特許第6249324号(P6249324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249324内包されたカーボンブラックを含むメイクアップ組成物
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  • 特許6249324-内包されたカーボンブラックを含むメイクアップ組成物 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249324
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】内包されたカーボンブラックを含むメイクアップ組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20171218BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20171218BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20171218BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61K8/25
   A61Q1/10
   A61Q1/06
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-84261(P2012-84261)
(22)【出願日】2012年4月2日
(65)【公開番号】特開2012-214471(P2012-214471A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】1152764
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ジャン‐フランソワ トランシャン
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム シェヴァリエ
(72)【発明者】
【氏名】エミリー ゴンバート
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−032775(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/111128(WO,A1)
【文献】 特開2007−039861(JP,A)
【文献】 特開昭60−081012(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0165308(US,A1)
【文献】 特開2001−011342(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/028568(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
C09C 1/00− 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品として許容できる媒体と、幅/長さの比が3未満の球状の粒子とを含み、
前記球状の粒子はカーボンブラックが中に内包されている非晶質シリカマトリックスを含み
前記粒子の平均直径D50が5〜50ミクロンの間であり、
前記カーボンブラックの平均直径D50値が1μm未満であり、
前記カーボンブラックは、前記粒子の重量に対して10〜45重量%の間の割合で内包されている、
化粧品組成物。
【請求項2】
前記粒子が、化粧品として許容できる半透明又は透明な媒体の中に分散されている、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
マスカラ又は口紅である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の化粧品組成物を調製する方法であって、
水性媒体の中にアルコキシシランを分散することによってシリカゲルを調製する段階、
カーボンブラックを、前記シリカゲルに加える段階、
周囲温度で乾燥させ、前記球状の粒子を得る段階、
100〜200℃の間の温度で加熱することによる前記球状の粒子の圧密の段階、及び
前記球状の粒子を前記化粧品として許容できる媒体に分散する段階
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚、まつ毛、眉毛又は爪をメイクアップすることを特に目的とする、黒の顔料を含む有色又は着色化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料(pigment)は、多数の有色又は着色組成物(ペンキ、インク、メイクアップ製品)の中で、不溶性の着色剤として、産業において一般的に使用される。顔料は、粉末状の形態のこれらの組成物の中に通常組み込まれるか、又はこれらの組成物が施用される支持体の表面に顔料を固定する基剤若しくは結合剤の中に分散される。
