特許第6249317号(P6249317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249317
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】断層画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   G01T1/161 D
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-560092(P2016-560092)
(86)(22)【出願日】2015年9月4日
(86)【国際出願番号】JP2015075261
(87)【国際公開番号】WO2016080054
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2016年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2014-233661(P2014-233661)
(32)【優先日】2014年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】水田 哲郎
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−181659(JP,A)
【文献】 特開2009−82471(JP,A)
【文献】 特開2012−75728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の関心領域から発生した放射線に基づいて、前記関心領域における前記放射線の発生位置を示す三次元ボリュームデータを生成する三次元データ生成手段と、
前記被検体における所定の軸を中心軸として設定する中心軸設定手段と、
前記三次元ボリュームデータの三次元的位置を、前記中心軸に対する前記関心領域の三次元的位置に設定する位置合わせ手段と、
前記位置合わせ手段によって三次元的位置が設定された前記三次元ボリュームデータに対して、前記中心軸に直交する一つ以上の投影方向に最大画素値を投影することにより、最大値投影画像であるMIP画像を生成するMIP画像生成手段と、
前記三次元ボリュームデータの所定のスライス面における断層画像を生成する断層画像生成手段と、
前記MIP画像および前記断層画像を表示する画像表示手段とを備える断層画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の断層画像表示装置において、
前記位置合わせ手段によって三次元的位置が設定された複数の前記三次元ボリュームデータを統合し、単一の統合三次元ボリュームデータに変換する三次元データ統合手段を備え、
前記MIP画像生成手段は、前記三次元データ統合手段によって変換された前記統合三次元ボリュームデータに対して、前記中心軸に直交する一つ以上の投影方向に前記MIP画像を生成する断層画像表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の断層画像表示装置において、
複数の前記関心領域についてそれぞれ生成された前記MIP画像のうち、同一の投影方向から投影された前記MIP画像同士を、前記中心軸の位置を基準として重ね合わせて統合MIP画像を生成するMIP画像統合手段を備え、
前記画像表示手段は前記統合MIP画像を表示する断層画像表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の断層画像表示装置において、
前記MIP画像生成手段が生成した前記MIP画像の各々に対して、前記MIP画像と同一の投影方向から前記被検体の全部または一部を投影した像を、前記中心軸の位置を基準として重ね合わせて重畳画像を生成する重畳画像生成手段を備え、
前記画像表示手段は重畳画像を表示する断層画像表示装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の断層画像表示装置において、
前記中心軸は前記被検体の正中線である断層画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に投与された放射線薬剤の三次元分布を示す画像データに基づいて、医師の診断に適する画像を生成し、表示する画像処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、被検体に投与されて関心部位に局在した放射線薬剤から放出された放射線(例えばγ線)を検出し、被検体の関心領域における放射線薬剤分布の断層画像を得る核医学診断装置が使用されている。核医学診断装置には、主なものとして、PET(Positron Emission Tomography)装置やSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置などが知られている。このような核医学診断装置では放射線検出データを用いて、放射性薬剤の濃度分布を示す三次元ボリュームデータを再構成する。そして三次元ボリュームデータに基づいて所定のスライス断面における断層画像を表示し、診断を行う。
【0003】
従来の核医学診断装置で得られる断層画像全体を俯瞰するための表示方法として、最大値投影法(MIP:Maximum Intensity Projection)が広く用いられている。MIPによって投影された最大値投影画像(MIP画像)は、対象物を投影する際に、投影経路における最大の画素値を輝度値とする画像である。そして所定の方向を中心軸とする複数の方向から投影した複数のMIP画像を作成し、断層画像表示装置を用いて、これら複数のMIP画像を例えば回転動画のように表示する(例えば、特許文献1参照)。なお、一連のMIP画像を生成する際に中心軸となる所定の方向を以下「MIP軸」とする。
【0004】
一連のMIP画像を生成する場合、図14(a)に示すように、関心領域Rの三次元ボリュームデータに対して、例えばx方向と平行な投影方向S1についてMIP画像A1を取得し、y方向と平行な投影方向S2についてMIP画像A2を取得する。異なる投影方向について得られたMIP画像A1およびA2を参照することにより、操作者は関心領域Rにおいて、放射性薬剤が集積する部位Pの大凡の位置を直感的に知ることができる。
【0005】
このようにMIPによる画像表示方法は、断層画像を精査診断する前に大凡の情報を確認する上で非常に有用である。図14(a)では、関心領域Rの中心点を通り、z方向に平行な軸S3をMIP軸としてMIP画像が生成される。
【0006】
