(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
見開きの本の頁をめくる頁めくり装置と、当該頁めくり装置によってめくった頁を、頁のめくり先位置で押さえ込む頁押さえ装置と、前記頁めくり装置と前記頁押さえ装置の動作、前記頁がめくられるタイミングに同期して撮像手段に前記本の頁を撮像させる動作を繰り返す制御装置とを備える書画カメラシステムであって、
前記頁押さえ装置は、
頁をめくり先位置で押さえ込む頁押さえ装置であって、
回転軸を中心に回転し、前記頁のめくり先位置に送られてきた前記頁を所定の押さえ荷重で押さえ込むローラと、
前記回転軸を中心に配設された複数枚の羽根部が前記回転軸と同軸で回転することにより、前記頁を巻き込むように前記頁のめくり先位置に前記頁を送る巻き込み部と、
を備えることを特徴とする書画カメラシステム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
図1は本第1実施形態の書画カメラシステムの概略構成を示す斜視図である。なお、以下の説明においては本Bの頁Pを左から右へとめくる場合について説明する。
図1に示すように、書画カメラシステム1には、本Bの頁Pを撮像する撮像手段としての書画カメラ2と、本Bの頁Pをめくる頁めくり装置3と、書画カメラ2及び頁めくり装置3に通信自在に接続されたパソコン4とを備えている。
【0011】
書画カメラ2には、スタンド部21と、スタンド部21の上端に取り付けられたカメラ22とが設けられている。スタンド部21は本Bとカメラ22との相対的な位置関係を調整できるように、前後方向、左右方向に傾倒自在であるとともに、上下方向に伸縮自在となっている。カメラ22は、その画角内に本Bが収まるようにレンズが下方を向いている。カメラ22とスタンド部21との接合部には位置調整機構が設けられており、これによってカメラ22のレンズが向く方向も調整できるようになっている。
【0012】
頁めくり装置3は、開かれた本Bを保持する保持台6と、保持台6上の本Bの頁Pのめくり元位置で頁Pを保持し、頁Pのめくり先位置で頁Pに対する保持を解除するめくり装置本体30と、めくり先位置で頁Pを保持するための頁保持部7と、を備えている。
【0013】
保持台6は、図示しないヒンジにより折り畳み自在な一対の保持板61,62を備えている。ここで、本Bの頁Pが左から右へとめくられる場合は、一対の保持板61,62のうち、左側に配置された一方の保持板61が卓上に沿うように置かれ、右側に置かれる他方の保持板62が一方の保持板61に対して所定の角度で起き上がるように傾斜して卓上に置かれる。一方の保持板61上には、本Bのめくり元位置となる頁Pが置かれ、他方の保持板62上には、本Bのめくり先位置となる頁Pが置かれることになる。
これにより、保持台6は、めくり元位置にある頁Pよりもめくり先にある頁Pの方が本Bの綴じ目b2に対して起きる方向に傾斜するように本Bを保持することになる。なお、一対の保持板61,62がヒンジにより折り畳み自在となっているので、一対の保持板61,62のなす角度も調整することができ、めくり先位置にある頁Pの水平面に対する傾斜角度θが調整自在となっている。傾斜角度θとしては30〜45度内の範囲で調整することが好ましい。
【0014】
図2は頁めくり装置3の内部構成を模式的に示す側面図である。
図1,
図2に示すように、めくり装置本体30は、略直方体形状の収納ケース31と、駆動軸32を有するモータなどの第一駆動部(駆動部)33と、駆動軸32を中心に揺動するアーム部34と、アーム部34の先端に取り付けられ、本Bの頁Pに対して吸着する吸着部35と、第一駆動部33、アーム部34及び吸着部35を支持する台座部38と、めくり元位置にある頁Pの上方に風を通過させることでめくり先位置にある頁Pに対して風を当てる送風部5と、各部を制御する図示しない制御部36(
図10参照)とを備えている。この第一駆動部33、アーム部34及び吸着部35が本発明に係るめくり機構である。
【0015】
収納ケース31は、第一駆動部33、アーム部34、吸着部35、台座部38、送風部5及び制御部36を収納している。収納ケース31の主面には、第一駆動部33、アーム部34、吸着部35及び台座部38を収納するための第一収納凹部311と、送風部5を収納するための第二収納凹部312とが設けられている。なお、制御部36については、露出しないように収納ケース31に内蔵されている。
第一収納凹部311は、不使用時のアーム部34を収納するための第一凹部313と、揺動時のアーム部34の動作を妨げないように形成された第二凹部314とを備えている。第一凹部313は収納ケース31の底部に沿って矩形状に形成されている。第二凹部314は第一凹部313の一端部から連続して扇状に形成されている。また第二凹部314の側部は開放されている。
第二収納凹部312は、第一凹部313の上方に矩形状に形成されている。
【0016】
台座部38は、第一収納凹部311内で水平方向に回動自在となるように設けられている。台座部38には、底板381と、底板381の奥側の一辺から立設し、第一駆動部33を支持する支持部382と、底板381の一端部から立設し、支持部382に隣接するストッパー383とが設けられている。そして、底板381の一端部には、台座部38を水平方向に回動自在とする回動軸384(
図1参照)が設けられている。支持部382によって支持された第一駆動部33の駆動軸32も底板381の一端部側に配置されている。換言すると台座部38の回動軸384が駆動軸32側に配置されている。
【0017】
図3は台座部38が収納ケース31内に収納された状態を示す斜視図である。ここで、
図1においては、台座部38が収納ケース31から引き出された状態(動作状態)を示している。この状態から回動軸384を中心にして台座部38を収納ケース31側に回動させると、
