部を設けた第1金型と、上記内側壁部を形成する凹部を設けた第2金型とを備え、上記第2金型の凹部の内側各部の深さを、上記第1金型の凹部の内側各部の深さに対して、少なくとも上記隙間分小さく設定することができる。これにより、上記内側壁部を上記外側壁部の内側に向けて折り返した際に、保冷剤又は保温剤を充填する空間を確保できる。
【0041】
また、上記第2金型の凹部で成形される成形材料の厚みを、上記第1金型の凹部で成形される成形材料の厚みより小さくなるように、上記成形材料を上記第1金型及び第2金型から形成される成形空間内に注入できる樹脂材料注入装置を備えて、上記金型装置を構成できる。さらに、上記内側壁部を上記外側壁部の内側へ折り返す際に、上記第1金型と上記第2金型の縁部近傍に注入された樹脂材料を、折り返し形態に応じてプレス成形するプレス成形装置を備えて金型装置又は製造装置を構成できる。また、上記プレス成形装置を、上記外側壁部と上記内側壁部とを貫通する開口部を形成できる金型装置を備えて構成することもできる。
【発明の効果】
【0042】
身体各部に応じた凹部を設けた内側壁部を備え、身体各部を効率よく冷却あるいは加熱できる身体冷却加熱具を、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本願発明に係る身体冷却加熱具の一例を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す身体冷却加熱具を製造する金型装置の一例を示す端面図である。
【
図3】
図2に示す金型装置によって製造された中空体の端面図である。
【
図4】
図3に示す中空体の一側を折り返した状態を示す端面図である。
【
図5】第2の実施形態に係る身体冷却加熱具の端面図である。
【
図6】第3の実施形態に係る身体冷却加熱具の端面図である。
【
図7】
図1に示す身体冷却加熱具を冷却あるいは加熱する冷却加熱装置の断面図である。
【
図8】第4の実施形態に係る身体冷却加熱具の要部の拡大端面図である。
【
図9】第5の実施形態に係る身体冷却加熱具の要部の拡大端面図である。
【
図10】第6の実施形態に係る身体冷却加熱具の平面図である。
【
図12】10におけるXII−XII線に沿う断面図である。
【
図13】
図10に示す身体冷却加熱具を二つ折りにした場合の断面図である。
【
図14】内側壁部に設けられたシボの一例を示す要部拡大断面図である。
【0044】
以下、本願発明に係る実施形態を図に基づいて具体的に説明する。なお、本実施形態は、身体の頭部に装着して使用する身体冷却具に本願発明を適用したものである。他の部位に対応した身体冷却加熱具も同様に形成することができる。
【0045】
図1は、本実施形態に係る身体冷却加熱具1の断面部である。身体冷却加熱具1は、外側壁部2と、内側壁部3と、上記外側壁部2と上記内側壁部3との間に形成された隙間4aに充填された保冷剤4とを備えて構成される。なお、加熱具を構成する場合、上記隙間に保温剤が充填される。
【0046】
上記身体冷却加熱具1は、全体が人体の頭部に対応する凹部8を備える中空半球状、あるいはヘルメット状に形成されている。上記内側壁部3には、所定箇所に半径方向外側に膨出して底面6が上記外側壁部2の内面に接する円形の凹状接合部5が形成されており、上記底面6において上記外側壁部2に溶着されている。
【0047】
上記身体冷却加熱具1の縁部には、上記保冷剤4を充填するための開口部7が設けられており、上記保冷剤4を充填した後、熱プレスによって封止されている。
【0048】
上記構成の身体冷却加熱具1は、
図2に示すように、上記外側壁部2を成形する凹部10aを備える第1金型10と、上記内側壁部3を成形する凹部11aを備える第2金型11とを備えて構成される
ブロー成形用の金型装置50を用いて成形することができる。
【0049】
上記金型装置50を用いて、中空球状の
ブロー成形体が形成される。上記内側壁部3を、上記外側壁部2の内側に折り返すために、上記第1金型の凹部10aの外縁部及び内径を、上記第2の金型の凹部11a外縁部より小さく設定している。すなわち、上記第2金型11の凹部11aの内側各部の深さを、上記第1金型10の凹部10aの内側各部の深さに対して、少なくとも上記隙間4a分小さく設定している。