核医学診断において、図14(b)に示すように関心領域が被検体Mの全身、または正中線上にある範囲R1である場合、被検体Mの正中線L1をMIP軸として一連のMIP画像群を生成する。その一方で、関心領域が符号R2で示す肩部である場合など、正中線L1が関心領域の範囲外となることがある。
【0007】
そこで従来では関心領域の移動に従って、MIP軸を関心領域の中心線へ移動させつつ、一連のMIP画像を生成する手法(Sliding Thin Slab MIP法:以下「Sliding法」と省略する)が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。Sliding法では関心領域が範囲R2である場合、MIP軸を正中線L1から範囲R2の中心線L2へ移動させてMIP画像の投影を行う。このような手法により、正中線から離れた局所部位について、各々の投影位置のブレが少ない一連のMIP画像を取得できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−163154号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】片平和博著 「快適3D読影法と実現可能の為のシステム考案 −進化するSliding thin slab MIP法の有用性−」INNERVISION(24−3)、2009、p.118−119
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このようなSliding法を用いる従来の断層画像表示装置では、血管領域を追跡するような、正中線から離れた特定の部位のみを局所的に診断する場合については有用である。しかし被検体の全身画像情報を取得している状態で、さらに特定部位についての高解像度の画像情報を得るべくMIP画像を取得する場合、従来の装置では有用な情報を得ることが困難である。すなわち特定部位について得られた高解像度のMIP画像が、被検体の全体像に対して付加している詳細情報を知ることは非常に困難となる。
【0011】
従来の問題点について図14(b)を用いて具体的に説明する。一例として特定部位として範囲R2についてMIP画像を取得する場合、MIP軸はR2の中心点を通るL2となる。一方、被検体の全身についてのMIP軸は被検体Mの正中線L1であるので、被検体の全身像と特定部位のMIP画像とは、MIP軸が異なる。MIP軸が異なる場合、全身と特定部位の各々について得られたMIP画像群同士は、相対的な位置関係が一致しない。従って、特定部位R2のMIP画像群と全身のMIP画像群を比較検討しても、MIP画像に映る放射線薬剤の像が被検体全身のどの部位に相当するかについての情報を知ることができない。
【0012】
さらに分離した2以上の特定部位について一連のMIP画像を取得する場合、各MIP画像群はMIP軸の位置がそれぞれ異なる。従って、それぞれの特定部位について得られた放射線薬剤の位置情報を包括的に診断することができない。一例として、左胸の乳房と右胸の乳房とをそれぞれ特定部位としてMIP画像群を取得した場合、左胸のMIP画像群はいすれも左胸を画像の中心に据えた画像となる。一方で、右胸のMIP画像群はいずれも右胸を画像の中心に据えた画像となる。
【0013】
左胸のMIP画像群と右胸のMIP画像群とを個別に診断することは可能である。しかし左胸のMIP画像群と右胸のMIP画像群とは画像の中心に映る部位が異なるので、各MIP画像群を用いて、乳房の各々を包括的に診断することができない。また、MIP画像の中心に映る像は当該特定部位の中心であるので、左胸および右胸の各々について得られた放射線薬剤の位置情報を全身または胸部全体と対応付け、俯瞰的に診断することが困難である。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、より多種多様な関心部位について、診断に適する画像の生成および表示を可能とする断層画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る断層画像表示装置は、被検体の関心領域から発生した放射線に基づいて、前記関心領域における前記放射線の発生位置を示す三次元ボリュームデータを生成する三次元データ生成手段と、前記被検体における所定の軸を中心軸として設定する中心軸設定手段と、前記三次元ボリュームデータの三次元的位置を、前記中心軸に対する前記関心領域の三次元的位置に設定する位置合わせ手段と、前記位置合わせ手段によって三次元的位置が設定された前記三次元ボリュームデータに対して、前記中心軸に直交する一つ以上の投影方向に最大画素値を投影することにより、最大値投影画像であるMIP画像を生成するMIP画像生成手段と、前記三次元ボリュームデータの所定のスライス面における断層画像を生成する断層画像生成手段と、前記MIP画像および前記断層画像を表示する画像表示手段とを備えるものである。
【0016】
本発明に係る断層画像表示装置は、被検体における所定の軸を中心軸として設定する中心軸設定手段と、三次元ボリュームデータの三次元的位置を、前記中心軸に対する前記関心領域の三次元的位置に設定する位置合わせ手段とを備えている。この場合、位置合わせ手段により設定される三次元ボリュームデータの位置および中心軸の位置関係は、関心領域および中心軸の位置関係と一致する。
【0017】
MIP画像生成手段は、位置合わせ手段によって三次元的位置が設定された三次元ボリュームデータに対して、中心軸に直交する一つ以上の投影方向に最大画素値を投影することにより、最大値投影画像であるMIP画像を生成する。MIP画像の投影方向はいずれも中心軸と直交するので、中心軸はMIP画像の中心点を通る軸となる。またMIP画像の各々において、中心軸に対する関心領域の位置に対応する位置に、三次元ボリュームデータの投影像が映し出される。そのため、操作者は関心領域について取得されるMIP画像の各々を俯瞰的に観察し、関心領域における放射線の発生位置と被検体の所定の軸との位置関係を容易に解析できる。従って、本発明に係る装置ではMIP画像を用いてより多様な診断を実行することができる。
【0018】
また、上述した発明において、前記位置合わせ手段によって三次元的位置が設定された複数の前記三次元ボリュームデータを統合し、単一の統合三次元ボリュームデータに変換する三次元データ統合手段を備え、前記MIP画像生成手段は、前記三次元データ統合手段によって変換された前記統合三次元ボリュームデータに対して、前記中心軸に直交する一つ以上の投影方向に前記MIP画像を生成することが好ましい。
【0019】