図3に示すように第一駆動部33、アーム部34、吸着部35及び台座部38が第一収納凹部311内に収納される。
【0018】
また、収納ケース31の下端部には、図示しないヒンジによって開閉自在な蓋部42が設けられている。開状態において蓋部42は卓上に載置され、
図1に示すように、蓋部42上に保持台6が設置される。
第一駆動部33、アーム部34、吸着部35及び台座部38が第一収納凹部311内に収納されると、蓋部42を閉状態とすることによって第一駆動部33、アーム部34、吸着部35及び台座部38が覆い隠されることになる。
【0019】
図2に示すように、動作状態においては第一駆動部33の駆動軸32は、本B側に向けて傾いており、駆動軸32が回転するとアーム部34が駆動軸32を中心にして円弧を描くように頁Pのめくり元位置と、頁Pのめくり先位置との間を往復動作するようになっている。以下の説明においては、頁Pのめくり元位置からめくり先位置までの移動を往動とし、めくり先位置からめくり元位置までの移動を復動とする。
【0020】
次に、アーム部34及び吸着部35の具体的構成について説明する。
図1,
図2に示すように駆動軸32の先端部には回転体321が取り付けられている。
この回転体321には、駆動軸32に直交する平面に沿うようにアーム部34が取り付けられている。アーム部34は例えば樹脂製の矩形板状部材である。このアーム部34は、長手方向に垂直な断面の形状が 平な板状となっている。アーム部34の先端には例えばモータなどの第二駆動部37を介して吸着部35が取り付けられている。
第二駆動部37はその駆動軸39(
図5参照)がアーム部34の長手方向に対して直交する方向に沿うように配置されている。この駆動軸39には吸着部35が着脱自在に取り付けられていて、当該駆動軸39の回転に伴って吸着部35が回転するようになっている。
【0021】
吸着部35は略円柱状の粘着部である。吸着部35には、円柱状の回転ローラと、回転ローラの周囲に巻き付けられた粘着部材とが備えられている。
ここで、第二駆動部37の駆動軸39に対する吸着部35の交換作業効率を向上させたいという要望がある。このため、回転ローラを例えばスポンジなどのような弾性体から形成し、その中心部に駆動軸39を嵌合させている。スポンジ以外の弾性体としてはゴムや発泡体等が挙げられる。したがって、交換時においても駆動軸39から回転ローラを引き抜くだけで取り外せることが可能となっている。このように、回転ローラが弾性体であるため、駆動軸39に対する吸着部35の着脱動作を容易に行うことができ、交換作業を容易化することができる。
【0022】
そして、めくり動作によってアーム部34が往動する際には、めくり元位置の頁Pが吸着部35に吸着しているので、当該頁Pがアーム部34の往動に追従してめくり先位置へと移動することになる。
また、復動時では、往動時と進行方向は逆であり、同経路で吸着部35は頁Pから分離した状態で移動し、最終的に頁Pのめくり元位置で新たな頁Pに吸着する。この往復動作を繰り返すことで頁Pのめくり動作が進行する。
【0023】
図4は、吸着部35がめくり元位置の頁Pに接触した当初の状態を示す模式図である。
図4に示すように、アーム部34が矢印Y3方向に揺動して吸着部35がめくり元位置の頁Pに接触した当初は、吸着部35の有効面(粘着面)が頁Pに対して斜めに当たっている。具体的には、略円柱状である吸着部35の一方の底面の円周部35aの一部が頁Pに対して斜めに当たるように、駆動軸32,39、アーム部34の長さや角度、取付位置などが予め設定されている。なお、吸着部35の有効面は母線からなる外周面である。
このように有効面が頁Pに対して斜めに当たっていれば、接触当初においては頁Pに対する接触面積が小さいために、高い圧力が頁Pに作用することになり、確実に吸着部35を頁Pに吸着(粘着)させることができる。
【0024】
図5は、
図4に示した状態からさらにアーム部34が揺動した状態を示す模式図である。めくり元位置の頁Pに吸着部35が接触した当初の状態となってもアーム部34の揺動は終わっておらず、第一駆動部33によってアーム部34はさらに矢印Y3方向に進行し続ける。吸着部35は頁Pに接触したままであるため、アーム部34は長手方向に平行な軸回りにねじれる。さらに、弾性体からなる回転ローラに嵌合された駆動軸39も回転ローラの中心T1からねじれ、吸着部35が母線(を含むある幅)で頁Pに密着することになる。これにより、吸着部35の有効面が接触直後よりも広い面積で頁Pに密着する。
【0025】
図6は、
図4に示した状態を正面から見た模式図である。この
図6に示すように、めくり元位置の頁Pに撓みがあったとしても、吸着部35の有効面が頁Pに対して斜めに当たるのであれば接触当初においては頁Pに対する接触面積が小さくなる。したがって、高い圧力を頁Pに作用させることができ、確実に頁Pに吸着させることができる。
このように、吸着時に、吸着部35が2段階で頁Pに吸着するように動作するので、吸着部35を確実に頁Pに吸着させることができる。
【0026】
図1に示すように、送風部5は、本Bのめくり元位置の上流側に配置されている。例えば本第1実施形態のように本Bの頁Pが左から右へとめくられる場合は、本Bのめくり元位置にある頁Pよりも左側に送風部5は配置される。送風部5は、第二収納凹部312内において水平方向に回動するように回動軸51によって回動自在に軸支されている。これにより、風の進行方向が調整自在となっている。なお、風の進行方向が調整自在であれば、送風部5の回動軸は一軸でなくても二軸以上でもよい。二軸の場合は水平方向への回動と、上下方向への回動ができることが好ましい。また、例えばピボット機構などのような回転軸の定まらない機構によって送風部5を第二収納凹部312内に取り付けてもよい。
