(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物は、露光後、アルカリ性水溶液を用いた現像が可能である。当該組成物から形成された膜のうち露光により光が照射された領域における膜が、アルカリ性水溶液に溶解し、除去されるため、本発明の感光性樹脂組成物はポジ型のものである。
【0018】
(アルカリ可溶性樹脂)
本発明の感光性樹脂組成物は主要成分としてアルカリ可溶性樹脂を含有する。この樹脂を含有するために、本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ性水溶液に対する溶解性を示し、アルカリ水溶液を用いた現像が可能となる。
【0019】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを触媒の存在下で、縮合させることにより得られたノボラック樹脂を用いることができる。
【0020】
前記フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。
【0021】
前記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピオンアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0022】
具体的なノボラック樹脂としては、フェノール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、フェノール−ナフトール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂等が挙げられる。
【0023】
アルカリ可溶性樹脂としては、上述のノボラック樹脂以外にも、ポリヒドロキシスチレン、ポリイソプロペニルフェノール、フェノール/キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール/キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール/ジシクロペンタジエン縮合樹脂等が挙げられる。
【0024】
以上のアルカリ可溶性樹脂のなかでも、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、フェノール/キシリレングリコール縮合樹脂が好ましく、ノボラック樹脂がより好ましい。なお、本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0025】
アルカリ可溶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、1000〜100000であることが好ましく、より好ましくは1500〜50000、更に好ましくは2000〜25000である。このMwが上述の範囲内である場合には、感光性樹脂組成物は現像性に優れ、得られる硬化膜の柔軟性に優れる。
【0026】
(感光剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、感光剤を含む。感光剤は、光の照射を受けて酸を発生する化合物であり、本発明の組成物から形成される膜のうち光照射領域におけるアルカリ性水溶液への可溶性を増大させる機能を有する。
【0027】
上記感光剤としては、ポジ型レジスト組成物に配合される従来公知の感光剤であればよく、例えば、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル等が挙げられる。
【0028】
上記ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、多価フェノールの水酸基のすべて、又は、一部が1,2−キノンジアジドスルホン酸でエステル化された化合物を用いることができる。具体的には、多価フェノールの水酸基の20〜100%が1,2−キノンジアジドスルホン酸でエステル化された化合物を用いることができる。
【0029】
上記エステル化されたキノンジアジドスルホン酸としては、例えば、(1)トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物、(2)テトラヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物、(3)ペンタヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物、(4)ヘキサヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物、(5)ビス(2,4’−ジヒドロキシフェニル)メタンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物、(6)ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物、(7)トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物、(8)1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物、(9)ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物、(10)2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物、(11)1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物、(12)4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物、(13)ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物等が挙げられる。
(1)トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2−キノンジアジドスルホン酸とのエステル化物の具体例としては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
(2)テトラヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物の具体例としては、例えば、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,2’−テトラヒドロキシ−4’−メチルベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,2’−テトラヒドロキシ−4’−メチルベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