本発明に係る断層画像表示装置によれば、位置合わせ手段によって三次元的位置が設定された複数の三次元ボリュームデータを統合し、単一の統合三次元ボリュームデータに変換する三次元データ統合手段を備えている。そしてMIP画像生成手段は、三次元データ統合手段によって変換された統合三次元ボリュームデータに対して、中心軸に直交する一つ以上の投影方向にMIP画像を生成する。
【0020】
三次元ボリュームデータの各々は単一の統合三次元ボリュームデータに変換され、統合三次元ボリュームデータに基づいてMIP画像が生成される。MIP画像の投影方向はいずれも中心軸と直交するので、MIP画像の各々において中心軸はMIP画像の中心点を通る軸となる。そしてMIP画像の各々には、各関心領域に係る三次元ボリュームデータの投影像が、中心軸に対する各関心領域の位置にそれぞれ映し出される。すなわち単一のMIP画像に複数の関心領域の投影像が、中心軸と対応づけた位置にそれぞれ映る。
【0021】
この場合、単一のMIP画像に基づいて複数の関心領域を俯瞰的に観察し、診断を行うことができる。従って、MIP画像を用いて複数の部位を診断する場合に操作者が受ける負担を軽減することができる。また、MIP画像は予め統合された単一の三次元ボリュームデータに対して生成される。そのため診断する関心領域の数が多い場合であっても、MIP画像を生成する際に必要とする計算の複雑化を回避できる。従って、診断のワークフローの低下を好適に回避できる。
【0022】
また、上述した発明において、複数の前記関心領域についてそれぞれ生成された前記MIP画像のうち、同一の投影方向から投影された前記MIP画像同士を、前記中心軸の位置を基準として重ね合わせて統合MIP画像を生成するMIP画像統合手段を備え、前記画像表示手段は前記統合MIP画像を表示することが好ましい。
【0023】
本発明に係る断層画像表示装置によれば、MIP画像統合手段は複数の関心領域についてそれぞれ生成されたMIP画像のうち、同一の投影方向から投影されたMIP画像同士を、中心軸の位置を基準として重ね合わせて統合MIP画像を生成する。MIP画像の各々において、中心軸は画像の中心点を通る軸であり、関心領域に係る三次元ボリュームデータの投影像が、中心軸に対する関心領域の位置にそれぞれ映し出される。そのため中心軸を基準に各々のMIP画像を重ね合わせることにより、統合MIP画像において、複数の関心領域における最大値投影像が、中心軸と対応する位置にそれぞれ映る。
【0024】
この場合、単一のMIP画像に基づいて複数の関心領域を俯瞰的に観察し、診断を行うことができる。従って、MIP画像を用いて複数の部位を診断する場合に操作者が受ける負担を軽減できる。また、統合MIP画像は三次元ボリュームデータの統合ではなく、二次元画像であるMIP画像同士を統合させることによって生成される。そのため、複数の関心領域が中心軸と対応する位置に映るMIP画像を生成するための計算がより単純となるので、診断に要する時間をより短縮できる。従って、診断のワークフローをより向上させることができる。
【0025】
また、上述した発明において、前記MIP画像生成手段が生成した前記MIP画像の各々に対して、前記MIP画像と同一の投影方向から前記被検体の全部または一部を投影した像を、前記中心軸の位置を基準として重ね合わせて重畳画像を生成する重畳画像生成手段を備え、前記画像表示手段は重畳画像を表示することが好ましい。
【0026】
本発明に係る断層画像表示装置によれば、重畳画像生成手段はMIP画像の各々に対して、MIP画像と同一の投影方向から被検体の全部または一部を投影した像を、中心軸の位置を基準として重ね合わせて重畳画像を生成する。中心軸の位置を基準として重ね合わせを行うことにより、被検体の全部または一部を投影した像とMIP画像の関心領域との位置関係は、被検体の身体における両者の位置関係と一致する。
【0027】
そのためMIP画像に重ね合わされる被検体の像を参照することにより、中心軸に対する関心領域の位置に対応する位置に、三次元ボリュームデータの投影像が映し出される。操作者は関心領域について取得される重畳画像の各々を俯瞰的に観察し、関心領域における放射線の発生位置と被検体の身体との位置関係をより正確かつ容易に解析できる。従って、本発明に係る装置ではMIP画像を用いてより多様な診断を実行することができる。
【0028】
また、上述した発明において、前記中心軸は前記被検体の正中線であることが好ましい。
【0029】
本発明に係る断層画像表示装置によれば、中心軸設定手段は被検体の正中線を中心線として設定する。この場合、MIP画像の各々において、正中線が画像の中心を通る軸であり、関心領域に係る三次元ボリュームデータの投影像は、正中線に対する関心領域の位置にそれぞれ映し出される。そのため、操作者は関心領域の投影像から得られる情報を、被検体の全身などを例とする、より解析に適する画像と対応づけて診断できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る断層画像表示装置は、被検体における所定の軸を中心軸として設定する中心軸設定手段と、三次元ボリュームデータの三次元的位置を、前記中心軸に対する前記関心領域の三次元的位置に設定する位置合わせ手段とを備えている。この場合、位置合わせ手段により設定される三次元ボリュームデータの位置および中心軸の位置関係は、関心領域および中心軸の位置関係と一致する。
【0031】
MIP画像生成手段は、位置合わせ手段によって三次元的位置が設定された三次元ボリュームデータに対して、中心軸に直交する一つ以上の投影方向に最大画素値を投影することにより、最大値投影画像であるMIP画像を生成する。MIP画像の投影方向はいずれも中心軸と直交するので、中心軸はMIP画像の中心点を通る軸となる。またMIP画像の各々において、中心軸に対する関心領域の位置に対応する位置に、三次元ボリュームデータの投影像が映し出される。そのため、操作者は関心領域について取得されるMIP画像の各々を俯瞰的に観察し、関心領域における放射線の発生位置と被検体の所定の軸との位置関係を容易に解析できる。従って、本発明に係る装置ではMIP画像を用いてより多様な診断を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施例1に係る断層画像表示装置を備えるPET装置の構成を説明する概略図である。(a)はxy平面における縦断面図であり、(b)はxz平面における縦断面図であり、(c)は放射線検出器の積層構造を説明する俯瞰図である。
図2】実施例1に係る断層画像表示装置を備えるPET装置の構成を説明する機能ブロック図である。
図3】各実施例に係る断層画像表示装置を備えるPET装置の動作の工程を説明するフローチャートである。(a)は実施例1のフローチャートであり、(b)は実施例2のフローチャートである。