【0050】
また、上記第2金型11の上記凹部11aには、上記凹状接合部5を成形するための凸部11bが設けられている。
【0051】
上記構成の金型装置50において、上記外側壁部2の厚みを、上記内側壁部3の厚みより大きく形成するために、上記第1金型10で成形される部分の成形材料の厚みH1を、上記第2金型11で形成される部分の成形材料の厚みH2より大きくなるように、成形材料を対向して配置される上記金型間(成形空間内)に注入できる樹脂材料注入装置を備えて構成される。
【0052】
上記金型装置50において、たとえば、上記外側壁部2を構成する部分の材料の厚みH1が0.5〜3mmとなるように注入するとともに、上記内側壁部3を構成する部分の材料の厚みH2が0.03〜0.5mmとなるように注入するように構成することができる。
【0053】
上記金型装置50によって成形された成形体の端面を
図3に示す。成形体1aは、全体が球状あるいは風船状の中空体として成形される。また、側部には、保冷剤4を充填する開口部7が設けられている。
【0054】
上記内側壁部3を構成する
薄肉部13を、上記外側壁部2を構成する
厚肉部12の内側に折り返すようにして変形させ、上記凹状接合部5の底面6において、上記内側壁部3と上記外側壁部2とが接合される。
【0055】
その後、
図4に示す上記開口部7から上記保冷剤4を充填し、上記開口部7を、熱プレスを用いて溶着封止することにより、本実施形態に係る頭部用の身体冷却加熱具1が形成される。
【0056】
上記内側壁部3は、身体の凹凸に応じて変形が許容される厚みH2で形成されているため、身体各部に熱を伝達して効率よく冷却することができる。たとえば、ポリエチレン系材料で形成する場合、上記厚みH2を0.3mm以下に設定するのが好ましい。上記内側壁部3の変形によって、頭部の形態や寸法に多少の相異があっても、保冷剤が流動することにより吸収できる。さらに、上記内側壁部3の厚みが小さいため、熱伝導性も高い。
【0057】
一方、外側壁部2は、上記内側壁部3の厚みより大きな厚みH1で形成されているため保温性が高く、保冷剤4の熱が逃げるのを防止できる。上記厚みH1は、0.5mmを越える厚みに設定するのが好ましい。上記厚みに設定することにより、外側壁部2の外面からの熱が逃げるのを抑制し、上記保冷剤4の熱を効率よく利用できる。また、上記外側壁部2に手指が触れても冷たくなく、取り扱いも容易になる。
【0058】
図5に示すように、上記外側壁部2と上記内側壁部3を貫通する開口部20を形成することができる。上記開口部20は、上記外側壁部2と上記内側壁部3とを閉じた打ち抜き型を備えるプレス装置等によって開口部20の周囲を溶着して打ち抜くことにより、容易に形成することができる。また、外側壁部2と内側壁部3とを接合する上記接合部とを兼用することもできる。
【0059】
上記開口部20を設けることにより、患部が収容された内側壁部3内部空間の温度を調整したり、加熱する際の蒸れ等を防止できる。また、局所が過度に冷却されないように構成することもできる。
【0060】
図6に示すように、上記外側壁部2に、手指で握持できる把手30を設けることができる。上記把手30は、ブロー成形法によって、上記外側壁部2と一体的に形成されている。なお、別部材を接合して形成することもできる。
【0061】
上記把手30を設けることにより、身体冷却加熱具1を、使用者等の手指で握持して位置決めしながら、患部を冷却あるいは加熱することができる。しかも、上記把手30は、外側壁部2に設けられるため熱伝導性が低い。このため、冷却剤等の熱が手指に伝わることも少なく、使用勝手が格段に高まるとともに、冷却剤等の熱の利用効率も高まる。
【0062】
本実施形態に係る身体冷却加熱具1は、
図7に示す冷却加熱装置40を用いて、冷却あるいは加熱することができる。上記冷却加熱装置40は、上記内側壁部の内面形態に対応した凸部40a備えて構成される。上記凸部40aを収容するように、上記身体冷却加熱具1を装着して冷蔵庫内に載置することにより、上記保冷剤4の温度を効率よく低下させることができる。
【0063】
