(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249368
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20171211BHJP
H01L 31/0747 20120101ALI20171211BHJP
【FI】
H01L31/04 570
H01L31/06 455
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-522337(P2014-522337)
(86)(22)【出願日】2012年6月29日
(86)【国際出願番号】JP2012066772
(87)【国際公開番号】WO2014002269
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2015年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 治寿
(72)【発明者】
【氏名】齋田 敦
【審査官】
山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−141264(JP,A)
【文献】
特開2012−015269(JP,A)
【文献】
特開2009−043801(JP,A)
【文献】
特開2006−270043(JP,A)
【文献】
特開2008−053681(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/122875(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池と、
前記複数の太陽電池間を接続する接続部材と、
前記太陽電池と前記接続部材とを接続し熱硬化性樹脂材料を含む接着層と、
を備え、
前記接着層は、前記接着層の一方の端に設けられる前記接着層の第1端部と、前記接着層の他方の端部に設けられる前記接着層の第2端部と、前記接着層の前記第1端部と前記接着層の前記第2端部との間に設けられる前記接着層の中央部とを備え、
前記接着層の前記中央部における前記接続部材の長手方向に垂直な断面の幅は、前記接着層の前記第1端部の幅および前記接着層の前記第2端部の幅より狭く、
前記接着層の前記第1端部と前記接着層の前記第2端部とにおいて前記接着層と前記接続部材との接触長さが、前記接着層の前記中央部において前記接着層と前記接続部材との接触長さより長い接着部分を有し、前記接触長さは、前記接続部材の長手方向に垂直な断面において接着層と接続部材とが接触している長さであり、前記中央部では、前記接続部材の側面が前記接着層に覆われておらず、前記端部では、前記接続部材の側面が前記接着層に部分的に覆われている太陽電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池モジュールであって、
前記接着部分において、前記接続部材の側面と前記接着層とが接触するフィレットを有する、太陽電池モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池における前記接続部材を引き出す側の前記太陽電池の端部において前記太陽電池の中央部よりも前記接着層と前記接続部材との接触長さが長い接着部分を有する、太陽電池モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の太陽電池モジュールであって、
前記熱硬化性樹脂材料は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂のうちの1つを含む、太陽電池モジュール。
【請求項5】
請求項1に記載の太陽電池モジュールであって、
前記接着層は、前記熱硬化性樹脂材料の中に分散した導電性粒子を含む、太陽電池モジュール。
【請求項6】
複数の太陽電池に接着層となり、熱硬化性樹脂材料を含む接着剤を塗布する第1の工程と、
前記接着層を介して前記複数の太陽電池間を接続部材によって接続する第2の工程と、
を備え、
前記接着層は、前記接着層の一方の端に設けられる前記接着層の第1端部と、前記接着層の他方の端部に設けられる前記接着層の第2端部と、前記接着層の前記第1端部と前記接着層の前記第2端部との間に設けられる前記接着層の中央部とを備え、
前記接着層の前記中央部における前記接続部材の長手方向に垂直な断面の幅は、前記接着層の前記第1端部の幅および前記接着層の前記第2端部の幅より狭く、
前記接着層の前記第1端部と前記接着層の前記第2端部とにおいて前記接着層と前記接続部材との接触長さが、前記接着層の前記中央部において前記接着層と前記接続部材との接触長さより長い接着部分を設け、前記接触長さは、前記接続部材の長手方向に垂直な断面において接着層と接続部材とが接触している長さであり、前記中央部では、前記接続部材の側面が前記接着層に覆われ、前記端部では、前記接続部材の側面が前記接着層に部分的に覆われるように前記接着層を設ける太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第1の工程では、前記接続部材の長手方向に沿って前記太陽電池の中央部よりも端部において前記接着剤をより多く塗布する、太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュール100は、