図4】実施例1において生成される三次元ボリュームデータの座標と範囲とを示す概略図である。
図5】実施例1に係るステップS3において、各三次元ボリュームデータと上半身像との位置関係を示す概略図である。
図6】実施例1に係るステップS4において、三次元ボリュームデータを統合する範囲を示す概略図である。
図7】実施例1に係るステップS6におけるMIP画像の投影方向を説明する図である。(a)は各投影方向とMIP軸との位置関係を示す図であり、(b)は統合された三次元ボリュームデータ、投影されるMIP画像、および各投影方向の位置関係を示す図である。
図8】実施例1に係るステップS6において生成されるMIP画像の各々を示す図である。
図9】実施例1に係るステップS7において生成される重畳画像の各々を示す図である。
図10】実施例1に係るステップS8の工程を説明する図である。(a)は三次元ボリュームデータに対するスライス面を示す図であり、(b)は当該スライス面における断層画像を示す図である。
図11】従来例と実施例とを比較する図である。(a)は従来例における、三次元ボリュームデータとMIP画像の投影方向との関係を示す図であり、(b)は従来例において生成されるMIP画像に映る像を示す概略図であり、(c)は実施例1において生成されるMIP画像に映る像を示す概略図である。
図12】実施例2に係る断層画像表示装置を備えるPET装置の構成を説明する機能ブロック図である。
図13】実施例2に係るステップS6Aにおいて、統合されるMIP画像を示す図である。
図14】従来例における問題点を示す図である。(a)は従来例における三次元ボリュームデータとMIP画像との位置関係を示す概略図であり、(b)は関心領域とMIP軸との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0033】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。図1(a)は、実施例1に係る断層画像表示装置を備える核医学診断装置のxy平面における縦断面図である。図1(b)は、実施例1に係る断層画像表示装置を備える核医学診断装置のxz平面における縦断面図である。実施例1では核医学診断装置として、乳がん診断に用いられる乳房専用PET装置を例にとって説明する。また放射線の例としてγ線を用いて説明する。
【0034】
<全体構成の説明>
実施例1に係る断層画像表示装置を備えるPET装置1について説明する。PET装置1は図1(a)および図1(b)に示すように、被検体の乳房Bを導入させる導入孔3が設けられたガントリ5を備えている。ガントリ5の内部には、導入孔3を囲むようにリング状に配列された複数の放射線検出器7が設けられている。導入孔3はz方向(乳房Bの導入方向)に伸びた円筒形の構成を有している。なおx方向は、立位姿勢または座位姿勢をとる被検体の体軸方向である。y方向はx方向およびz方向の各々に直交する方向であり、被検体の左右方向に相当する。
【0035】
放射線検出器7は図1(c)に示すように、シンチレータブロック9と、ライトガイド11と、光検出器13とがp方向へ順に積層された構成を有している。p方向は導入孔3の中心Poへ向かう方向であり、光検出器13よりシンチレータブロック9の方が中心Poに近くなるように放射線検出器7の各々は配列される。
【0036】
シンチレータブロック9は、直方体のシンチレータ結晶9aが二次元的に配列された構造を有しており、被検体から放出されたγ線を吸収してシンチレータ光を発光する。シンチレータ結晶3aを構成する材料としては、例えばLYSO、LSO、またはLGSOなどの結晶が用いられる。
【0037】
ライトガイド11はシンチレータブロック9において発光されるシンチレータ光を光検出器13に伝送する。光検出器13には光電変換素子が設けられており、シンチレータ光を検出して電気信号(γ線検出信号)に変換する。断層画像表示装置15は光検出器13が出力するγ線検出信号に基づいて各種処理を行い、乳房Bにおける放射線薬剤の分布を示す各種画像を生成・表示する。
【0038】
断層画像表示装置15は図2に示すように、同時計数部17と、再構成部19と、MIP軸設定部20と、位置情報算出部21と、三次元データ統合部23と、MIP画像生成部27と、重畳画像生成部29と、断層画像生成部31とを備えている。同時計数部17は光検出器13の後段に設けられており、光検出器13から出力されるγ線検出信号について適正なデータか否かを判定する。
【0039】
被検体Mに放射線薬剤を投与すると放射性薬剤は関心部位に蓄積され、蓄積された薬剤から陽電子が放出される。放出された陽電子は電子と対消滅を起こし、互いに正反対の運動量を有する一対の消滅γ線対を放出する。同時計数部17は、中心点Poを挟んで対向する一対のシンチレータブロック9に同時に入射した一対のγ線について、被検体内の放射線薬剤に起因する消滅γ線対であると判断する。そして同時計数部17は、消滅γ線対に基づくγ線検出信号について適正なデータであると判定し、適正なデータと判定したγ線検出信号を再構成部19へ送信する。なお、一対のシンチレータブロック9の一方のみに入射したγ線について、同時計数部17はノイズと判断し、ノイズと判断されたγ線に基づくγ線検出信号を棄却する。
【0040】
再構成部19は適正なデータとして同時計数部17が出力したγ線検出信号を再構成処理して三次元ボリュームデータを生成する。三次元ボリュームデータは被検体に投与された放射線薬剤の三次元分布を示すデータであり、被検体の関心領域における放射線の発生位置を示す。MIP軸設定部20は操作者が指定する、被検体における所定の軸をMIP軸として設定する。MIP軸とは、三次元ボリュームデータに対してMIP画像を投影する方向の各々が直交する軸である。再構成部19は本発明における三次元データ生成手段に相当する。MIP軸設定部20は本発明における中心軸設定手段に相当する。MIP軸は本発明における中心軸に相当する。
【0041】
位置情報算出部21は再構成部19およびMIP軸設定部20の各々の後段に設けられており、三次元ボリュームデータの各々について、MIP軸上の所定の位置を基準とする、関心領域の位置情報を算出する。また、位置情報算出部21は算出された位置情報に基づいて、それぞれ異なる関心領域から得られた三次元ボリュームデータの各々の位置合わせを行う。位置情報算出部21は本発明における位置合わせ手段に相当する。
【0042】