または送風部5は固定のままで、可変ルーバーによって風の進行方向を調整してもよい。
【0027】
頁保持部7(
図1参照)は、頁Pがめくり元位置に戻らないようにめくり先位置に巻き込む巻き込み部71と、めくり先位置にある頁Pを留めるクリップ部72とを備えている。
図7は、巻き込み部71の概略構成を示す斜視図である。
図8は、めくり先位置にある頁Pが少ないときの巻き込み部71の状態を示す正面図である。
図9は、めくり先位置にある頁Pが多いときの巻き込み部71の状態を示す正面図である。
図7〜
図9に示すように、巻き込み部71は、他方の保持板62に対して固定される支持部73と、支持部73によって支持される回転駆動部74とを備えている。
支持部73は、他方の保持板62の下面に固定される固定板731と、固定板731に対して垂直に延在する柱部732と、固定板731に対して対向配置されるように柱部732の先端部に対してヒンジ733によって開閉自在に取り付けられた開閉部734(可動支持アーム部)とを備えている。開閉部734が開閉自在(厚さ方向に可動自在)であるために、
図8及び
図9に示すようにめくり先位置の頁Pの厚さに追従して開閉部734が動作し、どのような厚さでも最適な位置に回転駆動部74を配置することができる。
【0028】
固定板731には、固定用の貫通孔735が設けられている。他方の保持板62の下面には、前後方向及び左右方向にネジ穴621がマトリクス状に複数配列されている。このネジ穴621に対して貫通孔735からネジ9が螺合されることで固定板731が他方の保持板62に固定される。このネジ9が螺合されるネジ穴621を変更すれば、めくり先位置にある頁Pに対する巻き込み部71の位置を調整することが可能である。
なお、固定板731の設置箇所を調整自在に保持板62に固定できるのであれば、ネジ9以外の固定方法を適用してもよい。例えば、保持板62に対して固定板731をバンドによって固定する方法や、両者をマグネットによって固定する方法などが挙げられる。
【0029】
回転駆動部74は、開閉部734の先端部に取り付けられたモータ741と、モータ741の回転軸に取り付けられ、モータ741によって回転する円筒状のローラ部742とが設けられている。
ローラ部742は、めくり先位置にある頁P上に頁Pを押圧する方向に配置されている。ローラ部742は、頁Pをめくり先位置に巻き込むようにモータ741によって回転する。ローラ部742の外周面には頁Pを巻き込むための羽根部743が周方向に沿って所定の間隔を空けて複数取り付けられている。羽根部743は、例えばPETなどの樹脂からなる可撓性の板状部材であり、無負荷時においてはローラ部742の接線に沿って延在するように取り付けられている。羽根部743の先端部における頁Pに当接する面には、例えばウレタンゴムなど、頁Pとの摩擦抵抗が高く、耐摩耗性のある素材から形成されたシート部材744が設けられている。
【0030】
めくり元位置の頁Pがめくり動作によってめくり先位置へと移動する経路の途中位置にローラ部742が配置されているため、ローラ部742の回転によって頁Pは当該ローラ部742に巻き込まれる。さらに、この巻き込み時には、複数の羽根部743も回転しており、頁Pの経路がばらついたとしても羽根部743のシート部材744が頁Pを捕捉し、確実に頁Pを送ることができるようになっている。
図7では羽根部743の幅はローラ部742の幅と等しい寸法で描かれているが同じである必要はなく、それぞれの働きに適した寸法でよい。また、羽根部743をローラ部742の外周面に設けることにより小型化しているが、意図せず回転駆動部74を頁Pに必要以上の押さえ荷重を与えてしまったとしても、羽根部743はローラ部742の接線に沿って形成されているので、羽根の根元が折れるようなことはない。なお、寸法上余裕があれば羽根部743とローラ部742を回転軸方向にずれた位置に設けてもよい。その場合、ローラ部742の外周面が頁Pに接するようにしてもよい。さらに、ローラ部742の外周面が頁Pに接するようにした場合には、ローラ部742と頁と間の摺動によってスティックスリップ現象が起こり、異音が発生する恐れがある。その異音を防止するために、ローラ部742の外周面にサイプ800(切れ込み)を複数設けるのがよい。
図15にサイプ800の無い例を示す。
図16に直線状のサイプ800を8箇所設けた例を示す。
図17に直線状のサイプ800を16箇所設けた例を示す。サイプの数を増やすことで、サイプの段差で生じる衝撃音を軽減する効果がある。
図18にV字状のサイプ800を16箇所設けた例を示す。サイプの切り込みを斜めにすることでサイプの段差で生じる衝撃音を減少させる効果があり、V字状にすることで引き込み方向に直交する方向に発生する、頁Pへの推力をキャンセルしている。
図19に直線状のサイプ800を8箇所設け、サイプの底に貫通孔801を設けた例を示す。貫通孔801はサイプの底をR形状で構成し、応力集中を軽減してサイプの裂けの進行を防止する効果がある。
このように、めくり先位置で頁Pが吸着部35から離れた後も、ローラ部742の回転が頁Pに作用することで頁Pがめくり元位置に戻ることが防止されている。
【0031】
次に、本第1実施形態の書画カメラシステム1の主制御構成について説明する。
図10は書画カメラシステム1の主制御構成を示すブロック図である。
図10に示すように、頁めくり装置3の制御部36には、第一駆動部33を駆動するためのモータドライバ361と、第二駆動部37を駆動するためのモータドライバ362と、送風部5を駆動するためのモータドライバ368と、モータ741を駆動するためのモータドライバ369と、各種プログラムが記録されたROM363と、ROM363中のプログラムの実行時に当該プログラムが展開されるRAM364と、各種指示が入力される操作部365と、操作部365からの指示に基づいてROM363中のプログラムをRAM364に展開し実行することでモータドライバ361,362を制御するCPU366と、パソコン4が接続されるI/F367と、電源370とが備えられている。