なお、上記冷却加熱装置40は、冷蔵庫や温蔵庫で使用するものに限られることはなく、それ自体に加熱装置あるいは冷却装置を備えて構成することもできる。また、実施形態に係る冷却加熱装置40は、中空半球状の身体冷却加熱具1の内側に添着する伝熱面を備えているが、外側を冷却する凹状の伝熱面を備えて構成し、あるいは、内側と外側とを同時に冷却する凸状伝熱面及び凹状伝熱面を備えた構成とすることもできる。
【0064】
図1から
図7に示した実施形態では、身体の表面に沿うように凹部8を設けたが、上記凹部8に、
図8及び
図9に示すように、身体の所定箇所に熱を伝導する凸部45,47を設けることができる。
【0065】
図8に示すように、上記凸部45は、上記内側壁部3と一体的に設けることができる。また、
図9に示すように、上記凸部47を、上記内側壁部3に沿って装着される別部材46に形成することもできる。上記別部材46として、たとえば、熱伝導率の高い金属性部材を用いて形成することができる。また、上記凸部47のみを熱伝導性の高い金属材料から形成する一方、他の表面部分を熱伝導性の低い樹脂材料から形成し、上記凸部47を用いて、特定部位を集中的に冷却するように構成することもできる。
【0066】
さらに、上記凸部47を異なる部位に設けた複数の部材46から形成し、患者や冷却部位等に応じて交換できるように構成することもできる。
【0067】
図10から
図13に示す実施形態は、本願発明に係る身体冷却加熱具201を、折り畳み可能に構成したものである。
【0068】
図10及び
図12に示すように、本実施形態に係る身体冷却加熱具201は、全体が中空半球状に形成されている。内部構造等は、
図1に示した実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0069】
本実施形態では、外側壁部2の外面頂部を通る
薄肉帯部251が形成されている。上記
薄肉帯部251は、上記頂部から中空半球の縁部まで、凸条を設けることにより外側壁部2の厚みを減少させることにより形成されている。また、上記頂部を横切るように、90度の角度間隔で2本の薄肉部251が形成されている。
【0070】
本実施形態に係る上記
薄肉帯部251は、
図12に示すように、上記外側壁部2の外面に凸条を設けることにより形成されている。すなわち、外側壁部2の外面の一部を外方に膨出させると、その分樹脂材料が外方に移動させられて内面が窪み、
上記薄肉帯部251が形成される。上記
薄肉帯部251の厚みは、外側壁部2を上記
薄肉帯部251に沿って容易に折り畳むことができるように設定される。たとえば、上記
薄肉帯部251の厚みを0.5mm以下の厚みに設定するのが好ましい。
【0071】
上記
薄肉帯部251は、中空半球状の頂部外側を通って、上記半球の縁まで外周に沿って連続的に形成されているため、
図13に示すように、上記
薄肉帯部251の一方の側の4分の1球の部分を、上記
薄肉帯部251の他方の側の4分の1球の部分の内側に折り畳むことが可能となる。このため、冷蔵庫等における収納スペースを削減することが可能となる。
【0072】
なお、
図13に示す実施形態では、中空半球状の身体冷却加熱具201を2つ折りにした場合を示したが、4つ折りできるように構成することもできる。
【0073】
上記身体冷却加熱具201は、頭部を覆うように装着される。一方、頭部には、毛髪が存在するため、上記内側壁部3の内面には、頭部から蒸発した水分が凝縮することが考えられる。さらに、上記内側壁部3の内面が0℃以下の場合、上記水蒸気が上記毛髪を巻き込んで凍結する恐れがある。上記凍結が生じると、上記身体冷却加熱具201を頭部から離脱させる場合、毛髪又は/及び皮膚を傷める恐れがある。
【0074】
上記不都合を解消するため、内側壁部3の表面にシボ模様を設けるのが好ましい。上記シボ模様の形態は特に限定されることはない。たとえば、
図14に示すように、球面状の窪みを多数形成することにより、上記シボ模様252を形成することができる。
【0075】
本願発明は、上記実施形態に限定されることはない。本実施形態は、頭部の冷却に用いられる身体冷却加熱具1に本願発明を適用したものであるが、たとえば、膝、肩、肘等の形態に応じた凹部を備える身体冷却加熱具を構成できる。
【符号の説明】
【0076】
1 身体冷却加熱具
2 外側壁部
3 内側壁部
4a 隙間
4 保冷剤又は保温剤
12 厚肉部
13 薄肉部