(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249350
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】セキュリティ印刷システム、セキュリティ印刷方法及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20171211BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20171211BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20171211BHJP
B41J 5/30 20060101ALI20171211BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20171211BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20171211BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20171211BHJP
G06F 21/32 20130101ALI20171211BHJP
G06K 19/073 20060101ALI20171211BHJP
H04N 21/4415 20110101ALI20171211BHJP
【FI】
G06F3/12 338
G06F3/12 304
G06F3/12 322
G06F3/12 367
G06F3/12 392
G06F3/12 385
G06F3/12 364
B41J29/00 Z
B41J29/38 Z
B41J5/30 Z
B41J29/00 E
H04N1/00 107Z
H04N1/387
G06T7/00 530
G06F21/32
G06K19/073 054
H04N21/4415
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-108002(P2015-108002)
(22)【出願日】2015年5月27日
(65)【公開番号】特開2016-224573(P2016-224573A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115831
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】眞下 隆行
【審査官】
白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−272858(JP,A)
【文献】
特開2006−99724(JP,A)
【文献】
特開2001−239720(JP,A)
【文献】
特開2003−150354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
B41J 5/30
B41J 29/00
B41J 29/38
G06F 21/32
G06K 19/073
G06T 7/00
H04N 1/00
H04N 1/387
H04N 21/4415
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置と携帯通信装置とを有するセキュリティ印刷システムであって、
前記画像形成装置は、生体情報を入力するための生体情報入力部と、印刷物保管部と、少なくとも1つの排紙トレイと、画像形成部と、制御部とを有し、
前記携帯通信装置には、前記生体情報が登録生体情報として予め登録されており、
前記画像形成装置と前記携帯通信装置は、予め設定されている近距離無線通信で接続するように構成され、
前記制御部は、前記生体情報入力部によって入力された生体情報と、前記近距離無線通信によって取得された登録生体情報との一致に応じて印刷物を生成し、前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態にある場合に前記生成された印刷物を前記少なくとも1つの排紙トレイのいずれかへ排紙することを特徴とするセキュリティ印刷システム。
【請求項2】
請求項1に記載のセキュリティ印刷システムであって、さらに、
前記少なくとも1つの排紙トレイは、予め設定されている特定の排紙トレイを含む複数の排紙トレイを有し、
前記画像形成装置は、前記一致に応じて生成された印刷物を前記特定の排紙トレイに排紙するセキュリティ印刷システム。
【請求項3】
請求項2に記載のセキュリティ印刷システムであって、
前記画像形成装置は、前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態から外れたとの決定に応じて前記印刷物を前記特定の排紙トレイから前記印刷物保管部に移動させるセキュリティ印刷システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のセキュリティ印刷システムであって、
