特許第6249358号(P6249358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

▶ スタンレー電気株式会社の特許一覧
特許6249358エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法
<>
  • 特許6249358-エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法 図000002
  • 特許6249358-エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法 図000003
  • 特許6249358-エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法 図000004
  • 特許6249358-エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法 図000005
  • 特許6249358-エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法 図000006
  • 特許6249358-エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249358
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/155 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   G02F1/155
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-89602(P2013-89602)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-215308(P2014-215308A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 敬四郎
(72)【発明者】
【氏名】都甲 康夫
(72)【発明者】
【氏名】岩本 宜久
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 宙人
(72)【発明者】
【氏名】小林 範久
【審査官】 廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−035532(JP,A)
【文献】 特開昭55−070875(JP,A)
【文献】 特開昭52−016197(JP,A)
【文献】 特開昭54−093393(JP,A)
【文献】 特開2007−139899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/155
G09F 9/30
G09G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上に形成された表示電極、前記表示電極上の一部に形成された第1の絶縁膜、及び、前記第1の絶縁膜が形成されていない前記表示電極上の領域に形成されたエレクトロクロミック膜を備える表示用基板と、
第2の基板上に形成された対向電極を備え、前記表示用基板に対向して配置される対向基板と、
前記表示用基板と前記対向基板の間の、シール材に囲まれる領域内に配置される電解液層と
を含み、
前記シール材に囲まれる領域内に存在する前記表示電極上には、表示部を除いて前記第1の絶縁膜が形成され、前記表示部の全領域に前記エレクトロクロミック膜が形成され、
前記第1の絶縁膜は、前記表示部を囲むように形成され、かつ、前記表示電極上から前記第1の基板上に、前記表示電極の縁部を覆うように形成され、
前記表示電極及び前記対向電極は、前記シール材に囲まれる領域の内側に存在する引き回し線、及び、前記シール材に囲まれる領域の外側に存在する取り出し端子部を含み、
前記第2の基板は、前記対向電極上に形成された第2の絶縁膜を含み、
前記シール材に囲まれる領域の内側に存在する前記対向電極上には、前記第2の絶縁膜は、少なくとも前記表示部と対向する位置には形成されておらず、
前記エレクトロクロミック膜は、前記第1の絶縁膜で囲まれた前記表示部にのみ形成されているエレクトロクロミック表示素子。
【請求項2】
前記第1の絶縁膜は、前記シール材に囲まれる領域内の、前記表示電極が形成されていない前記第1の基板上の全領域にも形成されている請求項1に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項3】
前記表示部の面積は、前記シール材に囲まれる領域の面積に対し、0%より大きく50%以下である請求項1または2に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項4】