図7に示すように、複数の太陽電池セル10に設けられた集電極12を互いに接続部材14で接続した構成を有する。接続部材14は、導電性粒子を分散させた導電性接着フィルムによって集電極12と導通するように接着される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−108985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、太陽電池セル10と接続部材14との接着力が低下すると、接続部材14が剥がれてしまうおそれがある。一方、接着力を強めるために接着剤の量を多くし過ぎると、接続部材14から接着剤がはみ出し、はみ出した接着剤によって太陽電池セル10が遮光されて変換効率が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、複数の太陽電池と、接着層を介して複数の太陽電池間を接続する接続部材と、を備え、接続部材の長手方向に沿って太陽電池の中央部よりも端部において接着層と接続部材との接触長さが長い接着部分を有する、太陽電池モジュールである。
【0006】
本発明の別の態様は、複数の太陽電池に接着層となる接着剤を塗布する第1の工程と、接着層を介して複数の太陽電池間を接続部材によって接続する第2の工程と、を備え、接続部材の長手方向に沿って太陽電池の中央部よりも端部において接着層と接続部材との接触長さが長い接着部分を設ける、太陽電池モジュールの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、太陽電池モジュールにおける接続部材との接触を高めると共に、遮光損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態における太陽電池モジュールを示す平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態における太陽電池モジュールを示す断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態における太陽電池モジュールを示す断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態における表面に凹凸が設けられた接合部材を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態における太陽電池モジュールにおける接着層を示す平面図である。
【
図6】本発明の実施の形態における太陽電池モジュールを示す断面図である。
【
図7】従来の太陽電池モジュールを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態における太陽電池モジュール200は、
図1の平面図並びに
図2及び
図3の断面図に示すように、太陽電池セル202、接続部材204及び接着層206を含んで構成される。
図1は、太陽電池モジュール200を受光面からみた平面図である。
図2は、
図1のラインA−Aに沿った断面図であり、
図3は、
図1のラインB−Bに沿った断面図である。
【0010】
なお、「受光面」とは、太陽電池セル202の主面の一つであり、外部からの光が主に入射する面を意味する。例えば、太陽電池セル202に入射する光のうち50%〜100%が受光面側から入射する。「裏面」とは、太陽電池セル202の主面の一つであり、受光面と反対側の面を意味する。
【0011】
太陽電池セル202は、太陽光等の光を受光することでキャリア(電子及び正孔)を生成する光電変換部20aと、光電変換部20aの受光面上に設けられた第1電極20bと、光電変換部20aの裏面上に設けられた第2電極20cとを備える。第1電極20bは、
図1に示すように、接続部材204の延設方向と交差するように櫛状に設けられたフィンガー及びそれを接続するバスバーを備える集電極である。フィンガーは、光電変換部20aから電力を集電する細線状の電極である。バスバーは、複数のフィンガーを接続する電極であり、接続部材204に被われるように所定の間隔をあけて互いに平行に配置される。フィンガー及びバスバーは、例えば、バインダー樹脂中に銀(Ag)等の導電性フィラーが分散した導電性ペーストを透明導電層上に所望のパターンでスクリーン印刷して形成される。第2電極20cは、光電変換部20aの裏面側に第1電極20bと同様に設けられる。太陽電池セル202では、光電変換部20aで生成されたキャリアが第1電極20b及び第2電極20cにより収集される。
【0012】
なお、太陽電池セル202では、裏面は受光面に比べて光の入射が少ないので、受光面の第1電極20bに比べて裏面の第2電極20cの面積を広くしてもよい。例えば、第2電極20cは第1電極20bに比べてフィンガーの本数が多くしてもよい。また、太陽電池セル202の裏面側からの光の入射がない場合、光電変換部20aの裏面の略全面上に銀(Ag)薄膜等の金属膜を形成して第2電極20cとしてもよい。
【0013】
光電変換部20aは、例えば、結晶系シリコン、ガリウム砒素(GaAs)又はインジウム燐(InP)等の半導体材料からなる基板を有する。光電変換部20aの構造は、特に限定されないが、本実施形態では、n型単結晶シリコン基板と非晶質シリコンのヘテロ接合を有する構造であるとして説明する。光電変換部20aは、例えば、n型単結晶シリコン基板の受光面上に、i型非晶質シリコン層、ボロン(B)等がドープされたp型非晶質シリコン層、酸化インジウム等の透光性導電酸化物からなる透明導電層の順番で積層されている。また、基板の裏面上に、i型非晶質シリコン層、リン(P)等がドープされたn型非晶質シリコン層、透明導電層の順番で積層されている。
【0014】
太陽電池モジュール200において隣り合う太陽電池セル202間は導電性の接続部材204によって接続される。接続部材204としては、例えば、銅等の金属箔を用いることができる。接続部材204は、太陽電池セル202の第1電極20bと、隣り合う太陽電池セル202の第2電極20cとを接続する。接続部材204は、例えば、一方の太陽電池セル202の第1電極20bのバスバー及びフィンガーと他方の太陽電池セル202の第2電極20cのバスバー及びフィンガーとに接着層206により接着される。