前記画像形成装置は、前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態から外れたとの決定後において、前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態となったとの決定に応じて前記印刷物保管部から前記特定の排紙トレイに前記印刷物を排紙するセキュリティ印刷システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセキュリティ印刷システムであって、
前記画像形成部は、前記携帯通信装置毎に固有の電子透かしを前記印刷物に印刷し、
前記画像形成装置は、前記携帯通信装置との前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態にある場合に、前記携帯通信装置に対応する電子透かしが印刷された印刷物を前記排紙するセキュリティ印刷システム。
【請求項6】
生体情報が登録生体情報として予め登録されている携帯通信装置を使用するセキュリティ印刷システムに使用される画像形成装置であって、
前記画像形成装置は、前記生体情報を入力するための生体情報入力部と、印刷物保管部と、少なくとも1つの排紙トレイと、画像形成部と、制御部とを有し、
前記画像形成装置は、前記携帯通信装置と予め設定されている近距離無線通信で接続するように構成され、
前記制御部は、前記生体情報入力部によって入力された生体情報と、前記近距離無線通信によって取得された登録生体情報との一致に応じて印刷物を生成し、前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態にある場合に前記生成された印刷物を前記少なくとも1つの排紙トレイのいずれかへ排紙することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
画像形成装置と携帯通信装置とを使用するセキュリティ印刷方法であって、
生体情報を入力するための生体情報入力部と、印刷物保管部と、少なくとも1つの排紙トレイと、画像形成部と、制御部とを有する画像形成装置と、携帯通信装置とを準備する工程と、
前記携帯通信装置に前記生体情報を登録生体情報として予め登録する工程と、
前記画像形成装置と前記携帯通信装置とを予め設定されている近距離無線通信で接続する工程と、
前記生体情報入力部によって入力された生体情報と、前記近距離無線通信によって取得された登録生体情報との一致に応じて印刷物を生成する工程と、
前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態にある場合に前記生成された印刷物を前記少なくとも1つの排紙トレイのいずれかへ排紙する工程と、
を備えることを特徴とするセキュリティ印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ印刷システム、セキュリティ印刷方法及びこれらに使用される画像形成装置及び携帯通信装置に関し、特に印刷物の秘匿性を確保するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機密文書の複写や印刷を行う場合において、印刷物の生成後に印刷物を取り忘れ、セキュリティ上の問題が発生するケースがある。このような問題を防ぐ技術としては、パスワードによる認証処理での印刷スタートや離れた場所にある端末からプリント操作を行った際に、印刷物をカバー付きの排紙トレイに出力し印刷物を取り出す時に認証を行う方法も提案されている。一方、特開2008−259138は、機密文書の複写の際にユーザが画像読取装置の近傍から離れないように促す技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−259138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機密文書の複写や印刷の際にユーザが画像形成装置から離れられないようにすることはユーザの利便性を損なうことになる。さらに、特許文献1の技術は、ユーザが画像読取装置の近傍から離れないように促すために、画像読取装置によって検知可能なユーザ操作の強制、あるいは人体検知センサの装備を必要としている。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ユーザに過度の負担を強いることなく、利便性の高いセキュリティ印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセキュリティ印刷システムは、画像形成装置と携帯通信装置とを有する。前記画像形成装置は、生体情報を入力するための生体情報入力部と、印刷物保管部と、少なくとも1つの排紙トレイと、画像形成部と、制御部とを有する。前記携帯通信装置には、前記生体情報が登録生体情報として予め登録されている。前記画像形成装置と前記携帯通信装置は、予め設定されている近距離無線通信で接続するように構成されている。前記制御部は、前記生体情報入力部によって入力された生体情報と、前記近距離無線通信によって取得された登録生体情報との一致に応じて印刷物を生成し、前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態にある場合に前記生成された印刷物を前記少なくとも1つの排紙トレイのいずれかへ排紙することを特徴とすることを特徴とする。