【0003】
新規顔料の開発は、化粧品産業を含む多数の産業にとって主要な問題である。化粧品産業は、皮膚、唇、爪、又はまつ毛若しくは眉毛などのケラチン繊維に施用される、例えばメイクアップ組成物の中に組み込むために、色合い若しくは色、又は光沢の強さに関して優れた視覚効果を生成する顔料を、より特に探している。
【0004】
顔料によって視覚的に生成される色は、スペクトルの波長がおよそ400〜700nmの間である光の可視スペクトルの一部を吸収し、目によって感知される非吸収性の波長(相補的スペクトル)を伝える顔料の能力に由来する。
【0005】
一次顔料によって生成される視覚効果を改良するために、例えば、顔料の色合い若しくは色、又は顔料の光沢の強さを高めることを対象とする、様々な処理に頼ってもよい。処理される顔料について述べる。
【0006】
既知の処理の中で、例えば、顔料の1つ又は複数の層を使用して基質をコーティングすることが可能である。
【0007】
米国特許第6528568号又は出願WO99/13010によって教示された解決法などの別の解決法は、視覚効果を改良することを目的とする組成物を使用して、顔料それ自体をコーティングすることにある。
【0008】
出願EP1666544(日本板硝子株式会社)は、シリカ又はアルミナのタイプの材料の中に分散された黒の顔料を含む、輝く黒い小片の形態で提供される顔料を開示している。適用される処理は、輝度(luminosity)(又は明度(lightness))Lの値(CIELAB1976モデルによる)が、この値が一次顔料と比較される場合に処理の後で上昇する小片を得ることを可能にし、このことは、一次顔料より低い彩度(intensity)を有する黒色を示す。これは、CIELABモデルによれば、輝度Lの値が低ければ低いほど、黒はより濃くなり、「完璧な」黒(光の完全な吸収)は、値0を有するからである。
【0009】
多孔性のマトリックス、特に多孔性のシリカマトリックスで顔料をコーティングすることによって、顔料の色合いの輝度を上昇させることがまた、出願EP581651において示唆された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、第一に、改良された視覚効果を示し、皮膚、唇、爪及び/又はケラチン繊維をメイクアップすることを特に目的とする化粧品組成物を提供することを対象とする。これらの組成物は、出願EP1666544によって例証された先行技術の黒の顔料及び未処理の市販の顔料(一次顔料)より、濃い黒色を有する顔料を含む。
本発明のさらなる目的は、産業規模で、特に化粧品において使用できる、信頼のおける、再現可能な方法で、技術的な問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上に提示された問題は、本発明によって解決される。これは、本発明者らがここで、カーボンブラックの力を内包する非晶質シリカ(二酸化ケイ素)マトリックスから形成される、実質的に球状の粒子の形態で提供される処理された顔料を、化粧品組成物へ組み込むことによって、より低い輝度及び大いに満足のいく光沢の黒色によって示される特に注目すべき視覚効果を得ることが可能になることを発見したからである。
【0012】
したがって、本発明は、カーボンブラック粉末を内包する非晶質シリカ(二酸化ケイ素)マトリックスから形成される、実質的に球状の粒子を含む化粧品組成物を対象とする。好ましい実施形態によれば、粒子は、基剤が、粒子によって生成される視覚効果を最適に表示することを可能にするように、半透明又は透明な化粧品の基剤の中に分散される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による粒子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
用語「カーボンブラック」は、純粋な状態のカーボンブラック、又はカーボンブラックから本質的になる、すなわち少なくとも90重量%及びさらによいことには少なくとも95重量%のカーボンブラックのいずれかの黒の顔料を含む。用語「一次顔料」はまた、この顔料を処理しないことに対して使用される。
【0015】
本発明のために使用されるカーボンブラックは、好ましくは微細に分割された粉末であり、D50値によって定義される平均直径は、1μm未満である。
【0016】