(3)ペンタヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物の具体例としては、例えば、2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
(4)ヘキサヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物の具体例としては、例えば、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
(5)ビス(2,4’−ジヒドロキシフェニル)メタンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物の具体例としては、例えば、ビス(2,4’−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,4’−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
(6)ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物の具体例としては、例えば、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
(7)トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物の具体例としては、例えば、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
(8)1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物の具体例としては、例えば、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
(9)ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物の具体例としては、例えば、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
(10)2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物の具体例としては、例えば、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
(11)1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物の具体例としては、例えば、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
(12)4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物の具体例としては、例えば、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
(13)ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタンと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物の具体例としては、例えば、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0030】
また、他のキノンジアジド基含有化合物、例えば、オルソベンゾキノンジアジド、オルソナフトキノンジアジド、オルソアントラキノンジアジド又はオルソナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類及びこれらの核置換誘導体;オルソナフトキノンスルホニルクロリドと、水酸基又はアミノ基を有する化合物との反応生成物等も用いることができる。
【0031】
上記水酸基又はアミノ基を有する化合物としては、例えば、フェノール、p−メトキシフェノール、ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ナフトール、カルビノール、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール−1,3−ジメチルエーテル、没食子酸、水酸基を一部残してエステル化又はエーテル化された没食子酸、アニリン、p−アミノジフェニルアミン等が挙げられる。
【0032】
これらのうち、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が好ましく用いられる。また、これらのキノンジアジド化合物は、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0033】
上記のような1,2−キノンジアジドスルホン酸エステル類は、例えば、1,2−キノンジアジドスルホン酸のハロゲン化物を、塩基触媒の存在下で、対応する多価フェノール(多価ヒドロキシ化合物)でエステル化することにより得ることができる。
【0034】
より具体的には、例えば、上記のような2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルは、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンと1,2−キノンジアジド−5−スルホン酸クロリドとを縮合させることにより、得ることができる。
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物において、感光剤の配合割合は適宜設定可能であるが、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、15〜18重量部がより好ましい。感光剤の配合割合が1重量部未満であると、十分な現像感度を達成できない傾向があり、30重量部を超えると、現像の解像度が低下する傾向がある。
【0036】
(ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル)
本発明の感光性樹脂組成物は、繰り返し数が2以上30以下のポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルを含有する。この化合物はエポキシ基を含有するために、感光性樹脂組成物から膜を形成し、所定のパターンに現像した後、加熱することで当該膜を硬化させて硬化膜とすることができる。本発明は、エポキシ基を有する化合物として、繰り返し数が2以上30以下のポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルを用いることで、感光性樹脂組成物の現像性を優れたものとすることができるとともに、当該組成物から形成された硬化膜の柔軟性を向上させることができる。
【0037】
本発明で使用するポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルは次の化学式で表される。