【0007】
上記セキュリティ印刷システムにおいて、さらに、前記少なくとも1つの排紙トレイは、予め設定されている特定の排紙トレイを含む複数の排紙トレイを有する。前記画像形成装置は、前記一致に応じて生成された印刷物を前記特定の排紙トレイに排紙する。
【0008】
上記セキュリティ印刷システムにおいて、前記画像形成装置は、前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態から外れたとの決定に応じて前記印刷物を前記特定の排紙トレイから前記印刷物保管部に移動させる。
【0009】
上記セキュリティ印刷システムにおいて、前記画像形成装置は、前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態から外れたとの決定後において、前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態となったとの決定に応じて前記印刷物保管部から前記特定の排紙トレイに前記印刷物を排紙する。
【0010】
上記セキュリティ印刷システムにおいて、前記画像形成部は、前記携帯通信装置毎に固有の電子透かしを前記印刷物に印刷し、前記画像形成装置は、前記携帯通信装置との前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態にある場合に、前記携帯通信装置に対応する電子透かしが印刷された印刷物を前記排紙する。
【0011】
本発明の画像形成装置は、生体情報が登録生体情報として予め登録されている携帯通信装置を使用するセキュリティ印刷システムに使用される。前記画像形成装置は、前記生体情報を入力するための生体情報入力部と、印刷物保管部と、少なくとも1つの排紙トレイと、画像形成部と、制御部とを有する。前記画像形成装置は、前記携帯通信装置と予め設定されている近距離無線通信で接続するように構成されている。前記制御部は、前記生体情報入力部によって入力された生体情報と、前記近距離無線通信によって取得された登録生体情報との一致に応じて印刷物を生成し、前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態にある場合に前記生成された印刷物を前記少なくとも1つの排紙トレイのいずれかへ排紙することを特徴とする。
【0012】
本発明のセキュリティ印刷方法は、画像形成装置と携帯通信装置とを使用する。本セキュリティ印刷方法は、生体情報を入力するための生体情報入力部と、印刷物保管部と、少なくとも1つの排紙トレイと、画像形成部と、制御部とを有する画像形成装置と、携帯通信装置とを準備する工程と、前記携帯通信装置に前記生体情報を登録生体情報として予め登録する工程と、前記画像形成装置と前記携帯通信装置とを予め設定されている近距離無線通信で接続する工程と、前記生体情報入力部によって入力された生体情報と、前記近距離無線通信によって取得された登録生体情報との一致に応じて印刷物を生成する工程と、前記近距離無線通信が予め定められた所定の状態にある場合に前記生成された印刷物を前記少なくとも1つの排紙トレイのいずれかへ排紙する工程とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセキュリティ印刷処理によれば、ユーザに過度の負担を強いることなく、利便性の高いセキュリティ印刷処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るセキュリティ印刷システムの機能構成を示すブロックダイアグラム。
【
図2】一実施形態に係るセキュリティ印刷処理の手順を示すフローチャート。
【
図3】一実施形態に係るユーザ認証処理の手順を示すフローチャート。
【
図4】一実施形態に係る印刷物取得処理の手順を示すフローチャート。
【
図5】本発明の変形例に係るセキュリティ印刷システムの機能構成を示すブロックダイアグラム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るセキュリティ印刷システム100の機能構成を示すブロックダイアグラムである。セキュリティ印刷システム100は、画像形成装置1と携帯通信装置2とを備える。画像形成装置1は、制御部10と、画像読取部20と、印刷媒体に画像を形成する画像形成部30と、記憶部40と、印刷物搬送部50と、無線通信部60と、操作表示部70と、自動紙送り装置(ADF)80とを備えている。操作表示部70は、指紋情報を取得できる指紋情報取得部としても機能するスタートボタン71を備えている。無線通信部60は、携帯通信装置2と近距離無線通信TNによって接続可能である。携帯通信装置2は、本実施形態では、単にPDAとも呼ばれて広い意味を有し、たとえばタブレットや携帯電話を含む。
