【実施例】
【0014】
本発明の実施例に係るゼンマイ式走行玩具1は、
図1及び
図2に示すように、主に、駆動ユニット50と一対の前輪11、後輪13とが設けられるシャーシ部10と、前方の障害物Wを検知する検知手段20と、検知手段20からの電気信号を受けて駆動ユニット50の係止歯車列に係止することで走行歯車列の回転を直接又は間接的に制止する係止手段30とを備えて構成される。
【0015】
ゼンマイ式走行玩具1は、所定の外形に形成されるシャーシ部10の前方に一対の前輪11が車軸12を介して連結され、後方に一対の後輪13が駆動軸14を介して連結されてなる。また、シャーシ部10には、検知手段20、係止手段30等を作動させるための電力となる電池15を収納する収容部16が設けられる。更に、シャーシ部10の上方には、シャーシ部10に対応する所定の外形に形成されるボディ部17が搭載され、ゼンマイ式走行玩具1の外形が形成される。
【0016】
また、シャーシ部10には、検知手段20及び係止手段30を制御する制御部を備える基盤40が設置され、基盤40には電池15から電力が供給される。また、シャーシ部10の前方には、ボディ部17のヘッドライト部に対応する箇所に検知手段20が設けられる。
【0017】
当該検知手段20は、電池15の電力により作動し前方に向かって投光する赤外線センサー21と、投光した光を障害物Wに当て反射した光を検知する受信部22とを有して構成される。当該赤外線センサー21は、ボディ部17における左右いずれかのヘッドライトに対応するよう設けられ、他方のヘッドライトに対応するよう受信部22が設けられる。なお、受信部22への電力供給においても、電池15の電力が用いられる。すなわち、赤外線センサー21及び受信部22の夫々の配線は基盤40に連結されてなり、電池15から電力が供給される。
【0018】
一方、シャーシ部10の後方には、ゼンマイの回転を駆動軸14へと伝達するための駆動ユニット50が設けられるとともに、駆動ユニット50を構成する係止歯車列に係止し、当該歯車列の回転を直接又は間接的に制止する係止手段30が設けられる。より詳細には、係止手段30は、駆動ユニット50の後方に配置してなり、駆動ユニット50における収容ケース51の後方に形成される切欠部52を介して、内部に配置される後述の係止歯車に直接又は間接的に係止してなる。
【0019】
本実施例においては、当該係止手段30は、基盤40に連結され、電池15の電力により作動して回動軸32が回動するソレノイド31と、当該回動軸32に設置される作動腕33とを有して構成される。このとき、ソレノイド31は、受信部22からの電気信号を受けて作動するよう、基盤40によって制御されている。なお、係止手段30と駆動ユニット50の係止歯車列との関係については、後述する。
【0020】
駆動ユニット50は、
図3から
図6に示すように、ゼンマイ(図示しない)を駆動源とし、ゼンマイと駆動軸14とを連結する歯車列を選択的に連結することによって、駆動軸14からの巻上げ時にゼンマイへ伝達する巻上げ歯車列と、ゼンマイの開放時にゼンマイの回転を駆動軸14へと出力する走行歯車列とで歯車比を変動させたものである。当該走行歯車列には、係止手段30に関連する係止歯車列が更に連結される。これらのゼンマイ及び歯車列は、収容ケース51内に収容される。
【0021】
当該収容ケース51は、
図4に示すように、係合ピン54を有する雄型フレーム53と、係合ピン54を圧入する孔を有する雌型フレーム55と、これらの間に挟持される中間フレーム56とによって分解可能となるよう構成される。
【0022】
また、
図5に示すように、雌型フレーム55と中間フレーム56との間には、駆動軸14に駆動歯車57が回転自在となるよう設けられるとともに、駆動歯車57に歯合する伝達大歯車58が設けられる。そして、伝達大歯車58には第1遊び歯車59が歯合しており、当該第1遊び歯車59にはゼンマイを巻き上げるための回転体としてのゼンマイ小歯車60が歯合するよう設けられる。すなわち、駆動軸14により駆動歯車57が回転することで、ゼンマイ小歯車60が回転し、ゼンマイが巻き上げられるよう構成される。これによって、巻上げ歯車列が構成される。