操作部365には、頁めくり処理を開始させるための開始スイッチ365aと、頁めくり処理を停止させるための停止スイッチ365b等が設けられている。
【0032】
以下、書画カメラシステム1による頁めくり処理について説明する。
図11は頁めくり処理の流れを示すフローチャートである。
まず、頁めくり処理が実行される前の準備について説明する。
ユーザは、収納状態にあるめくり装置本体30から蓋部42を開いて開状態とし、さらに回動軸384を中心にして台座部38を収納ケース31から引き出すように回動させて、アーム部34が動作する動作状態へと切り替える(
図1参照)。その後、ユーザは、開状態にある蓋部42上に保持台6を設置して、当該保持台6上に本Bを設置する。
【0033】
本Bの設置後、ユーザは頁保持部7をセットする。具体的には、他方の保持板62と本Bの表紙とをクリップ部72によって固定する。また、巻き込み部71の支持部73を位置調整しつつ他方の保持板62に固定する。このとき、
図8に示すように、めくり先位置の最上位にある頁P(初期状態では他方の保持板62に固定された本Bの表紙)の側端部と、ローラ部742の回転中心との間隔Hが5〜10mmの範囲に収まるように、支持部73を位置調整することが好ましい。
【0034】
そして、ユーザは、送風部5からの風が、頁Pのめくり元位置にある頁Pの上方を通過するとともに、頁のめくり先位置にある頁Pに当たるように送風部5の風の進行方向を調整する。図中、矢印Y2は風の進行方向を示している。具体的には、送風部5からの風は、ローラ部742とめくり先位置にある頁Pとの接触位置付近に向けて流れていることが好ましい。このとき、風の進行方向が見えるように送風部5の送風口にはリボン紐で構成される吹流しを設けてもよい。
【0035】
また、ユーザは、予め起点(復動の終点位置)に吸着部35が配置されるようにアーム部34の位置を合わせる。具体的には、めくり元位置にある頁Pの左上付近に吸着部35が当たるように保持台6の位置も合わせる(
図1参照)。
そして、ユーザは、本Bを開き、取り込み始めたい頁Pの一頁前の頁Pを開いて、吸着部35を往動の終点位置(復動の起点位置)に移動させておく。
また、ユーザは、めくり元位置にある頁Pがカメラ22の画角に収まるように、カメラ22の位置調整をする。
【0036】
これで準備が完了したためユーザが頁めくり装置3の電源370をONにすると、CPU366がROM363中の頁めくり処理用のプログラムをRAM364に展開し実行する。
【0037】
図11に示すようにステップS1では、CPU366は、ユーザにより開始スイッチ365aが操作されたか否かを判断し、操作されていない場合はそのままの状態を継続し、操作された場合はステップS2に移行する。
ステップS2では、CPU366は、RAM364に記憶されているN値を0にリセットする。
ステップS3では、CPU366は、送風部5を駆動して当該送風部5からの送風を実行する。
ステップS4では、CPU366は、モータ741を駆動してローラ部742を回転させる。
【0038】
ステップS5では、CPU366はアーム部34が右から左に移動(復動)するように第一駆動部33を制御する。
ステップS6では、CPU366は第一駆動部33の駆動時間が第一所定時間を超えたか否かを判断し、第一所定時間以下である場合にはそのまま第一駆動部33の駆動を継続し、第一所定時間を超えた場合にはステップS6に移行する。第一所定時間は、復動の起点から終点までアーム部34を移動させることのできる時間に設定されている。
ステップS7では、CPU366は第一駆動部33を停止する。これにより、吸着部35の回転が停止された状態で左側の頁Pに吸着することになる(
図1参照)。
【0039】
ステップS8では、CPU366はアーム部34が左から右に移動(往動)するように第一駆動部33を制御する。これによりめくり元位置にあった頁Pが吸着部35に吸着した状態でめくり先位置へと移動しはじめる。
ステップS9では、CPU366は第一駆動部33の駆動時間が第二所定時間を超えたか否かを判断し、第二所定時間以下である場合にはそのまま第一駆動部33の駆動を継続し、第二所定時間を超えた場合にはステップS9に移行する。第二所定時間は、第一所定時間よりも短い時間に設定されており、特にアーム部34が往動し始めてから往動の半分地点を通過する付近から往動を終える前までの時間に設定されていることが好ましい。
ステップS10では、CPU366は第一駆動部33を駆動させたままの状態で第二駆動部37を制御して吸着部35を回転させる。この回転によって、吸着部35を頁Pから分離させる際に吸着部35の吸着強度が変化することになり、吸着部35を頁Pから確実に分離させることが可能となっている。さらに、往動時では、アーム部34は時計回りに回転している。より分離性能を高めるためには、第二駆動部37がアーム部34の揺動とは反対方向、つまり反時計回りに吸着部35を回転させることが好ましい。
【0040】
ステップS11では、CPU366は第一駆動部33の駆動時間が第一所定時間を超えたか否かを判断し、第一所定時間以下である場合にはそのまま第一駆動部33及び第二駆動部37の駆動を継続し、第一所定時間を超えた場合にはステップS11に移行する。
【0041】
そして、第二駆動部37が回転している期間内で、頁Pは吸着部35から分離される。