前記表示電極、前記対向電極、及び、前記第1の絶縁膜は、スタティック駆動またはデューティ駆動により、形状が異なる表示部を独立に表示可能とするように、形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項5】
前記第1の絶縁膜は、厚さが500nm〜4μmの無機系または有機系の絶縁膜である請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項6】
前記電解液層は発光材料を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項7】
前記表示電極は、互いに電気的に独立し、異なる端子部を備え、それぞれに前記表示部が画定された複数の電極からなり、
前記対向電極は、前記複数の電極からなる表示電極に対向するベタ電極であり、
前記対向電極上には、前記シール材に囲まれる領域内において、前記表示電極の前記表示部と対向する位置以外の位置に、前記第2の絶縁膜が形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項8】
(a)第1の基板上に表示電極が形成され、前記表示電極上に第1の絶縁膜及びエレクトロクロミック膜が形成された表示用基板を作製する工程と、
(b)第2の基板上に対向電極が形成された対向基板を作製する工程と、
(c)前記表示用基板と前記対向基板の間に、シール材に囲まれる領域内に配置される電解液層を形成する工程と
を有し、
前記工程(a)は、
(a1)前記第1の基板上に前記表示電極を形成する工程と、
(a2)前記表示電極上の一部に前記第1の絶縁膜を形成する工程と、
(a3)前記工程(a2)の後に、前記第1の絶縁膜が形成されていない前記表示電極上の領域に、電解重合により、前記第1の絶縁膜で囲まれた前記表示部にのみ、前記エレクトロクロミック膜を形成する工程と
を含み、
前記シール材に囲まれる領域内に存在する前記表示電極上には、表示部を除いて、前記表示部を囲み、かつ、前記表示電極上から前記第1の基板上に、前記表示電極の縁部を覆うように前記第1の絶縁膜を形成し、前記表示部の全領域に前記エレクトロクロミック膜を形成し、
前記表示電極及び前記対向電極は、前記シール材に囲まれる領域の内側に存在する引き回し線、及び、前記シール材に囲まれる領域の外側に存在する取り出し端子部を含み、
前記第2の基板は、前記対向電極上に形成された第2の絶縁膜を含み、
前記シール材に囲まれる領域の内側に存在する前記対向電極上には、前記第2の絶縁膜は、少なくとも前記表示部と対向する位置には形成しない
エレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【請求項9】
前記工程(a2)において、前記第1の絶縁膜を、前記シール材に囲まれる領域内の、前記表示電極が形成されていない前記第1の基板上の全領域にも形成する請求項8に記載のエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【請求項10】
前記工程(a2)において、前記表示部の面積が、前記シール材に囲まれる領域の面積に対し、0%より大きく50%以下となるように、前記表示電極上に前記第1の絶縁膜を形成する請求項8または9に記載のエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【請求項11】
前記工程(a)及び(b)において、前記表示電極、前記対向電極、及び、前記第1の絶縁膜を、スタティック駆動またはデューティ駆動により、形状が異なる表示部を独立に表示可能とするように、形成する請求項8〜10のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【請求項12】
前記工程(a2)において、厚さが500nm〜4μmの無機系または有機系の前記第1の絶縁膜を形成する請求項8〜11のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【請求項13】
前記工程(c)において、発光材料を含む前記電解液層を形成する請求項8〜12のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【請求項14】
前記工程(a1)において、前記表示電極を、互いに電気的に独立し、異なる端子部を備え、それぞれに前記表示部が画定される複数の電極として形成し、