三次元データ統合部23は位置情報算出部21の後段に設けられており、位置合わせが行われた三次元ボリュームデータの各々を、各々の三次元ボリュームデータの全てを包含する、単一の三次元ボリュームデータとして統合する。MIP画像生成部27は三次元データ統合部23の後段に設けられており、三次元データ統合部23が統合した三次元ボリュームデータに基づいて、最大値投影画像であるMIP画像を生成する。三次元データ統合部23は、本発明における三次元データ統合手段に相当する。MIP画像生成部27は本発明におけるMIP画像生成手段に相当する。
【0043】
重畳画像生成部29は、MIP画像生成部27の後段に設けられている。重畳画像生成部29は一連のMIP画像の各々に対して比較の基準となる画像(例えば被検体の全身像)を、MIP軸の位置を基準として重ね合わせて一連の重畳画像を生成する。断層画像生成部31は、再構成部19が生成する三次元ボリュームデータに基づいて、操作者が指定するスライス面における断層画像を生成する。重畳画像生成部29は本発明における重畳画像生成手段に相当し、断層画像生成部31は本発明における断層画像生成手段に相当する。
【0044】
断層画像表示装置15は、さらに入力部33と、記憶部35と、モニタ37と、主制御部39とを備えている。入力部33は操作者の指示を入力するものであり、その例として、キーボード入力式のパネルやタッチ入力式のパネルなどが挙げられる。記憶部35は、三次元ボリュームデータや、断層画像などの情報を記憶する。また記憶部35には予め、MIP画像の各々と重畳させる画像や、三次元ボリュームデータの位置合わせの基準となる画像が記憶されている。MIP画像と重畳させる画像、および位置合わせの基準となる画像の例としては、被検体の全身像や胸部全体像などが挙げられる。
【0045】
モニタ37は三次元ボリュームデータ、断層画像、および重畳画像などの各種画像を表示する。主制御部39は中央演算処理装置(CPU)などで構成されており、断層画像表示装置15に設けられている同時計数部17などの構成の各々を統括制御する。モニタ37は本発明における画像表示手段に相当する。
【0046】
<動作の説明>
次に、実施例1に係る断層画像表示装置を備えるPET装置1の動作について説明する。図3は実施例1に係る断層画像表示装置を備えるPET装置の動作の工程を説明するフローチャートである。なお実施例1では左右の乳房の各々を関心領域としてそれぞれ画像データを取得するものとする。
【0047】
ステップS1(MIP軸の設定)
PET装置を操作するにあたり、まずMIP軸の設定を行う。操作者は入力部33を操作して、被検体における所定の軸をMIP軸として設定する。MIP軸とは、三次元ボリュームデータに対してMIP画像を投影する方向の各々が直交する軸である。実施例1では被検体の正中線をMIP軸として設定する。関心領域のMIP画像から得られる情報を、被検体の全身像などの診断に適する画像と対応づけて解析できるので、正中線をMIP軸として設定することがより好ましい。設定されたMIP軸の情報は、位置情報算出部21へ送信される。
【0048】
ステップS2(第1の三次元ボリュームデータの生成)
次に第1の三次元ボリュームデータとして、左胸の乳房についての三次元ボリュームデータを生成する。すなわち被検体に陽電子放出核種で標識された放射性薬剤を投与する。投与後所定の時間が経過した時点で、図1(b)に示すように被検体の左胸の乳房Bを導入孔3に挿入させる。操作者は入力部33を操作して消滅γ線対を検出する指示と、関心部位は左胸の乳房である内容の情報を入力する。放射線検出器7の各々は入力される指示に従って、光検出器13から同時計数部17へγ線検出信号を送信させる。なおγ線検出信号の各々には、γ線を検出した時刻の情報が図示しないクロックにより付与されている。
【0049】
同時計数部17はγ線検出信号に付与される時刻情報に基づいて各γ線検出信号を解析する。消滅γ線対に基づくγ線検出信号であると判断された場合、同時計数部17はγ線検出信号を適正なデータであると判定する。同時計数部17は、導入孔3の中心点Poを挟んで対向する一対のシンチレータブロック9に同時に入射した一対のγ線について、被検体内の放射線薬剤に起因する消滅γ線対であると判断する。適正なデータと判定されたγ線検出信号は同時計数部17から再構成部19へ送信され、それ以外のγ線検出信号はノイズとして破棄される。
【0050】
再構成部19は適正なデータとして送信されたγ線検出信号に基づいて、乳房Bの内部の位置と、消滅γ線対の発生位置とが関連した三次元ボリュームデータを再構成する。消滅γ線対の発生位置とはすなわち放射線薬剤の分布位置であるので、再構成される三次元ボリュームデータは乳房Bの内部における放射線薬剤の分布位置を示す画像データである。
なお、左胸の乳房について再構成される三次元ボリュームデータを以下、三次元データLBとする。三次元データLBは位置情報算出部21および断層画像生成部31の各々へ送信される。
【0051】
位置情報算出部21は、MIP軸の位置を基準とする三次元データLBの座標位置を算出する。医用画像では、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)などの規格に基づいて、画像データの特定の位置を基準点として、画像データの被検体における座標位置と画像データの撮影範囲の大きさとが算出される。実施例1のように三次元ボリュームデータを取得する場合、三次元ボリュームデータの左上末端の手前側が基準点として定められる。
【0052】
一般的に、人体の全身を基準とする左胸の乳房の相対的な位置は、いずれの患者も略同じである。そのため、例えば被検体の身長の情報を得ることにより、位置情報算出部21はMIP軸である正中線ML上の所定の部位を標準位置とし、標準位置(実施例1では頭頂部とする)から三次元データLBの基準点までの距離の情報を算出できる。なお図4に示すように、頭頂部である基準位置REFの座標を(0,0,0)とした場合に、三次元データLBの基準点LBOについて算出される座標を(LBx,LBy,LBz)とする。またPET装置の規格に応じて撮影範囲は定められるので、三次元データLBについて、x方向の長さBx、y方向の長さBy、およびz方向の長さBzが算出される。
【0053】
ステップS3(第2の三次元ボリュームデータの生成)
第1のボリュームデータとして三次元データLBを生成した後、第2のボリュームデータとして、右胸の乳房についての三次元ボリュームデータを生成する。ステップS3における工程はステップS2と同様である。すなわち操作者は、被検体の右胸の乳房Bを導入孔3に挿入した状態で入力部33を操作し、消滅γ線対を検出する指示と、関心部位は右胸の乳房である内容の情報とを入力する。
【0054】