【0023】
また、第1遊び歯車59は、ゼンマイ小歯車60に対して歯合、又は離脱自在に設けられている。すなわち、第1遊び歯車59の軸部61は、中間フレーム56の内側第1長孔62と、雌型フレーム55の外側第1長孔63によって支持されており、伝達大歯車58がゼンマイの巻上げ方向に回転する際に、ゼンマイ小歯車60に歯合して当該歯車に回転を伝達できるように構成される。一方、ゼンマイ小歯車60が逆方向に回転すると、第1遊び歯車59の軸部61が内側第1長孔62、外側第1長孔63内を移動して、ゼンマイ小歯車60との歯合が解除されて離脱するように構成される。
【0024】
更に、同図に示すように、中間フレーム56の円形凹部(図示しない)には係止歯車列を構成する第2遊び小歯車64が回転自在となるよう設けられており、当該第2遊び小歯車64は伝達大歯車58と歯合してなる。また、第2遊び小歯車64には、同軸回転する第2遊び大歯車65が連結されており、当該第2遊び大歯車65には固定小歯車66が歯合するよう構成される。
【0025】
また、第2遊び大歯車65は、固定小歯車66に対して歯合、又は離脱自在に設けられている。すなわち、第2遊び大歯車65の軸部67は、中間フレーム56における円形凹部の内側第2長孔68と、雌型フレーム55の外側第2長孔69によって支持されており、伝達大歯車58がゼンマイの巻上げ方向に回転する際に、第2遊び大歯車65の軸部67が内側第2長孔68、外側第2長孔69内を移動して、固定小歯車66との歯合が解除されて離脱するように構成される。一方、伝達大歯車58が逆方向に回転すると、固定小歯車66に歯合して当該歯車に回転を伝達できるように構成される。
【0026】
また、
図6に示すように、雄型フレーム53の円形凹部(図示しない)にはゼンマイが設けられるとともに、当該ゼンマイを巻き上げるための回転体としてのゼンマイ小歯車60と同軸回転するゼンマイ大歯車70が設けられる。また、ゼンマイ大歯車70には第3遊び小歯車71が歯合してなり、第3遊び小歯車71には同軸回転する第3遊び大歯車72が設けられる。
【0027】
また、伝達大歯車58には、
図5に示すように、雄型フレーム53と中間フレーム56との間に伝達小歯車73が同軸回転するよう設けられており、当該伝達小歯車73と第3遊び大歯車72が歯合するよう構成される。すなわち、ゼンマイの回転によりゼンマイ大歯車70が回転することで、第3遊び大歯車72が回転するとともに伝達大歯車58が回転し、駆動歯車57を介して駆動軸14へと駆動力が出力されるよう構成される。これによって、走行歯車列が構成される。
【0028】
また、
図6に示すように、第3遊び小歯車71は、ゼンマイ大歯車70に対して歯合、又は離脱自在に設けられている。すなわち、第3遊び小歯車71の軸部74は、雄型フレーム53の楕円凹部75と、中間フレーム56の内側第3長孔76によって支持されており、ゼンマイ大歯車70がゼンマイの巻上げ方向に回転する際に、第3遊び小歯車71の軸部74が楕円凹部75、内側第3長孔76内を移動して、第3遊び大歯車72と伝達小歯車73との歯合が解除されて離脱するように構成される。一方、ゼンマイ大歯車70が逆方向に回転すると、第3遊び大歯車72と伝達小歯車73が歯合して当該歯車に回転を伝達できるように構成される。
【0029】
更に、同図に示すように、固定小歯車66には、同軸回転する固定大歯車77が設けられる。また、当該固定大歯車77には、小歯車78が歯合するよう設けられており、当該小歯車78には同軸回転する係止歯車79が設けられる。
【0030】
そして、係止歯車79の上方には、係止手段30における作動腕33が回動し当接することで揺動し、係止歯車79に係止される揺動腕80が設けられる。より詳細には、揺動腕80には係止片81が設けられており、同図の反時計方向に回転する係止歯車79に対し、揺動腕80の軸部82を中心として時計方向に回動することで、係止歯車79の歯車間に係止片81が上方から嵌まり込んで係止するよう構成される。これによって、同軸回転する第2遊び小歯車64及び第2遊び大歯車65から、同軸回転する固定小歯車66及び固定大歯車77を介し、係止歯車79までの係止歯車列が構成される。本実施例において、係止歯車79には、例えばラチェット歯車が用いられる。