この際、送風部5からの風が吸着部35から分離した頁Pに当たるため、当該頁Pはめくり先位置へと案内された上で、当該頁Pがめくり元位置に戻ってしまうことを防止することができる。また、吸着部35はめくり先位置の頁Pから離れた位置に頁Pから分離した状態で配置されることになる。この位置であると吸着部35及びアーム部34はカメラ22の画角から外れることになる。
【0042】
また、ステップS8からステップS11の間で、頁Pがめくり元位置からめくり先位置へとめくられる。このめくり動作の途中位置でローラ部742が回転しているために、複数の羽根部743によって頁Pが捕捉されローラ部742の外周面まで案内されることになる。ローラ部742にまで至った頁Pはローラ部742に巻き取られてめくり先位置へと送られる。その後のめくり動作においてもローラ部742が回転しているために、めくり先位置の頁Pはその位置に留まることになる。
【0043】
ステップS12では、CPU366は第一駆動部33及び第二駆動部37を停止する。
このとき、アーム部34は慣性力によってそのまま時計回りの回転を続けようとするが、ストッパー383によってそれ以上の回転が規制される。
【0044】
ステップS13では、CPU366はパソコン4に頁めくり完了信号を出力する。
ステップS14では、パソコン4は、入力された頁めくり完了信号に基づいてカメラ22を制御し、現在開かれている頁Pのうち、めくり元位置にある頁Pの撮像を行う。このとき、吸着部35、アーム部34、送風部5及び頁保持部7はカメラ22の画角から離れており、めくり元位置にある頁Pのみが撮像されることになる。カメラ22での撮像画像データは、一枚毎(一撮像毎)にナンバリングされてパソコン4の記録部41に記録される。このように、めくり元位置に対応する頁P、例えば奇数頁のみが撮像される場合には、別途めくり元位置の頁Pが偶数頁になるようにして偶数頁のみを撮像した画像とともに、互い違いに頁順に並び替えるようにして、全頁のスキャン画像としてまとめる。
【0045】
ステップS15では、CPU366はN値に1を加えてRAM364に記憶する。このようにCPU366及びRAM364が、めくり回数を計測する本発明に係る計測部である。
ステップS16では、CPU366はN値が所定値であるか否かを判断し、所定値でない場合にはステップS21に移行し、所定値である場合にはステップS17に移行する。
所定値とは、ローラ部742による頁Pの巻き込みが安定して行える上限値であり、頁Pの紙の種類や、本Bの大きさによってその最適値が異なる。本第1実施形態では所定値として例えば50を用いる。
【0046】
ステップS17では、CPU366は第一駆動部33及び第二駆動部37の停止を継続する。
ステップS18では、CPU366は、モータ741を停止してローラ部742を停止させる。
ステップS19では、CPU366は、RAM364に記憶されているN値を0にリセットする。
【0047】
ローラ部742が停止すると、ユーザは頁保持部7を再度セットしなおす。具体的には、めくり先位置にある複数の頁Pをクリップ部72によって他方の保持板62に固定する。また、ユーザは、めくり先位置の最上位にある頁Pの側端部と、ローラ部742の回転中心との間隔Hが5〜10mmの範囲に収まるように、支持部73を位置調整する。セットが完了するとユーザは開始スイッチ365aを操作する。
【0048】
ステップS20では、CPU366は、ユーザにより開始スイッチ365aが操作されたか否かを判断し、操作されていない場合はそのままの状態を継続し、操作された場合はステップS5に移行する。
ステップS21では、CPU366は、ユーザにより停止スイッチ365bが操作されたか否かを判断し、操作されていない場合にはステップS5に移行し、操作されている場合には頁めくり処理を終了する。これにより、頁めくり動作と撮像動作が繰り返され、所望の頁Pの撮像が完了する。
【0049】
以上のように、本第1実施形態によれば、ローラ部742が回転することで、めくり動作途中の頁Pを巻き込んでめくり先位置に送る。これにより、めくり動作の途中で頁Pがめくり元位置へと戻ってしまうことが防止される。また、めくり先位置で頁Pが吸着部35から離れた後も、ローラ部742の回転が頁Pに作用するため、頁Pがめくり元位置に戻ることが防止されている。これらのことから、頁めくりの確実性を高めることが可能となる。
【0050】
また、ローラ部742の外周面に、頁Pを巻き込むための羽根部743が複数取り付けられているので、複数の羽根部743によって頁Pが捕捉されローラ部742の外周面まで案内されることになる。したがって、ローラ部742の回転を確実に頁Pに作用させることができる。
【0051】
また、羽根部743が可撓性を有するので、頁Pの形状に応じて羽根部743が撓むこととなり、より確実に頁Pを捕捉することができる。さらに、羽根部743の先端部に頁Pよりも摩擦抵抗の高い素材から形成されたシート部材744が設けられているので、シート部材744が頁Pに触れた後においては頁Pが離れにくくなり、頁Pを捕捉した状態を維持することができる。
【0052】
また、頁Pのめくり回数が所定値になると、第一駆動部33、第二駆動部37及びモータ741が停止して、めくり動作及びローラ部742の回転が停止する。ユーザは、この停止時に、頁保持部7を再度セットすることができるので、めくり先位置で増加した頁Pに対しても最適な位置に頁保持部7をセットすることができる。
【0053】
また、めくり先位置にある頁Pに対するローラ部742の位置が調整自在であるので、本Bの種類、厚さに応じて最適な位置にローラ部742を設置することができる。また、めくり途中においてもローラ部742の位置を調整することも可能である。
【0054】
また、めくり先位置の厚さに応じてローラ部742の厚さ方向の位置が変動するので、めくり先位置の頁Pの厚さに追従してローラ部742を配置することができる。
【0055】