前記工程(b)において、前記対向電極を、前記複数の電極からなる表示電極に対向するベタ電極として形成し、前記シール材に囲まれる領域内の、前記表示電極の前記表示部と対向する位置以外の前記対向電極上に、前記第2の絶縁膜が形成された前記対向基板を作製する請求項8〜13のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック表示素子(electrochromic display; ECD)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧の印加による電気化学的可逆反応(電解酸化還元反応)による物質の色変化現象を利用した非発光型表示素子として、エレクトロクロミック表示素子が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
エレクトロクロミック技術を用いると、表示素子の反射率及び透過率を電気的に制御することができる(たとえば非特許文献1及び2参照)。エレクトロクロミック表示素子は、液晶表示素子や電気泳動型表示素子と、基本的には類似のセル構造を有しており、たとえば電極上にエレクトロクロミック材料層が形成され、電極間に電解質が封入される。その構造はエレクトロクロミック材料の相違等により多岐にわたる。
【0004】
エレクトロクロミック表示素子は電流駆動であるため、配線(引き回し線)の抵抗を低くすることが求められる。たとえばキャラクター表示を行う場合、表示電極の引き回し抵抗が高いと、遠くの画素ほど表示のコントラストが低い(発色濃度が低い)、駆動電圧が高くなる等の問題が生じる。
【0005】
引き回し抵抗を低くするためには、表示電極の引き回し線の幅を広くとればよいが、対向電極の引き回し線と干渉しない(重なり合わない)ように設計する必要があり、限界があった。すなわち、表示電極と対向電極の引き回し線がセルの平面上で交差すると、その部分も画素を構成し、誤表示をしてしまうという問題があった。
【0006】
比抵抗の低い材料で引き回し線を形成する方法も考えられるが、エレクトロクロミック表示素子においては、少なくとも片側基板の電極は、ITO等の透明導電材料を用いる必要があり、遠くの画素に対しても表示に影響がでないようにすることは困難であった。
【0007】
またエレクトロクロミック表示素子は、一般に、画素のエッジ(電極のエッジ)部分が濃く発色しやすいという性質がある。このため、特にキャラクター表示を行ったときに表示ムラが観察され、表示品位が低くなるという問題があった。殊に、表示面積の広い画素でムラが観察されやすい。更に、引き回し線が視認される場合がある。
【0008】
図6は、従来のエレクトロクロミック表示素子の表示の一例を示す写真である。エレクトロクロミック技術を用いると、たとえば透明電極をパターニングすることで、様々な形状の表示を実現することができる。しかし、本写真に示す素子の表示においては、表示ムラや引き回し線が認められる。
【0009】
なお、特許文献1記載のエレクトロクロミック表示素子は、製造工程が複雑である等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平1−28927号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「エレクトロクロミックディスプレイ」産業図書、馬場宜良他著
【非特許文献2】「電子ペーパーの各種表示方式と実用化に向けた課題と対応策」技術情報協会、第7章、小林範久著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高品位の表示を行うことのできるエレクトロクロミック表示素子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一観点によると、第1の基板上に形成された表示電極、前記表示電極上の一部に形成された第1の絶縁膜、及び、前記第1の絶縁膜が形成されていない前記表示電極上の領域に形成されたエレクトロクロミック膜を備える表示用基板と、第2の基板上に形成された対向電極を備え、前記表示用基板に対向して配置される対向基板と、前記表示用基板と前記対向基板の間の、シール材に囲まれる領域内に配置される電解液層とを含み、前記シール材に囲まれる領域内に存在する前記表示電極上には、表示部を除いて前記第1の絶縁膜が形成され、前記表示部の全領域に前記エレクトロクロミック膜が形成され、前記第1の絶縁膜は、前記表示部を囲むように形成され、かつ、前記表示電極上から前記第1の基板上に、前記表示電極の縁部を覆うように形成され、前記表示電極及び前記対向電極は、前記シール材に囲まれる領域の内側に存在する引き回し線、及び、前記シール材に囲まれる領域の外側に存在する取り出し端子部を含み、前記第2の基板は、前記対向電極上に形成された第2の絶縁膜を含み、前記シール材に囲まれる領域の内側に存在する前記対向電極上には、前記第2の絶縁膜は、少なくとも前記表示部と対向する位置には形成されておらず、前記エレクトロクロミック膜は、前記第1の絶縁膜で囲まれた前記表示部にのみ形成されているエレクトロクロミック表示素子が提供される。