【0015】
接着層206は、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、ウレタン樹脂等の接着性の熱硬化性樹脂材料に導電性粒子を分散させた導電性接着フィルムや導電性接着ペーストとすることができる。導電性接着フィルムは、太陽電池セル202の面内方向に導電性が高く、膜厚方向に導電性が低い異方導電性接着剤としてもよい。また、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、ウレタン樹脂等の接着性の熱硬化型樹脂材料に導電性粒子を含まない非導電性ペーストを用いてもよい。この場合、
図4に示すように、第1電極20b及び第2電極20c並びに接続部材204のいずれかに凹凸204aを設けて、凹凸204aを介して第1電極20b及び第2電極20cと接続部材204とが電気的に接続されるようにしてもよい。
【0016】
接続部材204は、太陽電池セル202の厚さ分だけ段差が設けられた屈曲部を有する。屈曲部は、隣り合う太陽電池セル202が同一平面内に配置されるように第1電極20bと第2電極20cとを接続するために太陽電池セル202の厚さ分だけ構造的な逃げが形成されるように設けられる。
【0017】
太陽電池モジュール200は、太陽電池セル202の受光面及び裏面を保護するために保護部材(図示しない)で封止されてもよい。保護部材は、例えば、ガラス板、樹脂板、樹脂フィルム等の透光性を有する部材を用いることができる。なお、太陽電池セル202の受光面側に設けられる保護部材は、太陽電池セル202において光電変換に利用される波長帯域の光を透過する透明な部材とすることが好ましい。太陽電池セル202の裏面側からの光の入射がない場合、裏面側に設けられる保護部材は、不透明な板体やフィルムとしてもよい。この場合、保護部材としては、例えば、アルミ箔等を内部に有する樹脂フィルム等の積層フィルムを用いてもよい。保護部材は、充填材を用いて太陽電池セル202の受光面及び裏面にそれぞれ接着される。
【0018】
本実施の形態における太陽電池モジュール200では、接続部材204の長手方向に沿って太陽電池セル202の端部と中央部とにおいて接着層206と接続部材204との接触長さを異ならせる。すなわち、
図2及び
図3に示すように、接続部材204の長手方向に沿って太陽電池セル202の端部において中央部よりも接着層206と接続部材204との接触長さが長い接着部分を有するようにする。
【0019】
ここで、接着層206と接続部材204との接触長さとは、
図2及び
図3に示すように、接続部材204の長手方向に垂直な断面において接着層206と接続部材204とが接触している長さを意味する。また、太陽電池セル202の端部及び中央部は、互いの相対的な位置関係を示し、端部は中央部よりも太陽電池セル202の端(エッジ)に近い領域を意味する。すなわち、本実施の形態では、接続部材204のある領域に着目すると、その着目した領域より太陽電池セル202の端に近い領域における接着層206と接続部材204との接触長さが着目した領域より長い部分を有する。
【0020】
例えば、
図5に示すように、接続部材204(破線で示す)の長手方向に沿って、太陽電池セル202の端部において接着層206の幅が広く、中央部において接着層206の幅が狭くなるように接着層206を塗布すればよい。このとき、接続部材204の端部のみならず、隣り合う太陽電池セル202へ向けて接続部材204を引き出す側の太陽電池セル202の端部においても太陽電池セル202の中央部よりも接着層206と接続部材204との接触長さが長い接着部分を設けるとよい。
【0021】
なお、接続部材204の長手方向に沿って接続部材204と接着層206との接触長さを変えるには、接着層206となる接着剤を塗布する際に接続部材204の長手方向に沿って接着層206となる接着剤の塗布量を変化させればよい。例えば、接続部材204の長手方向の太陽電池セル202の端部において中央部よりも接着剤をより多く塗布し、その後、接続部材204を圧着すればよい。接着剤の塗布量を変化させるには、ディスペンサの移動速度を接続部材204の長手方向に沿って変化させる、ディスペンサから接着剤の吐出圧力を接続部材204の長手方向に沿って変化させる等の方法が挙げられる。
【0022】
一般的に太陽電池セル202の端に近い領域が接続部材204と第1電極20bとの接着が剥がれやすい領域であるので、太陽電池セル202の端部において中央部より接触長さを長くすることによって剥がれを効果的に抑制することができる。また、接続部材204と第2電極20cとの関係においても同様である。一方、中央部においては端部より接触長さが短くされるので、中央部において接続部材204からの接着層206のはみ出しを抑制することができ、接着層206による遮光損失を抑制することができる。
【0023】
なお、
図6の断面図に示すように、太陽電池セル202の端部において接続部材204と第1電極20bとの接触部分に接着層206のフィレット22が形成されるようにするとよい。フィレット22とは、接着層206の一部が接続部材204の側面に接触する部分を意味する。フィレット22を設けることによって、太陽電池セル202の端部における接続部材204と第1電極20bとの接触がより強固となり、接続部材204が剥がれにくくなる効果が顕著となる。なお、接続部材204と第2電極20cとの関係においても同様である。
【符号の説明】
【0024】
10 太陽電池セル、12 集電極、14 接続部材、20a 光電変換部、20a 太陽電池セル、20b 第1電極、20c 第2電極、22 フィレット、100,200 太陽電池モジュール、202 太陽電池セル、204 接続部材、206 接着層。