このように定義された黒色は、可視スペクトル全体における光の顔料による吸収を示し、分光光度測定が400nm〜700nmの間の波長の範囲において実行される場合、可視スペクトルにおける反射ピークの特徴的な欠如によって実験的に示される。
【0017】
非晶質シリカをベースにした粒子の実質的に球状の形は、組み込まれる組成物における予期せぬ視覚効果を生成するような特性を、この黒の顔料に与える。特に、後者は、その他の黒の顔料、特に未処理の顔料を組み込むことによって得られるよりも優れている、色の深み及び光沢を示す。
【0018】
球状の粒子は、小片又は針状晶を特に形成しない実質的に球状の形の粒子を意味すると理解される。球状の形は、構造的な欠陥、窪み及び/又は隆起などの特に表面の欠陥を示すことがある、球状の又は卵形の形を意味すると理解される。したがって、粒子は、凹面の部分を含むことがあり、さらに実際には、いくつかの粒子については、円環状の形からできていることがある。実質的に球状の形の粒子は、写真などにおいて可視化した後で、全体的に球状の形からできているとみなしうる。
【0019】
「実質的に球状の粒子」は、幅/長さの比が3未満、好ましくはおよそ1に等しいことを示す粒子を、特に意味すると理解される。
【0020】
本発明による粒子は、図1において図示される。本発明の粒子の定義は、これらの粒子が、大幅により小さいサイズ、すなわち一般的に、球状とみなされる粒子のせいぜい半分の平均サイズを有する粒子である場合特に、様々な形を有する粒子の存在を排除しない。典型的には、球状の粒子は、非晶質シリカビーズである。
【0021】
本発明の発明者らは、非晶質シリカマトリックスの中へのカーボンブラックのナノメートルの一次粒子の内包によって得られる処理された顔料が、半透明又は透明な化粧品組成物基剤に組み込まれる場合特に、生成された黒色がより深く、またより光沢もある球状の粒子を得ることを可能にすることを実証した。
【0022】
一次カーボン粒子の内包は、この一次顔料の主要な欠点を克服することをさらに可能にする。これは、数ナノメートル又は数十ナノメートルの桁の一次カーボン粒子のサイズが、皮膚、唇、爪又はケラチン繊維に施用される化粧品組成物、及びより特にメイクアップ組成物の場合のように、ヒトの身体の皮膚に施用されることを目的とする組成物において、その使用が問題になるからである。
【0023】
非晶質シリカマトリックス中へのカーボン粒子の内包は、本発明の顔料の最終粒子サイズを著しく増加させることを可能にし、上述の組成物の中でのその使用のリスクをなくする。
【0024】
本発明の化粧品組成物は、皮膚、唇、爪、又はまつ毛若しくは眉毛などのケラチン繊維をメイクアップすることを特に目的とする。本発明の組成物は、好ましくはマスカラの形態である。
【0025】
本発明の顔料は、有色又は着色組成物に組み込まれると、視覚的により深い黒(別の黒の顔料を含む同じ組成物について得られたものと比較される場合、より低い値の輝度L)及びより強い光沢を有する組成物を得ることを可能にする。
【0026】
本発明のこの顔料の粒子は、一次カーボンブラック粒子より著しく大きいサイズ(粒子サイズ)を有する。
【0027】
本発明の顔料の粒子は、レーザー回析によって測定された、0.1〜200ミクロン(μm)の間、好ましくは1〜100ミクロンの間、より好ましくは5〜50ミクロンの間の、平均直径D50によって定義されるサイズを示す。
【0028】
本発明のために使用される顔料の粒子は、有利には、ゾル−ゲル法によって調製され、ゾル−ゲル法の使用は、溶液の中での前駆物質の単純な重合によって、融解に頼ることを避ける。
【0029】
Livage(Revue Verre、6巻、5号、2000年10月)は、光学的適用のための材料を調製するゾル−ゲル法によって処理された、発色団の内包を記載しており、その方法によれば、有機分子を前駆物質アルコキシドの溶液に溶解させる。水を加えると、周りに形成されたシリカネットワークの中に有機分子が閉じ込められている間に、アルコキシドの加水分解及び縮合が生じる。
【0030】
典型的には、上に記載された顔料の粒子を調製する方法は、水性媒体の中にアルコキシシランなどのシリカ前駆物質を分散することによってコロイド溶液([ゾル」としてもまた知られる)が形成される段階を含む。シリカゲルは、このようにして得られる。
【0031】
このタイプのゾル−ゲル法において一般的に使用される前駆物質は、例えば、式Si(OCHのテトラメトキシシラン又は式Si(OCのテトラエトキシシランである。
【0032】
前駆物質を分散させる媒体は、好ましくは、有利に炭素原子を1〜5個有するアルコール、好ましくはエタノールを含む、典型的には水性媒体である。
【0033】
好ましくは、水性媒体は、水と炭素原子を1〜5個有するアルコール、好ましくはエタノールとの混合物からなり、水は、混合物の10〜90体積%、好ましくは80〜85体積%である。