【0014】
また、本発明の他の観点によると、(a)第1の基板上に表示電極が形成され、前記表示電極上に第1の絶縁膜及びエレクトロクロミック膜が形成された表示用基板を作製する工程と、(b)第2の基板上に対向電極が形成された対向基板を作製する工程と、(c)前記表示用基板と前記対向基板の間に、シール材に囲まれる領域内に配置される電解液層を形成する工程とを有し、前記工程(a)は、(a1)前記第1の基板上に前記表示電極を形成する工程と、(a2)前記表示電極上の一部に前記第1の絶縁膜を形成する工程と、(a3)前記工程(a2)の後に、前記第1の絶縁膜が形成されていない前記表示電極上の領域に、電解重合により、前記第1の絶縁膜で囲まれた前記表示部にのみ、前記エレクトロクロミック膜を形成する工程とを含み、前記シール材に囲まれる領域内に存在する前記表示電極上には、表示部を除いて、前記表示部を囲み、かつ、前記表示電極上から前記第1の基板上に、前記表示電極の縁部を覆うように前記第1の絶縁膜を形成し、前記表示部の全領域に前記エレクトロクロミック膜を形成し、前記表示電極及び前記対向電極は、前記シール材に囲まれる領域の内側に存在する引き回し線、及び、前記シール材に囲まれる領域の外側に存在する取り出し端子部を含み、前記第2の基板は、前記対向電極上に形成された第2の絶縁膜を含み、前記シール材に囲まれる領域の内側に存在する前記対向電極上には、前記第2の絶縁膜は、少なくとも前記表示部と対向する位置には形成しないエレクトロクロミック表示素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高品位の表示を行うことが可能なエレクトロクロミック表示素子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1A図1Cは、第1の実施例によるエレクトロクロミック表示素子の製造方法を示す概略的な断面図である。
図2図2Aは、表示電極53aの電極パターン、及び、表示電極53a上におけるSiO膜54a形成パターンを示す概略的な平面図であり、図2Bは、対向電極53bの電極パターンを示す概略的な平面図である。
図3図3は、第1の実施例によるエレクトロクロミック表示素子の表示部分の一部の外観写真である。
図4図4Aは、表示電極53aの電極パターン、及び、表示電極53a上における有機絶縁膜形成パターンを示す概略的な平面図であり、図4Bは、対向電極53bの電極パターンを示す概略的な平面図である。
図5図5は、第2の実施例によるエレクトロクロミック表示素子の表示部分の外観写真である。
図6図6は、従来のエレクトロクロミック表示素子の表示の一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1A図1Cは、第1の実施例によるエレクトロクロミック表示素子の製造方法を示す概略的な断面図である。
【0018】
図1Aに示すように、一対のITO膜52a、52b付ガラス基板(透明基板)51a、51bを準備する。
【0019】
図1Bを参照する。ITO膜52a、52bをフォトリソ工程にてパターニングし、ガラス基板51a、51b上に、それぞれITO(透明導電材)で形成される表示電極53a、対向電極53bを形成する。
【0020】
たとえば後述するように引き回し線を太幅に形成することができるため、パターニングは、ITO膜52a、52bを多く残存させるようなパターンを形成して行うのが好ましい。また、基板間における引き回し線の重なり状態を考慮する必要はない。エッチングは、王水系混酸の水溶液を用いたウェットエッチにて実施した。たとえば第二酸化鉄を、エッチャントとして用いることもできる。レーザを使用し、ITO膜52a、52bをアブレーションして除去することで、パターニングを行ってもよい。パターニングにおいては、電極53a、53bの各々におけるITO間の距離を、おおむね数十μmから数百μmとする。実施例においては、最も狭い部分のITO間距離を100μmとした。
【0021】
なお、実施例においては、透明基板51a、51b上に透明電極53a、53bを形成するが、基板51a、51bの一方は不透明基板でもよく、その上に形成される電極も不透明電極とすることができる。不透明電極を形成する材料として、銀合金、金、銅、アルミニウム、ニッケル、モリブデン等をあげることができる。また、ITO以外の透明導電性材料を使用して透明電極53a、53bを形成することも可能である。
【0022】
続いて、表示電極53a上の一部を含む領域に、絶縁膜(透明絶縁膜)として、厚さ3000Å〜4000ÅのSiO膜54aを形成する。SiO膜54aの成膜はマグネトロンスパッタで行い、リフトオフ法でパターン形成をした。膜厚はこれに限られない。表示電極53a上に形成する絶縁膜の厚さは、数百nm〜数μm、たとえば500nm〜4μmとすることができる。また、成膜方法もスパッタに限定されない。パターン形成は、簡易的には、所定形状の開口部を有するSUSマスクを用いて行ってもよい。フォトリソ工程にてパターニングを行うことも可能である。この場合は、ITO電極53aにダメージを与えないウェットエッチング条件、もしくはドライエッチング条件を用いる。