同時計数部17は適正データと判定したγ線検出信号を再構成部19へ送信する。再構成部19は、乳房Bの内部の位置と消滅γ線対の発生位置とが関連した三次元ボリュームデータを再構成する。なお右胸の乳房について再構成される三次元ボリュームデータを以下、三次元データRBとする。三次元データRBは位置情報算出部21へ送信され、位置情報算出部21は三次元データRBの座標位置の情報を算出する。三次元データRBの基準点RBOについて算出される座標を(RBx,RBy,RBz)とする。x方向、y方向、およびz方向の各々における三次元データRBの長さは、三次元データLBと同様である。
【0055】
ステップS4(三次元ボリュームデータの位置合わせ)
三次元データLBおよびRBの各々について座標位置が算出された後、位置情報算出部21は、三次元ボリュームデータの各々の位置合わせを行う。図5は仮想的な全身像Cにおける、三次元データLBおよびRBの相対的な位置を模式的に示している。なお図5ではx方向へ上に向かう方向を被検体の頭側の方向とし、z方向へ手前に向かう方向を被検体の腹側(前側)の方向とする。正中線MLは標準位置である頭頂部REFを通り、被検体の体軸方向(x方向)に平行な線である。なお診断の目的に応じて、全身像Cの代わりに、上半身像や胸部全体像などMIP軸をアキシャル面の中心線とする像を用いてもよい。
【0056】
位置情報算出部21は仮想的な全身像Cにおいて、三次元データLBの位置と三次元データRBの位置とを定める。三次元データLBは被検体の左胸の乳房について得られるボリュームデータであるので、全身像Cにおいて正面に向かって右側手前に位置する。そして三次元データLBは全身像Cにおいて、正面に向かって左側手前に位置する。
【0057】
位置情報算出部21は、MIP軸である正中線MLと、各々の関心領域との位置関係に一致するように、三次元データLBおよびRBの三次元的位置を設定する。具体的には正中線ML上における基準位置REF、基準点LBO、および基準点RBOの各々の座標に基づいて、全身像Cにおける、三次元データLBの位置および三次元データRBの位置を設定する。位置合わせが行われた三次元データの各々は、三次元データ統合部23へ送信される。
【0058】
ステップS5(三次元ボリュームデータの統合)
三次元ボリュームデータの位置合わせが行われた後、三次元ボリュームデータの統合が行われる。すなわち三次元データ統合部23は、離れた位置に設定されている複数の三次元ボリュームデータ(三次元データLBおよびRB)を統合し、単一の三次元ボリュームデータに変換する。統合によって生成される単一の三次元ボリュームデータを三次元データALBとする。三次元データ統合部23によって生成される三次元データALBは、本発明における統合三次元ボリュームデータに相当する。
【0059】
三次元データALBの範囲は、統合の対象となる三次元ボリュームデータの全てを包含する範囲である。従って図6に示すように、三次元データALBの範囲は三次元データLBおよびRBを全て包含する、太い一点鎖線で囲まれる単一の直方体として示される。一般的に左右の乳房の各々について、x方向およびz方向の座標はいずれも略同じである。そのため三次元データALBについて、基準点の座標は(RBx,RBy,RBz)であり、x方向の長さはBx、y方向の長さは(RBy−LBy+By)、z方向の長さはBzとなる。三次元データALBの情報は、MIP画像生成部27へ送信される。
【0060】
ステップS6(MIP画像の生成)
MIP画像生成部27は三次元データALBに対して、単一または複数の投影方向Sからそれぞれ投影処理を行い、MIP画像Aを生成する。図7(a)に示すように、投影方向Sの各々はMIP軸である正中線MLと直交する。MIP軸の直交面AX(実施例1ではアキシャル面)上に位置する各投影方向の間の角度θ、および生成するMIP画像の枚数(投影方向の数)は撮影条件に応じて適宜変更してよい。一例としては、正中線MLに対する投影方向の角度を10°ずつ変えながら、180°の範囲にわたって合計18枚のMIP画像を生成する。この場合、直交面AXにおける投影方向Sの角度が10°ずつ変更される。生成するMIP画像の枚数は、10〜20枚程度がより好ましい。
【0061】
実施例1では説明の便宜上、投影方向の角度を90°変え、2方向からMIP画像を生成するものとする。すなわち図7(b)に示すように正中線MLと直交し、y方向に平行な投影方向S1と、正中線MLと直交し、z方向に平行な投影方向S2との2方向からMIP画像を生成する。MIP画像生成部27は三次元データALBに対して投影方向S1からMIP画像A1を生成し、投影方向S2からMIP画像A2を生成する。なお三次元データALBは図7において、灰色を付して示している。
【0062】
MIP画像A1には三次元データLBの投影像と三次元データRBの投影像とが重なって映り、MIP画像A2には三次元データLBの投影像と三次元データRBの投影像とが並列して映る。そしてMIP画像Aの各々には、左胸の乳房における放射線薬剤の集積点P1と、右胸の乳房における放射線薬剤の集積点P2が映る。生成されたMIP画像の各々は、重畳画像生成部29へ送信される。
【0063】
ステップS7(重畳画像の生成)
重畳画像生成部29はMIP画像の各々に対して、比較画像を重畳させる画像処理を行うことによって重畳画像Tを生成する。比較画像は被検体(または標準サイズの人体)の全身像や上半身全体の像を例とする、MIP軸をアキシャル面の中心線とする像が用いられる。実施例1では図9に示すように、比較画像Fとして、被検体の上半身の像を用いることとする。図9に示すように、MIP画像A1に基づいて生成される重畳画像Tを重畳画像T1とする。MIP画像A2に基づいて生成される重畳画像Tを重畳画像T2とする。生成された重畳画像Tの各々はモニタ37に表示される。
【0064】
MIP画像Aの各々に重畳される比較画像Fは、被検体の上半身の三次元ボリュームデータを各MIP画像Aと同じ投影方向から投影させた像である。具体的には、MIP画像A1に重畳される比較画像Fは、被検体の上半身を投影方向S1(y方向)から投影させた像である。そしてMIP画像A2には、被検体の上半身を投影方向S2(z方向)から投影させた像が比較画像Fとして重畳される。MIP画像Aと、比較画像Fはいずれも正中線をMIP軸とする投影方向から投影された画像である。そのため、重畳画像に表示される比較画像Fと放射線薬剤の集積点とを参照することにより、操作者はMIP画像に映る放射線薬剤の集積点の位置を、より好適に被検体の上半身全体と対応づけて診断することができる。
【0065】
ステップS8(断層画像の表示)