【0017】
制御部10は、RAMやROM等の主記憶手段、及びMPU(Micro Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)等の制御手段を備えている。また、制御部10は、各種I/O、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、バス、その他ハードウェア等のインターフェイスに関連するコントローラ機能を備え、画像形成装置1全体を制御する。
【0018】
記憶部40は、非一時的な記録媒体であるハードディスクドライブやフラッシュメモリー等からなる記憶装置で、制御部10が実行する処理の制御プログラムやデータを記憶する。
【0019】
図2は、一実施形態に係るセキュリティ印刷処理の手順を示すフローチャートである。ステップS10では、ユーザは、画像形成装置1のスタートボタン71を操作する。ステップS20では、画像形成装置1は、スタートボタン71の操作に応じてユーザ認証処理を実行する。
【0020】
図3は、一実施形態に係るユーザ認証処理の手順を示すフローチャートである。ステップS21では、画像形成装置1は、指紋情報取得処理を実行する。指紋情報取得処理は、指紋情報取得部としても機能するスタートボタン71によってユーザの指紋情報を取得する処理である。ステップS22では、画像形成装置1は、PDA自動接続処理を実行する。PDA自動接続処理は、画像形成装置1が無線通信部60を使用して、携帯通信装置2に対して近距離無線通信TNで自動的に接続する処理である。
【0021】
本実施例では、近距離無線通信TNは、BLUETOOTH(登録商標)のCLASS1を使用している。BLUETOOTHのCLASS1は、出力1mWの通信であり、セキュリティ印刷システム100と携帯通信装置2との距離が1m以内程度での通信が可能な近距離無線通信である。
【0022】
ステップS23では、画像形成装置1は、登録指紋情報取得処理を実行する。登録指紋情報取得処理とは、携帯通信装置2に予め登録してある指紋情報を近距離無線通信TNを介して画像形成装置1が取得する処理である。
【0023】
登録指紋情報は、セキュリティ印刷処理の開始前に予め携帯通信装置2に登録しておくことになる。登録指紋情報は、たとえば指紋情報取得部としても機能するスタートボタン71を使用することによって登録することができる。登録指紋情報の取得手順は、制御部10において予め設定されている。
【0024】
ステップS24では、制御部10は、指紋情報比較処理を実行する。指紋情報比較処理は、スタートボタン71によって取得された指紋情報と、1つあるいは複数の携帯通信装置2に予め登録してある登録指紋情報とを比較する処理である。ステップS25では、制御部10は、両者に一致するものが少なくとも1つある場合には処理をステップS27に進め、両者に一致するものが無い場合には処理をステップS26に進める。ステップS26では、セキュリティ印刷システム100は、指紋登録要請画面を操作表示部70に表示し、ユーザに上述の指紋登録処理を促す。
【0025】
ステップS27では、制御部10は、複数の登録指紋情報と一致するか否かを決定する。制御部10は、1つの登録指紋情報と一致する場合には処理をセキュリティ印刷処理(
図2参照)に戻し、複数の登録指紋情報と一致する場合には処理をステップS28に進める。ステップS28では、セキュリティ印刷システム100は、PDA選択処理を実行する。PDA選択処理は、近距離無線通信TNによって接続されている複数のPDA2のいずれかの選択を操作表示部70においてユーザに許容する処理である。
【0026】
本実施形態では、同一の指紋情報が複数のPDA2に登録されていることを想定している。このような想定は、たとえば家族で画像形成装置1が備えられているビジネスセンターやコンビニエンスストアを訪れた場合を想定している。この際には、子供のPDA2に親が指紋情報を登録しておき、子供によるコピーや印刷の承認を親がスタートスイッチ71で行うことができるので高い利便性を実現することができる。さらに、親のPDA2を子供に貸し与えることによっても、スタートスイッチ71を使用した親による承認を前提として同様の利便性を実現することができる。
【0027】
ステップS30(
図2参照)では、制御部10は、選択されたPDA2(あるいは近距離無線通信TNによって接続されている唯一のPDA2)と、自動紙送り装置80にセットされている原稿の複写物である印刷物とを紐付ける。ステップS40では、画像形成装置1は、印刷を開始する。通例では、自動紙送り装置80は、高速に作動して画像読み取りを比較的早期に完了させる一方、印刷処理は、引き続き継続する。印刷処理では、たとえば機密文書の画像が複写された印刷物が印刷物搬送部50に供給される。