【0023】
SiO膜54aは、表示電極53aが形成されていないガラス基板51a上の領域、少なくとも製造後のエレクトロクロミック表示素子のシールに囲まれた表示エリア内について、ガラス基板51a上の表示電極53a不形成領域全域にも形成されることが望ましい。なお、表示電極53aの取り出し端子部にはSiO膜54aが形成されないように、パターン形成を行った。
【0024】
次に、剥き出しになっている表示電極53a上(製造後のエレクトロクロミック表示素子においてシールに囲まれる表示エリアとなる領域につき、表示電極53a上にSiO膜54aが形成されておらず、電極53aが剥き出しになっている部分)に、電解重合により、エレクトロクロミック膜55aを形成する。具体的には、表示電極53aを作用極とし、対極に白金線、参照電極にAg/Agを使用した3極セルを用い、モノマーの3,4−エチレンジオキシチオフェンを20mM、支持塩として過塩素酸リチウムを100mM含むアセトニトリル溶液中で、表示電極53aに+0.94Vを30秒間印加することで、エレクトロクロミック膜55aを形成した。
【0025】
エレクトロクロミック膜55aは、エレクトロクロミック材料(電圧が印加されると電気化学的な酸化または還元反応を起こし、それにより発色または消色等の変色を生じる材料)を用いて形成される。エレクトロクロミック膜55aを形成するエレクトロクロミック化合物材料は、電気化学的な酸化還元反応によって可逆的な色変化を示す化合物であれば、特に制限されない。たとえば、ジメチルテレフタレート、4,4’−ビフェニルヂカルボン酸ヂエチルエステル、ジアセチルベンゼン(1,4−ジアセチルベンゼン等)、ビオロゲン(N,N’−ジメチルビオロゲン、1,4−ジヘプチルビオロゲン等)、導電性高分子(ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアニリン等)、金属錯体(フェナントロリン錯体、ビピリジン錯体等)、トリフェニルアミン誘導体等、電気化学活性有機化合物の少なくとも一つを含むものを好適に用いることができる。また、無機系のエレクトロクロミック材料としては、たとえば水酸化イリジウム酸化チタン等の遷移金属酸化物、水酸化イリジウム等の金属水酸化物、プルシアンブルー等の混合原子価化合物を使用することができる。
【0026】
このようにして、ガラス基板51a上に表示電極53aを備え、少なくとも表示電極53a上の一部を含む領域に、SiO膜54aが形成され、SiO膜54aが形成されていない表示電極53a上にエレクトロクロミック膜55aが形成されている表示用基板50a、及び、ガラス基板51b上に対向電極53bを備える対向基板50bが作製される。
【0027】
図1Cを参照する。たとえば20μm〜数百μm径、一例として50μm径のギャップコントロール剤を、表示用基板50a、対向基板50bの一方上に、一例として、1個〜3個/mmとなるように散布する。ギャップコントロール剤の径に応じ、表示に影響を与えにくい散布量とすることが望ましい。なお、エレクトロクロミック表示素子の場合、多少ギャップムラがあっても表示への影響は少ないため、ギャップコントロール剤の散布量の重要性は高くない。また実施例においては、ギャップコントロール剤を用いたギャップコントロールを行ったが、リブなどを用いてギャップコントロールを行うことも可能である。
【0028】
表示用基板50a、対向基板50bの他方上に、メインシールパターンを形成した。実施例では、紫外線+熱硬化タイプのシール材57を用いた。シール材57として、光硬化タイプ、または熱硬化タイプを使用してもよい。なお、ギャップコントロール剤の散布とメインシールパターンの形成は同一基板側に行ってもよい。
【0029】
次に、電解液を表示用基板50a、対向基板50b間に封入した。
【0030】
実施例では、ODF工法を用いた。表示用基板50a、対向基板50bの片側基板上に、電解液を適量滴下する。滴下方法として、ディスペンサーやインクジェットを含む各種印刷方式が適用できる。ここではディスペンサーを用いて、電解液を適量滴下した。なお、前述のシール材は、用いる電解液に耐えるシール材料(腐食されないシール材)であることが好ましい。
【0031】
真空中で、表示用基板50aと対向基板50bの重ね合わせを行った。大気中、もしくは窒素雰囲気中で行ってもよい。
【0032】
紫外線を、たとえば21J/cmのエネルギ密度でシール材57に照射し、シール材57を硬化した。なお、紫外線がシール部のみに照射されるように、SUSマスクを使用した。
【0033】