また、送風部5が、めくり途中位置にある頁Pに対して風を当てるので、めくり元位置にある頁Pに対する風の影響を抑えつつもめくり先位置に頁Pをスムーズに送ることができる。
【0056】
また、風の進行方向が調整自在となるように送風部5が設けられているので、本Bの大きさ、厚さなどに合わせて最適な位置へ風の進行方向を調整することができる。最適な位置としては、例えば、ローラ部742とめくり先位置にある頁Pとの接触位置付近が挙げられる。この位置に風を当てると、めくり先位置に向かう頁Pが折れ曲がってしまうことを抑制することができる。
【0057】
また、カメラ22で頁Pを撮像する際には、めくり機構(第一駆動部33、アーム部34及び吸着部35)及びローラ部742がカメラ22の画角から外れているので、撮像画像内にめくり機構及びローラ部742が写り込むことが防止され、好適な撮像画像を取得することができる。
【0058】
B.第2実施形態
図12は、本発明の第2実施形態による書画カメラシステム10の概略構成を示す斜視図である。なお、
図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。
図12に示すように、書画カメラシステム10は、本Bの頁Pを撮像する撮像手段を有する情報処理端末(スマートフォンや、タブレットなど)を設置するスタンド部21と、本Bの頁Pをめくる頁めくり装置3と、本Bを設置する保持台6と、めくり先位置で頁Pを保持するための頁保持部7とを備えている。
【0059】
スタンド部21は、本Bと図示しない情報処理端末との相対的な位置関係を調整できるように、前後方向、左右方向に傾倒自在であるとともに、上下方向に伸縮自在となっている。スタンド部21には、開口部212が設けられており、図示しない撮像手段のレンズが該開口部212を通して下方を向くように(本Bの頁Pが画角内に収まるように)、図示しない情報処理端末が設置される。
【0060】
頁保持部7は、頁Pがめくり元位置に戻らないようにめくり先位置に巻き込む巻き込み部71に加え、めくり先位置にある頁Pを押える頁押さえ装置75と、頁保持部7の固定位置を調整する位置調整部76とを備えている。頁押さえ装置75は、巻き込み部71と同軸上で回転し、吸着部35より搬送され、巻き込み部71によって巻き込まれた頁Pがめくり元位置に戻らないように、頁Pを引き込む引き込みローラ751と、頁Pをめくり先位置に押え込む押さえローラ752とを備えている。位置調整部76は、本Bの大きさに応じて、頁保持部7の固定位置を調整するとともに保持板62に固定する。
【0061】
アーム部34及び吸着部35、並びに巻き込み部71の動作は、上述した第1実施形態と同様である。本第2実施形態では、巻き込み部71の動作に加えて、頁押さえ装置75において、吸着部35より搬送され、巻き込み部71で巻き込まれた頁Pを、引き込みローラ751でさらに引き込んで、押さえローラ752でめくり先位置に確実に押さえ込んで留めるようになっている。
【0062】
図13は、本第2実施形態による頁保持部7の外観構造を示す斜視図である。巻き込み部71、引き込みローラ751、及び押さえローラ752は、同軸上に配設され、ローラカバー100で覆われている。頁めくり動作中、巻き込み部71、引き込みローラ751、及び押さえローラ752は、図示しないモータにより駆動される回転軸80を中心に同一方向に回転するように駆動力が与えられる。
【0063】
巻き込み部71は、第1実施形態と同様、吸着部35より頁Pが搬送されてくると、回転する羽根部743の先端部に設けられているシート部材744で頁面を擦るようしてめくり先位置に巻き込む。引き込みローラ751は、自由形状において、巻き込み部71の径より小さく、かつ押さえローラ752より大きい径を有する、柔軟性を有するスポンジ状の素材からなる。引き込みローラ751は、巻き込み部71の羽根部743により巻き込まれた頁Pを引き込む。引き込みローラ751の径が巻き込み部71の径より小さいので、巻き込み部71によって巻き込まれた頁Pを容易に引き込むことができる。また、引き込みローラ751は、頁Pを押える箇所ではつぶれて押さえローラ53と同径になるので、引き込みローラ751が必要以上の押圧力を頁Pに加えることがない。
【0064】
押さえローラ752は、引き込みローラ751の径よりさらに小さな径を有し、頁Pとの摩擦係数が大きい材質(ウレタンゴム等)で形成された表面を有する。押さえローラ752は、引き込みローラ751より小さな径を有するので、引き込みローラ751によって巻き込まれた頁Pを容易にめくり先位置で押さえ込むことができる。
【0065】
このように、本第2実施形態では、巻き込み部71の羽根部743、押さえローラ752、押さえローラ53の順に、径が小さくなるように配置することによって、頁Pを滑らかに引き込んで押さえ込むことが可能となる。
【0066】
アーム部753には、巻き込み部71、引き込みローラ751、及び押さえローラ752を回転させる図示しないモータが内蔵されている。該モータには、所定のケーブル(例えばUSBケーブル等)を介してめくり装置3側から電源が供給されており、頁めくり動作に連動して駆動制御される。また、アーム部753は、めくり先位置の頁Pの厚さに追従して回転軸81を中心に回動し、どの厚さでも最適な位置に巻き込み部71、引き込みローラ751、及び押さえローラ752を配置することができる。また、アーム部753は、図示しないバネ等の付勢手段、及び自重によって、巻き込み部71、引き込みローラ751、及び押さえローラ752を、頁に対して所定の押圧力で付勢するようになっている。
なお、上記バネ等の付勢手段による押圧力は、本Bのサイズ、用紙種類、本Bの開き角度に応じて調整可能となっている。
【0067】