【0039】
式中、Rはアルキレン基を表す。nは繰り返し数を表し、2以上30以下の整数である。当該ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルとしては1種類のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明で使用するポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルにおけるオキシアルキレン部位の繰り返し数は2以上30以下である。繰り返し数が1であったり、30を超えると、硬化膜の柔軟性を優れたものとすることができず、硬化膜にクラックが生じやすくなる。また、膜の無電解めっき耐性についても不十分なレベルとなる。前記繰り返し数は4以上30以下であることが好ましい。繰り返し数を4以上とすることで、感光性樹脂組成物から形成された膜と基板との密着性がより向上し、無電解めっき耐性をより優れたものとすることができる。
【0041】
アルキレン基Rとしては特に限定されないが、例えば、炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられる。現像性、柔軟性、無電解めっき耐性の観点から、好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基である。すなわち、好ましいポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル(アルキレン基Rの炭素数4)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(アルキレン基Rの炭素数2)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(アルキレン基Rの炭素数3)が挙げられる。最も好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテルである。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物において、前記ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルの配合割合は現像性及び柔軟性の観点から設定することが可能であるが、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、5〜25重量部が好ましく、8〜20重量部がより好ましい。前記ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルの配合割合が5重量部未満であると、感光性樹脂組成物から形成された膜が十分な硬化性を有しない可能性があり、25重量部を超えると、現像性が優れたものにならない可能性がある。
【0043】
(トリアジン骨格を有する化合物)
本発明の感光性樹脂組成物には、トリアジン骨格を有する化合物を配合することができる。これにより、感光性樹脂組成物の無電解めっき耐性をさらに向上させることができる。これは、トリアジン骨格が有する窒素原子がめっき金属とキレートを形成することで、膜と基板との密着性が向上し、めっき液が基板と膜とのあいだに染み込みにくくなるためと考えられる。
【0044】
トリアジン骨格を有する化合物は特に限定されないが、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0046】
前記式中、R
1、R
2及びR
3は、独立して、炭化水素基、又は、置換又は無置換のアミノ基を表す。炭化水素基としては、炭素数1〜12の炭化水素基が挙げられ、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基のいずれであってもよい。アミノ基が有する置換基としては特に限定されないが、例えば、炭素数1〜12の炭化水素基、又は、−CH
2OR
4等が挙げられる。R
4は、水素原子、又は、炭素数1〜12の炭化水素基であってもよい。
【0047】
無電解めっき耐性の観点から、トリアジン骨格を有する化合物のなかでも、ベンゾグアナミン系化合物が好ましい。ベンゾグアナミン系化合物とは、前記式においてR
1がフェニル基を表し、R
2及びR
3が、独立して、置換又は無置換のアミノ基を表す化合物である。当該アミノ基は、Hの一部又は全部が、−CH
2OR
4で置換されていてもよい。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物において、前記トリアジン骨格を有する化合物の配合割合は、無電解めっき耐性向上の観点から、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、3〜20重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。
【0049】
(任意成分)
本発明の感光性樹脂組成物には、以上説明した必須成分に加えて、例えば、溶剤、加熱により酸を生成する化合物、溶解促進剤、溶解阻害剤、カップリング剤、界面活性剤、レベリング剤等を配合してもよい。
【0050】
本発明の感光性樹脂組成物は溶剤を含有することにより、基板上への塗布が容易になり、均一な厚さの塗膜を形成しやすくなる。溶剤の具体例としては、例えば、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオナート、3−メチルメトキシプロピオナート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらの溶剤は1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物における溶剤の配合量は特に限定されないが、例えば、感光性樹脂組成物中の溶剤の割合が約10〜90質量%、好ましくは20〜70質量%の範囲になるよう調整することが好ましい。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、基板上に塗布して膜を形成した後、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ水溶液を用いて現像することができる。現像時間は60〜240秒であり、現像の方法としては、例えば、液盛り法、シャワー法、ディッピング法を用いる事が出来る。
【0053】
現像後に、加熱により硬化させることで、絶縁特性を有する硬化膜であるレジストパターンを形成することができる。
【0054】
また、現像後に、膜を硬化させずに、当該膜をプロセス材として使用することも可能である。
【0055】
レジストパターンを形成するにあたっては、まず、感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する。この工程では、まず、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO
2、SiO
2等)、窒化ケイ素等の支持基板上に、感光性樹脂組成物を、スピンナー等を用いて回転塗布し、塗膜を形成する。この塗膜が形成された支持基板をホットプレート、オーブン等を用いて乾燥する。これにより、支持基板上に感光性樹脂膜が形成される。
【0056】
次に、支持基板上に形成された感光性樹脂膜に対して、所定のパターンを有するパターニングマスクを介して紫外線、可視光線、放射線等の活性光線を照射する。
【0057】
次いで、露光工程後の感光性樹脂膜を現像液により現像することで、感光性樹脂膜の露光部を現像液で除去し、感光性樹脂膜をパターン化する。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ水溶液が好適に用いられる。現像時間は60〜240秒であり、現像の方法としては、例えば、液盛り法、シャワー法、ディッピング法を用いる事が出来る。
【0058】
次いで、パターン化された感光性樹脂膜を加熱処理することにより、感光性樹脂膜を硬化させて、硬化樹脂膜からなるレジストパターンを形成することができる。当該加熱処理工程における加熱温度は適宜設定することができるが、120〜230℃、好ましくは150〜200℃程度である。
【0059】
硬化樹脂膜からなるレジストパターンに対しては、好適に、無電界めっきを行うことができる。めっき金属としては特に限定されないが、例えば、金、ニッケル、パラジウム、銅等が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下、「部」は「質量部」を示す。
【0061】
(製造例1)PTMGジグリシジルエーテルA−1及びA−2の製造
繰り返し数の異なるポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)ジグリシジルエーテルA−1及びA−2を、特許第4735297号参考の記載を参照して以下の方法で製造した。
【0062】
攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた1L容ガラス製フラスコに、予め45℃に加熱したポリテトラメチレンエーテルグリコール、及び三弗化ホウ素エチルエーテルを仕込み、80℃まで加熱した。ポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、目的の繰り返し数を持つものを使用した。
【0063】
85℃以上にならないように1時間かけてエピクロルヒドリン(ジオールの水酸基1当量あたり1.1当量)を滴下した。80〜85℃に保ちながら1時間熟成を行った後、45℃まで冷却した。
【0064】
48.3質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、70℃に加熱して4時間激しく攪拌した。60℃まで冷却して、メチルイソブチルケトンを加えて溶解し、水を加えて水洗し水相を分離することにより生成した塩を除去した。
【0065】
この水洗操作を3回繰り返した後、有機層を分離し、常圧で150℃まで昇温してメチルイソブチルケトンを溜去し、さらに減圧下に150℃で30分脱溶媒を行うことによって無色透明のポリテトラメチレンエーテルグリコールのジグリシジルエーテルを得た。
【0066】
A−1の繰り返し数は9、A−2の繰り返し数は30である。
【0067】
(実施例1)
ノボラック樹脂(メタクレゾール60phr/パラクレゾール40phr/ベンズアルデヒド100phrを通常の手法により重縮合させて取り出したフェノール樹脂)100部、感光剤としてジアゾナフトキノン化合物(4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化物)18部、PTMGジグリシジルエーテルA−1 10部を配合し、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 150部に溶解させて感光性樹脂組成物を製造した。
【0068】
(実施例2)
PTMGジグリシジルエーテルA−1 10部をPTMGジグリシジルエーテルA−2 10部に変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を製造した。
【0069】
(
参考例3)
PTMGジグリシジルエーテルA−1 10部をポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名EX−821、繰り返し数4、ナガセケムテックス社製)10部に変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を製造した。
【0070】
(実施例4)
ジアゾナフトキノン化合物の配合量を15部に変更するとともに、PTMGジグリシジルエーテルA−1 10部をポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(商品名EX−931、繰り返し数11、ナガセケムテックス社製)10部に変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を製造した。
【0071】
(実施例5)
トリアジン骨格含有化合物としてベンゾグアナミン化合物5部(商品名BL−60、三和ケミカル社製)をさらに配合した以外は実施例2と同様にして感光性樹脂組成物を製造した。
【0072】
(
参考例6)
ジアゾナフトキノン化合物の配合量を15部に変更するとともに、PTMGジグリシジルエーテルA−1 10部をポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名EX−850、繰り返し数2、ナガセケムテックス社製)10部に変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を製造した。
【0073】
(比較例1)
PTMGジグリシジルエーテルA−1 10部を、以下の化学式で表される1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル(繰り返し数1)10部に変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を製造した。
【0074】
【化3】
【0075】
(比較例2)
ジアゾナフトキノン化合物の配合量を15部に変更するとともに、PTMGジグリシジルエーテルA−1 10部を、以下の化学式で表されるフルオレン構造含有ジグリシジルエーテル(商品名オグソールEG、繰り返し数1、大阪ガスケミカル社製)10部に変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を製造した。
【0076】
【化4】
【0077】
(比較例3)