【0028】
印刷物搬送部50は、第1排紙トレイ51と、第2排紙トレイ52と、印刷物保管部53とを備えている。印刷物保管部53は、ユーザが目視することも印刷物を取得することもできない画像形成装置1の内部に配置されている。
【0029】
第1排紙トレイ51は、印刷物とPDA2の紐付処理(ステップS30参照)がなされていない印刷物が排紙されるトレイである。第2排紙トレイ52は、印刷物とPDA2の紐付処理がなされている印刷物が排紙されるトレイである。印刷物搬送部50は、第2排紙トレイ52に排紙されている印刷物の印刷物保管部53への搬送及び印刷物保管部53から第2排紙トレイ52への排紙をも行うことができる。
【0030】
ステップS50では、制御部10は、選択されたPDA2等が近距離無線通信範囲内であるか否か、現実には選択されたPDA2等が近距離無線通信TNによって接続されている状態が継続しているか否かを決定する。この際、ユーザは、一般的には印刷処理が完了し、近距離無線通信TNの接続中に第2排紙トレイ52に排紙された印刷物を取得した後に画像形成装置1から離れる。これにより、PDA2等が近距離無線通信範囲外となって近距離無線通信TNが切断され、処理がステップS60に進められる。
【0031】
ステップS60では、制御部10は、第2排紙トレイ52に印刷物が残存しているか否かを決定する。この決定は、第2排紙トレイ52に備えられているセンサ(図示せず)を使用して行われる。制御部10は、第2排紙トレイ52に印刷物が残存していない場合には処理を完了する。この場合には、上述のようにユーザが印刷物を取得済みとみなせるからである。一方、制御部10は、第2排紙トレイ52に印刷物が残存している場合には処理をステップS70に進める。このケースは、具体的には、たとえば自動紙送り装置80にセットされていた全ての原稿の読み取りが終了し、ユーザが原稿を回収した後に印刷物を放置して画像形成装置1から離れた場合が相当する。
【0032】
ただし、制御部10は、一定時間(たとえば数秒)の経過(継続して近距離無線通信TNが切断状態)を待った後に処理をステップS70に進める。一定時間の経過を待つのは、ユーザがPDA2とともに近距離無線通信範囲の境界付近に移動した際におけるチャタリングを防止するためである。
【0033】
ステップS70では、制御部10は、印刷物搬送部50を制御して第2排紙トレイ52から印刷物保管部53に印刷物を搬送する。これにより、個人情報を含む文書その他の機密文書は、不特定の第三者に見られることも誤って持ち去られることも無くなる。このように、本実施形態によれば、印刷物が印刷後に放置された場合でもセキュリティを確保しつつ、特別な操作を必要とすることなく何時でも印刷物が取得できる状態を実現することができる。一方、PDA2の認証を行わない通常の印刷は、この状態においても第1排紙トレイ51を使用して行うことができる。
【0034】
さらに、ステップS70では、画像形成装置1は、無線通信部60を使用して、携帯通信装置2に対して印刷完了を通知し、処理がステップS80に進められることとなる。携帯通信装置2は、たとえばバイブレータや着信音、アラートメールといった方法によってユーザに注意を喚起し、図示しない画面に印刷完了を表示する。
【0035】
図4は、一実施形態に係る印刷物取得処理の手順を示すフローチャートである。ステップS81では、ユーザは、印刷完了の表示に応じて画像形成装置1に近づく。この際、画像形成装置1は、印刷物保管部53に保管されている印刷物と紐付けられているPDA2との再接続の待機中であり、他のPDA2でのセキュリティ印刷は制限されている。ステップS82では、画像形成装置1は、このPDA2が近距離無線通信範囲内に入ったと決定すると処理をステップS83に進める。
【0036】
ステップS83では、画像形成装置1は、近距離無線通信範囲内に入ったPDA2との無線通信の接続処理を行う。接続処理が完了すると、処理がステップS84に進められる。ステップS84では、制御部10は、接続されたPDA2が残存印刷物に紐付けられているか否かを決定する。この決定は、たとえばPDA2の無線IDに基づいて決定する。制御部10は、接続されたPDA2が残存印刷物に紐付けられていない場合には、PDA2に対してセキュリティ印刷処理が利用不可であることを表示し、接続されたPDA2が残存印刷物に紐付けられている場合には、処理をステップS85に進める。
【0037】
ただし、制御部10は、一定時間(たとえば数秒)の経過(継続して近距離無線通信TNが切断状態)を待った後に処理をステップS85に進める。一定時間の経過を待つのは、ユーザがPDA2とともに近距離無線通信範囲の境界付近に移動した際におけるチャタリングを防止するためである。ユーザは、たとえば画像形成装置1の近くを通過するだけの場合もあるからである。
【0038】
