(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249359
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】飛灰搬送装置及び飛灰搬送方法
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20171211BHJP
B65G 33/08 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
B09B5/00 NZAB
B65G33/08
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-101546(P2013-101546)
(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公開番号】特開2014-221454(P2014-221454A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2015年8月18日
【審判番号】不服2017-2742(P2017-2742/J1)
【審判請求日】2017年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117499
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 誠
(72)【発明者】
【氏名】北條 貴之
【合議体】
【審判長】
豊永 茂弘
【審判官】
中澤 登
【審判官】
山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−105883(JP,A)
【文献】
特開2003−117345(JP,A)
【文献】
特開2004−150683(JP,A)
【文献】
特開2003−285022(JP,A)
【文献】
特開平11−76991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
B65G33/00-33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潮解性が塩化カルシウムより低い水酸化カルシウムを、バグフィルタ前段の排ガス流路で塩化カルシウムを含有する飛灰に供給し、前記塩化カルシウムを含有する飛灰と前記水酸化カルシウムが混合された混合物における塩化カルシウムの割合を水酸化カルシウムの添加量を調整することで20重量%未満とする供給手段と、
前記供給手段により前記水酸化カルシウムが供給された前記混合物を、導入する際の導入温度以下の温度でスクリューコンベアにより搬送する飛灰搬送手段と、
を備える飛灰搬送装置。
【請求項2】
潮解性が塩化カルシウムより低い水酸化カルシウムを、バグフィルタ前段の排ガス流路で塩化カルシウムを含有する飛灰に供給し、前記塩化カルシウムを含有する飛灰と前記水酸化カルシウムが混合された混合物における塩化カルシウムの割合を水酸化カルシウムの添加量を調整することで20重量%未満とし、
前記混合物を、スクリューコンベアからなる飛灰搬送手段に導入する際の導入温度以下の温度で前記飛灰搬送手段により搬送する、飛灰搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛灰を搬送するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炉から排出された排ガス中の飛灰をバグフィルタで捕集し、捕集された飛灰をスクリューコンベアにより後段に搬送する設備が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−98264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したようにスクリューコンベアで飛灰を搬送する場合には、飛灰自身が有する吸湿特性によって、飛灰がスクリューコンベアのスクリューや、スクリュー及びその回転軸を収容する筐体の内壁に固着しやすい。このように飛灰がスクリューや筐体の内壁に固着すると、固着した飛灰がスクリューの回転を妨げ、スクリューコンベアによる飛灰の搬送に支障をきたす場合がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、飛灰の固着を抑止でき、飛灰を後段に良好に搬送できるスクリューコンベアを始めとした飛灰搬送装置及び飛灰搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、飛灰に多量に含まれる塩化カルシウムの潮解作用により飛灰が固着しやすくなることを見出し、本発明に至った。
【0007】
そこで、本発明による飛灰搬送装置は、潮解性が塩化カルシウムより低い低潮解性物質を飛灰に供給する供給手段と、供給手段により低潮解性物質が供給された飛灰を、導入する際の導入温度以下の温度で搬送する飛灰搬送手段と、を備える。
【0008】
また、本発明による飛灰搬送方法は、潮解性が塩化カルシウムより低い低潮解性物質を飛灰に供給し、低潮解性物質が供給された飛灰を、飛灰搬送手段に導入する際の導入温度以下の温度で飛灰搬送手段により搬送する。
【0009】
この飛灰搬送装置及び飛灰搬送方法では、飛灰に多量に含まれる塩化カルシウムより潮解性が低い低潮解性物質が飛灰に供給されるため、被搬送物に占める低潮解性物質の割合が多くなり、これにより被搬送物の潮解性が低減される。その結果、飛灰搬送手段における飛灰の固着が抑止され、飛灰を後段に良好に搬送することができる。また、飛灰を加熱することにより飛灰の潮解性の低下を図ることができるが、このような低潮解性物質の供給により被搬送物の潮解性を下げることができるため、飛灰に対する加熱を行う必要がない。
【0010】
ここで、上記飛灰搬送装置において、低潮解性物質が水酸化カルシウムであることが好ましい。この場合には、水酸化カルシウムが容易に入手できるため、飛灰の固着が低コストで抑止され、飛灰を後段に良好に搬送することができる。
【0011】
また、上記作用を好適に奏する飛灰搬送手段としては、具体的には、スクリューコンベアが挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、飛灰の固着を抑止でき、飛灰を後段に良好に搬送できる飛灰搬送装置及び飛灰搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る飛灰搬送装置を示す概略側面構成図である。
【
図2】塩化カルシウムの割合と粉末の付着率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による飛灰搬送方法を採用した飛灰搬送装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る飛灰搬送装置を示す概略側面構成図である。