アーム部753は、本体フレーム部754に対して回動可能に固定されている。本体フレーム部754は、さらに、位置調整部76のスライドレール761に矢印Aの方向に移動可能に固定されている。スライドレール761には、矢印Aと直交する向きの複数のレール溝が所定の間隔で形成されており、本体フレーム部754に内蔵されている固定部材がいずれかのレール溝に嵌合することでそのレール溝の位置で固定される。このように、頁保持部7の固定位置は、本Bの大きさに応じて自在に変更することが可能となっている。
【0068】
図14は、本第2実施形態による頁保持部7の内部構造を示す展開図である。
巻き込み部71、引き込みローラ751、及び押さえローラ752は、図示しないモータのローラ軸90に連結される。ローラ軸90の端部は、軸受94に嵌合され、キャップ95で覆われている。押さえローラ752は、トルクリミッタ(トルク制限機能部材)92が内蔵されている。ローラ軸90はトルクリミッタ92を介して押さえローラ752を回転する。トルクリミッタ92には、所定以上の負荷がかかるとローラ軸90からの回転を遮断するものであり、摩擦・抵抗、バネなどを利用する機械式や、磁力を用いるマグネット式などがある。本実施形態では、マグネット式のトルクリミッタを用いている。
【0069】
トルクリミッタ92は、モータから駆動力を受けているローラ軸90と押さえローラ752との間に実装され、内側の部材がピン93によってローラ軸90に固定され、外側の部材が押さえローラ752と固定されている。押さえローラ752は、トルクリミッタ92の外側の部材の回転に従って従動するようになっている。したがって、トルクリミッタ92に一定以上の負荷が掛かると、内側の部材は、ローラ軸90の回転によって回転するが(ローラ軸90の回転は継続し、巻き込み部71、引き込みローラ751は回転し続けるが)、外側の部材は、回転を停止する。トルクリミッタ92の外側の部材の回転が停止すると、押さえローラ752の回転も停止するように構成されている。
【0070】
なお、トルクリミッタ92において、どのくらいの負荷で回転を停止させるかは設定可能である。トルクリミッタ92を介して押さえローラ752に伝達される駆動力、すなわち、押さえローラ752で押さえ込まれた頁Pに対して発生する張力は、頁Pを破損しない大きさで、かつ、頁Pの紙面上で押さえローラ752がスリップしない大きさとなるように設定する。言い換えると、頁Pを破損しない大きさで、かつ、頁Pの紙面上で押さえローラ752がスリップしない大きさを超えると、トルクリミッタ92によって押さえローラ752の回転が停止される。
【0071】
押さえローラ752は、めくり先位置で確実に頁を押さえるために、頁Pを押さえ込んだ状態で回転しつづけると、頁Pにこすり痕をつけたり、頁Pを破ってしまう可能性がある。そこで、上述したように、押さえローラ752にトルクリミッタ92を内蔵させることによって、押さえローラ752が頁Pを押さえ込み、頁Pとの間の摩擦により一定以上の負荷がかかると、トルクリミッタ92がローラ軸90からの回転を遮断し、押さえローラ752の回転を停止させる。押さえローラ752の回転が停止することで、頁Pを確実に押さえ込みつつ、頁Pの表面にこすり痕をつけたり、頁Pを破ってしまうことを防止することができる。
【0072】
押さえローラ752の回転が停止した状態で、吸着部35より次の頁Pが搬送されてくると、当該次の頁Pは、巻き込み部71によってめくり先位置に巻き込まれ、引き込みローラ751によって引き込まれる。引き込みローラ751によって引き込まれると、次の頁Pは、回転を停止している押さえローラ752の下(押さえローラ752とめくり先位置で押さえている前の頁Pとの間)に滑り込むように送られてくる。
【0073】
押さえローラ752の下に次の頁P(の端部)が送り込まれることで、押さえローラ752に掛る負荷が小さくなり、トルクリミッタ92によって再びローラ軸90の駆動力が押さえローラ752に伝達されるので、押さえローラ752は回転を再開する。これにより、回転する押さえローラ752は、引き込みローラ751によって引き込まれた次の頁Pをめくり先位置で押さえ込む。そして、次の頁Pを押さえ込むことで再び一定以上の負荷がかかるので、トルクリミッタ92によってローラ軸90の駆動力が遮断され、押さえローラ752の回転が停止する。このような動作が頁めくり動作中繰り返される。
【0074】
上述した第2実施形態によれば、頁Pを巻き込むための複数枚の羽根部743が外周面に設けられた巻き込み部71に加えて、当該巻き込み部71の回転軸と同軸で回転し、巻き込み部71によって頁のめくり先位置に送られてきた頁Pを、頁のめくり先位置で押さえ込むローラ(引き込みローラ751、押さえローラ752)を設けたので、複数枚の羽根部743の耐久性ちと頁押さえ能力、頁の保全性(擦れあとや頁破れを防止)を向上させることができる。
【0075】
また、上述した第2実施形態によれば、ローラ(引き込みローラ751、押さえローラ752)を、所定の押さえ荷重によって弾性変形する素材で構成し、幅の広いニップで、巻き込み部71によって送られてきた頁Pを、頁のめくり先位置で押さえ込むようにしたので、羽根部743に必要な押さえ荷重を軽減し、複数枚の羽根部743の耐久性、及び頁押さえ能力、頁の保全性をさらに向上させることができる。
【0076】
また、上述した第2実施形態によれば、巻き込み部71の回転軸と同軸で回転するローラとして、所定の押さえ荷重によって弾性変形する素材(スポンジなど)で構成された引き込みローラ751と、当該引き込みローラ751より径が小さく、引き込みローラ751より弾性変形の小さい素材(ウレタンなど)で構成された押さえローラ752とで構成し、引き込みローラ751によって巻き込み部71によって送られてきた頁Pを、頁のめくり先位置に引き込み、押さえローラ752によって引き込みローラ751によって引き込まれた頁Pを、頁のめくり先位置で押さえ込むようにしたので、弾性変形する素材の引き込みローラ751で頁Pを押さえ込むようにすると、引き込みローラ751に強い押さえ荷重の負荷がかかるが、押さえローラ752が押さえ込むことにより、引き込みローラ751は頁Pを押さえローラ752に引き込む機能だけでよくなり、引き込みローラ751の耐久性を向上させることができる。