【0034】
調製の方法のさらなる段階において、カーボンブラックを、ゾル又はコロイド溶液の形成のための媒体に加える。
【0035】
カーボンブラックは、本発明の顔料の重量に対して3〜90重量%の間、好ましくは8〜60%の間の割合で、一般的に組み込まれる。本発明の顔料の重量に対して10〜45重量%の間の割合が好ましい。
【0036】
シリカ及び一次カーボンブラックを含むシリカゲルを調製したら、ゲルを圧縮し、続いて溶媒を除去し、実質的に球状の粒子を得ることを可能にする方法によって、周囲温度での乾燥を実行する。この乾燥は、球状の粒子の形成を可能にするために、有利には、穏やかな条件下、オーブンの中で実行される。かかる方法は、均一なサイズの液滴の形成を可能にする。
【0037】
粒子を、典型的には100〜200℃の間の温度で、球状の粒子の圧密及び本発明において使用される顔料の生成を可能にするのに適切な時間の間加熱することによって、球状の粒子の圧密の段階に従わせる。
【0038】
本発明の顔料の粒子は、様々な化粧品組成物において着色充填剤として使用される。
【0039】
典型的には、本発明の顔料は、有色及び/又は着色組成物の調製に適切な媒体の中に分散される。
【0040】
したがって、本発明の別の主題は、1つ又は複数の化粧品添加剤を含む、化粧品として許容できる媒体の中に分散された、本発明による顔料の粒子を含む化粧品組成物である。
【0041】
有利には、本発明の組成物は、化粧品として許容できる媒体の中に分散された、上に定義された本発明の顔料を含む。好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、処理又は未処理のいずれであっても、その他の顔料を含むことができる。
【0042】
かかる組成物は、特に、皮膚、唇、爪、又はさもなければまつ毛若しくは眉毛などのケラチン繊維をメイクアップするための組成物である。
【0043】
本発明による顔料は、粉末状、液体、半流動体、又はペースト状の媒体の中で分散される優秀な能力(分散性)を示す。
【0044】
かかる媒体の中に分散される本発明の顔料は、この組成物が膜を形成する場合特に、より強い光沢を有するより深い黒を、組成物の施用時に生成する。
【0045】
この顔料は、マスカラ又は口紅などの半透明又は透明な基剤に組み込まれる場合、最も特筆すべき視覚効果を生成するが、基剤が、ワックス又は二酸化チタンなどの化粧品添加剤の存在によって不透明になる組成物に、この粒子を組み込むこともまた可能である。視覚効果は、それ程華やかではないが、この顔料の着色する力及び被覆する力は、より低い輝度を有する黒色を生成することを可能にするのに十分である。
【0046】
したがって、多数の組成物、特に、皮膚、唇、爪又はケラチン繊維を着色するための化粧品組成物を調製することが可能である。
【0047】
したがって、本発明は、皮膚、唇、爪、又はまつ毛若しくは眉毛などのケラチン繊維をメイクアップするための組成物を網羅する。
【0048】
好ましい使用によれば、化粧品組成物は、組成物の総重量に対して1〜99重量%、有利には1〜80重量%、より好ましくは3〜70重量%の本発明の顔料を含み、残りは、化粧品として許容できる媒体からなる。
【0049】
本発明の顔料が中に分散されている、化粧品として許容できる媒体は、有利には分散剤、保存剤、抗酸化剤、香料、レオロジー添加物、テクスチャー剤、ポリマー又は界面活性剤から選択し、有利には1つ又は複数の化粧品添加剤を含む。
【0050】
ポリマーは、有利には、施用の時に膜を形成する能力のために選択することができ、この場合、有利には、本発明の顔料を含む組成物の施用時に形成された膜の機械的特性(弾性、強度)を改良する可能性がある可塑剤と組み合わされる。
【0051】
本発明の組成物は、有利には当業者にとって既知のポリマーから選択し、少なくとも1種の膜形成剤を含みうる。
【0052】
媒体は、水性若しくは親水性の媒体でありうるか、又はさもなければ親油性若しくは脂溶性の化合物から形成された脂肪相から形成されうる。
【0053】
本発明の顔料が中に分散されている媒体は、非混和性の相を含むこともまたあり、さらに、油中水型又は水中油型の乳濁液の形態で提供されることもある。
【0054】
検討中の組成物に応じて、媒体は、固体及び特に粉末状、ペースト状、液体又は半流動体でありうる。
【0055】
上に説明の通り、化粧品として許容できる媒体(本特許出願において「基剤」としてもまた知られる)は、有利には透明又は半透明、より有利には、やはり透明である。
【0056】
上に定義された化粧品組成物は、保湿剤(moisturizing agent)若しくは湿潤剤(humectant)、抗加齢剤、抗菌剤、又はさもなければ紫外線スクリーニング剤から特に選択し、1種又は複数の化粧品活性剤を含むこともまたある。