【0031】
なお、雄型フレーム53、雌型フレーム55及び中間フレーム56の内側面には、各種歯車の軸部を支持するための凹部等が設けられる。
【0032】
また、収容ケース51の切欠部52は、作動腕33が収容ケース51内に入り込んで係止歯車79に直接又は間接的に係止し得る範囲で開口してなる。本実施例においては、切欠部52は、雄型フレーム53と中間フレーム56との間が大きく開口するよう形成される。
【0033】
次に、ゼンマイ式走行玩具1の走行及び停止について説明する。駆動ユニット50におけるゼンマイの巻上げ時においては、
図5に示すように、後輪13を路面等に押し付けながら後進回転させ、駆動歯車57を時計回りに回転させる。すると、伝達大歯車58が反時計回りに回転し、これに連動して第1遊び歯車59がゼンマイ小歯車60側に向けて内側第1長孔62、外側第1長孔63内を下方側へ移動し、ゼンマイ小歯車60に歯合する。これにより、ゼンマイ小歯車60が反時計回りに回転し、ゼンマイが巻き上げられる。
【0034】
このとき、
図6に示すように、走行歯車列においては、ゼンマイ大歯車70の回転によって、第3遊び小歯車71が時計回りに回転し、これに連動して第3遊び大歯車72が伝達小歯車73から離れるように楕円凹部75、内側第3長孔76内を上方へと移動し、ゼンマイ大歯車70に歯合しながら回転する。これにより、第3遊び大歯車72から伝達小歯車73への回転出力は遮断されている。
【0035】
更に、
図5に示すように、係止歯車列においては、伝達大歯車58の回転によって、第2遊び小歯車64が時計回りに回転し、これに連動して第2遊び大歯車65が固定小歯車66から離れるように内側第2長孔68、外側第2長孔69を上方へと移動し、伝達大歯車58に歯合しながら回転する。これにより、第2遊び大歯車65から固定小歯車66への回転出力は遮断されている。
【0036】
次に、巻き上げられたゼンマイが開放されると、
図8に示すように、ゼンマイ大歯車70による時計回りの回転によって、第3遊び小歯車71が反時計回りに回転し、これに連動して第3遊び大歯車72が伝達小歯車73に向けて楕円凹部75、内側第3長孔76内を下方へと移動し、第3遊び大歯車72が伝達小歯車73に歯合しながら回転する。これにより、
図7に示すように、伝達大歯車58が駆動歯車57に歯合することで駆動軸14が反時計回りに回転し、ゼンマイ式走行玩具1が走行する。
【0037】
このとき、
図7に示すように、走行歯車列においては、ゼンマイ大歯車70の回転によって、ゼンマイ小歯車60が時計回りに回転し、これに連動して第1遊び歯車59がゼンマイ小歯車60から離れるように内側第1長孔62、外側第1長孔63内を上方へと移動し、ゼンマイ小歯車60との歯合が離脱して、ゼンマイ小歯車60から伝達大歯車58への回転出力は遮断されている。
【0038】
更に、同図に示すように、係止歯車列においては、伝達大歯車58の回転によって、第2遊び小歯車64が反時計回りに回転し、これに連動して第2遊び大歯車65が固定小歯車66に向けて内側第2長孔68、外側第2長孔69内を下方へと移動し、第2遊び大歯車65が固定小歯車66に歯合しながら回転する。これにより、
図8に示すように、固定大歯車77及び小歯車78を介して係止歯車79が反時計回りに回転する。このとき、係止歯車79が反時計回りに回転することにより、揺動腕80の係止片81は同回転方向の上方側へと押し上げられるため、揺動腕80の自重のみによって係止歯車79の回転が停止されることはない。
【0039】
そして、走行中のゼンマイ式走行玩具1においては、シャーシ部10に設けられる所定のスイッチ(図示しない)を予め切り替えておくことで、電池15の電力により検知手段20及び係止手段30を作動させることができる。
【0040】