【0077】
また、上述した第2実施形態によれば、押さえローラ752の表面を、頁Pとの間における摩擦係数が大きい材質(ウレタンなど)で形成し、押さえローラ752とローラ軸90との間に、押さえローラ752に一定以上の負荷がかかるとローラ軸90からの回転力を遮断するトルクリミッタ92を設け、頁Pの引き込み後の押さえ込み時には、トルクリミッタ92によって押さえローラ752の回転を停止させるようにしたので、頁Pの表面にこすり痕をつけたり、頁Pを破ったりすることなく、確実に頁Pを押さえ込むことができる。
【0078】
なお、本発明は上記第1及び第2実施形態に限らず適宜変更可能である。
例えば、上記第1及び第2実施形態では、吸着部35が粘着部材を備えていて当該粘着部材の粘着性によって頁Pに吸着する場合を例示して説明したが、吸引等によって頁Pに吸着部を吸着させることも可能である。この場合、例えば吸着部の周面に内部空間と連通する連通孔を形成し、吸着部の内部空間とポンプとを連通させることによって、ポンプを駆動し内部空間を負圧にすれば連通孔に対して吸引力が作用することになる。この吸引力を用いて吸着部に頁Pを吸着させることが可能である。
また、吸引、粘着以外にも静電吸着による吸着を吸着部に適用することも可能である。
また、上記第1及び第2実施形態では、頁めくり装置3と書画カメラ2とが別体である場合を例示して説明したが、書画カメラを収納ケースに収納させることも可能である。
また、本第1及び第2実施形態では、ローラ部742の外周面に複数の羽根部743が設けられている場合を例示して説明したが、羽根部のないローラ部を用いることも可能である。このとき、ローラ部の表面に滑り止め加工を施しておくことが頁Pを巻き込みやすくするうえで好ましい。
また、上記第2実施形態では、押さえローラ752を頁上で回転しないようにしたが、頁の強度と印刷に耐久性があれば、押さえローラ752を省略してもよい。
【0079】
なお、羽根部743が複数の場合を好ましい例として説明したが、一枚の場合を除外するものではない。
また、羽根部743は可撓性の板状部材としたが、弾性のある金属ワイヤーをループ状に形成して羽根と同様の働きを持たせてもよい。この場合、羽根部の面積が減るので羽根部の発生する騒音を軽減する効果がある。
【0080】
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0081】
(付記1)
付記1に記載の発明は、頁をめくり先位置で押さえ込む頁押さえ装置であって、回転軸を中心に回転し、前記頁のめくり先位置に送られてきた前記頁を所定の押さえ荷重で押さえ込む第1のローラと、前記回転軸を中心に配設された複数枚の羽根部が前記回転軸と同軸で回転することにより、前記頁を巻き込むように前記頁のめくり先位置に前記頁を送る巻き込み部と、を備えることを特徴とする頁押さえ装置である。
【0082】
(付記2)
付記2に記載の発明は、前記巻き込み部は、前記第1のローラに所定の間隔をもって隣接する、ことを特徴とする付記1に記載の頁押さえ装置である。
【0083】
(付記3)
付記3に記載の発明は、前記第1のローラは、前記所定の押さえ荷重によって弾性変形するスポンジ状の素材で構成される、ことを特徴とする付記1または2に記載の頁押さえ装置である。
【0084】
(付記4)
付記4に記載の発明は、前記第1のローラは、ローラ表面から所定の深さのサイプが複数設けられている、ことを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載の頁押さえ装置である。
【0085】
(付記5)
付記5に記載の発明は、前記サイプの底は、R形状で構成されている、
ことを特徴とする付記4に記載の頁押さえ装置である。
【0086】
(付記6)
付記6に記載の発明は、前記第1のローラより径が小さく、前記第1のローラより弾性変形の小さい素材で構成された前記回転軸と同軸の第2のローラと、をさらに備え、前記第1のローラによって押さえ込まれる前記頁を前記第2のローラがさらに押さえ込むように、前記第1のローラは前記所定の押さえ荷重によって弾性変形する、ことを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の頁押さえ装置である。
【0087】
(付記7)
付記7に記載の発明は、トルク制限機能部材をさらに備え、前記第2のローラと前記回転軸との間に、所定の負荷トルク以上がかかると前記回転軸からの回転トルクを制限する、ことを特徴とする付記6に記載の書画カメラシステムである。
【0088】
(付記8)
付記8に記載の発明は、見開きの本の頁をめくる頁めくり装置と、当該頁めくり装置によってめくった頁を、頁のめくり先位置で押さえ込む頁押さえ装置と、前記頁めくり装置と前記頁押さえ装置の動作、前記頁がめくられるタイミングに同期して撮像手段に前記本の頁を撮像させる動作を繰り返す制御装置とを備える書画カメラシステムであって、
前記頁押さえ装置は、頁をめくり先位置で押さえ込む頁押さえ装置であって、回転軸を中心に回転し、前記頁のめくり先位置に送られてきた前記頁を所定の押さえ荷重で押さえ込むローラと、前記回転軸を中心に配設された複数枚の羽根部が前記回転軸と同軸で回転することにより、前記頁を巻き込むように前記頁のめくり先位置に前記頁を送る巻き込み部と、を備えることを特徴とする書画カメラシステムである。