【0057】
本発明の化粧品組成物は、有利には、マスカラ、マニキュア、口紅、グロス、アイライナー、ファンデーション又はアイシャドーである。
【0058】
本発明の好ましい使用によれば、メイクアップ組成物は、ケラチン繊維に施用されると、視覚的により深い黒色及びより素晴らしい光沢を生成するマスカラである。
【0059】
マスカラは有利には、透明な膜形成基剤の中への本発明の顔料の粒子の分散物から形成される。
【0060】
有利な使用によれば、マスカラは有利には、上に定義された本発明の顔料を20重量%まで含む。
【0061】
本発明の別の主題は、皮膚、唇、爪又はケラチン繊維をメイクアップする効果を得るために、上に定義された化粧品組成物の施用を含むことを特徴とする、皮膚、唇、爪、又はまつ毛若しくは眉毛などのケラチン繊維をメイクアップする方法を対象とする。
【0062】
したがって、本発明は、皮膚、唇、爪又はケラチン繊維をメイクアップするための化粧品物品、及びより特にマスカラにもまた関するものであり、前記品目は、上又は下に定義された組成物を含む。
【0063】
前記組成物の施用は有利には、前記組成物の膜を身体の関係する部分へ施用することを可能にする。
【0064】
マスカラは、組成物の均一な施用を可能にする「塗布器」タイプのデバイスを使用して、より特にまつ毛又は眉毛に施用し、その結果、組成物の乾燥後形成された膜は均一であり、所望の視覚効果を生成する。
【0065】
本発明は、定義された有色若しくは着色化粧品組成物、又は上若しくは下に定義された化粧品物品の皮膚への施用を含む、化粧メイクアップ又はケアの方法にもまた関する。
【0066】
本発明のその他の目的、特徴及び利点は、例証を用いてのみ示され、したがって本発明の範囲をいずれの方法によっても限定することができない実施例に言及する説明の記載を読んだ結果、当業者にとって明白になる。
【0067】
実施例は、本発明の不可欠の部分を形成し、したがって一般的範囲を有する。
【0068】
さらに、実施例において、全てのパーセンテージは、特段の指示がなければ重量によって示され、温度は、摂氏度で表現され、圧力は、特段の指示がなければ大気圧である。
【実施例】
【0069】
実施例1:カーボンブラックを内包する球状の粒子の調製
コロイド状シリカ(Silicadol(シリカドール)30A−日本化学工業株式会社)670gを、エタノール/水(10/50v/v)水性/アルコール性溶液600mlの中に分散した。
【0070】
100nm未満である粒子サイズの一次カーボンブラック(供給業者LCW Sensient)を、コロイド状シリカの重量に対して30重量%の一次顔料の割合で予調製されたコロイド状シリカ懸濁液に加えた。分散された顔料を含むシリカゾルを得るために、混合物をホモジナイズした。
【0071】
得られたゲルを、球状の粒子を形成し圧縮することを可能にする条件下、周囲温度で乾燥した。得られた粒子を、続いて圧密段階に従わせた(200℃で2時間)。
【0072】
得られた顔料は、カーボンブラックを内包する非晶質シリカの球状の粒子の形態になった(図1)。
【0073】
粒子のためのCIELABシステムによるLの測定
が輝度(又は明度)を表す、0の値(黒)〜100の値(白)までの範囲のスケール上に「黒−白」の比色軸を作り上げる、色の表現のための「1976CIE L」(CIELAB)モデルを利用した。
【0074】
の値は、水平面に対して45°に向けられた入射光線の正反射に対して15°の角度で受け取られる光の強度、及び本発明の顔料又は前記顔料を含む組成物の試料上での輝きから測定された。
【0075】
比色の測定は、X Rite社のMA98分光比色計によって実行された。
【0076】
値は、光源D65 10°下で得られた。フラッシュ装置は、15°の角度値で反射値を捕らえた。
【0077】
本発明の顔料を含む、試験される顔料のそれぞれを、厚さ1mmのポットの中にぎっしり詰めた。
【0078】
ポットのそれぞれについて得られたL(15°)値を、下の表1に提示する。
【表1】
【0079】
驚いたことに本発明の顔料を入れたポット(実施例1)は、最小のL値を示し、一方顔料は、一次顔料を100%入れたその他のポットと対照的に、カーボンブラックを30重量%当量だけ入れた(シリカ70%)。
【0080】
非晶質シリカの球状のマトリックスの中へのカーボンブラックの内包は、一次顔料について得られたより濃く、より深い黒色を得ることを可能にする。
【0081】
粒子の光沢の測定(SRR光沢試験)