電解液は、支持電解質、溶媒等により構成される。
【0034】
支持電解質は、エレクトロクロミック材料の酸化還元反応等を促進するものであれば限定されず、たとえばリチウム塩(LiCl、LiBr、LiI、LiBF、LiClO等)、カリウム塩(KCl、KBr、KI等)、ナトリウム塩(NaCl、NaBr、NaI等)を好適に用いることができる。支持電解質の濃度は、たとえば10mM以上1M以下であることが好ましいが、これも特に限定されるものではない。
【0035】
溶媒は、エレクトロクロミック膜に膨潤できるものであれば限定されない。水や炭酸プロピレン等の極性溶媒、極性のない有機溶媒、更には、イオン性液体、イオン導電性高分子、高分子電解質等を使用することが可能である。具体的には、炭酸プロピレン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸等を用いることができる。
【0036】
図1Cは、第1の実施例によるエレクトロクロミック表示素子の概略的な断面図である。第1の実施例によるエレクトロクロミック表示素子は、略平行に離間して対向配置された表示用基板50a、対向基板50b、及び、両基板50a、50b間に配置された電解液層56を含む。
【0037】
表示用基板50aは、ガラス基板51a、ガラス基板51a上に形成された表示電極53a、少なくとも表示電極53a上の一部を含む領域に形成されたSiO膜(絶縁膜)54a、及び、SiO膜54aが形成されていない表示電極53a上の領域に形成されたエレクトロクロミック膜55aを含む。実施例においては、SiO膜54aは、シール材57に囲まれた領域内の、表示電極53aが形成されていないガラス基板51a上の全領域にも形成されている。
【0038】
対向基板50bは、ガラス基板51b、及びガラス基板51b上に形成された対向電極53bを含む。
【0039】
電解液層56は、表示用基板50aと対向基板50bとの間の、シール材57に囲まれた領域の内側に画定される。両基板50a、50b(表示電極53a、対向電極53b)間に直流電圧を印加することで、エレクトロクロミック膜55aが発色する。
【0040】
図2Aは、表示電極53aの電極パターン、及び、表示電極53a上におけるSiO膜54a形成パターンを示す概略的な平面図である。本図においては、表示電極53a上のSiO膜54a形成範囲に斜線を付して示した。また、シール材57の形成位置を一点鎖線で表した。
【0041】
表示電極53aは、互いに電気的に独立(隔離)し、異なる取り出し端子部を備える複数の表示電極53a〜53a、53a〜53a15で構成される。表示電極53a〜53a、53a〜53a15上には、それぞれ表示部59a〜59a、59a〜59a15が画定される。表示部59a〜59a、59a〜59a15は、実際に行いたい表示の形状に対応する形状、実施例においては同形状に形成されている。表示電極53aは、表示部の形状が相互に異なる複数の表示電極を含む。
【0042】
各表示電極53a〜53a、53a〜53a15は、シール材57に囲まれた領域の外側に存在する取り出し端子部と、シール材57に囲まれた領域の内側に存在する電極部分とを有し、シール材57に囲まれた領域の内側に存在する電極部分は、表示部59a〜59a、59a〜59a15に対応する電極領域とそれ以外の引き回し線領域とからなる。
【0043】
表示電極53a〜53a、53a〜53a15上には、それぞれ表示部59a〜59a、59a〜59a15が、7セグメント表示可能に画定されている。第1の実施例によるエレクトロクロミック表示素子においては、2つの数字のセグメント表示が行われる。
【0044】
SiO膜54aは、取り出し端子部を除く、表示部59a〜59a、59a〜59a15以外の表示電極53a〜53a、53a〜53a15上に形成されている。すなわち、シール材57に囲まれた領域の内側に存在する表示電極53a〜53a、53a〜53a15上には、表示部59a〜59a、59a〜59a15を除いてSiO膜54aが形成されている。換言すれば、表示部59a〜59a、59a〜59a15は、シール材57に囲まれた領域の内部において、SiO膜54aの不形成領域として、表示電極53a〜53a、53a〜53a15上に規定されている。SiO膜54aが形成された領域が引き回し線領域である。
【0045】
なお、エレクトロクロミック膜55aは、シール材57に囲まれた領域の内部において、SiO膜54aが形成されていない表示電極53a〜53a、53a〜53a15上の全領域、かつ、当該領域にのみ形成されている。このため、表示部59a〜59a、59a〜59a15は、シール材57に囲まれた領域の内部において、エレクトロクロミック膜55aの形成領域として、表示電極53a〜53a、53a〜53a15上に規定されている。
【0046】