ステップS85では、セキュリティ印刷システム100は、近距離無線通信TNの接続中に印刷物搬送部50を制御して印刷物保管部53から第2排紙トレイ52に印刷物を搬送する。これにより、印刷部が第2排紙トレイ52から取得可能な状態となるので、印刷物の所有者であるユーザは、印刷物を取得することができる(ステップS86)。
【0039】
このように、本実施形態は、ユーザに過度の負担を強いることなく、利便性の高いセキュリティ印刷処理を実現することができる。
【0040】
本発明は、上記各実施形態だけでなく、以下のような変形例でも実施することができる。
【0041】
変形例1:上記実施形態では、1つの印刷物保管部53に印刷物を保管していたが、
図5に示されるように複数の印刷物保管部54,55を有する印刷物搬送部50aを使用するようにしてもよい。こうすれば、PDA2に紐付けられた印刷物が複数の印刷物保管部54,55のいずれかに保管されている状態であっても新たにセキュリティ印刷を受け付けることができるからである。
【0042】
この場合、印刷物保管部の数が2個であるが、印刷物保管部間の印刷物の搬送を可能とすれば、2個のPDAに限られず、3個以上のPDAに紐付けられている印刷物を保管することも可能である。
【0043】
具体的には、あるPDAに紐付けられている印刷物の1ページ目が印刷物保管部54の上から3枚目に保管され、そのPDAに紐付けられている印刷物の2ページ目が印刷物保管部55の5枚目に保管されているといった場合を仮定する。この場合、印刷物保管部54から2枚の印刷物を印刷物保管部55に搬送すれば、そのPDAに紐付けられている印刷物の1ページ目を第2排紙トレイ52に排紙することができる。さらに、印刷物保管部55から6枚(4枚+2枚)の印刷物を印刷物保管部54に搬送すれば、そのPDAに紐付けられている印刷物の2ページ目を第2排紙トレイ52に排紙することができる。
【0044】
変形例2:上記各実施形態は、印刷物保管部内の保管順序(上から何枚目か)に基づいて第2排紙トレイ52に排紙する印刷物を決定しているが、たとえばPDA毎に相違する固有の電子透かしを印刷物に印刷し、印刷物搬送部に装備されたスキャナで確認してPDAに対応する印刷物を第2排紙トレイ52に排紙するようにしてもよい。さらに、本発明は、上記スキャナで確認して第2排紙トレイ52からPDAに対応する印刷物を印刷物保管部に搬送するようにしてもよい。
【0045】
変形例3:上記各実施形態は、PDAの認証に指紋情報を使用しているが、指紋に限られず、たとえば虹彩や静脈といった生体情報を使用することもできる。本発明は、一般的に生体情報を使用すればパスワードを入力することなく、簡易にセキュリティ印刷処理を実行することができる。ただし、指紋情報を使用すれば、追加の操作を行うことなくスタートスイッチの操作時に指紋情報を取得できるという利点がある。なお、指紋情報取得部は、生体情報取得部とも呼ばれる。登録指紋情報は、登録生体情報とも呼ばれる。
【0046】
変形例4:上記各実施形態では、印刷物は原稿の複写物であるが、これに限られず、たとえばPDAが出力した印刷ジョブによって生成される印刷物であってもよい。この場合、セキュリティ印刷システムは、印刷ジョブも近距離無線通信TNによって送受信することができる。さらに、持ち運び可能なUSBメモリその他のストレージに格納されたデータに基づく印刷物であってもよい。
【0047】
変形例5:上記各実施形態では、近距離無線通信は、BLUETOOTH(登録商標)のCLASS1を使用しているが、たとえばCLASS2(出力2.5mWで到達距離10m)やCLASS3(出力100mWで到達距離100m)を使用するようにしてもよい。この場合には、近距離無線通信の接続や切断でなく、電波強度(RSSI(Received Signal Strengh Indication)とも呼ばれる。)に基づいて推定される距離に応じてステップS50(
図2参照)やステップS82(
図4参照)の決定を行うことが好ましい。電波強度(RSSI)は、BLUETOOTHの通信出力の制御に使用されるパラメータである。
【0048】
このように、本発明は、近距離無線通信が予め定められた所定の状態(たとえば推定距離が所定の範囲内)にある場合に、印刷物を排紙トレイに排紙し、近距離無線通信が予め定められた所定の状態にない場合に、印刷物を排紙トレイから印刷物保管部に搬送するように構成されていれば良い。なお、上記一実施形態では、近距離無線通信が予め定められた所定の状態にある場合は、近距離無線通信が接続中であることを意味する。なお、近距離無線通信は、BLUETOOTH以外の通信方式であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 画像形成装置
2 携帯通信装置
10 制御部
20 画像読取部
30 画像形成部
40 記憶部
50、50a 印刷物搬送部
51 第1排紙トレイ
52 第2排紙トレイ
53、54、55 印刷物保管部
60 無線通信部
70 操作表示部
71 スタートボタン
80 自動紙送り装置
100 セキュリティ印刷システム