ジアゾナフトキノン化合物の配合量を15部に変更するとともに、PTMGジグリシジルエーテルA−1 10部をポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名EX−810、繰り返し数1、ナガセケムテックス社製)10部に変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を製造した。
【0078】
(比較例4)
ジアゾナフトキノン化合物の配合量を15部に変更するとともに、PTMGジグリシジルエーテルA−1 10部を、以下の化学式で表されるソルビトールポリグリシジルエーテル化合物(商品名EX−622、ナガセケムテックス社製)10部に変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を製造した。
【0079】
【化5】
【0080】
(比較例5)
PTMGジグリシジルエーテルA−1 10部をPTMGジグリシジルエーテル(商品名EX−992L、繰り返し数55、ナガセケムテックス社製)10部に変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を製造した。
【0081】
(評価方法)
各実施例又は各比較例で得られた感光性樹脂組成物について、以下に示す方法により各評価を行った。
【0082】
(現像性)
感光性樹脂組成物をシリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚が7μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に超高圧水銀灯を用いて、100〜1000mJ/cm
2のi線を、孤立したφ15μmのホールパターン(パターンが密集していない)に照射し、露光を行った。
【0083】
露光後、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて120秒、液盛り法で現像した後に、水でリンスし、パターン膜を得た。得られたパターン膜のSEM観察を行い、以下の基準で評価を行った。
【0084】
<感度>
○:膜厚7μmにおいて400mJ/cm
2以下のもの。
×:膜厚7μmにおいて400mJ/cm
2超のもの。
【0085】
<現像残渣>
400mJ/cm
2で露光した際に
◎:感光剤を18部用いた際にシリコンウエハ上に現像残渣が見られない。
○:感光剤を15部用いた際にシリコンウエハ上に現像残渣が見られない。
×:感光剤を15部用いた際にシリコンウエハ上に現像残渣が見られる。
【0086】
<側壁割れ>
○:ホールパターンのレジスト側壁に亀裂が見られない。
×:前記側壁に亀裂が観察される。
【0087】
(柔軟性)
感光性樹脂組成物をシリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚が7μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に超高圧水銀灯を用いて、400mJ/cm
2のi線を照射し、露光を行った。露光後、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて120秒、液盛り法で現像した後に、水でリンスし、膜付ウエハを得た。
【0088】
作製した膜付ウエハを、オーブンを用いて窒素雰囲気下、150℃で30分加熱した後、200℃で1時間加熱して硬化膜を得た。得られた硬化膜を次のようにクロスカット法で評価した。試験面にカッターナイフを用いて、素地に達する切り傷を付ける。初めに付けた切り傷と90度の方向に2本目の切り傷を付け、十字の切り傷とする。十字部分にセロテープを強く圧着させ、テープの端を45度の角度で一気に剥がし、切り傷を付けたカッターの刃の端からの硬化膜の剥がれを観察した。
○:カッターの刃の端からの剥がれの平均が30μm以下のもの。
×:カッターの刃の端からの剥がれの平均が30μmより大きいもの。
【0089】
(無電解めっき耐性)
銅を1000オングストロームの厚みでスパッタしたシリコンウエハを、酸性クリーナー(上村工業(株)製スルカップMSC)を用いて洗浄した。
【0090】
洗浄を行った銅基板上に感光性樹脂組成物をスピンコートして、乾燥膜厚が7μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に超高圧水銀灯を用いて、400mJ/cm
2のi線をマスクパターン(孤立したφ15μmのホールパターン(パターンが密集していない))に照射し、露光を行った。
【0091】
露光後、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて120秒、液盛り法で現像した後に、水でリンスし、パターン膜を得た。
【0092】
得られたパターン膜付ウエハを、オーブンを用いて窒素雰囲気下、150℃で30分加熱した後、200℃で1時間加熱してパターン硬化膜を得た。
【0093】
得られたパターン硬化膜に対し次の手順で無電解めっきを行った。
【0094】
酸洗処理:5質量%硫酸溶液に室温で1分間浸漬処理した。
【0095】
活性化:無電解めっき用Pd触媒溶液に室温で90秒間浸漬処理した後、室温で2分間、流水で洗浄した。
【0096】
無電解ニッケルめっき:Ni−Pめっき液に85℃で15分間浸漬処理し、室温で2分間、流水で洗浄した。
【0097】
無電解金めっき:無電解Auめっき液に85℃で15分間浸漬処理し、室温で2分間、流水で洗浄した。
【0098】
めっき後のウエハ表面を光学顕微鏡にて観察し、パターンの剥がれの有無及び大きさを確認した。
◎:剥がれが生じていない。
○:剥がれが50μm以下。
△:剥がれが100μm以下。
×:剥がれが100μm超。
【0099】
以上の評価により得られた結果を次の表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1より、各実施例は現像性及び柔軟性が共に優れていることが分かる。また、
参考例6よりポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルの繰り返し数が2であると良好な無電解めっき耐性を達成できないが、他の
実施例又は参考例より、繰り返し数を上げることで無電解めっき耐性を改善できることが分かる。実施例2と実施例5を比較すると、トリアジン骨格含有化合物を使用することで無電解めっき耐性が向上することが分かる。
【0102】
比較例1、3、5では、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルの繰り返し数が少ない又は多いために、優れた柔軟性を達成できていない。比較例2、4でも、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルとは異なるエポキシ化合物を使用しているために、優れた柔軟性を達成できていない。また、比較例2において、現像残渣が発生している。