SRR光沢(「反射率光沢」)試験は、ASTM規格E429−78、「積分球装置を使用する、金属表面の反射の特徴の測定及び算定のための試験方法(TEST Method for Measurement and Calculation of Reflecting Characteristics of Metallic Surfaces Using Integrating Sphere Instruments)」(www.astm.org)に即する。
【0082】
この試験は、正反射を含んで又は排除して、反射率測定を実行することによって、試料の表面の光沢を評価することを可能にする。
【0083】
分光比色計は、排除された及び含まれた正反射によって較正される。
【0084】
以下の式を使用するデバイスのソフトウエアによって算定されるSSR光沢の値によって、試験される顔料が入っているポット(Lの測定に関するのと同じ試料)について測定を実行する:
((avgTs−avgDs)/avgTs)100
が、表示される。
【0085】
この式は、各試料について得られた、反射率、正反射包含(avgTs)、及び拡散した反射率(正反射排除)(avgDs)についての平均値を考慮に入れる。
正反射包含(avgTs):反射される全てのエネルギーが考慮に入れられる。
正反射排除(avgDs):正反射角で反射されるエネルギーは、平均反射率値の測定から排除される。
【0086】
10mmの開口部を有する光源D65 10°下で、GreytagMacbeth社のColor(カラー) I5分光比色計で、測定を実行する。
【0087】
試験された顔料の各試料について得られたSRR光沢値(ポット内測定値)を、下の表2において示す。
【表2】
【0088】
本発明の顔料は、SRR光沢試験について最高の光沢を示し、同じ手順によって試験されたその他の一次顔料によって生成されるより視覚的に優れている光沢効果を示す。
【0089】
実施例2:非晶質シリカの中に内包されたカーボンブラックの粒子を含むマスカラ
マスカラは、実施例1によって調製された顔料が中に分散されている透明な基剤の形態で存在して、調製された。
【0090】
マスカラは、以下の配合(重量%)を有する:
黒の顔料 12
1,3−ブチレングリコール 10
グリセロール 20.5
膜形成アクリルポリマー(コバブリル(Covavryl)(登録商標)E14)
12
フェノキシエタノール 0.5
雲母 9
水 36
【0091】
実施例1の顔料を、同じパーセンテージ(組成物の12重量%)による参照の黒の顔料(一次カーボンブラック、酸化鉄又は酸化チタン)と置き換えて、この組成物の調製を再現した。
【0092】
マスカラ組成物をポットの中へ圧縮して、L値を、実施例1と同じ方法によって算定した。
【0093】
調製された組成物のそれぞれについて得られたL値を、下の表3において述べる。
【表3】
【0094】
本発明の顔料を含むマスカラ組成物は、最低のポット内L値を示す。このマスカラによって生成された黒は、最も深く、一方顔料自体は、一次カーボンブラックを30%しか含まない。
【0095】
本発明の顔料が中に分散されている透明な基剤によって形成されたマスカラの、まつ毛への膜としての施用は、色の彩度及び光沢の強さの両方について、より強い視覚効果を生成する。
【0096】
実施例3:非晶質シリカの中に内包されたカーボンブラックの粒子を含む、唇のための組成物
組成物は、口紅のスティック状の形態で提供され、特許出願FR1052411において記載されているような透明の基剤の中に分散される本発明の顔料(実施例1)を含む。
【0097】
組成物は、以下の配合(重量%)を有する:
本発明の黒の顔料 5.5
ATPAタイプのポリマー 16.5
エチルヘキシルヒドロキシステアレート 12
水添ポリイソブテン 55
セチルアルコール 3.2
スチレン/メチルスチレン/インデン水添コポリマー 7
ジブチルラウロイルグルタミド 0.8
INCI=ダイマージリノール酸ビスジオクタデシルアミド/エチレンジアミンコポリマー。
【0098】
組成物は、本発明の顔料が中に分散されている、無水の透明な基剤から形成される。基剤は、唇への施用のためのスティック状の形態の有色組成物を形成するために、基剤の親油性化合物を構築するATPAタイプのポリマーを含む。
【0099】
実施例4:非晶質シリカの中に内包されたカーボンブラックの粒子を含むマスカラ
水の中に乳化させた不透明な基剤から、下のマスカラを形成する。その組成物の配合は、以下の通りである(重量%):
本発明の黒の顔料 15
パラフィン 17
ヒドロキシエチルセルロース 1.3
アラビアゴム 1.7
トリエタノールアミン 2.2
パルミチン酸 2.2
ステアリン酸 2.2
ビス−ジグリセリルポリアシルアジペート−2 2.3
18〜36トリグリセリド 3.0
ワックス 4.5
保存料 2.0
精製水 qs
【0100】
マスカラは、塗布器を使用して、まつ毛へ膜として施用されると、濃い、被覆する黒の膜を形成する。
図1