図2Bは、対向電極53bの電極パターンを示す概略的な平面図である。対向電極53bは、シール材57に囲まれた領域の外側に存在する取り出し端子部を備えるベタ電極である。平面視上(表示用基板50a及び対向基板50bの法線方向から見たとき)、表示電極53a〜53a、53a〜53a15の表示部59a〜59a、59a〜59a15と対向する位置には、対向電極53bのベタ電極部分が存在する。対向電極53b上には、絶縁膜は形成されていない。
【0047】
なお、シール材57に囲まれた領域の内部において、対向電極53b上にもSiO膜等の絶縁膜を形成することができる。その場合、平面視上、表示電極53a〜53a、53a〜53a15の表示部59a〜59a、59a〜59a15と対向する位置には、絶縁膜を形成しない。したがって、一例として、シール材57に囲まれた領域内部において、表示部59a〜59a、59a〜59a15と対向する位置以外の対向電極53b上のすべての位置に絶縁膜を形成することが可能である。更に、絶縁膜は、シール材57に囲まれた領域内の、対向電極53bが形成されていないガラス基板51b上の領域に形成されてもよい。
【0048】
第1の実施例によるエレクトロクロミック表示素子においては、表示用基板50a、対向基板50b間に直流電圧を印加し、エレクトロクロミック膜55aの発色により、2つの数字のセグメント表示を行う。スタティック駆動により、表示部59a〜59a、59a〜59a15を独立に表示可能である。表示は表示用基板50a側から観察される。
【0049】
図3は、第1の実施例によるエレクトロクロミック表示素子の表示部分の一部の外観写真である。表示電極53a〜53a、53a〜53a15と対向電極53bとの間に直流電圧を印加した。表示部59a〜59a、59a〜59a15(エレクトロクロミック膜55aが形成され、SiO膜54aが形成されていない表示電極53a〜53a、53a〜53a15上の領域)で発色し、その他の領域(SiO膜54aが形成されている領域)では発色していない。引き回し線はまったく観察されない。また、エッジ部分を含め、表示部59a〜59a、59a〜59a15内における発色濃度のムラは見られず、均一な発色状態が認められる。
【0050】
第1の実施例による表示素子は、電解重合により、表示電極53a上にエレクトロクロミック膜55aを形成した界面型のエレクトロクロミック表示素子である。SiO膜54aの形成領域と不形成領域とに対応して、非表示部と表示部とが規定され、高品位の表示を行うことができる。界面型であるため、バルク型の素子よりも、表示の消去が容易である。また、電解重合でエレクトロクロミック膜55aを形成するため、たとえば蒸着によりエレクトロクロミック膜を成膜し、パターニングを行う場合に比べ、真空プロセスが不要で製造が容易であるばかりでなく、エレクトロクロミック材料の使用効率が高い。電極53aとエレクトロクロミック膜55aの密着性も高い。
【0051】
次に、第2の実施例によるエレクトロクロミック表示素子について説明する。第1の実施例においては絶縁膜としてSiO膜(無機系の絶縁膜)を使用したが、第2の実施例では有機系の絶縁膜(透明絶縁膜)を用いる。ここではアクリル系絶縁材料を使用して、絶縁膜を形成した。
【0052】
まず、2000rpm、30秒の条件でスピンコートを行うことにより、厚さ1.8μmの有機絶縁膜を形成し、その後ホットプレートでのプリベーク(100℃、120秒)、露光(照度5.79mW/cmで5秒。5.79×5=28.95mJ/cm)、現像(TMAH1%溶液にて60秒のシャワー現像)を行い、最後にポストベーク(220℃、30分)して絶縁膜パターンを得た。
【0053】
図4Aは、表示電極53aの電極パターン、及び、表示電極53a上における有機絶縁膜形成パターンを示す概略的な平面図であり、図4Bは、対向電極53bの電極パターンを示す概略的な平面図である。図2A及び図2Bと同様に、表示電極53a上の有機絶縁膜形成範囲に斜線を付して示し、シール材57の形成位置を一点鎖線で表した。
【0054】
表示電極53a〜53aと表示電極53a〜53a15の間に、表示電極53a〜53a、53a〜53a15と電気的に独立した表示電極53aが形成されており、表示電極53aは、「:」形状の表示部59aを備える。シール材57に囲まれた領域の内側において、表示部59a以外の電極53a上の領域には有機絶縁膜が形成され、表示部59aに対応する電極53a上の領域には、エレクトロクロミック膜が形成されている。シール材57に囲まれた領域の外側の電極53a上には、有機絶縁膜の形成されていない取り出し端子部が存在する。平面視上、表示電極53a〜53a15の表示部59a〜59a15には、対向電極53bのベタ電極部分が対向する。
【0055】
第2の実施例は、絶縁膜材料及び絶縁膜形成工程において、第1の実施例と異なる。また、電極パターンが相違し、7セグメントによる数字、「:」、7セグメントによる数字からなる表示を行う。その他は、第1の実施例と同様である。