【0015】
本実施形態の飛灰搬送装置100は、ロータリーキルン等の溶融炉からの飛灰を後段に搬送するためのものである。このような飛灰は、特に塩化カルシウムを多く含有し、吸湿しやすい特性を有している。
【0016】
飛灰搬送装置100は、溶融炉からの飛灰に低潮解性物質を供給する供給手段である供給装置1と、この低潮解性物質が供給された飛灰を捕集する集塵機としてのバグフィルタ11と、バグフィルタ11からの飛灰及び低潮解性物質を搬送する飛灰搬送手段であるスクリューコンベア15を備えている。
【0017】
供給装置1は、溶融炉からの排ガスがバグフィルタ11に流れる排ガス流路L1に対して設けられている。供給装置1は、溶融炉から排出された飛灰に、潮解性が塩化カルシウムより低い低潮解性物質を供給するための装置である。低潮解性物質としては、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、炭酸マグネシウム(MgCO
3)、炭酸カルシウム(CaCO
3)等が挙げられ、特に、容易に入手できる水酸化カルシウムを用いることが好適である。
【0018】
バグフィルタ11は、排ガス流路L1の下流側に配置されている。バグフィルタ11は、低潮解性物質が供給された飛灰をフィルタ12により捕集するためのものである。そして、バグフィルタ11は、フィルタ12の下流側に排ガス排出口13を備えると共に、フィルタ12の上流側の下部に飛灰及び低潮解性物質をスクリューコンベア15へ排出する排出口14を備えている。
【0019】
スクリューコンベア15は、その軸線が水平となるように設置され両端が閉塞された長尺ドラム状の胴部(筐体、ケーシング)2を備え、この胴部2内に内部空間5が画成されている。胴部2の一方の端部(図示右端部)の上側には、バグフィルタ11からの飛灰及び低潮解性物質を内部空間5に導入するための導入口6が開口され、他方の端部(図示左端部)の下側には、搬送した被搬送物を後段へ排出するための排出口7が開口されている。
【0020】
内部空間5には、回転体としての回転軸3及び送り羽根(スクリュー)4が胴部2と同軸に配設されている。回転軸3は、円筒状に構成されて胴部2の両端を貫通し、胴部2の外側に設けられた軸受8,8に回転可能に支持され、胴部2外に設置されたモータ9の駆動に従って回転する。
【0021】
送り羽根4は、回転軸周り(回転軸3の周囲)に螺旋状を成すように構成される。この送り羽根4は、その外周縁が胴部2の内周面に近接するように、回転軸3に取り付けられている。
【0022】
そして、スクリューコンベア15は、導入口6から導入された飛灰及び低潮解性物質を加熱することなく搬送する。換言すれば、スクリューコンベア15は、飛灰及び低潮解性物質を、スクリューコンベア15へ導入する際の温度である導入温度以下の温度で搬送する。
【0023】
このような構成を有する飛灰搬送装置100によれば、排ガス流路L1において、供給装置1により飛灰に低潮解性物質が供給され、この低潮解性物質が供給された飛灰はバグフィルタ11のフィルタ12により下流への進行が阻止され、飛灰が除去された排ガスは、排ガス排出口13から後段へ排出される。一方、低潮解性物質が供給された飛灰は、排出口14、導入口6を通してスクリューコンベア15の胴部2内の内部空間5に導入され、モータ9の回転に従い回転する回転軸3及び送り羽根4により、排出口7に向かって搬送される。
【0024】
ここで、飛灰には、飛灰に多量に含まれる塩化カルシウムより潮解性の低い低潮解性物質が供給されているため、被搬送物に占める低潮解性物質の割合が多くなり、これにより被搬送物の潮解性が低減されている。その結果、スクリューコンベア15の送り羽根4や胴部2の内壁における飛灰の固着が抑止され、固着した飛灰により送り羽根4の回転が妨げられることがない。したがって、飛灰搬送装置100によれば、飛灰を後段に良好に搬送することができる。
【0025】
また、飛灰を加熱することにより飛灰の潮解性の低下を図ることができるが、本実施形態のように低潮解性物質の供給により被搬送物の潮解性を下げることができるため、被搬送物に対する加熱を行う必要がない。
【0026】
また、低潮解性物質として水酸化カルシウムを用いた場合には、水酸化カルシウムが容易に入手できるため、スクリューコンベア15における飛灰の固着が低コストで抑止される。
【0027】
なお、本発明者は、被搬送物を構成する塩化カルシウムと低潮解性物質の混合比と、飛灰の固着しやすさとの関連を評価するために、以下に示す付着性評価実験を行った。
【0028】
この付着性評価実験では、塩化カルシウムと、低潮解性物質としての水酸化カルシウムとを混合した混合粉末を用意し、この混合粉末を、漏斗を用いて時計皿に自然堆積させた。漏斗と時計皿との間隔は50mmとした。次に、混合粉末を、室温で相対湿度90±5%に保たれた密閉容器の内部に1時間置き、混合粉末に吸湿させた。その後、時計皿を密閉容器の外に取り出し、90°傾斜させて、時計皿に付着した粉末の質量の、吸湿後の混合粉末全体の質量に対する割合を付着率として求めた。以上の実験を、混合粉末における塩化カルシウムの割合(重量パーセント)を0%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、100%と変化させて行った。
【0029】
図2に付着性評価実験の結果を示す。
図2は、塩化カルシウムの割合と混合粉末の付着率との関係を示すグラフである。塩化カルシウムの割合が20重量%以上の場合には、付着率がほぼ100重量%であり、混合粉末がほぼ全て時計皿に付着していることが分かる。これに対し、塩化カルシウムの割合が20重量%を下回ると付着率が下がっており、塩化カルシウムの割合が約15重量%以下の場合には、付着率は25重量%程度以下となっていて、混合粉末の大半が時計皿に付着せずに落下していることが分かる。この付着性評価実験の結果は、飛灰搬送装置の実機における固着性評価実験の結果とほぼ一致している。すなわち、飛灰搬送装置の実機においても、低潮解性物質を飛灰に供給することで、被搬送物における塩化カルシウムの割合が20重量%を下回ると、スクリューコンベアにおける飛灰の固着を抑止できる。
【0030】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、溶融炉からの溶融飛灰を対象としているが、燃焼炉からの燃焼飛灰を対象としてもよい。
【0031】
また、特に好適であるとして、飛灰搬送手段をスクリューコンベア15としているが、他の飛灰搬送手段に対しても適用可能である。
【0032】
さらに、上記実施形態では、特に好適であるとして、供給装置1により機械的に低潮解性物質を供給しているが、作業者が低潮解性物質を供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…供給装置(供給手段)、15…スクリューコンベア(飛灰搬送手段)、100…飛灰搬送装置。