詳細には、走行中のゼンマイ式走行玩具1が前方の障害物Wに一定の距離まで近づいて、赤外線センサー21が前方に向けて投光した光が障害物Wに当たって、反射した光を受信部22が検知したとき、この電気信号が係止手段30へと送出されて、ソレノイド31を作動させる。
【0041】
これにより、ソレノイド31の回動軸32が回動して、
図9に示すように、作動腕33を反時計回りに回動させるとともに、切欠部52の内部にて揺動腕80を上方から下方に向けて押圧する。そして、軸部82を中心として揺動腕80が時計回りに回動することで、係止歯車79の歯車間に係止片81が上方から嵌まり込んで係止する。すなわち、揺動腕80を用いて、係止歯車79に間接的に係止させる。これにより、係止歯車列における歯車の回転が制止されるとともに、走行歯車列における歯車の回転が制止されて、ゼンマイ式走行玩具1が停止する。
【0042】
より詳細には、揺動腕80の係止片81が係止歯車79の歯車間に係止することで、係止歯車79の回転が制止され、これに伴い、係止歯車列を構成する第2遊び大歯車65の回転も制止される。そして、第2遊び大歯車65と同軸回転する第2遊び小歯車64の回転も同様に制止されることから、これに歯合する伝達大歯車58の回転が制止されることによって、ゼンマイからの駆動力が駆動歯車57に伝達されなくなり、ゼンマイ式走行玩具1が停止する。
【0043】
そして、ユーザが障害物Wを取り除く等することにより、検知手段20が障害物Wを検知しない状態となると、受信部22から基盤40を介してソレノイド31へと送出される電気信号が遮断される。これにより、ソレノイド31の回動軸32が回動することにより、作動腕33は時計回りに回動して初期状態となる。結果として、係止歯車79の係止状態が解除されることから、ゼンマイ式走行玩具1は、ゼンマイの駆動力が残存する範囲内にて再度走行する。
【0044】
以上、説明した本発明に係るゼンマイ式走行玩具1によれば、走行歯車列に連動する係止歯車列を用いるとともに、係止手段30により係止歯車79の歯車間に係止片81を嵌め込み、当該歯車の回転を強制的に制止させることで、これに連動する走行歯車列をも制止させることができる。すなわち、電力によって作動する作動腕33を介して係止片81を係止歯車79に係止させることで、走行歯車列を確実に制止させることができるので、障害物Wのある箇所において、あらゆる路面状況であっても、当該障害物Wの手前で走行を自動的に停止させることができる。
【0045】
また、係止歯車79及び揺動腕80を収容ケース51の内部に設け、切欠部52を介して、収容ケース51の外側から作動腕33を作動させるよう構成することで、駆動ユニット50のコンパクト化を図ることができる。
【0046】
更に、係止歯車列は、ゼンマイの巻上げ時に走行歯車列から離脱し、且つ、ゼンマイの開放時に走行歯車列に歯合するよう構成されるので、ゼンマイの巻上げ時における負荷が軽減され、操作性を向上させることができるとともに、歯車列の耐久性を向上させることができる。
【0047】
上述した実施例において、係止歯車79は、揺動腕80を介して作動腕33によって間接的に係止されるものであったが、これに限られるものではない。例えば、揺動腕80を設けることなく、作動腕33によって直接的に係止させることもできる。これら直接又は間接的に係止させる際において、作動腕33は適宜の形状とすることは勿論であって、特に制限されるものではない。
【0048】
また、特に直接的に係止させる際においては、作動腕33を回動させることなく、作動腕33を直動させるようにして係止させることもできるし、これに限られない。更に、係止歯車79においては、切欠部52から収容ケース51の外側へと露呈するよう設けることもできる。すなわち、収容ケース51の内部に限られることなく、作動腕33が可動することによって、直接又は間接的に係止歯車79が係止されるよう構成されていればよい趣旨である。
【0049】
更に、上述した実施例において、巻上げ歯車列、走行歯車列及び係止歯車列の配置、寸法、材質等を適宜変更して実施することが可能である。更に、一部構成を省略することができるし、一部抽出した構成とすることができるのは勿論である。