操作者はモニタ37に表示される重畳画像を参照し、被検体の乳房における放射線薬剤の集積点Pについて大凡の位置情報を確認する。そして操作者は確認された位置情報に基づいて入力部33を操作し、三次元ボリュームデータから断層画像を生成するためのスライス面SLの位置を設定する。図10に示すように、断層画像生成部31は三次元データLBに対して、設定されたスライス面SLにおける断層画像Vを生成する。生成された断層画像Vは断層画像生成部31によって、モニタ37に表示される。操作者は断層画像Vを用いて、左胸の乳房Bにおける放射線薬剤の集積点P1についてより精密な診断を行う。
【0066】
<実施例1の構成による効果>
このように、実施例1に係る断層画像表示装置15を備えるPET装置1を用いることにより、複数の関心領域について、より好適に被検体の全身像の情報と対応づけて診断することができる。以下、実施例1に係る構成による効果について説明する。
【0067】
Sliding法を用いる従来の断層画像表示装置では、正中線から外れた関心領域について三次元ボリュームデータを作成した場合、関心領域の移動に従ってMIP軸の位置を関心領域の中心線へ移動させる。そして移動後のMIP軸を回転軸とする単一または複数の投影方向から、関心領域について一連のMIP画像を生成する。すなわち関心領域が左胸の乳房である場合、従来の装置では図11(a)に示すように、MIP軸の位置が正中線MLから中心線M1へと移動する。中心線M1は、左胸の乳房について得られる三次元データLBの中心点を通り、z方向に平行な線である。また、関心領域が右胸の乳房である場合、三次元データRBの中心点を通りz方向に平行な中心線M2がMIP軸となる。すなわち従来の装置では関心領域の変更に応じて、MIP軸の位置も変更される。
【0068】
従来の装置において関心領域が左胸の乳房である場合、三次元データLBのMIP画像を投影する方向の各々は、MIP軸である中心線M1と直交する。従って一例として、y方向に平行であり中心線M1と直交する投影方向S1Lや、z方向に平行であり中心線M1と直交する投影方向S2Lなどから三次元データLBのMIP画像群が生成される。投影方向S1Lから投影される三次元データLBのMIP画像A1Lや、投影方向S2Lから投影される三次元データLBのMIP画像A2Lには、左胸の乳房Bにおける放射線薬剤の集積点P1が映る(図11(b))。
【0069】
MIP画像A1LおよびA2Lは、三次元データLBの中心線M1を画像の中心線とする、左胸の乳房Bを映す画像である。MIP画像A1LおよびA2Lからなる一連のMIP画像を連続表示した場合、MIP軸である中心線M1を回転軸として左胸の乳房Bの像を回転させる動画が生成される。このような一連のMIP画像は、左胸の乳房のみに注目して診断する場合は有用である。
【0070】
一方、左胸の乳房Bのみを映すMIP画像では、左胸の乳房における放射線薬剤の集積点P1と被検体の全身像(または胸部全体の像)とを対応づけて診断することができない。すなわち従来の装置では、MIP画像によって特定の関心領域について得られた情報を、全身の画像情報と対応づけて解析することが困難である。その結果、MIP画像の解析によって得られる情報が限られるので、MIP画像を用いて実行できる診断の範囲が限られるという問題が懸念される。
【0071】
そこで実施例1に係る断層画像表示装置において、MIP軸設定部20は関心領域の位置に関わらず、被検体の正中線MLをMIP軸と設定するように構成される。すなわちMIP画像生成部27は、関心領域が左胸の乳房である場合であっても正中線MLをMIP軸としてMIP画像を生成する。従って、y方向に平行であり正中線MLと直交する投影方向S1や、z方向に平行であり正中線MLと直交する投影方向S2などから三次元データLBのMIP画像群が生成される。投影方向S1から投影されるMIP画像A1、および投影方向S2Lから投影されるMIP画像A2は、正中線MLを画像の中心線とする、左胸の乳房Bを映す画像である(図11(c))。
【0072】
MIP画像A1およびA2からなる一連のMIP画像の各々には、三次元データLBの投影像が、被検体の正中線に対する左胸の乳房Bに相当する位置に映し出される。すなわち左胸の乳房のように、正中線から外れた関心領域に対してMIP画像を生成する場合であっても、全身を関心領域としてMIP画像を生成した場合と同様に、乳房と正中線との位置関係が明確な画像が生成される。
【0073】
従って、操作者は正中線MLをMIP軸とする一連のMIP画像を用いて、左胸の乳房Bにおける放射線薬剤の集積点P1と被検体の全身との位置関係を容易かつ正確に確認できる。従って、MIP画像を用いてより多様な診断を実行することができる。さらに、被検体の全身または上半身などの比較画像Fを、MIP軸である正中線MLを基準としてMIP画像に重ね合わせることにより、放射線薬剤の集積点P1と被検体の全身との位置関係をより正確に確認できる。
【0074】
このようにMIP軸を常に被検体の正中線とすることにより、関心領域の位置に関わらず、関心領域のMIP画像から得られる情報と被検体の全身像とを対応づけて診断できる。さらに重畳画像生成部29はMIP画像の各々に対して被検体の全身像などを比較画像として重畳させ、重畳画像を生成する。操作者は三次元データから投影されるMIP画像と、MIP画像に重畳表示される比較画像とを参照することにより、関心領域のMIP画像から得られる情報と被検体の全身像とを対応づけた俯瞰的な診断を、より正確に実行できる。
【0075】
また実施例1に係る断層画像表示装置は三次元データ統合部23を備えている。三次元データ統合部23は、分離した2以上の関心領域について得られた三次元ボリュームデータの各々を、単一の三次元ボリュームデータとして統合する。すなわち左胸の乳房と右胸の乳房とを関心領域とする場合、三次元データ統合部23は三次元データLBおよびRBを統合して単一の三次元データALBを生成する。
【0076】
MIP画像生成部27は正中線MLをMIP軸として、統合された三次元データALBのMIP画像を生成する。この場合、MIP画像には左胸の乳房と右胸の乳房の各々について、三次元データの投影像がそれぞれ映り込む。すなわち単一のMIP画像に複数の関心領域の投影像が、被検体の全身と対応づけた位置にそれぞれ映る。この場合、単一のMIP画像に基づいて複数の関心領域について俯瞰的な診断を行うことができる。従って、実施例1に係る装置を用いることにより、1人の患者に対して複数の部位を診断する場合に操作者が受ける負担を軽減できる。
【実施例2】
【0077】
以下、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。なお、実施例2に係る断層画像表示装置15Aの全体構成は、実施例1に係る断層画像表示装置15の全体構成と同様である。但し、実施例1に係る断層画像表示装置15は三次元データ統合部23を備えているが、実施例2に係る断層画像表示装置15Aは図12に示すように、三次元データ統合部23の代わりにMIP画像統合部41を備えている。MIP画像統合部41はMIP画像生成部27の後段に設けられている。MIP画像統合部41は、それぞれ異なる関心領域について取得された一連のMIP画像のうち、同一の投影方向について取得されたMIP画像同士を統合し、単一のMIP画像として再構成する。