【0056】
図5は、第2の実施例によるエレクトロクロミック表示素子の表示部分の外観写真である。表示電極53a〜53a15と対向電極53bとの間に直流電圧を印加した。第1の実施例と同様に、有機絶縁膜が形成されている領域には発色が見られず、エレクトロクロミック膜が形成されている表示部で発色が見られる。引き回し線はまったく観察されない。また、エッジ部分を含め、表示部内における発色濃度のムラはほとんど見られない。なお、表示部59a11の一部に見られる表示潰れはエアによるものである。
【0057】
第2の実施例によるエレクトロクロミック表示素子は、有機絶縁膜の形成領域と不形成領域とに対応して、非表示部と表示部とが規定され、高品位の表示が可能な表示素子である。
【0058】
なお、第1の実施例のSiO膜も第2の実施例の有機絶縁膜も、メインシール57が形成される位置のガラス基板51a、51b上に存在していてもよい。密着性などに問題はみられなかった。
【0059】
第1及び第2の実施例によるエレクトロクロミック表示素子によると、たとえば画素のエッジ部分での発色ムラや表示のにじみが低減された、高品位の表示を行うことができる。また、たとえば表示電極の引き回し線上に絶縁膜を形成するので、引き回し線の幅に制限がなく、引き回し線を太幅に形成することができる。対向基板上の電極パターンに対する干渉(重なり合い)を考慮して大きく引き回したり、線幅を補足する必要がない。このため、たとえば取り出し端子部から離れた位置の画素(表示部)に対する場合であっても、十分な電流値を与えることができ、画素やラインごとの駆動電圧のムラ、発色濃度のムラを低減することができる。更に、引き回し抵抗を低くすることができるため、大きな表示素子でなければ、表示電極、対向電極の双方をITO電極などの透明電極とすることが可能である。したがって、反射型に限らず、透過型ディスプレイ、透反ディスプレイの場合にも好適な表示を実現することができる。
【0060】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
たとえば、実施例においては、エレクトロクロミック表示のみを行う表示素子としたが、電解液中にエレクトロケミカルルミネセンス材料(発光材料)を加え、直流駆動でエレクトロクロミック材料の発色・消色を制御し、交流駆動でエレクトロケミカルルミネセンス材料の発光・消光を制御する、いわゆるデュアルモードの表示素子としてもよい。エレクトロケミカルルミネセンス材料は、電圧の印加により、電気化学的な酸化還元反応を生じ発光する材料である。
【0062】
また、図2及び図4に示す例は、スタティック駆動により、形状が異なる表示部を独立に表示可能に、表示電極、対向電極、及び絶縁膜が形成された表示素子であったが、デューティ駆動(単純マトリクス駆動)で、形状が異なる表示部を独立に表示可能とするように、表示電極、対向電極、及び絶縁膜を形成してもよい。
【0063】
なお、シール材57に囲まれた領域の内部において、表示部の面積は、シール材57に囲まれた領域の面積に対し、0%より大きく50%以下とすることができる。具体的には、たとえば表示部59a〜59a15の面積の総和は、シール材57にて囲まれた領域内の面積に対して、30%〜40%とされる。セグメント表示、キャラクター表示等の非ドットマトリクス表示の電極パターンにおいて、絶縁膜が形成されない、表示を行う領域の面積の総和を、シール材57に囲まれた領域の面積に対し10%〜50%とすることで、非ドットマトリクス表示の表示パターンを良好なコントラストで表示し、表示品位を高めることができる。
【0064】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0065】
たとえば単純マトリクスディスプレイ製品全般に利用することができる。また、低消費電力、広い視角特性、低価格等が求められるディスプレイ製品全般に利用可能である。省電力かつ頻繁な書き換えを必要としない情報機器(パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)の表示面等、反射型、透過型、投射型ディスプレイ全般に利用することができる。更に、磁気ないし電気記録されたカードの情報表示面、児童用玩具、電子ペーパー、家電用表示機器、車載用表示機器等に利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
50a 表示用基板
50b 対向基板
51a、51b ガラス基板
52a、52b ITO膜
53a、53a〜53a15 表示電極
53b 対向電極
54a SiO
55a エレクトロクロミック膜
56 電解液層
57 シール材
59a〜59a15 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6