【0078】
すなわち実施例1では図3(a)に示すように、複数の関心領域について得られた三次元ボリュームデータの各々について位置合わせを行った後(ステップS4)、各々の三次元ボリュームデータを統合する(ステップS5)。そして統合されたデータに対して、正中線をMIP軸として一連のMIP画像群を生成する(ステップS6)。
【0079】
一方、実施例2では図3(b)に示すように、複数の関心領域について得られた三次元ボリュームデータの各々について位置合わせを行った後(ステップS4)、各々の三次元ボリュームデータに対してそれぞれ正中線をMIP軸として一連のMIP画像群を生成する(ステップS5A)。その後、同一の投影方向について生成されたMIP画像同士を、MIP軸を基準として重ね合わせ、複数の関心領域の投影像が映り込む単一のMIP画像(以下、「統合画像」とする)を生成する(ステップS6A)。
【0080】
ここで実施例2に係る断層画像表示装置15Aの動作について、実施例2に特徴的なステップS5A〜S6Aの工程を重点的に説明する。なお実施例1と同様に、左胸の乳房と右胸の乳房の各々を関心領域とし、投影方向をS1およびS2とする場合を例にとって説明する。またステップS1〜S4の工程は実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0081】
ステップS5A(MIP画像の生成)
図5に示すように位置情報算出部21が三次元データLBおよびRBの位置合わせを行った後、MIP画像生成部27はMIP画像の生成を行う。すなわちMIP画像生成部27は正中線MLをMIP軸とする三次元データLBのMIP画像ALと、正中線MLをMIP軸とする三次元データRBのMIP画像ARとを生成する。
【0082】
MIP画像ALのうち、投影方向S1から投影された画像をMIP画像AL1とし、投影方向S2から投影された画像をMIP画像AL2とする(図13、左列)。またMIP画像ARのうち、投影方向S1から投影された画像をMIP画像AR1とし、投影方向S2から投影された画像をMIP画像AR2とする(図13、中列)。MIP画像ALの各々には、被検体の全身において左胸の乳房に相当する位置に三次元データALの投影像が映る。MIP画像ARの各々には、被検体の全身において右胸の乳房に相当する位置に三次元データALの投影像が映る。各々のMIP画像はMIP画像統合部41へ送信される。
【0083】
ステップS6A(MIP画像の統合)
MIP画像統合部41は同一の投影方向から投影されたMIP画像を統合し、統合画像ASを生成する。すなわち投影方向S1から投影されたMIP画像である、MIP画像AL1とMIP画像AR1とを統合して統合画像AS1を生成する。そして投影方向S2から投影されたMIP画像である、MIP画像AL2とMIP画像AR2とを統合して統合画像AS2を生成する(図13、右列)。統合画像ASの各々には、左右の乳房Bが被検体の全身と対応する位置にそれぞれ映る。統合画像ASは本発明における統合MIP画像に相当する。
【0084】
統合画像ASは重畳画像生成部29へ送信され、重畳画像生成部29は統合画像ASに比較画像Fを重畳させて重畳画像を生成する(ステップS7)。操作者は統合画像ASを参照して適切なスライス面の位置を決定し、決定したスライス面における断層画像をモニタ37に表示させる(ステップS8)。操作者は断層画像に基づいて、関心領域の診断を行う。
【0085】
このように、実施例2ではMIP画像を統合することにより、複数の関心領域が被検体の全身に対応する位置にそれぞれ表示される、単一のMIP画像を投影方向ごとに生成する。この場合、MIP画像統合部41が統合する対象は三次元ボリュームデータ全体ではなく各々のMIP画像である。そのため、関心領域の各々が被検体の全身に対応する位置にそれぞれ映るMIP画像を生成するために必要とする計算を簡略化できる。従って、実施例2に係る装置を用いることによって、診断のワークフローをより向上させることができる。
【0086】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0087】
(1)上述した各実施例では、ステップS2およびステップS3において、2つの関心領域についてそれぞれ三次元ボリュームデータを再構成したが、関心領域の数は適宜増減してもよい。この場合、関心領域の数に応じて三次元ボリュームデータを再構成するステップの数は増減する。また関心領域の数が1つである場合、三次元ボリュームデータ(実施例2ではMIP画像)を統合する工程は省略される。
【0088】
(2)上述した各実施例では、MIP軸の位置を常に正中線としたがこれに限られない。すなわち、各々の関心領域に係るMIP軸が一致するならば、MIP軸設定部20が設定するMIP軸の位置は正中線以外であってもよい。一例としては、親指と小指とを関心領域とする場合、中指と手首を結ぶ線をMIP軸としてMIP画像を生成する。そして比較画像として手全体の像をMIP画像に重畳することにより、親指と小指の各々について得られる情報を手全体の位置と対応づけて解析できる。
【0089】
(3)上述した各実施例では、立位姿勢または座位姿勢をとる被検体について診断する場合を例にとって説明したが、本発明に係る構成は、天板に臥位姿勢で載置された被検体に対して診断する場合などにも適用できる。
【0090】
(4)上述した各実施例では、断層画像表示装置が設けられる構成としてPET装置を例にとって説明したが、各実施例に係る断層画像表示装置は、PET装置の他にSPECT装置などの断層画像診断機器にも適用できる。
【符号の説明】
【0091】
1 …PET装置
7 …放射線検出器
13 …光検出器
15 …断層画像表示装置
17 …同時計数部
19 …再構成部(三次元データ生成手段)
20 …MIP軸設定部(中心軸設定手段)
21 …位置情報算出部(位置合わせ手段)
23 …三次元データ統合部(三次元データ統合手段)
27 …MIP画像生成部(MIP画像生成手段)
29 …重畳画像生成部(重畳画像生成手段)
31 …断層画像生成部(断層画像生成手段)
33 …入力部
35 …記憶部
37 …モニタ(画像表示手段)
39 …主制御部
41 …MIP画像統合部(MIP画像統合手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14